説明

電磁石ハンドおよびそれを用いたロボットシステム

【課題】箱体内にバラ積み状態で収容されたワークを、中断することなく、干渉なく、一つずつピッキングする。
【解決手段】箱体C内にバラ積み状態で収容された複数の円柱または円筒形状ワークWをピッキングするロボット12を有するロボットシステム10であって、ロボット12は、第1の電磁吸着面20aでワークWの円周面Wpまたは端面Weを電磁吸着する主電磁吸着部20と、先端24に且つ互いに鈍角に配置された第2及び第3の電磁吸着面22a,22bの両方でワークWの円周面Wpを電磁吸着するまたは第2または第3の電磁吸着面22a,22bのいずれか一方でワークWの端面Weを電磁吸着する副電磁吸着部22とを有する電磁石ハンド18を有する。ロボット12は、バラ積み状態の複数のワークWそれぞれを、異なる複数の電磁吸着形態でピッキングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを電磁吸着する電磁石ハンドおよびその電磁石ハンドを介してワークをピッキングするロボットを有するロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、箱体内にバラ積み状態で収容された複数のワークを一つずつロボットによって自動ピッキングすることが行われている。例えば、特許文献1に記載されたロボットシステムでは、ハンドがピッキング対象のワークを把持する前に、ハンドが箱体や他のワークに干渉するか否かが判定される。干渉判定された場合、ピッキング対象のワークを変更するまたは把持形態を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−207989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、箱体内にバラ積み状態で複数の円柱形状ワークが収容されている場合、特許文献1に記載されたロボットシステムでは、ハンドによって把持できないワークが存在する可能性がある。例えば、箱体の角で直立するワーク(箱体の隣接し合う2つの側壁に円周面が接触した直立状態のワーク)をハンドは把持できない。
【0005】
その対処として、特許文献1に記載されたロボットシステムは、ワークをハンドが把持可能な位置および姿勢の状態にするために、ロボットまたは作業者によって複数のワークをかき混ぜる構成または箱体を振動させる構成にされている。
【0006】
しかしながら、ハンドによって複数のワークをかき混ぜる場合、ハンドまたはワークが損傷する可能性がある。また、作業者によって複数のワークをかき混ぜる場合、作業者の安全を確保する必要がある。さらに箱体を振動させる場合、箱体を振動させる振動機構を設ける必要がある。いずれにしても、箱体内のワークをハンドが把持可能な位置および姿勢の状態にするために、ロボットによるワークの自動ピッキングを中断させる必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、箱体内にバラ積み状態で収容された複数の円柱形状ワークを、中断することなく、干渉することなく、箱体の角で直立していても、一つずつ自動ピッキングすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、
円柱または円筒形状ワークを電磁吸着する電磁石ハンドであって、
第1の電磁吸着面でワークの円周面または端面を電磁吸着する主電磁吸着部と、
電磁石ハンドの先端に且つ互いに鈍角に配置された第2および第3の電磁吸着面の両方でワークの円周面を電磁吸着するまたは第2または第3の電磁吸着面のいずれか一方でワークの端面を電磁吸着する副電磁吸着部とを有する、電磁石ハンドが提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、
第1〜第3の電磁吸着面が、電磁石ハンドの先端から、第2、第3、第1の電磁吸着面の順に一方向に並んでいる、第1の態様に記載の電磁石ハンドが提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、
第1および第2の電磁吸着面が平行である、第1または第2の態様に記載の電磁石ハンドが提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、
