説明

電磁アクチュエータおよびレンズ駆動ユニット

【課題】構造が簡単で、可動範囲を大きく取ることができ、しかも停止精度の高い電磁アクチュエータを実現する。
【解決手段】コイル3a〜3d、ヨーク4a〜4dからなる複数の電磁石を設けた可動子1を、所定の間隔で対向する一対の固定子5a、5b間に挟み込むように配置し、コイル3a〜3dに対する通電タイミングを制御することにより、可動子1を揺動させる。これによって、可動子1を固定子5a、5bの一方から他方へと交互に接触させることにより、ガイド部材6に沿って移動させる。磁性体からなる固定子5a、5bの長さを延ばすだけで、可動子1の可動範囲を大きく取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造が容易で、可動範囲(可動域)が大きく、停止精度の高いリニア駆動型の電磁アクチュエータおよびレンズ駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリニア駆動型の電磁アクチュエータ(リニアアクチュエータ)は、例えば、平面状コイルをアレイ状に平面配置した固定子と、リング状永久磁石の可動子とを有し、可動子の移動経路に沿って平面状コイルを励磁して駆動する(特許文献1参照)。
【0003】
また、電磁石からなる固定子と、永久磁石を備えた可動子と、固定子を固定し、可動子を板バネ状の連結体により往復自在に支持するフレームと、を有し、電磁石に供給する電流の向きを交互に変えることで可動子を往復駆動させるものもある(特許文献2参照)。
【0004】
以下、図40ないし図43を用いて従来のリニアアクチュエータについて説明する。
【0005】
図40および図41は一従来例によるコアレスリニアモータを示す。図40の(a)は可動子の進行方向から見た正断面図、(b)は(a)のA−A線に沿う電機子部の側断面図、図41は電機子固定板を取り外した状態のコアレスリニアモータを示す平面図である。図40および図41において、101はコアレスリニアモータ、102は固定子、103は界磁ヨーク、104は永久磁石、105は可動子、106は電機子、107は電機子コイル、108は樹脂モールド、109は電機子固定板、110は界磁ヨーク固定板である。また、171は順方向巻きのU相コイル、172は逆方向巻きのU相コイル、174は順方向巻きのV相コイル、175は逆方向巻きのV相コイル、177は順方向巻きのW相コイル、178は逆方向巻きのW相コイルである。
【0006】
固定子102は、その長手方向に対向して界磁ヨーク固定板110を介して固定された2つの界磁ヨーク103と、界磁ヨークの内側に沿って交互に極性が異なるように配置された複数個の永久磁石104から構成されている。この永久磁石104は隣り合う磁石同士がPmピッチごとに配置され、電機子106を挟んで対向する磁石の極性が異極になるように配置されている。また、可動子105は、永久磁石104の列と磁気的空隙を介して挟み込むように対向配置されたコアレス型の電機子106で構成される。電機子106は、集中巻にした複数個のコイル群を樹脂モールド108により固定し、平板状に成形して成る電機子コイル107を有している。なお、電機子部106の上端には、図示しない負荷を載置するためのテーブルを固定する電機子固定板109が設けてある。電機子コイル107は、図40の(b)に示すように、左からU相の集中巻のコイル2個171、172を隣接して1個のコイル群とする。さらに、V相の集中巻のコイル2個174、175を隣接して1個のコイル群とし、W相の集中巻のコイル2個177、178を隣接して1個のコイル群としている。具体的には、順方向巻のU相コイル171、逆方向巻のU相コイル172、順方向巻のV相コイル174、逆方向巻のV相コイル175、順方向巻のW相コイル177、逆方向巻のW相コイル178の順に並んで6つのコイルが配置されている。また、磁石のピッチPmとした場合、コイル群は、(8/3×Pm)ピッチごとに可動子進行方向に並べて配置している。この集中巻のコイルの形状は、永久磁石と対向した主に推力を発生する2つのコイル辺が平行した形状となっている。このようなコアレスリニアモータは、集中巻にしたコイル群を重ねずに配置した電機子コイルに通電すると、電機子コイルと永久磁石との電磁作用により、可動子が直線移動する。
【0007】
図42および図43は別の従来例による振動型のリニアアクチュエータを示し、これは、往復式電気かみそり用のもので、固定子201と可動子202(図示例では2つの可動子202a、202b)、およびフレーム203から構成されている。固定子201は、磁性材料の燒結体や磁性材料の鉄板を積層したE字形のヨーク204と、このヨーク204の中央片に巻回されたコイル205からなる電磁石となっており、断面略U字状のフレーム203に溶接またはねじにより固定されている。
【0008】
2つの可動子202a,202bはいずれも合成樹脂よりなる骨組部材206にて主体が構成されており、一方の可動子202aの骨組部材206には磁性材料のバックヨーク207を介して永久磁石208が設けられている。他方の可動子202bにはバックヨーク207や永久磁石208は設けられていない。なお、可動子202bにバックヨーク207や永久磁石208を設け、可動子202aにこれらを設けなくてもよい。一方の可動子202aの骨組部材206は平面形状が略ロ字形の箱状に形成されており、他方の可動子202bが一方の可動子2aの両側片間に配設されている。可動子202a、202bには電気かみそりの可動刃に連結するための駆動子209が上方に突設されている。
【0009】
2つの可動子202a、202bは、その両端が前記フレーム203に板ばね状の連結体210を介して連結されている。連結体210は可動子202bに連結される中央の板ばね部210bと、可動子202aに下端が連結される左右一対の板ばね部210aとからなり、連結体210の上端が支持板211を介してフレーム203に溶接、ねじ等で固定されている。つまり、2つの可動子202a,202bが板ばね状の連結体210にてフレーム203から吊り下げられた形態となっている。支持板211は振動型リニアアクチュエータと他部品とを固定する基台となっている。可動子202aの内面のばね受け部212と可動子202bの駆動子209のばね受け部213との間には、可動子202a,202bの往復動方向において、圧縮コイルばねからなるばね214が配設されている。
【0010】
可動子202aに設けられた永久磁石208は、固定子201にギャップを介して上下方向に対向し、可動子202aの往復動方向に着磁されていることから、固定子201のコイル205に流す電流の方向に応じて連結体210を撓ませつつ左右に移動する。コイル205に流す電流の方向を適宜なタイミングで切り換えることよって可動子202aを往復運動させることができる。
【特許文献1】特開2001−086726号公報
【特許文献2】特開2001−309632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来のリニアアクチュエータにおいて、コアレスリニアモータの場合は可動子の可動範囲を大きく取るためには、界磁ヨークを長くするだけでなく磁界発生用の永久磁石をその可動範囲にあわせて設置しなければならない。このため、製作上の難易度は増し、価格も高価になってしまう。また、振動型のリニアアクチュエータの場合には、E字形のヨーク等の大きさによって決まるために、可動範囲を大きくするのは非常に困難なことである。
