説明

電界測定システム

【課題】 3軸電界センサの計測データにより、電気モーメントとみなせる目標体の運動方向、向きが特定でき、運動パターンを区別し得る電界測定システムを提供する。
【解決手段】同一平面上に第1の電界センサSAと第2の電界センサSBとを配置しておき、配置領域内を運動目標体が通過すると、第1と第2の電界センサSA、SBで目標体によるXY軸の電界データをデータ処理装置に取り込み、X軸とY軸の電界から電界ベクトル回転角を求め、所定時間経過後のベクトル回転角の変化から電界ベクトル回転方向の正負の別を求め、求めた第1と第2の電界センサSA,SBに係る電界ベクトル回転方向の正負の別の組み合わせから目標体の運動コース1〜4を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航行する船舶等の電気モーメントとみなせる目標体の運動中の電界を測定し、目標体の運動方向及び向きを限定し得る電界測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水などの導体中を移動する船体などの存在、位置などを検知するために図21に示すように一対の電極1x1・1x2を備えるX軸電界センサ1xと、一対の電極1y1・1y2を備えるY軸電界センサ1yと、同じく一対の電極1z1・1z2を備えるZ軸電界センサ1zとからなり、これらX軸電界センサ1x、Y軸電界センサ1y、Z軸電界センサ1zを、それぞれ互いに直交するX,Y,Z方向に配置してなる3軸電界センサ1を用いて、3軸方向の電界波形を計測し、その電界強度から、船体と電界センサ間の距離を測定している。
【0003】
この種の装置であって、3軸電界センサの他に、深度計を装置に付設し、3軸電界センサの出力と、深度計により得た測定深度から、被測定船体の、装置真上からみた位置偏奇量を計算し、出力するようにした船体位置偏奇量検出装置が開示されている。(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−304533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の3軸電界センサを用いて、測定される電界の3軸成分から、運動中の目標体との距離及び位置を見積もることができるが、1個の3軸電界センサでは、目標体が、どの方向で、どちらの向きに運動しているのか、見積もることができなかった。
【0005】
また、複数個の3軸電界センサを用いて、それぞれの3軸電界センサの電界出力のピーク値の計測時間の差から目標体の概略運動方向を見積もることができる。しかし、この場合でも、それぞれの電界センサの左右どちらの方向を運動しているかまでのコースを判別することができなかった。
【0006】
この発明は、上記問題点に着目してなされたものであって、相対的に運動する電気モーメントとみなせる目標体の運動方向及び向きを精度良く見積もることができる電界測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1に係る電界測定システムは、同一平面上に配置される第1と第2の電界センサと、この第1と第2の電界センサより、相対的に運動中の1つの電気モーメントとみなすことができる目標体の発生する電界データを取り込む手段と、前記取り込んだ第1の電界センサによる電界データと前記第2の電界センサによる電界データの計測の時間差から運動方向を、前記第1の電界センサの電界データのベクトルの回転と前記第2の電界センサの電界データのベクトルの回転とから運動の向きを判別する手段と、を備えている(実施形態1)。
【0008】
また、請求項2に係る電界測定システムは、3軸方向の感度を有し、1つの電気モーメントとみなすことができる目標体が相対的に運動する時に発生する電界を計測する電界センサと、この電界センサで計測した3軸方向の電界波形データを取り込む手段と、前記3軸方向の電界波形データから、目標進路とセンサ座標とで一意的に決まる平面を推定する手段と、を備えることを特徴とする(実施形態2)。
