説明

電磁波遮蔽膜製造用インク、これを用いたディスプレイ装置及びその製造方法と、ディスプレイ装置の前面フィルタ及びその製造方法

【課題】材料の損失が少なく、製造費用を節減できるディスプレイ装置及びその製造方法を提供する。また、焼成温度を低下させ、基板などの変質を防止できるディスプレイ装置及びその製造方法を提供する。さらに、外部の衝撃吸収力を強化し、厚さ及び重さを減少させたプラズマディスプレイパネルの前面フィルタを提供する。
【解決手段】65〜85%の重量比を有する導電性物質120と、10〜30%の重量比を有し、セルロース、アクリル及びビニルのうち少なくとも一つを含む有機物130と、5〜15%の重量比を有し、アルコール及びグリコールアセテートのうち少なくとも一つを含む溶媒110と、を含んで電磁波遮蔽膜製造用インクを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に関するもので、特に、前面フィルタ及びその材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチメディア時代の到来とともに、一層細密で、一層大きく、一層自然色に近い色を表現できるディスプレイ装置の登場が要求されている。一方、40インチ以上の大きな画面を構成するには、現在のCRT(Cathode Ray Tube)に限界があり、LCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma Display Panel)及びプロジェクション・テレビなどが高画質映像の分野への用途拡大のために急速に発展している。
【0003】
上述したPDPは、駆動過程で人体に有害な電磁波などが発生するので、これを遮断するために、画像が表示されるパネルの前面に前面フィルタが備えられている。
【0004】
以下、上述したディスプレイ装置の一つであるPDPの前面フィルタ及びその問題点を説明する。
【0005】
PDPは、上部パネルと下部パネルとの間の放電空間内で放電が起きて紫外線が発生すると、この紫外線が蛍光体に入射されることで可視光線が発生し、この可視光線によって画面が表示されるように構成される。
【0006】
PDPの前面には、ガラス型またはフィルム型の前面フィルタが備えられており、前面フィルタは、電磁波(Electromagnetic Interference、EMI)及び近赤外線(Near Infrared Rays、NIR)を遮蔽する膜と、色補正膜と、外部から入射される光の反射を防止する膜と、から構成される。
【0007】
以下、上述した電磁波遮蔽膜の構成を説明する。ベースフィルム上にメッシュ形状の導電性物質が備わり、前記導電性物質は、フレームによって支持されることもある。メッシュ形状は、導電性物質をフォトリソグラフィ、エッチング工程またはスパッタリング法などでPET(polyethylen terephthalate)ベースフィルム上にパターニングすることで形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の電磁波遮蔽膜には、次のような問題点があった。
【0009】
第一に、フォトリソグラフィ及びエッチング工程でメッシュ構造の導電性物質を形成する場合、材料の損失が多く、増加した工程数によって工程が複雑になる。
【0010】
第二に、スパッタリング法で電磁波遮蔽膜を形成する場合、工程時間が長くなり、抵抗が高くなるという問題点がある。
【0011】
第三に、導電性物質などの焼成工程で温度が過度に高くなると、基板などの変質をもたらす可能性がある。
【0012】
本発明は上述した従来の問題点を解決するためのもので、その目的は、材料の損失が少なく、製造費用を節減できるディスプレイ装置及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、焼成温度を低下させ、基板などの変質を防止できるディスプレイ装置及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、外部の衝撃吸収力を強化し、厚さ及び重さを減少させたプラズマディスプレイパネルの前面フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、65〜85%の重量比を有する導電性物質と、10〜30%の重量比を有し、セルロース、アクリル及びビニルのうち少なくとも一つを含む有機物と、5〜15%の重量比を有し、アルコール及びグリコールアセテートのうち少なくとも一つを含む溶媒と、を含んで構成される電磁波遮蔽膜製造用インクを提供する。
