説明

電磁波シールドシート及びその製造方法

本発明は、透明基材と、前記透明基材の一方の面に接着層を介して設けられたメッシュ状の金属層と、を備えた電磁波シールドシートに関する。前記金属層は、多数の開口部と該開口部を囲繞するライン部とを有するメッシュ部と、前記メッシュ部の周縁に設けられた額縁部と、を有している。前記接着層とは反対側の前記額縁部の表面には、金属が露出されており、前記開口部には、透明な電離放射線硬化樹脂層が埋め込まれている。好ましくは、前記接着層とは反対側の前記額縁部の前記表面の表面粗さは、JIS−B0601(1994年版)に準拠する10点平均粗さで、0.5〜1.5μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極線管(以下CRTともいう)やプラズマディスプレイパネル(以下PDPともいう)などのディスプレイから発生するEMI(Electro Magnetic Interference;電磁(波)障害)をシールドする電磁波シールドシートに関する。さらに詳しくは、透明基材へ接着層を介してメッシュ状の金属箔を積層し、メッシュ開口部に露出している接着側の表面粗さを埋めて、透明性に優れた電磁波シールドシートを製造する方法に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは、特に断わらない限り質量基準である。「/」印は、一体的に積層されていることを示す。また、「NIR」は「近赤外線」、「UV」は「紫外線」、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「接着力」は「接着力、粘着力及び密着力を含む表現」を意味しており、それぞれ略語、同意語、機能的表現、通称または業界用語の類である。更に、「電離放射線硬化性樹脂」(「性」有り)は未硬化状態のものを、そして「電離放射線硬化樹脂」(「性」無し)は硬化状態のものを示す。
【背景技術】
【0003】
(技術の背景)
電磁気的装置から発生する電磁波は、他の電磁気的装置に悪影響を与え、また、人体や動物に対しても悪影響があると言われている。このため、さまざまな電磁波遮蔽手段が既に用いられている。
【0004】
特に、最近使われ始めているPDPからは、周波数が30MHz〜130MHzの電磁波が発生する。このような電磁波は、周囲のコンピュータもしくはコンピュータ利用機器に悪影響を与えることがある。このため、PDPが発生する電磁波をできるだけ外部にもらさないようにすることが望まれている。
【0005】
ディスプレイ用の電磁波シールドシートにおいて、その露出面の表面が粗かったり、その構成中に微細な気泡が混入したりしていると、光の乱反射を引き起こし、曇価(ヘイズ)の増大を招く。そのような電磁波シールドシートをPDP等のディスプレイに適用すると、映像のコントラストを低下させる恐れがある。従って、ディスプレイ用の電磁波シールドシートは、ディスプレイ画面の視認性を損なわない低曇価の透明性を兼ね備えていることが求められている。
【0006】
また、電磁波シールドの性能をより高めるために、電磁波シールドシートの周縁部に設けられる金属層の額縁部は、アース線を接続できる露出面を有していることが求められている。
【0007】
(先行技術)
従来、十分な透明性を満足する方策として、透明フィルム上に透明な酸化インジウム錫(略称;ITO)膜を形成した電磁波遮蔽シートが検討され、知られている(例えば、特開平1−278800号公報、及び、特開平5−323101号公報参照)。しかしながら、このような電磁波遮蔽シートは、導電性が不十分で電磁波シールド性に欠けるという欠点があった。
【0008】
最近では、透明フィルム上に、金属箔をエッチングしてメッシュ状としたも
のを積層したものが知られている(例えば、特開平11−119675号公報、及び、特開2001−210988号公報参照)。このような電磁波遮蔽シートでは、金属層と透明基材とを接着層を介して積層した後、フォトリソグラフィー法によって金属箔がメッシュ状に形成される。このような電磁波遮蔽シートは、放出される電磁波の強度が強いPDPレベルのものに対しても、十分なシールド性を有する。しかしながら、このような電磁波遮蔽シートでは、金属箔の表面粗さがメッシュ開口部に露出した接着層表面に転写されて該表面を粗面化し、また、メッシュ面上に接着剤を塗工しこの接着剤層を介して他の部材を積層する際にメッシュ面の凹部内の空気が完全には接着剤と置換しないため、該接着層に微細な気泡が混入しやすい。当該気泡は、接着力を弱める他、透明基材側から見たときに光を乱反射して、PDP等のディスプレイの表示画像のコントラストを低下させ得る。
【発明の要旨】
【0009】
本件発明者は、発想を全く変えて、若干の表面粗さが存在しても、ディスプレイ画面の視認性を損なわない透明性と、アースを接続できる露出面を有する金属層の額縁部と、を兼ね備える電磁波シールドシート及びその製造方法の新規な発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、前記のような問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、ディスプレイ画面の視認性を損なわない透明性と、アースを接続できる露出面を有する金属層の額縁部と、を兼ね備える電磁波シールドシート及びその製造方法を提供することである。
【0011】
前記課題を解決するために、透明基材と、前記透明基材の一方の面に透明な接着剤層を介して設けられたメッシュ状の金属層と、を備え、前記金属層は、多数の開口部と該開口部を囲繞するライン部とを有するメッシュ部と、前記メッシュ部の周縁に設けられた額縁部と、を有しており、前記接着層とは反対側の前記額縁部の表面には、金属が露出されており、前記開口部には、透明な電離放射線硬化樹脂層が埋め込まれていることを特徴とする電磁波シールドシートである。
【0012】
本発明によれば、ディスプレイ画面の視認性を損なわない透明性と、アースを接続できる露出面を有する金属層の額縁部と、優れた電磁波シールド性と、を有する電磁波シールドシートが提供され得る。
【0013】
好ましくは、前記接着層とは反対側の前記額縁部の前記表面の表面粗さは、JIS−B0601(1994年版)に準拠する10点平均粗さで、0.5〜1.5μmである。
【0014】
この場合、メッシュ部の開口部においては透明な電離放射線硬化樹脂層によって被覆され且つ額縁部においては金属層が露出する電磁波シールドシートを安定的に確実に製造することが容易である。また、十分な外光反射防止性能も得られる。
【0015】
また、本発明は、前記特徴を有する電磁波シールドシートを製造する製造方法であって、(1)透明基材の表面へ透明な接着剤層を介して金属層を積層して積層体を形成する工程と、2)前記積層体の前記金属層の表面へレジスト層をメッシュパターン状に設け、当該レジスト層で覆われていない部分の前記金属層の部分をエッチングして除去し、その後に当該レジスト層を除去することにより、前記金属層にメッシュ部と当該メッシュ部の周縁に設けられた額縁部とを形成する工程と、(3)前記メッシュ部及び前記額縁部の表面に液状の透明な電離放射線硬化性樹脂を塗布し、当該電離放射線硬化性樹脂上に賦型フィルムを積層し、当該賦型フィルムの側から電離放射線を照射して前記電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程と、(4)前記賦型フィルムを剥離すると共に、少なくとも前記額縁部の表面上において硬化した電離放射線硬化樹脂を除去する一方、前記メッシュ部の前記開口部内で硬化した電離放射線硬化樹脂を残留させる工程と、を備えたことを特徴とする電磁波シールドシートの製造方法である。
【0016】
本発明によれば、既存の設備及び技術を利用して、ディスプレイ画面の視認性を損なわない透明性と優れた電磁波シールド性とを有し、且つ、額縁部においては金属層が確実に露出する電磁波シールドシートを容易に製造することができる。
【0017】
