説明

電源装置及びこれを有する機器

【課題】省電力用電源部を最適に設計でき、より省電力化された電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置2は、第1の動作状態にある第1の回路9に供給するための第1の電圧を生成する第1の電源部4と、第1の動作状態よりも低い消費電流で動作する第2の動作状態にある第1の回路に供給するための、第1の電圧と等しい又はそれよりも低い第2の電圧を生成する第2の電源部5と、第1の電源部を動作させる第1の電源状態と第2の電源部を動作させる第2の電源状態との切り換え、及び第1の回路に対する第1の動作状態への切り換えを指示する指示信号の送信を行う制御部6,3aとを有する。制御部は、第2の動作状態にある第1の回路からの特定信号の受信に応じて第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを行い、該切り換えが完了した後に第1の回路に対する指示信号の送信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に搭載される電源装置に関し、特に複数の電源部から選択的に異なる電圧を出力させる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の光学機器は、CPU等のコントロール素子や多数の電気素子により構成される電気回路系を備えている。コントロール素子は、光学機器(電気回路系)の状態に応じた通常動作状態(アクティブ状態ともいう)と省電力動作状態(低消費電力状態又はスリープ状態ともいう)とを有する。通常動作状態にある光学機器が所定時間の間に何ら操作されない場合には省電力動作状態に切り換わることで、無駄な電力消費が抑えられる。
【0003】
また、さらなる省電力化を図るためには、電気回路系に対して電圧を供給する電源装置自体の消費電力を抑えることも必要である。このため、特許文献1,2には、出力電圧が異なる複数の電源部を有し、コントロール素子等の状態に応じて最適な電源部を選択する電源装置が開示されている。
【0004】
電源装置の電源部の切り換えを行う方法には、例えば以下の方法がある。すなわち、上記電気回路系に外部回路又は該電気回路系内部からいわゆるWAKE−UP信号が入力された場合に、最初にコントロール素子に該WAKE−UP信号が入力される。このWAKE−UP信号によりコントロール素子は省電力動作状態から通常動作状態に切り換わり、電源装置の電源部を省電力用電源部から通常動作用電源部に切り換える。
【特許文献1】特開平11−65683号公報
【特許文献2】特開2006−18409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法を用いると、外部回路からWAKE−UP信号が入力された際に、最初にコントロール素子が通常動作状態になる。このため、省電力用電源部のドライブ能力として、最低でもコントロール素子の通常動作状態での動作に必要なドライブ能力を確保しなければならない。
【0006】
また、最近のコントロール素子はいきなり通常動作モードにならずに、WAKE−UP状態として通常動作状態よりも消費電力が少ない状態を経由するものもある。しかし、この場合でも、やはり省電力動作状態よりは多くの電力が必要となる。したがって、省電力用電源部の設計を、電気回路系の省電力動作状態での消費電力以上の消費電力状態を考慮して行う必要がある。このため、省電力動作状態に対して最適な回路設計が行えない。
【0007】
本発明は、通常動作状態と省電力動作状態を有する電気回路系に電圧を供給する電源装置であって、省電力用電源部を電気回路系の省電力動作状態での消費電力に対して最適に設計でき、より省電力化された電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての電源装置は、第1の動作状態と該第1の動作状態よりも低い消費電流で動作する第2の動作状態とを有する第1の回路に対して電圧を供給する電源装置であって、第1の動作状態にある第1の回路に供給するための第1の電圧を生成する第1の電源部と、第2の動作状態にある第1の回路に供給するための、第1の電圧と等しい又はそれよりも低い第2の電圧を生成する第2の電源部と、第1の電源部を動作させる第1の電源状態と第2の電源部を動作させる第2の電源状態との切り換え、及び第1の回路に対する第1の動作状態への切り換えを指示する指示信号の送信を行う制御部とを有する。そして、制御部は、第2の動作状態にある第1の回路からの特定信号の受信に応じて第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを行い、該切り換えが完了した後に第1の回路に対する指示信号の送信を行うことを特徴とする。
【0009】