主電磁吸着部の第1の電磁吸着面でワークの円周面を電磁吸着するときに、主電磁吸着部および副電磁吸着部の並列方向にワークの端面が略向くように該ワークを方向付ける、互いに鈍角に配置された2つのガイド面を備える、第1から第3の態様のいずれか一に記載の電磁石ハンドが提供される。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、
箱体内にバラ積み状態で収容された複数の円柱または円筒形状ワークをピッキングするロボットを有するロボットシステムであって、
ロボットは、
第1の電磁吸着面でワークの円周面または端面を電磁吸着する主電磁吸着部と、先端に且つ互いに鈍角に配置された第2および第3の電磁吸着面の両方でワークの円周面を電磁吸着するまたは第2または第3の電磁吸着面のいずれか一方でワークの端面を電磁吸着する副電磁吸着部とを有する電磁石ハンドを有し、
ロボットが、バラ積み状態の複数のワークそれぞれを、異なる複数の電磁吸着形態でピッキングする、ロボットシステムが提供される。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、
ワークの位置および姿勢を検出するワーク位置姿勢検出手段と、
ワークと、そのワークの高さ位置と、そのワークの姿勢に対応付けされた電磁吸着形態と、その電磁吸着形態を実現するロボットの姿勢との組み合わせを全て算出し、各組み合わせについて所定に点数を付ける組み合わせ点数付け手段と、
最高点の組み合わせを選択し、その選択した組み合わせに基づいて、電磁石ハンドを介してロボットにワークをピッキングさせるロボット制御手段とを有する、第5の態様に記載のロボットシステムが提供される。
【0014】
本発明の第7の態様によれば、
組み合わせ点数付け手段は、ワークの高さ位置が高いほど、電磁吸着形態に予め設定された優先順位が高いほど、ロボットの姿勢の妥当性が高いほど、組み合わせに対して高得点を付ける、第6の態様に記載のロボットシステムが提供される。
【0015】
本発明の第8の態様によれば、
組み合わせに含まれるワークを、その組み合わせに含まれる電磁吸着形態で且つロボットの姿勢でワークを電磁吸着するときに、電磁石ハンドおよびロボットに対する干渉が発生するか否かを判定する干渉判定手段を有し、
ロボット制御手段は、干渉判定手段が干渉を判定した組み合わせを除いた残りから最高点の組み合わせを選択し、その選択した組み合わせに基づいて、ロボットにワークをピッキングさせる、第6または第7の態様に記載のロボットシステムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電磁石ハンドは、箱体内にバラ積み状態で収容された複数の円柱または円筒形状のワークそれぞれを、異なる複数の電磁吸着形態のいずれか一つで電磁吸着することができる。そのため、電磁石ハンドを有するロボットは、箱体内においてあらゆる位置や姿勢をとりうるワークそれぞれを、中断することなく、干渉することなく、箱体の角で直立していても、一つずつ自動ピッキングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る一実施の形態のロボットシステムの構成を概略的に示す図
【図2】本発明に係る一実施の形態の電磁石ハンドの概略的斜視図
【図3】図2に示す電磁石ハンドの異なる複数の電磁吸着形態を示す図
【図4】図2に示す電磁ハンドのさらに異なる複数の電磁吸着形態を示す図
【図5】ピッキング順序を決定する流れを示す図
【図6】ピッキング順序を決定するために算出される組み合わせを説明するための図
【図7】干渉の一例を示す図
【図8】本発明に係る他の実施の形態の電磁石ハンドの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る一実施の形態のロボットシステムの構成を概略的に示している。
【0019】
図1に示すロボットシステム10は、箱体C内にバラ積みされた(異なる姿勢で重なる)複数の円柱形状のワークWを一つずつピッキングし、ピッキングしたワークWを搬送するように構成されている。
【0020】
