説明

電磁波遮蔽用シート、ディスプレイ用前面板及び電磁波遮蔽用シートの製造方法

金属層21と透明基材11とを、直接又は接着剤13を介して積層する。積層体の金属層21へレジスト層109aをメッシュパターン状に設け、エッチングし、レジスト層109aを除去して、メッシュ状の金属層とする。該メッシュ状の金属層21の表面及び側面へ、黒化処理層23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電磁波遮蔽(シールドともいう)用シートに関し、さらに詳しくは、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などの画像ディスプレイの前面に配置して、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、ディスプレイの画像を良好に視認できる、金属層(薄膜)メッシュを用いた電磁波遮蔽用シート及びその製造方法、並びにディスプレイ用前面板に関するものである。
【背景技術】
(技術の背景)近年、電気電子機器の機能高度化と増加利用に伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)が増えている。電磁波ノイズは大きく分けて伝導ノイズと放射ノイズがある。伝導ノイズはノイズフィルタなどを用いる方法がある。一方、放射ノイズは電磁気的に空間を絶縁するため、筐体を金属にしたり、回路基板間に金属板を挿入したり、ケーブルを金属箔で巻きなどの方法がある。これらの方法は回路や電源ブロックの電磁波遮蔽の効果はあるが、CRT、PDPなどの、ディスプレイ前面より発生する電磁波遮蔽用には、不透明であるため適さない。
PDP表示本体は、データ電極と蛍光層を有するガラスと、透明電極を有するガラスとを組合わせたもので、作動すると電磁波、近赤外線、及び熱が大量に発生する。通常、電磁波を遮蔽するためにPDPの前面に前面板を設ける。該ディスプレイ用前面板には、電磁波遮蔽性、近赤外線吸収性、視認性が求められている。ディスプレイ前面から発生する電磁波の遮蔽性は、30MHz〜1GHzにおける30dB以上の機能が必要である。また、ディスプレイ前面より発生する波長900〜1,100nmの近赤外線も、他のVTRなどの機器を誤作動させるので、遮蔽する必要がある。さらに、ディスプレイの表示画像を視認しやすくするため、適度な透明性(可視光透過性、可視光透過率)や輝度が必要である。
また、ディスプレイ用前面板に用いる電磁波遮蔽用シートには、電磁波遮蔽性に加え、表示画像を視認しやすくするために、金属メッシュ枠(ライン部)部分が見えにくく、かつ光を反射しにくい適度な透明性と輝度を有することが求められている。しかし、電磁波遮蔽性、視認性の両特性を実使用レベルで同時に満たすものはもちろん、電磁波遮蔽性、赤外線遮蔽性、視認性の特性を同時に満すものはなかった。さらに、電磁波遮蔽用シートは、短い工程で、高精度のものを安定して製造できる製造方法が求められている。
(先行技術)従来、電磁波遮蔽用シートは、電磁波遮蔽性と透明性を両立させるために、導電性部材は大きく分けて、金属、又は金属酸化物から成る透明導電体の薄膜を透明板に形成したものと、金属から成る不透明導電体の微細線メッシュが知られている。しかしながら、前者の透明導電体の薄膜を用いる仕様では電磁波遮蔽性と透明性とを両立できないという欠点があり、近年は、後者の不透明導電体メッシュを用いる仕様が主流になって来ている。
また、これら不透明導電体仕様に於いてもディスプレイ画像の視認性を向上させるために、メッシュのライン部(ここは、不透明であるが導電性)で電磁波遮蔽性を出し、一方メッシュの開口部で表示画像の透明性を出す。そして更に、日光等の外光がメッシュのライン部(ここは光反射性)で反射し画像コントラストを低下させることを防ぐ為、メッシュライン部の画像とは反対側に黒化処理層を設ける設計としている。例えば、基板/透明アンカー層/メッシュパターン状の無電解メッキ層からなり、無電解メッキにより無電解メッキ層下の透明アンカー層が黒色パターン部に変えられている電磁波シールド材料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、電磁波遮蔽シートの金属メッシュの表面に酸化銅被膜を形成して、外光の反射を押さえる方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、電磁波遮蔽シートの金属メッシュをフォトレジスト法で形成する際に用いた黒色レジストを、メッシュを開孔した後もそのまま残存させて、メッシュの枠部分(ライン部ともいう)を黒くしておく方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。また、銅箔に幾何学図形をフォトリソグラフイ法で形成した銅箔付きプラスチックフィルムをプラスチック板に積層した電磁波遮蔽構成体が知られている(例えば、特許文献4参照)。また、透明フィルム上に電離放射線硬化性樹脂によるメッシュ状の凸状パターンを形成し、その表面に無電解メッキにより金属層を形成して金属メッシュとし、更に該金属層表面を酸化又は硫化させることにより、金属メッシュの表面及び側面に黒化処理したものが知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、特許文献1〜5いずれの方法でも、電磁波遮蔽シートの金属メッシュ枠(ライン部)部分の黒さが低く、外光存在下に於いてディスプレイの画像の視認性は十分ではないという欠点がある。
さらに、金属メッシュの表面、裏面、及び側面の全ての面を黒化処理するものも知られている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、銅箔へ予め施した黒化処理面と透明基材とを、接着剤を介して貼り合せるので、黒化処理で粗面化された銅箔表面に起因して、接着剤の塗布ムラや気泡の混入などによる積層品質が低下する。また、エッチング時にはメッシュが途切れやすく、さらに、積層後、銅箔の他の面及び側面を再度黒化処理するので、黒化工程が倍増して二度手間であり、煩雑で歩留りが低下するという問題点がある。さらにまた、メッシュのディスプレイ側にも黒化処理層があるので、ディスプレイからの表示光が吸収されてしまうために、輝度が低下してしまうという欠点がある。