なお、上記電源装置と第1の回路とを有する機器、及び上記電源装置と第1の回路とを有し、他の機器に対して着脱可能に接続される機器も本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の回路を第2の動作状態からより消費電流が多い第1の動作状態に切り換える際に、制御部は、電源装置をまず第1の動作状態に対応した第1の電源状態(第1の電源部)に切り換える。その後、第1の回路を第1の動作状態に切り換える。したがって、第2の電源部のドライブ能力を、第1の回路における第1の動作状態に対応した低い消費電力に合わせて設定することができ、従来に比べてさらなる省電力化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図1には、本発明の実施例1である電源回路システム(電源装置)を搭載した一眼レフカメラ用交換レンズ(光学機器)と、該交換レンズが着脱可能に装着(接続)される一眼レフカメラ(他の光学機器)の回路構成を示している。
【0013】
図1において、1は交換レンズであり、不図示の撮像光学系を有する。交換レンズ1には、電源回路システム2と、撮像光学系の動作(オートフォーカス動作や防振動作等)をコントロールする回路系(第1の回路)9とが設けられている。また、回路系9の内部には、交換レンズ1の全体の動作をコントロールするコントロール素子であるCPU10と、CPU10からの信号に応じて、交換レンズ1内に設けられたアクチュエータ等の電気素子の動作を制御する周辺回路11とが設けられている。
【0014】
電源回路システム2には、電源回路(電源部)3とロジック回路6とが設けられている。電源回路3は、第1の電圧を生成するアクティブ状態(ACTIVE)用の第1の電源回路4を有する。また、電源回路3は、第1の電源回路4よりも少ない消費電流(消費電力)で動作して第1の電圧よりも低い第2の電圧を生成する、スリープ状態(SLEEP)用の第2の電源回路5とを有する。電源回路3は、ロジック回路6からの信号に応じて、第1及び第2の電源回路4,5のうち一方からの電圧を回路系9に対して出力(供給)する。
【0015】
CPU10を含む回路系9は、通常動作状態であるアクティブ状態と、該アクティブ状態よりも低い消費電流(消費電力)での省電力動作状態であるスリープ状態とに切り換わる。アクディブ状態(第1の動作状態)は、撮像光学系の動作(オートフォーカス動作や防振動作等)を実行する状態である。アクティブ状態において、ある一定の時間の間、レンズ1において何らの操作や動作が行われなかった場合に、回路系9はスリープ状態(第2の動作状態)に切り換わる。また、スリープ状態において、レンズ1において何らかの操作が行われた場合には、回路系9はアクティブ状態に切り換わる。
【0016】
回路系9は、アクティブ状態では、前述した第1の電圧の供給を受けて動作し、スリープ状態では第2の電圧の供給を受けて動作する。
【0017】
ここで、第1の電圧は、例えば3Vであり、第2の電圧は、例えば1.7Vである。さらに、CPU10において、スリープ状態で必要な電流(消費電流)は、例えば1〜10μAであるのに対して、アクティブ状態で必要な電流は、例えば50mAである。これに応じて、第1の電源回路4の最大出力電流は、第2の電源回路5の最大出力電流よりも大きく設定されている。
【0018】
ロジック回路6は、通信判断部7と、通信信号処理部8とを有する。通信判断部7は、回路系9との通信及び後述する外部回路との通信を通じて回路系9及び外部回路の動作状態を判断する。また、回路系9及び外部回路から受信した信号の種類(例えば、後述する第1及び第2のWAKE−UP信号)の判断も行う。
【0019】
さらに、ロジック回路6は、通信判断部7での判断結果に応じて、電源回路3に対して電源状態の切り換えを指示する切換信号を出力する。電源回路3は、切換動作部3aを有する。該切換動作部3aは、該切換信号に応じて、第1の電源回路4を動作させて第1の電圧を回路系9に供給する状態(以下、第1の電源状態という)と第2の電源回路5を動作させて第2の電圧を回路系9に供給する状態(以下、第2の電源状態という)とに切り換える。
【0020】
なお、ロジック回路6と電源回路3のうち切換動作部3aにより、電源回路システム2の制御部が構成される。
【0021】
通信信号処理部8は、外部回路(第2の回路)を有するカメラ12からの通信信号を処理する。
【0022】
本実施例の電源回路システムは、混成集積回路(ハイブリッドIC)に搭載された形態で実施される。ただし、ハイブリッドIC以外のIC構成やIC構成以外の構成を有していてもよい。
【0023】
また、交換レンズ1は、オートフォーカスとマニュアルフォーカスを選択する切り換えスイッチ(以下、A/Mスイッチという)等の操作部材を備えたWAKE−UP信号発生部16を備えている。
【0024】
カメラ12は、定電圧回路15を有する。定電圧回路15は、リチウム電池や2次電池等の電源14を搭載し、その電源14からの出力により定電圧(例えば、5V)を生成してカメラ12の内部及び交換レンズ1に電源電圧を供給する。
【0025】
また、カメラ12は、カメラ12の駆動を制御し、さらに交換レンズ1との通信を行うCPU13を搭載している。
【0026】
通信ライン(1)((1)は図には丸囲み1として示す。他の通信ラインも同様)は、通信クロックラインと、レンズ1からカメラ12へのデータ送信を行うデータラインと、カメラ12からレンズ1へのデータ送信を行うデータラインとによって構成される。通信ライン(2)は、通信クロックラインと、回路系9から電源回路システム2へのデータ送信を行うデータラインと、電源回路システム2から回路系9へのデータ送信を行うデータラインとによって構成される。
