説明

電源装置

【課題】出力電力にノイズが重畳するのを抑制できる電源装置を提供することである。
【解決手段】少なくとも半導体素子Q1,Q2(第1半導体素子)を配置するプリント基板12(基板)と、プリント基板12を収容するとともに冷却を行うための冷却部14を備えるケース11とを有する電源装置10において、ケース11は冷却部14側から整流素子15(第2半導体素子)、トランス16、フィルタ部17の順番で直列状に配置される直列状配置部品群を有する構成とした。この構成によれば、ケース11内でノイズ発生源からできるだけ離れた位置にフィルタ部17を配置することで、ノイズが出力電力に重畳するのを抑制できる。半導体素子Q1,Q2や整流素子15を冷却部14に直接的/間接的に接触させたり、冷却部14の近傍に配置して効率よく冷却を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却部を備えたケース内に基板を有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、小型化が図られた水冷方式のスイッチング電源の提供を目的とするスイッチング電源に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。このスイッチング電源は、内部を冷媒が流通する冷媒流路(水路38)が形成された台座部(30)上にスイッチング素子(16a)および整流素子(ダイオード20a)の少なくとも一方を搭載し、メイントランス(18)を台座部(30)付近に搭載し、チョークコイル(22A)を台座部(30)以外の残余領域に搭載する(特許文献1の図6を参照)。これらの要素のうちで平滑回路を構成するチョークコイル(22A)は、半導体素子であるスイッチング素子(16a)や整流素子(ダイオード20a)に近接して配置されている(特許文献1の図1および図6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3730968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を適用する場合において、特にスイッチング素子(16a)とチョークコイル(22A)とが近接しているので、出力電圧にノイズが重畳して出力され易いという問題がある。すなわち、スイッチング素子(16a)の作動に伴って発生するノイズがチョークコイル(22A)に伝播し、出力電圧にノイズが重畳し易いためである。
【0005】
また、台座部(30)の内部に形成される冷媒流路(水路38)は、台座部(30)の裏側に立設された流路側壁(フィン34)と、開口部を閉蓋するカバープレート(36)とで構成され、しかもスイッチング電源全体の半分程度を台座部(30)が占める。そのため、スイッチング電源全体の体格が大きくならざるを得ないという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、第1の目的は、出力電圧にノイズが重畳するのを抑制できる電源装置を提供することを目的とすることである。第2の目的は、装置全体の体格を小さく抑える電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、少なくとも第1半導体素子を配置する基板と、前記基板を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースとを有する電源装置において、前記ケースは、前記冷却部側から第2半導体素子、トランス、フィルタ部の順番で直列状に配置される直列状配置部品群を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、フィルタ部は、第2半導体素子との間にトランスを介在させることで配置距離を確保し、第2半導体素子だけでなく第1半導体素子の作動に伴って発生するノイズが重畳するのを抑制することができる。すなわち、ケース内でノイズ発生源からできるだけ離れた位置にフィルタ部を配置することでノイズの影響を抑制する原理である。また、第1半導体素子や第2半導体素子を冷却部に直接的または間接的に接触させたり、あるいは冷却部の近傍に配置することで効率よく冷却を行うことができる。
【0009】
なお「第1半導体素子」と「第2半導体素子」とは、同種の半導体素子である場合と、異種の半導体素子である場合とがある。これらの半導体素子は、半導体による電子部品または電子部品の根幹である機能中心部の素子であれば任意である。例えば、スイッチング素子(FET,IGBT,GTO,パワートランジスタ等を含む)、整流素子(整流回路や整流器等を含む)などが該当する。「ケース」は基板や冷却部など収容可能であれば任意である。例えば、単体のケースでもよく、仕切部(例えば仕切壁や仕切面など)によって複数の空間が形成されるブロック体にかかる一の空間からなるケースでもよい。「基板」は、少なくとも半導体素子を実装可能な板状部材であれば任意であり、層数(単層や多層等)を問わない。