電源装置
【課題】高電圧パルスの波高値とパルス幅の制御により負荷である電極の安定した放電と異常検知を実現する。
【解決手段】直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、前記平滑コンデンサの両端電圧である直流電圧が変動した場合でも前記負荷に印加される出力ピーク電圧を一定とすることができるので、前記負荷において安定した放電を実現することができる。
【解決手段】直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、前記平滑コンデンサの両端電圧である直流電圧が変動した場合でも前記負荷に印加される出力ピーク電圧を一定とすることができるので、前記負荷において安定した放電を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧パルスの印加により放電を発生させて殺菌、空気中の有害物質等を浄化する装置に使用可能な高電圧パルス発生用の電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の高電圧パルス発生用電源装置として昇圧トランスの1次巻線に電流を流して電磁エネルギーを蓄積し、その電流を遮断することによる巻線の反発電圧を2次巻線に伝えて高電圧パルスを得る方法が種々考案されている。以下にこれら従来例の構成と動作を図面を用いて説明する。
【0003】
図18は従来の電源装置の構成図で、直流電源15、1次巻線10a、2次巻線10bを有する昇圧トランス10、スイッチング素子8、ダイオード16、電源装置の負荷11、インダクタ17、コンデンサ18が図の通り接続されている。前記負荷11は放電をさせる電極構造を有し、電気的には主として静電容量の特性を示す。また駆動手段9は前記スイッチング素子8を駆動する信号を生成する。
【0004】
以上の構成において、その動作を説明する。スイッチング素子8が駆動手段9からの信号によりオンさせられると、直流電源15から昇圧トランス10の1次巻線10aに図19に示すような概略直線状に増加する電流が流れ、前記1次巻線10aに電磁エネルギーが蓄積される。次に駆動手段9からの信号によりスイッチング素子8がオフさせられると、前記1次巻線10aに反発電圧が発生する。
【0005】
それが昇圧トランス10の巻線比に応じて2次巻線10bに伝達され、2次巻線10bに大きな電圧が発生する。
【0006】
これを励振源としてインダクタ17、コンデンサ18で共振が起こり、図19に示すようなピークが高く、幅の狭いパルス電圧が発生し、これが負荷11に印加されることとなる。
【0007】
2次側の共振により、再度昇圧トランス巻線10a、10bの電圧極性が反転して1次巻線10aの電圧が直流電源15の電圧を超えるとダイオード16が導通し、直流電源15にエネルギーが回生される。
【0008】
2次側の共振により以上のような動作が繰返される結果、ダイオード16には図19に示すような回生電流が流れる。
【0009】
これらの基本動作をもとに、さらに出力電圧パルスの立ち上がり速度を上げるために、図20のように2次側に高圧スイッチ19を設け、コンデンサ18の電圧がピークに達した瞬間に高耐圧スイッチ19を導通させて負荷11に高電圧パルスを印加する方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−224187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら前記従来の構成では、出力電圧のピークはスイッチング素子8をオフした直後に発生するが、その波高値はスイッチング素子8のオフ時の速度に大きく依存するため、スイッチング素子8の部品ばらつきの影響を受けやすいという課題を有していた。
【0011】
また、出力電圧のパルス幅は2次側の共振時定数に依存するためパルス幅の制御ができないため負荷11の電極において安定した放電を実現できないという課題を有していた。
【0012】
また、スイッチング素子8のオフ時に昇圧トランス10の漏れインダクタンスにより大きなサージ電圧が発生し、それがスイッチング素子8に印加されるためスイッチング素子8に高耐圧が必要になるとともに、スイッチングノイズが大きくなるという課題も有していた。
【0013】
さらに、特許文献1の例では2次側回路に高耐圧のスイッチング素子が必要となり、装置の大型化、コストアップにつながるという課題も有していた。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するためのもので、スイッチング素子のスイッチング速度に依存しない出力電圧パルスを得ることができ、電流容量、耐圧の比較的小さなスイッチング素子が使用可能となり、装置の小型化、低コスト化が実現できる。
【0015】
さらに、スイッチング素子のスイッチング時の不要輻射を低く抑えることができる。
【0016】
さらに、交流電源が電圧変動した場合でも負荷11の出力ピーク電圧を安定に保つことができ安定した放電を実現することができる。
【0017】
さらに負荷11が短絡、開放または異常放電であるアーク放電の場合に、これらの負荷状態を検知することができるとともに、異常時に第1のスイッチング素子の駆動信号をオフにすることにより異常時の過大な電圧、電流ストレスから回路素子を守ることができる。
【0018】
これにより、回路部品の電圧電流容量を低くすることができ、電源装置のさらなる小型化、低コスト化が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明の電源装置は、交流電源と、前記交流電源を整流するブリッジダイオードと、前記ブリッジダイオードで整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動手段と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記平滑コンデンサと前記第1の抵抗と前記昇圧トランスの1次巻線と前記スイッチング素子を環状に直列に接続し、前記ダイオードのカソードを前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1の抵抗が接続された側に接続し、前記ダイオードのアノードを前記第2の抵抗の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1のスイッチング素子に接続された側に接続し、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、前記スイッチング素子の導通中に出力電圧がピークまで立ち上がり、その後自然に減少するため、スイッチング素子のオン時間で出力電圧パルスの波高値およびパルス幅が制御可能となり、前記負荷にて安定した放電を実現することができる。
【0020】
さらに、前記ブリッジダイオードと前記平滑コンデンサとの間に第2のスイッチング素子を接続し、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動手段とを備え、前記第2
のスイッチング素子のオンにより前記平滑コンデンサが充電したときの前記直流電圧検出手段の出力Viと、前記第2のスイッチング素子をオフし、前記第1のスイッチング素子を所定の回数オン、オフ繰り返した後の前記直流電圧検出手段の出力Vrとを比較することにより、前記負荷の異常検知を実現することができ、電源装置の安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電源装置によれば、スイッチング素子のスイッチング速度に依存しない出力電圧パルスを得ることができ、電流容量、耐圧の比較的小さなスイッチング素子が使用可能となり、装置の小型化、低コスト化が実現できる。
【0022】
さらに、スイッチング素子のスイッチング時の不要輻射を低く抑えることができる。
【0023】
さらに、交流電源が電圧変動した場合でも負荷11の出力ピーク電圧を安定に保つことができ安定した放電を実現することができる。
【0024】
さらに負荷11が短絡、開放または異常放電であるアーク放電の場合に、これらの負荷状態を検知することができるとともに、異常時に第1のスイッチング素子の駆動信号をオフにすることにより異常時の過大な電圧、電流ストレスから回路素子を守ることができる。
【0025】
これにより、回路部品の電圧電流容量を低くすることができ、電源装置のさらなる小型化、低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
第1の発明は交流電源と、前記交流電源を整流するブリッジダイオードと、前記ブリッジダイオードで整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動手段と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記平滑コンデンサと前記第1の抵抗と前記昇圧トランスの1次巻線と前記スイッチング素子を環状に直列に接続し、前記ダイオードのカソードを前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1の抵抗が接続された側に接続し、前記ダイオードのアノードを前記第2の抵抗の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1のスイッチング素子に接続された側に接続し、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、前記平滑コンデンサの両端電圧である直流電圧が変動した場合でも前記負荷に印加される出力ピーク電圧を一定とすることができるので、前記負荷において安定した放電を実現することができる。
【0027】
第2の発明は、請求項1記載の電源装置の前記ブリッジダイオードと前記平滑コンデンサとの間に第2のスイッチング素子を接続し、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動手段とを備え、前記第2のスイッチング素子のオンにより前記平滑コンデンサが充電したときの前記直流電圧検出手段の出力Viと、前記第2のスイッチング素子をオフし、前記第1のスイッチング素子を所定の回数オン、オフ繰り返した後の前記直流電圧検出手段の出力Vrとを比較することにより、前記第1のスイッチング素子のオン、オフを所定の回数繰り返す期間は前記第2のスイッチング素子はオフしているので、前記交流電源から前記平滑コンデンサへの電力供給が遮断されることとなり、前記負荷に所定の回数
高電圧パルスを印加することによる直流電圧の電圧降下が得られ、前記負荷11で消費されるエネルギーがわかる。
【0028】
第3の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と予め設定された電圧Voとを比較し、(Vi−Vr)が略Voのときに前記負荷が請求項1記載の電源装置に対し開放しているとマイクロコンピュータが判断することとなり、第1のスイッチング素子をオフすることで、前記負荷の開放による過大な電圧ストレスから昇圧トランス3を保護することができ、昇圧トランス3の電圧耐量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0029】