【特許文献1】 特開平5−283889号公報
【特許文献2】 特開昭61−15480号公報
【特許文献3】 特開平09−293989号公報
【特許文献4】 特開平10−335885号公報
【特許文献5】 特開平11−174174号公報
【特許文献6】 特開2002−9484号公報
【発明の開示】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、短い工程で高精度のものが歩留りよく製造でき、ディスプレイの前面に配置して、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、ディスプレイ画像を良好に視認性できる電磁波遮蔽用シート及びその製造方法、並びにディスプレイ用前面板を提供することである。
本発明は、透明基材と、透明基材の一方の面に設けられたメッシュ状の金属層とを備え、金属層の透明基材と反対の面および側面に黒化処理層が設けられ、上記黒化処理層の反射Y値が、0より大きく20以下であることを特徴とする電磁波遮蔽用シートである。
本発明によれば、電磁波を遮蔽すると共に、ディスプレイからの表示画像光が吸収されず、且つ外光によっても表示画像の輝度が低下しない電磁波遮蔽用シートが、工程増と歩留低下をともなうこと無く提供される。
本発明は、上記黒化処理層が、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、若しくはクロムから選択された少なくとも1種の単体、又は化合物を含有することを特徴とする電磁波遮蔽用シートである。
本発明によれば、金属層の表面及びメッシュの側面(断面)が均一に黒化し、しかも金属層への密着力に優れる電磁波遮蔽用シートが提供される。
本発明は、上記金属層が、銅であることを特徴とする電磁波遮蔽用シートである。
本発明によれば、ディスプレイの前面に配置して、ディスプレイから発生する電磁波を良好に遮蔽できる電磁波遮蔽用シートが提供される。
本発明は、電磁波遮蔽用シートと、この電磁波遮蔽用シートに設けられた、可視光線及び/若しくは近赤外線吸収層、または反射防止層とを備え、電磁波遮蔽用シートは、透明基材と、透明基材の一方の面に設けられたメッシュ状の金属層とを備え、金属層の透明基材と反対の面および側面に黒化処理層が設けられ、上記黒化処理層の反射Y値が、0より大きく20以下であることを特徴とするディスプレイ用前面板である。本発明によれば、モアレや不要な特定波長の可視及び/又は近赤外線が吸収された、ディスプレイの表示画像をより良好に視認できる電磁波遮蔽用シートが提供される。
本発明は、(a)金属層と透明基材とを、直接又は接着剤を介して積層する工程と、(b)積層された金属層と透明基材のうち、金属層へレジスト層をメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の金属層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去して、メッシュ状の金属層を形成する工程と、(c)該メッシュ状の金属層の表面及び側面へ、メッキ法で黒化処理層を設ける工程とからなることを特徴とする電磁波遮蔽用シートの製造方法である。
本発明によれば、接着剤の塗布ムラや気泡の混入が少なく積層品質に優れ、また、黒化処理が1工程で済み、メッシュの途切れなどのムラがなく、歩留りがよく、生産効率が高い電磁波遮蔽用シートの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の電磁波遮蔽用シートの平面図である。
図2は、本発明の電磁波遮蔽用シートの一部を模式的に示す斜視図である。
図3は、従来の電磁波遮蔽用シートの要部の断面図である。
図4は、本発明の電磁波遮蔽用シートの実施例を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本件出願人はディスプレイの電磁波遮蔽用シートについて、開発を継続して行っている。前記特開平11−174174号公報(特許文献5)の他、特開2001−210988号公報では黒化しエッチングしたメッシュ状金属箔を用いたものを示し、特願2002−230842号では銅−コバルト粒子を付着させて黒化したものを出願している。本発明はこれらをさらに改良した発明である。
本発明の実施態様について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の電磁波遮蔽用シートの1形態を示す平面図である。
図2は、本発明の電磁波遮蔽用シートの1形態の一部を模式的に示す斜視図である。
(全体の層構成)図2に示すように、本発明の電磁波遮蔽用シート1は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に設けられたメッシュ状の導電材層109とを備え、導電材層109は金属層21を含んでいる。メッシュ状の導電材層109は図1に示すようにメッシュ部103を構成し、メッシュ部103の周囲に接地用枠部101が設けられている。メッシュ部103は、図2に示すように、ライン部107で囲まれた複数の開口部(セルともいう)105を有している。接地用枠部101はディスプレイへ設置した場合にアースがとられる。
上述のように基材11の一方の面へ、直接又は接着剤層13を介して金属層21を含む導電材層109が積層されている。該導電材層109は開口部105を形成する枠状のライン部107からなり、開口部105は密に配列されている。ライン部107の幅は、図2に示すようにライン幅Wと称し、隣接するライン部とライン部との間隔をピッチPと称する。
図3は、従来の電磁波遮蔽用シートの要部の断面図である。
図4は、本発明の電磁波遮蔽用シートの1実施例を示す要部の断面図である。