【0027】
通信ライン(1)は、カメラ12からの電源レベルのロジックであり、通信ライン(2)は、電源回路3から出力される電圧レベルのロジックである。この通信レベルの違いに応じて通信信号処理部8にてレベル変換を行う。
【0028】
さらに、通信ライン(1)と通信ライン(2)の信号は、通常状態の通信では同期している。
【0029】
以上が、電源回路システム2を搭載した交換レンズ1とこれに接続されるカメラ12との回路構成の概略である。
【0030】
次に、回路系9(つまりはレンズ1の回路全体)がスリープ状態で、かつ電源回路3が第2の電源状態にあるときに、回路系9をスリープ状態からアクティブ状態に移行させる場合の電源状態の切り換え方法について説明する。ここでは、図1と図2のタイミングチャートと図5のフローチャートを用いる。
【0031】
回路系9のWAKE−UP信号発生部16に設けられたA/Mスイッチが切り換えられると、WAKE−UP信号発生部16から第1のWAKE−UP信号(特定信号)が電源回路システム2に出力(送信)される(図2中のt1,図5中のステップ101)。
【0032】
電源回路システム2(制御部)は、第1のWAKE−UP信号が入力(受信)されたと通信判断部7で判断すると、これに応じて電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを開始する(t1,ステップ102)。
【0033】
ここで、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換え途中において電源回路3から出力される電圧は徐々に上昇する。このため、第1の電源状態への切り換えが完了する、すなわち第1の電源状態に対応した第1の電圧のレベルに安定するまでにはある程度の時間を要する(これについては、後述する実施例5の図4に示す)。
【0034】
したがって、電源回路システム2は、ステップ102において、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了するまでの時間に相当する又はこれに余裕を見込んだ遅延時間(所定時間)の内部タイマーによるカウントを開始する。
【0035】
次にステップ103で該遅延時間が経過したと判別すると、通信信号処理部8から通信ライン(1)を使用してカメラ12(第2の回路)に対して、第2のWAKE−UP信号の出力を要求する信号(要求信号)を出力(送信)する(t2,ステップ104)。すなわち、第2のWAKE−UP信号の送信要求通信を行う。
【0036】
カメラ12内のCPU13は、該第2のWAKE−UP信号の要求信号を受けると、直ちに通信ライン(1)を使用して、電源回路システム2に対して第2のWAKE−UP信号を出力(送信)する(t3,ステップ105)。具体的には、図2に示すように、通信ライン(1)の信号の立ち下がりが第1のWAKE−UP信号に相当する。
【0037】
電源回路システム2では、第2のWAKE−UP信号が入力されたと通信判断部7で判断されると、通信信号処理部8で、入力された第2のWAKE−UP信号をレベル変換して第3のWAKE−UP信号(指令信号)を生成する。そして、第3のWAKE−UP信号を通信ライン(2)を通じて回路系9のCPU10に出力する(ステップ106)。具体的には、図2示すように、通信ライン(2)の信号の最初の立ち下がりが第3のWAKE−UP信号に相当する。
【0038】
CPU10は、この第3のWAKE−UP信号が入力(受信)されることに応じてスリープ状態からアクティブ状態に移行し、その後、周辺回路11を駆動して回路系9全体をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える(ステップ107)。
【0039】
以上のシーケンスを実行することで、回路系9から出力された第1のWAKE−UP信号に応じて回路系9をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える前に電源回路3を第2の電源状態から第1の電源状態に切り換えることができる。これにより、第2の電源回路5のドライブ能力は、回路系9のスリープ状態に必要とされる電力のみを考慮して設計することができ、第2の電源回路5をより省電力設計することが可能になる。
【実施例2】
【0040】
実施例1で説明したシーケンス以外のシーケンスでも、回路系9をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える前に電源回路3を第2の電源状態から第1の電源状態に切り換えることができる。これについて、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
回路系9のWAKE−UP信号発生部16に設けられたA/Mスイッチが切り換えられると、WAKE−UP信号発生部16から第1のWAKE−UP信号が電源回路システム2に出力(送信)される(ステップ201)。