【0012】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、可動範囲を任意に大きく設定することができ、しかも安価で停止精度の高い電磁アクチュエータを実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電磁アクチュエータは、互いに間隔をおいて対向する一対の固定子と、前記一対の固定子の間に配置され、少なくとも一方の固定子に対してそれぞれ磁気吸着力を発生する複数の電磁石を備えた可動子と、前記可動子に係合し、前記一対の固定子の対向方向と垂直な一軸方向に前記可動子と共に移動可能である駆動部材と、を有し、前記複数の電磁石から発生する磁気吸着力によって前記可動子を揺動させ、前記一対の固定子の一方から他方へと交互に接触させることにより、前記可動子を前記一軸方向に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、構造を複雑化させることなく電磁アクチュエータの可動範囲を大きくとることが可能であり、また、最小位置決め精度も自由に設定できる。また、固定子との間の磁力(磁気吸着力)による吸着・解放により揺動する可動子と、一軸方向に移動する駆動部材を、互いに係合する別体とすることで、駆動部材を直線的に移動させることが可能となる。さらに、複数の電磁石のオンオフのタイミングで制御できるため、比較的簡易な駆動回路で駆動することができる。そして、駆動部材を中空構造とすることにより、内部にレンズを配設したレンズ駆動ユニットやカメラを提供できる。すなわち、駆動部材が中空構造で、内部に1枚以上のレンズを備えることより、高精度のレンズ駆動を可能し、レンズ駆動の位置決め精度(停止精度)の高いカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は一実施形態による電磁アクチュエータの構成を示す。可動子1は、可動子本体2と、可動子本体2に付設された複数のコイル3と、各コイル3で発生した磁束を通すヨーク4と、を有する。可動子1を挟み込むように、互いに間隔をおいて対向する一対の固定子5a、5bが配置され、案内手段であるガイド部材6は、ガイド溝7を有する。可動子本体2には駆動溝8が設けられ、駆動溝8に係合する駆動ピン9を有する中子(駆動部材)10は、ガイド部材6のガイド溝7に係合するガイドピン11を備える。各コイル3への電気信号を切り替えるスイッチング回路(駆動回路)12は、電源13に接続され、各コイル3は、各ヨーク4と共に電磁石を構成する。
【0017】
ここで、固定子5a、5bは、それぞれ磁性体からなり、図1に示す4個のコイル3は、一方の固定子5aに対向する2つのコイルを第1コイル3a、第2コイル3b、他方の固定子5bに対向する2つのコイルを第3コイル3c、第4コイル3dとする。そしてヨーク4は、それぞれ、第1コイル3a、第2コイル3b、第3コイル3c、第4コイル3dに隣接して設けられたものを第1ヨーク4a、第2ヨーク4b、第3ヨーク4c、第4ヨーク4dとする。
【0018】
図2のタイミングチャートに示すように、通電タイミングを制御するスイッチ回路12から、順次第1コイル3a、第2コイル3b、第3コイル3c、第4コイル3dに電気信号(パルス)が送信される。そして、図3に示すように、第1ヨーク4a、第2ヨーク4b、第3ヨーク4c、第4ヨーク4dの順に磁力(磁気吸着力)を発生し、逐次解除することで、それぞれ対向する固定子5a、5bに吸着・解放される。これによって可動子1は揺動し、対向する固定子5a、5bに交互に接触しながら、駆動ピン9を介して可動子1に係合する駆動部材である中子10と共に、固定子5a、5bの対向方向に対して垂直な一軸方向へ移動する。
【0019】
なお、上記のコイルおよびヨークからなる電磁石の数は限定されず、また、少なくとも一方の固定子を磁性体として、それに対向するヨークを磁力によって吸着する構成であればよい。
【実施例1】
【0020】
図1ないし図7は、実施例1による電磁アクチュエータを説明するための図である。本実施例の電磁アクチュエータは、4個のコイル3(3a〜3d)および同数のヨーク4(4a〜4d)を付設した可動子本体2を有する可動子1と、可動子1と所定の間隔を持ち、可動子1を挟み込むように配置された一対の固定子5a、5bと、を有する。また、可動子1の移動に伴って、固定子5a、5bの対向方向に対して垂直な一軸方向へ移動可能に設けられた中子10と、中子10の前記一軸方向以外の移動を制限し、前記一軸方向への移動を案内するガイド溝7を備えたガイド部材6を有する。さらに、各コイル3を励磁するための電気信号を、可動子1の駆動のために図2に示すタイミングで各コイル3に振り分けるスイッチング回路12を備えている。
【0021】
図3を用いて実施例1の駆動原理を説明する。まず、図3の(a)は可動子1のコイル3a〜3dのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により下側の固定子5bに接触し、停止している。
【0022】
図2のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図3の(b)〜(e)に示すように動作する。
【0023】
(1)第1コイル3aと第4コイル3dへの電気信号がほぼ同時にONされると、第1、第4ヨーク4a、4dが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに、第4ヨーク4dは固定子5bに、それぞれ吸着される(図3の(b)参照)。
【0024】
(2)第1コイル3aの電気信号がONのまま第4コイル3dをOFF、第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第4ヨーク4dは固定子5bから離れ、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着する。
【0025】
(3)次に、第2コイル3bの電気信号をONのまま、第1コイル3aの電気信号をOFF、第3コイル3cの電気信号をONする。これにより、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着したまま第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着する(図3の(d)参照)。
【0026】
(4)次に、第3コイル3cの電気信号がONのまま第2コイル3bをOFF、第4コイル3dをONすると、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着したまま第2ヨーク4bは固定子5aから離れ、第4ヨーク4dが固定子5bに吸着する(図3の(e)参照)。
【0027】
以上(1)〜(4)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返す。これによって、固定子5a、5bの対向方向に垂直で、第1コイル3aと第2コイル3bの配列方向、または、第3コイル3cと第4コイル3dの配列方向に平行な一軸方向(図3の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0028】
上記と逆の手順でコイル3a〜3dに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図3の左方向)に可動子1を駆動することができる。
【0029】
ここで、可動子1と中子10は、固定子5a、5bの対向方向に対しては拘束することなく、また、固定子5a、5bの対向方向に略垂直な方向に対しては連動するように、駆動ピン9と駆動溝8で連結されている。このため、可動子1の移動に伴って、ガイド部材6のガイド溝7に沿って中子10が直線移動する。
【0030】
