説明

電源装置

【課題】 電源装置の部品に熱ストレスを与えず、電源装置の電力半導体装置の寿命を延ばす。
【解決手段】 電源部は、電力半導体装置を含む入力側整流回路4、インバータ及び出力側整流回路12を備えている。通電時間中、電源部が通電され、休止時間中、電源部が非通電とされることが繰り返され、通電時ごとにファン18が駆動され、電力半導体装置を冷却する。温度検出器30が電力半導体装置の温度を測定し、その温度を表す温度測定信号を生成する。電源部の休止時間開始時の温度測定信号と休止状態終了時の予定温度信号と休止時間とから、休止時間開始時の温度測定信号から予定温度信号まで休止時間中に減少する基準値を設定器38が生成する。誤差増幅器36とファン制御部22とが、前記基準値に温度測定信号がほぼ一致するようにファン18の回転数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に、電源装置が備える発熱部品をファンによって冷却するものに関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置には、ダイオード、トランジスタ、IGBT等の電力半導体素子が使用されている。電力半導体素子の動作時温度と非動作時温度との差が大きいときに電力半導体素子の寿命が短くなる傾向がある。電源装置は、例えば溶接機、切断機、電気メッキ等の電源装置として使用される場合、比較的短時間で、運転及び停止が繰り返されることがある。このような電源装置に使用されている電力半導体素子では、頻繁に温度差が生じ、益々電力半導体素子の寿命が短くなる。この点を改善するため、例えば特許文献1の技術が提案されている。
【0003】
この技術では、電源装置の起動スイッチがオンされたときに、ファンを駆動して、電力半導体素子を空冷して、その温度の上昇を抑制している。電源装置の起動スイッチがオフされたとき、ファンを停止させ、電力用半導体素子の温度が低下することを抑制している。これによって、電力用半導体素子の動作時と非動作時との温度差を少なくしている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−166217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電源装置の起動スイッチがオフされたときに、同時にファンを停止させると、次のような不都合がある。電源装置内では、電力半導体素子は、ヒートシンクに取り付けられていることが多い。電源装置の起動スイッチをオフしたとき、ファンも停止させると、ヒートシンクの近傍に熱溜まりができ、ヒートシンクの周辺の部品及び材料に熱ストレスを与える。これを防止するためには、電源装置の起動スイッチがオフされた後も、ファンを駆動しなければならない。これによって、電力半導体素子の温度が下がりすぎ、電力半導体素子の寿命が改善されない。
【0006】
本発明は、電源装置の部品に熱ストレスを与えることなく、電源装置の電力半導体素子の寿命を延ばすことができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電源装置は、電源部を備えている。この電源部は、電力用半導体素子を含む発熱部品を有している。電源部は、例えば交流電圧を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を高周波電圧に変換する高周波変換部と、変換された高周波電圧を変圧する変圧器と、変圧された高周波電圧を整流する整流部とを、有するものとすることができる。前記発熱部品を冷却するようにファンが設けられている。この電源装置では、通電時間にわたって前記電源部が通電される通電状態と、休止時間にわたって前記電源部が非通電とされる休止状態とが、繰り返される。通電時間は、予め定められた時間とすることができ、休止時間も、予め定められた時間とすることができる。通電時間と休止時間とは同一の時間とすることもできるし、異なる時間とすることもできる。この繰り返しは、一定周期で行われるものとすることもできる。前記通電状態において前記ファンが駆動され、電力半導体素子が冷却される。このファンの駆動は、そのファンの定格回転数で回転させることや或いは、定格回転数よりも低い回転数で回転させることができる。前記発熱部品の温度を測定し、その温度を表す温度測定信号を温度測定手段が生成する。前記休止状態の開始時点の前記温度測定信号と、前記休止状態の終了時の予定温度信号と、前記休止時間とに基づいて、前記休止状態開始時の温度測定信号から前記予定温度信号まで前記休止時間の間に減少する基準値を基準値生成手段が生成する。前記基準値に前記温度測定信号がほぼ一致するように前記ファンの回転数を制御手段が制御する。