【0042】
電源回路システム2は、第1のWAKE−UP信号が入力(受信)されたと通信判断部7で判断されると、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを開始する(ステップ202)。また、電源回路システム2は、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えに要する時間に相当する遅延時間(所定時間)の内部タイマーによるカウントを開始する。さらに、これに並行して(同時に)、通信信号処理部8から通信ライン(1)を使用してカメラ12に対して第2のWAKE−UP信号の要求信号を出力(送信)する。
【0043】
カメラ12内のCPU13は、該要求信号を受けると、通信ライン(1)を使用して、通信信号処理部8に対して第2のWAKE−UP信号を出力(送信)する(ステップ203)。
【0044】
そして、ステップ204で上記遅延時間が経過したと判別すると、ステップ205に進む。電源回路システム2では、通信信号処理部8で、入力された第2のWAKE−UP信号をレベル変換して第3のWAKE−UP信号を生成し、通信ライン(2)を通じて回路系9のCPU10に出力する(ステップ205)。
【0045】
CPU10は、この第3のWAKE−UP信号が入力(受信)されることに応じてスリープ状態からアクティブ状態に移行し、その後、周辺回路11を駆動して回路系9全体をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える(ステップ206)。
【実施例3】
【0046】
上述した実施例1,2では、タイマーを用いた遅延時間の経過判別に応じて第3のWAKE−UP信号を出力したが、第3のWAKE−UP信号として回路系9との通信を行うためのクロック信号を用いる場合には、以下の方法を採ることもできる。
【0047】
すなわち、図11に示すように、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えに要する時間t1〜t2に相当するクロック回数(パルス数)分だけクロック信号にマスクをかける。これにより、回路系9のCPU10は、マスクが解除されたクロック信号の最初の立ち下がりを第2のWAKE−UP信号として認識する。
【0048】
したがって、本実施例でも、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了した後に第3のWAKE−UP信号が回路系9のCPU10に入力されることになり、実施例1,2と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0049】
実施例1〜3では、電源回路システム2が、カメラ12に対して第2のWAKE−UP信号の送信要求通信を行い、カメラ12からの第2のWAKE−UP信号を受け取って第3のWAKE−UP信号を回路系9に送信するシーケンスについて説明した。
【0050】
しかし、図9のフローチャートに示すシーケンスを採用してもよい。なお、本実施例では、第2のWAKE−UP信号が電源回路システム2から回路系9に送信される指示信号に相当する。
【0051】
電源回路システム2は、WAKE−UP信号発生部16から第1のWAKE−UP信号を受信したと通信判断部7で判断すると、これに応じて電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを開始する(ステップ502)。また、電源回路システム2は、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了するまでの時間に相当する遅延時間(所定時間)の内部タイマーによるカウントを開始する
次に、電源回路システム2は、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了するまでの遅延時間が経過したか否かを判別する(ステップ503)。該遅延時間が経過したと判別すると、電源回路システム2自ら、回路系9のCPU10に対して、指示信号としての第2のWAKE−UP信号を出力する(ステップ504)。これにより、CPU10はアクティブ状態に切り換わる(ステップ505)。
【0052】
アクティブ状態に切り換わったCPU10は、通信ライン(2),(1)を用いてカメラ12にアクティブ状態に切り換わったことを通信する(ステップ506)。
【0053】
この場合も、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了した後に指令信号としての第2のWAKE−UP信号が回路系9のCPU10に入力されるので、実施例1〜3と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0054】
上述した実施例1〜4において、第2の電源回路5より出力される電圧は第1の電源回路4より出力される第1の電圧より低い第2の電圧としたが、第2の電源回路5より出力される第2の電圧が第1の電源回路より出力される第1の電圧と等しくてもよい。この場合でも、実施例1〜4と同様の効果を得ることができる。
