説明

電磁波遮蔽材料

【課題】高い可視透過率と高い電磁波遮蔽能と高い近赤外吸収性能を同時に満たし、且つ、高湿下保存しても近赤外吸収劣化の少ない、しかも耐光性劣化の少ない電磁波遮蔽材料を提供する。
【解決手段】支持体上に近赤外線吸収染料を含む層及びハロゲン化銀粒子を含む層を設けた電磁波遮蔽材料用原版を作製し、該電磁波遮蔽材料用原版を露光、現像処理することにより金属銀部を形成させた電磁波遮蔽材料において、該近赤外線吸収染料が水分散性熱可塑性樹脂又は、オクタノール/水系分配係数の対数値(logP)が5.9〜11である高沸点溶剤に分散されていることを特徴とする電磁波遮蔽材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面に使用する近赤外線吸収性且つ可視光透過性を有する電磁波遮蔽材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の使用増大のために電磁波障害(EMI)を低減する必要性が高まっている。EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、人体に対しても害を与えることが指摘されている。このため、電子機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
特に、プラズマ表示パネル(PDP)は、希ガスをプラズマ状態にして紫外線を放射させこの光線で蛍光体を発光させる原理に基づくために原理的に電磁波を発生する。又、このとき近赤外線も放射されるので、リモコン等の操作素子の誤動作を引き起こすので電磁波遮蔽能と同時に近赤外線の遮蔽も求められている。電磁波遮蔽能は、簡便には表面抵抗値で表すことができ、PDP用の透光性電磁波遮蔽材料では、10Ω/□以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、2Ω/□以下とする必要性が高く、より望ましくは0.2Ω/□以下という極めて高い導電性が要求されている。
【0004】
また、近赤外線放出の遮蔽に関する要求レベルは、800nm〜1000nmの吸収が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上が要求されており、更により高い遮蔽性が望まれている。
【0005】
更にPDPの機能を向上させるため、赤外線吸収の他に薄膜ガラス製のPDP本体に対する機械的強度の付与、外光の反射防止、色調補正が求められている。
【0006】
このために機械的強度を付与する目的で複数の透明基板を合わせたり、電磁波遮蔽目的で導電性層、赤外線遮蔽のために赤外線吸収層、外光の反射防止のために反射防止層、色調補正目的で、可視光領域に吸収のある色素を含有した層が組合わされ使用される。
【0007】
上記の問題のうち、特に電磁波防止と赤外吸収の課題を解決するために、開口部を有する金属メッシュを利用した電磁波遮蔽性と赤外吸収染料を使用した遮蔽性とを両立させる方法がこれまで提案されている。例えば、開口率の高い金属メッシュを焼き付けた硝子板に赤外線吸収フィルムを貼付して作製するという方法は、金属メッシュの焼き付けの製造工程が煩雑かつ複雑で、生産に熟練度が要求され又工程時間が長くかかるという間題点があった。
【0008】
この解決のためにハロゲン化銀粒子から得られる現像銀は金属銀であることから、写真現像を応用した製法で金属銀のメッシュを作製することが可能である。例えば、ハロゲン化銀粒子を含む層を有する感光材料をメッシュ状の画像様に露光して現像処理すれば、銀粒子がメッシュ状に集合した導電性金属銀部が形成される(例えば、特許文献1参照。)。しかし、ゼラチン中に分散されたハロゲン化銀粒子を含む層、近接又は隣接する近赤外線吸収染料は、ゼラチンが吸水性のために高温高湿下では経時劣化し易い問題があった。この問題解決のために近赤外線吸収染料を疎水性可塑剤に分散させる試み(例えば、特許文献2参照。)があったが、ゼラチン中に分散ができず水系塗布には不適であった。
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2005−099820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、ハロゲン化銀粒子を利用する方法は、写真的技術を応用して導電性の金属線を形成させることができ、生産が向上したのであるがハロゲン化銀粒子を含む層に水分を含むゼラチンを含む故に高湿の経時劣化が問題であったのである。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高い電磁波遮蔽性と高い赤外遮蔽性とを同時に有する電磁波遮蔽材料であって、細線状画像の形成が容易であり、しかも迅速に簡便な工程で製造でき、且つ耐湿性の向上した電磁波遮蔽材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
(1)支持体上に近赤外線吸収染料を含む層及びハロゲン化銀粒子を含む層を設けた電磁波遮蔽材料用原版を作製し、該電磁波遮蔽材料用原版を露光、現像処理することにより金属銀部を形成させた電磁波遮蔽材料において、該近赤外線吸収染料が水分散性熱可塑性樹脂又は、オクタノール/水系分配係数の対数値(logP)が5.9〜11である高沸点溶剤に分散されていることを特徴とする電磁波遮蔽材料。
【0013】
(2)前記近赤外線吸収染料が水分散性熱可塑性樹脂又は燐酸エステルの微粒子に分散されたゼラチン中に存在することを特徴とする前記(1)に記載の電磁波遮蔽材料。
【0014】
(3)前記オクタノール/水系分配係数の対数値(logP)が5.9〜11である高沸点溶剤が、燐酸エステル類であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電磁波遮蔽材料。
【0015】
(4)前記近赤外線吸収染料がジイモニウム化合物、ニッケルジチオール化合物、フタロシアニン系化合物、スクワリウム化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【0016】
(5)前記燐酸エステルがトリアルキル燐酸エステル、トリアリール燐酸エステル、ジアリール燐酸エステルの縮合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【0017】
(6)前記ハロゲン化銀粒子の粒径が10nm〜100nmであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【0018】
(7)前記近赤外線吸収染料が平均粒子径として10nm〜100nmに微粒子分散されていることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【0019】
(8)前記、近赤外線吸収染料を含む層とハロゲン化銀粒子を含む層の間に、中間層を有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【0020】
(9)前記、近赤外線吸収染料を含む層が、支持体に対して、ハロゲン化銀粒子を含む層と反対側に設置されていることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、高い可視透過率と高い電磁波遮蔽能と高い近赤外吸収性能を同時に満たし、且つ、高湿下保存しても近赤外吸収劣化の少ない、しかも耐光性劣化の少ない電磁波遮蔽材料を提供することができた
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の電磁波遮蔽材料についてさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明に用いられる水分散性熱可塑性樹脂は、支持体上に塗布され、加熱乾燥によって皮膜を形成しうるように、乾燥温度で熱可塑性の樹脂である。乾燥温度は、通常、室温から約100℃の間であり、この範囲の温度で乾燥が行われる。本発明の水分散性熱可塑性樹脂は、特に水媒体中に安定して分散される樹脂を扱うのでラテックスと同義語として扱う。ラテックスとはゴムの樹などから採取される白色乳状の樹液をさしていたが、乳化重合物の出現以来、合成高分子の水分散体も含めて「水性媒体の中に高分子物質が安定して分散してるもの」をラテックスと呼ぶようになったのでこの呼称が使用されている。水分散性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−イタコン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、場合によってはアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸等のカルボン酸基を含むモノマー或いは、ジメチルアクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸基等のスルホン酸基を持つモノマーを一つ又は複数組み合わせて少量使用したスチレン−ブタジエン系共重合体、スチレンーイソプレン系共重合体等が挙げられる。
【0024】
上記ラテックスは、水系塗布の結合剤として広く使用されているが、中でも、結合剤として耐水性を向上させるラテックスが好ましい。結合剤として耐水性を得る目的のラテックスの使用量は、塗布性を勘案して決められるが耐湿性の点から使用量は多いほど好ましく、全結合剤質量に対して50%以上100%以下が好ましく、80%以上100%以下がより好ましい。このような樹脂を市場から入手することもできる。
【0025】
例えば、スチレン樹脂としてはスチレン−ブタジエンコポリマーの業界統一品番で、#1500、#1502、#1507、#1712、#1778などの種々の銘柄の住友SBRラテックス(住友化学(株))やJSRラテックス(日本合成ゴム(株))やNipolラテックス(日本ゼオン(株))を用いることができる。
【0026】
スチレン−ブタジエンコポリマーは、スチレンとブタジエンの共重合比(質量)が10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜60/40が好ましい。ハイスチレンラテックスと呼ばれる60/40〜90/10の比率のものは、スチレン含率の低い(10/90〜30/70)樹脂と混合して用いるのが、感光層の耐傷性、物理的強度を高める上で好ましい。混合比率は(質量)は、20/80〜80/20の範囲内が好ましい。
【0027】
ハイスチレンラテックスとしては、JSR0051や同0061(以上、日本合成ゴム(株)の商品名)、およびNipol 2001,2057,2007(日本ゼオン(株)の商品名)などの市販品が使える。またスチレン含率の低いラテックスとしては、上記のハイスチレンラテックスとして列挙した以外の常用のものが挙げられ、JSR#1500、#1502、#1507、#1712、#1778等がある。
【0028】
また、アクリル樹脂として一般に知られるアクリル系ラテックス、例えばNipol AR31,AR32、あるいはHycar 4021(いずれも日本ゼオン(株)の商品名)を用いることができる。
【0029】
前記したアクリル樹脂は、次のアクリレートモノマーを原料とする重合体又は共重合体を用いることもできる。なお、以下において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基の意味で用いる。
【0030】
分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有するモノマとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、オクチルメタクリレート等の脂肪族アルコールのメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート等の脂肪族アルコールのアクリル酸エステル、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート等の脂環式アルコールのアクリル酸エステル、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート等の脂環式アルコールのメタクリル酸エステル、フェニルアクリレート、4−プロモフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族基を含むアクリル酸エステル、フェニルメタクリレート、4−クロルフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族基を含むメタクリル酸エステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等がある。
【0031】
分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するモノマとしては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ジアクリロキシ−2−プロパノールポリエチレングリコールジアクリレート等のアクリル酸ジエステル、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ジメタクリロキシ−2−プロパノール等のメタクリル酸ジエステル、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸トリエステル、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリル酸トリエステル等がある。
【0032】
スチレン樹脂としては、スチレンモノマーとして、メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレンなどのアルキルスチレンモノマー、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、ジブロモスチレンなどのハロゲン化スチレンモノマー、ニトロスチレンモノマー、アセチルスチレンモノマー、メトキシスチレンモノマー等を使用し、単独又は他のモノマーと共重合したものである。
【0033】
ビニル樹脂としては、モノマーとしてビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、アクリロニトリル、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル又はビニリデン等を構成単位として含むものである。又構成単位として分子中に2つ以上のビニル基を有するモノマを含んでもよい。例えば、ジビニルベンゼン、ブタジエン、クロロプレンなどの共役ジエンモノマー、イソプレンアジピン酸ジビニル、ジビニルスルホン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0034】