【0008】
このように構成された電源装置では、休止時間の開始時点での電力半導体素子の温度を、休止時間の終了時点において予定温度に低下させるように、休止時間中、ファンの回転数が制御される。従って、休止時間の終了時点において電力半導体素子の温度を予定温度とすることができる。予定温度を適切に設定することによって、電力半導体素子の動作時の温度と非動作時の温度との差を小さくして、電力半導体素子の寿命を延ばすことが可能な上に、休止時間中、継続してファンが回転しているので、熱が滞留せず、所謂熱溜まりが発生せず、電力半導体素子の周囲の部品に熱ストレスを与えないようにすることもできる。
【0009】
前記ファンは、前記通電状態の間、定格回転数または定格回転数よりも低い回転数で回転させることができる。定格回転数よりも低い回転数で回転させる場合、半導体素子の温度が予定温度に到達すると、それ以上の上昇を防止するため、回転数を制御することが望ましい。
【0010】
前記電力半導体素子の周囲に前記電源装置の部品が配置され、前記予定温度信号が表す温度は、前記部品が熱ストレスに耐えることができる温度とすることができる。なお、電力半導体素子は、ヒートシンクに取り付けることができ、その周囲に前記部品を配置することもできる。このように構成すると、電力半導体素子の動作時の温度と非動作時の温度との差を小さくして、電力半導体素子の寿命を延ばすことが可能な上に、電力半導体素子の周囲の部品に熱ストレスを与えることがない。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、電力半導体素子の周辺の部品に熱ストレスを与えることなく、電源装置の電力半導体素子の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1実施形態の電源装置は、例えばアーク溶接機用の電源装置である。この電源装置は、図1に示すように、商用交流電源が供給される電源端子2a、2bを有している。この電源端子2a、2bに供給された商用交流電圧は、整流手段、例えば入力側整流回路4に供給され、ここで整流される。入力側整流回路4は、複数の電力半導体素子、例えば整流ダイオードを含み、これらによって整流ブリッジ回路が構成されている。整流された電圧は、入力側整流回路4の出力側に設けた平滑手段、例えば平滑コンデンサ6によって平滑されて、直流電圧に変換される。この直流電圧は、直流−高周波変換手段、例えばインバータ8によって、高周波電圧に変換される。インバータ8は、電力半導体素子、例えばIGBTからなるブリッジ回路に構成されている。このインバータ8の高周波電圧は、変成器、例えば絶縁トランス10によって所定の値の高周波電圧に変換される。この変換された高周波電圧は、高周波−直流変換手段、例えば出力側整流回路12によって整流され、整流された電圧が出力端子14a、14bから負荷(図示せず)に供給される。出力側整流回路12も、電力半導体素子、例えば整流ダイオードを備えている。なお、出力側整流回路12の出力側には、平滑手段(図示せず)が設けられているが、本願発明の要旨とは無関係であるので、説明を省略する。これら入力側整流回路4、平滑コンデンサ6、インバータ8、変圧器10及び出力側整流回路12によって、電源部が構成されている。この電源部は、筐体16内に配置されている。
【0013】
入力側整流回路4の整流ダイオード、インバータ8のIGBT及び出力側整流回路12の整流ダイオードは、放熱体、例えばヒートシンク(図示せず)に取り付けられている。これら整流ダイオード及びIGBT8が発生する熱は、ヒートシンクから放射されている。このヒートシンクを空冷して、上述したIGBT等を冷却するために、ファン18が筐体16内に設置されている。ヒートシンクの周囲には、この電源装置で使用する他の部品やリード線等が配置されている。これら部品やリード線の配置位置は、ヒートシンクの近傍であるので、ファン18が駆動されていない場合、空気の流れが悪く、いわゆる熱溜まりを発生しやすい。
【0014】