図4および図5は、本実施例の第1および第2の変形例によるタイミングチャートを示す。また、図6および図7は、それぞれ、第1および第2の変形例による動作を示す。
【0031】
まず、図4のタイミングチャートによる第1の変形例を説明する。図6の(a)は、可動子1のコイル3a〜3dのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0032】
図4のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図6の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0033】
(1)第1コイル3aと第2コイル3bへの電気信号がほぼ同時にONされると、第1、第2ヨーク4a、4bが磁石となり、第1ヨーク4a、第2ヨーク4bはともに、固定子5aに吸着される(図6の(b)参照)。
【0034】
(2)次に、第2コイル3bの電気信号がONのまま第1コイル3aをOFF、第3コイル3cをONすると、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着したまま第1ヨーク4aは固定子5aから離れ、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着する(図6の(c)参照)。
【0035】
(3)次に、第3コイル3cの電気信号をONのまま、第2コイル3bの電気信号をOFF、第4コイル3dの電気信号をONすると、第2ヨーク4bが固定子5aから離れ、第4ヨーク4dが固定子5bに吸着する(図6の(d)参照)。
【0036】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図6の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0037】
また、上記と逆の手順でコイル3a〜3dに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図6の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【0038】
次に、図5のタイミングチャートによる第2の変形例を説明する。図7の(a)は可動子1のコイル3a〜3dのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0039】
図5のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図7の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0040】
(1)第1コイル3aと第4コイル3dへの電気信号がほぼ同時にONされると、第1、第4ヨーク4a、4dが電磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに、第4ヨーク4dは固定子5bに吸着される(図7の(b)参照)。
【0041】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第4コイル3dをOFF、第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第4ヨーク4dは固定子5bから離れ、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着する(図7の(c)参照)。
【0042】
(3)次に、第1コイル3aと第2コイル3bの電気信号をOFFし、同時に第3コイル3c、第4コイル3dの電気信号をONする。これにより、第1ヨーク4aと第2ヨーク4bが固定子5aから離れ、第3ヨーク4cと第4ヨーク4dが固定子5bに吸着する(図7の(d)参照)。
【0043】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図7の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0044】
また、上記と逆の手順でコイル3a〜3dに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図7の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【実施例2】
【0045】
図8は、実施例2による電磁アクチュエータを示す。本実施例では、実施例1と同じ構成の可動子1、可動子本体2、コイル3およびヨーク4を有する。さらに、一端が可動子1に設けられた駆動ピン9を中心として回動自由に設けられた連結部材14を有し、可動子1の移動に伴って直線移動する中子10は、連結ピン15によって連結部材14に連結される。中子10の一軸方向への移動を案内するガイド溝7を有するガイド部材6、各コイル3を励磁するための電気信号を供給する電源13、電源13から供給された電気信号を各コイル3に振り分けるスイッチング回路12は、実施例1と同様である。そして、図2ないし図7に示した駆動方法により駆動することができる。
【実施例3】
【0046】
図9ないし図15は実施例3を示す。
【0047】
本実施例の電磁アクチュエータの可動子1は、図9に示すように、3個のコイル3(3a〜3c)および同数のヨーク4(4a〜4c)を有する。第1コイル3aおよび第1ヨーク4aは上方の固定子5aに対向して磁力を発生する電磁石となる。また、第2、第3コイル3b、3cおよび第2、第3ヨーク4b、4cはそれぞれ下方の固定子5bに対向して磁力を発生する電磁石となる。その他の構成は実施例1と同様であるから説明は省略する。スイッチング回路12は、各コイル3を励磁するための電気信号を、図10に示すタイミングで各コイル3に振り分ける。
【0048】
図11を用いて実施例3の駆動原理を説明する。まず、図11の(a)は可動子1のコイル3a〜3cのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により下側の固定子5bに接触し、停止している。
【0049】
図10のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図11の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0050】
(1)第1コイル3aへの電気信号がONされると、第1ヨーク4aが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに吸着される(図11の(b)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0051】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第2ヨーク4bが固定子5bに吸着される(図11の(c)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0052】
(3)次に、第2コイル3bの電気信号をONのまま、第1コイル3aの電気信号をOFFする。これにより、第2ヨーク4bが固定子5bに吸着したまま第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着し、可動子1は固定子5b側に移動する(図11の(d)参照)。
【0053】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返す。これによって、固定子5a、5bの対向方向に垂直で、第2コイル3bと第3コイル3cの配列方向に平行な一軸方向(図11の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0054】