「冷却部」には、実装品を冷却可能であれば任意の装置や部品等を適用できる。例えば、冷媒(空気,水,油などの流体)が流れる通路を有する部位・部品・装置等、冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。「接続線」には、例えばプリント基板上の配線(いわゆる配線パターン)や電線などが該当する。電線には、例えばケーブルやコード等を用いるが、ノイズによる影響を抑制または防止するためシールド線を用いるのが望ましい。「フィルタ部」は出力電力の交流成分を低減したり除去したりする機能を有すれば任意であり、パッシブフィルタ(例えばLC回路,RLC回路,RC回路等)やアクティブフィルタ等の種類を問わない。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記基板には、発熱性の高い主回路実装品と、発熱性の低い制御回路実装品とが実装され、前記主回路実装品は、前記冷却部の近傍に配置することを特徴とする。この構成によれば、発熱性の高い実装品は冷却部の近傍に配置されるので、発熱性の高い実装品の冷却効果を高めることができる。なお「主回路実装品」には、例えば入力側(1次側)回路に組み込まれるコンデンサやコイル(チョークコイルを含む)などが該当する。「制御回路実装品」には、例えばICや表面実装品などが該当する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記基板は、前記ケース内で前記直列状配置部品群と並列状に配置され、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のうちで一方または双方は、前記冷却部に直接的または間接的に接触して配置されるか、または、前記冷却部の近傍に配置されることを特徴とする。この構成によれば、基板と直列状配置部品群とは並列状に配置される。また、第1半導体素子や第2半導体素子は、冷却部に直接的または間接的に接触して配置されるか、冷却部の近傍(冷却効果が得られる範囲内)に配置される。言い換えれば、第1半導体素子や第2半導体素子をケース内の一辺側に並ぶように配置する。これらの配置によって、フィルタ部はノイズ(第1半導体素子や第2半導体素子等の半導体素子によるノイズであるか否かを問わない)が出力電力に重畳するのを抑制できる。また、第2半導体素子を積極的に冷却するので、安定して作動させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ケースは、長辺部と短辺部とを有し、前記第2半導体素子は、前記短辺部側に配置されることを特徴とする。この構成によれば、第2半導体素子が配置される短辺部側のケースに冷却部を備える。特許文献1の技術では全体の半分程度を占める台座部に対して、ケースを占める冷却部の占有率を大幅に小さくできるので、ケース(ひいては電源装置)自体の体格を小さく抑えることができる。「長辺部」は長辺状の部位(壁や面等)を示し、「短辺部」は短辺状の部位(壁や面等)を示す。尚、他の構造上の制約により長辺部側に冷却部が配置される場合もあるため、本請求項以外の発明に関して、本請求項により短辺部に設けることを制限するものではない。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記トランスの2次側端子は、前記直列状配置部品群に沿う方向に引き出され、前記フィルタ部と電気的に接続されることを特徴とする。この構成によれば、直列状配置部品群に沿う方向でトランスの2次側端子とフィルタ部とが電気的に接続されるので、配線距離を最小限に抑えられる。よって、配線による電力損失を低下させることができ、ケース(ひいては電源装置)自体の体格も小さく抑えられる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記トランスに構成されるコアの巻線窓面は、前記直列状配置部品群に沿う方向と交差する方向に備えることを特徴とする。「コアの巻線窓面」は、コアに巻線を収容する部位(巻線収容部)の一部であって、コアから巻線が露出する開口面を意味する。トランスの巻線(コイル)に流れる電流によってコアに磁束が発生し、発生した磁束の一部が巻線窓面から漏れ、フィルタ部や配線を通じて漏れ磁束によるノイズが出力電力に重畳する可能性がある。この構成によれば、コアの巻線窓面を直列状配置部品群に沿う方向とは異なる方向に備えるので、漏れ磁束によるノイズが出力電力に重畳するのを抑制することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記フィルタ部の一部または全部をシールドするシールド部を有し、前記シールド部は、前記トランスと前記フィルタ部との間、および、前記基板と前記フィルタ部との間のうちで一方または双方に配置されることを特徴とする。この構成によれば、シールド部はノイズの影響を低減または遮断するので、当該ノイズが出力電力に重畳するのをさらに確実に抑制することができる。