ファン18は、ファン駆動部20によって駆動される。ファン駆動部20は、電源端子2a、2bから受けた商用交流電源を用いて、ファン18を駆動する。ファン制御部22によってファン18の回転数が制御される。ファン制御部22及び以後に説明する回路は、例えばCPUによって構成されているが、説明の便宜上、CPUが達成する機能ごとのブロックに基づいて説明する。
【0015】
ファン制御部22は、外部から定格回転指示が与えられているとき、ファン18を定格回転数で回転させるようにファン駆動部20に指示を与える。上述した電源部に定格負荷が接続されて通電している状態において、ファン18を定格回転させたときに、各電力半導体素子の温度が所定温度、例えば各電力半導体素子を正常に動作させることができる最高温度である温度、例えば摂氏90度になるように設計されている。
【0016】
ファン制御部22は、外部から制御回転指示が与えられた場合、ファン駆動部20にファン制御信号を与える。ファン18は、前記制御信号の大きさに応じた回転数で回転する。
【0017】
定格回転指示は、論理手段、例えばアンドゲート24からファン制御部22に与えられる。制御回転指示は、論理手段、例えばアンドゲート26からファン制御部22に与えられる。定格回転指示は、上述した電源部に通電されている通電状態においてファン制御部22に与えられ、制御回転指示は、電源部に通電されていない休止状態においてファン制御部22に与えられる。
【0018】
この電源装置は、上述したように溶接機用電源装置である。従って、その使用率が定められている。その使用率に従って、上記通電状態の時間である通電時間と、上記休止状態の時間である休止時間とが設定されている。通電時間と休止時間とを1サイクルとして、通電及び休止が、この電源装置において繰り返される。通電時間及び休止時間は、この実施形態では共に15分である。各サイクルの通電時間に、アンドゲート24から定格回転指示をファン制御部22に与えることを可能にするため、タイマ手段、例えば通電/休止タイマ28から、一定の周期ごとに通電時間中アンドゲート24に第1状態信号、例えばHレベルの通電状態指示信号が供給される。同様に、各サイクルの休止時間中、アンドゲート26から制御回転指示をファン制御部22に与えることを可能にするため、通電/休止タイマ28から、一定の周期ごとに休止時間中アンドゲート26に第1状態信号、例えばHレベルの休止状態指示信号が供給される。なお、通電時間中、アンドゲート26には第2状態信号、例えばLレベルの通電状態指示信号が供給され、休止時間中、アンドゲート24には第2状態信号、例えばLレベルの休止状態指示信号が供給される。
【0019】
また、電源端子2a、2bと入力側整流回路4との間には図示していない開閉スイッチが設けられている。この開閉スイッチには通電状態指示信号が供給されている。この通電状態指示信号がHレベルの期間にわたって開閉スイッチが閉成され、電源部が通電される。また、通常状態指示信号がLレベルの期間にわたって開閉スイッチが開放され、電源部が休止状態とされる。
【0020】
通電時間においてIGBT等の温度が予め定めた温度、例えば許容温度以上になったときに、ファン18を定格回転させるために、温度測定手段、例えば温度検出器30からの温度測定信号、例えば温度検出信号と、許容温度設定器32からの許容温度信号とが比較器34によって比較され、温度検出信号が許容温度信号以上になったとき、比較器34が第1の状態、例えばHレベルの信号を発生する。これがアンドゲート24に供給され、アンドゲート24が定格回転指令をファン制御部22に供給する。
【0021】
温度検出器30は、IGBT等の温度を測定するために、例えばヒートシンクに取り付けられ、測定した温度を表す温度検出信号を発生している。温度検出器30の設置位置は、ヒートシンクに限るものではない。許容温度は、例えばヒートシンクの周囲にある部品や配線が熱ストレスの関係から、晒されても許容できる温度で、例えば摂氏70度である。許容温度信号は、この許容温度に対応する。
【0022】
同様に、休止時間中であって、IGBT等の温度が上記許容温度以上のときに、制御された回転数でファン18を回転させるために、比較器34のHレベルの信号がアンドゲート26に供給され、制御回転指令がファン制御部22に供給される。
【0023】
休止時間中にファン18を制御回転、特に最適制御回転させるため、ファン制御部22には、誤差増幅器36から誤差信号が供給され、この誤差信号がほぼ零になるようにファン制御部22はファン駆動部20にファン制御指示を供給する。そのため、誤差増幅器36には、温度検出器30の温度検出信号が供給され、設定器38から基準信号が供給されている。誤差増幅器36は、温度検出信号と基準信号との差を表す誤差信号を出力する。