上記と逆の手順でコイル3a〜3cに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図11の左方向)に可動子1を駆動することができる。
【0055】
ここで、可動子1と中子10は、固定子5a、5bの対向方向に対しては拘束することなく、また、固定子5a、5bの対向方向に略垂直な方向に対しては連動するように、駆動ピン9と駆動溝8で連結されている。このため、可動子1の移動に伴って、ガイド部材6のガイド溝7に沿って中子10が直線移動する。
【0056】
図12および図13は、本実施例の第1および第2の変形例によるタイミングチャートを示す。また、図14および図15は、それぞれ、第1および第2の変形例による動作を示す。
【0057】
まず、図12のタイミングチャートによる第1の変形例を説明する。図14の(a)は、可動子1のコイル3a〜3cのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0058】
図12のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図14の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0059】
(1)第1コイル3aと第3コイル3cへの電気信号が同時にONされると、第1、第3ヨーク4a、4cが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに、第3ヨーク4cは固定子5bに吸着される(図14の(b)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0060】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第3コイル3cをOFFし、第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第3ヨーク4cは固定子5bから離れ、第2ヨーク4bが固定子5bに吸着する(図14の(c)参照)。
【0061】
(3)次に、第2コイル3bの電気信号をONのまま、第1コイル3aの電気信号をOFFし、第3コイル3cの電気信号をONする。これにより、第2ヨーク4bが固定子5bに吸着したまま第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着する(図14の(d)参照)。これによって、可動子1は固定子5b側に移動する。
【0062】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図14の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0063】
また、上記と逆の手順でコイル3a〜3cに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図14の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【0064】
次に、図13のタイミングチャートによる第2の変形例を説明する。図15の(a)は可動子1のコイル3a〜3cのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0065】
図13のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図15の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0066】
(1)第1コイル3aと第3コイル3cへの電気信号が同時にONされると、第1、第3ヨーク4a、4cが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに、第3ヨーク4cは固定子5bに吸着される(図15の(b)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0067】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第3コイル3cをOFFすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第3ヨーク4cは固定子5bから離れる(図15の(c)参照)。
【0068】
(3)次に、第1コイル3aの電気信号をOFFし、第2コイル3bと第3コイル3cの電気信号をONすると、第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、第2ヨーク4bと第3ヨーク4cが固定子5bに吸着する(図15の(d)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0069】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図15の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0070】
また、上記と逆の手順でコイル3a〜3cに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図15の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【実施例4】
【0071】
図16は、実施例4による電磁アクチュエータを示す。本実施例では、実施例3と同じ構成の可動子1、可動子本体2、コイル3およびヨーク4を有する。さらに、一端が可動子1に設けられた駆動ピン9を中心として回動自由に設けられた連結部材14を有し、可動子1の移動に伴って直線移動する中子10は、連結ピン15によって連結部材14に連結される。中子10の一軸方向への移動を案内するガイド溝7を有するガイド部材6、各コイル3を励磁するための電気信号を供給する電源13、電源13から供給された電気信号を各コイル3に振り分けるスイッチング回路12は、実施例3と同様である。そして、図10ないし図15に示した駆動方法により駆動することができる。
【実施例5】
【0072】
図17ないし図23は実施例5を示す。本実施例の電磁アクチュエータの可動子1は、図17に示すように、3個のコイル3(3a〜3c)および同数のヨーク4(4a〜4c)を有する。第1、第2コイル3a、3bおよび第1、第2ヨーク4a、4bはそれぞれ上方の固定子5aに対向して磁力を発生する電磁石となる。また、第3コイル3cおよび第3ヨーク4cは下方の固定子5bに対向して磁力を発生する電磁石となる。その他の構成は実施例1と同様であるから説明は省略する。スイッチング回路12は、各コイル3を励磁するための電気信号を、図18に示すタイミングで各コイル3に振り分ける。
【0073】
図19を用いて実施例5の駆動原理を説明する。まず、図19の(a)は可動子1のコイル3a〜3cのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により下側の固定子5bに接触し、停止している。
【0074】
図18のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図19の(b)〜(e)に示すように動作する。
【0075】