例えば、前記電離放射線は紫外線であり、前記賦型フィルムは紫外線透過性である。照射設備も安価で技術的にも普及し取扱いが簡単な紫外線を選択することにより、所望の電磁波シールドシートを効率よく、安価、簡便に得ることができる。
【0018】
また、好ましくは、前記接着剤層と前記電離放射線硬化樹脂層との間、前記電離放射線硬化樹脂層と前記賦型フィルムとの間、及び、前記電離放射線硬化樹脂層と前記金属層との間、の各層間接着力は、当該順序で小さくなっている。この場合、ディスプレイ画面の視認性を損なわない透明性と優れた電磁波シールド性とを有し、且つ、額縁部においては金属層が確実に露出する電磁波シールドシートを、より確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は、本発明の一実施の形態の電磁波シールドシートの平面図である。
【図2】は、図1のメッシュ部の斜視図である。
【図3】は、本発明の一実施の形態の電磁波シールドシートの要部の断面図である。
【図4】は、金属層の変形態様を示す断面図である。
【図5】は、本発明の一実施の形態による電磁波シールドシートの製造方法の製造装置の要部の模式的な断面図である。
【図6】は、本発明の一実施の形態による電磁波シールドシートの製造方法中の剥離状況を説明するための電磁波シールドシートの要部の断面図である。
【図7】図7(A)及び図7(B)は、比較例の電磁波シールドシートの製造方法中の剥離状況を説明するための電磁波シールドシートの要部の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(基本の方法)
本発明による電磁波シールドシートの製造方法は、図6に示すように、
(1)透明基材11の表面へ透明な接着剤層13を介して金属層21を積層して積層体を形成する工程と(図6(A))、
(2)前記積層体の前記金属層の表面へレジスト層をメッシュパターン状に設け、当該レジスト層で覆われていない部分の前記金属層の部分をエッチングして除去し、その後に当該レジスト層を除去することにより、前記金属層21にメッシュ部103と当該メッシュ部の周縁に設けられた額縁部101とを形成する工程と(図6(B))、
(3)前記メッシュ部及び前記額縁部の表面に液状の透明な電離放射線硬化性樹脂31を塗布し、当該電離放射線硬化性樹脂上に賦型フィルム41を積層し、当該賦型フィルムの側から電離放射線を照射して前記電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程と(図6(C))、
(4)前記賦型フィルムを剥離すると共に、少なくとも前記額縁部101の表面上において硬化した電離放射線硬化樹脂33Bを除去する一方、前記メッシュ部の前記開口部105内で硬化した電離放射線硬化樹脂33Aを残留させる工程と(図6(D))、
からなる。
【0021】
なお、図6(D)に示すように、額縁部101においてのみ金属層21上から確実に電離放射線硬化樹脂33Bを剥離除去せしめ、且つ、メッシュ部開口部105においては接着剤層13と電離放射線硬化樹脂33Aとが互いに確実に接着したまま賦型フィルムから剥離することを実現するため、上記電離放射線として紫外線を、又、上記賦型フィルムとして紫外線透過性のフィルムを用いることが好ましい。特には、上記賦型フィルムとして、表面が実質的に平滑又はマット状のポリエチレンテレフタレートであって、表面濡れ性が35〜45mN/mであるものを用いることが好ましい。このような場合、層間接着力として、接着剤層と電離放射線硬化樹脂層との間の層間接着力>電離放射線硬化樹脂層と賦型フィルムとの間の層間接着力>電離放射線硬化樹脂層と金属層との間の層間接着力、とすることができる。
【0022】
さらに、金属層としては、剥離の際に安定して確実に金属層上の紫外線硬化樹脂層が完全に除去されて、金属層が露出されることを可能ならしめる点から、当該金属層の10点平均粗さRzを1.5μm以下にすると共に、当該金属層の表面での外光反射を防止する点から、Rzを0.5μm以上とすることが好ましい。
【0023】
(基本の物)
図1及び図2に示すように、本発明による電磁波遮蔽用シート1は、少なくとも、メッシュ部103と、当該メッシュ部103の周縁に設けられた額縁部101と、を有する。図3の断面図に示すように、透明基材11の一方の面に、透明な接着剤層13を介して、メッシュ状の金属層21が積層されている。当該金属層21のメッシュ部の開口部105において露出する接着剤層13の一部は、その表面に、硬化した電離放射線硬化樹脂層33が埋め込まれて被覆されている。一方、金属層の額縁部101の表面においては、金属面が露出している。金属層は、接地を可能とする為に、最低限、額縁部101の表面に於いて露出していれば良い。メッシュ部のライン部107の表面は、露出していてもよいし、或いは、硬化した電離放射線硬化樹脂層で被覆されていてもよい。要するに、メッシュ部の表面において、開口部の凹部が電離放射線硬化樹脂層によって充填されて全体として平坦化され、且つ、接着剤層表面の粗面が電離放射線硬化樹脂層で充填されることによって粗面が光学的に消失していれば良い。
【0024】
図3の実施の形態では、ライン部107の表面に於いても、金属が露出されている。なお、図2では、理解の容易のために、硬化した電離放射線硬化樹脂層33の表示が省略されている。
【0025】
更に、製造時において、メッシュ部開口部では接着剤層上に電離放射線硬化樹脂層が被覆され、且つ、額縁部では金属層が露出した状態の物を安定して確実に得るために、当該金属層の表面粗さは、少なくとも額縁部の接着剤層とは反対側の表面において、10点平均粗さRzが0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明の電磁波シ−ルドシートは、好ましくは、請求項3に記載の電磁波シールドシートの製造方法で製造され得る。さらにまた、埋め込まれ硬化した電離放射線硬化樹脂層33の表面は、実質的に平滑又はマット状である。
以下、製造方法の各工程順に、各材料も含めて説明する。
【0027】
(第1工程)
透明基材へ接着剤層を介して金属層を積層し積層体を形成する工程。
【0028】
(金属層)
金属層21の材料としては、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロムなど、充分に電磁波をシールドできる程度の導電性を持つ金属が利用される。金属層21は、単体でなく、合金あるいは多層であってもよい。金属層21としては、鉄の場合には、低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金が好ましい。また、黒化処理としてカソーディック電着を行う場合には、電着のし易さから、銅又は銅合金箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔や電解銅箔が使用できるが、厚さの均一性、黒化処理及び/又はクロメート(処理)層との密着性、及び、10μm以下の薄膜化ができる点から、電解銅箔が好ましい。
【0029】
金属層21の厚さは1〜100μm程度、好ましくは5〜20μmである。これ以下の厚さでは、フォトリソグラフイ法によるメッシュ加工は容易になるが、金属の電気抵抗値が増え電磁波シールド効果が損なわれる。一方、これ以上の厚さでは、所望する高精細なメッシュの形状が得られず、その結果、実質的な開口率が低くなって光線透過率が低下し、さらに視角も低下して画像の視認性が低下する。
【0030】
金属層21の表面粗さとしては、Rz値で0.1〜10μmが好ましい。表面粗さRzとは、JIS−B0601(1994年版)に準拠して測定された10点の平均値である。
【0031】