【0024】
この設定器38は、休止時間の開始時から休止時間の終了時まで基準信号を誤差増幅器に供給する。この基準信号を出力するために、設定器38には、最高温度記憶部40からの最高温度信号が供給されている。最高温度記憶部40には、温度検出器30の温度信号が供給されており、そのうちの最大値を保持している。この最大値は、後述する理由により、通電時間の終了時点の温度を表す最高温度信号である。また、設定器38には、許容温度設定器32からの許容温度信号も供給されている。さらに、設定器38には、通電/休止タイマ28から休止時間を表す信号も供給されている。設定器38は、これら最高温度信号、許容温度信号及び休止時間信号に基づいて、休止時間の開始時点では最高温度信号であり、休止時間の終了時点では許容温度信号であるように漸減する基準信号を休止時間の開始時点から終了時点まで発生する。
【0025】
例えば基準信号を線形に変化させる場合、最高温度信号をt1、許容温度信号をt2、休止時間をT、休止時間の開始時点からの経過時間をtとすると、図2に示すように、(t2−t1)/T*t+t1の演算を設定器38は行って基準信号を発生する。なお、基準信号を二次方程式で表す場合、(t2−t1)/T*t+t1の演算を設定器38が行って基準信号を発生する。上記以外の関数、例えばネイピア数eを底とする指数関数eを用いて、この基準信号を発生することもできる。
【0026】
休止時間中には、この基準信号と温度検出信号との誤差Δが誤差増幅器36によって順次生成されてファン制御部22に供給される。これによってファン制御部22がファン駆動部20に回転制御指示を与え、ファン駆動部20はファン18の回転数を制御する。この結果、図2に温度検出信号の変化で示すように、ヒートシンクの温度が基準信号にほぼ沿って低下し、休止時間の終了時点では、許容温度にほぼ等しくなる。
【0027】
このように構成された電源装置は、次のように動作する。例えば出力端子14a、14bに接続される負荷が定格負荷であり、ヒートシンクの温度が許容温度よりも低い、例えば摂氏30度であるとする。図3(b)に示すように時刻T0において、通電/休止タイマ28がHレベルの信号をアンドゲート24に供給する。このとき、図示しない切換回路によって入力側整流回路4に商用交流電圧が供給され、電源部への通電が開始される。これによって、図3(a)に示すようにヒートシンクの温度が摂氏30度から上昇する。この温度が時刻T1に摂氏70度を超えると、比較器34がHレベルの信号をアンドゲート24に供給する。これによって、ファン制御部22には定格回転指示が与えられ、図3(c)に示すようにファン駆動部20によってファン18が駆動される。このとき図3(d)に示すようにファン駆動部20がファン18を駆動するレベルは定格回転のレベルで一定であり、ファン18は定格回転数で回転する。これによって、ヒートシンクの温度は摂氏70度から設計温度である摂氏90度までは上昇するが、それよりも高くはならず、摂氏90度を維持する。
【0028】
通電時間が終了し、休止時間が開始される時刻T2では、アンドゲート24の通電状態指示信号がLレベルとなり、定格回転指示が消失する。一方、Hレベルの休止状態指示信号と、比較器34からHレベルの信号とが、アンドゲート26に供給され、アンドゲート26から制御回転指令がファン制御部22に供給される。このとき、最高温度記憶部40は、図3(a)から明らかなように、ヒートシンクの最高温度である休止時間の開始時点(通電時間の終了時点)のヒートシンクの温度である摂氏90度に対応する最高温度信号を記憶している。この最高温度信号と、摂氏70度に対応する許容温度信号と、通電/休止タイマ28からの休止時間を表す信号とが設定器38に供給され、上述したようにして発生された基準信号が誤差増幅器36に供給される。その結果、ファン18の回転数は制御され、ヒートシンクの温度は、最高温度から許容温度まで休止時間の間に徐々に低下していく。なお、図3(d)では、休止時間における駆動レベルが通電時間における駆動レベルよりも小さいことのみを表すために休止時間における駆動レベルを直線状に表してあるが、実際には変動する。
【0029】