(1)第1コイル3aと第3コイル3cへの電気信号がONされると、第1、第3ヨーク4a、4cが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに、第3ヨーク4cは固定子5bに、それぞれ吸着される(図19の(b)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0076】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第4コイル3cをOFFし、第2コイル3bをONすると、第3ヨーク4cが固定子5bから離れ、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第2ヨーク4bが固定子5aに吸着する(図19の(c)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0077】
(3)次に、第2コイル3bの電気信号をONのまま、第1コイル3aの電気信号をOFF、第3コイル3cの電気信号をONする。これにより、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着したまま第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着する(図19の(d)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0078】
(4)次に、第3コイル3cの電気信号がONのまま第2コイル3bをOFFすると、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着したまま第2ヨーク4bは固定子5aから離れる(図19の(e)参照)。これによって可動子1は固定子5b側に移動する。
【0079】
以上(1)〜(4)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返す。これによって、固定子5a、5bの対向方向に垂直で、第1コイル3aと第2コイル3bの配列方向に平行な一軸方向(図19の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0080】
上記と逆の手順でコイル3a〜3cに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図19の左方向)に可動子1を駆動することができる。
【0081】
ここで、可動子1と中子10は、固定子5a、5bの対向方向に対しては拘束することなく、また、固定子5a、5bの対向方向に略垂直な方向に対しては連動するように、駆動ピン9と駆動溝8で連結されている。このため、可動子1の移動に伴って、ガイド部材6のガイド溝7に沿って中子10が直線移動する。
【0082】
図20および図21は、本実施例の第1および第2の変形例によるタイミングチャートを示す。また、図22および図23は、それぞれ、第1および第2の変形例による動作を示す。
【0083】
まず、図20のタイミングチャートによる第1の変形例を説明する。図22の(a)は、可動子1のコイル3a〜3cのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0084】
図20のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図22の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0085】
(1)第2コイル3bの電気信号がOFFのまま、第1、第3コイル3a、3cをONすると、第1ヨーク4aは固定子5aに、第3ヨーク4cは固定子5bに吸着される(図22の(b)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0086】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第3コイル3cをOFF、第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第3ヨーク4cは固定子5bから離れ、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着する(図22の(c)参照)。
【0087】
(3)次に、第1コイル3aと第2コイル3bへの電気信号を共にOFF、第3コイル3cへの電気信号をONすると、第1ヨーク4aと第2ヨーク4bが固定子5aから離れ、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着する(図22の(d)参照)。これによって可動子1は固定子5b側へ移動する。
【0088】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図22の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0089】
また、上記と逆の手順でコイル3a〜3cに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図22の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【0090】
次に、図21のタイミングチャートによる第2の変形例を説明する。図23の(a)は可動子1のコイル3a〜3cのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0091】
図21のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図23の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0092】
(1)第3コイル3cへの電気信号はONせずに、第1コイル3aと第2コイル3bへの電気信号がONされると、第1、第2ヨーク4a、4bが磁石となり、第1ヨーク4aと第2ヨーク4bは固定子5aに吸着される(図23の(b)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0093】
(2)次に第2コイル3bの電気信号がONのまま第1コイル3aをOFF、第3コイル3cをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着したまま第3ヨーク4cは固定子5bに吸着する(図23の(c)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0094】
(3)次に、第1コイル3aの電気信号をOFFのまま、第3コイル3cの電気信号をONのままとし、第2コイル3bへの電気信号をOFFすると、第3ヨーク4cが固定子5bに吸着したまま第2ヨーク4bが固定子5aから離れる(図23の(d)参照)。これによって、第3ヨーク4cの固定子5bとの接触面が固定子5bの接触面に倣うように、可動子1は姿勢変化する。
【0095】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図23の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0096】
また、上記と逆の手順でコイル3a〜3cに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図23の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【実施例6】
【0097】