第4の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された電圧Vsとを比較し、(Vi−Vr)が略Vsのときに前記負荷が短絡しているとマイクロコンピュータが判断することとなり、第1のスイッチング素子をオフすることで、過大な電流ストレスから昇圧トランス10を保護することができ、昇圧トランス3の電流容量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0030】
第5の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された電圧Vaとを比較し、(Vi−Vr)が略Vaのときに前記負荷がアーク放電しているとマイクロコンピュータが判断することとなり、第1のスイッチング素子をオフすることで、アーク放電による異常音と電磁ノイズの発生を短時間に防止することができるので電源装置の安全性を確保できる。
【0031】
第6の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された電圧Vnとを比較し(Vi−Vr)が略Vnのときに前記負荷が正常な放電をしているとマイクロコンピュータが判断することとなり、前記第2のスイッチング素子と第1のスイッチング素子の一連の動作を繰り返すことで、異常検知をしつつ安定した放電を実現できる。
【0032】
第7の発明は、特に、前記第1のスイッチング素子がオン、オフする前記所定の回数と前記平滑コンデンサの静電容量を、前記負荷の正常な放電時にVrが所定の電圧値以上となるように決定することにより、前記負荷での安定した放電を実現することができる。
【0033】
第8の発明は、第1の発明または第2の発明の電源装置のブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3との間に電流遮断手段15を接続した構成とすることで、1次側回路が短絡した場合に前記電流遮断手段が開放し前記平滑コンデンサ3に直流電圧が印加されないことにより、マイクロコンピュータ12は異常を検知することが可能となり、マイクロコンピュータ12から外部に異常信号を出力すること等が容易となる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0035】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電源装置の構成図である。図1において、交流電源1と、前記交流電源1を整流するブリッジダイオード2と、前記ブリッジダイオード2で整流された電圧を平滑する平滑コンデンサ3と、前記平滑コンデンサ3の両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段4と、第1の抵抗5と、昇圧トランス10と、第1のスイッチング素子8と、前記第1のスイッチング素子8を駆動する第1の駆動手段9と、ダイオード6と、第2の抵抗7と、前記第1の駆動手段9に駆動信号を出力するマイクロコンピュータ12とを備え、前記平滑コンデンサ3と前記第1の抵抗5と前記昇圧トランス1
0の1次巻線10aと前記第1のスイッチング素子8を環状に直列に接続し、前記ダイオード6のカソードを前記昇圧トランスの1次巻線10aの前記第1の抵抗5が接続された側に接続し、前記ダイオード6のアノードを前記第2の抵抗7の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗7の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線10aの前記第1のスイッチング素子8に接続された側に接続し、前記昇圧トランスの2次巻線10bに負荷11が接続された構成となっている。
【0036】
以上の構成において、その回路動作を図2を用いて説明する。まずマイクロコンピュータ12から駆動信号が出力され第1の駆動手段9によりスイッチング素子8がオンすると、交流電源1をブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3により整流平滑された直流電圧から負荷11の容量を充電する電流と、昇圧トランス10の励磁インダクタンスに流れる電流が第1の抵抗5を介して供給される。
【0037】
前記負荷11の容量成分を充電する電流は、概略第1の抵抗5と負荷容量の1次換算値との積で表される時定数に基づいて増加する。
【0038】
また、昇圧トランス10の励磁インダクタンスに流れる電流はスイッチング素子8のオンと同時に0から概略直線的に増加する。ここで、前記負荷容量成分を充電する電流が、前記励磁インダクタンスに流れる電流よりも速く立ち上がるように第1の抵抗5の抵抗値を選定することにより、負荷11に印加される出力電圧の立ち上がりを速くすることができる。前記励磁インダクタンスに流れる電流が増加すると、第1の抵抗5による電圧降下が増加し、昇圧トランス10の1次巻線10aの電圧が負荷容量に充電された電圧の1次換算値より小さくなり、負荷容量の電圧、すなわち出力電圧の低下が始まる。
【0039】
この直後にスイッチング素子8をオフすると、前記励磁インダクタンスに流れていた電流は第2の抵抗7、ダイオード6を環流し、やがて0となる。その後、昇圧トランス10の2次巻線10bと負荷11の容量の共振により、図2に示すような共振が発生し、そのエネルギーは主として第2の抵抗7で消費されながら減衰することとなる。
【0040】
以上の一連の動作によりパルス幅が2μs程度の高電圧パルス出力を得ることができる。
【0041】
なお、図2に示した波形は、交流電源1の電圧が200V、第1の抵抗5の抵抗値が15Ω、昇圧トランス10の巻線比が1/31、同励磁インダクタンスが37μH、負荷11の容量が37pF、第2の抵抗7の抵抗値が4.7Ωの場合の例である。
【0042】
ここで、スイッチング素子8のオン幅を図2よりも小さくした場合の波形を図3に、大きくした場合の波形を図4に示す。基本動作は同様であるが、図3の場合にはスイッチング素子8のオフと同時に交流電源1または平滑コンデンサ3からのエネルギー注入が停止するため、出力電圧パルスの波高値およびパルス幅がともに図2の場合より小さくなる。
【0043】
逆に、図4の場合にはパルスの波高値およびパルス幅がともに図2の場合より大きくなる。
【0044】
図5にスイッチング素子8のオン時間と負荷11の出力電圧のピーク電圧特性を示す(ただし直流電圧が一定の場合)。図5に示すように負荷11の出力ピーク電圧は概ね交流電源1を整流平滑して得られる直流電圧と昇圧トランス10の巻数比と負荷11の静電容量により決まり、マイクロコンピュータ12の出力デューティーに対して飽和特性を有する。
【0045】
一方、負荷11に相当する放電電極が高電圧パルスの印加により所望の放電を実現するためには、負荷11の電極において放電開始電圧以上のピーク値を持った高電圧パルスを印加する必要がある。
【0046】
本実施の形態における負荷11の電極においては放電開始電圧は4kVである。
【0047】
また、図6に平滑コンデンサ3の両端電圧である直流電圧と負荷11の出力電圧のピーク電圧特性を示す(ただしスイッチング素子8のオン時間が一定の場合)。
【0048】
図6に示すように負荷11の出力ピーク電圧は直流電圧に対し、一次特性を示す。
【0049】
図6に示すように第1のスイッチング素子8のオン時間が一定の場合に直流電圧の変動により負荷11の出力電圧ピークは大きく変動する。交流電源1の電圧変動を±15%考慮した場合、直流電源の下限値は約240V、上限値は約325Vと変動する。
【0050】
この直流電圧変動に対し、第1のスイッチング素子のオン時間を500ns一定とした場合、図6に示すように直流電圧の低い領域では負荷11の放電開始電圧である4kVの出力電圧ピークに達しないため所望の放電が得られないこととなる。
【0051】
一方、第1のスイッチング素子のオン時間を1us一定とした場合には負荷11の出力電圧ピークは直流電圧の高い領域において必要な放電開始電圧と比較して非常に高い電圧が印加されることとなり、負荷11においてアーク放電が発生しやすい等、所望の放電状態を安定して持続できないこととなる。
【0052】
図7に平滑コンデンサ3の両端電圧である直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性を示す(ただし負荷11の出力電圧ピークが一定の場合)。
【0053】
以上より、図7に示すように負荷11の出力電圧を一定値に制御するためには、直流電圧検出手段3の出力をマイクロコンピュータ12に伝達し、マイクロコンピュータ内部のAD変換結果に基づいて、第1のスイッチング素子8を駆動するための駆動信号のオン時間を調整し、第1の駆動手段9に出力すればよい。
【0054】
次に、マイクロコンピュータ内部で直流電圧検出手段3から伝達された直流電圧情報を基に第1のスイッチング素子のオン時間の決定について図8を用いて説明する。
【0055】
図8は図7の負荷11の出力電圧ピークを一定とした場合における直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性に直流電圧の変動幅(約240V〜325V)においてこの特性をマイクロコンピュータ12内部で処理しやすいように近似直線を示す。
【0056】
この近似直線を用いて、マイクロコンピュータ12に直流電圧検出手段からの直流電圧値に基づいて第1のスイッチング素子のオン時間を演算する。
【0057】
以上のような処理を行った場合、直流電圧と負荷11の出力電圧のピーク電圧特性を図9に示す。
【0058】
図示するように、直流電圧検出手段の出力に基づき、マイクロコンピュータ12にて第1のスイッチング素子8のオン時間を演算により求め、第1の駆動手段9に駆動信号を出力することにより、負荷11の出力電圧ピークを概ね一定に保つことができるので交流電源1が電圧変動した場合にも安定した放電を実現できる。
【0059】
なお負荷11の電極が、電極構造の公差や環境、経年変化等により放電開始電圧が変動しても、上記した制御の基本動作には影響しない。
【0060】
また、本実施の形態では直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性を近似直線に置き換えたが、近似直線とした場合や直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の関係をメモリ上にテーブルとして予め記憶させ、直流電圧検出手段3からの入力とテーブルのデータにより第1のスイッチング素子8のオン時間を決定した場合においても同様の効果が期待できる。
【0061】
以上の構成および動作により、スイッチング素子8のスイッチング速度に依存しない出力電圧パルスが得られ、出力電圧パルスの波高値およびパルス幅を制御することができる。
【0062】