そのために、ロボットシステム10は、ワークWをピッキングするロボット12と、バラ積み状態のワークWの位置や姿勢を検出するための三次元ビジョンセンサ14と、ロボット12にワークをピッキングさせるコントローラ16とを有する。
【0021】
ロボット12は、例えば6つ関節12a〜12fを備える多関節ロボットであって、その先端に電磁石ハンド18を有する。電磁石ハンド18は、ワークWと接触した後に磁力を発生させることによって該ワークWを電磁吸着し、磁力の発生を停止することによって電磁吸着しているワークWをリリースするように構成されている。なお、関節12a,12d,12fはねじり関節であって、関節12b,12c,12eは曲げ関節である。
【0022】
電磁石ハンド18は、図2に概略的に示すように、ワークWを電磁吸着する主電磁吸着部20と副電磁吸着部22とを備える。
【0023】
電磁石ハンド18の主電磁吸着部20は、1つの電磁吸着面20a(特許請求の範囲の「第1の電磁吸着面」に対応)を備える。
【0024】
電磁石ハンド18の副電磁吸着部22は、電磁石ハンド18の先端24(ロボット12に取り付けられる電磁石ハンド18の部分から遠い側の端)に且つ互いに鈍角に配置された電磁吸着面22a,22b(特許請求の範囲の「第2および第3の電磁吸着面」に対応)を備える。2つの電磁吸着面22a,22bの間の角度は、90度〜180度の範囲、好ましくは約120度にされている。また、電磁吸着面22aは、電磁吸着面20aに対して平行である。
【0025】
電磁石ハンド18はまた、図2に示すように、ツール座標系ΣTが予め定義されている。ツール座標系ΣTの原点Otは、電磁吸着面20aの中心に位置し、Zt軸は電磁吸着面20aに直交する。また、2つの電磁吸着面22a,22bは、Yt軸に対して平行である。さらに、Xt軸の延びる方向は、3つの電磁吸着面20a,22a,22bが並ぶ方向である。
【0026】
加えて、副電磁吸着部22の電磁吸着面22aのXt軸方向長さは、箱体Cの側壁Csに円周面が接触した状態のワークWを2つの電磁吸着面22a,22bの少なくとも一方で電磁吸着できるように、ワークWの端面の直径に比べて小さく設定されている。なお、厳密に言えば、2つの電磁吸着面22a,22bの両方でワークWの円周面を電磁吸着したときに、電磁吸着面22aの外側の端(電磁吸着面22bの反対側の端)と、電磁吸着面22bの外側の端(電磁吸着面22aの反対側の端)との間に、ワークWが存在すればよい。
【0027】
また、主電磁吸着部20と副電滋吸着部22における「主」と「副」は、基本的には主電磁吸着部20を使用し、例外的に主電磁吸着部20が電磁吸着できないワークWに対して副電磁吸着部22を使用するという意味で用いられている。
【0028】
このような電磁石ハンド18は、図3に示すように、電磁吸着し合うワークWの部分または電磁石ハンド18の部分の少なくとも一方が異なる複数の電磁吸着形態でワークWを電磁吸着することができる。
【0029】
図3(A)に示すように、電磁石ハンド18は、主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで、円柱形状ワークWの円周面Wpを、ワークWの端面Weがツール座標系ΣTのXt軸方向に向いた状態で電磁吸着することができる。
【0030】
図3(B)に示すように、電磁石ハンド18は、主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで、円柱形状ワークWの端面Weを電磁吸着することができる。
【0031】
図3(C)に示すように、電磁石ハンド18は、副電磁吸着部22の2つの電磁吸着面22a,22bで、円柱形状ワークWの円周面Wpを電磁吸着することができる。
【0032】
図3(D)に示すように、電磁石ハンド18は、副電磁吸着部22の電磁吸着面22aで円柱形状ワークWの端面Weを電磁吸着することができる。
【0033】
図3(E)に示すように、電磁石ハンド18は、副電磁吸着部22の電磁吸着面22bで円柱形状ワークWの端面Weを電磁吸着することができる。
【0034】
図1に戻り、三次元ビジョンセンサ14は、例えば、バラ積み状態の複数のワークWに対してレーザー光を走査し、各ワークWからの反射光に基づいて、バラ積み状態の複数のワークWそれぞれについて、その形状、位置、および姿勢を検出するように構成されている。また、三次元ビジョンセンサ14は、箱体Cについても、その形状、位置、および姿勢を検出するように構成されている。