(層の構成)図3は従来の、図4は本発明の、開口部を横断する要部の断面を示し、共に開口部105とライン部107が交互に構成されている。尚、図を見易くする為にこれらの断面図は、開口部の幅に比べてライン部の幅及び厚みを誇張して図示してある。図3に示すように、従来のライン部107において、金属層21の両面へ、それぞれ黒化処理層23A及び黒化処理層23Bが設けられているが、金属層21の側面部分は、金属層21のが露出している。
また、図示していないが、先行技術「特許文献6」で述べた金属メッシュのライン部の表面、裏面及び側面の全ての面を黒化処理したものは、接着剤の塗布ムラや気泡の混入などによる積層品質の低下、メッシュの途切れやすさ、2度の黒化工程による歩留りが低下の問題点があり、さらに、ディスプレイ輝度の低下という欠点がある。
(発明のポイント)本発明の電磁波遮蔽用シート1の製造方法は、まず、金属層21を透明基材11の一方の面へ、直接又は接着剤層13を介して積層した後に、金属層21面へレジスト層をメッシュパターン状に設ける。次にレジスト層で覆われていない部分の金属層21をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去する所謂フォトリソグラフイ法でメッシュを形成する。このように、メッシュ状にした金属層21を黒化処理することで、金属層21の表面及び側面へ黒化処理層23を設けることができる。
黒化処理が1工程で済み、メッシュが途切れず、接着剤の塗布ムラや気泡の混入などがなく積層品質に優れ、歩留りがよく、生産効率が高く生産できる。
図4に示すように、本発明のライン部107は、金属層21の透明基材11の反対面(表面と呼称)へ、黒化処理層23が設けられ、さらに金属層21の断面部分にも、黒化処理層23を設けるようにする。また必要に応じて、黒化処理層23を覆うように、及び/又は金属層21の透明基材11の面に、防錆層25A、25Bを設けてもよい。
本発明の電磁波遮蔽用シート1によれば、金属層21の側面部分にも黒化処理層23を設けることで、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、電磁波遮蔽用の金属メッシュ枠(ライン部)部分が見えにくく、外光(日光、電燈光)がディスプレイ表面に入射してもこれを反射させて光らせることがない。このため電磁波遮蔽性、透明性の両特性を満たし、且つ、外光存在下でもディスプレイ画像を高コントラストで鮮明、良好に視認することができる。
さらに必要に応じて、後述の如く平坦化の処理をし、さらに必要に応じて特定波長の可視光線及び/又は近赤外線を吸収する光線吸収剤層を設ける。このような電磁波遮蔽用シートをディスプレイの前面に配置すると、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、適度の透明性を有しディスプレイに表示された画像を良好に視認性できる。
金属層の透明基材と反対の面及びメッシュの側面を黒化処理層とする、本発明の電磁波遮蔽用シートの製造方法について、工程順に、使用及び関連する材料なども含めて、詳細に説明する。
(a)金属層と透明基材とを、直接又は接着剤を介して積層する工程
(透明基材)まず、透明基材11の材料としては、使用条件や製造に耐える透明性、絶縁性、耐熱性、機械的強度などがあれば、種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体などのアクリル系樹脂(ここで、(メタ)アクリレートとはアクリレート、又はメタクリレートを意味する)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルファイトなどのエンジニアリング樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などがある。
該透明基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。該透明基材11は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該透明基材の厚さは、通常、12〜1000μm程度が適用できるが、50〜700μmが好適で、100〜500μmが最適である。これ以下の厚さでは、機械的強度が不足して反りやたるみなどが発生し、これ以上では、過剰な性能となってコスト的にも無駄である。
該透明基材11は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用するが、これらの形状を本明細書ではフィルムと総称する。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系の2軸延伸フィルムが透明性、耐熱性がよくコストも安いので好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。また、透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光線透過率で80%以上である。
該透明基材11は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。該樹脂フィルムは、必要に応じて、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
(金属層)電磁波を遮蔽する導電材109は、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウムなど充分に電磁波をシールドできる程度の導電性を持つ金属層21を有している。金属層21は単体でなくても、合金あるいは多層であってもよい。又金属層21は予め金属層を単層で形成し、これを透明基材11と接着剤層13を介して積層することが一般的である。しかし、その他にも、透明基材11上に、接着剤層を介さずに、無電解メッキ、蒸着等の方法により、直接金属層21を積層することも出来る。金属層21としては、鉄の場合には低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金が好ましく、また、黒化処理としてカソーディック電着を行う場合には、電着のし易さから銅又は銅合金箔が好ましい。該銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔が使用できるが、厚さの均一性、黒化処理及び/又はクロメート処理との密着性、及び10μm以下の薄膜化ができる点から、電解銅箔が好ましい。該金属層21の厚さは1〜100μm程度、好ましくは5〜20μmである。これ以下の厚さでは、フォトリソグラフイ法によるメッシュ加工は容易になるが、金属の電気抵抗値が増え電磁波遮蔽効果が損なわれ、これ以上では、所望する高精細なメッシュの形状が得られず、その結果、実質的な開口率が低くなり、光線透過率が低下し、さらに視角も低下して、画像の視認性が低下する。