「ノイズ」は、例えば半導体素子のスイッチングによる放射ノイズや、トランスの漏れ磁束等による電界や磁気等を起因とするノイズなどが挙げられる。「シールド部」は、ノイズの影響を低減または遮断できる電磁シールドであれば形状,厚み,材料(素材)等は任意である。例えば、金属板(板金を含む),金属メッシュ等が該当する。また、所定形状(例えば板状や筐体状等)に成形された樹脂部材の表面や裏面に金属インクまたは同様の物質でメッキしたものでもよい。なお、フィルタ部との電気的な接続を行う接続線を通すため、シールド部の一部に貫通穴をあける場合、当該貫通穴や接続線との隙間も同様にシールドするのが望ましい。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記ケースの一部は、前記シールド部の一部を構成することを特徴とする。この構成によれば、ケースの一部(壁部や床部等)をシールド部と一体構成とすることにより、フィルタ部を取り囲む空間全体をノイズから保護することができる。シールド部は半導体素子や漏れ磁束等によるノイズの影響をさらに低減または遮断するので、ノイズが出力電力に重畳するのをより確実に抑制することができる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記直列状配置部品群の一つである前記第2半導体素子は、前記トランスの2次側に電気的に接続される整流素子であることを特徴とする。この構成によれば、整流素子は冷却部によって冷却されるので、整流作用を安定して確実に行うことができる。また、整流素子の作動に伴ってノイズが発生しても、フィルタ部は離れた位置に配置されるので当該ノイズが出力電力に重畳するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電源装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】電源装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図3】ケースに収容される要素の一例を模式的に示す平面図である。
【図4】トランスの第1構成例を示す斜視図である。
【図5】第1コア部の構成例を示す斜視図および側面図である。
【図6】第2コア部の構成例を示す斜視図および側面図である。
【図7】インサートバスバーの構成例を示す三面図である。
【図8】電源装置の回路構成例を模式的に示す回路図である。
【図9】トランスの第2構成例を示す斜視図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。連続符号は記号「〜」を用いて表記する。例えば「接続端子T1〜T6」は、「接続端子T1,T2,T3,T4,T5,T6」を意味する。「ノイズ」には、第1半導体素子や第2半導体素子等の作動に伴うノイズに限らず、外来ノイズを含む。
【0020】
まず、電源装置の構成例について図1〜図3を参照しながら説明する。図1には電源装置の構成例を模式的に分解斜視図で示す。図2には電源装置の構成例を平面図で示す。図3にはケースに収容される要素の一例を模式的に平面図で示す。
【0021】
図1に示す電源装置10は、いわゆる「DC−DCコンバータ」であって、電力源(例えばバッテリや燃料電池等)から供給される直流電圧を目的の電圧に変換して出力する機能を担う。この電源装置10は、大別してケース11、プリント基板12、図示しない収容部品などを有する。「収容部品」は、ケース11内に収容される部品等であって、プリント基板12上には配置されない素子や部品等を意味する。なお図1では、見易くするために、後述する直列状配置部品群(すなわち整流素子,トランス,フィルタ部等)や、インサートバスバーなどの収容部品の図示を省略する(図2,図3,図7を参照)。
【0022】
ケース11は、ケース蓋11aとケース本体11bとで構成される。ケース本体11bは、一面を開口させた箱状筐体である。図1の例では簡単のために直方体状の形成例を示すが、プリント基板12や収容部品などを収容可能であれば、形成する形状は任意である。ケース蓋11aは、ケース本体11bの開口部を覆う蓋である。本形態のケース11は金属で形成するが、一部または全部について使用環境条件(例えば温度,電磁シールド,剛性等)を満たす他の材料(例えば樹脂等)で形成してもよい。
【0023】
プリント基板12は、実装表面12aおよび実装裏面12bの両面でプリント配線がなされ、実装品を配置して実装する基板である。実装品は、素子(例えば半導体素子や回路素子等を含む)や部品(例えば接続線,台座,端子台等を含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。
【0024】
図1に示す台座13や冷却部14は、ケース11の内部(特にケース本体11b)に備えられる。複数の台座13および冷却部14のうちで一方または双方は、ケース本体11bと一体形成してもよく、別体形成した上で固定手段(例えばネジ止めや接着剤等による接着など)によって固定してもよい。複数の台座13は、プリント基板12をケース11内に収容するにあたって、ケース本体11bに固定するために用いる。
