説明

電磁波吸収体

【課題】
RFIDシステムや無線LANの使用環境下において電磁波干渉や電磁波漏洩等の電磁波障害を軽減するために用いられ、簡易的に使用でき、無線通信システムを使用しない場合はコンパクトに収納可能な電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】
可撓性を有する抵抗膜層および電磁波反射膜層が折り畳まれたもしくは巻回された電磁波吸収体であり、前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層が空間を隔てて略平行に展張設置されることで電波吸収性を発現する電磁波吸収体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)やRFID(Radio Frequency Identification)システムの使用環境下において電磁波干渉や電磁波漏洩等の電磁波障害を軽減するために用いられ、無線通信システムを使用しない場合は収納可能な電磁波吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を利用した様々な形式の情報伝達手段が広がりを見せている。例えば、バーコードに替わる、電磁波を使った非接触の自動認識技術として、RFIDシステムが製造や物流、小売業界などへ普及しつつある。また、オフィスや公共スポット、一般家庭で利用される無線LANシステムの普及が進んでいる。
【0003】
このような無線通信システムが広がりを見せる中、RFIDでは、電磁波の乱反射、マルチパスの発生によるICタグの読み取り不良(ヌル点の発生)や不要なICタグを読み取るなどの問題、無線LANにおいては、天井や壁からの多重反射波による伝送速度の低下、また外部への情報漏えいなどセキュリティ面での問題などが顕在化している。
【0004】
このように、無線通信システムの普及に伴い、オフィスや商業施設、物流倉庫、一般住宅、マンションなどのさまざまな環境において、不要な電磁波を取り除くための電磁波吸収体の要求が高まっており、容易に取り扱いができ、施工などの設置の手間が省け、かつ汎用的に利用できるよう、低コストである電磁波吸収体が必要となっている。
【0005】
このような電磁波通信環境対策としては、抵抗膜を、スペーサーを介して、反射材から1/4波長の位置に配したλ/4型吸収体などが検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、抵抗膜および反射材からなる電磁波吸収体が開示されている。しかしながら、この吸収体は、抵抗膜および反射材に補強体を積層し、機械的特性を上げたものを推奨しており、収納可能なものではなかった。
【0007】
特許文献2では、室内において用いるのに適した電磁波吸収体として、電磁波吸収パネル、衝立、壁、天井、床に使用可能な電磁波吸収体が開示されている。しかし、壁や天井、床などに使用する場合、施工が必要であるなど、容易に利用することは困難であった。
【0008】
特許文献3には、電磁波吸収カーテンとして、半導電性セラミック繊維で構成されたカーテンが開示されている。しかし、セラミック繊維は剛性が高く柔軟性に欠け、また、高価であるため価格アップを招いていた。
【特許文献1】昭62−205699
【特許文献2】特開2004−270143
【特許文献3】特開2001−135135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、RFIDシステムや無線LANの使用環境下において電磁波干渉や電磁波漏洩等の電磁波障害を軽減するために用いられ、容易に設置することができ、無線通信システムを使用しない場合は収納可能な電磁波吸収体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、下記のいずれかの構成を特徴とするものである。
(1)可撓性を有する抵抗膜層および電磁波反射膜層が折り畳まれたもしくは巻回された電磁波吸収体であり、前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層が空間を隔てて略平行に展張設置されることで電波吸収性を発現することを特徴とする電磁波吸収体。
(2)前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層は、それぞれ、一方の端部に、対応する層の巻取り軸および該巻取り軸を正逆両方向に回動させることが可能な回動機構を有し、他方の端部に、対応する層を展張方向に交差する方向に広げた状態で保持する棒状部材を有している、前記(1)に記載の電磁波吸収体。
(3)前記抵抗膜層と前記電磁波反射膜層との間の距離が、使用する電磁波の波長をλとした場合、λ/12〜λ/4である、前記(1)または(2)に記載の電磁波吸収体。