金属層21の表面粗さとしては、Rz値で0.5〜10μmが好ましい。これ以下では、黒化処理しても反射Y値を20以下とすることが難しくなり、外光が鏡面反射して、画像の視認性が劣化する。これ以上では、接着剤やレジストなどを塗布する際に、表面全体へ行き渡らなかったり、気泡が発生したりしてする。表面粗さRzは、JIS−B0601に準拠して測定した10点の平均値である。
(積層法)上記の透明基材11と金属層21との積層(ラミネートともいう)法としては、透明基材11又は金属層21の一方に、接着剤又は粘着性を塗布し必要に応じて乾燥して、加熱又は加熱しないで加圧し、その後必要に応じて30〜80℃の温度下で、エージング(養生)してもよい。このようにして透明基材11と金属層21との間に接着剤層13を設ける。好ましくは、当業者がドライラミネーション法(ドライラミともいう)と呼ぶ方法である。さらに、紫外線(UV)、電子線(EB)などの電離放射線で硬化(反応)する電離放射線硬化型樹脂も好ましい。
(接着剤)ドライラミネーション法、またはノンソルベントラミネーション法で用いる接着層の接着剤として、熱硬化型樹脂、または電離放射線硬化型樹脂の接着剤が適用できる。熱硬化型樹脂接着剤としては、具体的には、2液硬化型の、アクリルウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤等のウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤などが適用できるが、2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
(粘着剤)粘着剤としては、公知の感圧で接着する粘着剤が適用できる。粘着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂などの合成ゴム系樹脂、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニール、エチレン−酢酸ビニール共重合体などの酢酸ビニール系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン、ロジントリグリセリド、水素化ロジンなどのロジン系樹脂が適用できる。
(接着剤又は粘着剤層の形成)上記の接着剤又は粘着剤の樹脂、またはこれらの混合物を、ラテックス、水分散液、または有機溶媒液として、スクリーン印刷またはコンマコート、ロールコート、カーテンフローコートなどの、公知の印刷またはコーティング法で、印刷または塗布し必要に応じて乾燥した後に、一方の材料と重ねて加圧すれば良い。具体的な積層方法としては、通常、連続した帯状(巻取という)で行い、巻取ロールから巻きほぐされて伸張された状態で、金属層21又は基材11の一方へ、接着剤を塗布し乾燥した後に、他方の材料を重ね合わせて加圧すればよい。さらに、必要に応じて30〜80℃の雰囲気で数時間〜数日のエージング(養生、硬化)を行って、巻取ロール状の積層体とする。
該接着剤層13の膜厚としては、0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1〜10μmである。該接着層を形成したら直ちに、貼り合せ基材を積層したり、さらに30〜120℃で数時間〜数日間エージングしたり、接着剤を硬化させたり、することで接着する。該接着剤の塗布面は、透明基材側、金属層側のいずれでもよい。
尚、無電解メッキ等により、直接、透明基材上に金属層を形成する場合は、接着剤層13は省略される。
(b)該積層体の金属層21表面へレジスト層109aをメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の金属層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去して、メッシュ状の金属層とする工程
(マスキング)基材11と金属層21の積層体の金属層21面を、フォトリソグラフイ法でメッシュ状とする。この工程も、帯状で連続して巻き取られたロール状の積層体を加工して行く。該積層体を連続的又は間歇的に搬送しながら、緩みなく伸張した状態で、順次、レジスト層形成、マスキング、エッチング、レジスト剥離する。
まず、マスキングは、例えば、感光性レジストを金属層21上へ塗布し、乾燥した後に、所定のパターン(メッシュのライン部)原版(フォトマスク)にて密着露光し、水現像しレジスト層をパターン状にして、硬膜処理などを施し、ベーキングする。
レジストの塗布は、巻取りロール状の帯状の積層体(基材11と金属層21)を連続又は間欠で搬送させながら、その金属層21面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどのレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で行う。また、レジストは塗布ではなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、作業性が向上できる。ベーキングはカゼインレジストの場合、200〜300℃で行うが、積層体の反りを防止するために、できるだけ低温度が好ましい。