図24は、実施例6による電磁アクチュエータを示す。本実施例では、実施例5と同じ構成の可動子1、可動子本体2、コイル3およびヨーク4を有する。さらに、一端が可動子1に設けられた駆動ピン9を中心として回動自由に設けられた連結部材14を有し、可動子1の移動に伴って直線移動する中子10は、連結ピン15によって連結部材14に連結される。中子10の一軸方向への移動を案内するガイド溝7を有するガイド部材6、各コイル3を励磁するための電気信号を供給する電源13、電源13から供給された電気信号を各コイル3に振り分けるスイッチング回路12は、実施例5と同様である。そして、図18ないし図23に示した駆動方法により駆動することができる。
【実施例7】
【0098】
図25ないし図27は、実施例7を示す。本実施例の電磁アクチュエータの可動子1は、図25に示すように、2個のコイル3(3a、3b)および同数のヨーク4(4a、4b)を有する。第1コイル3aおよび第1ヨーク4aは上方の固定子5aに対向して磁力を発生する電磁石となる。また、第2コイル3bおよび第2ヨーク4bは下方の固定子5bに対向して磁力を発生する電磁石となる。可動子本体2の一部は、重力によって下方の固定子5bに接触する。その他の構成は実施例1と同様であるから説明は省略する。スイッチング回路12は、各コイル3を励磁するための電気信号を、図26に示すタイミングで各コイル3に振り分ける。
【0099】
図27を用いて実施例7の駆動原理を説明する。本実施例は、図示下側方向が重力の作用する方向またはそれに近い方向である場合にのみ、図示左右方向に可動子1を駆動することが可能である。まず、図27の(a)は可動子1のコイル3a、3bのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により下側の固定子5bに接触し、停止している。
【0100】
図26のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図27の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0101】
(1)第2コイル3bに電気信号がONされずに、第1コイル3aへの電気信号がONされると、第1ヨーク4aが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに吸着される(図27の(b)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0102】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第2ヨーク4bは固定子5bに吸着される(図27の(c)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0103】
(3)次に、第2コイル3bの電気信号をONのまま、第1コイル3aの電気信号をOFFすると、第1ヨーク4aが固定子5aから離れ、重力により可動子1は固定子5b側に移動する(図27の(d)参照)。
【0104】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返す。これによって、固定子5a、5bの対向方向に垂直な一軸方向(図27の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0105】
上記と逆の手順でコイル3a、3bに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図27の左方向)に可動子1を駆動することができる。
【0106】
ここで、可動子1と中子10は、固定子5a、5bの対向方向に対しては拘束することなく、また、固定子5a、5bの対向方向に略垂直な方向に対しては連動するように、駆動ピン9と駆動溝8で連結されている。このため、可動子1の移動に伴って、ガイド部材6のガイド溝7に沿って中子10が直線移動する。
【実施例8】
【0107】
図28は、実施例8による電磁アクチュエータを示す。本実施例では、実施例7と同じ構成の可動子1、可動子本体2、コイル3およびヨーク4を有する。さらに、一端が可動子1に設けられた駆動ピン9を中心として回動自由に設けられた連結部材14を有し、可動子1の移動に伴って直線移動する中子10は、連結ピン15によって連結部材14に連結される。中子10の一軸方向への移動を案内するガイド溝7を有するガイド部材6、各コイル3を励磁するための電気信号を供給する電源13、電源13から供給された電気信号を各コイル3に振り分けるスイッチング回路12は、実施例7と同様である。そして、図26および図27に示した駆動方法により駆動することができる。
【実施例9】
【0108】
図29ないし図35は、実施例9を示す。本実施例の電磁アクチュエータの可動子1は、図29に示すように、2個のコイル3(3a、3b)および同数のヨーク4(4a、4b)を有する。第1、第2コイル3a、3bおよび第1、第2ヨーク4a、4bはそれぞれ上方の固定子5aに対向して磁力を発生する電磁石となる。また、可動子本体2は、重力によって下方の固定子5bに接触する。その他の構成は実施例1と同様であるから説明は省略する。スイッチング回路12は、各コイル3を励磁するための電気信号を、図30に示すタイミングで各コイル3に振り分ける。
【0109】
図31を用いて実施例9の駆動原理を説明する。本実施例は、図示下側方向が重力の作用する方向またはそれに近い方向である場合についてのみ、図示左右方向に可動子1を駆動することが可能である。まず、図31の(a)は可動子1のコイル3a、3bのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により下側の固定子5bに接触し、停止している。
【0110】
図30のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図31の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0111】
(1)第1コイル3a、第2コイル3bへの電気信号がONされると、第1、第2ヨーク4a、4bは磁力により固定子5aに吸着される(図31の(b)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0112】
(2)次に、第2コイル3bの電気信号がONのまま第1コイル3aをOFFすると、第2ヨーク4bが固定子5aに吸着したまま第1ヨーク4aは固定子5aから離れる(図31の(c)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0113】
(3)次に、第1コイル3aの電気信号をOFFしたまま、第2コイル3bの電気信号をOFFすると、第1ヨーク4aおよび第2ヨーク4bは固定子5aへの吸着力を失い、重力により可動子1は固定子5b側に移動する(図31の(d)参照)。
【0114】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返す。これによって、固定子5a、5bの対向方向に垂直で、第1コイル3aと第2コイル3bの配列方向に平行な一軸方向(図31の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0115】
上記と逆の手順でコイル3a、3bに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図31の左方向)に可動子1を駆動することができる。
【0116】