【0009】
また、請求項3に係る電界測定システムは、3軸方向の感度を有し、1つの電気モーメントとみなすことができる目標体が相対的に運動する時に発生する電界を計測する電界センサと、この電界センサで計測した3軸方向の電界波形データを取り込む手段と、前記3軸方向の電界波形データ、電界ベクトルの変化データ、及び目標進路とセンサ座標とから一意的に決まる平面データとから、目標体の運動コース及び向きを限定する手段と、
を備えることを特徴とする(実施形態3)。
【0010】
また、請求項4に係る電界測定システムは、各々が3軸方向の感度を有し、異なる位置に配置され、1つの電気モーメントとみなすことができる目標体が相対的に運度する時に発生する電界を計測する第1と第2の電界センサと、この第1と第2の電界センサで計測した3軸方向の電界波形データを取り込む手段と、前記第1,第2の電界センサのそれぞれの3軸方向の電界波形データ、及び電界ベクトルの変化データおよび最近接時刻データ、及び目標進路とセンサ座標から一意的に決まる平面データとから、3次元空間における運動コース及び向きを推定する手段と、を備えることを特徴とする(実施形態4)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、第1の電界センサの電界データと第2の電界センサの電界データの計測の時間差により目標体の運動方向を限定し、第1の電界センサの電界データのベクトル回転と第2の電界センサの電界データのベクトルの回転とから運動の向きを判別するので、複数の運動コースの1つを特定できる。
【0012】
また、請求項2に係る発明によれば、電気モーメントとみなすことができる目標体が相対運動する時に発生する電界を1つの3軸電界センサで計測することにより、その運動コース及び向きを2次元平面に限定することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、計測された3軸方向電界波形データと、電界ベクトルの変化データと、目標進路とセンサ座標とから一意的に決まる平面データとから、2次元平面に限定された、電気モーメントとみなせる目標体の運動方向及び向きを限定できる。
【0014】
また、請求項4に係る発明によれば、電気モーメントとみなすことができる目標体が相対運動する時に発生する電界を第1と第2の3軸電界センサで計測することにより、目標進路とセンサ座標から一意的に決まる2つの平面を限定し得るので、この2つの2次元平面の交叉線より、運動中の目標体の運動方向及び、向き、を限定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下実施の形態により、この発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
〈実施形態1〉
図1は、この発明の一実施形態である電界測定システムの機器構成を示すブロック図である。
【0017】
この実施形態システムは、2個の電界センサSA、SBと、データ処理装置10とから構成されている。電界センサSA,SBは、図21に示すものと同様のX軸電界センサ、Y軸電界センサ,Z軸電界センサを有する3軸電界センサであり、1つの電気モーメントとみなせる被測定対象である目標体が通過する任意の領域の同一平面内に配置されている。その配置例を図2に示している。
【0018】
データ処理装置10は、データ処理部11,メモリ12、表示部13を備え、例えば図2に示すように陸上の管理棟に設置され、サンプリングタイム毎に、電界センサSA、SBからの測定データ、つまり電界の強度データEx、Ey、Ezを取り込み、記憶し、所要の演算を実行する。目標体が、電界センサSA、SBの近傍を通過すると、例えば電界センサSAで、図3に示すX軸とY軸の計測結果Ex(t)、Ey(t)が得られる。この計測結果は、データ処理装置10のメモリ12に記憶される。
【0019】
各電界センサSA、SBにおいて、時間tでのX,Y平面電界ベクトルの角度ψ(t)を、データ処理装置10で、算出する。この角度ψ(t)は、次式より算出される。