(4)前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層の厚さが、それぞれ0.05mm〜5mmである、前記(1)〜(3)のいずれか記載の電磁波吸収体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、RFIDシステムや無線LANの使用環境下において電磁波干渉や電磁波漏洩等の電磁波障害を軽減するために用いられ、容易に設置することができ、無線通信システムを使用しない場合はコンパクトに収納可能な電磁波吸収体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の電磁波吸収体は、抵抗膜層と電磁波反射膜層を有する。
【0013】
抵抗膜層は、電気的損失特性を持つ薄い可撓性のシート状物からなる。この電気的損失特性により、電磁波エネルギーを微小な電流に変換し、さらに熱エネルギーに変換することで電磁波の減衰を行なう。抵抗膜層の電気的損失特性は、抵抗膜層の基本的な骨格となるシート状物に導電性材料を含有させることで付与できる。導電性材料としては、カーボンブラックやカーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、炭素繊維あるいはステンレス、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、鉄等の金属粉末もしくは金属繊維等を挙げることができる。また、非導電性の繊維に金属をメッキ、蒸着、溶射する等して導電性を付与したものを挙げることもできる。中でも導電性材料の含有量を少なくできることから、繊維状のものが好ましく、このとき、繊維長が1mm〜15mmの炭素短繊維が好ましく、含有量は、抵抗膜層の基本的な骨格となるシート状物の質量に対し0.1質量%〜3.0質量%であることがより好ましい。また、炭素繊維は、金属繊維に比べ軽量であり、長期間の使用においてほとんど性能の変化がないため、より好ましい。
【0014】
抵抗膜層の基本的な骨格となるシート状物の材料としては、該シート状物を樹脂膜やフィルムとする場合には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の非ジエン系ゴム等のゴム材料や、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0015】
また、シート状物が織物、編物、不織布等の繊維を主体とする構造体である場合には、ガラス繊維やセラミック繊維等の無機繊維、合成繊維、綿、麻、ウール、木材パルプといった天然繊維、レーヨン等の半合成繊維が挙げられる。さらに、合成繊維を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびそれらのポリエステルの酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸等を共重合した共重合ポリエステル等のポリエステルや、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66とを共重合した共重合ポリアミド等のポリアミドや、ポリビニルアルコールや、芳香族ポリアミドや、ポリエーテルエーテルケトンや、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールや、ポリフェニレンサルファイドや、ポリエチレンや、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0016】
難燃性向上の観点からは、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等を用いることが好ましい。
【0017】
また、抵抗膜層を構成するシート状物には、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機粉体を含有せしめてもよい。例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等を添加することにより、難燃性を向上させることができる。
【0018】
これらの無機粉体以外の難燃剤としては、非ハロゲンの難燃剤を使用することが好ましい。
【0019】
抵抗膜層を形成する方法としては例えば、上記したような導電性短繊維を、ニーダーやバンバリーミキサー、ミルミキサー、ロールミル、ジェットミル、ボールミル等で、上記したゴムや樹脂材料に含有混練させ、圧延や溶融押出によりシート化する方法や、導電性短繊維およびパルプ等の繊維材料に必要に応じて水酸化アルミニウム等の無機粉体を加えて、水の中で混合したスラリーを抄きあげ、シート化する方法等を採用することができる。
【0020】
抵抗膜層を構成するシート状物の形態としては、湿式不織布であることが、抵抗膜層を薄型化、軽量化および柔軟化できること、製造コストを低減できること、導電性短繊維を均一に分散できる点から好ましい。湿式不織布の種類としては、紙やスパンレース不織布等が挙げられる。湿式不織布を使用する際、少なくとも片面を樹脂膜やフィルムなどでラミネートし表面を保護したものを用いてもよい。