【0035】
三次元ビジョンセンサ14はまた、箱体CやワークWそれぞれの形状、位置、および姿勢を、例えば、ロボット12のベースに予め定義されているベース座標系ΣBを基準として検出するように構成されている。さらに、例えば、ワークWの形状中心と略一致する該ワークWの重心(2つの端面Weから等距離の中心軸Wc上の位置の点)のベース座標系ΣBにおける位置を、ワークWの位置として検出する。さらにまた、ワークWの中心軸Wcが延びる方向を、ワークWの姿勢として検出する。
【0036】
また、三次元ビジョンセンサ14は、箱体CやワークWそれぞれについて検出した形状、位置、および姿勢をデータとしてコントローラ16に送信するように構成されている。
【0037】
コントローラ16は、ロボット12を制御することにより、バラ積み状態の複数のワークWを一つずつ電磁石ハンド18を介してロボット12にピッキングさせ、ピッキングしたワークWを異なる場所(図示せず)に搬送させるように構成されている。コントローラ16はまた、三次元ビジョンセンサ14が検出した箱体CやワークWそれぞれの形状、位置、および姿勢に基づいて、バラ積み状態の複数のワークWのピッキング順序を決定するように構成されている。
【0038】
ここからは、コントローラ16が行う、バラ積み状態の複数のワークWのピッキング順序の決定方法について説明する。
【0039】
コントローラ16は、バラ積み状態の複数のワークWのピッキング順序を、電磁石ハンド18のワークWに対する電磁吸着形態を考慮に入れて決定するように構成されている。
【0040】
そのために、バラ積み状態の複数のワークWがとりうる姿勢を予め分類し、その分類されたワークWのとりうる姿勢それぞれに対して、電磁石ハンド18の電磁吸着形態、言い換えるとワークWと接触するときの該ワークWに対する電磁石ハンド18の姿勢が予め設定され、対応付けされている。なお、バラ積み状態のワークWが取りうる姿勢に対して必ず1つのみ電磁吸着形態が対応付けされているわけではなく、少なくとも1つの電磁吸着形態が対応付けされている。
【0041】
ワークWの姿勢に対する電磁吸着形態の対応付けの一例を説明する。
【0042】
まず、前提として、電磁石ハンド18は、主電磁吸着部20の電磁吸着面20aが水平面に対して平行であって且つ下方に向くときの姿勢を基準姿勢としている。
【0043】
ワークWがその中心軸Wcが略水平方向に延びる(例えば、水平面に対する中心軸Wcの傾きが10度より小さい)姿勢の場合、次の複数の電磁吸着形態が予め設定されて、対応付けされている。
【0044】
一つ目の電磁吸着形態として、図3(A)に示すように、ツール座標系ΣTのXt軸がワークWの中心軸Wcに対して略平行になるように基準姿勢からYt軸を中心として回転した姿勢でワークWに接近し、且つ重心WgがYt−Zt平面上に位置するように、電磁石ハンド18は、ワークWの円周面Wpを主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで電磁吸着する。なお、箱体C内にバラ積み状態で収容された複数のワークWの多くは、その中心軸Wcが略水平方向に延びる姿勢であるため、この電磁吸着形態で電磁石ハンド18を介してピッキングされる。
【0045】
また、二つ目の電磁吸着形態として、図3(C)に示すように、ツール座標系ΣTのYt軸がワークWの中心軸Wcに対して略平行になるように基準姿勢からXt軸を中心として回転した姿勢でワークWに接近し、且つ重心WgがXt−Zt平面上に位置するように、電磁石ハンド18は、ワークWの円周面Wpを副電磁吸着部22の2つの電磁吸着面22a,22bで電磁吸着する。この電磁吸着形態により、中心軸Wcが略水平に延びる姿勢であって、且つ円周面Wpが箱体Cの側壁Csに接触した状態のワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0046】