【0016】
本発明の他の実施形態によると、基板上に、モールド印刷法またはオフセット印刷法のうち一つで導電性インク物質を転写する段階と、前記導電性インク物質を焼成して導電性物質を形成する段階と、を含んで構成されるプラズマディスプレイ装置の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の更に他の実施形態によると、映像情報が表示されるパネルと、前記パネルの前面に形成されており、表面が曲面の形状をなす導電性物質からなる第1層を備えた電磁波遮蔽膜と、を含んで構成されるディスプレイ装置を提供する。
【0018】
本発明の更に他の実施形態によると、基板と、前記基板上に接合された樹脂層と、前記樹脂層上に備えられ、導電性物質がパターニングされて形成された電磁波遮蔽膜と、を含んで構成されることを特徴とするディスプレイ装置の前面フィルタを提供する。
【0019】
本発明の更に他の実施形態によると、陰刻が形成されたモールドを準備する段階と、前記陰刻にインクを注入して電磁波遮蔽膜を形成する段階と、前記電磁波遮蔽膜上に樹脂層と基板を順に塗布する段階と、前記樹脂層を乾燥し、前記モールドを分離する段階と、を含んで構成されることを特徴とするディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るディスプレイ装置及びその製造方法は、材料の損失が少なく、製造費用を節減できるという効果を有する。
【0021】
本発明に係るディスプレイ装置及びその製造方法は、焼成温度を低下させ、基板などの変質を防止できるという効果を有する。
【0022】
本発明に係るプラズマディスプレイパネルの前面フィルタは、外部の衝撃吸収力を強化し、厚さ及び重さを減少できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の他の目的、特性及び利点は、図面に基づいた各実施例の詳細な説明を通して明らかになるだろう。
【0024】
以下、上記の目的を具体的に実現するための本発明の好適な実施例を、図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る電磁波遮蔽膜製造用インクの一実施例を示した図である。以下、本発明に係る電磁波遮蔽膜製造用インクの一実施例を、図1に基づいて説明する。
【0026】
本実施例に係る電磁波遮蔽膜製造用インク100は、溶媒110に導電性物質120及び有機物130が溶解されてなる。ここで、溶媒110は、アルコール及びグリコールアセテートのうち何れか一つであることを特徴とする。また、導電性物質120は、銀、銅、アルミニウム、ステンレススチール及びニッケルからなる群から選択される物質であることを特徴とする。導電性物質120は電気抵抗が低いので、電磁波遮蔽効果を向上させることができる。また、有機物130は、セルロース、アクリル及びビニルのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。そして、導電性物質120は、65〜85%の重量比を有し、有機物130は、10〜30%の重量比を有し、溶媒は、5〜15%の重量比を有することを特徴とする。
【0027】
導電性物質120は、「大きさ」が0.5〜5マイクロメートルである粉末であり、上述した「大きさ」は、粉末が球形であれば直径を意味し、六面体であればエッジの平均的な長さを意味する。導電性物質120は、図1に示すように、フレーク形態である。また、電磁波遮蔽膜製造用インク内では、フレーク形態の導電性物質120に多数個の有機物130が結合されるが、その理由は、後述する焼成工程の温度を低下させるためである。
【0028】
そして、導電性物質120は、その形状が球形または六面体である場合、後述する所定温度で焼成工程を進行するために、0.5〜2マイクロメートルの大きさであることが好ましい。その理由は、フレーク形態であると、導電性物質120と外部環境との接触面積が広くなり、比較的低い温度でも焼成工程を迅速に行えるためである。また、焼成工程を通して各粉末が容易に接触することで、導電性物質120の電気抵抗を減少させることができる。
【0029】
図2は、本発明に係るディスプレイ装置の製造方法のうち電磁波遮蔽膜製造工程の一実施例を示したフローチャートである。以下、本発明に係るディスプレイ装置の製造方法の一実施例を、図2に基づいて説明する。
【0030】
