説明

電磁弁

【課題】ハーネスをボビンに固定された端子にはんだ付けをして接合すると共に、ハーネスをクランプ部材に固定するハーネス接続部を備えた電磁弁を提供する。
【解決手段】ハーネス接続部は樹脂成形体に一体的に設けられハーネス41を電気的に接続するハーネスクランプ本体42と、ハーネスクランプ本体42に係合すると共に、ハーネス41を挟み込む溝47を底部に設けた凹状のガイド部を有するハーネス保持部48と、ガイド部に嵌挿されてハーネス41を挟み込み溝47に整合する凸部49を形成する押圧部43bを有する共に、ハーネスクランプ本体42に係止されるクランプカバー43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関し、さらに詳細には電磁弁及び電磁アクチュエータに使用される巻き線コイルの巻末を製品外部のハーネスに接続するハーネス接続部を備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動弁駆動用のキャンド型ステッピングモータ等で使用されるステータコイル(電磁コイル)や電磁弁の電磁ソレノイドで使用される電磁コイルの巻線と導通接続されるリード線(ハーネス)との接続は、コネクタによるものや、内蔵の電気配線基板にはんだ付けして行うものなどが一般的である。
【0003】
そこで、特許文献1に示すようにステータコイル10は、上下2段の円筒状の巻線部11、12および電気絶縁性樹脂製のボビン13、14と、各々複数個の磁極歯15、17を櫛歯状に形成されてステータ構成部材を兼ねた上下の金属製の外凾16、18と、各々複数個の磁極歯19、21を櫛歯状に形成された金属製のステータ構成部材20、22と、係合爪23を有する金属製のマウント用ブラケット板24と、巻線部11、12の巻線と導通接続されているコイル通電用の角ピン(複数個)25と、ゴム又は合成樹脂製の外カバー26と、を有している。
【0004】
コイル通電用の角ピン25には、複数本のビニル絶縁被覆のリード線99の整列体よりなるハーネス100の各リード線99の芯線(導体)98の先端が直接に導通接続されている。この導通接続は、角ピン25にマグネットワイヤを絡ませてはんだ付けし、リード線99の芯線98の先端を角ピン25の下面部に当接させて両者の上下から固定金具27をかしめ装着することにより行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−199279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている電磁コイルのリード線保持構造では、ハーネスを固定する強度が弱く、振動や引っ張り力がハーネスをはんだ付けするはんだ部に作用する場合があるため、該はんだ部が剥離するという問題があった。
本発明は係る課題を解決するためになされたもので、ハーネスをボビンに固定された端子にはんだ付けをして接合するとともに、ハーネスをクランプ部材に固定するハーネス接続部を備えた電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、円筒壁に複数の流体通路を有するスリーブと、前記スリーブ内を往復動することにより前記流体通路を切り換えるスプールと、前記スプールの軸心方向に直列に配置されたプランジャと、前記プランジャを支持する円筒形状のコア及び電磁力を付与するコイルを保持するケースと、前記コイル及びボビンを封止する樹脂成形体に設けられてコイルに導通するハーネスを結線したハーネス接続部と、
を備えた電磁弁において、
前記ハーネス接続部は、
前記樹脂成形体に一体的に設けられ前記ハーネスを電気的に接続するハーネスクランプ本体と、
前記ハーネスクランプ本体に係合すると共に、前記ハーネスを挟み込む溝を底部に設けた凹状のガイド部を有するハーネス保持部と、
前記ガイド部間に嵌挿されて前記ハーネスを挟み込み前記溝に整合する凸部を形成する押圧部を有すると共に、前記ハーネス保持部に係合して前記ハーネスクランプ本体に係止されるクランプカバーと、
を有し、前記ガイド部及び前記押圧部により前記溝及び前記凸部を整合して前記ハーネスを挟み込むクランプ部を形成し、前記溝及び前記凸部に設けた屈曲部により前記ハーネスを押圧する屈曲押さえ部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ハーネスに加わる引張り力を屈曲部およびクランプ部で受けることが出来るため、ハーネスの抜け荷重が強くなり、はんだ部に加わる力を軽減することができる。よって、はんだ部の剥離強さを向上することが出来る。
さらにまた、端子側のクランプ部はハーネスを挟み込み常時保持しているためハーネスとクランプ部とハーネスクランプに設けられている端子は一体となっており、製品全体の振動などによるハーネスの単独の振動を防止することができるため、ハーネスと端子とのはんだ付けにおける振動によるストレスが加わらず、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る電磁弁の概略構造を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すハーネス接続部の斜視外形図である。
【図3】図2に示すハーネスクランプ本体の概略構造図である。
【図4】図2に示すハーネスクランプ本体の分解斜視図である。
【図5】図2に示すハーネス接続部の概略構造図である。