また、第1の抵抗5によって交流電源1および平滑コンデンサ3から供給される電流を抑制できるため、スイッチング素子8の電流容量を低減できる。
【0063】
さらに、第2の抵抗7とダイオード6による電流環流経路があるため、第1のスイッチング素子8のオフ時のサージ電圧を抑制でき、第1のスイッチング素子8に特別な高耐圧を必要とせず、不要輻射も低減できる。
【0064】
さらに直流電圧検出手段の出力に基づき、マイクロコンピュータ12にて第1のスイッチング素子8のオン時間を制御することにより、負荷11の出力電圧ピークを概ね一定に保つことができるので交流電源1が電圧変動した場合にも安定した放電を実現できる。
【0065】
なお、本実施の形態では昇圧トランス10の1次巻線10aと2次巻線10bを同極性としたが、極性を逆としてもよい。また、スイッチング素子8は双方向スイッチとしたが、昇圧トランス10から交流電源1へ導通する片方向スイッチでもよい。
【0066】
また、平滑コンデンサ3のプラス側ラインに第1の抵抗5を、マイナス側ラインにスイッチング素子8を挿入したが、プラス側ラインにスイッチング素子8を、マイナス側ラインに第1の抵抗5を挿入してもよく、また、いずれか一方のラインにスイッチング素子8および第1の抵抗5を直列にして挿入してもよい。
【0067】
更に、ダイオード6および第2の抵抗7による直列回路は、図中、上側にダイオード6が、下側に第2の抵抗7が位置するが、上下の位置が反転しても差し支えない。
【0068】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における電源装置の構成図である。図10において図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0069】
図10において、ブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3との間に第2のスイッチング素子13を接続し、前記第2のスイッチング素子13を駆動する第2の駆動手段14を備えた構成となっている。以上の構成において、その回路動作を図11を用いて説明する。
【0070】
まず、第2のスイッチング素子13のオンにより平滑コンデンサ3は交流電源1により充電される(図11中に示すT0期間)。
【0071】
このときの直流電圧検出手段4の出力Viをマイクロコンピュータ12のメモリに記憶し、マイクロコンピュータ12がViを記憶した後、第2のスイッチング素子13をオフ
する。
【0072】
次に第1のスイッチング素子8を所定の回数オン、オフ繰り返す(図11中に示すT1期間)。
【0073】
このときT1期間中は第2のスイッチング素子13はオフしているので、交流電源1から平滑コンデンサ3への充電経路が遮断され、T0の期間に平滑コンデンサに蓄えられた充電電圧のみを入力電源として、第1のスイッチング素子がオン、オフすることにより負荷11に高電圧パルスが印加されることとなる。
【0074】
T1期間中は負荷11に高電圧パルスが印加されることにより、図11示す拡大図のように第1のスイッチング素子8のオン時間に直流電圧が減少することとなる。
【0075】
第1のスイッチング素子8のオン時間の制御は、実施の形態1で説明したとおり直流電圧検出手段3の出力に応じてオン時間を制御する。
【0076】
例えば図11に図示するように直流電圧検出手段3がVi(n)と検出した場合には第1のスイッチング素子8のオン時間をt(n)とし、直流電圧検出手段3がVi(n+1)と検出した場合には第1のスイッチング素子8のオン時間をt(n+1)と出力する。
【0077】
直流電圧検出手段3の出力に対応する第1のスイッチング素子8のオン時間は実施の形態1で説明したとおりである。
【0078】
この制御により、直流電圧の変動に対する負荷11の出力電圧ピークの変動を抑制でき、負荷11で安定した所望の放電を実現できる。
【0079】
次に、第1のスイッチング素子8が所定の回数オン、オフ繰り返した後の直流電圧検出手段の出力Vrをマイクロコンピュータ12はメモリに記憶する。
【0080】
ここで、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較することで、以下に説明する原理により負荷11の異常と正常を検知することができ、電源装置の安全性を確保することができる。
【0081】
まず、放電電極に相当する負荷11が接続線の断線等により電源装置から開放した場合の異常検知について図12に示す負荷開放時の波形を用いて説明する。
【0082】
電源装置の基本動作は図2〜4に示す負荷11の正常時と同様であるが、図12の場合には昇圧トランス10の2次巻線10bに印加される電圧は、概略昇圧トランス10の2次巻線10bの分布容量の1次換算値と第1の抵抗5との積で表される時定数に基づいて増加し、昇圧トランス10の2次巻線10bには大きな電圧が印加される。
【0083】
一方、昇圧トランス10の2次巻線10bに流れる電流は負荷11と電源装置が切り離されているため0となる。(実際には第1のスイッチング素子8が1回オンすることにより昇圧トランス10の2次巻線の分布容量Cs(≒13pF)を充電するため微小な電流が流れるが無視する。)したがって負荷11の開放時に消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスのみと考えてよい。
【0084】
第1のスイッチング素子の駆動期間をT1(図11のT1に相当)、回路の定常ロスをIcとすると、開放時に消費する電荷量の最大値Qoは
Qo=∫Ic・dt=Ic・T1・・・(1)
と表せる。
【0085】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式1のQoを電圧に換算すると負荷11の開放時の直流電圧減少分であるVoは以下の式2より求めることができる。
【0086】
Vo=Qo/Ci・・・(2)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Voのときに負荷11は電源装置から開放していると判断でき、第1のスイッチング素子をオフすることで、前記負荷の開放による過大な電圧ストレスから昇圧トランス3を保護することができ、昇圧トランス3の電圧耐量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0087】
ここで、仮に第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hzとし、1000回オン、オフを繰り返すとするとT1=2sとなる。またIcは50uAであるので、式1および式2よりVoは14Vとなる。
【0088】
次に、放電電極に相当する負荷11が経年変化による塵埃の堆積や異物の挟み込み等により短絡状態にある場合の異常検知について図13の負荷短絡時の波形を用いて説明する。
【0089】
図13の場合には昇圧トランス10の2次側が短絡状態となるので、昇圧トランス10の2次巻線10bには大きな電流が流れる。
【0090】
一方、昇圧トランス10の2次巻線に印加される電圧は負荷11の短絡により0となる。したがって負荷11の短絡時に消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスと、第1のスイッチング素子8のオン時に負荷11を流れるパルス状の電流によって求められる。
【0091】
第1のスイッチング素子の駆動期間T1(図11のT1に相当)における平均オン時間をt(ave)、第1のスイッチング素子8をT1間にm回スイッチングし、このときに負荷11に流れるパルス状の電流の波高値をIpとすると、短絡時に消費する電荷量Qsは
Qs=∫Ic・dt+∫Ip・dt=Ic・T1+m・ip・t(ave)・・・(3)と表せる。
【0092】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式3のQsを電圧に換算すると負荷11の短絡時に直流電圧が減少する電圧Vsは以下の式4より求めることができる。
【0093】
Vs=Qs/Ci・・・(4)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Vsのときに負荷11は短絡していると判断でき、第1のスイッチング素子をオフすることで、過大な電流ストレスから昇圧トランス10を保護することができ、昇圧トランス3の電流容量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0094】
ここでVsを開放時と同様に概算で求める。第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hz、m=1000とするとT1=2sとなる。
【0095】
また、回路の定常ロスIc=50uAと、図13の波形より得られるip=400mA、t(ave)=1usとを式5および式6に代入することでVs=50Vを得る。
【0096】
さらに、放電電極に相当する負荷11が電極の公差や経年変化、異物の挟み込み等が引き金となり異常な放電であるアーク放電した場合、異常放電による大きな放電音と高いdV/dtにより過大な電磁ノイズが発生する。
【0097】
このアーク放電の異常検知について図14に示す負荷11のアーク放電時の波形を用いて説明する。
【0098】
図14の場合にはアーク放電発生により、ピーク値の大きな高周波電流が負荷11に流れる。
【0099】
一方、負荷11に印加される電圧はアーク放電発生と同時に急激に0Vとなる。したがって負荷11のアーク放電時時に消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスと、第1のスイッチング素子8のオン時に負荷11を流れるパルス状の電流にピーク値の大きな高周波電流との和である。
【0100】
第1のスイッチング素子の駆動期間をT1(図11のT1に相当)における平均オン時間をt(ave)、第1のスイッチング素子8をT1間にm回スイッチングし、このときに負荷11に流れるパルス状の電流の実効値をImとすると、アーク放電時に消費する電荷量Qaは、
Qa=∫Ic・dt+∫Im・dt=Ic・T1+m・im・t(ave)・・・(5)と表せる。
【0101】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式5のQaを電圧に換算すると負荷11のアーク放電時に直流電圧減少分Vaは以下の式6より求めることができる。
【0102】
Va=Qa/Ci・・・(6)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Vaのときに負荷11はアーク放電していると判断でき、第1のスイッチング素子をオフすることで、アーク放電による異常音と電磁ノイズの発生を短時間に防止することができ、電源装置の安全性を確保できる。
【0103】
ここでVaを開放時と同様に概算で求める。
【0104】
第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hz、m=1000とするとT1=2sとなる。
【0105】