まず、導電性物質を基板上にオフセット法で転写する(S210)。ここで、導電性物質の成分は、上述した電磁波遮蔽膜製造用インクの成分と同一である。次いで、導電性物質上にオフセット法で黒色物質を転写する(S230)。ここで、黒色物質は、銅酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物及びカーボンからなる群から選択される物質である。次いで、基板上に転写された導電性物質及び黒色物質を100〜400℃、好ましくは100〜200℃で焼成する(S230)。このとき、導電性物質と黒色物質の焼成工程は、それぞれ別途にまたは同時に行われる。
【0031】
上述したように、導電性物質または黒色物質をなす粉末がフレーク形状であれば、焼成温度を200℃以下に低下させることができる。焼成工程後には、溶媒及び有機物などがほとんど蒸発し、基板上には導電性物質及び黒色物質のみが残るようになる。
【0032】
また、導電性物質は、PETフィルム、ガラス及びディスプレイパネルのうち何れか一つに積層されることが好ましい。従来は、ディスプレイパネル上にインクを直接転写して焼成する場合、工程が高温で進行されて基板の変質をもたらす可能性があった。しかし、本発明では、従来より低温で工程が進行するので、ディスプレイパネル上に直接インクを転写して焼成することが可能である。
【0033】
上述した工程を通して電磁波遮蔽膜が完成するが、ディスプレイ装置を製造する他の工程は、従来と同一である。以下、オフセット工程の各実施例を具体的に説明する。
【0034】
まず、ブランケットの表面に陽刻または陰刻の形態でインクを積層する。その後、ブランケットを基板にローリングすると、インクがブランケットから「オフ」になった(分離された)後、基板上に「セット」(転写)されて電磁波遮蔽膜が形成される。その後、ブランケットの表面に形成された陽刻または陰刻の形態によって、基板上にはストライプまたはメッシュタイプなどの電磁波遮蔽膜がパターニングされる。
【0035】
図3は、オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第1実施例を示した図である。以下、オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第1実施例を、図3に基づいて説明する。
【0036】
本実施例では、ブランケットの表面に陰刻の形態でインクを注入し、オフセット工程を行う。具体的に説明すると、ブランケットロール350の表面にブランケット360が形成されており、ブランケット360の表面には、インク310注入のための陰刻が形成される。そして、ブランケット360が基板300上にローリングされると、陰刻に注入されたインク310が基板300上に転写される。ここで、インク310の組成などは、上述した通りである。
【0037】
図4A乃至図4Bは、オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第2実施例を示した図である。以下、オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第2実施例を、図4A乃至図4Bに基づいて説明する。
【0038】
本実施例では、ブランケットの表面に陽刻の形態でインクを注入し、オフセット工程を行う。まず、図4Aに示すように、陰刻が形成されたマスターモールド390を準備する。次いで、陰刻にインク310を注入するが、インク310は、上述した電磁波遮蔽膜製造用インクと同一であることが好ましい。その後、ブランケットロール350に巻かれたブランケット360をマスターモールド390にローリングすると、陰刻に積層されたインク310がブランケット360上に転写される。次いで、図4Bに示すように、インク310が陽刻の形態で積層されたブランケット360を基板300上にローリングすると、インク310が基板300上に転写される。
【0039】
上述したように、導電性物質をオフセット工程で基板上に転写した後、導電性物質上に黒色物質を転写する。黒色物質もオフセット工程で転写することができる。次いで、導電性物質及び黒色物質を焼成するが、焼成温度は、粒子の大きさ及び形状によって異なっており、具体的な内容は上述した通りである。
【0040】
以下、上述した本発明に係るディスプレイ装置の製造方法の一実施例の作用を説明する。
【0041】
ブランケット上に積層されたインクを基板上に直接転写して導電性物質などを基板上に転写することで、ディスプレイ装置をなす電磁波遮蔽膜の製造工程における材料の損失を減少させ、製造費用を節減することができる。また、オフセット工程は露光及び現像などの工程を必要としないので、製造工程を短縮することができる。さらに、上述したように、導電性物質をフレーク形態の粉末に製造するので、焼成温度を低下させて基板などの変質を防止することができる。