これらのモノマーは、前記したように乳化重合させることができる。この乳化重合に用いる水溶性重合開始剤としては、任意のものが選択できるが例示すると、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビスイソブチルアミド二水和物等が挙げられる。水溶性重合開始剤の使用量は、全モノマーに対して0.001〜0.5モル%が好ましい。
【0035】
また、前記の乳化重合に用いる分散剤は、系を安定化させるために適宜使用される。分散安定剤又は分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ヒドロキシアルキルアクリレートポリマー、ヒドロキシアルキルメタクリレートポリマー、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、エチレン−アクリル酸共重合体又はその塩、エチレン−メタクリル酸共重合体又はその塩、エチレン−マレイン酸共重合体又はその塩、スチレン−アクリル酸共重合体又はその塩、スチレン−メタクリル酸共重合体又はその塩、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、メチロール化ポリアミド、水溶性メラミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性尿素樹脂、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルローズ、メチルセルローズ、ヒドロキシアルキルセルローズ、カルボキシメチルデンプン、カチオン化デンプン、デキストリン、アルギン酸又はその塩、カラギーナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、グルコマンナン、ザレップマンナン、グアーガム、植物粘液質等の単独または2種以上の混合物が用いられる。分散剤は、使用するモノマーの全量又は分散させる樹脂の全量に対して、0.01〜20質量%使用することが好ましい。
【0036】
さらに、前記の乳化重合に用いる界面活性剤としては、重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されず、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤のいずれでも使用できる。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩、高級α−オレフィンスルホン化物ナトリウム塩、高級脂肪酸塩、高級アルキルフェノールアルキレンオキシドスルホン酸ナトリウム、高級アルキルアミン塩、高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、高級アルキルピリジニウム塩、高級アシルアミノメチルピリジニウム塩、高級アシロキシメチルピリジニウム塩、N,N−ジポリオキシエチレン−N−高級アルキルアミン塩、高級アルキルポリエチレンポリアミン塩、トリメチル高級アルキルアニリンサルフェート、トリメチル高級アルキルベンジルアンモニウム塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、高級脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、高級脂肪酸アミドエチレンオキシド付加物、グリセリン高級脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール高級脂肪酸エステル、ソルビトールやソルビタンの高級脂肪酸エステル(またはこれらのエチレンオキシド付加物)、ショ糖高級脂肪酸エステル、ポリオールの高級アルキルエーテル、アルカノールアミンの高級脂肪酸アミド、アミノ酸型両性活性剤、ベタイン型両性活性剤等の単独または2種以上の混合物が挙げられる。界面活性剤は、使用するモノマーの全量又は分散させる樹脂の全量に対して、0.01〜20質量%使用することが好ましい。
【0037】
本発明の水分散性熱可塑性樹脂は、単独で使用するか又はゼラチンと共に使用し、ゼラチンと共に使用する場合にはその混合質量比は、1:2〜10:1が好ましい。ゼラチンの使用質量比が大きいと耐湿性の劣化が大きく、少ないと塗布が均一となりにくい。ゼラチンと使用する場合には、水分散性樹脂に代えて燐酸エステル化合物をゼラチン中に微粒子分散して使用することができる。燐酸エステル化合物を平均粒子径10nm〜10μmの大きさに微粒子分散する方法は、燐酸エステル化合物を酢酸エチルのようなエステル有機溶媒に溶解し、ノニオン性又はアニオン性界面活性剤を添加しゼラチン中に分散することができる。ここで使用するノニオン性又はアニオン性界面活性剤は、水分散性熱可塑性樹脂の乳化重合に使用する種類の界面活性剤を適用することができる。分散性を向上させるには、高能率のホモジナイザー、超音波分散、超音速ジェット分散等を使用すると微細化粒子として分散が可能である。
【0038】
本発明において、近赤外線吸収染料は高沸点溶剤による水中油滴型分散液として添加されることも有効である。高沸点溶剤としては、例えばフタル酸エステル類、リン酸エステル類、脂肪酸エステル類、有機酸アミド類、ケトン類、炭化水素化合物等が挙げられる。一般的には、炭素数が15以上の有機化合物である。
【0039】
以下に、オクタノール/水系分配係数の対数値(logP)について説明する。logPは、n−オクタノール/水への分配係数Pの対数であり、P=(n−オクタノール相中の溶質濃度)/(水相中の溶質濃度)である。logPの値は、従来より疎水性の尺度として利用されており、例えばC.Hansch,T.Fujita.J.Am.Chem.Soc.,86,1616〜625(1964)、A.Leo,C.Hansch,Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology,Wiley,New York(1979)、化学領域増刊122号「薬物の構造活性相関」(南江堂)73〜103頁に詳しく記載されている。近年logPを計算により求める方法が提案されており、分子軌道計算をベースにするものや基本的にはC.Hanschのデータを利用するフラグメント法、また、HPLCによる方法等幾つかの方法がある。本発明において用いるlogPの計算プログラムは富士通株式会社のCACheという分子計算パッケージの中のProject Leaderであり、A.K.Ghost、etal,J.Comput.Chem.9:80(1988)のフラグメント法をベースにしている方法である。本発明に用いる高沸点有機溶媒のlogPの値は、5.9以上であり、特に好ましくは8.0以上である。
【0040】
燐酸エステル化合物としては、燐酸と脂肪族アルコール又は芳香族アルコール又はこれらの混合アルコールとエステル化したものや、ジアルキル又はジアリール燐酸エステルを2つ以上縮合させた縮合エステルを挙げることができる。具体的には、トリオクチル燐酸エステル、トリドデシル燐酸エステル、トリフェニル燐酸エステル、トリクレジル燐酸エステル、トリp−メチルフェニル燐酸エステル等を挙げることができる。
【0041】
以下に本発明に好ましく用いられる高沸点溶剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
O−1 トリクレジルホスフェート
O−2 ジ−n−オクチルフタレート
O−3 ジ−(2−エチル)ヘキシルフタレート
O−4 ジ−n−ノニルフタレート
O−5 ジ−(2−エチル)ヘキシルセバコイレート
O−6 トリ−(i−プロピル)フェニルホスフェート
O−7 トリ−(2−エチル)ヘキシルホスフェート
O−8 ジ−i−デシルフタレート
O−9 トリ−n−ノニルホスフェート
O−10 ジ(ω−ブチル−ジ(エチレンオキシ))アジペート
O−11 ジ−n−オクチルセバテート
O−12 トリドデシルホスフェート
O−13 トリオクチル−ホスフィンオキシド
O−14 n−ヘキサデカン
O−15 n−アイコサン
O−16 n−ドコサン
O−17 n−テトラコサン
O−18 n−ヘキサコサン
ハロゲン化銀粒子含有層
本発明において、ハロゲン化銀粒子を含有する層(ハロゲン化銀粒子含有層)が支持体上に設けられる。ハロゲン化銀粒子含有層は、ハロゲン化銀粒子のほか、バインダー、活性剤等を含有することができる。
【0042】
ハロゲン化銀粒子
本発明で用いられるハロゲン化銀粒子としては、ハロゲン化銀などの無機ハロゲン化銀粒子及びベヘン酸銀などの有機ハロゲン化銀粒子が挙げられるが、導電性金属銀を得やすい無機ハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0043】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀は、例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、導電性のよい金属銀を得るためには、感度の高い微粒子が好ましく、沃素を含むAgBrを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。沃素を多く含むようにすると感度も高く微粒子にすることができる。
【0044】
ハロゲン化銀粒子が現像され金属銀粒子になると粒子から粒子へと電気が流れていくには接触面積ができるだけ大きくなる必要がある。そのためには粒子サイズが小さい程よいが、小さい粒子は凝集して大きな塊状になりやすく、接触面積は逆に少なくなってしまうので最適な粒子径が存在する。ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。ハロゲン化銀粒子の大きさは、ハロゲン化銀粒子の調製時の温度、pAg、粒子径コントロール剤、例えば、1−フェニル−5メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、テトラザインデン化合物類、核酸誘導体類、チオエーテル化合物類等を適宜組み合わせて使用することができる。
【0045】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができる。感度を高くするためにアスペクト比が2以上や4以上、更に8以上であって16以下であるような平板粒子も好ましく使用することができる。粒子サイズの分布は、広くても狭くてもよいが、高い導電性を得て開口率を大きくするには、狭い分布が好ましい。写真業界で知られる単分散度で100以下、更には30以下が好ましい。粒子の形状は、電気が流れ易くするための観点からは、生成した粒子間の接触面積が大きい程よいのであるので、扁平でアスペクト比が大きい程よいが、アスペクト比を大きくすると濃度が出にくくなるので、最適なアスペクト比が存在する。
【0046】
本発明で用いられるハロゲン化銀は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特にロジウムイオン、ルテニウムイオンやイリジウムイオンなどの遷移金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどを挙げることができる。具体的な化合物の例としては、臭化ロジウム酸カリウムやイリジウム酸カリウムなどが挙げられる。
【0047】
本発明において、ハロゲン化銀に含有されるロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して、10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0048】
その他、本発明では、Pdイオン、PtイオンPd金属及び/又はPt金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。PdやPtはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。
【0049】
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して10-6〜0.1モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0050】
本発明では、さらに感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金、パラジウム、白金増感などの貴金属増感、無機イオウ、または有機イオウ化合物によるイオウ増感などのカルコゲン増感、塩化錫、ヒドラジン等還元増感等を利用することができる。
【0051】
化学増感されたハロゲン化銀粒子を分光増感することができる。好ましい分光増感色素としては、シアニン、カルボシアニン、ジカルボシアニン、複合シアニン、ヘミシアニン、スチリール色素、メロシアニン、複合メロシアニン、ホロポーラー色素等を挙げることができ、当業界で用いられている分光増感色素を単用或いは併用して使用することができる。
【0052】
特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、及び複合メロシアニン色素である。これらの色素類には、その塩基性異節環核として、シアニン色素類に通常利用される核の何れをも通用できる。すなわち、ピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核及びこれらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核などである。これらの核は、炭素原子上で置換されてもよい。
【0053】
メロシアニン色素又は複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を有する核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核などの5から6員異節環核を適用することができる。特に好ましい増感色素は近赤外増感色素である。これらの色素は特開2000−347343号公報、特開2004−037711号公報及び特開2005−134710号公報を参考にすることができる。
特に好ましい具体例を下記に示す。
【0054】
【化1】