金属層21の表面粗さとしては、特に金属層表面での外光反射による画像コントラスト低下を防止するためには、好ましくは0.5μm以上とするとよい。また特に、額縁部において、硬化した電離放射線硬化樹脂層が確実に金属層表面から剥離することを可能ならしめるためには、好ましくはRz値が1.5μm以下が良い。故に、特に好ましくは、Rzの範囲は0.5〜1.5μmである。なお、表面粗さRzは、JIS−B0601に準拠して測定された10点の平均の粗さ値である。これ以下では、黒化処理しても外光が鏡面反射して、画像の視認性を劣化させる。これ以上では、接着剤やレジストなどを塗布する際に、表面全体へ行き渡らなかったり気泡が発生したり、更に電磁波シールドシートの製造時において、剥離の際に金属層上の電離放射線硬化樹脂層が完全に除去されず、金属層が露出しにくい。
【0032】
(金属層への黒化層)
本明細書では単に金属層21とのみ記載されているが、図4の如く、必要に応じて、金属層21の少なくとも一方の面には、黒化層25(25A、25B)及び/又は防錆層23(23A、23B)、並びに、必要に応じて他の層、が設けられ得る。
【0033】
黒化層の形成即ち黒化処理として、金属層の表面が粗化及び/又は黒化され得る。具体的には、金属、合金、金属酸化物または金属硫化物の形成の他、種々の手法が利用され得る。好ましい黒化処理として、メッキ法がある。メッキ法が利用される場合、金属層への密着力に優れる黒化層を、金属層の表面に均一かつ容易に形成することができる。メッキの材料としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、若しくはクロムから選択された金属の少なくとも1種以上又は該金属を含む化合物が用いられ得る。他の金属又は化合物では、黒化が不充分であったり、金属層との密着に欠けたりする。それは、例えばカドミウムメッキで顕著である。
【0034】
金属層21として銅箔が用いられる場合の好ましいメッキ法は、硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中で、陰極電解処理を行って、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着メッキである。カチオン性粒子を付着させることにより、粗化を実現すると同時に黒色が得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子、等が適用できるが、好ましくは、銅‐コバルト合金の粒子である。銅‐コバルト合金の粒子の平均粒子径は、0.1〜1μmが好ましい。カソーディック電着によれば、粒子を平均粒子径0.1〜1μmに揃えて好適に付着することができる。また、銅箔表面を高電流密度で処理することにより、銅箔表面がカソーディックとなり還元性水素を発生し活性化する。これにより、銅箔と粒子との密着性が著しく向上できる。
【0035】
銅‐コバルト合金粒子の平均粒子径が前記範囲外である場合、例えば、銅‐コバルト合金粒子の粒子径が前記範囲より大きい場合、黒さが低下し、また、粒子が脱落(粉落ちともいう)しやすくなる。また、密集粒子の外観の緻密さが欠けて、外観のムラ及び光吸収のムラが目立ってくる。銅‐コバルト合金粒子の粒子径が前記範囲より小さい場合も、黒化度が不足し、外光の反射を抑えきれ無いで画像の視認性が悪くなる。また、銅‐コバルト合金粒子の平均粒子径が前記範囲の外である場合、額縁部の接着剤層と反対側の表面のRz値を0.5〜1.5μmという最適範囲に維持することが難しくなる。
【0036】
(層の構成)
防錆層23は、金属層21及びその黒化処理された面25の防錆機能を持ち、かつ、黒化処理された面における黒化粒子の脱落及び変形を防止する。また、黒化層25の黒さを、より黒くすることができる。防錆層23をこの様に形成する理由は、以下の通りである。即ち、防錆層23は、黒化層25を透明基材に接着する迄の間に当該黒化層25が脱落したり変質することのないように、黒化層25を保護する目的で、積層工程前に形成される必要がある。防錆層23としては、公知の防錆層が適用できる。好適には、防錆層23は、クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅などの金属、もしくはそれらの合金、または前記金属の酸化物或いは他の化合物、の層である。好ましくは、亜鉛をめっきした後でクロメート処理されたクロム化合物の層である。また、防錆層へは、エッチングや酸洗浄時の耐酸性をより強くするために、珪素化合物を含有させることが好ましい。当該珪素化合物としては、シランカップリング剤が挙げられる。また、防錆層23は、黒化層25(特に銅−コバルト合金粒子層)との密着性及び接着剤層13(特に2液硬化型ウレタン系樹脂の接着剤層)との密着性にも優れることが好ましい。
【0037】
クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅などの金属もしくはそれらの合金または前記金属の化合物の層は、公知のメッキ法で形成され得る。また、クロム化合物の層は、公知のメッキ法、或いは、クロメート(クロム酸塩)処理等で形成され得る。防錆層の厚さは、0.001〜10μm程度、好ましくは0.01〜1μmである。また、クロメート処理による防錆層23の形成は、塗布法やかけ流し法で片面に行ってもよいし、ディッピング法で両面同時に行ってもよい。
【0038】
(クロメート処理)
クロメート処理は、被処理材にクロメート処理液を塗布して行われる。該塗布方法としては、ロールコート、カーテンコート、スクイズコート、静電霧化法、浸漬法などが適用できる。塗布後は、水洗せずに乾燥すればよい。クロメート処理液としては、通常クロム酸を含む水溶液が使用される。具体的には、アルサーフ1000(日本ペイント社製、クロメート処理剤商品名)、PM−284(日本パ−カライジング社製、クロメート処理液商品名)などが利用され得る。また、クロメート処理に先だって、亜鉛メッキを施すことが好ましい。この場合、黒化層/防錆層(亜鉛/クロメート処理の2層)の構成が、層間密着、防錆及び黒さの各作用効果をより一層高めることができる。
【0039】
(第2工程)
金属層21の一方の面と透明基材とを接着剤で積層する工程。
【0040】
(透明基材)
透明基材11の材料としては、使用条件や製造上の条件を満たす透明性、絶縁性、耐熱性、機械的強度などがあれば、種々の材料が適用できる。例えば、ガラスや透明樹脂である。
【0041】
ガラスとしては、石英ガラス、ほう珪酸ガラス、ソーダライムガラスなどが利用され得る。特には、熱膨脹率が小さく、寸法安定性および高温加熱処理時の作業性に優れ、アルカリ成分を含まない無アルカリガラスが好ましい。それは、電極基板と兼用することも可能である。
【0042】
透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、テレフタル酸‐イソフタル酸‐エチレングリコール共重合体、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカ−ボネ−トなどの樹脂が挙げられる。
【0043】
透明基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。透明基材11は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。透明基材11の厚さは、透明樹脂によって形成される場合、通常、12〜1000μm程度が適用できるが、50〜700μmが好適で、100〜500μmが最適である。ガラスによって形成される場合、通常、1000〜5000μm程度が好適である。これ以下の厚さでは、機械的強度が不足して反りやたるみや破断などが発生し、これ以上の厚さでは、過剰な性能となってコスト的にも無駄である。
【0044】
通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系の樹脂フィルム、セルロース系樹脂、ガラスが、透明性、耐熱性がよくコストも安いので好適に使用される。割れ難いこと、軽量で成形が容易なこと等の点で、ポリエチレンテレフタレートが最適である。また、透明性は高いほどよく、好ましくは可視光線透過率で80%以上である。
【0045】