【0021】
一方、電磁波反射膜層は電磁波を反射する可撓性のシート状物であり、チタン、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、鉄、ステンレス等の金属箔、または前記金属をメッキもしくは蒸着したフィルム、織物、紙、もしくは不織布などが挙げられる。また、導電性繊維の織物、導電性繊維を10質量%以上含有した紙なども用いることができる。このとき、電磁波反射膜層の電磁波遮蔽効果は、30dB以上が好ましい。電磁波遮蔽効果とは、反射膜層に入射した電磁波と反射膜層を透過した電磁波との比率である。
【0022】
電磁波遮蔽効果の測定は、アジレントテクノロジー社製(HP8719ES)のネットワークアナライザーに30mm×15mmの方形導波管を接続し、試料を挿入していないときの透過電力(入射電力)と、試料を挿入したときの透過電力から、式1より電磁波遮蔽効果を求めた。
【0023】
電磁波遮蔽効果[dB]=10×log(透過電力/入射電力)・・(式1)
本発明の電磁波吸収体は、可撓性を有する抵抗膜層および電磁波反射膜層が折り畳まれたもしくは巻回されており、これらを互いの間隔を保つように空間を隔てて略平行に展張設置すること電波吸収性を発現する構成を採っている。
【0024】
このような構成によれば、スペーサーと抵抗膜層、電磁波反射膜層を貼り合わせる工程などを簡素化ができ、低コスト化できる。また、可撓性を有する膜で折り畳みもしくは巻回しているので、必要なときのみ展張設置することができ、また、不要なときはコンパクトに収納することが可能となる。
【0025】
可撓性を有する膜を折り畳みもしくは巻回しているものとしては、ロールカーテンやたくし上げカーテン、カーテン、ブラインドカーテンなどが挙げられる。
【0026】
例えば、本発明をロールカーテンのように構成する場合には、図1〜図4に示すように、抵抗膜層1および電磁波反射膜層2のそれぞれの一方の端部に、それら層の巻取り軸3と、該巻取り軸3を正逆両方向に回動可能な回動機構(図示しない)を設け、他方の端部に、膜を展張方向に交差する方向に広げた状態で保持する棒状部材4を設ける。これにより、両シートを展張し、使用することができる。なお、重力方向に展張する形態の場合には、この棒状部材に、ロール状体のシートを引き出した後それぞれのシートの重力方向の展張状態を保持するためのウエイトを取り付けることが好ましい。
【0027】
なお、図1は、本発明の電磁波吸収体をロールカーテンとした形態の概略斜視図である。また、図2は、ロール状に巻き取られていた抵抗膜層および電磁波反射膜層が、両端が収納ケース6の側面に回動可能に支持されている巻き取り軸3によって指示されつつも、空間を隔てて略平行に展張設置された状態を示している。ここで、さらにそれぞれのロールの巻き出し部には、回転可能に支持されたガイドロール5が設けられている。それぞれのガイドロール間の距離を調整することで、層間距離を制御することができる。さらに、抵抗膜層および電磁波反射膜層の下端部には、棒状部材4が設けられているが、二つの棒状部材4は、図3に示すよう、その棒状部材4の端部で固定具7を用いて固定し、抵抗膜層と電磁波反射膜層の距離を調整することもできる。図4は、図2に示す抵抗膜層1および電磁波反射膜層2が、ロール状に巻き取られている態様を示す図である。
【0028】
たくし上げカーテンのように構成する場合は、抵抗膜層および電磁波反射膜層を吊り下げ支持し、それぞれのシートの下端部にウエイトを有する棒状部材と昇降用コードを取り付け、それぞれのシートを昇降可能とし、使用する。
【0029】
カーテンのように構成する場合には、上端部に2つのカーテンレールを設け、一方には抵抗膜層を、もう一方には電磁波反射膜層を吊設し、それぞれの膜を引き出して展張設置し、使用する。
【0030】
また、抵抗膜層および電磁波反射膜層を、長片状の複数枚の部材から構成されるブラインドにも適用できる。
【0031】
本発明の電磁波吸収体は、このように、可撓性を有する抵抗膜層および電磁波反射膜層が折り畳まれたもしくは巻回された電磁波吸収体であるが、それら抵抗膜層と電磁波反射膜層とを略平行に展張設置することで電磁波吸収機能を発現し、かつ、容易に展開・収納することが可能となる。
【0032】
このとき抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離は電磁波の波長をλとした場合、λ/12からλ/4で調整することにより、目的とする周波数の電磁波を吸収することができる。
例えば、RFIDシステムで使用される周波数において、2.5GHzでは1.0cm〜3.0cm、950MHzでは2.6cm〜7.8cm、無線LAN使用周波数である2.5GHzでは、1.0cm〜3.0cm、5.2GHzでは0.5cm〜1.4cmであることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられる抵抗膜層および電磁波反射膜層の厚みは、それぞれ0.05mm〜5mmであることが好ましい。0.05mm以上とすることにより、十分な強度を有し、適度な張り腰が得られる。一方、5mm以下とすることにより、軽量化でき、巻き取った場合などの収納性が向上する。