【0055】
【化2】

【0056】
これらの増感色素は単独に用いても良いが、それらの組み合わせを用いても良い。増感色素の組み合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0057】
これらの増感色素をハロゲン化銀乳剤中に含有せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、プロパノール、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤へ添加してもよい。また、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22089号等に記載の様に酸又は塩基を共存させて水溶液としたり、米国特許第3,822,135号、同4,006,025号等に記載の様にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を共存させて水溶液或いはコロイド分散物としたものを乳剤へ添加してもよい。又、フェノキシエタノール等の実質上水と非混和性の溶媒に溶解した後、水又は親水性コロイド分散したものを乳剤に添加してもよい。特開昭53−102733号、同58−105141号に記載の様に親水性コロイド中に直接分散させ、その分散物を乳剤に添加してもよい。
【0058】
ハロゲン化銀粒子を硬調化する方法として、塩化銀含有量を高くして粒径の分布を狭くする方法等があるが、製版用では更に硬調にするために、ヒドラジン化合物やテトラゾリウム化合物を硬調化剤として使用することが知られている。ヒドラジン化合物は、−NHNH−基を有する化合物であり、代表的なものを下記一般式で示す。
【0059】
T−NHNHCO−V、T−NHNHCOCO−V
式中、Tは各々置換されてもよいアリール基、ヘテロ環基を表す。Tで表されるアリール基はベンゼン環やナフタレン環を含むもので、この環は置換基を有してもよく、好ましい置換基として直鎖、分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20のメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ドデシル基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数2〜21のメトキシ基、エトキシ基等)、脂肪族アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜21のアルキル基を持つ、アセチルアミノ基、ヘプチルアミノ基等)、芳香族アシルアミノ基等が挙げられ、これらの他に例えば上記の様な置換又は未置換の芳香族環が−CONH−、−O−、−SO2NH−、−NHCONH−、−CH2CHN−、等の連結基で結合しているものも含む。Vは水素原子、置換されてもよいアルキル基(メチル基、エチル基、ブチル、トリフロロメチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(ピリジル基、ピペリジル基、ピロリジル基、フラニル基、チオフェン基、ピロール基等)を表す。
【0060】
ヒドラジン化合物は、米国特許第4,269,929号の記載を参考にして合成することができる。ヒドラジン化合物はハロゲン化銀粒子層中、又はハロゲン化銀粒子層に隣接する親水性コロイド層中、更には他の親水性コロイド層中に含有せしめることができる。
【0061】
特に好ましいヒドラジンの化合物を下記に挙げる。
(H−1):1−トリフロロメチルカルボニル−2−{〔4−(3−n−ブチルウレイド)フェニル〕}ヒドラジン
(H−2):1−トリフロロメチルカルボニル−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(H−3):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(H−4):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニルスルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(H−5):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−(4−(3−(4−クロロフェニル−4−フェニル−3−チア−ブタンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニル)ヒドラジン
(H−6):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−(4−(3−チア−6,9,12,15−テトラオキサトリコサンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニルヒドラジン
(H−7):1−(1−メチレンカルボニルピリジニウム)−2−(4−(3−チア−6,9,12,15−テトラオキサトリコサンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニルヒドラジンクロライド。
【0062】
ヒドラジン化合物はT基としてスルホンアミドフェニル基、V基としてトリフロロメチル基が置換されているものが特に好ましい。またヒドラジンに結合するオキザリル基には、置換されてもよいピペリジルアミノ基が特に好ましい。テトラゾリウム化合物の具体例を下記に示す。
(T−1):2,3−ジ(p−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−2):2,3−ジ(p−エチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−3):2,3,5−トリ−p−メチルフェニルテトラゾリウムクロリド
(T−4):2,3−ジフェニル−5−(p−メトキシフェニル)テトラゾリウムクロリド
(T−5):2,3−ジ(o−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−6):2,3,5−トリ−p−メトキシフェニルテトラゾリウムクロリド
(T−7):2,3−ジ(o−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−8):2,3−ジ(m−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−9):2,3,5−トリ−p−エトキシメチルフェニルテトラゾリウムクロリド
これらは特公平5−58175号の記載を参考に使用することができ、場合によってはヒドラジン化合物と併用することもできる。
【0063】
硬調化剤としてヒドラジンを使用するときに、ヒドラジンの還元作用を強化するためにアミン化合物又はピリジン化合物が使用される。代表的なアミン化合物は少なくとも一つの窒素原子を含む下記一般式で表すことができる。
【0064】
R−N(Z)−Q 又は R−N(Z)−L−N(W)−Q
式中のR、Q、Z、Wは炭素数2〜30の置換されてもよいアルキル基を表す。又これらのアルキル基鎖は窒素、硫黄、酸素等のヘテロ原子で結合されてもよい。RとZ、或いはQとWは互いに飽和及び不飽和の環を形成してもよい。Lは2価の連結基を表す。この連結基の中には、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子が含まれてもよい。Lの連結基の中の炭素数は1から200まで可能であり、硫黄原子は、1から30まで、窒素原子は1から20まで、酸素原子は1から40までであるが特に限定されるものではない。これらのアミン化合物の具体例を下記に示す。
(A−1):ジエチルアミノエタノール
(A−2):ジメチルアミノ−1
(A−3):2−プロパンジオール
(A−4):5−アミノ−1−ペンタノール
(A−5):ジエチルアミン
(A−6):メチルアミン
(A−7):トリエチルアミン
(A−8):ジプロピルアミン
(A−9):3−ジメチルアミノ−1−プロパノール
(A−10):1−ジメチルアミノ−2−プロパノール
(A−11):ビス(ジメチルアミノテトラエトキシ)チオエーテル
(A−12):ビス(ジエチルアミノペンタエトキシ)チオエーテル
(A−13):ビス(ピペリジノテトラエトキシ)チオエーテル
(A−14):ビス(ピペリジノエトキシエチル)チオエーテル
(A−15):ビス(ニペコチンジエトキシ)チオエーテル
(A−16):ビス(ジシアノエチルアミノジエトキシ)エーテル
(A−17):ビス(ジエトキシエチルアミノテトラエトキシ)エーテル
(A−18):5−ジブチルアミノエチルカルバモイルベンゾトリアゾール
(A−19):5−モルホリノエチルカルバモイルベンゾトリアゾール
(A−20):5−(2−メチルイミダゾール−2−エチレン)カルバモイルベンゾトリアゾール
(A−21):5−ジメチルアミノエチルウレイレンベンゾトリアゾール
(A−22):5−ジエチルアミノエチルウレイレンベンゾトリアゾール
(A−23):1−ジエチルアミノ−2−(6−アミノプリン)エタン
(A−24):1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール
(A−25):1−ピペリジノエチル5−メルカプトテトラゾール
(A−26):1−ジメチルアミノ−5−メルカプトテトラゾール
(A−27):2−メルカプト−5−ジメチルアミノエチルチオチアジアゾール
(A−28):1−メルカプト−2−モルホリノエタン
ヒドラジン化合物の還元作用を促進するアミン化合物としては、分子中にピペリジン環又はピロリジン環が少なくとも1個、チオエーテル結合が少なくとも1個、エーテル結合が少なくとも2個あることが特に好ましい。
【0065】
ヒドラジンの還元作用を促進する化合物としてピリジニウム化合物やホスホニウム化合物がアミン化合物の他に使用される。オニウム化合物は、正電荷を帯びているため、負電荷に帯電しているハロゲン化銀粒子に吸着して、現像時の現像主薬からの電子注入を促進することにより硬調化を促進するものと考えられている。好ましいピリジニウム化合物は、特開平5−53231号、同6−242534号明細書のビスピリジニウム化合物を参照することができる。特に好ましいピリジニウム化合物は、ピリジニウムの1位又は4位で連結してビスピリジニウム体を形成しているものである。塩としては、ハロゲンアニオンとして、塩素イオンや臭素イオン等が好ましく、他に4フッ化ほう素イオン、過塩素酸イオン等が挙げられるが塩素イオン又は4フッ化ほう素イオンが好ましい。下記に好ましいビスピリジニウム化合物を示す。
(B−1):1,1′−ジメチル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−2):1,1′−ジベンジル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−3):1,1′−ジヘプチル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−4):1,1′−ジ−n−オクチル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−5):4,4′−ジメチル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−6):4,4′−ジベンジル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−7):4,4′−ジヘプチル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−8):4,4′−ジ−n−オクチル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−9):ビス(4,4′−ジアセトアミド−1,1′−テトラメチレンピリジニウム)ジクロライド
ヒドラジン化合物は高濃度部の硬調化に作用するが、脚部の硬調化が不十分であるため、これを改良する試みとして、現像時に生成する現像主薬の酸化体を利用する技術を使用してもよい。現像主薬の酸化体と反応するレドックス化合物を存在させて、この化合物から脚部を抑制する抑制剤を放出させることにより画像の鮮明性を高めるのである。現像主薬の酸化体の発生は、現像の進行により発生するので、粒子の還元速度と関係がある。化学増感剤で還元速度の早い現像核を形成しておくと、この効果を高めることができるので、良い化学増感剤を使用するのが好ましい。レドックス化合物を使用すると、画像のエッジを鋭くするので、粒子間隔を狭め銀の金属線の抵抗を下げることができる。
【0066】
レドックス化合物は、レドックス基としてハイドロキノン類、カテコール類、ナフトハイドロキノン類、アミノフェノール類、ピラゾリドン類、ヒドラジン類、レダクトン類等を有する。好ましいレドックス化合物はレドックス基として−NHNH−基を有する化合物であり、次の一般式で示すものが代表的である。
【0067】
T−NHNHCO−V−(Time)n−PUG
T−NHNHCOCO−V−(Time)n−PUG
式中、T及びVは前記ヒドラジン化合物と同義の基を表す。PUGは写真有用性基を表し、例えば、5−ニトロインダゾール、4−ニトロインダゾール、1−フェニルテトラゾール、1−(3−スルホフェニル)テトラゾール、5−ニトロベンズトリアゾール、4−ニトロベンゾトリアゾール、5−ニトロイミダゾール、4−ニトロイミダゾール等が挙げられる。これらの現像抑制化合物は、T−NHNH−CO−のCO部位にNやS等のヘテロ原子を介して直接又は(Time)で表される、アルキレン、フェニレン、アラルキレン、アリール基を介して更にNやSのヘテロ原子を介して接続することができる。その他に、バラスト基がついたハイドロキノン化合物にトリアゾール、インダゾール、イミダゾール、チアゾール、チアジアオールなどの現像抑制基を導入したものも使用できる。例えば、2−(ドデシルエチレンオキサイド)チオプロピオン酸アミド−5−(5−ニトロインダゾール−2−イル)ハイドロキノン、2−(ステアリルアミド)−5−(1−フェニルテトラゾール−5−チオ)ハイドロキノン、2−(2,4−ジ−t−アミルフェノプロピオン酸アミド)−5−(5−ニトロトリアゾール−2−イル)ハイドロキノン、2−ドデシルチオ−5−(2−メルカプトチオチアジアゾール−5−チオ)ハイドロキノン等が挙げられる。尚、nは1又は0を表す。レドックス化合物は、米国特許第4,269,929号の記載を参考にして合成することができる。
特に好ましいレドックス化合物を下記に挙げる。
(R−1):1−(4−ニトロインダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{〔4−(3−n−ブチルウレイド)フェニル〕}ヒドラジン
(R−2):1−(5−ニトロインダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tertペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(R−3):1−(4−ニトロトリアゾール−2−イル−カルボニル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(R−4):1−(4−ニトロイミダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニルスルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(R−5):1−(1−スルホフェニルテトラゾール−4−メチルオキサゾール)−2−{3−〔1−フェニル−1′−p−クロロフェニルメタンチオグリシンアミドフェニル〕スルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(R−6):1−(4−ニトロインダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{〔4−(オクチル−テトラエチレンオキサイド)−チオ−グリシンアミドフェニル−スルホンアミドフェニル〕}ヒドラジン。
【0068】
ヒドラジン化合物、アミン化合物、ピリジニウム化合物、テトラゾリウム化合物及びレドックス化合物はハロゲン化銀1モル当たり1×10-6〜5×10-2モル含有するのが好ましく、特に1×10-4〜2×10-2モルが好ましい。これらの化合物の添加量を調節して硬調化度γを6以上にすることは容易である。γは更に乳剤の単分散性、ロジウムの使用量、化学増感等によって調節することができる。ここに、γは濃度0.1と3.0を与えるそれぞれの露光量の差に対する濃度差とする。
【0069】
これらの化合物はハロゲン化粒子を含む層又は他の親水性コロイド層に添加して使用する。水溶性の場合には水溶液にして、水不溶性の場合にはアルコール類、エステル類、ケトン類等の水に混和しうる有機溶媒の溶液としてハロゲン化銀粒子溶液又は親水性コロイド溶液に添加すればよい。又、これらの有機溶媒に溶けないときには、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等で0.01〜10μmの大きさの微粒子にして添加することができる。微粒子分散の方法は、写真添加剤である染料の固体分散の技術を好ましく応用することができる。例えば、ボールミル、遊星回転ボールミル、振動ボールミル、ジェットミル等の分散機を使用して所望の粒子径にすることができる。分散時に界面活性剤を使用すると分散後の安定性を向上させることができる。
【0070】
ハロゲン化銀粒子層の下に近赤外吸収染料を含む層である近赤外線吸収層を設けることが好ましい。場合によっては近赤外線吸収層を支持体に対して、ハロゲン化銀粒子層のある側の反対側に設けることもできるし、ハロゲン化銀粒子層側と反対側の両方に設けてもよい。近赤外線吸収層は、ハロゲン化銀を近赤外光で露光するときのハレーション防止効果を持つので、近赤外の吸収を高めると同時にハレーション防止効果も高まることになる。近赤外線吸収層を設けるに際しては、支持体上に接着層/帯電防止層/近赤外線吸収層の順にすると帯電防止効果も得られるので好都合である。接着層としてコロナ放電した支持体上に塩化ビニリデン共重合体やスチレン−グリシジルアクリレート共重合体を0.1〜1μmの厚さで塗布した後、帯電防止層としてインジウムやリンをドープした平均粒子径0.01〜1μmの酸化錫、5酸化バナジウムの微粒子を含むゼラチン層やアクリル又はメタクリルポリマー層或いは非アクリルポリマー層を塗布することができる。又、スチレンスルホン酸とマレイン酸共重合体を前述したアジリジンやカルボニル活性型の架橋剤で造膜して設けることができる。これら帯電防止層の上に染料層を設けて近赤外線吸収層とする。近赤外線吸収層中には、コロイダルシリカ更にはコロイダルシリカの表面をメタクリレートやアクリレートポリマー又はスチレンポリマーやアクリルアミド等の非アクリレートポリマー、等で被覆した複合コロイダルシリカ等で寸法安定のための無機又は複合充填物や接着防止のシリカやメタクリル酸メチルマット剤、搬送性の制御のためのシリコン系滑り剤或いは剥離剤等を含有させることができる。
【0071】
近赤外線吸収層に使用した帯電防止剤は、ハロゲン化銀粒子層側にも使用する事ができ、乳剤上層の保護層や保護層が2層ある場合には何れかの層に又は両層に添加したり、乳剤下層のハレーション防止層や抑制剤放出層又はタイミング層等に使用することができる。
【0072】
ハロゲン化銀粒子層や近赤外線吸収層は、化学工学における乾燥理論を適用して乾燥する事ができる。乾燥するときの湿度の与え方は、電磁波遮蔽材料用原版の特性により異なるので適宜選択する必要がある。早い乾燥は、しばしばかぶりを高くしたり保存性を劣化したりして性能を劣化させるからである。本発明に係る電磁波遮蔽材料用原版は、相対湿度20%以下で30℃以上90℃以下で10秒から2分以内に乾燥するのが好ましく、更には35℃以上50℃以下で30秒から50秒以内に乾燥するのが好ましい。特に温度湿度の設定に関しては恒率乾燥と減率乾燥を好ましく制御するのがよい。恒率乾燥は電磁波遮蔽材料用原版の表面から水分が蒸発しながら乾燥していくプロセスで、このプロセスの間は表面温度が一定であるので恒率乾燥と呼ばれる。この次のプロセスは、電磁波遮蔽材料用原版の内部から水分が蒸発して乾燥していくので湿球温度が、電磁波遮蔽材料用原版の表面温度、即ち乾球温度に近づき、最後に同じになるプロセスを減率乾燥と呼ぶ。ゼラチン膜の乾燥は水分がゼラチン質量の300から400倍含まれている点が恒率乾燥と減率乾燥の堺になっている。300倍以下の水分量の乾燥条件は減率乾燥部分の乾燥条件として重要な意味をもっている。この減率乾燥部分を高い温度と低い湿度で乾燥ができるほど生産性は向上するのでこの部分の写真性能の変動が少ないか、性能が劣化しないのがよい。
【0073】
本発明の電磁波遮蔽材料用原版は、塗布乾燥されて後、加熱処理をすることにより、支持体の巻き癖を改良することができる。巻き癖を改良するには、30℃以上90℃以下の温度で1時間から10日間加熱処理する。特に好ましくは、35℃以上50℃以下の温度で60時間から5日間加熱処理する。
【0074】
ハロゲン化銀を含むハロゲン化銀粒子層と支持体との間に近赤外線吸収層を設けること、或いは、ハロゲン化銀粒子層からみて支持体の反対側に近赤外線吸収層を設けることができるが、支持体の一方側にすると同時に塗布ができるので前者の方が好ましい。
【0075】
なお、近赤外吸収染料がハロゲン化銀粒子の写真特性などに影響を与える場合は、該近赤外吸収層は、前記のように支持体の反対側に設けるか、ハロゲン化銀粒子層との間に中間層を設けることが好ましい。
【0076】
近赤外線吸収染料の具体例としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物などが挙げられる。PDP用光学フィルタ1で近赤外線吸収能が要求されるのは、主として熱線吸収や電子機器のノイズ防止である。このためには、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収能を有する色素が好ましく、金属錯体系、アミニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、スクワリウム化合物系が特に好ましい。
【0077】
従来知られているニッケルジチオール錯体系化合物またはフッ素化フタロシアニン系化合物の吸収極大は、700〜900nmであり、実用化するに当たっては、通常、上記化合物よりも長波長域に吸収極大を有するアミニウム系化合物、特にはジインモニウム系化合物と組み合わせて用いることにより、有効な近赤外線吸収効果を得ることができる。
【0078】
ジイモニウム系化合物は下記一般式(1)で示すことができる。
【0079】
【化3】