【0042】
以下、本発明に係るディスプレイ装置の一実施例を説明する。
【0043】
本実施例に係るディスプレイ装置は、従来のものと同一であるが、電磁波遮蔽膜が上述したオフセット工程によって形成されることを特徴とする。すなわち、映像情報が表示されるパネル上に電磁波遮蔽膜が形成されるが、電磁波遮蔽膜は、導電性物質からなる第1層と、黒色物質からなる第2層と、を含んで構成される。ここで、第1層は、上述した電磁波遮蔽膜製造用インクをオフセット工程で基板上に転写することで形成される。ただし、焼成工程後には、溶媒及びバインダーなどが蒸発してほとんど残っていない。そして、第1層は、厚さが1〜5マイクロメートルであることが好ましく、第2層は、厚さが0.5〜2マイクロメートルであることが好ましい。また、第2層をなす黒色物質も、オフセット工程で形成される。
【0044】
また、オフセット工程で形成された第1層及び第2層は、図6Bに示すように、表面が曲面の形状をなすが、その理由は、図5に示すように、オフセット工程中に基板などに転写されず、ブランケット360にインク310'が残存するためである。したがって、第1層は、銅、銀、アルミニウム、ステンレススチール及びニッケルのうち少なくとも一つを含み、大きさが0.5〜5マイクロメートルであるフレーク形態である。そして、導電性物質は、球形または六面体の形状で形成されており、大きさが0.5〜2マイクロメートルであるときに上述した焼成温度で焼成される。そして、黒色物質は、銅酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物及びカーボンのうち何れか一つであることが好ましい。
【0045】
以下、上述した本発明に係るディスプレイ装置の一実施例の作用を説明する。
【0046】
導電性物質及び黒色物質を含む電磁波遮蔽膜がディスプレイ装置の前面に形成されることで、装置の内部から放出される電磁波を遮断することができる。また、導電性物質及び黒色物質がインクジェット法で形成されるので、製造工程、費用、時間及び材料などを減少させることができる。
【0047】
図5は、オフセット工程後のブランケットを示した図で、具体的には、ブランケット360上に陰刻が形成され、この陰刻にインクが積層されることを示す実施例である。図5に示すように、オフセット工程後にもインク310’の一部が陰刻に残っている。したがって、本発明に係る電磁波遮蔽膜の機能を示した図6Bに示すように、導電性物質310は、基板300上に半円形及び流線形で形成される。これにより、ディスプレイ装置の内部から外部に放出される可視光線などの放出量が増加し、色輝度を高めることができる。
【0048】
図6Aは、従来の電磁波遮蔽膜の機能を示した図である。図6Aに示すように、導電性物質310が基板300上に直角形状(矩形状)で形成されるので、可視光線の一部は、ディスプレイ装置の内部から外部に容易に放出されない。
【0049】
上述した電磁波遮蔽膜以外のディスプレイ装置の他の構成は、従来技術の構成と同一である。また、上述した電磁波遮蔽膜は、プラズマディスプレイパネルのみならず、LCD及び携帯用端末機などの他のディスプレイ装置にも用いられる。
【0050】
図7Aは、本発明に係るディスプレイ装置の前面フィルタの一実施例を示した断面図である。図7Bは、本発明に係るディスプレイ装置の前面フィルタの一実施例を示した平面図である。以下、本発明に係るディスプレイ装置の前面フィルタの一実施例を、図7A及び図7Bに基づいて説明する。
【0051】
本実施例に係る前面フィルタは、基板400上に樹脂層410が形成され、樹脂層410上に導電性物質420がパターニングされて形成された電磁波遮蔽膜を含んで構成される。ここで、電磁波遮蔽膜は、電磁波がディスプレイ装置の内部からパネルの外部に放出されることを遮蔽する役割をする。電磁波遮蔽膜は、電気抵抗の低い導電性物質420をパターニングすることで形成される。
【0052】
また、電磁波遮蔽膜は、銅(Cu)または銀(Ag)などを含むインクや、Agペースト、Cuペースト、AgNO錯塩状態のインク及びAg錯塩状態のインクなどをパターニングした後、乾燥して形成される。上述したインクは、陰刻が形成されたモールドに注入されてパターニングされることを特徴とし、インクジェット法などで注入される。
【0053】