【実施例6】
【0055】
図3には、本発明の実施例6である電源回路システム(電源装置)を搭載した一眼レフカメラ用交換レンズ(光学機器)と、該交換レンズが着脱可能に装着される一眼レフカメラ(他の光学機器)の回路構成を示している。図3において、実施例1で説明した回路構成と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0056】
本実施例の電源回路システム2には、電源回路3から出力される電圧を検知する出力電圧検知部(電圧検出部)17が設けられている。
【0057】
次に、回路系9(つまりはレンズ1の回路全体)がスリープ状態で、かつ電源回路3が第2の電源状態にあるときに、回路系9をスリープ状態からアクティブ状態に移行させる場合の電源状態の切り換え方法について説明する。ここでは、図3と図4のタイミングチャートと図7のフローチャートを用いる。
【0058】
回路系9のWAKE−UP信号発生部16に設けられたA/Mスイッチが切り換えられると、WAKE−UP信号発生部16から第1のWAKE−UP信号(特定信号)が電源回路システム2に出力(送信)される(図2中のt1,図5中のステップ301)。
【0059】
電源回路システム2(制御部)は、第1のWAKE−UP信号が入力(受信)されたと通信判断部7で判断すると、これに応じて電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを開始する(t1,ステップ302)。
【0060】
次に、電源回路システム2は、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えに伴い、出力電圧検知部17を通じて電源回路3からの出力電圧が第2の電圧から第1の電圧に変化したか否かを判別する(ステップ303)。
【0061】
ここで、図4に示すように、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換え途中において電源回路3から出力される電圧は徐々に上昇する。このため、第1の電源状態への切り換えが完了する、すなわち第1の電源状態に対応した第1の電圧のレベルに安定するまでにはある程度の時間を要する。したがって、電源回路システム2は、出力電圧検知部17を通じて、電源回路3からの出力電圧が第1の電圧のレベルに安定したか否かを判別する。出力電圧検知部17は、電源回路3からの出力電圧が第1の電圧に達すると、出力検知信号を出力し、電源回路システム2は、該出力検知信号を受けて電源回路3からの出力電圧が第1の電圧に達したと判別することができる。
【0062】
電源回路システム2は、電源回路3からの出力電圧が第1の電圧に達したと判別すると、通信信号処理部8から通信ライン(1)を介してカメラ12(第2の回路)に対して第2のWAKE−UP信号の要求信号を出力(送信)する(t2′,ステップ304)。
【0063】
カメラ12内のCPU13は、該要求信号を受けると、直ちに通信ライン(1)を使用して、電源システム2に対して第2のWAKE−UP信号を出力(送信)する。(t3,ステップ305)。
【0064】
電源回路システム2では、通信信号処理部8で、入力された第2のWAKE−UP信号をレベル変換して第3のWAKE−UP信号(指令信号)を生成し、通信ライン(2)を通じて回路系9のCPU10に出力する(ステップ306)。
【0065】
CPU10は、この第3のWAKE−UP信号が入力(受信)されたと通信判断部7で判断すると、これに応じてスリープ状態からアクティブ状態に移行する。その後、周辺回路11を駆動して回路系9全体をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える(ステップ307)。
【0066】
以上のシーケンスを実行することで、回路系9から出力された第1のWAKE−UP信号に応じて回路系9をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える前に電源回路3を第2の電源状態から第1の電源状態に切り換えることができる。これにより、第2の電源回路5のドライブ能力は、回路系9のスリープ状態に必要とされる電力のみを考慮して設計することができ、第2の電源回路5をより省電力設計することが可能になる。
【実施例7】
【0067】
実施例6で説明したシーケンス以外のシーケンスでも、回路系9をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える前に電源回路3を第2の電源状態から第1の電源状態に切り換えることができる。これについて、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
回路系9のWAKE−UP信号発生部16に設けられたA/Mスイッチが切り換えられると、WAKE−UP信号発生部16から第1のWAKE−UP信号が電源回路システム2に出力(送信)される(ステップ401)。
【0069】