【0020】
ψ(t)=arctan{(Ey(t)/Ex(t)}・・・(a)
さらに、データ処理装置10おいて、角度ψ(t)が時間的に、どのように変化するかを,各電界センサSA,SB毎に判定する。今、任意の時間tに対してψ(t)<ψ(t+Δt)であれば、図4に示すように、ベクトルは正の回転と判定し、ψ(t)>ψ(t+Δt)であれば、ベクトルは負の回転であると、判定する。
【0021】
電界センサSA,SBの近傍を目標体が通過する際に、例えば図5に示す波形が計測され、そのピーク波形の計測時間の差から、目標体の進行方向が分かる。この際、上記電界ベクトル回転方向が正である場合は、電界センサより近接してくる目標体に向かって見て、目標体が電界センサの右側を通過したことになり、電界ベクトル回転方向が負である場合に、目標体が電界センサの左側を通過したことになる。この電界ベクトル回転方向の正負と目標体の通過サイドについて、少し具体的に説明する。
【0022】
図6に示すように電界センサSAの左側を図の上方から下方に電気モーメントPの目標体4が通過する場合を想定する。移動で目標体4が4aの位置に到達した時の電界センサSAにおける電界ベクトルは、図6にEaで示したものとなる。その後、目標体4が4bの位置に到達したときの電界センサSAにおける電界ベクトルは図6のEbで示すものとなり、ベクトル回転方向は矢符Qで示す負回転となる。この負回転を判別することにより、目標体4の電界センサSAの左側通行を特定できる。
【0023】
次に、図7に示すように電界センサSAの右側を図の上方から下方に電気モーメントPの目標体4が通過する場合を想定する。移動で目標体4が4aの位置に到達した時の電界センサSAにおける電界ベクトルは、図7にEaで示したものとなる。その後、目標体4が4bの位置に到達したときの電界センサSAにおける電界ベクトルは図7のEbで示すものとなり、ベクト回転は矢符Rで示す正回転となる。この正回転を判別することにより、目標体4の電界センサSAの右側通行を特定できる。
【0024】
以上のベクトル判定を、電界センサSA、SBについて、それぞれ実行する。ここでは、目標体の通過時に、電界センサSA,SBでの出力で、それぞれの電界ベクトル回転方向の正負を求め、電界センサSA通過時の正負の別と電界センサSB通過時の正負の別とから、図8に示すコースのいずれを通過したかを決定している。
【0025】
この実施形態電界測定システムにおいて、目標体4の航行により、電界センサSA、SBのいずれにおいても、ベクトル回転方向が正、正と判定されると、目標体4が電界センサSAの右側、電界センサSBの右側を通過したことになり、目標体4が図8のコース1を通過したと決定する。次に、電界センサSAにつきベクトル回転方向が正と判定され、電界センサSBでベクトル回転が負と判定されると、目標体4が電界センサSAの右側、電界センサSDBの左側を通過したことになり、目標体4が図8のコース2を通過したと決定する。
【0026】
さらに、次に、電界センサSAにつきベクトル回転方向が負と判定され、電界センサSBでベクトル回転方向が正と判定されると、目標体4が電界センサSAの左側、電界センサSBのも右側を通過したことになり、目標体4が図8のコース3を通過したと決定する。
【0027】
また、電界センサSA、SBのいずれにおいても、ベクトル回転が負、負と判定されると、目標体が電界センサSAの左側、電界センサSBの左側を通過したことになり、目標体4が図8のコース4を通過したと決定する。
【0028】
以上の判別ベクトル回転方向とコースの関係を示すと図9に示すようになる。この図より、電界センサSA、SBの各出力の電界ベクトル回転方向が正負いずれであるか判別し、その組み合わせにより航行する目標体の4つのコースの1つを特定することが出来る。この電界センサSA,SBの電界ベクトル回転方向の正負の組み合わせと各コースの関係が、データ処理装置10のメモリ12に格納されている。
【0029】