一方、上述した導電性物質420のみで電磁波遮蔽膜を形成した場合、ディスプレイ装置の外部から入射される光の反射による眩しさが発生し得る。したがって、導電性物質上に黒色物質430をさらに含むことで、コントラストを向上させることができる。黒色物質430は、非伝導性を帯びるカーボン、CoO系、RuO系、Ni―Cu酸化物系などを用いたペーストまたはインクを所定パターンで積層した後、乾燥して形成される。ここで、黒色物質430は、電磁波遮蔽膜の厚さの10〜50%であることが好ましい。なお、上述した厚さは、導電性物質420と黒色物質430とを合せた電磁波遮蔽膜全体の厚さである。
【0054】
また、他の実施例として、上述した銅または銀などの導電性物質を含むインクにカーボンなどを添加することで黒色を帯びるようにした後、上述した注入及び乾燥工程を通してコントラストを向上させることができる。
【0055】
基板400としては、ガラスまたはPETなどのフィルムが用いられてガラス型前面フィルタまたはフィルム型前面フィルタをなすが、プラズマディスプレイパネルの前面ガラスが用いられてもよい。この場合、前面フィルタは、プラズマディスプレイパネルの前面ガラス上に直接形成され、基板400及び樹脂層410上には、接着剤としてPSAなどが用いられる。
【0056】
また、樹脂層410は、PDMS、PMMA及びEVAなどの粘弾性を有する物質を含んで構成され、樹脂層410の厚さは、30〜700マイクロメートルである。このとき、樹脂層410内に形成された電磁波遮蔽膜は、厚さが20〜200マイクロメートルである。そして、電磁波遮蔽膜をなす導電性物質420は、開口率の確保及び電磁波遮蔽効果のために10〜30マイクロメートルの線幅を有する。また、電磁波遮蔽膜はストライプタイプまたはメッシュタイプで形成され、電磁波遮蔽膜をなす各ラインは150〜500マイクロメートルだけ離隔されるべきであり、300マイクロメートルだけ離隔されて配列されることが好ましい。
【0057】
そして、上述した樹脂層410上に近赤外線遮蔽膜、色補正膜及び反射防止膜などを形成することで、前面フィルタの性能を向上させることができる。また、色補正及び近赤外線遮蔽のための染料などを上述した樹脂層410上に含ませることで、前面フィルタの厚さ及び重さを減少させることもできる。
【0058】
上述した本発明に係るディスプレイ装置の前面フィルタは、プラズマディスプレイパネルのみならず、電磁波遮蔽機能などを必要とする他の分野のディスプレイ装置にも適用される。
【0059】
上述した前面フィルタを含むプラズマディスプレイパネルは、上部パネルと下部パネルが所定間隔をおいて接合されて形成される。そして、上部パネルにおいては、画像がディスプレイされる表示面である前面ガラス上に、対をなすスキャン電極とサステイン電極からなる複数の維持電極対が配列される。そして、下部パネルにおいては、後面ガラス上に、上述した複数の維持電極対と交差する複数のアドレス電極が配列され、上述した上部パネルと下部パネルは、所定距離をおいて平行に結合される。
【0060】
下部パネルにおいては、複数個の放電空間、すなわち、放電セルを形成するためのストライプタイプ(またはウェルタイプ)の隔壁が平行を維持して配列される。そして、アドレス放電によって真空紫外線を発生させる多数のアドレス電極は、隔壁に対して平行に配置される。下部パネルの上側面には、アドレス放電時に画像表示のための可視光線を放出するR、G、B蛍光体が塗布される。また、アドレス電極と蛍光体との間には、アドレス電極を保護するための下部誘電体層が形成される。
【0061】
そして、前面ガラス上には、上述した前面フィルタが形成される。前面フィルタは、上述したように、樹脂層上に導電性物質及び黒色インクをパターニングして電磁波遮蔽膜を形成することで得られる。そして、上述した電磁波遮蔽膜が形成された樹脂層上に近赤外線遮蔽膜、色補正膜及び反射防止膜などを形成することで、前面フィルタの性能を向上させることができる。そして、色補正及び近赤外線遮蔽のための染料などを上述した樹脂層上に含ませることで、前面フィルタの厚さ及び重さを減少させることもできる。
【0062】
図7Bは、上述した前面フィルタの一実施例を示した平面図で、樹脂層410上に黒色物質430がストライプタイプでパターニングされたことを示している。上述した樹脂層410と黒色物質430との間に導電性物質が備わる。
【0063】
図8乃至図12は、本発明に係るディスプレイ装置の前面フィルタの製造工程の一実施例を示した図である。以下、本発明に係るディスプレイ装置の前面フィルタの製造工程の一実施例を、図8乃至図12に基づいて説明する。
【0064】