【0080】
式中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アルケニル基、アラルキル基または置換アラルキル基を示しており、それらは直鎖状でもあるいは分岐鎖状のいずれでもよい。また、それぞれ同じであっても異なっていても良い。また、Xは陰イオンを示す。
【0081】
一般式(1)におけるR1〜R8において、アルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アルケニル基、アラルキル基または置換アラルキル基としては、つぎのものがある。
【0082】
(1)アルキル基
メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基(炭素数1〜10のものが好ましい。)
(2)置換アルキル基
2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−アセトキシエチル基、カルボキメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルフェイトプロピル基、4−スルフェイトブチル基、N−(メチルスルホニル)−カルバミルメチル基、3−(アセチルスルファミル)プロピル基、4−(アセチルスルファミル)ブチル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−シアノプロピル基、4−シアノブチル基、3−シアノブチル基、2−シアノブチル基、5−シアノペンチル基、4−シアノペンチル基、3−シアノペンチル基、2−シアノペンチル基、6−シアノヘキシル基、5−シアノヘキシル基、4−シアノヘキシル基、3−シアノヘキシル基、2−シアノヘキシル基等、
(3)環式アルキル基
シクロヘキシル基
(4)アルケニル基
ビニル基、アリル基、プロペニル基等が、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、
(5)置換アラルキル基
カルボキシベンジル基、スルホベンジル基、ヒドロキシベンジル基等がそれぞれあげられる。これらの置換基において、炭素数が3〜6のアルキル基やシアノ基が置換されたアルキル基がより好適に用いられる。
【0083】
一般式(1)において、Xは1価の陰イオンまたは2価の陰イオンである。ジイモニウム化合物の場合には1価の陰イオンないし2価の陰イオンを用いることができる。
【0084】
1価の陰イオンとしては、有機酸1価アニオン、無機1価アニオン等があげられる。
有機酸1価アニオンとしては、酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン等があげられ、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のハロゲノアルキルスルホン酸イオンもしくはアルキルアリールスルホン酸イオンが挙げられる。
【0085】
無機1価アニオンとしては、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン等があげられ、好ましいものとしては、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン等があげられる。
【0086】
Xのうち2価の陰イオンとしては、ナフタレン−1、5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、クロルH酸、クロルアセチルH酸、メタニルγ酸、6−スルホナフチル−γ酸、C酸、ε酸、p−トルエンスルホニルR酸、ナフタリン−1,6−ジスルホン酸、1−ナフトール−4,8−ジスルホン酸、等のナフタレンジスルホン酸誘導体、カルボニルJ酸、4,4′−ジアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、ジJ酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4′−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ−3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸、2−(4−スルホフェニル)−6−アミノベンゾトリアゾール−5−スルホン酸、6−(3−メチル−5−ピラゾロニル)−ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、1−ナフトール−6−(4−アミノ−3−スルホ)アニリノ−3−スルホン酸等の2価の有機酸のイオンが挙げられる。
【0087】
これらの陰イオンのうち、好ましいものとしては、例えば過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0088】
イモニウム化合物の具体例を下記に示す。
(I−1):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−n−ブチルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
(I−2):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−n−ブチルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・過塩素酸)
(I−3):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−アミルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
(I−4):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
(I−5):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−n−ヘキシルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
(I−6):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−iso−プロピルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
(I−7):7N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−n−ペンチルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
(I−8):N,N,N′,N′−テトラキス(4−ジ−メチルアミノフェニル)−1,4−ベンゾキノン−ビス(イモニウム・ヘキサフルオロアンチモン酸)
ニッケルジチオール錯体化合物は下記一般式(2)で示すことができる。
【0089】
【化4】

【0090】
一般式(2)において、R9、R10、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基を表す。一つの芳香環に複数の置換基を有していてもよく、それらが互いに異なる置換基でも構わない。rは1〜5の整数を表す。
【0091】
9、R10、R11及びR12において、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基としてはつぎのものがある。
【0092】
(イ)ハロゲン原子
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子、
(ロ)アルキル基
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等、
(ハ)シクロアルキル基
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、
(ニ)アリール基
フェニル基、p−ニトロフェニル基等、
(ホ)アルキルチオ基
メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等、
(ヘ)アリールチオ基
フェニルチオ基、トリルチオ基等、
(ト)アルコキシ基
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基等、
(チ)アリールオキシ基
フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基等、
(ホ)アルキルアミノ基
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、iso−プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−iso−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−iso−ブチルアミノ基、ジ−n−ペンチルアミノ基、ジ−iso−ペンチルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−ヘプチルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−(2−エチルヘキシル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等、
(ニ)アリールアミノ基
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等を表す。
【0093】
好ましい具体例を下記に示す。
【0094】
【化5】