この場合、休止時間の開始時点と休止時間の終了時点との温度差は、摂氏約20度である。通電時間と休止時間とが繰り返されることによって、摂氏約20度の温度差ΔTが繰り返し生じる。しかし、この温度差であればIGBT等の電力半導体素子の寿命を短くすることはない。しかも、休止時間の終了時点での温度は、ヒートシンクの周囲にある部品や配線等の熱ストレスの関係から許容することができる温度とされている。従って、ヒートシンクの周囲の部品や配線が熱ストレスを受けることがない。さらに、休止時間中継続してファン18が駆動されているので、ヒートシンクの周辺に熱溜まりが生じない。従って、ヒートシンクの周囲の部品や配線が熱ストレスを受けることが確実に阻止される。
【0030】
出力端子14a、14bに接続される負荷が定格負荷よりも小さい低負荷の場合には、図4(a)に示すように、設計温度である摂氏90度に検出温度の最高温度は到達せず、その最高温度を通電時間中に維持し、休止時間中には、その最高温度から許容温度まで休止時間の全てをかけて低下する。その結果、通電時間と休止時間との温度差は定格負荷の場合よりも小さくなり、IGBT等の電力半導体素子の寿命を短くすることはない。休止時間中継続してファン18が駆動されているので、熱溜まりが生じず、ヒートシンクの周囲の部品や配線が熱ストレスを受けることが確実に阻止される。
【0031】
出力端子14a、14bに接続される負荷が低負荷よりも更に小さい軽負荷の場合には、図5(a)に示すように最高温度は低負荷の場合の最高温度より低い。そのため、通電時間の最終時点と休止時間の最終時点との温度差は、低負荷の場合よりも更に小さくなり、寿命の点で有利である。また、休止時間中継続してファン18が駆動されているので、熱溜まりが生じず、ヒートシンクの周囲の部品や配線が熱ストレスを受けることが確実に阻止される。
【0032】
図6(a)乃至(d)は、IGBT等の温度が許容温度以上の場合にのみファンを定格回転するように構成した電源装置において負荷が定格負荷の場合の各部の動作を表したものである。この電源装置では、通電時間中のIGBT等の温度が摂氏70度の許容温度以上になったときからファンの定格回転が開始される。このとき、IGBT等の最高温度は設計温度の摂氏90度である。同図(b)に示すように通電が終了して休止時間に入ると、IGBT等の発熱がなくなる。この状態でのファンの定格回転によって設計温度から急速にIGBT等の温度が許容温度まで低下する。これによって、同図(c)に示すようにファンの定格回転が停止される。残りの休止時間中、IGBT等は自然冷却される。その結果、同図(a)に示すように許容温度よりもIGBT等の温度は低下し、休止時間の開始時と終了時とのIGBT等の温度差は、摂氏20数度となる。従って、IGBT等の高寿命化の点から望ましくない。
【0033】
図7(a)乃至図7(d)は、通電時間においてIGBT等の温度が許容温度以上になったときからファンが定格回転され、休止時間にはいると一定の低速回転数で許容温度までファンが回転させられる電源装置において負荷が定格負荷の場合の各部の動作を示している。同図(b)に示すように通電時間には電源部に通電が行われ、休止時間中には電源部への通電は行われていない。同図(c)に示すようにIGBT等の温度が許容温度以上になったときからファンが継続して回転させられる。同図(a)に示すようにファンの定格回転は休止時間の開始時点で終了し、その後、IGBT等の温度が許容温度に低下するまでファンの低速回転が行われている。ファンの駆動レベルは、同図(d)に示すように通電時間中のファンの運転時と、休止時間中のファンの運転時とで異なっている。この場合も、休止時間の途中でIGBT等の温度が許容温度に達し、残りの休止時間中、IGBT等は自然冷却される。その結果、同図(a)に示すように休止時間の開始時と終了時とのIGBT等の温度差は、摂氏20数度となり、IGBT等の高寿命化の点から望ましくない。
【0034】
図8(a)乃至図8(d)はIGBT等の温度が許容温度以上の場合にのみファンを定格回転する電源装置において負荷が低負荷の場合の各部の動作を示している。同図(a)に示すように、通電時間中のIGBT等の温度が許容温度以上になったときからファンの定格回転が開始される。この場合、低負荷であるので、IGBT等の温度は設計温度まで上昇することはない。同図(b)に示すように通電時間が終了して休止時間に入ると、IGBT等の発熱がなくなる。この状態でのファンの定格回転によって急速にIGBT等の温度が許容温度まで低下する。このとき、同図(c)に示すようにファンの定格回転が停止される。残りの休止時間中、IGBT等は自然冷却される。その結果、同図(a)に示すように休止時間の終了時点で許容温度よりもIGBT等の温度は幾分低下し、休止時間の開始時と終了時とのIGBT等の温度差は小さい。