まず、図8に示すように、陰刻510が形成されたモールド500を準備する。モールド500は、後述するように、電磁波遮蔽膜を形成するためにインクなどを注入する手段である。したがって、モールド500に形成された陰刻510は、図8に示すように、断面視において四角形、立体的には六面体の形状をなすが、形成しようとする電磁波遮蔽膜の形状によって他の形状に形成してもよい。すなわち、電磁波遮蔽膜をなす導電性物質などの線幅が前面フィルタの外部に行くほど狭くなる場合、陰刻510の形状もそれに合わせて形成される。このとき、後述するように、陰刻510の内部に注入される導電性インクなどの物質は、前面フィルタの最外部に形成される。
【0065】
そして、陰刻510のパターンは、形成しようとする電磁波遮蔽膜のパターンによって異なっており、ストライプまたはメッシュタイプで形成されることが好ましい。そして、各陰刻510は、開口率の確保及び電磁波遮蔽効果のために10〜30マイクロメートルの幅を有する。また、各陰刻510は、150〜500マイクロメートルだけ離隔されるべきであり、300マイクロメートルだけ離隔されて配列されることが好ましい。上述した各陰刻510間の距離は、各陰刻510の中心間の距離である。そして、陰刻510の深さは、電磁波遮蔽膜の厚さと同一であることが好ましく、20〜200マイクロメートルである。
【0066】
次いで、図9に示すように、陰刻510に黒色物質520を注入する。黒色物質520としては、非伝導性を帯びるカーボン、CoO系、RuO系、Ni―Cu酸化物系などを用いたペーストまたはインクなどが用いられる。そして、上述した黒色物質520は、陰刻510のパターンによって積層された後、乾燥される。導電性物質のみで電磁波遮蔽膜を形成する場合、ディスプレイ装置の外部から入射される光の反射による眩しさが発生し得るので、導電性物質上に黒色物質520を形成することで、コントラストを向上させることができる。黒色物質530は、非伝導性を帯びるカーボン、CoO系、RuO系、Ni―Cu酸化物系などを用いたペーストまたはインクを所定パターンで積層した後、乾燥して形成される。上述した黒色物質520は、インクジェット法などで塗布されるもので、陰刻510の全体の深さの10〜50%の深さまで注入される。
【0067】
次いで、図10に示すように、黒色物質520上に導電性物質530を注入する。このとき、導電性物質530は、黒色物質520が充填された陰刻の残りの空間に、インクジェット法などで注入されることが好ましい。そして、導電性物質530は、電気抵抗が低く、電磁波遮蔽効果に優れた物質であり、銅(Cu)または銀(Ag)などを含むインクや、Agペースト、Cuペースト、AgNO錯塩状態のインク及びAg錯塩状態のインクなどであることが好ましい。
【0068】
そして、モールド500の乾燥工程は、上述した黒色物質520の乾燥工程と同時にまたは別個に進行される。また、多量の導電性物質及び/または黒色物質が陰刻に注入され、その一部がモールド500の表面にまで噴出される場合、モールド500の表面が滑らかでなくなる。この場合は、金属またはプラスチックブレードを用いたドクターリング(doctoring)工程を追加することもできる。
【0069】
図9及び図10においては、黒色物質及び導電性物質が2層構造で注入されたが、他の実施例では、上述した銅または銀などの導電性物質を含むインクにカーボンなどを添加させることで、黒色を帯びるようにした後、上述した注入及び乾燥工程を通してコントラストを向上させることができる。
【0070】
次いで、図11に示すように、陰刻内に黒色物質520と導電性物質530が順に注入されたモールド500上に、樹脂層540を塗布して乾燥する。樹脂層540は、後述するように、基板上に接合されて電磁波遮蔽膜を固定する役割と、外部衝撃を吸収する役割を果たす。樹脂層540は、PDMS、PMMA及びEVAなどの粘弾性を有する物質を含んで構成され、樹脂層540の厚さは、30〜700マイクロメートルである。上述した組成の樹脂層540は、乾燥工程を通して前面フィルタの形状を維持しながらも、外部の衝撃に対して従来より1.5〜2倍ほど強化された衝撃吸収力を有する。そして、樹脂層540は、前面フィルタの一部をなすので、透明な材質であることが好ましい。
【0071】
次いで、図12に示すように、樹脂層540上に基板550を接合する。基板550としてガラスを用いるとガラス型前面フィルタが形成され、PETなどのフィルムを用いるとフィルム型前面フィルタが形成される。そして、本発明においては、プラズマディスプレイパネルの前面ガラス上に樹脂層540が直接形成されてもよい。また、樹脂層540と基板との間には、PSAなどの接合剤が用いられてもよい。
【0072】
ここで、樹脂層540を乾燥した後、モールド500を分離すると、図12に示すように、ディスプレイ装置の前面フィルタが完成される。上述した乾燥温度は、50〜300℃であることが好ましい。乾燥工程を通して、樹脂層540によって基板550と導電性物質530との結合力が増加する。