【0095】
【化6】

【0096】
本発明に好ましいフタロシアニン化合物は、下記一般式(3)で示すことができる。
【0097】
【化7】

【0098】
式中、R13からR16は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、置換又は未置換のアリールオキシ基、置換又は未置換のアルキルチオ基、あるいは置換又は未置換のアリールチオ基を表している。一つの芳香環に複数の置換基を有していてもよく、それらが互いに異なる置換基でも構わない。また、Mは2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子、またはオキシ金属を表す。pは1〜4の整数を表す。
【0099】
13からR16の例としては、ハロゲン原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、置換又は未置換のアリールオキシ基、置換又は未置換のアルキルチオ基、あるいは置換又は未置換のアリールチオ基としては、次のものがある。
【0100】
(イ)ハロゲン原子
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子
(ロ)置換又は未置換のアルキル基
メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチル−プロピル基、n−ヘキシル基、cyclo−ヘキシル基、1,3−ジメチル−ブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル1−iso−プロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−iso−プロピルブチル基、2−メチル−1−iso−プロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基、γ−エトキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、ジメトキシメチル基、ジエトキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルコキシアルキル基、クロロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基等のハロゲン化アルキル基、アルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルアミノカルボニルアルキル基、アルコキシスルホニルアルキル基等、
(ハ)置換または未置換のアルコキシ基の例
メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、cyclo−ヘキシルオキシ基、1,3−ジメチル−ブチルオキシ基、1−iso−プロピルプロピルオキシ基、1,2−ジメチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピルオキシ基、1−エチル−3−メチルブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−メチル−1−iso−プロピルブチルオキシ基、2−メチル−1−iso−プロピルオキシ基、1−t−ブチル−2−メチルプロピルオキシ基、n−ノニルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、ブトキシエトキシ基、γ−メトキシプロピルオキシ基、γ−エトキシプロピルオキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、ジメトキシメトキシ基、ジエトキシメトキシ基、ジメトキシエトキシ基、ジエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、ブチルオキシエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルコキシ基、クロロメトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルオキシ基等のハロゲン化アルコキシ基、ジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基などのアルキルアミノアルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基等、
(ニ)置換又は未置換のアリール基
フェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、フッ素化フェニル基、ヨウ素化フェニル基等のハロゲン化フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ピリジル基などが挙げられる。置換又は未置換のアリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アルキルフェノキシ基等、
(ホ)置換又は未置換のアルキルチオ基
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、1,2−ジメチル−プロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、cyclo−ヘキシルチオ基、1,3−ジメチル−ブチルチオ基、1−iso−プロピルプロピルチオ基、1,2−ジメチルブチルチオ基、n−ヘプチルチオ基、1,4−ジメチルペンチルチオ基、2−メチル1−iso−プロピルプロピルチオ基、1−エチル−3−メチルブチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3−メチル−1−iso−プロピルブチルチオ基、2−メチル−1−iso−プロピルチオ基、1−t−ブチル−2−メチルプロピルチオ基、n−ノニルチオ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、エトキシエチルチオ基、プロポキシエチルチオ基、ブトキシエチルチオ基、γ−メトキシプロピルチオ基、γ−エトキシプロピルチオ基、メトキシエトキシエチルチオ基、エトキシエトキシエチルチオ基、ジメトキシメチルチオ基、ジエトキシメチルチオ基、ジメトキシエチルチオ基、ジエトキシエチルチオ基等のアルコキシアルキルチオ基、アルコキシアルコキシアルキルチオ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルキルチオ基、クロロメチルチオ基、2,2,2−トリクロロエチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、2,2,2−トリクロロエチルチオ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルチオ基等のハロゲン化アルキルチオ基、ジメチルアミノエチルシチオ基、ジエチルアミノエチルチオ基等のアルキルアミノアルキルチオ基、ジアルキルアミノアルキルチオ基等、
(ヘ)置換又は未置換のアルキルチオ基
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、1,2−ジメチル−プロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、cyclo−ヘキシルチオ基、1,3−ジメチル−ブチルチオ基、1−iso−プロピルプロピルチオ基、1,2−ジメチルブチルチオ基、n−ヘプチルチオ基、1,4−ジメチルペンチルチオ基、2−メチル1−iso−プロピルプロピルチオ基、1−エチル−3−メチルブチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3−メチル−1−iso−プロピルブチルチオ基、2−メチル−1−iso−プロピルチオ基、1−t−ブチル−2−メチルプロピルチオ基、n−ノニルチオ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、エトキシエチルチオ基、プロポキシエチルチオ基、ブトキシエチルチオ基、γ−メトキシプロピルチオ基、γ−エトキシプロピルチオ基、メトキシエトキシエチルチオ基、エトキシエトキシエチルチオ基、ジメトキシメチルチオ基、ジエトキシメチルチオ基、ジメトキシエチルチオ基、ジエトキシエチルチオ基等のアルコキシアルキルチオ基、アルコキシアルコキシアルキルチオ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルキルチオ基、クロロメチルチオ基、2,2,2−トリクロロエチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、2,2,2−トリクロロエチルチオ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルチオ基等のハロゲン化アルキルチオ基、ジメチルアミノエチルシチオ基、ジエチルアミノエチルチオ基等のアルキルアミノアルキルチオ基、ジアルキルアミノアルキルチオ基等、
(ト)置換又は未置換のアリールチオ基の例
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アルキルフェニルチオ基等、
また、Mとしては、次のものがある。
【0101】
(イ)2価の金属
Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)等。
【0102】
(ロ)1置換の3価金属の例
Al−Cl、Al−Br、Al−F、Al−I、Ga−Cl、Ga−F、Ga−I、Ga−Br、In−Cl、In−Br、In−I、In−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Tl−F、Al−C65、Al−C64(CH3)、In−C65、In−C64(CH3)、In−C65、Mn(OH)、Mn(OC65)、Mn〔OSi(CH33〕、Fe−Cl、Ru−Cl等、
(ハ)2置換の4価金属
CrCl2、SiCl2、SiBr2、SiF2、SiI2、ZrCl2、GeCl2、GeBr2、GeI2、GeF2、SnCl2、SnBr2、SnF2、TiCl2、TiBr2、TiF2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、Sn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、SnR2、GeR2〔Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらから誘導される基を表す〕、Si(OR’)2、Sn(OR’)2、Ge(OR’)2、Ti(OR’)2、Cr(OR’)2〔R’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基またはそれらから誘導される基を表す〕、Sn(SR”)2、Ge(SR”)2(R”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらから誘導される基を表す)など、
(ニ)オキシ金属の例
VO、MnO、TiOなどを示す。
【0103】
フタロシアニン化合物の合成方法は特開2005−145896号公報を参考にすることができる。好ましいフタロシアニン化合物を下記に示す。
【0104】
【化8】

【0105】
【化9】

【0106】
【化10】

【0107】
スクワリウム系化合物は下記一般式(4)で示すことができる。
【0108】
【化11】

【0109】
式中のR17〜R20は、一般式(3)のR13〜R16と同義語を表す。該化合物についてはD.J.Gravesteijnetal:Optical Storage Media SPIE−420,p327,1983を参考にすることができる。
【0110】
好ましいスクワリウム系化合物の具体例を下記に示す。
【0111】
【化12】