【0034】
本発明の電磁波吸収体は、RFIDシステムを用いて物品管理を行う物流倉庫等において、アンテナの正面に設置し電磁波の乱反射発生を抑制したり、また入荷した物品に付された非接触ICタグの認識を行う空間と、既に認識済みの物品を保管している空間を仕切るものとして好ましく使用することができる。
【0035】
あるいは無線LANを使用するオフィスや一般家庭、公共施設などにおいて、設置場所は限定するものではないが、例えば、窓際に設置し、電磁波の乱反射の発生を防止し、無線LANの通信性能低下を防ぎ、また不慮または故意による第三者からの電磁波放射によるデータの改ざんを防止、あるいは外部への電磁波情報漏えいを防止するものとして好ましく使用することができる。
【実施例】
【0036】
(1)非接触ICタグの認識試験
2.45GHzおよび0.95GHzのマイクロ波方式の据え置き型リーダライタを、アンテナ中央部が床から高さ85cmになるよう設置した。非接触ICタグの読取性を確認するため、周波数2.45GHzについては、アンテナから80cmの位置に反射体(45cm×45cm)を正対させた場合、周波数0.95GHzについては、アンテナから400cmの位置に反射体(90cm×90cm)を正対させた場合に関して、それぞれ反射体を設置しない場合と比較し、アンテナからの送信波と反射波の電磁波干渉によるヌル点(ICタグを読み取らないポイント)の発生有無について確認した。尚、上記試験に関わるアンテナ、ICタグ、電磁波吸収体の配置図を図5に示す。
【0037】
リーダライタから電磁波を放射し、アンテナと反射体の間を移動させ、ICタグに書込み及び読取りを試みた。アンテナと反射体間でICタグを認識しない点(ヌル点)が0個の場合を◎、1〜2個の場合を○、3個以上の場合を×とした。
【0038】
[実施例1]
(抵抗膜層)
平均繊維長3mmの炭素繊維、平均繊維長4mmのチョップ度ガラス繊維、木質パルプ、平均繊維長3mmの芯鞘型熱融着ポリエステル短繊維(東レ株式会社製“サフメット”(登録商標))、水酸化アルミニウムをそれぞれ、1質量%、19質量%、7質量%、3質量%、70質量%の割合で混合し、巻取りスピード100m/分で湿式抄紙した、厚み0.13mm、米坪量100g/mの抵抗膜を用いた。
【0039】
(電磁波反射膜層)
厚さ0.05mmのアルミ蒸着フィルムを用いた。
【0040】
(電磁波吸収体)
上記抵抗膜層および電磁波反射膜層により、図1〜図4に示す構成を有するロールカーテン形態の電磁波吸収体を構成した。なお、抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離は10mmとした。また、この電磁波吸収体は電磁波吸収部材(抵抗膜および電磁波反射膜)の重量が200g/mと軽量なものであった。
この電磁波吸収体を用いて2.45GHzにおける非接触ICタグの認識試験を行った結果、読取性は○であり、アンテナからの送信波と反射波との干渉によるヌル点の発生を抑制できるものであった。
【0041】
[実施例2]
(抵抗膜層)
実施例1と同様の抵抗膜を用いた。
【0042】
(電磁波反射膜層)
実施例1と同様の電磁波反射膜を用いた。
【0043】
(電磁波吸収体)
上記抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離を15mmとした以外は実施例1と同様にし、電磁波吸収体を得た。
【0044】
2.45GHzにおけるこの電磁波吸収体を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、読取性は◎であり、アンテナからの送信波と反射波との干渉によるヌル点の発生を抑制できるものであった。
【0045】
[実施例3]
(抵抗膜層)
実施例1と同様の抵抗膜を用いた。
【0046】
(電磁波反射膜層)
実施例1と同様の電磁波反射膜を用いた。
【0047】
(電磁波吸収体)
上記抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離を20mmとした以外は実施例1と同様にし、電磁波吸収体を得た。
2.45GHzにおけるこの電磁波吸収体を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、読取性は○であり、アンテナからの送信波と反射波との干渉によるヌル点の発生を抑制できるものであった。
【0048】
[実施例4]
(抵抗膜層)
実施例1で作製した抵抗膜2枚をエチレン−酢酸ビニル系接着剤を用いて互いに貼り合わせ、厚み0.26mm、米坪量200g/mの抵抗膜層を得た。
【0049】
(電磁波反射膜層)
実施例1と同様の電磁波反射膜を用いた。
【0050】
(電磁波吸収体)