【0025】
冷却部14は、半導体素子群Qg、実装品、収容部品等を冷却する機能を担う。本形態の冷却部14は、ケース11の短辺部11S(特に対向面11f側の隅部)に備えられ、冷媒(例えば水,空気,油等)を通すための冷媒通路14cを内部に有する(図1,図2を参照)。冷却部14には、冷媒を流すための入出口となる接続部14a,14bを有する。接続部14a,14bにはホース等の接続部材で物理的に接続し、冷却部14と図示しない冷却装置(例えばラジエータ等)との間で冷媒が流れるように構成される。このように冷媒を介して冷却を確実に行うため、冷却部14は熱伝導率が高い材料で形成するのが望ましい。
【0026】
プリント基板12や直列状配置部品群などを収容した後の電源装置10を図2,図3に示す。具体的には、図2はケース蓋11aで覆わない状態を示す。図3はプリント基板12や直列状配置部品群にかかる配置例を示す。
【0027】
図2や図3に示すように、ケース11内にはプリント基板12とともに直列状配置部品群(すなわち整流素子15,トランス16,フィルタ部17等)が配置される。整流素子15は「第2半導体素子」に相当し、例えば整流回路や整流器などが該当する。フィルタ部17は、出力電力(特に出力電圧。以下同じである。)の交流成分を低減したり除去したりする機能を有すれば任意であり、パッシブフィルタ(LC回路,RLC回路,RC回路等)やアクティブフィルタ等の種類を問わない。本形態では、フィルタ部17をLC回路で構成する(図8を参照)。直列状配置部品群の回路素子は、実装表面12aと対向面11fとの間に形成される空間(図1,図3を参照)以外の空間(図2,図3を参照)に配置される。
【0028】
上記フィルタ部17は、ノイズの影響を受け易く、出力電力に重畳され易い。そのため、トランス16とフィルタ部17との間にはシールド部S1を配置し、プリント基板12とフィルタ部17との間にはシールド部S2を配置する。シールド部S1,S2には、ノイズの影響を低減または遮断できる電磁シールドであれば形状,厚み,材料(素材)等は任意である。例えば、金属板(板金を含む),金属メッシュ,発泡金属等が該当する。また、所定形状(例えば板状や筐体状等)に成形された樹脂部材の表面や裏面に金属インクまたは同様の物質でメッキしたものでもよい。本形態ではシールド部S1,S2を個別に配置したが、L字状に一体成形して配置してもよい。シールド部S1,S2の一部に貫通穴をあける場合、当該貫通穴や接続線J1,J2との隙間も同様にシールドするのが望ましい。ただし、絶縁等を確保するために隙間が必要な場合には、接続線J1,J2を通すことが可能な最小の貫通穴にするのが望ましい。シールド部S1,S2の一部として、ケース11の一部(壁部や床部等)を構成するのが望ましい。ケース本体11bと同様な形状(すなわち一面が開口する箱状の筐体)のシールド部を形成して、フィルタ部17全体を覆う構成としてもよい。
【0029】
図3において、直列状配置部品群(整流素子15,トランス16,フィルタ部17等)とプリント基板12とは並列的に配置される。すなわち、直列状配置部品群は直列線SLに沿って直列状に配置される。しかも、整流素子15は冷却部14に直接的または間接的に接触して配置(固定)される。間接的に接触する形態としては、例えば冷却部14と整流素子15との間に絶縁シート等の部材を介在させる形態などが該当する。間接的接触については、後述する半導体素子群Qgの配置についても同様である。一点鎖線でそれぞれ示す直列線SLとプリント基板12の中心線CLとは、図示するように並列する。並列には、平行のみならず、部品どうしが当たらない程度の非平行を含む。プリント基板12と直列状配置部品群とは、ケース11内に収容されて固定される。このうちプリント基板12の実装表面12aは、ケース11の対向面11fと対向する(図1を参照)。よって、プリント基板12に配置される実装品P1〜P6等もまた対向面11fと対向する。この対向面11fを含む部位(仕切壁や仕切面など)は「仕切部」に相当する。
【0030】
二点鎖線で示す冷却部14は、少なくとも半導体素子群Qg(半導体素子Q1,Q2;「第1半導体素子」に相当する)に向かって、対向面11fの一部(具体的にはケース11の隅部)が上方に向けて突出して形成される(図1を参照)。冷却部14の上面には半導体素子群Qgが直接的または間接的に接触して配置(固定)される。実装品P1,P2などは、プリント基板12に実装される実装品のうちで発熱性が高い部品である。発熱性が高い実装品P1,P2などを冷却部14の近傍(すなわち冷却部14による冷却効果が得られる範囲内)に配置することで、当該実装品の冷却効率を高めることができる。
【0031】