【図6】図5のVI−VI線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る電磁弁10について図面により詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る電磁弁10の概略構造を示す縦断面図である。
電磁弁10は、磁性体の金属材料であるハウジング11を有し、該ハウジング11は円筒部12とフランジ部13とを備える。前記ハウジング11の内方には、嵌合孔14が貫通して形成される。この場合、前記円筒部12は固定鉄芯としての機能を有する。
【0011】
軸受機構15は軸心方向に沿って比較的に肉厚が薄い円筒形状の樹脂製の軸受部材16と、該軸受部材16に嵌挿される磁性体の金属製のボール17と、を備える。軸受部材16には、軸心方向に沿って離間した位置に円周方向に等間隔に複数個、例えば3個のボール17が球面形状の穴(図示しない)に回転自在に嵌挿されている。なお、ボール17を軸受部材16に嵌挿するときは、例えば圧入により行われるが、加締めても勿論よい。よって、ボール17は軸受部材16に嵌挿された際に、該ボール17の外径部の一部が該軸受部材16の穴より突出した状態に装着されている。
【0012】
ハウジング11の外周にはソレノイド20が配設され、該ソレノイド20はボビン21にコイル22が巻き回されカバー25によって覆われている。カバー25には、ハウジング11の嵌合孔14と同軸に穴27が形成されており、該穴27にはロッド18に固着された可動鉄芯28が変位自在に遊嵌されている。なお、ソレノイド20、ボビン21及び後述するクランプ本体45は樹脂成形体23によって一体に封止されている。
【0013】
参照符号29はスリーブで、ハウジング11に当接した状態でカバー25の一端を例えば加締めることによりハウジング11と一体化される。前記スリーブ29には、嵌合孔14と同軸にスリーブ孔30が穿設され、該スリーブ孔30にスプール31が摺動自在に嵌挿されている。前記スリーブ29には、ハウジング11側から順に図示しないタンクとスリーブ孔30とを連通するタンク通路32と、図示しないアクチュエータとスリーブ孔30とを連通する制御通路33と、図示しないポンプとスリーブ孔30とを連通する供給通路34とを備える。
【0014】
前記スプール31は、第1のランド部35及び第2のランド部36が間隔をおいて軸心方向に沿って形成されており、第1のランド部35によりタンク通路32と制御通路33との連通制御が行われ、第2のランド部36により制御通路33と供給通路34との連通制御が行われる。スリーブ孔30にはアジャスタ37が螺着されており、該アジャスタ37と第2ランド部36との間にはスプール31をロッド18に当接する方向に付勢するばね部材38が介装されている。前記ボビン21には、ハーネス41を結線し固定するハーネス接続部40が一体的に形成されている。
【0015】
図2に示すように、ハーネス接続部40はボビン21と一体に形成されたハーネスクランプ本体(クランプ部)42と、該ハーネスクランプ本体42に取り付けられてハーネス41を押圧するクランプカバー(クランプ部)43と、を備える。
【0016】
図3及び図4に示すように、ハーネスクランプ本体42はハーネス41をはんだ付けにより結線するL字状に屈曲された一対の端子44と、該端子44を取り付けたクランプ本体45と、ハーネス41の外径を挟持して該ハーネス41を端子44と略同一方向に指向する一対の溝47を形成すると共に、クランプ本体45に係合するハーネス保持部48と、を備える。
溝47は直線部の長さが少なくともハーネス41の直径の三倍以上を備え、かつ幅はハーネス41の直径より僅かに小さく形成されており、ハーネス41を挟み込み固定する機能を有する。また、溝47の中でハーネス41を屈曲状態で保持する屈曲部46が形成されている。なお、溝47は底部が例えばU字状に形成されているが、半円形状でよく又はV字状に形成してよい。
【0017】
図4において,クランプ本体45は電磁弁10の軸心方向に沿って樹脂成形体23の上方に設けられた平板状の母材45aと、該母材45aに一側(図1で右側)に矩形状の突出部45bと、を備える。
母材45aには、ハーネス保持部48を案内するためのガイド部45cが母材45aの長手方向(図4で左右方向)の両側面に沿って形成されている。この場合、ガイド部45cは両側面の外方に指向する断面矩形状の突出部45dが形成されている。
【0018】
さらに、図4に示すハーネス保持部48はクランプ本体45の突出部45dに嵌挿する断面矩形状の溝48bを形成するベース48aと、溝47を形成するように上方に指向する矩形状のガイド部48cと、クランプカバー43をガイドして係合するガイド溝48dと、クランプ本体45に対するハーネス保持部48の長手方向の位置決めを規制し、二つの端子44の間を絶縁する板状のストッパ48eと、を備える。
ストッパ48eはハーネス保持部48の長手方向(図4で左右方向)に指向して該ハーネス保持部48の一側(図4で右側)に設けられると共に、クランプ本体45の他側(図4で左側)に形成した溝45eに係合する。
【0019】
図2及び図5に示すように、前記クランプカバー43はハーネス保持部48を被覆してクランプ本体45の突起45fに係合するカバー部43aと、該カバー部43aに接続して設けられハーネス保持部48の溝47に係合しハーネス41を押圧する板状の押圧部43bと、備える。図6に示すように押圧部43bの先端部には、ハーネス保持部48のガイド部48c間に嵌挿すると共に、溝47に整合する凸部49が形成されかつ、屈曲部46に整合する屈曲部50が設けられている。前記屈曲部46及び屈曲部50はハーネス41を押圧する屈曲押さえ部を形成する。なお、凸部49は先端(図6で右端)が平面に形成されているが、円弧状でもよく、逆V字状でもよい。