透明基材フィルムは、接着剤の塗布に先立って、当該塗布面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理が行われ得る。該樹脂フィルムには、必要に応じて、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤が加えられ得る。
【0046】
(積層方法)
透明基材11と前述の金属層21とが、接着剤で積層される。当該積層方法(ラミネートともいう)では、透明基材11及び/又は金属層21の接着面へ、接着剤の樹脂が、加熱熔融物、未架橋重合物、ラテックス、水分散液または有機溶媒溶液等の流動体として、スクリーン印刷、グラビア印刷、コンマコート、ロールコートなどの公知の印刷法又はコーティング法によって印刷または塗布される。そして、前記接着剤の樹脂が必要に応じて乾燥された後に、他方の材料と重ねられて加圧される。その後、当該接着剤層が固化される。当該接着層の膜厚は、0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1〜10μmである。
【0047】
具体的な積層方法としては、金属層及び/又は基材フィルムへ接着剤が塗布され乾燥された後、両材料が重ね合わされて加圧される。さらに、必要に応じて、30〜80℃の雰囲気で数時間〜数日のエージング(養生、硬化)が行われて、巻取りロール状の積層体とされ得る。当業者がドライラミネーション法(ドライラミともいう)と呼ぶ方法が好ましい。さらに、紫外線(UV)や電子線(EB)などの電離放射線で硬化(反応)する電離放射線硬化性樹脂を用いることも好ましい。
【0048】
(ドライラミネーション法)
ドライラミネーション法とは、内部に接着剤が分散または溶解された溶媒が例えばロ−ルコ−ティング、リバースロ−ルコ−ティング、グラビアコ−ティングなどのコーティング法で塗布されて乾燥された膜厚0.1〜20μm程度、好ましくは1〜10μm、の貼り合せ基材を、重ねて積層し、30〜80℃で数時間〜数日間エージングすることで接着剤を硬化させて、2種の材料を積層させる方法である。
【0049】
ドライラミネーション法で用いられる接着剤としては、熱または電離放射線で硬化する接着剤が適用できる。熱硬化接着剤としては、具体的には、トリレンジイソシアネ−トやヘキサメチレンジイソシアネ−ト等の多官能イソシアネ−トと、ポリエ−テル系ポリオ−ル、ポリアクリレ−トポリオ−ル等のヒドロキシル基含有化合物と、の反応により得られる2液硬化型ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤などが適用できる。2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
【0050】
(第3工程)
透明基材へ積層されている金属層を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状パターンとする工程。
【0051】
(フォトリソグラフィー法)
前記積層体の金属層表面に、レジスト層がメッシュパターン状に設けられ、レジスト層で覆われていない部分の金属層がエッチングにより除去され、その後レジスト層が除去される(フォトリソグラフイ法)。これにより、金属層は、メッシュ状の電磁波シールド層となる。
【0052】
図1の平面図に示すように、電磁波シールド層は、メッシュ部103と額縁部101とからなる。図2の斜視図及び図3の斷面図に示すように、メッシュ部103では、残された金属層であるライン部107により複数の開口部105が区画されている。一方、額縁部101では、全面において金属層が残されていて、開口部がない。なお、額縁部101は、必要に応じて設けられればよい。すなわち、メッシュ部の全周を取り囲むように設けられる他、メッシュ部の外周の一部に隣接して設けられてもよい。
【0053】
この工程も、ロール状に巻き取られた帯状の積層体に対して行われる。すなわち、積層体が緩みなく伸張されて、連続的又は間歇的に搬送されながら、マスキング、エッチング、レジスト剥離の各処理を施される。マスキングは、例えば、感光性レジストが、金属層上に塗布される。乾燥後に、所定のパターン(メッシュのライン部と額縁部)の版(フォトマスク)にて密着露光され、水現像され、硬膜処理などが施されて、ベーキングされる。
【0054】
レジストの塗布については、伸張された帯状の積層体を連続又は間歇で搬送させながら、金属層面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどのレジストがディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で塗布される。また、レジストを塗布する替わりに、ドライフィルムレジストを用いてもよい。この場合、作業性が向上できる。ベーキングは、カゼインレジストの場合、200〜300℃で行われる。もっとも、この温度は、積層体の反りを防止するためには、100℃以下のできるだけ低温度が好ましい。
【0055】
(エッチング)
マスキング後にエッチングが行われる。エッチングに用いるエッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明においては、循環使用が容易にできる塩化第二鉄または塩化第二銅の溶液が好ましい。また、このエッチング工程は、帯状で連続する厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する工程と、基本的に同様の工程である。従って、当該シャドウマスクの製造のための既存の設備を流用でき、マスキングからエッチングまでを一貫して連続実施できて、極めて効率が良い。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄が行われ、その後乾燥される。
【0056】
(メッシュ)
メッシュ部103は、額縁部101で囲まれてなる領域である。メッシュ部103は、ライン107で囲まれた複数の開口部105を有している。開口部105の形状は特に限定されず、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形などの四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形などが適用できる。これらの開口部が複数組み合わさって、メッシュ状になっている。
【0057】
開口率及びメッシュの非視認性から、メッシュ部103のライン幅は、50μm以下、好ましくは20μm以下である。また、メッシュ部103のライン間隔(ラインピッチ)は、光線透過率から、150μm以上、好ましくは200μm以上である。また、バイアス角度(メッシュのライン部と電磁波シールドシートの辺とのなす角度)は、モアレの解消などのために、ディスプレイの画素や発光特性を加味して適宜、選択され得る。
【0058】
(第4工程)
メッシュ部及び額縁部の金属層表面へ電離放射線硬化性樹脂を塗布し、賦型フィルムを積層し、当該積層体へ賦型フィルム側から電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程。
【0059】
(電離放射線硬化樹脂層)
電離放射線硬化樹脂層33は、主として紫外線、電子線のような電離放射線の照射により架橋、重合反応を起こし得る液状の電離放射線硬化性樹脂が重合した硬化物である。
【0060】
電離放射線硬化性樹脂を構成するオリゴマーもしくはモノマーとしては、主に、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のエチレン性二重結合を有するラジカル重合性のものが用いられる。これ以外にも、エポキシ基含有化合物のようなカチオン重合性のオリゴマーおよび/またはモノマーが用いられ得る。
【0061】