さらにまた、上述の一つ目の電磁吸着形態の変形形態(三つ目の電磁吸着形態)として、図4(A)に示すように、ツール座標系ΣTのXt軸がワークWの中心軸Wcに対して略平行になるように基準姿勢からYt軸を中心として回転し、さらに中心軸Wcを中心として鉛直軸Vに対して角度Δθx回転した姿勢でワークWに接近し、且つ重心WgがYt−Zt平面上に位置するように、電磁石ハンド18は、ワークWの円周面Wpを主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで電磁吸着する。なお、角度Δθxを複数設定してもよく、その場合、電磁吸着形態の数は増える。例えば、Δθx=±5°の電磁吸着形態、Δθx=±10°の電磁吸着形態、Δθx=±15°の電磁吸着形態を設定してもよい。この電磁吸着形態により、中心軸Wcが略水平に延びる姿勢であって、且つ他のワークWによって円周面Wpが部分的(周方向に関して)に覆われているワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0047】
水平面Hに対する中心軸Wcの傾きが10度より大きく45度より小さいワークWの姿勢の場合、次の複数の電磁吸着形態が予め設定されて、対応付けされている。
【0048】
四つ目の電磁吸着形態として、図4(B)に示すように、ツール座標系ΣTのXt軸がワークWの中心軸Wcに対して略平行になるように基準姿勢からYt軸を中心として回転した姿勢でワークWに接近し、且つワークWの重心Wgとツール座標系ΣTの原点Otとの間のXt軸方向距離ΔLxが所定値(例えば、10mm)になるように、電磁石ハンド18は、ワークWの円周面Wpを主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで電磁吸着する。なお、距離ΔLxを複数設定してもよく、その場合、電磁吸着形態の数は増える。例えば、ΔLx=10mmの電磁吸着形態、ΔLx=20mmの電磁吸着形態、ΔLx=30mmの電磁吸着形態を設定してもよい。この電磁吸着形態により、水平面Hに対する中心軸Wcの傾きが10度より大きく45度より小さい姿勢であって、且つ他のワークWによって円周面Wpが部分的(中心軸Wc方向に関して)に覆われているワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0049】
上述の四つ目の電磁吸着形態の変形形態(五つ目の電磁吸着形態)として、ツール座標系ΣTのXt軸がワークWの中心軸Wcに対して略平行になるように基準姿勢からYt軸を中心として回転し、さらに中心軸Wcを中心として鉛直軸Vに対して角度Δθx回転した姿勢でワークWに接近し、且つワークWの重心Wgとツール座標系ΣTの原点Otとの間のXt軸方向距離ΔLxが所定値(例えば、10mm)になるように、電磁石ハンド18は、ワークWの円周面Wpを主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで電磁吸着する。この電磁吸着形態により、水平面Hに対する中心軸Wcの傾きが10度より大きく45度より小さい姿勢であって、且つ他のワークWによって円周面Wpが部分的(周方向および中心軸Wc方向に関して)に覆われているワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0050】
中心軸Wcの水平面Hに対する傾きが45度より大きく75度より小さいワークWの姿勢の場合、次の電磁吸着形態が予め設定されて、対応付けされている。
【0051】
六つ目の電磁吸着形態として、図3(E)に示すように、電磁石ハンド18は、副電磁吸着部22の電磁吸着面22bでワークWの端面Weを電磁吸着する。この電磁吸着形態により、中心軸Wcの水平面Hに対する傾きが45度より大きく75度より小さい姿勢であって、且つ他のワークWによって円周面Wpの略全体が覆われているワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0052】
水平面Hに対する中心軸Wcの傾きが75度より大きいワークWの姿勢の場合、すなわち、ワークWが略直立している状態の場合、次の複数の電磁吸着形態が設定されて、対応付けされている。
【0053】
七つ目の電磁吸着形態として、図3(B)に示すように、電磁石ハンド18は、ワークWの端面Weを主電磁吸着部20の電磁吸着面20aで電磁吸着する。好ましくは、ツール座標系ΣTのZt軸上にワークWの重心Wgが略位置するように、電磁石ハンド18はワークWの端面Weを電磁吸着する。この電磁吸着形態により、箱体Cの側壁Csから離れて略直立するワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0054】