【0020】
本発明の実施の形態に係る電磁弁10は、基本的には以上のように構成されるものであるが、該電磁弁10の構成は既知であるので動作説明は省略し、ハーネス41をハーネス接続部40に結線する動作について説明する。
図4に示すように、ハーネスクランプ本体42に端子44を略L字状に屈曲した後に、ハーネス保持部48のガイド溝48bにクランプ本体45の突出部45dを挿入し、クランプ本体45とハーネス保持部48を一体に形成する。
【0021】
次いで、図5に示すようにハーネス41をクランプ本体45の溝47(図4参照)及び該溝47に形成される屈曲部46に挟み込み、該ハーネス41の先端を端子44に電気的に接続するはんだ付けをする。続いて、クランプカバー43を図2に示す矢印方向よりクランプ本体45及びハーネスクランプ本体42の方に移動し、クランプカバー43の押圧部43bをクランプ本体45のガイド部48c間に差し込み、押圧部43bの先端(図5で下端)に形成する凸部49と溝47とを接触し、溝47及び凸部49にハーネス41が挟み込まれ、溝47及び凸部49により該ハーネス41が固定される。これにより、溝47及び凸部49はハーネス41を圧入により固定し、引っ張り力と振動時のハーネス41の保持の役割を有する。
【0022】
また、ハーネス41は屈曲部46及び屈曲部50により屈曲状態で保持される。このため、屈曲部46及び屈曲部50はハーネス41の引張り力を横方向(屈曲部50壁面に垂直方向)へ分散し、その分力と摩擦力でハーネス41の引抜き力を向上させる機能を有している。
従って、ハーネス41に引抜方向に力が付勢されても溝47及び凸部49、屈曲部46及び屈曲部50により保持されて、該ハーネス41が端子44より離脱することがない。
【0023】
本発明の実施の形態のハーネス接続部40では、ハーネス41を挟み込む溝47及び凸部49の実施的長さは該ハーネス41の直径の三倍以上の長さを有するので、振動などの外力が加わってもハーネス41に加わる応力を下げることができ、ハーネス41を被覆する絶縁被覆及び導体の損傷を防ぐことができる。
さらに、屈曲部46及び屈曲部50はハーネス41の引張り力を横方向(屈曲部50壁面に垂直方向)へ分散し、その分力と摩擦力でハーネス41の引抜力を向上させる機能を有している。
【0024】
また、ハーネス41をクランプするハーネスクランプ本体42は端子44側に設け、ハーネス41を挟み込む溝47及び凸部49、屈曲部46及び屈曲部50は外部側、すなわちハーネス41が導入される側に位置しているので、外部からの引っ張り力を第1に屈曲部46及び屈曲部50で受ける構造であり、ハーネス接続部40に加わる力を軽減することができる。よって、ハーネス41に作用する抜け荷重を強くすることができ、端子44に引っ張り力が作用しないようにすることができる。
さらにまた、端子側にクランプ部を設けることで、振動などによるハーネス41の振動を防止することができるため、ハーネス41と端子44とのはんだ付けにおける振動によるストレスが加わらず、耐久性が向上する。
本発明の実施の形態に係る電磁弁10について説明したが比例電磁弁にも適用できる。
【符号の説明】
【0025】
10 電磁弁 11 ハウジング
12 円筒部 13 フランジ部
15 軸受機構 16 軸受部材
20 ソレノイド 21 ボビン
22 コイル 40 ハーネス接続部
41 ハーネス 42 ハーネスクランプ本体
43 クランプカバー 44 端子
45 クランプ本体 46、50 屈曲部
47 溝 48 ハーネス保持部
49 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒壁に複数の流体通路を有するスリーブと、前記スリーブ内を往復動することにより前記流体通路を切り換えるスプールと、前記スプールの軸心方向に直列に配置されたプランジャと、前記プランジャを支持する円筒形状のコア及び電磁力を付与するコイルを保持するケースと、前記コイル及びボビンを封止する樹脂成形体に設けられてコイルに導通するハーネスを結線したハーネス接続部と、
を備えた電磁弁において、
前記ハーネス接続部は、
前記樹脂成形体に一体的に設けられ前記ハーネスを電気的に接続するハーネスクランプ本体と、
前記ハーネスクランプ本体に係合すると共に、前記ハーネスを挟み込む溝を底部に設けた凹状のガイド部を有するハーネス保持部と、
前記ガイド部間に嵌挿されて前記ハーネスを挟み込み前記溝に整合する凸部を形成する押圧部を有する共に、前記ハーネス保持部に係合して前記ハーネスクランプ本体に係止されるクランプカバーと、
を有し、前記ガイド部及び前記押圧部により前記溝及び前記凸部を整合して前記ハーネスを挟み込むクランプ部を形成し、前記溝及び前記凸部に設けた屈曲部により前記ハーネスを押圧する屈曲押さえ部を形成したことを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133047(P2011−133047A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293756(P2009−293756)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】