また、回路の定常ロスIc=50uAと、図14の波形より得られるim=800mA、t(ave)=1usとを式5および式6に代入することでVa=90Vを得る。
【0106】
負荷11における開放、短絡、アーク放電の異常検知については上記のとおりであり、図15に示すとおり、(Vi−Vr)を予め定めた、Vo、Vs、Vaと比較することにより検知することが可能となる。
【0107】
一方、負荷11の正常放電時には上記異常時と同様に考え、消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスと、第1のスイッチング素子8のオン時に負荷11を流れるパルス状の電流との和である。
【0108】
第1のスイッチング素子の駆動期間T1(図11のT1に相当)における平均オン時間をt(ave)、第1のスイッチング素子8をT1間にm回スイッチングし、このときに負荷11に流れるパルス状の電流のピーク値をInとすると、正常な放電時に消費する電荷
量Qnは、
Qn=∫Ic・dt+∫In・dt=Ic・T1+m・in・t(ave)・・・(7)と表せる。
【0109】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式7のQaを電圧に換算すると負荷11の正常放電時に直流電圧減少分Vnは以下の式8より求めることができる。
【0110】
Vn=Qn/Ci・・・(8)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Vnのときに負荷11は正常に放電していると判断でき、第2のスイッチング素子13をオンすることで平滑コンデンサ3を充電し、第1のスイッチング素子8をオン、オフするといった一連の動作を繰り返すことによって、異常検知と安定した放電を繰り返し実現することができ、電源装置の安全性および信頼性を確保することができる。
【0111】
ここでVnを開放時と同様に概算で求める。第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hz、m=1000とするとT1=2sとなる。
【0112】
また、回路の定常ロスIc=50uAと、図4の波形より得られるin=220mA、t(ave)=1usとを式7および式8に代入することでVn=32Vを得る。
【0113】
また、負荷11の正常放電時に平滑コンデンサ3の直流電圧が減少しても安定して放電するためには、負荷11の出力電圧のピーク値4kVを一定にする必要がある。
【0114】
図7に負荷11の出力電圧ピークを4kVを一定のときの直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性を示す。
【0115】
図7より、出力電圧4kVを得るためには少なくともVrmin以上の直流電圧が必要であることがわかる。
【0116】
したがって、スイッチング素子がオン、オフする前記所定の回数と前記平滑コンデンサの静電容量の関係を数式により求めると以下のようになる。
【0117】
(Vi−Vrmin)≧Vn・・・(9)(ただし、Vnは式7および式8による)
図16に式9を満足する平滑コンデンサ3の容量と第1のスイッチング素子8のスイッチング回数のグラフを示す。
【0118】
グラフ上に示す斜線部の領域で平滑コンデンサ3の容量と第1のスイッチング素子8のスイッチング回数を設定することで、正常な放電時に直流電圧が常にVrmin以上とすることができるので、安定した所望の放電を確実に実現することができる。
【0119】
ただし、直流電圧のリップルの影響を無視できない程、平滑コンデンサ3の容量を小さくすることはできない(図16中のCmin)。
【0120】
また、AD変換精度により、異常検知や正常判定ができないほど第1のスイッチング素子8のスイッチング回数を小さくすることはできない(図16中のmmin)。
【0121】
以上のような制御および判定方法とすることにより、負荷7の開放または短絡による異常時と正常時の判定をすることができ、異常時には第1のスイッチング素子をオフすることにより装置の安全性を確保することができるとともに、正常時には安定した放電を確実
に実現することができる。
【0122】
(実施の形態3)
図17は本発明の実施の形態3における電源装置の構成図である。図17において図10と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0123】
図17において、電流遮断手段15をブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3との間に接続した構成と成っている。
【0124】
この構成により、例えば昇圧トランスの絶縁破壊による短絡や第1のスイッチング素子8または第2のスイッチング素子13の破壊等により1次側回路が短絡した場合には、電流遮断手段15に例えばヒューズを用いた場合には溶断し、1時側回路が開放状態となる。
【0125】
したがって、第2のスイッチング素子13がオンしても平滑コンデンサ3に直流電圧が充電されず、直流電圧検出手段4の出力がマイクロコンピュータ12に伝達され、マイクロコンピュータ12は一次側回路の短絡異常と判断することができる。
【0126】
これにより、マイクロコンピュータ11から外部に異常信号を出力すること等が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本発明にかかる電源装置は、電源装置の異常と正常を1つの検出手段で確実に判定することが可能であり、異常時には出力の停止、正常時には確実かつ低ノイズにストリーマ放電を実現することができるので、高い安全性、コストパフォーマンスを実現し、高電圧パルスの印加により放電を発生させて殺菌等を行う装置を空気調和機や空気清浄機等の家電製品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態1における電源装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電源装置の各部動作波形図
【図3】本発明の実施の形態1における電源装置の異なる条件下の各部動作波形図
【図4】本発明の実施の形態1における電源装置の異なる条件下の各部動作波形図
【図5】第1のスイッチング素子のオン時間と出力電圧ピーク特性図
【図6】直流電圧と出力電圧ピークの特性図
【図7】直流電圧と第1のスイッチング素子のオン時間の特性図
【図8】直流電圧と第1のスイッチング素子のオン時間の関係を直線近似した特性図
【図9】本発明の実施の形態1における制御による直流電圧と出力電圧ピークの特性図
【図10】本発明の実施の形態2における電源装置の構成図
【図11】本発明の実施の形態2における電源装置の各部動作波形図
【図12】本発明の実施の形態1における電源装置の負荷が開放した場合の各部動作波形図
【図13】本発明の実施の形態1における電源装置の負荷が短絡した場合の各部動作波形図
【図14】本発明の実施の形態1における電源装置の負荷がアーク放電した場合の各部動作波形図
【図15】本発明の実施の形態2における電源装置の異常検知の原理を示す図
【図16】本発明の実施の形態2における平滑コンデンサの容量とスイッチング回数の関係を示すグラフ
【図17】本発明の実施の形態3における電源装置の構成図
【図18】従来の電源装置の構成図
【図19】従来の電源装置の各部動作波形図
【図20】従来の電源装置の異なる構成図
【符号の説明】
【0129】
1 交流電源
2 ブリッジダイオード
3 平滑コンデンサ
4 直流電圧検出手段
5 第1の抵抗
6 ダイオード
7 第2の抵抗
8 第1のスイッチング素子
9 第1の駆動手段
10 昇圧トランス
11 負荷
12 マイクロコンピュータ
13 第2のスイッチング素子
14 第2の駆動手段
15 直流電源
16 回生用ダイオード
17 リアクタ
18 コンデンサ
19 高耐圧スイッチ
20 電流遮断手段
10a 1次巻線
10b 2次巻線
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧パルスの印加により放電を発生させて殺菌、空気中の有害物質等を浄化する装置に使用可能な高電圧パルス発生用の電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の高電圧パルス発生用電源装置として昇圧トランスの1次巻線に電流を流して電磁エネルギーを蓄積し、その電流を遮断することによる巻線の反発電圧を2次巻線に伝えて高電圧パルスを得る方法が種々考案されている。以下にこれら従来例の構成と動作を図面を用いて説明する。
【0003】
図18は従来の電源装置の構成図で、直流電源15、1次巻線10a、2次巻線10bを有する昇圧トランス10、スイッチング素子8、ダイオード16、電源装置の負荷11、インダクタ17、コンデンサ18が図の通り接続されている。前記負荷11は放電をさせる電極構造を有し、電気的には主として静電容量の特性を示す。また駆動手段9は前記スイッチング素子8を駆動する信号を生成する。
【0004】
以上の構成において、その動作を説明する。スイッチング素子8が駆動手段9からの信号によりオンさせられると、直流電源15から昇圧トランス10の1次巻線10aに図19に示すような概略直線状に増加する電流が流れ、前記1次巻線10aに電磁エネルギーが蓄積される。次に駆動手段9からの信号によりスイッチング素子8がオフさせられると、前記1次巻線10aに反発電圧が発生する。
【0005】
それが昇圧トランス10の巻線比に応じて2次巻線10bに伝達され、2次巻線10bに大きな電圧が発生する。
【0006】
これを励振源としてインダクタ17、コンデンサ18で共振が起こり、図19に示すようなピークが高く、幅の狭いパルス電圧が発生し、これが負荷11に印加されることとなる。
【0007】
2次側の共振により、再度昇圧トランス巻線10a、10bの電圧極性が反転して1次巻線10aの電圧が直流電源15の電圧を超えるとダイオード16が導通し、直流電源15にエネルギーが回生される。
【0008】
2次側の共振により以上のような動作が繰返される結果、ダイオード16には図19に示すような回生電流が流れる。
【0009】
これらの基本動作をもとに、さらに出力電圧パルスの立ち上がり速度を上げるために、図20のように2次側に高圧スイッチ19を設け、コンデンサ18の電圧がピークに達した瞬間に高耐圧スイッチ19を導通させて負荷11に高電圧パルスを印加する方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−224187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら前記従来の構成では、出力電圧のピークはスイッチング素子8をオフした直後に発生するが、その波高値はスイッチング素子8のオフ時の速度に大きく依存するため、スイッチング素子8の部品ばらつきの影響を受けやすいという課題を有していた。
【0011】
また、出力電圧のパルス幅は2次側の共振時定数に依存するためパルス幅の制御ができないため負荷11の電極において安定した放電を実現できないという課題を有していた。
【0012】