次に、この実施形態電界測定システムの電界測定及びコース決定の処理動作を図10に示すフロー図を参照して説明する。処理が開始されると、ステップST1において,測定すべきサンプルタイム到来か否か判定する。サンプルタイムの到来で、ステップST2へ移行する。
【0030】
ステップST2においては、電界センサSA、SBのそれぞれのX軸,Y軸の電界Ex(t)、Ey(t)、Ez(t)を計測し,計測結果を時刻とともにメモリ12の計測電界記憶部に格納する。続いて、ステップST3へ移行する。ステップST3においては、電界センサSAの全検出電界EA(t)が所定値Kより大きいか否かを判定する。大きければ、電界センサSAの近傍を目標体が通過しているとの判別で、ステップST4へ移行する。
【0031】
ステップST4においては、電界センサSAに関するX軸,Y軸の測定電界Ex(t),Ey(t)より,上記(a)式により電界ベクトル角ψA(t)を計算する。この計算した電界ベクトル角ψA(t)もメモリ12の計測電界記憶部に時刻とともに記憶する。次に、ステップST5へ移行する。
【0032】
ステップST5においては、電界センサSAの今回のベクトル角ψA(t)から所定時間前のベクトル回転角ψA(t―Δt)を減算し、電界ベクトルの回転方向が正であるか負であるかを判別する。この判別結果をメモリ12の電界ベクトル回転方向記憶部に記憶する。続いて、ステップST6へ移行する。
【0033】
ステップST6においては、電界センサSBの全検出電界EB(t)が所定値Kより大きいか否かを判定する。大きければ、電界センサSBの近傍を目標体が通過していることを意味し、ステップST7へ移行する。一方、所定値Kより,小さければステップST1へ移行する。
【0034】
ステップST3、ST6において、電界センサSAあるいはSBの測定全電界値が所定値Kより小さい場合は、サンプルタイムの到来ごとに電界センサSA,SBによる電界計測を続ける。
【0035】
ステップST7においては、電界センサSBに関するX軸,Y軸の測定電界Ex(t),Ey(t)より,上記(a)式により電界ベクトル角ψB(t)を計算する。この計算した電界ベクトル角ψB(t)もメモリ12の計測電界記憶部に時刻とともに記憶する。次に、ステップST8へ移行する。
【0036】
ステップST8においては、電界センサSBの今回のベクトル角ψB(t)から所定時間前のベクトル回転角ψB(t―Δt)を減算し、電界ベクトルの回転方向が正であるか負であるかを判別する。この判別結果をメモリ12の電界ベクトル回転方向記憶部に記憶する。続いて、ステップST9へ移行する。
【0037】
ステップST9においては、電界ベクトル回転方向記憶部のデータを読み出して,電界センサSAで検出した電界のベクトル回転が正回転であるか、否かを判定する。正回転の場合は次にステップST10へ移行する。一方、ステップ゜ST9において正回転でない場合、つまり負回転の場合は、続いてステップST13へ移行する。
【0038】
ステップST10においては、電界ベクトル回転方向記憶部のデータを読み出して、電界センサSBで検出した電界のベクトルが正回転であるか否かを判定する。読み出した電界ベクトル回転方向が正回転の場合は、ステップST11へ移行する。一方、ステップ10において正回転でない場合は、つまり負回転の場合は、続いて、ステップ12へ移行する。
【0039】
ステップST11においては、電界センサSA、SBの両方のベクトル回転方向とも正回転であるので、コース1の航行と決定する。また、ステップST12においては、電界センサSAのベクトル回転が正回転,電界センサSBのベクトル回転方向が負であるので、コース2の航行と決定する。
【0040】
ステップST13においては、電界ベクトル回転方向記憶部のデータを読み出して,電界センサSBで検出した電界のベクトル回転が正回転であるか、否かを判定する。読み出した電界ベクトル回転方向が正回転の場合は次にステップST14へ移行する。一方、ステップST13において正回転でない場合、つまり負回転の場合は、続いてステップST15へ移行する。
【0041】