(エッチング)マスキング後にエッチングを行う。該エッチングに用いるエッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明には循環使用が容易にできる塩化第二鉄、塩化第二銅の溶液が好ましい。また、該エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備と、基本的に同様の工程である。即ち、該シャドウマスクの既存の製造設備を流用でき、マスキングからエッチングまでが一貫して連続生産できて、極めて効率が良い。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから乾燥すればよい。
(メッシュ)メッシュ部103は、開口部105を形成する枠状のライン部107からなっている。開口部107の形状は特に限定されず、例えば、正3角形等の3角形、正方形、長方形、菱形、台形などの4角形、6角形等のn角形(n≧3の自然数)、円形、楕円形などが適用できる。これらの開口部の複数を、組み合わせてメッシュとする。開口率及びメッシュの非視認性から、ライン幅は25μm以下、好ましくは20μm以下が、ライン間隔(ラインピッチ)は光線透過率から150μm以上、好ましくは200μm以上が好ましい。また、ラインの電磁波遮蔽シート1の周囲の辺となす角度は、図1の図示では45度を例示しているが、これに限られず、モアレの解消などのために、ディスプレイの画素や発光特性を加味して適宜、選択すればよい。
(c)該メッシュ状の金属層21の表面及び側面へ、黒化処理層23を設ける工程
(黒化処理)次に、上記積層体の金属層の表面及びメッシュの側面(エッチングで露出した断面)を黒化処理をする。該黒化処理としては、粗化及び/又は黒化すればよく、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の形成、黒色着色剤を含む樹脂の塗工や種々の手法が適用できる。好ましい黒化処理としてはメッキ法であり、該メッキ法によれば、金属層への密着力に優れ、金属層の表面及びメッシュの側面(断面)へ、同時に、均一に、かっ容易に黒化することができる。メッキ法としては電解メッキ、無電解メッキのいずれも可能である。該メッキの材料としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、若しくはクロムから選択された少なくとも1種、又は化合物を用いる。他の金属又は化合物では、黒化が不充分、又は金属層との密着に欠け、例えばカドミウムメツキでは顕著である。
金属層21として銅箔を用いる場合の、好ましいメッキ法としては、銅箔を硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中で、陰極電解処理を行って、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着メッキである。該カチオン性粒子を設けることでより粗化し、同時に黒色が得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅−コバルト合金の粒子である。
カソーディック電着によれば、粒子を平均粒子径0.1〜1μmに揃えて好適に付着することができる。また、銅箔表面に高電流密度で処理することにより、銅箔表面がカソーディックとなり、還元性水素を発生し活性化して、銅箔と粒子との密着性が著しく向上できる。
さらに、銅−コバルト合金粒子の平均粒子径は0.1〜1μmが好ましい。これ以上に銅−コバルト合金粒子の粒子径を大きくすると金属層21の厚さが薄くなり、基材11と積層する工程で金属層が切断したりして加工性が悪化する。また、密集粒子の外観の緻密さが欠けて、外観及び光吸収のムラが目立ってくる。これ以下では、粗化が不足するので、画像の視認性が悪くなる。
なお、黒化処理層23の詳細は、既に本件出願人が、銅−コバルト合金粒子は特願2002−230842号公報で、銅粒子は特開2003−23290号公報で開示している。さらに、銅粒子、銅−コバルト合金粒子をさらに黒化処理してもよい。
(メッキ法黒化処理)エッチング後のメッシュ部103のライン部107表面及び側面への黒化処理層23の形成は、前述の方法が適用できる。但し、エッチング後なので、金属層はメッシュ状となっているので、メッキ時の電極はロール状の電極で、メッシュの前面に接地させることが好ましい。また、エッチング後もロール状で連続的にメッキ処理をすることが、粘着や透明化処理や他のシートとの積層などの後工程を考慮してより好ましい。
電磁波遮蔽用シートの視認性を評価する光学特性として、色調をJIS−Z8729に準拠した表色系「L、a、b、ΔE」で表わした。「a」及び「b」の絶対値が小さい方が導電材部109が非視認性となり、コントラスト感が高まり、結果として画像の視認性が優れる。
本明細書では、粗化及び黒色化を合わせて黒化処理という。黒化処理の好ましい反射Y値は0より大きく20以下より好ましくは4以上12以下である。表面が外方を向くようにして設定した場合に、日光、或は電燈光の外光存在下での画像のコントラストの低下を防げず、画像の視認性は不十分となる。一方、反射Y値の下限値は原理的には存在し無いが、現実に完全に0にすることは技術的に困難である。なお、反射Y値は、JIS−Z8722に準拠して、その測定方法は、色度計CM−3700d(ミノルタ社製、商品名)を用いた反射モードで、光源D65、視野2度でメッシュ面を入光面とし測定する。また、該黒化処理の光線反射率としては5%以下が好ましい。光線反射率ば、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定する。
金属層21面及び/又は黒化処理層23上へ、防錆層25A及び/又は防錆層25Bを設けてもよく、少なくとも黒化処理層23へ設ければよい。
該防錆層25A、25Bは、金属層21及び黒化処理層23の防錆機能を持ち、かつ、黒化処理層23が粒子であれば、その脱落や変形を防止する。このようにしてメッシュ部103の構成層として積層された、金属層21、黒化処理層23、及び必要に応じて設けられる防錆層25A、25Bから導電材109が構成される。
該防錆層25A、25Bとしては公知の防錆層が適用できるが、ニッケル、亜鉛、及び/又は銅の酸化物、又はクロメート処理層が好適である。ニッケル、亜鉛及び/又は銅の酸化物の形成は公知のメッキ法でよく、厚さとしては0.001〜1μm程度、好ましくは0.001〜0.1μmである。