エチレン性二重結合を有するラジカル重合性のオリゴマーもしくはモノマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーが用いられ得る(尚、ここで「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する)。また、次段落のエチレン性二重結合を有するラジカル重合性のモノマーが重合したオリゴマーもしくはモノマーも用いることもできる。
【0062】
エチレン性二重結合を有するラジカル重合性のモノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、もしくは(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、もしくはペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等の2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、もしくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、またはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、もしくはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー等を用いる事ができる。これらモノマーは、希釈剤としても使用され得る。
【0063】
エチレン性二重結合を有するラジカル重合性のオリゴマーもしくはモノマーを使用する際に、必要に応じて配合される光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物、もしくはフルオロアミン化合物等が用いられ得る。
【0064】
光重合開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;イルガキュア184として入手可能)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;イルガキュア907として入手可能)、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、もしくはベンゾフェノン等を例示することができ、これらを一種単独もしくは二種以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
(電離放射線)
電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。通常、電離放射線として、紫外線、電子線等が用いられる。紫外線が用いられる場合には、その照射装置(線源)として、高圧水銀燈、低高圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク、ブラックライトランプ等が用いられる。紫外線のエネルギー(波長)は190〜380nm程度、照射線量は50〜1000mJ/cm2 程度が好ましい。電子線が用いられる場合には、その照射装置(線源)として、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器等が用いられる。電子線のエネルギー(加速電圧)は70〜1000keV、好ましくは100〜300keV程度、照射線量は、通常0.5〜30Mrad程度が好ましい。なお、電子線硬化の場合、電離放射線硬化性樹脂組成物には重合開始剤は含有させなくてもよい。
【0066】
(賦型フィルム)
賦型フィルム41は、金属層表面上の電離放射線硬化性樹脂塗膜の表面を当該塗膜が液状である間に強制的に平坦面に賦型する為のものである。従って、賦型フィルムの塗膜側の面は、所望の平坦面になっている。また、賦型フィルムは、硬化した後の電離放射線硬化性樹脂塗膜に対して離型性を有する。ここで「平坦面」とは、その表面に接着層を塗工する際に気泡を残留しない程度の平面性であると共に、ディスプレイ画像を歪曲させたり光散乱により曇り(ヘイズ)を生じない程度の平面性であれば良い。逆に言えば、画像の歪曲や曇りを生じない範囲において、表面ブロッキングやピラミッド現象の防止のため、平坦面の中に微小凹凸(マット状)の存在が容認される(賦型フィルムの表面は、メッシュの凹凸と同程度の周期の凹凸は実質上無視でき、且つ、当該表面の凹凸段差はメッシュの凹凸段差に比べて遙かに小さい。即ち、大局的に平坦面で、且つ、当該平坦面上に局部的にメッシュの凹凸の周期及び段差よりも十分に小さい周期及び段差からなる微小凹凸が畳重して形成された状態であってもよい)。ここで、微小凹凸は、表面に対して、エンボス、型押し、粒子の混入、又はケミカルエッチングなどの作為的な処理を行うことによって設けられ得る。このようなフィルムは、マットフィルムなどと呼ばれる。また、電離放射線硬化性樹脂の塗膜の表面が電磁波シールドシートの最表面として露出する形態の場合には、画像に歪曲、曇りを生じない範囲において、当該塗膜表面に微小凹凸が賦型されて、当該微小凹凸による光反射防止機能が付与されても良い。
【0067】
該賦型フィルム41としては、表面を所望の平坦面に形成できること、電離放射線硬化性樹脂硬化物に対する離型性を有すること、及び、離型(剥離)に耐える機械的強度を有すること、等の条件を満たす種々の材料が利用できる。特に、電離放射線として紫外線(UV)が選択される場合には、紫外線透過性がある材料が選択される。例えば、合成樹脂または天然樹脂である。当該樹脂としては、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、エチレングリコール−テレフタル酸‐イソフタル酸共重合体、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、イミド系樹脂、ポリカ−ボネ−トなどの樹脂が挙げられる。また、樹脂フィルムには、必要に応じて、塗膜側の表面上に離型層が塗工され得る他、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤が加えられ得る。
【0068】
賦型フィルム41は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。賦型フィルム41は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。賦型フィルム41の厚さは、通常、12〜1000μm程度が適用できるが、50〜700μmが好適で、75〜250μmが最適である。これ以下の厚さでは、機械的強度が不足して反りやたるみや破断などが発生し、これ以上の厚さでは、変形し難く離型が困難である他、過剰な性能となってコスト的にも無駄である。
【0069】
通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリプロピレン、ポリノルボネンなどのポリオレフィン系樹脂が、平坦性、強度、離型性、紫外線透過性、耐熱性及びコスト面から好適に使用される。特には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートが最適である。
【0070】
賦型フィルム41の塗膜と対向する面は、離型性が高いほど(表面濡れ性が低いほど)良いというわけでは無い。すなわち、当該面は、適度の離型性(易接着性)に調整される必要がある。好ましくは、少なくとも電離放射線硬化性樹脂塗膜と接する面で、JIS K−6768に準拠した表面濡れ性が35〜45mN/m(和光純薬工業(株)製ぬれ張力試験用混合液での測定結果)である。表面濡れ性を前記範囲に調整するために、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理が行われ得る。
【0071】