トランス16は、整流素子15とフィルタ部17との間に介在して配置される。トランス16の具体的な構成例(構造)については後述する(図4〜図7を参照)。トランス16に備えられる接続用端子は、大別して三方向の端子がある。第1の端子は、インサートバスバー19の接続端子台19cと接続する1次側端子16t1である。1次側端子16t1は接続端子台19cに向けて引き出される。第2の端子は、整流素子15と接続線J1で接続する2次側端子16t2aである。第3の端子は、フィルタ部17と接続線J2で接続する2次側端子16t2bである。2次側端子16t2a,16t2bは直列線SLに沿って引き出される。これらの各端子は、通常の端子のみならずリード線等を含み、図8の回路図にも示す。なお、図2,図3に示す2個の半導体素子Q2は並列接続されるが、図8では1個の半導体素子Q2として示す。
【0032】
プリント基板12の実装表面12a側における所定位置にインサートバスバー19を配置する。図3では、半導体素子群Qgや実装品P1〜P6等も併せて示す。インサートバスバー19全体の一部または全部は、実装表面12aに配置した実装品P1〜P6等と対向面11fとの隙間に挿入して配置する。特に、トランス16の1次側端子16t1とインサートバスバー19の接続端子台19cとを接続するにあたって、その接続距離が最短になるような構成とする。インサートバスバー19に備える接続端子T1〜T6は、各接続端子に対応するプリント基板12の接続部(例えばスルーホールや接続端子等)と接続される。インサートバスバー19の構成例については後述する(図7を参照)。
【0033】
次に、トランス16の構成例について図4〜図6を参照しながら説明する。図4にはトランスの第1構成例を斜視図で示す。図5には第1コア部の構成例を示す。図6には第2コア部の構成例を示す。
【0034】
図4に示すトランス16は、実線で示すコア(すなわち第1コア部16aおよび第2コア部16g)や、二点鎖線で示すコイル16b(すなわち巻線)などで構成される。見易くするために、図3等に示す1次側端子16t1や2次側端子16t2a,16t2bの図示を省略する。第1コア部16aと第2コア部16gは、同一形状や鏡像形状であってもよく、異なる形状であってもよい。第1コア部16aの構成例は図5に示し、第2コア部16gの構成例は図6に示し、詳細は後述する。
【0035】
第1コア部16aは、鏡像に形成された第1コア上部16a1と第1コア下部16a2とを対向させて固定される。第2コア部16gは、鏡像に形成された第2コア上部16g1と第2コア下部16g2とを対向させて固定される。固定の手段は任意であり、例えばホルダや接着などが挙げられる。第1コア上部16a1と第1コア下部16a2にはそれぞれ凹部が形成されており、両者を対向して固定することで図示するような開口部16c,16d,16hなどが形成される。開口部16c,16d,16hなどはコアが開口する部位であって、コイル16bを収容する巻線収容部でもある。
【0036】
第1コア部16aの構成例について図5を参照しながら説明する。図5(A)には斜視図を示し、図5(B)には平面図を示し、図5(C)には図5(A)に示す矢印Da方向から見た側面図を示す。
【0037】
図5(A)に示す第1コア部16aは、上述したように鏡像に形成された第1コア上部16a1と第1コア下部16a2とを対向させて固定される。この固定によって図5(B)に示すような通路状の開口部16c,16d,16iが形成される。これらの開口部のうちで開口部16c,16dを通るように、図4に示すコイル16bを収容する。コイル16bに流れる電流に伴って第1コア部16aに磁束が発生するので、開口部16c,16d,16iはノイズの発生源となり得る。図5(C)に示すように、開口部16cは斜線ハッチで示す窓面W1に対応し、開口部16dは斜線ハッチで示す窓面W2に対応する。開口部16c(窓面W1)、開口部16d(窓面W2)、開口部16iは、いずれも「コアの巻線窓面」に相当する。しかしながら、図3に示す直列線SLと交差する方向に向いているので、フィルタ部17に与える影響が低減される。
【0038】
第2コア部16gの構成例について図6を参照しながら説明する。図6(A)には斜視図を示し、図6(B)には平面図を示し、図6(C)には図6(A)に示す矢印Db方向から見た側面図を示す。
【0039】
図6(A)に示す第2コア部16gは、上述したように鏡像に形成された第2コア上部16g1と第2コア下部16g2とを対向させて固定される。この固定によって図6(B)に示すような通路状の開口部16e,16f,16hが形成される。これらの開口部のうちで開口部16e,16fを通るように、図4に示すコイル16bを収容する。コイル16bに流れる電流に伴って第2コア部16gに磁束が発生するので、開口部16e,16f,16hはノイズの発生源となり得る。図6(C)に示すように、開口部16hは斜線ハッチで示す窓面W3に対応する。開口部16e、開口部16f、開口部16h(窓面W3)は、いずれも「コアの巻線窓面」に相当する。しかしながら、図3に示す直列線SLと交差する方向に向いているので、フィルタ部17に与える影響が低減される。
【0040】