ステップST15においては、電界センサSA、SBの両方のベクトル回転方向とも負回転であるので、コース4の航行と決定する。また、ステップST14においては、電界センサSAで検出した電界のベクトル回転方向が負回転,電界センサSBで検出した電界のベクトル回転方向が正であるので、コース3の航行と決定する。なお、各コースの決定時に、電界センサSAと電界センサSBへの目標体の接近時刻のいずれが先であるかにより、コースの向きも決定できる。もちろん運動中に、いずれの電界センサに先に接近データが得られるかにより、コースの向きを決定できる。さらに、電界センサSAと電界センサSBへの目標体の接近時刻により、目標体の速度を求めることが出来る。
【0042】
この実施形態において、電界ベクトル回転方向の正負を判別して、目標体がコース1〜4のいずれを通過したか判別しているが、さらに加えて、目標体が通過する際に、電界センサSA,SBで検出された電界の強さより、ピーク電界を抽出し、ピーク電界値から、電界センサSAと目標体4との直近距離ra、電界センサSBと目標体4との直近距離rbを算出する事により、目標体4の通過したコースをさらに、細かく特定できる。例えば、図11に示すように、電界センサSA,SBの右側、つまりコース1を通過する場合でも、直近距離ra1,rb1あるいはra2、rb2を算出することにより、電界センサSA,SBの配置線に平行のコース1Aか,あるいは電界センサSA,SBの配置線に角度を持ったコース1Bを特定できる。
【0043】
<実施形態2>
次にこの発明の実施形態2について説明する。図12はこの発明の実施形態2の電界測定システムを示すブロック図である。
【0044】
この電界測定システムは、1個の電界センサ1と、データ処理装置10とから構成されている。電界センサ1は、x、y、zの3軸の感度を有する3軸電界センサである。この実施形態では、1つの電気モーメントとみなせる被測定対象である目標体が船舶である場合を想定しており、電界センサ1は、海底、あるいは海中に設置される。データ処理装置10は、例えば陸上の管理棟に設置され、電界センサ1からの測定データ、つまり電界の強さデータEx、Ey、Ezを取り込み、記憶し、所望の演算を実行する。所望の演算は、航行中の船舶の移動進路(目標進路)を推定あるいは限定するための演算である。
【0045】
この実施形態電界測定システムにおいて、測定を行う場合の処理動作を、図13に示すフロー図を参照して説明する。測定処理動作が開始されると、先ずステップST21においてサンプルタイムが到来したか否かを判定し、サンプルタイム到来でステップST22へ移行する。ステップST22において電界センサ1での、検出電界E(t)=(Ex、Ey、Ez)を取り込み、データ処理装置10に内蔵のメモリ12に記憶する。この検出電界データの取り込みをサンプルタイム毎に行う。次にステップST23へ移行する。
【0046】
ステップST23においては、運動コース推定か否か判定する。運動コース推定処理への移行でない場合は、ステップST21へ戻り、サンプルタイム到来毎に電界測定を継続する。一方運動コース推定処理への移行が可能な場合はステップST24へ移行する。ここでの運動コース推定処理へ移行可能な場合は、データ処置装置10において、設定所定時間毎の到来であってもよいし、入力操作によって設定するものであってもよい。
【0047】
ステップST24においては、角度θ、φを0とし、初期状態とする。次にステップST25へ移行する。ここで、電界センサ1において、図14に示す3軸方向の計測結果Ex,Ey,Ezが得られる場合、センサ感度の軸を図15の(a)に示すようにZ軸を中心に角度θ、図15の(b)に示すようにY軸を中心に角度φによって回転させる。先ず、ステップST25において、感度軸角θを回転させ、続いてステップST26において、感度軸角φを回転させる。次ぎに、ステップST27へ移行する。
【0048】
ステップST27において、計測波形E(t)=(Ex、Ey、Ez)、角度θ回転後の波形E`(t)、角度φ回転後の波形E゛(t)とし、各t(時間)について、次の計算を行い、回転後の電界を計測する。