表面濡れ性を向上させるためには、処理の容易性、信頼性から、コロナ処理が行われることが好ましい。表面濡れ性を調整することによって、本発明における層間の密着力(接着力)を「接着剤層13と電離放射線硬化樹脂層33との間の密着力>電離放射線硬化樹脂層33と賦型フィルム41との間の密着力>電離放射線硬化樹脂層33と金属層21との間の密着力」とすることができる。そして、前記のように各層間の密着力を調節することにより、賦型フィルム41を剥離する際に、図6(D)の如く、金属層21の表面上の電離放射線硬化樹脂層33だけが賦型フィルム41と密着した状態で除去され、接着剤層13の表面上の電離放射線硬化樹脂層33は賦型フィルム41と密着しないで接着剤層13の表面上に残ることとなる。
【0072】
(製造方法)
次に、本発明による電磁波シールドシートの製造方法について、UVを用いる場合を例にとって、説明する。
【0073】
図5は、本発明の一実施の形態による電磁波シールドシートの製造方法の製造装置の要部の模式的な断面図である。
【0074】
図6は、本発明の一実施の形態による電磁波シールドシートの製造方法中の剥離状況を説明するための電磁波シールドシートの要部の断面図である。
【0075】
図7(A)及び図7(B)は、比較例の電磁波シールドシートの製造方法中の剥離状況を説明するための電磁波シールドシートの要部の断面図である。
【0076】
(第4工程−1:メッシュ部及び額縁部の金属層表面へ、電離放射線硬化性樹脂31が塗布される。)
図5に示すように、第1給紙部201から、図6(B)に示すような積層体(透明基材11/接着層13/金属層21(メッシュ部及び額縁部))が繰り出される。当該積層体は、受けロール311の面上を走行する。途工装置301から未硬化の液状の電離放射線硬化性樹脂(の組成物)の過剰量が供給され、積層体の金属層21の面上に塗布される。
【0077】
塗工装置301は、電離放射線硬化性樹脂(の組成物)を塗工するための装置であり、好ましくはノズル塗工装置である。この場合のノズル塗工装置では、所定寸法のノズルがTダイ状、長方形状または線状の吐出口を有し、当該吐出口の長手方向が受けロール311の回転方向と直交する方向(幅方向)に設置されている。また、受けロール311の全幅のうちの所定の幅をカバーするように、電離放射線硬化性樹脂液を加圧してカーテン状に受けロール311上へ吐出するための吐出装置が設けられている。また、ノズル塗工装置においては、吐出量のムラ、経時変化を緩和するために、ノズル内の液供給流路途中に空洞が設けられるとよい。また、樹脂は、メッシュ部にのみ、必要量が間欠で塗工されることが好ましい。
【0078】
その他、塗工装置301としては、上記以外にも、ロールコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、コンマコート法、スリットコート法、ディスペンサー法などを利用する適当な塗工装置が採用され得る。
【0079】
受けロール311の材質としては、銅、クロム、鉄等の金属、NBR、エポキシ、エボナイト等の合成樹脂、ガラス等のセラミックス等が用いられ得る。受けロール311の大きさは、特に限定されず、製造しようとするシートの大きさに応じて適宜選択され得る。なお、受けロール311は、駆動装置(不図示)によって矢印方向に回転駆動されるようになっている。
【0080】
(第4工程−2:賦型フィルムが積層される。)
第2給紙部203から賦型フィルム41が繰り出され、受けロール311と共に走行している積層体に対して、ニップロール313で圧着されて積層される。賦型フィルム41と積層体とは、積層され重なった状態で走行する。ニップロール313による賦型フィルム41の圧着の際、フィルム張力の法線方向の圧着力によって電離放射線硬化性樹脂組成物が透明基材11に対して押圧され、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度や硬化収縮などに抗して、電離放射線硬化性樹脂組成物がメッシュの開口部105へ充填される。これにより、電離放射線硬化性樹脂組成物が、開口部105において露出していた接着層13の粗い面上(開口部105内の凹部)を埋め尽くす。さらに、電離放射線硬化性樹脂組成物は、ライン部107及び額縁部101を構成する金層層21の表面にも薄く塗布される。その他、過剰液303は好適に除去されて、図6(C)に示す状態となる。
【0081】
(厚さ)
硬化後の電離放射線硬化樹脂層33の厚さは、特に限定されず、少なくともメッシュの開口部105を充填し埋め尽くせばよい。金層層21の表面に薄く塗布される電離放射線硬化樹脂層の厚さは、賦型フィルム41の剥離時の凝集破壊により積層体側に残留する部分と賦型フィルム側に残留する部分との境界で破斷させる為には、薄い程よい。具体的な電離放射線硬化樹脂層33の厚さは、メッシュの開口部105の容量を加味して適宜選択され、通常、最大厚さが1〜110μm程度であり、金属層の厚さ1〜100μm程度に0.1〜10μm程度を合算した厚さが好ましい。
【0082】
(粘度)
この際に、電離放射線硬化性樹脂組成物は、粘度が500〜3000cps程度で、無溶剤状態であればよい。この状態までに乾燥などで無溶剤状態とできれば、溶剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物が用いられてもよい。電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を所定の値に調整する方法としては、受けロールの内部を中空として、当該中空部に適度の温度に温度調整した水、油、蒸気等の流体を流入、流出させ、受けロールの表面温度を所定値に制御する方法が利用され得る。一般に、高温になるほど粘度が下がる。但し、高温すぎると電離放射線硬化性樹脂組成物の分解蒸発等が起こる。従って、正確には樹脂によって異なるが、概ね15℃〜50℃が好ましい。
【0083】
なお、図示及び詳細な説明は行わないが、電離放射線硬化性樹脂組成物を賦型フィルム41側へ塗工して、その後に積層体に対して受けロール311とニップロール313とを押圧する方法等も採用可能である。もっとも、気泡の混入を防止しつつ、露出する接着層の表面粗さを忠実に埋めるためには、積層体の金属層21(メッシュ部)の側へ電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工する方が好ましい。
【0084】
従来の電磁波シールドシートでは、メッシュ部を有する金属層と粘着剤が塗布された他の部材とを積層する際に、メッシュ部内に気泡が混入することを避けられなかった。このため、気泡を除去してメッシュ部内を透明化するために、特別な工程が行われていた。当該工程は、オートクレーブなどの耐圧性の高価な密閉容器へ積層体を入れ、30〜100℃程度に加温して、加圧若しくは減圧またはこれらを併用して、30〜60分間もの長時間をかけたバッチ処理である。本発明の製造方法によれば、このような効率の良くない工程を排除することができる。
【0085】
(第4工程−3)
次いで、照射・硬化部320において、積層体の賦型フィルム側から電離放射線が照射される。図5の場合、UV照射装置321から輻射されるUVが積層体に照射される。UVが照射されると、UVは賦型フィルム41を透過し、電離放射線硬化性樹脂組成物へ達する。
【0086】
(第4工程−4)
そして、電離放射線硬化性樹脂31が硬化される。すなわち、UVにより電離放射線硬化性樹脂が硬化されて、電離放射線硬化樹脂33となる。なお、受けロール311から剥離された後に電離放射線硬化樹脂を完全に硬化させるために、後硬化装置が設けられてもよい。
【0087】
(第5工程)
賦型フィルムを剥離し、硬化した電離放射線硬化樹脂層のうち少なくとも額縁部の金属層と接した部分を、賦型フィルムと共に除去する工程。
【0088】
剥離工程は、図5に示すように、電離放射線硬化性樹脂の塗布、賦型フィルム積層、UV照射に続いて行われる。積層体が2本の剥離ロール331、333間から送出される際に、第1巻取部205によって電磁波シールドシート1が巻上げられ、第2巻取部207によって賦型フィルム41が巻上げられることで、両者が剥離される。図6(D)に示すように、賦型フィルム41が剥離される際、金属層21の表面上の電離放射線硬化樹脂33うち少なくとも額縁部上に位置する部分が、賦型フィルム41と密着したまま除去される。一方、接着剤層13の表面上の電離放射線硬化樹脂33は、賦型フィルム41と密着しないで、接着剤層13の表面上に留まる。