電源回路システム2は、第1のWAKE−UP信号が入力(受信)されたと通信判断部7で判断すると、これに応じて電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを開始する(ステップ402)。電源回路システム2は、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えに要する時間に相当する遅延時間(所定時間)の内部タイマーによるカウントを開始する。さらに、これに並行して(同時に)、通信信号処理部8から通信ライン(1)を使用してカメラ12に対して第2のWAKE−UP信号の要求信号を出力(送信)する。
【0070】
カメラ12内のCPU13は、該要求信号を受けると、直ちに通信ライン(1)を使用して、電源回路システム2に対して第2のWAKE−UP信号を出力(送信)する(ステップ403)。
【0071】
ステップ204で該遅延時間が経過したと判別すると、ステップ205に進む。電源回路システム2では、通信信号処理部8で、入力された第2のWAKE−UP信号をレベル変換して第3のWAKE−UP信号を生成し、通信ライン(2)を通じて回路系9のCPU10に出力する(ステップ405)。
【0072】
CPU10は、この第3のWAKE−UP信号が入力(受信)されることに応じてスリープ状態からアクティブ状態に移行し、その後、周辺回路11を駆動して回路系9全体をスリープ状態からアクティブ状態に切り換える(ステップ406)。
【実施例8】
【0073】
実施例6,7では、電源回路システム2が、カメラ12に対して第2のWAKE−UP信号の送信要求通信を行い、カメラ12からの第2のWAKE−UP信号を受け取って第3のWAKE−UP信号を回路系9に送信するシーケンスについて説明した。
【0074】
しかし、図10のフローチャートに示すシーケンスを採用してもよい。なお、本実施例では、第2のWAKE−UP信号が電源回路システム2から回路系9に送信される指示信号に相当する。
【0075】
電源回路システム2は、WAKE−UP信号発生部16から第1のWAKE−UP信号を受信したと通信判断部7で判断すると、これに応じて電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えを開始する(ステップ602)。また、電源回路システム2は、第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了するまでの時間に相当する遅延時間(所定時間)の内部タイマーによるカウントを開始する
次に、電源回路システム2は、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了するまでの遅延時間が経過したか否かを判別する(ステップ603)。該遅延時間が経過したと判別すると、電源回路システム2自ら、回路系9のCPU10に対して、指示信号としての第2のWAKE−UP信号を出力する(ステップ604)。これにより、CPU10はアクティブ状態に切り換わる(ステップ605)。
【0076】
アクティブ状態に切り換わったCPU10は、通信ライン(2),(1)を用いてカメラ12にアクティブ状態に切り換わったことを通信する(ステップ606)。
【0077】
この場合も、電源回路3の第2の電源状態から第1の電源状態への切り換えが完了した後に指令信号としての第2のWAKE−UP信号が回路系9のCPU10に入力されるので、実施例6,7と同様の効果を得ることができる。 以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の実施例はそれらに限定されず、種々の変形及び変更が可能である。また、カーナビゲーションシステムやETC、PCの周辺機器(ハードディスク)等、自ら電源を持たないが、電源を持った他の機器に接続され、電源電圧の供給を受けて動作する機器にも本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1である電源回路システムを搭載した交換レンズ及び該交換レンズが装着されるカメラの回路構成を示すブロック図。
【図2】実施例1における電源切換え時のタイミングチャート。
【図3】本発明の実施例5である電源回路システムを搭載した交換レンズ及び該交換レンズが装着されるカメラの回路構成を示すブロック図。
【図4】実施例5における電源切換え時のタイミングチャート。
【図5】本発明の実施例1における電源切換え時の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例2における電源切換え時の動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施例5における電源切換え時の動作を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施例6における電源切換え時の動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の実施例4における電源切換え時の動作を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施例7における電源切換え時の動作を示すフローチャート。