Ex`=Ex・cosθ+Ey・sinθ
Ey`=−Ex・sinθ+Ey・cosθ ・・・(1)
Ez`=Ez

Ex゛=−Ez`・sinφ+Ex`・cosφ
Ey゛=Ey` ・・・(2)
Ez゛=Ez`・cosφ+Ex`・sinφ

ここで、E゛は一般的に以下のように書かれる。
【0049】
【数1】

【0050】
この電気モーメントP゛(Px゛,Py゛,Pz゛)は図16に示す。
【0051】
次にステップST28へ移行する。ステップST28においては、図16に示す電気モーメントP゛のXY平面よりZ軸方向への角度γの範囲を想定する。ここでは、目標進路Jと電界センサ1の座標から一意的に決まる平面に対する目標の電気モーメントの角度を限定する。
【0052】
角度θ、φ回転後、目標進路とセンサが同一平面上にあった場合、上記(3)式においてz゛→0となる。この時、以下の式を満たす変数REzをおく。
【0053】
【数2】

【0054】
この時、運動中の目標体の電気モーメントP゛が図16のような状態の時、電気モーメントP゛の各成分は次のようになる。
【0055】

Px゛=P゛・cosγ・sinδ
Py゛=P゛・cosγ・cosδ ・・・(5)
Pz゛=P゛・sinγ

ここで式(3)を式(4)に代入し、それに、式(5)を代入し、さらにα=1/tanγとおくと、次の不等式が導かれる。
【0056】
【数3】

【0057】
REzは、式(4)から求まる測定値であり、REzを求めると、次にステップST29へ移行する。ステップST27において得られた電界データE゛(t)は、θ、φ推定用の電界データとして追加保存され(ステップST35)、また、ステップST28において得られた電気モーメントP゛は、γ値推定用のデータとして追加保存される(ステップST36)。これら追加保存されたデータは、後のステップST33,ST34で読み込みされ使用される。
【0058】
ステップST29においては、φが最終の値であるか否か判定し、最終値でない場合は、ステップST30へ移行し、角度φをΔφだけ変化させてステップST26へ戻り、再度角度φを回転する。また、ステップST29において角度φが最終値である場合にステップST31へ移行し、角θが最終の値であるか否か判定する。最終の値でない場合は、ステップST32へ移行し、角度θをΔθだけ変化させてステップST25に戻り、再度θを回転する。以上の処理を繰り返し、角度θ、φを少しずつ変化させ、その回転の度にステップST27,ST28で電界E゛(t)と、REzを算出する。
【0059】
そして、ステップST31において角θが最終値と判定された場合、ステップST33へ移行する。ここで、上記式(6)から、角度γの値を出して来る。つまり、角度θ、φ回転の度に、REzを計測結果から算出し(6)式から角度γの下限値・上限値などを求め、総合的に角度γの範囲を推定する。次にステップST34へ移行する。ステップST34おいては、角度γの範囲から目標の通過平面を求める。ここでは、次に(6)式によって限定された角度γの範囲を参照して目標の通過平面を求める。以下の説明において、変数Ez0を次のように定義する。
【0060】
【数4】

【0061】
式(7)の左辺の第2項は、角度θ、φ回転の度に計算する∫Ex゛dt、に関して、(ある計算値−最小値)/(最大値−最小値)であり、ある計算値が最小値に近いほど、小となり、Ez0は1に近いものとなる。一方ある計算値が最大値に近いほど大となり、Ez0は0に近いものとなる。
【0062】
この実施形態では、目標の通過平面を求めるのに、以下のように、電気モーメントが支配的な時、電気モーメントPz゛が0に近い時、そのいずれでもない時に、分けている。いずれでもない時を、さらに細かく設定してもよい。

(a)Pz゛が支配的な時(Px゛/Pz゛≒0、Py゛/Pz゛≒0)

この場合、電気モーメントP゛が、Z゛軸に近い(X゛、Y゛平面より立っている)場合である。

z゛→0の時、(3)式より、Px゛→0、Py゛→0、となるため、Ez0の値が最小となる角度θ、φが目標の通過平面を決定する角度となる。

(b)Pz゛≒0の時

この場合、電気モーメントP゛がZ軸に遠い(X゛、Y゛平面に寝ている)場合である。
z゛→0の時、(3)式より、Pz゛→0となるため、Ez0の値が最大となる角度θ、φが目標の通過平面を決定する角度となる。