【0089】
(効果)
以上のようにして製造された電磁波シールドシート1では、図6(E)に示すように、メッシュの開口部105に露出していた接着剤層13の表面粗さが電離放射線硬化樹脂で被覆され埋め尽くされ、該粗面は光学的に消失する。尚且つ電離放射線硬化樹脂の表面は平坦化される。該表面は、賦型フィルム41の平坦な表面形状が転写(賦型)されて、平坦化される。賦型フィルム41として表面が平滑なフィルムを用いた場合には、極めて平滑な面が得られる。また、表面がマット状などのフィルムを用いた場合には、その表面に応じた面が得られる。仮にマット形状が反射防止機能を有するものであれば、その機能が得られる。一方、額縁部101に於いては、金層層21の表面の電離放射線硬化樹脂33が除去されて金属層21面が露出する。当該金属面は、そのままアース端子として使用することができる。
【0090】
メッシュ開口部の露出面の表面が粗いと、外光を乱反射して反射率の上昇を招く。そのようなシートをPDP等のディスプレイに適用すると、映像のコントラストを低下させる恐れがある。しかしながら、本発明の電磁波シールドシート1によれば、メッシュ開口部の接着剤層の露出面の粗さが埋め尽くされ、メッシュ開口部の表面が平坦化されているため、ディスプレイ画面の視認性を損なわない透明性を維持することができる。
【0091】
図7(A)に示す比較例では、賦型フィルム41として、電離放射線硬化性樹脂層と接する面のJIS K−6768に準拠した表面濡れ性が30mN/m(和光純薬工業(株)製ぬれ張力試験用混合液での測定結果)の表面剥離処理ポリエチレンテレフタレートが用いられた。この場合には、層間の密着力が「接着剤層13と電離放射線硬化樹脂層33との間の密着力>金属層21と電離放射線硬化樹脂層33との間の密着力>電離放射線硬化樹脂層33と賦型フィルム41との間の密着力」であった。従って、賦型フィルム41が剥離される際、賦型フィルム41だけが剥離され除去されて、電離放射線硬化樹脂層33の全面が残ってしまう。この結果、額縁部における金層層21の表面は電離放射線硬化樹脂33で覆われたまま金属層21面が露出しないので、アース端子として使用することができない。(もっとも、この場合、マスキングフィルム等を全面に貼って後工程で金属層上の樹脂のみを剥がすという工程を導入すればよい。)
図7(B)に示す比較例では、賦型フィルム41として、表面に易接着処理されたポリエチレンテレフタレート(表面濡れ性は70mN/m)が用いられた。この場合には、層間の密着力が「電離放射線硬化樹脂層33と賦型フィルム41との間の密着力>金属層21と電離放射線硬化樹脂層31との間の密着力、かつ、電離放射線硬化樹脂層33と賦型フィルム41との間の密着力及び接着剤層13と電離放射線硬化樹脂層33との間の密着力は十分に密着」であった。従って、賦型フィルム41が剥離される際、金層層21の表面の電離放射線硬化樹脂層33は除去されるが、接着層13、電離放射線硬化樹脂層33及び賦型フィルム41の3層が相互に剥離せず、製品とすることができない。
【0092】
また、本発明の電磁波シールドシートは、他の光学部材と組み合わせて、好ましいPDP用の前面板とすることができる。例えば、PDPから放出される近赤外線を吸収する近赤外線吸収フィルターと組合わせれば、PDPの近傍で使用するリモコンや光通信機器などの誤動作を防止できる。また、反射防止及び/又は防眩のフィルターと組合わせれば、PDPに入射する外光の反射を抑制して表示画像のコントラスト、視認性を向上できる。
【0093】
この場合には、透明基材11/接着剤層13/金属層21(メッシュ部103)及び電離放射線硬化樹脂33(メッシュ開口部105)からなる本発明の電磁波シールドシートの少なくとも一方の面へ、近赤外線吸収フィルター、反射防止及び/又は防眩フィルターなどの光学部材が、貼着又は塗布される。貼着方法としては、光学部材が適宜の粘着剤で貼着され得る。塗布方法としては、まず金属層21及び電離放射線硬化樹脂33の表面へ必要に応じてコロナ処理、プライマ処理などの易接着処理が施された後、近赤外線吸収剤、反射防止及び/又は防眩剤などの機能剤を含有させた層が、グラビア印刷、ロールコーティング法などの公知の塗布方法で塗布され得る。
【0094】
また、本発明の電磁波シールドシートによれば、額縁部101の金属層21が露出しているため、そこから直接アースをとることができる。これにより、従来行われていた端子加工が不要となる。
【0095】
さらに、透明基材11として可撓性の材料を選択すれば、巻き取られたロール状の状態から帯状で連続して当該材料を供給し、これを連続又は間歇的に搬送しながら、各製造工程を実施することが可能である。従って、複数工程をまとめることが可能で生産性がよい。さらに、既存の生産設備を用いることも可能である。
【0096】
(変形形態)
本発明は、次のように変形して実施することを含むものである。すなわち、透明基材11及び賦型フィルム41として、可撓性を有する巻取り状の材料を用いた例を説明してきたが、それぞれ可撓性がない平板状の材料を用いてもよい。この場合、連続的な加工はできないが、間歇送り加工は可能であるし、本発明の作用及び効果については同様な結果が得られる。
【0097】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
金属層21として、一方の面に銅‐コバルト合金粒子からなる黒化層を有する厚さ10μmの電解銅箔が用いられた。一方、透明基材11として、厚さが100μmのPETフィルムA4300(東洋紡績社製、ポリエチレンテレフタレートの商品名)が用いられた。当該基材11と当該金属層21の黒化層とがウレタン系接着剤でドライラミネートされ、その後、50℃で3日間エージングされて積層体を得た。接着剤としては、ポリエステルウレタンポリオールから成る主剤タケラックA−310とヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤A−10(いずれも武田薬品工業社製、商品名)を用い、塗布量は乾燥後の厚さで7μmとして透明な接着剤層13を形成した。
【0099】
フォトリソグラフイ法によるメッシュの形成は、連続した帯状の部材に対してマスキングからエッチングまでを行う、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを流用して行われた。具体的には、まず、積層体の金属層面の全体へ、カゼインから成る感光性レジストが掛け流し法で塗布された。次に、当該積層体が次のステーションへ間歇搬送され、ネガ(メッシュ部が透光性、開口部が遮光性)のメッシュパターン版を用いて密着露光された。その後、積層体は、次々と各ステーションへ搬送されながら、水現像され、硬膜処理され、さらに、加熱してベーキングされた。
【0100】
積層体は、さらに次のステーションへ搬送され、エッチング液として塩化第二鉄水溶液をスプレイ法で吹きかけることによってエッチングが行われ、開口部が形成された。その後、積層体は、次々と各ステーションへ搬送されながら、水洗され、レジストが剥離され、洗浄され、さらに、加熱乾燥された。これによって、正方形の開口部を区画するライン幅10μm、ライン間隔(ピッチ)300μm、バイアス角度(基材の端部の辺とのなす角度)49度の平面視形状が図1の如き長方形領域のメッシュ部103、及び、当該メッシュ部103の外周縁の幅15mmの額縁部101、が形成された。露出している金属層の表面粗さRzは、0.73〜0.92μmであった。
【0101】
前記メッシュ部103の表面へ、UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂がダイコート法で塗布された。塗布量は13g/mとされた。
【0102】