【0112】
【化13】

【0113】
本発明における近赤外線吸収染料としては、ジイモニウム化合物は、IRG−022、IRG−040(これらは日本化薬株式会社製商品名である)、ニッケルジチオール錯体化合物は、SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159、SIR−152、SIR−162(これらは三井化学株式会社製商品名である)、フタロシアニン系化合物は、IR−10,IR−12(以上、日本触媒株式会社商品名)などの市販品を利用することができる。
【0114】
上記近赤外線吸収染料は、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルブチルケトン等のケトン溶媒、ジメチルスルホオキサイド、ジメチルホルムアミド、ジメチルエーテル、トルエン等有機溶解して使用するか、後述する微粒子化機械で平均粒子径0.01〜10μmの微粒子にして塗布すること好ましく、添加量としては光学濃度が、極大波長で0.05から3.0濃度の範囲で使用するのが好ましい。
【0115】
なお、近赤外線吸収能を有する色素を、色調補正層に含有させる場合、上記の色素のうちいずれか1種類を含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。近赤外線吸収染料の紫外線による劣化を避けるために紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0116】
紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、S−トリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく使用することができる。これらの中、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、環状イミノエステル系化合物が好ましい。ポリエステルに配合するものとしては、特に環状イミノエステル系化合物が好ましい。
【0117】
好ましい具体例としては、
(U−1):2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−α−クミル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−2):5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3−第三−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−3):5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−4):5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−α−クミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−5):5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3−α−クミル−5−第三オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−6):2−(3−第三ブチル−2−ヒドロキシ−5−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−7):5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−α−クミル−5−第三オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−8):5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−9):5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−10):5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−α−クミル−5−第三ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−11):2,4−ビス(4−ビフェニルイル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシカルボニルエチリデンオキシフェニル)−s−トリアジン、
(U−12):2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−ノニルオキシ※−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン、(※はオクチルオキシ基、ノニルオキシ基およびデシルオキシ基の混合物を示す。)
(U−13):2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシカルボニルイソプロピリデンオキシフェニル)−s−トリアジン、
(U−14):ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−15):2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
(U−16):2−(3,5−ジ−第三ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等である。
【0118】
バインダー
本発明のハロゲン化銀粒子含有層において、バインダーは、ハロゲン化銀粒子粒子を均一に分散させ、かつハロゲン化銀粒子含有層と支持体との密着を補助する目的で用いることができる。本発明においては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0119】
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)およびその誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0120】
本発明のハロゲン化銀粒子含有層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。ハロゲン化銀粒子含有層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー質量比で0.2〜100であることが好ましく、0.3〜30であることがより好ましく、0.5〜15であることがさらに好ましい。ハロゲン化銀粒子含有層中にAgをバインダーに対して質量比で0.5以上含有すれば、加熱加圧処理において金属粒子同士が互いに接触しやすく、高い導電性を得ることが可能であるため好ましい。
【0121】
支持体
本発明では、支持体として、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラスなどを用いることができる。プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
【0122】
透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、上記プラスチックフィルムはPET、PEN、TACであることが好ましい。
【0123】
ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルム又はプラスチック板の全可視光透過率は好ましくは70〜100%であり、より好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。また、本発明では、色気調節剤として前記プラスチックフィルム及びプラスチック板を本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0124】
塗布液調製のための溶媒
本発明のハロゲン化銀粒子含有層で用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0125】
本発明のハロゲン化銀粒子含有層に用いられる溶媒の含有量は、前記銀含有層に含まれるハロゲン化銀粒子、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であることが好ましく、40〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
【0126】
露光
本発明では、支持体上に設けられたハロゲン化銀粒子含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線などの光、電子線、X線などの放射線等が挙げられるが、紫外線または近赤外線が好ましい。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、波長分布の狭い光源を用いてもよい。
【0127】
可視光線は必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0128】
また本発明では、露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。システムをコンパクトで、迅速なものにするために、露光は、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特にコンパクトで、迅速、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザーを用いて行うことが好ましい。
【0129】
レーザー光源としては、具体的には、紫外半導体、青色半導体レーザー、緑色半導体レーザー、赤色半導体レーザー、近赤外レーザなどが好ましく用いられる。
【0130】
ハロゲン化銀粒子含有層を画像状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた集光式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、面々接触露光、近接場露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。レーザーの出力は、ハロゲン化銀を感光させるのに適した量であればよいのでμW〜5Wレベルでよい。
【0131】
現像処理
本発明では、ハロゲン化銀粒子含有層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、ハロゲン化銀粒子写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることが好ましい。
【0132】
本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより金属銀部、好ましくは画像状金属銀部が形成されると共に、後述する光透過性部が形成される。
【0133】
本発明における現像処理は、未露光部分のハロゲン化銀粒子を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、ハロゲン化銀粒子写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0134】
本発明に用いる現像組成物は、現像主薬としてハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等の超加成性現像主薬と併用することができる。又、ハイドロキノンを使用しないでアスコルビン酸やイソアスコルビン酸などレダクトン類化合物を上記超加成性現像主薬と併用することが好ましい。
【0135】
保恒剤として亜硫酸ナトリウム塩や亜硫酸カリウム塩、緩衝剤として炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩、現像促進剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロパンジオール等を含むことができる。
【0136】
現像液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤でpHを9〜12の範囲に調節することができる。pHは一般的には、保存性が良い10±0.5の範囲とされるが、迅速処理用としてpH11±0.5とすることもできる。現像処理は、20〜40℃、1〜90秒の処理条件で実施することができる。また現像促進剤や増感剤を使用して現像液や定着液の補充量をそれぞれ1m2当たり5〜216mlの範囲或いはこれ以下にすることができる。補充量低減は、乳剤の増感技術によりハロゲン化銀粒子の使用量を低減することが特に効果的であり、上記現像促進技術と併用して達成することができる。
【0137】
現像処理で用いられる現像液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、5−メチルベンゾトリアゾールなどの含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。
【0138】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が3.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を3.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0139】
本発明に使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。定着剤の保恒剤としては、現像組成物で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0140】
本発明に使用する水洗水には、防黴剤としてN−メチル−イソチアゾール−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−5−クロロ−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−4,5−ジクロロ−3−オン、2−ニトロ−2−ブロム−3−ヒドロキシプロパノール、2−メチル−4−クロロフェノール、過酸化水素等を使用することができる。
【0141】
次に、本発明における導電性金属部について説明する。
【0142】