(c)上記の2つの場合以外の時
z゛→0の時、(3)式より
【0063】
【数5】

【0064】
となる。
【0065】
r゛は時間の関数であるので、目標が速度Vで等速直線運動をした場合、センサと目標の最近接距離をrcpa、最近接時間をtcpaとすると、r(t)゛は以下のようになる。
【0066】
【数6】

【0067】
は測定値である}、その決定係数(R値)を求める。ここでの回帰分析は、式(10)における左辺の測定値と右辺の(t―tcpaを、それぞれ縦軸と横軸に取って、時間tの経過とともに、二次元座標上に両者の一致点をプロットし、各プロット点が直線上に近づいている度合い、つまり決定係数R値を求める。この決定係数が最も1に近くなる角度θ、φが目標の通過平面を決定する角度となる。
【0068】
実際には、(6)式によって限定された角度γの範囲を参照し、上記の3つの理論を組み合わせ総合的に目標の通過平面を決定する角度θ、φを決定する。
【0069】
以上の処理により、図17に示すように電気モーメントとみなせる目標体の目標進路Jと電界センサ1の位置を含む平面Wを推定できる。
【0070】
〈実施形態3〉
次に、この発明の実施形態3について説明する。この実施形態電界測定システムは、図12に示すブロック図の構成と同様のシステムが使用される。この実施形態電界測定システムの処理動作を、図18に示すフロー図を参照して説明する。先ずステップST41において、実施形態2のシステムの図13に示すフロー図と同様の処理を実行し、図17に示す目標進路Jと電界センサSAの位置を含む平面、つまり目標体の通過平面Wを推定する。次にステップST42へ移行する。
【0071】
ステップST42においては、推定した平面W上での電界ベクトルの回転の正負を求める。次に、ステップST43へ移行する。
【0072】
ステップST43においては、上記推定平面W上での電界ベクトルの回転(変化)に応じ、目標のコース及び向きを限定する。
【0073】
〈実施形態4〉
次に、この発明の実施形態4について説明する。この実施形態電界測定システムは、図1に示すブロック図の構成と同様のシステムが使用される。この実施形態電界測定システムでは、2個の電界センサSA、SBは、被測定目標体が船舶である場合、海底あるいは海中に所定の距離をおいて配置されている。
【0074】
データ処理装置10では、電界センサSA,SBの測定データExa、Eya、Eza及びExb、Eyb、Ezbをそれぞれ取り込み、それぞれ電界センサSA,SBごとに、図18に示す処理を実行する。この実施形態電界測定システムの処理動作を図19に示すフロー図を参照して説明する。
【0075】
先ず、ステップST51において、電界センサSAにおける図18のフロー図の処理を実行し、図20に示す目標体の目標進路Jと電界センサSAの位置を含む平面Waを推定する。次に、ステップST52において、電界センサSBにおける図18のフロー図の処理を実行し、図20に示す目標体の目標進路Jと電界センサSBの位置を含む平面Wbを推定する。次にステップST53に移行する。
【0076】
ステップST53においては、図20における2つの平面Wa、Wbの交叉線がデータ処理装置10における立体画像処理などにより、抽出され、目標進路Jとして、目標方向及び向きが限定される。
【0077】
なお、上記実施形態では、船舶(目標体)が移動する場合について、説明したが、この発明は、船舶に限るものではなく、その他の運動中の目標体の移動方向を、特定する場合に、広く適用できる。
【0078】
また、運動中の電気モーメントとみなせる目標体は、上記した、船舶など自身に駆動手段を持つもののほか、自身に駆動手段を持たないものも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の第1の実施形態である電界測定システムの機器構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態電界システムの機器配置例を示す図である。
【図3】同実施形態電界測定システムの電界センサのX軸,Y軸の電界検出出力の時間変化を示す特性図である。
【図4】上記実施形態電界測定システムにおける検出電界ベクトルの回転方向を説明する図である。
【図5】図2に示す2つの電界センサにおける運動体通過時の検出全電界を示す概略図である。
【図6】同実施形態電界測定システムにおいて、電界センサの左側を船舶が通過する場合の電界ベクトル回転方向を説明する図である。