また、スイッチング素子8のオフ時に昇圧トランス10の漏れインダクタンスにより大きなサージ電圧が発生し、それがスイッチング素子8に印加されるためスイッチング素子8に高耐圧が必要になるとともに、スイッチングノイズが大きくなるという課題も有していた。
【0013】
さらに、特許文献1の例では2次側回路に高耐圧のスイッチング素子が必要となり、装置の大型化、コストアップにつながるという課題も有していた。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するためのもので、スイッチング素子のスイッチング速度に依存しない出力電圧パルスを得ることができ、電流容量、耐圧の比較的小さなスイッチング素子が使用可能となり、装置の小型化、低コスト化が実現できる。
【0015】
さらに、スイッチング素子のスイッチング時の不要輻射を低く抑えることができる。
【0016】
さらに、交流電源が電圧変動した場合でも負荷11の出力ピーク電圧を安定に保つことができ安定した放電を実現することができる。
【0017】
さらに負荷11が短絡、開放または異常放電であるアーク放電の場合に、これらの負荷状態を検知することができるとともに、異常時に第1のスイッチング素子の駆動信号をオフにすることにより異常時の過大な電圧、電流ストレスから回路素子を守ることができる。
【0018】
これにより、回路部品の電圧電流容量を低くすることができ、電源装置のさらなる小型化、低コスト化が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明の電源装置は、交流電源と、前記交流電源を整流するブリッジダイオードと、前記ブリッジダイオードで整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動手段と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記平滑コンデンサと前記第1の抵抗と前記昇圧トランスの1次巻線と前記スイッチング素子を環状に直列に接続し、前記ダイオードのカソードを前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1の抵抗が接続された側に接続し、前記ダイオードのアノードを前記第2の抵抗の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1のスイッチング素子に接続された側に接続し、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、前記スイッチング素子の導通中に出力電圧がピークまで立ち上がり、その後自然に減少するため、スイッチング素子のオン時間で出力電圧パルスの波高値およびパルス幅が制御可能となり、前記負荷にて安定した放電を実現することができる。
【0020】
さらに、前記ブリッジダイオードと前記平滑コンデンサとの間に第2のスイッチング素子を接続し、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動手段とを備え、前記第2
のスイッチング素子のオンにより前記平滑コンデンサが充電したときの前記直流電圧検出手段の出力Viと、前記第2のスイッチング素子をオフし、前記第1のスイッチング素子を所定の回数オン、オフ繰り返した後の前記直流電圧検出手段の出力Vrとを比較することにより、前記負荷の異常検知を実現することができ、電源装置の安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電源装置によれば、スイッチング素子のスイッチング速度に依存しない出力電圧パルスを得ることができ、電流容量、耐圧の比較的小さなスイッチング素子が使用可能となり、装置の小型化、低コスト化が実現できる。
【0022】
さらに、スイッチング素子のスイッチング時の不要輻射を低く抑えることができる。
【0023】
さらに、交流電源が電圧変動した場合でも負荷11の出力ピーク電圧を安定に保つことができ安定した放電を実現することができる。
【0024】
さらに負荷11が短絡、開放または異常放電であるアーク放電の場合に、これらの負荷状態を検知することができるとともに、異常時に第1のスイッチング素子の駆動信号をオフにすることにより異常時の過大な電圧、電流ストレスから回路素子を守ることができる。
【0025】
これにより、回路部品の電圧電流容量を低くすることができ、電源装置のさらなる小型化、低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
第1の発明は交流電源と、前記交流電源を整流するブリッジダイオードと、前記ブリッジダイオードで整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動手段と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記平滑コンデンサと前記第1の抵抗と前記昇圧トランスの1次巻線と前記スイッチング素子を環状に直列に接続し、前記ダイオードのカソードを前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1の抵抗が接続された側に接続し、前記ダイオードのアノードを前記第2の抵抗の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1のスイッチング素子に接続された側に接続し、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することにより、前記平滑コンデンサの両端電圧である直流電圧が変動した場合でも前記負荷に印加される出力ピーク電圧を一定とすることができるので、前記負荷において安定した放電を実現することができる。
【0027】
第2の発明は、請求項1記載の電源装置の前記ブリッジダイオードと前記平滑コンデンサとの間に第2のスイッチング素子を接続し、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動手段とを備え、前記第2のスイッチング素子のオンにより前記平滑コンデンサが充電したときの前記直流電圧検出手段の出力Viと、前記第2のスイッチング素子をオフし、前記第1のスイッチング素子を所定の回数オン、オフ繰り返した後の前記直流電圧検出手段の出力Vrとを比較することにより、前記第1のスイッチング素子のオン、オフを所定の回数繰り返す期間は前記第2のスイッチング素子はオフしているので、前記交流電源から前記平滑コンデンサへの電力供給が遮断されることとなり、前記負荷に所定の回数
高電圧パルスを印加することによる直流電圧の電圧降下が得られ、前記負荷11で消費されるエネルギーがわかる。
【0028】
第3の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と予め設定された電圧Voとを比較し、(Vi−Vr)が略Voのときに前記負荷が請求項1記載の電源装置に対し開放しているとマイクロコンピュータが判断することとなり、第1のスイッチング素子をオフすることで、前記負荷の開放による過大な電圧ストレスから昇圧トランス3を保護することができ、昇圧トランス3の電圧耐量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0029】
第4の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された電圧Vsとを比較し、(Vi−Vr)が略Vsのときに前記負荷が短絡しているとマイクロコンピュータが判断することとなり、第1のスイッチング素子をオフすることで、過大な電流ストレスから昇圧トランス10を保護することができ、昇圧トランス3の電流容量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0030】
第5の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された電圧Vaとを比較し、(Vi−Vr)が略Vaのときに前記負荷がアーク放電しているとマイクロコンピュータが判断することとなり、第1のスイッチング素子をオフすることで、アーク放電による異常音と電磁ノイズの発生を短時間に防止することができるので電源装置の安全性を確保できる。
【0031】
第6の発明は、前記直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された電圧Vnとを比較し(Vi−Vr)が略Vnのときに前記負荷が正常な放電をしているとマイクロコンピュータが判断することとなり、前記第2のスイッチング素子と第1のスイッチング素子の一連の動作を繰り返すことで、異常検知をしつつ安定した放電を実現できる。
【0032】
第7の発明は、特に、前記第1のスイッチング素子がオン、オフする前記所定の回数と前記平滑コンデンサの静電容量を、前記負荷の正常な放電時にVrが所定の電圧値以上となるように決定することにより、前記負荷での安定した放電を実現することができる。
【0033】
第8の発明は、第1の発明または第2の発明の電源装置のブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3との間に電流遮断手段15を接続した構成とすることで、1次側回路が短絡した場合に前記電流遮断手段が開放し前記平滑コンデンサ3に直流電圧が印加されないことにより、マイクロコンピュータ12は異常を検知することが可能となり、マイクロコンピュータ12から外部に異常信号を出力すること等が容易となる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0035】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電源装置の構成図である。図1において、交流電源1と、前記交流電源1を整流するブリッジダイオード2と、前記ブリッジダイオード2で整流された電圧を平滑する平滑コンデンサ3と、前記平滑コンデンサ3の両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段4と、第1の抵抗5と、昇圧トランス10と、第1のスイッチング素子8と、前記第1のスイッチング素子8を駆動する第1の駆動手段9と、ダイオード6と、第2の抵抗7と、前記第1の駆動手段9に駆動信号を出力するマイクロコンピュータ12とを備え、前記平滑コンデンサ3と前記第1の抵抗5と前記昇圧トランス1
0の1次巻線10aと前記第1のスイッチング素子8を環状に直列に接続し、前記ダイオード6のカソードを前記昇圧トランスの1次巻線10aの前記第1の抵抗5が接続された側に接続し、前記ダイオード6のアノードを前記第2の抵抗7の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗7の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線10aの前記第1のスイッチング素子8に接続された側に接続し、前記昇圧トランスの2次巻線10bに負荷11が接続された構成となっている。
【0036】