本発明では、導電性金属部は、前述した露光及び現像処理により形成された金属銀部を加圧処理することにより前記金属銀部の連続性を付与することができる。加圧に際しては、プレート上でプレートで加圧する面−面加圧やロールとロールの間に本発明の電磁波遮蔽材料を通過させながら加圧させるニップロール加圧や、プレート上をロールで加圧する組み合わせた加圧を採用することができる。加圧の大きさは1kPから100MPaの範囲で任意に可能であるが、好ましくは10kPa〜10MPaの範囲、より好ましくは、50kPa〜5MPaである。加圧が1kPaより少ないと粒子同士の接触の効果が得られないし、100MPa以上では、面を平滑に保つことができにくくヘイズが上昇するので好ましくない。また、加圧に際して加熱すると効果的になるので、40℃〜300℃の範囲で加熱することが好ましい。加熱の時間は温度との関係で調節されて、高い温度では、短く、低温では長くというようにすることができる。加熱の方法は、ニップロールの場合には、ロールを予め所定の温度に加熱しておく方法やオートクレーブ室のような加熱室内で過熱する方法がある。所定の大きさの試料を複数枚枚葉積層して一度に加熱する方法は、生産性が高いので好適である。加熱の効果を高めるためには、バインダーに熱可塑性の素材を単独または併用することが好ましい。硝子転移点が40℃以下のポリマーを併用するとよい。そのようなポリマーとしては、単独のホモポリマー、2成分以上の多成分のコポリマーを使用できる。また、カルバナウワックスのような天然のワックスや鎖延長した人工のワックス或いはロジン類等を使用しても良い。
【0143】
又加熱の方法としてレーザ加熱を採用しても良い。レーザー光の種類としては、レーザー光を照射させる銀の付き量、溶着剤等との関係から適宜選定して用いることができる。例えば、ネオジムレーザー、YAGレーザー、ルビーレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、クリプトンレーザー、アルゴンレーザー、H2レーザー、N2レーザー、半導体レーザー等のレーザー光をあげることができる。より好ましいレーザーとしては、YAG:ネオジム3+レーザー(レーザー光の波長:1060nm)や半導体レーザー(レーザー光の波長:500〜1000nm)をあげることができる。レーザー光の出力は、5〜1000Wであることが好ましい。レーザは連続波長でも良いし、パルス波でもよい。パルス波の幅を制御すると加温の調節が可能であり、最適条件を求め易い。レーザの出力が1000Wを超えるとアブレーションがおこり、揮発蒸散が発生し易いので好ましくない。
【0144】
本発明では、近赤外吸収色素を使用しているので、800nm〜1000nmの範囲の赤外半導体レーザを使用するのが好ましい。
【0145】
透光性電磁波遮蔽材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は18μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましく、14μm未満であることがさらに好ましく、10μm未満であることがさらにより好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
【0146】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
【0147】
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波遮蔽材料のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた400〜750nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【0148】
本発明の透光性電磁波遮蔽材料における支持体の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜200μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、かつ取り扱いも容易である。
【0149】
支持体上に設けられる金属銀部の厚さは、支持体上に塗布されるハロゲン化銀粒子含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波遮蔽材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
【0150】
本発明では、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波遮蔽材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレアー層(共にぎらつき防止機能を有する)特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、ハロゲン化銀粒子含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
【0151】
これらの機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイパネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板などの透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルター(または単にフィルター)と呼ぶことができる。
【0152】
反射防止機能を付与した反射防止層は、外光の反射を抑えてコントラストの低下を抑えるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。また、ノングレア処理またはアンチグレア処理をしたフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。更に必要で有ればハードコート層を設けることもできる。
【0153】
特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層は、PDPが青色を発光する蛍光体が青色以外に僅かであるが赤色を発光する特性を有しているため、青色に表示されるべき部分が紫がかった色で表示されるという問題があり、この対策として発色光の補正を行う層であり、595nm付近の光を吸収する色素を含有する。このような特定波長を吸収する色素としては、具体的には例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系などの周知の有機顔料および有機染料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、耐光性が良好であることから、フタロシアニン系、アンスラキノン系色素が特に好ましい。
【実施例】
【0154】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0155】
実施例1
水分散液の調製
アクリル樹脂(AC)水分散液:0.5Lの三つ口フラスコに脱イオン水300g、メタクリル酸メチル(MMA)25g、スチレン25g、アクリル酸エチル(EA)45g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)5g、過硫酸アンモニウム250mgを加え、窒素でバブリングさせながら100℃で3時間攪拌をした。反応終了後100mgのハイドロキノンを添加して熱可塑性樹脂水分散液とした。この分散液を10等分し、に紫外線吸収剤(表1)と近赤外線吸収染料を(表1)を100nm以下に微粒子固体分散したものを投入して、1時間攪拌後、更にゼラチン2%液を追加しながら、熱可塑性樹脂:ゼラチンの質量比(g)を表1記載のように変化させて近赤外線吸収染料塗布液とした。
【0156】
スチレン−ブタジエン樹脂(SB)水分散液:上記と同様に重合したがここでは0.5Lの三口フラスコに脱イオン水300g、ブタジエン48g、スチレン40g、イタコン酸12g、アクリル酸2g、アニオン性乳化剤1g、過硫酸カリウム6gを添加し、25℃で30分間攪拌し、次にこの混合物を60℃に加熱し、2gの重亜硫酸ナトリウムを加え3時間重合させた。
【0157】
スチレン−イソプレン樹脂(SI)水分散液:上記と同様に重合したが、ここでは1Lの三口フラスコに脱イオン水300g、イソプレン40g、スチレン48g、イタコン酸12g、アクリル酸2g、アニオン性乳化剤1g、過硫酸カリウム6gを添加し、25℃で30分間攪拌し、次にこの混合物を60℃に加熱し、2gの重亜硫酸ナトリウムを加え3時間重合させた。
【0158】
ポリビニルブチラール樹脂(BL)水分散液
容積1Lステンレス製のフラスコに、重合度1500、ケン化度99.5モル%のポリビニルアルコール粒子80gと純水300gを仕込み、分散液を95℃まで昇温し、溶解後75℃まで冷却した。同水溶液に10質量%の塩酸を3g、ブチルアルデヒドを20g添加し反応を進めた。反応中はアルデヒドの系外への揮発・流出を防止するために還流を行った。追加触媒として10%濃度の塩酸を90g添加し、温度を82℃で4時間保った。反応終了後、40℃まで液を冷却し、常温で重曹で中和し、生成した樹脂を水洗し乾燥した。この樹脂100gを300gのイソプロパノール15%水溶液に分散させた。
【0159】
酢酸ビニル樹脂(VA)水分散液:容積1Lステンレス製のフラスコに水300g、酢酸ビニル100g、アニオン性乳化剤1gを仕込み、この分散液を85まで加熱し、30分後に過硫酸カリウムを3g添加し、85℃で3時間乳化重合を行った。
【0160】
ウレタン樹脂(UL)水分散液:1L反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール70gを仕込み、窒素気流下100℃にて1時間かけ、85℃まで冷却した後、イソホロンジイソシアネート32gを仕込み、85℃にて3時間反応を行い、ウレタンポリマー102gを得た。ウレタンポリマーのイソプロピルアルコール溶液とした。ついで40℃にて水300gを攪拌下に加え、分散後、ポリウレタン樹脂の水分散液を得た。
【0161】
表1において、分散樹脂の種類欄の記号は、それぞれ上記樹脂水分散液が該当する。即ち、AC:アクリル樹脂、SB:スチレン−ブタジエン樹脂、SI:スチレン−イソプレン樹脂、BL:ポリビニルブチラール樹脂、VA:酢酸ビニル樹脂、UL:ウレタン樹脂である。
【0162】
近赤外線吸収染料層の作製
支持体とするPETを塗布直前にコロナ放電処理(100mw/m2)を施し、近赤外線吸収染料(付き量:1×10-4モル/m2)及び紫外線吸収剤(付き量:1×10-4モル/m2)、水分散性熱可塑性樹脂(g)/m2、ゼラチン(g)/m2及び高沸点溶剤を表1に示す付き量になるように塗布乾燥した。
【0163】
近赤外性色素の樹脂分散は溶解分散(クロロホルムに溶解)及び固体分散を行い、固体分散は、伊藤製作製の遊星ボールミル(部分安定化ジルコニア製)で分散した。容器200ml中に100mlの水、10gの近赤外色素、ビーズ(5mm径)を30mlで室温下稼動させ、平均粒子径としてボールミルの積算分散回数を変化させて(100時間から200時間)所望の平均粒子径を得た。高沸点溶剤−ゼラチン分散は、50mlのゼラチン水溶液中(4質量%)に4gの高沸点溶剤、50mlの酢酸エチル、界面活性剤(ラウリルアルコールと重合度10のポリエチレングリコールの縮合物)を0.2g添加し、超音波分散した。粒子径の測定はコールター社のコールターカウンターマルチサイザーII型を使用した。微粒子化された粒子を上述に水分散性熱可塑性樹脂又は高沸点溶剤−ゼラチン分散液に分散して使用した。
【0164】
ハロゲン化銀粒子層の作製
水媒体中のAg100gに対してゼラチン100gを含む、球相当径平均0.044μmの沃臭化銀粒子(I=2.5モル%)を含有する乳剤を調製した。この際、Ag/ゼラチン質量比は10/1とし、ゼラチン種としては平均分子量4万のアルカリ処理低分子量ゼラチンを用いた。
【0165】
また、この乳剤中には臭化ロジウム酸カリウム及び塩化イリジウム酸カリウムを濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤に塩化パラジウム酸ナトリウムを添加し、更に塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、近赤外増感色素をハロゲン化銀1モル当たり10-4モル添加し、近赤外増感(色素構造は化1に示す。)をした後、硬調化剤としてヒドラジン(具体例H記号)、レドックス化合物(具体例R記号)又はテトラゾリウム化合物(具体例のT記号)、促進剤のアミン化合物(具体例A記号)、ピリジン化合物(具体例のB記号)を加えた。更に加圧時に銀粒子接触を促進するために、ロジンとカルバナウワックスをそれぞれ0.1g/m2、ビニルスルホン系のゼラチン硬膜剤を(ゼラチン1g当たり0.1モル)と共に、銀の塗布量が1g/m2(ゼラチン付き量1g/m2)となるように前記近赤外線吸収染料層の上に塗布した。
【0166】
尚、ハロゲン化銀粒子径の変化は、仕込み時の温度を5℃(26nm)、25℃(44nm)、36℃(98nm)と変化させ、26nmの粒子には粒子径コントロール剤として1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを1×10-6モル/銀1モルを使用した。
【0167】
乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀を与えうる格子状の描画パターンを与えるイメージセッタ(ライン/スペース=195μm/5μm)(ピッチ200μm)を使用して近赤外半導体レーザ露光(810nm)し、下記の現像液を用いて25℃で45秒間現像し、さらに定着液を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0168】
(現像液組成)
ハイドロキノン 30g
1−フェニル−3,3−ジメチルピラゾリドン 1.5g
臭化カリウム 3.0g
亜硫酸ナトリウム 50g
水酸化カリウム 30g
硼酸 10g
N−n−ブチルジエタノールアミン 15g
水を加えて1lとし、pHは10.20に調節した。
【0169】
(定着液組成)
チオ硫酸アンモニウム72.5%水溶液 240ml
亜流酸ナトリウム 17g
酢酸ナトリウム・3水塩 6.5g
硼酸 6.0g
クエン酸ナトリウム・2水塩 2.0g
酢酸90%水溶液 13.6ml
硫酸50%水溶液 4.7g
硫酸アルミニウム(Al23換算含量が8.1%W/Vの水溶液) 26.5g
水を加えて1lとし、pHを5.0に調節した。
【0170】
本発明のサンプルとメッシュ形状(線幅、ピッチ)はピッチ200μmの赤外半導体レーザを搭載したイメージセッターを使用し、細線10μmを描画した。現像後に波長800−870nm、出力50Wの赤外パルス半導体レーザ(フランクフルト社、パルス波幅10msec)で銀画像部を加熱し、電磁波減衰効果は関西電子工業振興センターによる電磁波遮蔽測定法(KEC法)により、電磁波減衰効果を測定し、100MHzにおける電界波減衰効果(dB)を比較した。経時劣化についての評価は、温度70℃相対湿度90%の条件下200時間放置し、近赤外線吸収極大の劣化割合%で表示した。作製試料の内容及び評価した性能結果を表1に示す。耐光性劣化試験はスガ試験機株式会社製スーパーキセノンウエザーメーターSX75を使用し、相対湿度50%、照射強度50W/平米、100時間試験後の吸収劣化の割合を評価した。
【0171】
【表1】