【0035】
図9(a)乃至(d)は、通電時間中においてIGBT等の温度が許容温度以上となるとファンが低速回転し、IGBT等の温度が許容温度よりも低下するとファンを停止させる電源装置において、負荷が低負荷の場合の電源装置の各部の動作を示している。同図(a)に示すように通電時間中の検出温度が許容温度以上になったときからファンの低速回転が開始される。その結果、低負荷であっても、IGBT等の温度は設計温度にまで上昇する可能性がある。その場合、ファン18の回転を制御することにより、その設計温度を通電時間の終了時点まで維持する。従って、最高温度は設計温度である。同図(b)に示すように通電時間が終了して休止時間に入り、IGBT等の発熱がなくなる。この状態でのファンの低速回転によってIGBT等の温度が許容温度まで低下したとき、同図(c)に示すようにファンの低速回転が停止される。但し、許容温度に低下するまでに要する時間は、低負荷でファンを定格回転させた場合よりも長くなる。残りの休止時間中、IGBT等は自然冷却される。その結果、同図(a)に示すように許容温度よりもIGBT等の温度は低下し、休止時間の開始時と終了時とのIGBT等の温度差は、低負荷でファンを定格回転する場合よりも大きくなる。
【0036】
図10(a)乃至(d)は、通電時間中のIGBT等の温度が許容温度以上になると、ファンが定格回転し、IGBT等の温度が許容温度以下になるとファンを停止させる電源装置において、負荷が低負荷よりもさらに小さい軽負荷の各部の動作を示したものである。同図(a)に示すようにIGBT等の温度が許容温度に到達すると、ファンが定格回転する。しかし、軽負荷であるので比較的短時間でIGBT等の温度が許容温度以下になり、ファンが停止する。再び、IGBT等の温度が許容温度以上となり、ファンが定格回転し、すぐにIGBT等の温度が許容温度以下に低下する。このような動作を通電時間中、繰り返す。休止時間になると、IGBT等の温度は許容温度以下であるので、ファンは同図(c)、(d)に示すように停止したままである。従って、IGBT等の休止時間の開始時点と終了時点との温度差は自然冷却のみによって生じている。なお、この例よりもさらに小さい負荷の場合には、通電時間中にIGBT等の温度が許容温度以上に上昇することはなく、ファンは全く回転しない。その場合休止時間の開始時点と終了時点とのIGBT等の温度差は、自然冷却のみによって生じる小さな値になる。
【0037】
図11は、本発明の第2の実施形態の電源装置のブロック図を表し、図12(a)乃至(d)は、その場合の各部の動作を表したものである。この電源装置はファン18の回転数が制御される点で第1の実施形態の電源装置と異なる。第1の実施形態の電源装置と同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
温度検出器30の温度信号は、誤差増幅器42にも供給されている。この誤差増幅器42には通電時間許容温度設定器44から通電時間における許容温度を表す通電時間最高温度信号も供給されている。この誤差増幅器44は、通電/休止タイマ28からHレベルの通電状態指示信号が供給されているとき、温度信号と通電時間最高温度信号との誤差信号を算出し、半導体素子の温度が通電時間最高温度以下になるようにファン制御部22に制御信号を供給し、ファン18の回転数を制御する。
【0039】
この場合、図12(b)に示すように通電時間が開始され、同図(a)に示すように検出温度が許容温度まで上昇すると、ファン18が定格回転数よりも低い回転数で低速回転する。ファンが低速回転であるので、低負荷であっても、検出温度は設計温度まで上昇する可能性があり、その場合、ファン18の回転数が誤差増幅器42の制御信号によって制御され、半導体素子の温度を設計温度に通電時間の終了時点まで維持する。従って、最高温度は設計温度である。休止時間の開始時点から上述した第1の実施形態と同様にファンが最適制御回転するので、休止時間の終了時点では検出温度は許容温度となる。従って、定格負荷でファンを定格回転した第1の実施形態の場合と同様になり、負荷が小さい場合には、ファンを定格回転する必要はない。
【0040】