以上の構成において、その回路動作を図2を用いて説明する。まずマイクロコンピュータ12から駆動信号が出力され第1の駆動手段9によりスイッチング素子8がオンすると、交流電源1をブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3により整流平滑された直流電圧から負荷11の容量を充電する電流と、昇圧トランス10の励磁インダクタンスに流れる電流が第1の抵抗5を介して供給される。
【0037】
前記負荷11の容量成分を充電する電流は、概略第1の抵抗5と負荷容量の1次換算値との積で表される時定数に基づいて増加する。
【0038】
また、昇圧トランス10の励磁インダクタンスに流れる電流はスイッチング素子8のオンと同時に0から概略直線的に増加する。ここで、前記負荷容量成分を充電する電流が、前記励磁インダクタンスに流れる電流よりも速く立ち上がるように第1の抵抗5の抵抗値を選定することにより、負荷11に印加される出力電圧の立ち上がりを速くすることができる。前記励磁インダクタンスに流れる電流が増加すると、第1の抵抗5による電圧降下が増加し、昇圧トランス10の1次巻線10aの電圧が負荷容量に充電された電圧の1次換算値より小さくなり、負荷容量の電圧、すなわち出力電圧の低下が始まる。
【0039】
この直後にスイッチング素子8をオフすると、前記励磁インダクタンスに流れていた電流は第2の抵抗7、ダイオード6を環流し、やがて0となる。その後、昇圧トランス10の2次巻線10bと負荷11の容量の共振により、図2に示すような共振が発生し、そのエネルギーは主として第2の抵抗7で消費されながら減衰することとなる。
【0040】
以上の一連の動作によりパルス幅が2μs程度の高電圧パルス出力を得ることができる。
【0041】
なお、図2に示した波形は、交流電源1の電圧が200V、第1の抵抗5の抵抗値が15Ω、昇圧トランス10の巻線比が1/31、同励磁インダクタンスが37μH、負荷11の容量が37pF、第2の抵抗7の抵抗値が4.7Ωの場合の例である。
【0042】
ここで、スイッチング素子8のオン幅を図2よりも小さくした場合の波形を図3に、大きくした場合の波形を図4に示す。基本動作は同様であるが、図3の場合にはスイッチング素子8のオフと同時に交流電源1または平滑コンデンサ3からのエネルギー注入が停止するため、出力電圧パルスの波高値およびパルス幅がともに図2の場合より小さくなる。
【0043】
逆に、図4の場合にはパルスの波高値およびパルス幅がともに図2の場合より大きくなる。
【0044】
図5にスイッチング素子8のオン時間と負荷11の出力電圧のピーク電圧特性を示す(ただし直流電圧が一定の場合)。図5に示すように負荷11の出力ピーク電圧は概ね交流電源1を整流平滑して得られる直流電圧と昇圧トランス10の巻数比と負荷11の静電容量により決まり、マイクロコンピュータ12の出力デューティーに対して飽和特性を有する。
【0045】
一方、負荷11に相当する放電電極が高電圧パルスの印加により所望の放電を実現するためには、負荷11の電極において放電開始電圧以上のピーク値を持った高電圧パルスを印加する必要がある。
【0046】
本実施の形態における負荷11の電極においては放電開始電圧は4kVである。
【0047】
また、図6に平滑コンデンサ3の両端電圧である直流電圧と負荷11の出力電圧のピーク電圧特性を示す(ただしスイッチング素子8のオン時間が一定の場合)。
【0048】
図6に示すように負荷11の出力ピーク電圧は直流電圧に対し、一次特性を示す。
【0049】
図6に示すように第1のスイッチング素子8のオン時間が一定の場合に直流電圧の変動により負荷11の出力電圧ピークは大きく変動する。交流電源1の電圧変動を±15%考慮した場合、直流電源の下限値は約240V、上限値は約325Vと変動する。
【0050】
この直流電圧変動に対し、第1のスイッチング素子のオン時間を500ns一定とした場合、図6に示すように直流電圧の低い領域では負荷11の放電開始電圧である4kVの出力電圧ピークに達しないため所望の放電が得られないこととなる。
【0051】
一方、第1のスイッチング素子のオン時間を1us一定とした場合には負荷11の出力電圧ピークは直流電圧の高い領域において必要な放電開始電圧と比較して非常に高い電圧が印加されることとなり、負荷11においてアーク放電が発生しやすい等、所望の放電状態を安定して持続できないこととなる。
【0052】
図7に平滑コンデンサ3の両端電圧である直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性を示す(ただし負荷11の出力電圧ピークが一定の場合)。
【0053】
以上より、図7に示すように負荷11の出力電圧を一定値に制御するためには、直流電圧検出手段3の出力をマイクロコンピュータ12に伝達し、マイクロコンピュータ内部のAD変換結果に基づいて、第1のスイッチング素子8を駆動するための駆動信号のオン時間を調整し、第1の駆動手段9に出力すればよい。
【0054】
次に、マイクロコンピュータ内部で直流電圧検出手段3から伝達された直流電圧情報を基に第1のスイッチング素子のオン時間の決定について図8を用いて説明する。
【0055】
図8は図7の負荷11の出力電圧ピークを一定とした場合における直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性に直流電圧の変動幅(約240V〜325V)においてこの特性をマイクロコンピュータ12内部で処理しやすいように近似直線を示す。
【0056】
この近似直線を用いて、マイクロコンピュータ12に直流電圧検出手段からの直流電圧値に基づいて第1のスイッチング素子のオン時間を演算する。
【0057】
以上のような処理を行った場合、直流電圧と負荷11の出力電圧のピーク電圧特性を図9に示す。
【0058】
図示するように、直流電圧検出手段の出力に基づき、マイクロコンピュータ12にて第1のスイッチング素子8のオン時間を演算により求め、第1の駆動手段9に駆動信号を出力することにより、負荷11の出力電圧ピークを概ね一定に保つことができるので交流電源1が電圧変動した場合にも安定した放電を実現できる。
【0059】
なお負荷11の電極が、電極構造の公差や環境、経年変化等により放電開始電圧が変動しても、上記した制御の基本動作には影響しない。
【0060】
また、本実施の形態では直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性を近似直線に置き換えたが、近似直線とした場合や直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の関係をメモリ上にテーブルとして予め記憶させ、直流電圧検出手段3からの入力とテーブルのデータにより第1のスイッチング素子8のオン時間を決定した場合においても同様の効果が期待できる。
【0061】
以上の構成および動作により、スイッチング素子8のスイッチング速度に依存しない出力電圧パルスが得られ、出力電圧パルスの波高値およびパルス幅を制御することができる。
【0062】
また、第1の抵抗5によって交流電源1および平滑コンデンサ3から供給される電流を抑制できるため、スイッチング素子8の電流容量を低減できる。
【0063】
さらに、第2の抵抗7とダイオード6による電流環流経路があるため、第1のスイッチング素子8のオフ時のサージ電圧を抑制でき、第1のスイッチング素子8に特別な高耐圧を必要とせず、不要輻射も低減できる。
【0064】
さらに直流電圧検出手段の出力に基づき、マイクロコンピュータ12にて第1のスイッチング素子8のオン時間を制御することにより、負荷11の出力電圧ピークを概ね一定に保つことができるので交流電源1が電圧変動した場合にも安定した放電を実現できる。
【0065】
なお、本実施の形態では昇圧トランス10の1次巻線10aと2次巻線10bを同極性としたが、極性を逆としてもよい。また、スイッチング素子8は双方向スイッチとしたが、昇圧トランス10から交流電源1へ導通する片方向スイッチでもよい。
【0066】
また、平滑コンデンサ3のプラス側ラインに第1の抵抗5を、マイナス側ラインにスイッチング素子8を挿入したが、プラス側ラインにスイッチング素子8を、マイナス側ラインに第1の抵抗5を挿入してもよく、また、いずれか一方のラインにスイッチング素子8および第1の抵抗5を直列にして挿入してもよい。
【0067】
更に、ダイオード6および第2の抵抗7による直列回路は、図中、上側にダイオード6が、下側に第2の抵抗7が位置するが、上下の位置が反転しても差し支えない。
【0068】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における電源装置の構成図である。図10において図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0069】
図10において、ブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3との間に第2のスイッチング素子13を接続し、前記第2のスイッチング素子13を駆動する第2の駆動手段14を備えた構成となっている。以上の構成において、その回路動作を図11を用いて説明する。
【0070】
まず、第2のスイッチング素子13のオンにより平滑コンデンサ3は交流電源1により充電される(図11中に示すT0期間)。
【0071】
このときの直流電圧検出手段4の出力Viをマイクロコンピュータ12のメモリに記憶し、マイクロコンピュータ12がViを記憶した後、第2のスイッチング素子13をオフ
する。
【0072】
次に第1のスイッチング素子8を所定の回数オン、オフ繰り返す(図11中に示すT1期間)。
【0073】
このときT1期間中は第2のスイッチング素子13はオフしているので、交流電源1から平滑コンデンサ3への充電経路が遮断され、T0の期間に平滑コンデンサに蓄えられた充電電圧のみを入力電源として、第1のスイッチング素子がオン、オフすることにより負荷11に高電圧パルスが印加されることとなる。
【0074】
T1期間中は負荷11に高電圧パルスが印加されることにより、図11示す拡大図のように第1のスイッチング素子8のオン時間に直流電圧が減少することとなる。
【0075】
第1のスイッチング素子8のオン時間の制御は、実施の形態1で説明したとおり直流電圧検出手段3の出力に応じてオン時間を制御する。
【0076】
例えば図11に図示するように直流電圧検出手段3がVi(n)と検出した場合には第1のスイッチング素子8のオン時間をt(n)とし、直流電圧検出手段3がVi(n+1)と検出した場合には第1のスイッチング素子8のオン時間をt(n+1)と出力する。
【0077】
直流電圧検出手段3の出力に対応する第1のスイッチング素子8のオン時間は実施の形態1で説明したとおりである。
【0078】
この制御により、直流電圧の変動に対する負荷11の出力電圧ピークの変動を抑制でき、負荷11で安定した所望の放電を実現できる。
【0079】
次に、第1のスイッチング素子8が所定の回数オン、オフ繰り返した後の直流電圧検出手段の出力Vrをマイクロコンピュータ12はメモリに記憶する。