【図11】実施例3における電源切換え時のタイミングチャート。
【符号の説明】
【0079】
1 交換レンズ
2 電源回路システム
3 電源回路
4 第1の電源回路(ACTIVE用)
5 第2の電源回路(SLEEP用)
6 ロジック回路
7 通信判断部
8 通信信号処理部
9 回路系
10 レンズ内のCPU
12 カメラ
13 カメラ内のCPU
14 カメラ内の電源
15 定電圧回路
16 WAKE−UP信号発生部
17 出力電圧検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の動作状態と前記第1の動作状態よりも低い消費電流で動作する第2の動作状態とを有する第1の回路に対して電圧を供給する電源装置であって、
前記第1の動作状態にある前記第1の回路に供給するための第1の電圧を生成する第1の電源部と、
前記第2の動作状態にある前記第1の回路に供給するための、前記第1の電圧と等しい又はそれよりも低い第2の電圧を生成する第2の電源部と、
前記第1の電源部を動作させる第1の電源状態と前記第2の電源部を動作させる第2の電源状態との切り換え、及び前記第1の回路に対する前記第1の動作状態への切り換えを指示する指示信号の送信を行う制御部とを有し、
前記制御部は、前記第2の動作状態にある前記第1の回路からの特定信号の受信に応じて前記第2の電源状態から前記第1の電源状態への切り換えを行い、該切り換えが完了した後に前記第1の回路に対する前記指示信号の送信を行うことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記特定信号の受信に応じた第2の回路への送信要求通信、及び前記第2の回路からの前記送信要求通信に対応した信号の受信に応じた前記第1の回路に対する前記指示信号の送信を行い、
前記制御部は、前記特定信号の受信に応じて前記第2の電源状態から前記第1の電源状態への切り換えを行い、該切り換えが完了した後に、前記第2の回路に対する前記送信要求通信と前記第1の回路に対する前記指示信号の送信とを行うことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記特定信号の受信に応じた第2の回路への送信要求通信、及び前記第2の回路からの前記送信要求通信に対応した信号の受信に応じた前記第1の回路に対する前記指示信号の送信を行い、
前記制御部は、前記特定信号の受信に応じて前記第2の電源状態から前記第1の電源状態への切り換えと前記第2の回路に対する前記送信要求通信とを行い、該切り換えが完了した後に、前記第1の回路に対する前記指示信号の送信を行うことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の電源状態から前記第1の電源状態への切り換えが完了するまでの時間が経過したことに応じて前記第1の回路に対する前記指示信号の送信を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記指示信号として、前記第1の回路との通信を行うためのクロック信号を用い、
前記制御部は、前記第2の電源状態から前記第1の電源状態への切り換えが完了するまでの間、前記クロック信号にマスクをかけて前記第1の回路に送信することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電源装置。
【請求項6】
前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも低く、
前記第1及び第2の電源部から前記第1の回路に供給される電圧を検出する電圧検出部を有し、
前記制御部は、前記第2の電源状態から前記第1の電源状態への切り換えによって前記電圧検出部により前記第1の電圧が検出されたことに応じて前記第1の回路に対する前記指示信号の送信を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1の電源回路の最大出力電流は、前記第2の電源部の最大出力電流よりも大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の電源装置。
【請求項8】
前記電源装置は、集積回路に搭載されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の電源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の電源装置と前記第1の回路とを有することを特徴とする機器。
【請求項10】
請求項2又は3に記載の電源装置と前記第1の回路とを有し、前記第2の回路を有する他の機器に着脱可能に接続されることを特徴とする機器。


【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−217607(P2008−217607A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56240(P2007−56240)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】