【0073】
上述した工程を通して完成された前面フィルタは、プラズマディスプレイパネルなどの電磁波遮蔽機能を必要とするディスプレイ装置の前面に備えられる。そして、プラズマディスプレイパネルに用いられる場合、樹脂層上に近赤外線遮蔽膜、色補正膜及び反射防止膜などを形成することで、前面フィルタの機能を向上させることができる。また、色補正及び近赤外線遮蔽のための染料などを上述した樹脂層540に添加することで、前面フィルタの重さ及び厚さを減少させることもできる
【0074】
以上説明した内容を通して、当業者であれば、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で多様な変更及び修正が可能であることを理解できるだろう。
【0075】
したがって、本発明の技術的範囲は、実施例に記載された内容に限定されることなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る電磁波遮蔽膜製造用インクの一実施例を示した図である。
【図2】本発明に係るディスプレイ装置の製造方法のうち電磁波遮蔽膜製造工程の一実施例を示したフローチャートである。
【図3】オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第1実施例を示した図である。
【図4A】オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第2実施例を示した図である。
【図4B】オフセット法による電磁波遮蔽膜製造方法の第2実施例を示した図である。
【図5】オフセット工程後のブランケットを示した図である。
【図6A】従来の電磁波遮蔽膜の機能を示した図である。
【図6B】本発明に係る電磁波遮蔽膜の機能を示した図である。
【図7A】本発明に係るディスプレイパネルの前面フィルタの一実施例を示した断面図である。
【図7B】本発明に係るディスプレイパネルの前面フィルタの一実施例を示した平面図である。
【図8】本発明に係るディスプレイ装置の製造工程の一実施例を示した図である。
【図9】本発明に係るディスプレイ装置の製造工程の一実施例を示した図である。
【図10】本発明に係るディスプレイ装置の製造工程の一実施例を示した図である。
【図11】本発明に係るディスプレイ装置の製造工程の一実施例を示した図である。
【図12】本発明に係るディスプレイ装置の製造工程の一実施例を示した図である。
【符号の説明】
【0077】
100 電磁波遮蔽膜製造用インク
110 溶媒
120 導電性物質
130 有機物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
65〜85%の重量比を有する導電性物質と、
10〜30%の重量比を有し、セルロース、アクリル及びビニルのうち少なくとも一つを含む有機物と、
5〜15%の重量比を有し、アルコール及びグリコールアセテートのうち少なくとも一つを含む溶媒と、を含んで構成される電磁波遮蔽膜製造用インク。
【請求項2】
前記導電性物質は、大きさが0.5〜5マイクロメートルのフレーク形状であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽膜製造用インク。
【請求項3】
前記導電性物質は、大きさが0.5〜2マイクロメートルの球形または六面体の形状であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽膜製造用インク。
【請求項4】
前記導電性物質は、銀、銅、アルミニウム、ステンレススチール及びニッケルからなる群から選択される物質であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽膜製造用インク。
【請求項5】
基板上に、モールド印刷法またはオフセット印刷法のうち一つで導電性インク物質を転写する段階と、
前記導電性インク物質を焼成して導電性物質を形成する段階と、を含んで構成されるプラズマディスプレイ装置の製造方法。
【請求項6】
前記導電性物質上に、モールド印刷法またはオフセット印刷法のうち一つで黒色インク物質を転写する段階と、
前記黒色インク物質を焼成して黒色物質を形成する段階と、をさらに含む請求項5に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項7】