【0080】
ここで、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較することで、以下に説明する原理により負荷11の異常と正常を検知することができ、電源装置の安全性を確保することができる。
【0081】
まず、放電電極に相当する負荷11が接続線の断線等により電源装置から開放した場合の異常検知について図12に示す負荷開放時の波形を用いて説明する。
【0082】
電源装置の基本動作は図2〜4に示す負荷11の正常時と同様であるが、図12の場合には昇圧トランス10の2次巻線10bに印加される電圧は、概略昇圧トランス10の2次巻線10bの分布容量の1次換算値と第1の抵抗5との積で表される時定数に基づいて増加し、昇圧トランス10の2次巻線10bには大きな電圧が印加される。
【0083】
一方、昇圧トランス10の2次巻線10bに流れる電流は負荷11と電源装置が切り離されているため0となる。(実際には第1のスイッチング素子8が1回オンすることにより昇圧トランス10の2次巻線の分布容量Cs(≒13pF)を充電するため微小な電流が流れるが無視する。)したがって負荷11の開放時に消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスのみと考えてよい。
【0084】
第1のスイッチング素子の駆動期間をT1(図11のT1に相当)、回路の定常ロスをIcとすると、開放時に消費する電荷量の最大値Qoは
Qo=∫Ic・dt=Ic・T1・・・(1)
と表せる。
【0085】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式1のQoを電圧に換算すると負荷11の開放時の直流電圧減少分であるVoは以下の式2より求めることができる。
【0086】
Vo=Qo/Ci・・・(2)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Voのときに負荷11は電源装置から開放していると判断でき、第1のスイッチング素子をオフすることで、前記負荷の開放による過大な電圧ストレスから昇圧トランス3を保護することができ、昇圧トランス3の電圧耐量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0087】
ここで、仮に第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hzとし、1000回オン、オフを繰り返すとするとT1=2sとなる。またIcは50uAであるので、式1および式2よりVoは14Vとなる。
【0088】
次に、放電電極に相当する負荷11が経年変化による塵埃の堆積や異物の挟み込み等により短絡状態にある場合の異常検知について図13の負荷短絡時の波形を用いて説明する。
【0089】
図13の場合には昇圧トランス10の2次側が短絡状態となるので、昇圧トランス10の2次巻線10bには大きな電流が流れる。
【0090】
一方、昇圧トランス10の2次巻線に印加される電圧は負荷11の短絡により0となる。したがって負荷11の短絡時に消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスと、第1のスイッチング素子8のオン時に負荷11を流れるパルス状の電流によって求められる。
【0091】
第1のスイッチング素子の駆動期間T1(図11のT1に相当)における平均オン時間をt(ave)、第1のスイッチング素子8をT1間にm回スイッチングし、このときに負荷11に流れるパルス状の電流の波高値をIpとすると、短絡時に消費する電荷量Qsは
Qs=∫Ic・dt+∫Ip・dt=Ic・T1+m・ip・t(ave)・・・(3)と表せる。
【0092】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式3のQsを電圧に換算すると負荷11の短絡時に直流電圧が減少する電圧Vsは以下の式4より求めることができる。
【0093】
Vs=Qs/Ci・・・(4)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Vsのときに負荷11は短絡していると判断でき、第1のスイッチング素子をオフすることで、過大な電流ストレスから昇圧トランス10を保護することができ、昇圧トランス3の電流容量を比較的低くできるため、昇圧トランス3の小型、低コスト化を実現できる。
【0094】
ここでVsを開放時と同様に概算で求める。第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hz、m=1000とするとT1=2sとなる。
【0095】
また、回路の定常ロスIc=50uAと、図13の波形より得られるip=400mA、t(ave)=1usとを式5および式6に代入することでVs=50Vを得る。
【0096】
さらに、放電電極に相当する負荷11が電極の公差や経年変化、異物の挟み込み等が引き金となり異常な放電であるアーク放電した場合、異常放電による大きな放電音と高いdV/dtにより過大な電磁ノイズが発生する。
【0097】
このアーク放電の異常検知について図14に示す負荷11のアーク放電時の波形を用いて説明する。
【0098】
図14の場合にはアーク放電発生により、ピーク値の大きな高周波電流が負荷11に流れる。
【0099】
一方、負荷11に印加される電圧はアーク放電発生と同時に急激に0Vとなる。したがって負荷11のアーク放電時時に消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスと、第1のスイッチング素子8のオン時に負荷11を流れるパルス状の電流にピーク値の大きな高周波電流との和である。
【0100】
第1のスイッチング素子の駆動期間をT1(図11のT1に相当)における平均オン時間をt(ave)、第1のスイッチング素子8をT1間にm回スイッチングし、このときに負荷11に流れるパルス状の電流の実効値をImとすると、アーク放電時に消費する電荷量Qaは、
Qa=∫Ic・dt+∫Im・dt=Ic・T1+m・im・t(ave)・・・(5)と表せる。
【0101】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式5のQaを電圧に換算すると負荷11のアーク放電時に直流電圧減少分Vaは以下の式6より求めることができる。
【0102】
Va=Qa/Ci・・・(6)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Vaのときに負荷11はアーク放電していると判断でき、第1のスイッチング素子をオフすることで、アーク放電による異常音と電磁ノイズの発生を短時間に防止することができ、電源装置の安全性を確保できる。
【0103】
ここでVaを開放時と同様に概算で求める。
【0104】
第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hz、m=1000とするとT1=2sとなる。
【0105】
また、回路の定常ロスIc=50uAと、図14の波形より得られるim=800mA、t(ave)=1usとを式5および式6に代入することでVa=90Vを得る。
【0106】
負荷11における開放、短絡、アーク放電の異常検知については上記のとおりであり、図15に示すとおり、(Vi−Vr)を予め定めた、Vo、Vs、Vaと比較することにより検知することが可能となる。
【0107】
一方、負荷11の正常放電時には上記異常時と同様に考え、消費するエネルギーは抵抗分圧で構成される直流電圧検出手段4の回路の定常ロスと、第1のスイッチング素子8のオン時に負荷11を流れるパルス状の電流との和である。
【0108】
第1のスイッチング素子の駆動期間T1(図11のT1に相当)における平均オン時間をt(ave)、第1のスイッチング素子8をT1間にm回スイッチングし、このときに負荷11に流れるパルス状の電流のピーク値をInとすると、正常な放電時に消費する電荷
量Qnは、
Qn=∫Ic・dt+∫In・dt=Ic・T1+m・in・t(ave)・・・(7)と表せる。
【0109】
平滑コンデンサ3の容量をCiとし、式7のQaを電圧に換算すると負荷11の正常放電時に直流電圧減少分Vnは以下の式8より求めることができる。
【0110】
Vn=Qn/Ci・・・(8)
よって、マイクロコンピュータ12に記憶された2つの直流電圧検出手段3の出力ViとVrを比較し、(Vi−Vr)が略Vnのときに負荷11は正常に放電していると判断でき、第2のスイッチング素子13をオンすることで平滑コンデンサ3を充電し、第1のスイッチング素子8をオン、オフするといった一連の動作を繰り返すことによって、異常検知と安定した放電を繰り返し実現することができ、電源装置の安全性および信頼性を確保することができる。
【0111】
ここでVnを開放時と同様に概算で求める。第1のスイッチング素子8の駆動周波数を500Hz、m=1000とするとT1=2sとなる。
【0112】
また、回路の定常ロスIc=50uAと、図4の波形より得られるin=220mA、t(ave)=1usとを式7および式8に代入することでVn=32Vを得る。
【0113】
また、負荷11の正常放電時に平滑コンデンサ3の直流電圧が減少しても安定して放電するためには、負荷11の出力電圧のピーク値4kVを一定にする必要がある。
【0114】
図7に負荷11の出力電圧ピークを4kVを一定のときの直流電圧と第1のスイッチング素子8のオン時間の特性を示す。
【0115】
図7より、出力電圧4kVを得るためには少なくともVrmin以上の直流電圧が必要であることがわかる。
【0116】
したがって、スイッチング素子がオン、オフする前記所定の回数と前記平滑コンデンサの静電容量の関係を数式により求めると以下のようになる。
【0117】
(Vi−Vrmin)≧Vn・・・(9)(ただし、Vnは式7および式8による)
図16に式9を満足する平滑コンデンサ3の容量と第1のスイッチング素子8のスイッチング回数のグラフを示す。
【0118】
グラフ上に示す斜線部の領域で平滑コンデンサ3の容量と第1のスイッチング素子8のスイッチング回数を設定することで、正常な放電時に直流電圧が常にVrmin以上とすることができるので、安定した所望の放電を確実に実現することができる。
【0119】
ただし、直流電圧のリップルの影響を無視できない程、平滑コンデンサ3の容量を小さくすることはできない(図16中のCmin)。
【0120】
また、AD変換精度により、異常検知や正常判定ができないほど第1のスイッチング素子8のスイッチング回数を小さくすることはできない(図16中のmmin)。
【0121】
以上のような制御および判定方法とすることにより、負荷7の開放または短絡による異常時と正常時の判定をすることができ、異常時には第1のスイッチング素子をオフすることにより装置の安全性を確保することができるとともに、正常時には安定した放電を確実
に実現することができる。
【0122】
(実施の形態3)
図17は本発明の実施の形態3における電源装置の構成図である。図17において図10と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0123】