(クロメート処理)黒化処理層23に対するクロメート処理は、被処理材へクロメート処理液を塗布し処理する。塗布方法としては、ロールコート、カーテンコート、スクイズコート、静電霧化法、浸漬法などが適用でき、塗布後は水洗せずに乾燥すればよい。クロメート処理液としては、通常CrOを3g/lだけ含む水溶液を使用する。具体的には、アルサーフ1000(日本ペイント社製、クロメート処理剤商品名)、PM−284(日本パーカライジング社製、クロメート処理液商品名)などが例示できる。また、クロメート処理は黒化処理の効果をより高める。
以上のようにして得られた電磁波遮蔽用シート1は、透明基材11面をディスプレイ側に配置し、黒化処理面が観察側になるようにする。また、電磁波遮蔽用シート1は、必要に応じて、平坦化し、さらに必要に応じて特定波長の可視光線及び/若しくは近赤外線吸収層、並びに/又は反射防止層を一体化するか、組合わせて、ディスプレイ用前面板として、ディスプレイの前面に配置する。この場合、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽し、適度の透明性を有し、かつ、不要な特定波長の可視光線及び/若しくは近赤外線を吸収し、反射防止されて、ディスプレイの表示画像をより良好に視認することができる。
(平坦化)メッシュが形成されると、メッシュのライン部107は金属層の厚みがあるが、開口部105は金属層21が除去されて空洞(凹部)となり、導電材部109は凹凸状態となる。この凹凸は次工程で接着剤又は粘着剤が塗布される場合には、該接着剤などで埋まる。しかし、その際、接着剤等の粘度が高かったり、接着剤による凹部内空気との置換に十分な接着工程条件が満たされないとメッシュ部凹部内に空気が残留して気泡が生じる。気泡が生じると空気と接着剤との屈折率差により、光が散乱され画像光の鮮明度が低下し、白化する不都合を生じる。接着剤の粘度を稀釈し、塗工条件を調整したり、加圧、真空吸引することによって接着時の気泡混入を防ぐことも可能ではある。但し、これでは作業性が悪いので、凹部を埋めて平坦化することが好ましい。
平坦化としては、透明樹脂をメッシュ部開口部105の凹部に塗布して埋め込むことによって凹部を充填する。透明樹脂が凹部の隅々まで侵入しないと、気泡が残り透明性が劣化する。このため、溶剤などで稀釈して低粘度で塗布し乾燥したり、空気を脱気しながら塗布したりして、平坦化層29を形成する。。
平坦化層29は透明性が高く、屈接率が接着剤層13及び基材11と近似すると共に、メッシュ剤との接着性が良く、次工程の接着剤との接着性がよいものであればよい。但し、平坦化層29の表面が、突起、凹み、ムラがあると、ディスプレイ前面へ設置した際に、ディスプレイとモワレや干渉ムラが発生したりするので好ましくない。好ましい方法としては、樹脂として熱硬化型又は紫外線硬化型樹脂を塗布した後に、平面性に優れ剥離性のある基材で積層し、塗布樹脂を熱又は紫外線で硬化させて、基材を剥離し除去する。平坦化層29の表面は、平面性基材の表面が転写されて、平滑な面が形成される。
平坦化層29に用いる樹脂としては、特に限定されず各種の天然又は合成樹脂、熱硬化型又は電離放射線硬化型樹脂などが適用できるが、樹脂の耐久性、透明性、各種樹脂との屈折率の近似性、塗布性、平坦化しやすさ、平面性などから、アクリル系、エポキシ系等の単量体、プレポリマー、或はこれらの混合系からなる紫外線硬化樹脂が好適である。
(NIR吸収層)さらに、平坦化層29に用いる樹脂中へ、可視光線及び/又は近赤外線の特定波長を吸収する光線吸収剤を添加してもよい。可視光線の特定波長を吸収することで、画像の色調の不自然さ、不快感が抑えられ、画像の視認性が向上する。これはディスプレイの種類によって異なる。例えばPDPの場合、原理的に画像光中にネオン原子の発光スペクトルの波長570〜605nm域の光が混入することにより画像の色調は橙色に偏移する。そこで、この波長域は吸収することにより画像を天然色に近づけることが出来る。又近赤外線(NIRとも呼称)の特定波長とは、780〜1100nm程度である。此の波長域の近赤外線は、各種の遠隔操作機器の信号伝達用にも使用される為、これが放出されると遠隔操作機器の誤動作を起こす。よって、780〜1100nmの波長領域の80%以上を吸収することが望ましい。近赤外線吸収剤(NIR吸収剤ともいう)としては、特に限定されないが、可視光線領域から近赤外線領域に移る境界近傍に急峻な吸収の立上りがあり、近赤外線領域の透過率は低く、可視光領域の光透過性が高く、かつ、可視光領域には特定の波長の大きな吸収がない色素などが適用できる。可視光領域の特定波長を吸収する色素としては、フタロシアニン系化合物アントラキノン系化合物、クマリン系化合物、メチン系化合物が好ましい。また、近赤外線の特定波長を吸収する色素としては、インモニウム系、ジイモニウム系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系錯体などがある。平坦化層29へNIR吸収剤を添加したが、添加しない場合には、NIR吸収剤を有する別の層(NIR吸収層という)を、少なくとも一方の面へ設ければよい。
(NIR吸収別層)NIR吸収層は、平坦化層29側及び/又は逆側の基材11側へ設けられる。NIR吸収層を平坦化層29面へ設けた場合は、NIR吸収層は図4に図示するNIR吸収層31Bとなり、基材11面へ設けた場合は、図4に図示するNIR吸収層31Aとなる。NIR吸収層31B及びNIR吸収層31Aは、NIR吸収剤を有する市販フィルム(例えば、東洋紡績社製、商品名No2832)を接着剤で積層したり、先のNIR吸収剤をバインダへ含有させて塗布してもよい。該バインダとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂や、熱又は紫外線などで硬化するエポキシ、アクリレート、メタアクリレート、イソシアネート基などの反応を利用した硬化タイプなどが適用できる。
これら光吸収剤を添加した平坦化層29およびNIR層31A、31Bが可視光線または近赤外線の吸収層となる。