【0172】
本発明の電磁波吸収材料であれば、高い可視透過率と高い電磁波遮蔽能と高い近赤外吸収性能を同時に満たし、且つ、高湿下保存しても近赤外吸収劣化の少ない、しかも耐光性劣化の少ない電磁波遮蔽材料を得ることができる。
【0173】
実施例2
実施例1の、試料No.123において、高沸点溶剤のトリクレジル燐酸エステルを、同等質量の下記表2のものに換えた以外は同様にして、試料201〜207を作製し、実施例1と同様の評価を行った。耐光性劣化試験と、近赤外線吸収極大の劣化試験の結果を表2に示した。
【0174】
【表2】

【0175】
以上の結果より、本発明の構成の高沸点溶剤においても、目的が達成されていることがわかる。
【0176】
実施例3
実施例1の試料123において、近赤外線吸収染料層とハロゲン化銀粒子層との間にゼラチン中間層(ゼラチン付き量0.5g/m2、硬膜剤含有)を設けた以外は同様に作製した試料301、ハロゲン化銀粒子層を近赤外線吸収染料層と支持体をはさんで反対側に設けた以外は同様に作製した試料302を作製し、近赤外線吸収染料によるハロゲン化銀粒子の写真感度への影響を調べた。なおセンシトメトリー露光は、ハロゲン化銀粒子層側に対して行った。
【0177】
その結果、下記表3に示すように、近赤外吸収染料がハロゲン化銀粒子の写真特性に影響を与える場合は、該近赤外吸収染料層とハロゲン化銀粒子層との間に中間層を設けたり、お互いに支持体の反対側に設けることが好ましいことがわかった。
【0178】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に近赤外線吸収染料を含む層及びハロゲン化銀粒子を含む層を設けた電磁波遮蔽材料用原版を作製し、該電磁波遮蔽材料用原版を露光、現像処理することにより金属銀部を形成させた電磁波遮蔽材料において、該近赤外線吸収染料が水分散性熱可塑性樹脂又は、オクタノール/水系分配係数の対数値(logP)が5.9〜11である高沸点溶剤に分散されていることを特徴とする電磁波遮蔽材料。
【請求項2】
前記近赤外線吸収染料が水分散性熱可塑性樹脂又は燐酸エステルの微粒子に分散されたゼラチン中に存在することを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項3】
前記オクタノール/水系分配係数の対数値(logP)が5.9〜11である高沸点溶剤が、燐酸エステル類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項4】
前記近赤外線吸収染料がジイモニウム化合物、ニッケルジチオール化合物、フタロシアニン系化合物、スクワリウム化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項5】
前記燐酸エステルがトリアルキル燐酸エステル、トリアリール燐酸エステル、ジアリール燐酸エステルの縮合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項6】
前記ハロゲン化銀粒子の粒径が10nm〜100nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項7】
前記近赤外線吸収染料が平均粒子径として10nm〜100nmに微粒子分散されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項8】
前記、近赤外線吸収染料を含む層とハロゲン化銀粒子を含む層の間に、中間層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。
【請求項9】
前記、近赤外線吸収染料を含む層が、支持体に対して、ハロゲン化銀粒子を含む層と反対側に設置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽材料。

【公開番号】特開2007−81389(P2007−81389A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221820(P2006−221820)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】