次に、インサートバスバー19の構成例を図7に三面図で示す。図7(A)には平面図を示し、図7(B)には図7(A)の右側から見た側面図を示し、図7(C)には図7(A)の下側から見た側面図を示す。図7に示すインサートバスバー19は、バスバー本体19bに対して、固定部19a,19d,19f、接続端子台19c、入力部19e、接続端子T1〜T6などを有する。これらの各要素はバスバー本体19bの一面側(すなわち接続表面19g)に配置され、他面側(すなわち接続裏面19h)には何も配置されない。固定部19a,19d,19fは、インサートバスバー19をプリント基板12やケース本体11bに固定するための部位である。バスバー本体19bは絶縁性材料(例えば樹脂等)で所定形状に形成される。具体的には、鋳造や射出成形等によるモールディングで形成される。接続端子台19cは「端子台」に相当し、トランス16と対向する位置に備えられ、1次側端子16t1と接続する機能を担う端子19ctを有する。
【0041】
上述のように構成される電源装置10を回路図で示すと、図8のようになる。ただし、図8に示す回路図は一例にすぎず、主要部を示す。
【0042】
図8において、電力源Edcは直流電力を電源装置10に供給する。電力源Edcには、例えばバッテリや燃料電池が用いられる。電力源Edcのプラス端子は、チョークコイルLin,コンデンサC1およびインサートバスバー19を経て、トランス16の1次側端子に接続される。一方、電力源Edcのマイナス端子は、チョークコイルLin,コンデンサC1,コンデンサC11およびインサートバスバー19を経て、トランス16の1次側端子16t1に接続される。チョークコイルLinは入力フィルタとして機能し、コンデンサC1は直流電力の充放電を繰り返し行う。
【0043】
プリント基板12は、半導体素子Q1,Q2、ダイオードD1,D2、コンデンサC10,C11、ドライブ回路12c、制御回路12d、検出回路12eなどを有する。半導体素子Q1,Q2は、ドライブ回路12cから伝達される駆動信号に従って個別にスイッチングが制御される。検出回路12eはフィルタ部17の出力側の電圧(すなわち電圧Vd)を検出する。制御回路12dは、電圧Vdが目標電圧となるように、ドライブ回路12cを駆動する指令信号Vc*を出力する。目標電圧は、制御回路12d内の記録媒体に予め記録したり、外部装置(例えばECU等)から入力したりする。ドライブ回路12cは、指令信号Vc*に基づいて、上述した駆動信号を生成して出力する。
【0044】
本例の半導体素子Q1,Q2は直列接続される。二点鎖線で示すダイオードD1,D2はフリーホイールダイオードとしての機能を担い、半導体素子Q1,Q2に内蔵されたものでもよく、外付けしたものでもよい。コンデンサC10は、半導体素子Q1のドレイン端子と接続端子台19cとの間に接続される。コンデンサC11は、上述したように電力源Edcのマイナス端子と接続端子台19cとの間に介在して接続される。電力源Edcのマイナス端子およびコンデンサC11の一方側端子は、半導体素子Q2のソース端子に共通して接続される。
【0045】
接続端子台19cと接続する1次側端子16t1はトランス16の1次側端子である。一方、トランス16の2次側端子は、整流素子15,コンデンサC12,フィルタ部17などが接続される。整流素子15は、トランス16の2次側端子から出力される交流電力を整流する機能を担う。図8には二相全波整流を行う構成を示すが、単相ブリッジ整流を行う構成としてもよい。コンデンサC12は、整流素子15によって整流された直流電力を平滑化する機能を担う。フィルタ部17は、リアクトル(コイル)L17とコンデンサC17とを有し、出力電力の高周波成分を除去したり、整流に伴う電力(特に電圧)の脈動を抑制したりする機能を担う。整流素子15やコンデンサC12,C17の一方側端子は、共通電位となるグラウンドNに接続される。上述した整流素子15,コンデンサC12,フィルタ部17によって安定化された出力電力は、出力機器30に出力される。出力機器30には、電力を必要とする任意の機器を適用できる。
【0046】
上述した実施の形態によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、電源装置10において、ケース11は、冷却部14側から整流素子15(第2半導体素子)、トランス16、フィルタ部17の順番で直列状に配置される直列状配置部品群を有する構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、ケース11内でノイズ発生源からできるだけ離れた位置にフィルタ部17を配置することでノイズの影響を抑制し、ノイズが出力電力に重畳するのを抑制することができる。また、半導体素子Q1,Q2(第1半導体素子)や整流素子15を冷却部14に直接的または間接的に接触させたり、あるいは冷却部14の近傍に配置することで効率よく冷却を行える。
【0047】