図17において、電流遮断手段15をブリッジダイオード2と平滑コンデンサ3との間に接続した構成と成っている。
【0124】
この構成により、例えば昇圧トランスの絶縁破壊による短絡や第1のスイッチング素子8または第2のスイッチング素子13の破壊等により1次側回路が短絡した場合には、電流遮断手段15に例えばヒューズを用いた場合には溶断し、1時側回路が開放状態となる。
【0125】
したがって、第2のスイッチング素子13がオンしても平滑コンデンサ3に直流電圧が充電されず、直流電圧検出手段4の出力がマイクロコンピュータ12に伝達され、マイクロコンピュータ12は一次側回路の短絡異常と判断することができる。
【0126】
これにより、マイクロコンピュータ11から外部に異常信号を出力すること等が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本発明にかかる電源装置は、電源装置の異常と正常を1つの検出手段で確実に判定することが可能であり、異常時には出力の停止、正常時には確実かつ低ノイズにストリーマ放電を実現することができるので、高い安全性、コストパフォーマンスを実現し、高電圧パルスの印加により放電を発生させて殺菌等を行う装置を空気調和機や空気清浄機等の家電製品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態1における電源装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電源装置の各部動作波形図
【図3】本発明の実施の形態1における電源装置の異なる条件下の各部動作波形図
【図4】本発明の実施の形態1における電源装置の異なる条件下の各部動作波形図
【図5】第1のスイッチング素子のオン時間と出力電圧ピーク特性図
【図6】直流電圧と出力電圧ピークの特性図
【図7】直流電圧と第1のスイッチング素子のオン時間の特性図
【図8】直流電圧と第1のスイッチング素子のオン時間の関係を直線近似した特性図
【図9】本発明の実施の形態1における制御による直流電圧と出力電圧ピークの特性図
【図10】本発明の実施の形態2における電源装置の構成図
【図11】本発明の実施の形態2における電源装置の各部動作波形図
【図12】本発明の実施の形態1における電源装置の負荷が開放した場合の各部動作波形図
【図13】本発明の実施の形態1における電源装置の負荷が短絡した場合の各部動作波形図
【図14】本発明の実施の形態1における電源装置の負荷がアーク放電した場合の各部動作波形図
【図15】本発明の実施の形態2における電源装置の異常検知の原理を示す図
【図16】本発明の実施の形態2における平滑コンデンサの容量とスイッチング回数の関係を示すグラフ
【図17】本発明の実施の形態3における電源装置の構成図
【図18】従来の電源装置の構成図
【図19】従来の電源装置の各部動作波形図
【図20】従来の電源装置の異なる構成図
【符号の説明】
【0129】
1 交流電源
2 ブリッジダイオード
3 平滑コンデンサ
4 直流電圧検出手段
5 第1の抵抗
6 ダイオード
7 第2の抵抗
8 第1のスイッチング素子
9 第1の駆動手段
10 昇圧トランス
11 負荷
12 マイクロコンピュータ
13 第2のスイッチング素子
14 第2の駆動手段
15 直流電源
16 回生用ダイオード
17 リアクタ
18 コンデンサ
19 高耐圧スイッチ
20 電流遮断手段
10a 1次巻線
10b 2次巻線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、前記交流電源を整流するブリッジダイオードと、前記ブリッジダイオードで整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動手段と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記平滑コンデンサと前記第1の抵抗と前記昇圧トランスの1次巻線と前記スイッチング素子を環状に直列に接続し、前記ダイオードのカソードを前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1の抵抗が接続された側に接続し、前記ダイオードのアノードを前記第2の抵抗の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1のスイッチング素子に接続された側に接続し、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
ブリッジダイオードと平滑コンデンサとの間に第2のスイッチング素子を接続し、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動手段とを備え、前記第2のスイッチング素子のオンにより前記平滑コンデンサが充電したときの直流電圧検出手段の出力Viと、前記第2のスイッチング素子をオフし、第1のスイッチング素子を所定の回数オン、オフ繰り返した後の前記直流電圧検出手段の出力Vrとを比較することを特徴とする、請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と予め設定された所定の電圧Voとを比較し、(Vi−Vr)が略Voのとき前記負荷が請求項1記載の電源装置に対し、開放していると判断することを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された所定の電圧Vsとを比較し、(Vi−Vr)が略Vsのとき前記負荷が短絡していると判断することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項5】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された所定の電圧Vaとを比較し、(Vi−Vr)が略Vaのとき前記負荷がアーク放電していると判断することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項6】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された所定の電圧Vnとを比較し、(Vi−Vr)が略Vnのとき前記負荷が正常な放電をしていると判断することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項7】
第1のスイッチング素子がオン、オフする所定の回数と前記平滑コンデンサの静電容量を、前記負荷が正常な放電をしているときに所定の電圧値以上となるように決定することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項8】
ブリッジダイオードと前記平滑コンデンサとの間に電流遮断手段を接続することを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の電源装置。
【請求項1】
交流電源と、前記交流電源を整流するブリッジダイオードと、前記ブリッジダイオードで整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、第1の抵抗と、昇圧トランスと、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を駆動する第1の駆動手段と、ダイオードと、第2の抵抗と、前記第1の駆動手段に駆動信号を出力するマイクロコンピュータとを備え、前記平滑コンデンサと前記第1の抵抗と前記昇圧トランスの1次巻線と前記スイッチング素子を環状に直列に接続し、前記ダイオードのカソードを前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1の抵抗が接続された側に接続し、前記ダイオードのアノードを前記第2の抵抗の一方の端子に接続し、前記第2の抵抗の他方の端子を前記昇圧トランスの1次巻線の前記第1のスイッチング素子に接続された側に接続し、前記第1のスイッチング素子のオン、オフにより、前記昇圧トランスの2次巻線に接続された負荷に出力電圧を印加し、前記直流電圧検出手段の出力は前記マイクロコンピュータに伝達され、前記マイクロコンピュータは前記電圧検出手段の出力に応じて前記第1のスイッチング素子のオン時間を制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
ブリッジダイオードと平滑コンデンサとの間に第2のスイッチング素子を接続し、前記第2のスイッチング素子を駆動する第2の駆動手段とを備え、前記第2のスイッチング素子のオンにより前記平滑コンデンサが充電したときの直流電圧検出手段の出力Viと、前記第2のスイッチング素子をオフし、第1のスイッチング素子を所定の回数オン、オフ繰り返した後の前記直流電圧検出手段の出力Vrとを比較することを特徴とする、請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と予め設定された所定の電圧Voとを比較し、(Vi−Vr)が略Voのとき前記負荷が請求項1記載の電源装置に対し、開放していると判断することを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された所定の電圧Vsとを比較し、(Vi−Vr)が略Vsのとき前記負荷が短絡していると判断することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項5】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された所定の電圧Vaとを比較し、(Vi−Vr)が略Vaのとき前記負荷がアーク放電していると判断することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項6】
直流電圧検出手段の出力ViとVrの変化量(Vi−Vr)と、予め設定された所定の電圧Vnとを比較し、(Vi−Vr)が略Vnのとき前記負荷が正常な放電をしていると判断することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項7】
第1のスイッチング素子がオン、オフする所定の回数と前記平滑コンデンサの静電容量を、前記負荷が正常な放電をしているときに所定の電圧値以上となるように決定することを特徴とする、請求項2記載の電源装置。
【請求項8】
ブリッジダイオードと前記平滑コンデンサとの間に電流遮断手段を接続することを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−94609(P2006−94609A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275310(P2004−275310)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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