上記抵抗膜層と、電磁波反射膜との間の距離を25mmとした以外は実施例1と同様にし、電磁波吸収部材の重量が300g/mの電磁波吸収体を得た。
0.95GHzのリーダライタに関し、この電磁波吸収体を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、読取性は○であり、アンテナからの送信波と反射波との干渉によるヌル点の発生を抑制できるものであった。
【0051】
[実施例5]
(抵抗膜層)
実施例4と同様の抵抗膜を用いた。
【0052】
(電磁波反射膜層)
実施例1と同様の電磁波反射膜を用いた。
【0053】
(電磁波吸収体)
上記抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離を30mmとした以外は実施例1と同様にし、電磁波吸収体を得た。
【0054】
0.95GHzのリーダライタに関し、この電磁波吸収体を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、読取性は◎であり、アンテナからの送信波と反射波との干渉によるヌル点の発生を抑制できるものであった。
[比較例1]
抵抗膜層を設けなかった以外は実施例1と同様にロールカーテン形態の電磁波吸収体を構成し、2.45GHzのリーダライタを用い非接触ICタグの認識試験を行った。その結果、読取性は×であり、アンテナからの送信波と電磁波反射膜からの反射波が干渉し、ヌル点が発生した。
【0055】
以上の結果を纏めたものが、次の表1である。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の電磁波吸収体は、高度な電磁波制御機能と収納機構を備えるものである。オフィスや公共スポットで普及している無線LANや、電磁波方式のRFIDシステムを使用する店舗や物流倉庫、図書館、工場において、空間を間仕切るカーテンなどに用いることにより、電磁波の乱反射による通信性能低下を抑制し、かつ外部からの電磁波の進入による情報改ざんや外部への情報漏えいを防ぐことができる。また、抵抗膜層および電磁波反射膜層を折り畳みもしくは巻回しているので、簡易的に設置することができ、また無線通信システムを使用しない場合は、コンパクトに収納することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態を示す、ロールカーテン態様の電磁波吸収体の概略斜視図である。
【図2】図1に示すロールカーテン態様の電磁波吸収体の縦断面図である。
【図3】抵抗膜と電磁波反射膜との間の距離を制御するため、棒状部材の端部を固定している態様を示す概略模式図である。
【図4】図2に示す態様において、抵抗膜層1および電磁波反射膜層2をロール状に巻き取った状態を示す縦断面図である。
【図5】実施例、比較例における非接触ICタグ認識試験に係るアンテナ、ICタグ、電波吸収体の配置図である。
【符号の説明】
【0059】
1:抵抗膜層
2:電磁波反射膜層
3:巻取り軸
4:棒状部材
5:ガイドロール
6:収納ケース
7:バー固定冶具
11:アンテナ
12:ICタグ
13:電磁波吸収体
14:反射体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する抵抗膜層および電磁波反射膜層が折り畳まれたもしくは巻回された電磁波吸収体であり、前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層が空間を隔てて略平行に展張設置されることで電波吸収性を発現することを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層は、それぞれ、一方の端部に、対応する層の巻取り軸および該巻取り軸を正逆両方向に回動させることが可能な回動機構を有し、他方の端部に、対応する層を展張方向に交差する方向に広げた状態で保持する棒状部材を有している請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記抵抗膜層と前記電磁波反射膜層との間の距離が、使用する電磁波の波長をλとした場合、λ/12〜λ/4である請求項1または2記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記抵抗膜層および前記電磁波反射膜層の厚さが、それぞれ0.05mm〜5mmであること特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電磁波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−76620(P2009−76620A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243458(P2007−243458)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】