上記の実施形態では、電源装置を溶接機用としたが、これに限ったものではなく、通電と休止とが繰り返される、例えば一定周期で繰り返される機器用の電源装置、例えばアーク切断機用電源装置等にも使用することができる。上記の実施の形態では、ファン制御部22、設定器38、最高温度記憶部40、比較器34、通電/休止タイマ28、アンドゲート24、26、誤差増幅器36、42等は、CPUによって構成するとしたが、これらの全部または一部をアナログ回路によって構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態の電源装置のブロック図である。
【図2】図1の電源装置の設定器が発生する基準信号の説明図である。
【図3】図1の電源装置に定格負荷が接続されている状態での電源装置の各部の動作状態を示す図である。
【図4】図1の電源装置に低負荷が接続されている状態での電源装置の各部の動作状態を示す図である。
【図5】図1の電源装置に軽負荷が接続されている状態での電源装置の各部の動作状態を示す図である。
【図6】IGBT等の温度が許容温度以上の場合にのみファンを定格回転するように構成した電源装置において負荷が定格負荷の場合の各部の動作を示す図である。
【図7】通電時間においてIGBT等の温度が許容温度以上になったときからファンが定格回転され、休止時間にはいると低速回転数で許容温度までファンが回転させられる電源装置において負荷が定格負荷の場合の各部の動作を示す図である。
【図8】IGBT等の温度が許容温度以上の場合にのみファンを定格回転する電源装置において負荷が低負荷の場合の各部の動作を示す図である。
【図9】通電時間中においてIGBT等の温度が許容温度以上となるとファンが低速回転し、IGBT等の温度が許容温度よりも低下するとファンを停止させる電源装置において、負荷が低負荷の場合の電源装置の各部の動作を示す図である。
【図10】通電時間中のIGBT等の温度が許容温度以上になると、ファンが定格回転し、IGBT等の温度が許容温度以下になるとファンを停止させる電源装置において、負荷が低負荷よりもさらに小さい軽負荷の各部の動作を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態の電源装置のブロック図である。
【図12】図11の電源装置に小さい負荷が接続されている状態での電源装置の各部の動作状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
4 入力側整流回路(電源部)
8 インバータ(電源部)
10 絶縁変圧器
12 出力側整流回路
18 ファン
22 ファン制御部(制御手段)
30 温度検出器(温度測定手段)
36 誤差増幅器(制御手段)
38 設定器(基準値生成手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用半導体素子を含む発熱部品を有する電源部と、
前記発熱部品を冷却するファンとを、
具備し、予め定められた通電時間にわたって前記電源部が通電される通電状態と、予め定められた休止時間にわたって前記電源部が非通電とされる休止状態とが、繰り返され、前記通電状態において前記ファンが駆動される電源装置において、
前記発熱部品の温度を測定し、その温度を表す温度測定信号を生成する温度測定手段と、
前記休止状態の開始時点の前記温度測定信号と、前記休止状態の終了時の予定温度信号と、前記休止時間とに基づいて、前記休止状態開始時の温度測定信号から前記予定温度信号まで前記休止時間の間に減少する基準値を生成する基準値生成手段と、
前記基準値に前記温度測定信号がほぼ一致するように前記ファンの回転数を制御する制御手段とを、
具備する電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、前記ファンは、前記通電状態の間、定格回転数またはそれよりも低い回転数で回転させられる電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の電源装置において、前記電力半導体素子の周囲に前記電源装置の部品が配置され、前記予定温度信号は、前記部品が熱ストレスを許容できる温度を表す信号である電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−236133(P2007−236133A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56205(P2006−56205)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】