ここで、可動子1と中子10が固定子5a、5bの対向方向に対しては拘束することなく、また、固定子5a、5bの対向方向に略垂直な方向に対しては連動するように、駆動ピン9と駆動溝8で連結されている。このため、可動子1の移動に伴って、ガイド部材6のガイド溝7に沿って中子10が直線移動する。
【0117】
図32および図33は、本実施例の第1および第2の変形例によるタイミングチャートを示す。また、図34および図35は、それぞれ、第1および第2の変形例による動作を示す。
【0118】
まず、図32のタイミングチャートによる第1の変形例を説明する。図34の(a)は、可動子1のコイル3a、3bのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0119】
図32のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図34の(b)〜(e)に示すように動作する。
【0120】
(1)第2コイル3bに電気信号がONされずに、第1コイル3aへの電気信号がONされると、第1ヨーク4aが磁石となり、第1ヨーク4aは固定子5aに吸着される。可動子1は第2ヨーク4b側が重力により固定子5bに接触したままとなる(図34の(b)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0121】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第2ヨーク4bは固定子5aに吸着される(図34の(c)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0122】
(3)次に、第2コイル3bへの電気信号をONのまま、第1コイル3aの電気信号をOFFする。これにより、第2ヨーク4bは固定子5aに吸着したまま、可動子1の第1ヨーク4a側が固定子5aへの吸着力を失い、重力により固定子5b側に落ちる(図34の(d)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0123】
(4)次に、第1コイル3aへの電気信号をOFFしたまま第2コイル3bへの電気信号をOFFすると、可動子1は重力により落下し、固定子5bに接触する(図34の(e)参照)。
【0124】
以上(1)〜(4)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図34の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0125】
また、上記と逆の手順でコイル3a、3bに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図34の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【0126】
次に、図33のタイミングチャートによる第2の変形例を説明する。図35の(a)は可動子1のコイル3a、3bのいずれにも電気信号が印加されない非駆動時の状態を示す。一対の固定子5a、5bの間に設けられた可動子1は重力により固定子5bに接触し、停止している。
【0127】
次に図33のタイミングチャートに示すとおりに電気信号を送信すると、図35の(b)〜(d)に示すように動作する。
【0128】
(1)第2コイル3bへの電気信号がONされずに、第1コイル3aへの電気信号がONされると、第1ヨーク4aが磁石となり、固定子5aに吸着され、可動子1は第2ヨーク4b側が重力により固定子5bに接触したままとなる(図35の(b)参照)。これによって可動子1は、固定子5a、5b間の距離と可動子1の隙間に応じて生じる傾きを持つ。
【0129】
(2)次に、第1コイル3aの電気信号がONのまま第2コイル3bをONすると、第1ヨーク4aが固定子5aに吸着したまま第2ヨーク4bも固定子5aに吸着する(図35の(c)参照)。これによって可動子1は固定子5a側に移動する。
【0130】
(3)次に、第1コイル3aと第2コイル3bへの電気信号を共にOFFすると、第1ヨーク4aと第2ヨーク4bの吸着力は失われ、可動子1は重力により落下し、固定子5bに接触する(図35の(d)参照)。
【0131】
以上(1)〜(3)の動作を繰り返すことにより、可動子1は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動を繰り返し、前記一軸方向(図35の右方向)に可動子1を駆動することができる。
【0132】
また、上記と逆の手順でコイル3a、3bに電気信号を印加すれば、上記とは逆方向(図35の左方向)に可動子1を駆動することができる。そして、中子10は可動子1の移動に伴って直線移動する。
【実施例10】
【0133】
図36は、実施例10による電磁アクチュエータを示す。本実施例では、実施例9と同じ構成の可動子1、可動子本体2、コイル3およびヨーク4を有する。さらに、一端が可動子1に設けられた駆動ピン9を中心として回動自由に設けられた連結部材14を有し、可動子1の移動に伴って直線移動する中子10は、連結ピン15によって連結部材14に連結される。中子10の一軸方向への移動を案内するガイド溝7を有するガイド部材6、各コイル3を励磁するための電気信号を供給する電源13、電源13から供給された電気信号を各コイル3に振り分けるスイッチング回路12は、実施例9と同様である。そして、図30ないし図35に示した駆動方法により駆動することができる。
【0134】
ここで、ヨーク4の先端断面形状は、実施例1〜10では半円形状としているが、可動子1を駆動する際に接触する固定子5a、5bの対向面との角度変化を妨げることなく、良好な透磁性を示すものであれば、半円形状に限るものではない。
【0135】
例えば、図37の(a)〜(c)に示すような楕円形状41a、円柱状41b、角柱状41c、あるいは、(d)〜(f)に示すような異形柱状41d、41e、41fを使用できる。また、必要な磁気吸着力が得られるならば、ヨークを省略することもできる。
【0136】
また、図38の(a)〜(f)に示すように、ヨークとコイルで形成される電磁石により発生する磁力が効率よく働く形状であれば、様々なヨーク形状42a、42b、42c、42d、42e、42fを用いることができる。さらに、2個以上のコイルとヨークを、可動子の駆動方向と直角で、磁力を作用させる固定子に対して平行に並べて、一つの電磁石として用いても構わない。
【0137】
図39は、実施例1による電磁アクチュエータを用いたレンズ駆動ユニットを有するカメラモジュール(カメラ)16を示す図である。同図の左右方向が光軸方向(一軸方向)で、中子10は光軸方向に貫通した中空部を有する中空構造をしており、その内部にレンズ20が配設されている。中子10は前述の連結機構により可動子1と連結され、光軸方向にのみ移動できるようになっている。可動子1は、複数のコイル3と同数のヨーク4と可動子本体2とから構成される。また、可動子1と所定の間隔を持ち、可動子1を挟み込むように配置された一対の固定子5a、5bを鏡筒17の内部に設けてある。鏡筒17の全面は前カバー18によって不必要な光が鏡筒17内に入らないように遮蔽されている。カメラケース23は、内部に撮像素子22を備え、鏡筒17と接続されており、レンズ20を通過した光が、カメラケース23の鏡筒17側内部に設けられたIRカットフィルター21を通って、撮像素子22上に到達する。
【0138】
このカメラモジュール16においては、図2ないし図7に基づいて説明した駆動方法を用いて中子10を駆動することにより、レンズ20を通過した光の像が、撮像素子22上で結像するように、レンズ20の位置を光軸方向に移動させることができる。この移動は、可動子1と固定子5a、5b間の隙間に応じた微少な移動の繰り返しによって生じるので、高精度の位置決めを可能とする。