前記導電性インク物質は、PETフィルム、ガラス及びディスプレイパネルのうち何れか一つに転写されることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項8】
前記導電性インク物質は、100〜200℃で焼成されることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ装置の製造方法。
【請求項9】
映像情報が表示されるパネルと、
前記パネルの前面に形成されており、表面が曲面の形状をなす導電性物質からなる第1層を備えた電磁波遮蔽膜と、を含んで構成されるディスプレイ装置。
【請求項10】
前記電磁波遮蔽膜は、前記第1層上に形成されており、表面が曲面の形状をなす黒色物質からなる第2層をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のディスプレイ装置。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に接合された樹脂層と、
前記樹脂層上に備えられ、導電性物質がパターニングされて形成された電磁波遮蔽膜と、を含んで構成されることを特徴とするディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項12】
前記基板は、ガラス、フィルムまたはプラズマディスプレイパネルの前面ガラスのうち何れか一つであることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項13】
前記電磁波遮蔽膜は、前記導電性物質上に形成された黒色物質をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項14】
前記導電性物質は、カーボンを含む導電性インクが、樹脂層上に積層されて形成されることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項15】
前記樹脂層は、PDMS、PMMA及びEVAのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項16】
前記樹脂層は、厚さが30〜700マイクロメートルであることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項17】
前記電磁波遮蔽膜は、厚さが20〜200マイクロメートルであることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置の前面フィルタ。
【請求項18】
陰刻が形成されたモールドを準備する段階と、
前記陰刻にインクを注入して電磁波遮蔽膜を形成する段階と、
前記電磁波遮蔽膜上に樹脂層と基板を順に塗布する段階と、
前記樹脂層を乾燥し、前記モールドを分離する段階と、を含んで構成されることを特徴とするディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法。
【請求項19】
前記陰刻は、10〜30マイクロメートルの線幅を有することを特徴とする請求項18に記載のディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法。
【請求項20】
前記陰刻は、それぞれ150〜500マイクロメートルだけ離隔されて形成されることを特徴とする請求項18に記載のディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法。
【請求項21】
前記電磁波遮蔽膜を形成する段階は、
前記陰刻に黒色インクと導電性インクを順に注入することを特徴とする請求項18に記載のディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法。
【請求項22】
前記電磁波遮蔽膜を形成する段階は、
前記陰刻に、カーボンを含む導電性インクを注入することを特徴とする請求項18に記載のディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法。
【請求項23】
前記樹脂層は、50〜300℃で乾燥されることを特徴とする請求項18に記載のディスプレイ装置の前面フィルタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−308697(P2007−308697A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121674(P2007−121674)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】