(AR層)さらに、電磁波遮蔽用シートの観察側へ、反射防止層(AR層という)2を設けてもよい。反射防止(AR)層は、外光として入射する日光、電燈光等の可視光線の反射を防止するためのもので、その構成としては、単層、多層の多くが市販されている。多層のものは、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層したもので、高屈折率層としては、酸化ニオブ、チタン酸化物、酸化ジルコニウム、ITOなどがあり、低屈折率層としては、弗化マグネシウム、珪素酸化物等がある。
(ハードコート層、防汚層、防眩層)さらに、反射防止(AR)層2上には、ハードコート層、防汚層、防眩層等の層3を設けてもよい。ハードコート層は、JIS−K5400の鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有する層で、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートの単量体、又はプレポリマーを、熱又は電離放射線で硬化させる。防汚層は、撥水性、撥油性のコートで、シロキサン系、フッ素化アルキルシリル化合物などが適用できる。防眩層は外光を乱反射する微細な凹凸表面を有する層である。
(シート化)以上のように、連続した帯状の巻取りロール状態で製造してきた部材を切断して、1枚毎の電磁波遮蔽用シート1を得る。該電磁波遮蔽用シート1は、ガラスなどの透明な基板へ貼り付けられ、また必要に応じて、NIR吸収層、AR層、ハードコート層、防汚層、防眩層と組み合されてディスプレイ前面板を構成する。基板は、大型のディスプレイには厚さが1〜10mmの剛性を持つものが、また、キャラクタ表示管などの小型のディスプレイには厚さが0.01〜0.5mmのプラスチックフィルムが用いられ、ディスプレイの大きさや用途に応じて、適宜選択すればよい。
【実施例】
(実施例1)厚さ10μmの表面粗さがRzで2μmの電解銅箔から成る金属層21と、厚さ100μmの連続帯状のPETフィルムA4300(東洋紡績社製、ポリエチレンテレフタレート商品名)から成る透明基材11とを、ポリウレタン系接着剤層13でラミネートした後に、50℃で3目間エージングして、積層体を得た。接着剤としては主剤はポリオール(タケラックA−310)と硬化剤はイソシアネート(A−10)(いずれも武田薬品工業社製、商品名)を用い、塗布量は乾燥後の厚さで4μmとした。
積層体の銅箔をフォトリソグラフィ法により銅メッシュを形成する。カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを流用して、連続した帯状(巻取)でマスキングからエッチングまでを行う。まず、積層体の金属層21表面の全体へカゼインのポジ型感光性レジストを掛け流し法で塗布した。積層体を次のステーションへ間欠搬送し、開口部が正方形でライン幅W22μm、ライン間隔(ピッチP)300μm、透明基材の辺に対するメッシュ角度49度の図1の如き正方格子のネガパターン原版を用いて、水銀燈からの紫外線により密着露光した。積層体を次々にステーションを搬送しながら、水現像し、硬膜処理し、さらに、100℃でベーキングした。
積層体をさらに次のステーションへ搬送し、エッチング液として液温50℃、比重42°ボーメの塩化第二鉄溶液を用いて、スプレイ法で吹きかけて非レジスト部をエッチングし、開口部105、及びそれを包囲するライン部107を形成した。積層体を次々とステーション間で搬送しながら、水洗し、レジストを剥離し、洗浄し、さらに100℃で乾燥して、図1、図2の如き形状の銅の金属メッシュ103を形成した。
次いで、金属メッシュライン部107表面及び側面を黒化処理する。黒化処理メッキ浴として、硫酸銅水溶液(100g/l(リットル))と硫酸水溶液(120g/l)との混合水溶液に浸漬し、浴温35℃、電流密度20A/dmの条件下で10秒間処理し、さらに同じ処理を2回繰り返して、累計3回の電解メッキを行って黒化処理層23を形成して、実施例1の電磁波遮蔽用シート1を得た。
(実施例2)黒化処理メッキ浴として、硫酸銅水溶液(85g/l(リットル))と硫酸コバルト水溶液(15g/l)と硫酸水溶液(120g/l)との混合水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。
(実施例3)黒化処理メッキ浴として、硫酸銅水溶液(85g/l(リットル))と硫酸ニッケル水溶液(15g/l)と硫酸水溶液(120g/l)との混合水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。
(実施例4)黒化処理メッキ浴として、硫酸銅水溶液(85g/l(リットル))と硫酸亜鉛水溶液(15g/l)と硫酸水溶液(120g/l)との混合水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。
(実施例5)黒化処理メッキ浴として、硫酸銅水溶液(85g/l(リットル))と硫酸クロム水溶液(15g/l)と硫酸水溶液(120g/l)との混合水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。
(実施例6)黒化処理の電解メッキを2回の行う以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。
(実施例7)黒化処理として、亜塩素酸ナトリウム水溶液(50g/l(リットル))と水酸化ナトリウム水溶液(20g/l)との混合水溶液(90℃)に2分間浸漬する化成処理を行う以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。なお、銅メッシュの表面及び側面は銅酸化物となり黒化処理されていた。
(比較例1)実施例1の銅箔の代りに、銅箔の表裏両面に銅−コバルト合金粒子(平均粒子径0.3μm)をカソーディック電着させ、さらにその上にクロメート処理された厚さ10μm電解銅箔を用い、銅メッシュ形成後のライン部107側面の黒化処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電磁波遮蔽用シートを得た。