賦型フィルム41として、厚さ100μmのPETフィルムE5100(東洋紡績社製、コロナ処理済みポリエチレンテレフタレート商品名)が用いられた。当該賦型フィルム41のコロナ処理面(表面濡れ性(JIS K−6768準拠)44mN/m/m:和光純薬工業(株)製ぬれ張力試験用混合液での測定結果)が、前記UV硬化性アクリル樹脂の塗布面に積層され、1kPa(10gf/cm)の圧力でロールプレスされた。次に、賦型フィルムの側からDバルブF600V−10(フュージョン社製、UV照射装置商品名)を用いて365nmの紫外線が積算光量1.5J/cmで照射され、UV硬化性樹脂が硬化された。次いで、賦型フィルムが剥離された。金属層のメッシュライン部107上及び額縁部101上のUV硬化樹脂は、賦型フィルムに付着したまま、賦型フィルムと共に除去された。一方、メッシュ開口部105はUV硬化樹脂で満たされ、当該UV硬化樹脂の表面は賦型フィルムの平滑表面が転写されて平滑面とされた。以上により、本発明の一実施の形態の電磁波シールドシートが得られた。また、金属層のメッシュライン部107及び額縁部101では、UV硬化樹脂が除去されたことにより、金属面が露出していた。
【0103】
(実施例2)
UV硬化性エポキシアクリレート樹脂が用いられたこと以外は、実施例1と同様に構成された。賦型フィルムの剥離は容易にでき、金属層のメッシュライン部107及び額縁部101では、UV硬化樹脂が除去されたことにより、金属面が露出していた。
【0104】
(実施例3)
賦型フィルムとして厚さが100μmの未処理PETフィルム(表面濡れ性は39mN/m)が用いられたこと以外は、実施例1と同様に構成された。賦型フィルムの剥離にはやや力を要したが、金属層のメッシュライン部107及び額縁部101では、UV硬化樹脂が除去されたことにより、金属面が露出していた。
【0105】
(比較例1)
賦型フィルムとして、厚さが100μmのA4300(東洋紡社製、表面濡れ性を70mN/mとした易接着処理PETフィルム商品名)が用いられたこと以外は、実施例1と同様に構成された。この場合、賦型フィルムを剥離することができず、電磁波シールドシートを得られなかった。
【0106】
(比較例2)
賦型フィルムとして、厚さが100μmの剥離PETフィルム(表面濡れ性が30mN/m)が用いられたこと以外は、実施例1と同様に構成された。賦型フィルムの剥離の際、金属層上のすべてのUV硬化樹脂層が除去されず残ったままとなり、額縁部に金属層が露出した電磁波シールドシートを得られなかった。
【0107】
(比較例3)
金属層としての電解銅箔の接着剤層とは反対側の面のRzが0.38μmであった他は、実施例1と同様に構成された。賦型フィルムの剥離により、額縁部での金属面露出とメッシュ部開口部での電離放射線硬化樹脂層の接着剤層側への残留は確実に行われた。但し、金属層表面で光沢が残り、実施例1に比べ、画像コントラストは低下し、外光反射、ギラツキも大となった。
【0108】
(比較例4)
金属層としての電解銅箔の接着剤層とは反対側の面のRzが1.69μmであった他は、実施例1と同様に構成された。画像コントラスト、外光反射、ギラツキの程度は、実施例1と同等で良好であった。但し、賦型フィルムの剥離後、額縁部表面に部分的に電離放射線硬化樹脂層がムラ状に残留し、接地可能な場所が制約されてしまった。
【0109】
(評価)
評価は、ヘイズ、全光線透過率、視認性、電磁波シールド性で行われた。ヘイズはJIS−K7136に準拠して、全光線透過率はJIS−K7361−1に準拠して、色彩機HM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定された。
【0110】
視認性については、電磁波シールドシートをPDP;WOOO(日立製作所社製、商品名)の前面に載置してテストパターン、白、及び黒を順次表示させて、画面から50cm離れた距離で、視認角度0〜80度の範囲で、目視によって評価(観察)された。具体的には、輝度、コントラスト、黒表示での外光の反射及びギラツキ、白表示での黒化処理のムラ、等が観察された。
【0111】
電磁波シールド(遮蔽)性は、KEC法(財団法人関西電子工業振興センターが開發した電磁波測定法)により測定された。
【0112】
実施例1、比較例3、比較例4では、ヘイズが1.7、全光線透過率が83.0、視認性は良好であった。
実施例2では、ヘイズが2.4、全光線透過率が82.2、視認性は良好であった。
実施例3では、ヘイズが1.7、全光線透過率が83.1、視認性は良好であった。
【0113】
電磁波シールド性については、実施例1〜3及び比較例3〜4とも、周波数30MHz〜1000MHzの範囲に於いて、電磁場の減衰率は30〜60dBであり、いずれも十分な電磁波シールド性であった。なお、比較例1〜2では、賦型フィルムが剥離できず、あるいは、UV硬化樹脂層が除去されず、額縁部に金属層が露出した電磁波シールドシートが得られなかったので、測定が行われなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の一方の面に透明な接着剤層を介して設けられたメッシュ状の金属層と、
を備え、
前記金属層は、多数の開口部と該開口部を囲繞するライン部とを有するメッシュ部と、前記メッシュ部の周縁に設けられた額縁部と、を有しており、
前記接着層とは反対側の前記額縁部の表面には、金属が露出されており、
前記開口部には、透明な電離放射線硬化樹脂層が埋め込まれている
ことを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記接着層とは反対側の前記額縁部の前記表面の表面粗さは、JIS−B0601(1994年版)に準拠する10点平均粗さで、0.5〜1.5μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電磁波シールドシートを製造する製造方法であって、
(1)透明基材の表面へ透明な接着剤層を介して金属層を積層して積層体を形成する工程と、
(2)前記積層体の前記金属層の表面へレジスト層をメッシュパターン状に設け、当該レジスト層で覆われていない部分の前記金属層の部分をエッチングして除去し、その後に当該レジスト層を除去することにより、前記金属層にメッシュ部と当該メッシュ部の周縁に設けられた額縁部とを形成する工程と、
(3)前記メッシュ部及び前記額縁部の表面に液状の透明な電離放射線硬化性樹脂を塗布し、当該電離放射線硬化性樹脂上に賦型フィルムを積層し、当該賦型フィルムの側から電離放射線を照射して前記電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程と、
(4)前記賦型フィルムを剥離すると共に、少なくとも前記額縁部の表面上において硬化した電離放射線硬化樹脂を除去する一方、前記メッシュ部の前記開口部内で硬化した電離放射線硬化樹脂を残留させる工程と、
を備えたことを特徴とする電磁波シールドシートの製造方法。
【請求項4】
前記電離放射線は紫外線であり、
前記賦型フィルムは紫外線透過性である
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁波シールドシートの製造方法。
【請求項5】
前記接着層と前記電離放射線硬化樹脂層との間、前記電離放射線硬化樹脂層と前記賦型フィルムとの間、及び、前記電離放射線硬化樹脂層と前記金属層との間、の各層間接着力は、当該順序で小さくなっている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の電磁波シールドシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/069713
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517034(P2005−517034)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000227
【国際出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】