【0139】
なお、このカメラのレンズ駆動ユニットとして、実施例1ないし実施例10の電磁アクチュエータのいずれかを任意に選択して搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施例1による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図2】実施例1のコイルに印加する電気信号を示すタイミングチャートである。
【図3】図2のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図4】実施例1の第1の変形例によるタイミングチャートである。
【図5】実施例1の第2の変形例によるタイミングチャートである。
【図6】図4のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図7】図5のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図8】実施例2による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図9】実施例3による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図10】実施例3のコイルに印加する電気信号を示すタイミングチャートである。
【図11】図10のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図12】実施例3の第1の変形例によるタイミングチャートである。
【図13】実施例3の第2の変形例によるタイミングチャートである。
【図14】図12のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図15】図13のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図16】実施例4による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図17】実施例5による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図18】実施例5のコイルに印加する電気信号を示すタイミングチャートである。
【図19】図18のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図20】実施例5の第1の変形例によるタイミングチャートである。
【図21】実施例5の第2の変形例によるタイミングチャートである。
【図22】図20のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図23】図21のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図24】実施例6による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図25】実施例7による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図26】実施例7のコイルに印加する電気信号を示すタイミングチャートである。
【図27】図26のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図28】実施例8による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図29】実施例9による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図30】実施例9のコイルに印加する電気信号を示すタイミングチャートである。
【図31】図30のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図32】実施例9の第1の変形例によるタイミングチャートである。
【図33】実施例9の第2の変形例によるタイミングチャートである。
【図34】図32のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図35】図33のタイミングチャートによる動作を説明する図である。
【図36】実施例10による電磁アクチュエータを示す模式図である。
【図37】ヨーク形状例を示す図である。
【図38】ヨーク形状例を示す図である。
【図39】実施例1による電磁アクチュエータをレンズ駆動に用いたカメラを示す模式図である。
【図40】従来例1によるコアレスリニアモータを示す断面図である。
【図41】図40のコアレスリニアモータを電機子固定板を取り外した状態で示す平面図である。
【図42】従来例2による振動型アクチュエータを示す斜視図である。
【図43】図42の振動型アクチュエータを分解して示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0141】
1 可動子
2 可動子本体
3 コイル
3a 第1コイル
3b 第2コイル
3c 第3コイル
3d 第4コイル
4 ヨーク
4a 第1ヨーク
4b 第2ヨーク
4c 第3ヨーク
4d 第4ヨーク
5a、5b 固定子
6 ガイド部材
7 ガイド溝
9 駆動ピン
10 中子
12 スイッチング回路
13 電源
14 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて対向する一対の固定子と、前記一対の固定子の間に配置され、少なくとも一方の固定子に対してそれぞれ磁気吸着力を発生する複数の電磁石を備えた可動子と、前記可動子に係合し、前記一対の固定子の対向方向と垂直な一軸方向に前記可動子と共に移動可能である駆動部材と、を有し、前記複数の電磁石から発生する磁気吸着力によって前記可動子を揺動させ、前記一対の固定子の一方から他方へと交互に接触させることにより、前記可動子を前記一軸方向に移動させることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動部材を前記一軸方向に案内する案内手段を有することを特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記複数の電磁石のうちの一つが磁気吸着力によって一方の固定子に吸着された状態で、他の電磁石の磁気吸着力が解除されることで前記可動子が揺動し、他方の固定子に接触するように、各電磁石の通電タイミングを制御することを特徴とする請求項1または2記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項記載の電磁アクチュエータと、前記電磁アクチュエータによって光軸方向に移動するレンズを有することを特徴とするレンズ駆動ユニット。
【請求項5】
前記電磁アクチュエータの前記駆動部材は中空部を有し、前記中空部の内部に前記レンズを配設したことを特徴とする請求項4記載のレンズ駆動ユニット。
【請求項6】
請求項4または5記載のレンズ駆動ユニットを用いたことを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2008−259257(P2008−259257A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95988(P2007−95988)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】