請求項2に対応し、プリント基板12(基板)には発熱性の高い主回路実装品(チョークコイルLinやコンデンサC1など)と、発熱性の低い制御回路実装品(ICや表面実装品など)とが実装され、主回路実装品は、冷却部14の近傍に配置する構成とした(図1〜図3を参照)。この構成によれば、発熱性の高いチョークコイルLinやコンデンサC1などを確実に冷却することができる。
【0048】
請求項3に対応し、プリント基板12は、ケース11内で直列状配置部品群と並列状に配置され、半導体素子Q1,Q2および整流素子15のうちで一方または双方は、冷却部14に直接的または間接的に接触して配置されるか、または、冷却部14の近傍に配置される構成とした(図1〜図3を参照)。この構成によれば、フィルタ部17はノイズ(半導体素子Q1,Q2や整流素子15等の半導体素子Q1,Q2によるノイズであるか否かを問わない)が出力電力に重畳するのを抑制できる。また、整流素子15を積極的に冷却するので、安定して作動させることができる。
【0049】
請求項4に対応し、ケース11は長辺部11Lと短辺部11Sとを有し、整流素子15は短辺部11S側に配置される構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、ケース11を占める冷却部14の占有率を大幅に小さくできるので、ケース11(ひいては電源装置10)自体の体格を小さく抑えることができる。
【0050】
請求項5に対応し、トランス16の2次側端子16t2bは、直列状配置部品群に沿う方向(直列線SLの方向)に引き出され、フィルタ部17と接続される構成とした(図2,図3参照)。この構成によれば、直列状配置部品群に沿う方向でトランス16の2次側端子16t2bとフィルタ部17とが接続されるので、配線距離を最小限に抑えられる。よって、配線による電力損失を低下させることができ、ケース11(ひいては電源装置10)自体の体格も小さく抑えられる。
【0051】
請求項6に対応し、トランス16に構成されるコアの巻線窓面(窓面W1,W2,W3)は、直列状配置部品群に沿う方向と交差する方向に備える構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、コアの巻線窓面(窓面W1,W2,W3)を直列状配置部品群に沿う方向とは異なる方向に備えるので、漏れ磁束によるノイズが出力電力に重畳するのを抑制することができる。
【0052】
請求項7に対応し、フィルタ部17の一部または全部をシールドするシールド部S1,S2を有し、シールド部S1,S2は、トランス16とフィルタ部17との間、および、プリント基板12とフィルタ部17との間のうちで一方または双方に配置される構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、シールド部S1,S2はノイズの影響を低減または遮断するので、当該ノイズが出力電力に重畳するのをさらに確実に抑制することができる。
【0053】
請求項8に対応し、ケース11の一部は、シールド部S1,S2の一部を構成する構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、ケース11の一部をシールド部S1,S2と一体構成とすることにより、フィルタ部17を取り囲む空間全体をノイズから保護することができる。シールド部S1,S2は半導体素子Q1,Q2や漏れ磁束等によるノイズの影響をさらに低減または遮断するので、ノイズが出力電力に重畳するのをより確実に抑制することができる。
【0054】
請求項9に対応し、直列状配置部品群の一つである第2半導体素子は、トランス16の2次側に接続される整流素子15である構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、整流素子15は冷却部14によって冷却されるので、整流作用を安定して確実に行うことができる。また、整流素子15の作動に伴ってノイズが発生しても、フィルタ部17は離れた位置に配置されるので当該ノイズが出力電力に重畳するのを抑制できる。
【0055】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0056】
上述した実施の形態では、コアの巻線窓面としての開口部16c,16d,16e,16f,16h,16iを有するトランス16を適用した(図4〜図6を参照)。この形態に代えて、図9に示すトランス100(いわゆるE型トランス)を適用することもできる。図9(A)に示すトランス100は、コア102やコイル101などで構成される。コア102は、コア上部102aとコア下部102bとを対向させて固定することで形成される。コア上部102aとコア下部102bとの対向によって開口部103,104が形成され、各開口部は図9(B)に示す窓面W10,W11にそれぞれ対応する。図9(B)は図9(A)に示す矢印Dcから見た側面図である。開口部103(窓面W10)と開口部104(窓面W11)とを、図3に示す直列線SLと交差する方向に向けるように配置すれば、フィルタ部17に与える影響が低減される。したがって、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