(比較例2)黒化処理の電解メッキを1回行う以外は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽用シートを得た。
(評価)評価は、反射Y値、視認性、気泡の有無、エッチングムラ、黒化処理ムラ、黒化処理面の粉落ちで評価した。
反射Y値は前述した方法で測定した。
視認性はPDP;WOOO(日立製作所社製、商品名)の前面に載置して、テストパターン、白、及び黒を順次表示させて、螢光燈照明された室内に於いて画面から50cm離れた距離で、画面の法線とのなす視認角度0〜80度の範囲で、目視で観察した。輝度、コントラスト、黒表示での外光(螢光燈の光)の反射及びギラツキ、白表示での黒化処理のムラを観察し、著しく悪いものを不合格とし×印で示し、良好なものを合格とし○印で示し、また、実用上支障がないものも合格とし△印で示した。
気泡の有無は200倍の光学顕微鏡を用い目視で観察し、直径50μm以上の気泡が認められるものを不合格とし×印で示し、認められないものを合格とし○印で示した。
エッチングムラはライトテーブルに静置して透過光を目視で観察し、ムラが認められないものを合格とし○印で示し、ムラが認められた場合には100倍の光学顕微鏡を用い、メッシュの線幅を目視で観察して、線幅に著しい変化が認められるものを不合格とし×印で示した。
黒化処理ムラは蛍光灯下で目視で観察し、著しくムラが認められるものを不合格とし×印で示し、認められないものを合格とし○印で示した。
黒化処理面の粉落ちはエチルアルコールを染み込ませた脱脂綿でメッシュ面を手で強く10回擦った後に、目視で観察して、著しく汚れているものを不合格とし×印で示した。汚れが認められないが、少ないものを合格とし○印で示した。
これらの結果を「表1」に記載した。

(結果)実施例1〜7は、反射Y値が20以下であり、且つライン部107の表面及び側面に黒化処理層を有し、視認性、気泡、エッチングムラ、黒化処理ムラ、及び粉落ちのいずれも合格であった。比較例2は、ライン部の表面及び側面黒化処理層は有するが、反射Y値が22.0であり、視認性が明らかに他の例のものより悪く実用上支障有る程度の×印であったが、気泡、エッチングムラ、黒化処理ムラ、及び粉落ちのいずれも合格であった。比較例1では反射Y値が20以下であったが、ライン部の側面に黒化処理層が無く、代りに裏面に黒化処理層を有し、視認角度0(画面の法線方向)では視認性良好であったが側面(視認角>0°で見ると画像全体が赤味がかってコントラストの低下が認められ不合格であった。実に、気泡及びエッチングムラも不合格であった。
本発明の電磁波遮蔽用シート1の製造方法によれば、接着剤の塗布ムラや気泡の混入が少なく積層品質に優れる。また、黒化処理が1工程で済み、メッシュの途切れなどのムラがなく、歩留りがよく、生産効率が高く生産できる。
本発明の電磁波遮蔽用シート1によれば、電磁波を遮蔽し、かつ、金属層21の表面及び側面(断面)部にも黒化処理層23が設けられているので、ディスプレイからの表示光が吸収されず、表示画像の輝度が低下しない。
本発明の電磁波遮蔽用シート1を用いたディスプレイ用前面板によれば、ディスプレイの前面に配置して、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、ディスプレイの表示画像を良好に視認することができる。
さらに必要に応じて、平坦化し、さらに必要に応じて特定波長の可視及び/又は近赤外線を吸収する光線吸収剤層を設けることで、モアレや不要な特定波長の可視及び/又は近赤外線が吸収された、ディスプレイの表示画像をより良好に視認することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
透明基材の一方の面に設けられたメッシュ状の金属層とを備え、
金属層の透明基材と反対の面および側面に黒化処理層が設けられ、
上記黒化処理層の反射Y値が、0より大きく20以下であることを特徴とする電磁波遮蔽用シート。
【請求項2】
上記黒化処理層が、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、若しくはクロムから選択された少なくとも1種の単体、又は化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽用シート。
【請求項3】
上記金属層が、銅であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波遮蔽用シート。
【請求項4】
電磁波遮蔽用シートと、
この電磁波遮蔽用シートに設けられた、可視光線及び/若しくは近赤外線吸収層、または反射防止層とを備え、
電磁波遮蔽用シートは、
透明基材と、
透明基材の一方の面に設けられたメッシュ状の金属層とを備え、
金属層の透明基材と反対の面および側面に黒化処理層が設けられ、
上記黒化処理層の反射Y値が、0より大きく20以下であることを特徴とするディスプレイ用前面板。
【請求項5】
(a)金属層と透明基材とを、直接又は接着剤を介して積層する工程と、
(b)積層された金属層と透明基材のうち、金属層へレジスト層をメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の金属層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去して、メッシュ状の金属層を形成する工程と、
(c)該メッシュ状の金属層の表面及び側面へ、メッキ法で黒化処理層を設ける工程とからなることを特徴とする電磁波遮蔽用シートの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/093513
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505489(P2005−505489)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005531
【国際出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】