【図7】同実施形態電界測定システムにおいて、電界センサの右側を船舶が通過する場合の電界ベクトル回転方向を説明する図である。
【図8】同実施形電界測定システムにおいて、2つの電界センサの配置領域を通過する船舶の通過コースを説明する図である。
【図9】同実施形態電界測定システムにおいて、2つの電界センサにおけるベクトル回転方向の正・負組み合わせとコースとの対応を説明する図である。
【図10】同実施形態電界測定システムにおいて、電界測定及びコース特定処理動作を説明するためのフロー図である。
【図11】同実施形態電界測定システムにおいて、追加機能を説明するためのコース例を示す図である。
【図12】この発明の第2の実施形態である電界測定システムの機器構成を示すブロック図である。
【図13】同実施形態電界測定システムにおいて、電界測定及びコース特定処理動作を説明するためのフロー図である。
【図14】同実施形態電界測定システムの電界センサの検出電界の変化を示す波形図である。
【図15】同実施形態電界測定システムにおける電界センサの検出電界の回転を説明する図である。
【図16】同実施形態電界測定システムにおける電界センサの検出電界の回転による運動体の電気モーメントの変化を説明する図である。
【図17】同実施形態電界測定システムにおける目標進路を含む平面の推定を説明する図である。
【図18】この発明の実施形態3にかかる電界測定システムの処理動作を説明するためのフロー図である。
【図19】この発明の実施形態4にかかる電界測定システムの処理動作を説明するためのフロー図である。
【図20】同実施形態電界測定システムにおける目標進路を含む2平面の推定により、目標方向及び向きを限定する説明図である。
【図21】一般的に使用される3軸電界センサを説明する概略図である。
【符号の説明】
【0080】
SA、SB、1 電界センサ
10 データ処理装置
11 データ処理部
12 メモリ
13 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上に配置される第1と第2の電界センサと、
この第1と第2の電界センサより、相対的に運動中の1つの電気モーメントとみなすことができる目標体の発生する電界データを取り込む手段と、
前記取り込んだ第1の電界センサによる電界データと前記第2の電界センサによる電界データの計測の時間差から運動方向を、前記第1の電界センサの電界データのベクトルの回転と前記第2の電界センサの電界データのベクトルの回転とから運動の向きを判別する手段と、
を備えることを特徴とする電界測定システム。
【請求項2】
3軸方向の感度を有し、1つの電気モーメントとみなすことができる目標体が相対的に運動する時に発生する電界を計測する電界センサと、
この電界センサで計測した3軸方向の電界波形データを取り込む手段と、
前記3軸方向の電界波形データから、目標進路とセンサ座標とで一意的に決まる平面を推定する手段と、
を備えることを特徴とする電界測定システム。
【請求項3】
3軸方向の感度を有し、1つの電気モーメントとみなすことができる目標体が相対的に運動する時に発生する電界を計測する電界センサと、
この電界センサで計測した3軸方向の電界波形データを取り込む手段と、
前記3軸方向の電界波形データ、電界ベクトルの変化データ、及び目標進路とセンサ座標とから一意的に決まる平面データとから、目標体の運動コース及び向きを限定する手段と、
を備えることを特徴とする電界測定システム。
【請求項4】
各々が3軸方向の感度を有し、異なる位置に配置され、1つの電気モーメントとみなすことができる目標体が相対的に運度する時に発生する電界を計測する第1と第2の電界センサと、
この第1と第2の電界センサで計測した3軸方向の電界波形データを取り込む手段と、
前記第1,第2の電界センサのそれぞれの3軸方向の電界波形データ、及び電界ベクトルの変化データおよび最近接時刻データ、及び目標進路とセンサ座標から一意的に決まる平面データとから、3次元空間における運動コース及び向きを推定する手段と、を備えることを特徴とする電界測定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2009−250737(P2009−250737A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97765(P2008−97765)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】