上述した実施の形態では、プリント基板12は、実装表面12aと実装裏面12bとを有する基板を適用した(図1〜図3を参照)。この形態に代えて、一以上の中間層を含む多層基板を適用してもよく、ユニバーサル基板を適用してもよい。いずれの基板にせよ、半導体素子群Qgや実装品P1〜P6等を配置することができるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
上述した実施の形態では、冷却部14は、対向面11fから実装表面12aに向けて突出させ、その突出部位に冷媒が流れる冷媒通路14cを有する構成とした(図1〜図3を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の冷却手段を構成してもよい。他の冷却手段は、例えば冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。他の冷却手段で構成した場合でも、半導体素子群Qgや実装品を冷却できるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 電源装置(DC−DCコンバータ)
11 ケース
11f 対向面
12 プリント基板(基板)
14 冷却部
15 整流素子(第2半導体素子)
16,100 トランス(回路素子)
16a 第1コア部(コア)
16b コイル(巻線)
16g 第2コア部(コア)
16c,16d,16e,16f,16h,16i 開口部(コアの巻線窓面)
16t1 1次側端子
16t2a,16t2b 2次側端子
17 フィルタ部(回路素子)
19 インサートバスバー
19c 接続端子台
30 出力機器
Lin チョークコイル(発熱性の高い実装品)
C1 コンデンサ(発熱性の高い実装品)
Qg 半導体素子群
Q1,Q2,… 半導体素子(第1半導体素子)
P1,P2,P3,P4,P5,P6,… 実装品
T1,T2,T3,T4,T5,T6,… 接続端子
S1,S2 シールド部
W1,W2,W3 窓面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1半導体素子を配置する基板と、前記基板を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースと、を有する電源装置において、
前記ケースは、前記冷却部側から第2半導体素子、トランス、フィルタ部の順番で直列状に配置される直列状配置部品群を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記基板には、発熱性の高い主回路実装品と、発熱性の低い制御回路実装品とが実装され、
前記主回路実装品は、前記冷却部の近傍に配置することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記基板は、前記ケース内で前記直列状配置部品群と並列状に配置され、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のうちで一方または双方は、前記冷却部に直接的または間接的に接触して配置されるか、または、前記冷却部の近傍に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記ケースは、長辺部と短辺部とを有し、
前記第2半導体素子は、前記短辺部側に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記トランスの2次側端子は、前記直列状配置部品群に沿う方向に引き出され、前記フィルタ部と電気的に接続されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記トランスに構成されるコアの巻線窓面は、前記直列状配置部品群に沿う方向と交差する方向に備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記フィルタ部の一部または全部をシールドするシールド部を有し、
前記シールド部は、前記トランスと前記フィルタ部との間、および、前記基板と前記フィルタ部との間のうちで一方または双方に配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記ケースの一部は、前記シールド部の一部を構成することを特徴とする請求項7に記載の電源装置。
【請求項9】
前記直列状配置部品群の一つである前記第2半導体素子は、前記トランスの2次側に電気的に接続される整流素子であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34270(P2013−34270A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167956(P2011−167956)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】