八つ目の電磁吸着形態として、図3(D)に示すように、電磁石ハンド18は、ワークWの端面Weを副電磁吸着部22の電磁吸着面22aで電磁吸着する。この電磁吸着形態により、円周面Wpが箱体Cの側壁Csに接触した状態で略直立するワークWを、電磁石ハンド18を介してピッキングすることが可能になる。
【0055】
このように、バラ積み状態の複数のワークWがとりうる姿勢それぞれに対して、少なくとも一つの電磁吸着形態が予め設定されて、対応付けされている。このような対応付けの情報を、コントローラ16は、電磁吸着形態データとして保持している。
【0056】
なお、上述に挙げられた複数の電磁吸着形態は一例であって、本発明は、これらの電磁吸着形態に限定するものではない。また、ワークWのとりうる姿勢に対する電磁吸着形態の対応付けも一例であって、本発明は、この対応付けに限定するものではない。
【0057】
また、上述したような複数の電磁吸着形態は、予め優先順位が設定されている。優先順位は、例えば、図1に示すロボット12からワークWを受け取る装置(すなわち後工程)によって中心軸Wcが水平方向に延びる姿勢のワークWが要求される場合、中心軸Wcが略水平方向に延びる姿勢でワークWを電磁吸着する、図3(A)、図3(C)、図4(A)、および図4(B)に示す電磁吸着形態の優先順位が、中心軸Wcが略鉛直方向に延びる姿勢でワークWを電磁吸着する図3(B)、図3(D)に示す電磁吸着形態の優先順位に比べて高順位に設定されている。その理由は、図3(B)、図3(D)に示す電磁吸着形態でワークWを電磁吸着した場合、ワークWの搬送途中に、電磁石ハンド18の姿勢を大きく変更するまたはワークWを持ち替える必要があるためである。
【0058】
例えばまた、ワークWの中心軸Wc方向長さが長尺である場合、図4(B)に示すように、ワークWの重心Wgとツール座標系ΣTの原点Otとの間のXt軸方向距離ΔLxが小さい電磁吸着形態ほど、優先順位は高順位に設定される。これは、ロボット12による確実なワークWのピッキングと、ピッキング後のワークWの安全な搬送を考慮したためである。
【0059】
なお、複数の電磁吸着形態の優先順位は、これらの理由に限らず、様々な理由を考慮して設定可能であり、また自由に設定可能である。また、複数の電磁吸着形態の優先順位は、電磁吸着形態優先順位データとして、コントローラ16に保持されている。
【0060】
上述したような、バラ積み状態の複数のワークWがとりうる姿勢それぞれに対して対応付けされた少なくとも一つの電磁吸着形態(電磁吸着形態データ)と、その電磁吸着形態の優先順位(電磁吸着形態優先順位データ)とに基づいて、コントローラ16は、以下の工程を経て、バラ積み状態の複数のワークWのピッキング順序を決定する。ピッキング順序の決定の流れについて、図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図5のフローチャートは、ピッキングする1つのワークを決定するためのフローチャートであり、1つのワークWのピッキングが完了する度に繰り返し実行される。
【0061】
まず、コントローラ16は、ステップS100において、三次元ビジョンセンサ14から、箱体Cやバラ積み状態の複数のワークWそれぞれの形状、位置、および姿勢(データ)を取得する。
【0062】
次に、ステップS110において、コントローラ16は、(1)ワークW、(2)そのワークWの高さ位置、(3)そのワークWの姿勢に対応付けされている電磁吸着形態、および(4)その電磁吸着形態を実現するロボット12の姿勢の組み合わせを全て算出する。
【0063】
図6は、バラ積み状態の複数のワークWに含まれる1つの任意のワークWmに関連する組み合わせの一例を概念的に示している。
【0064】
ワークWmの高さ位置zm(例えば、ベース座標系ΣBにおけるZb座標)は、ステップS100で取得したワークWmの位置に基づいて算出される。
【0065】
ワークWmの姿勢に対応付けされている電磁吸着形態Aは、ステップS100で取得したワークWmの姿勢と、ワークWがとりうる姿勢に対応付けされた電磁吸着形態(電磁吸着形態データ)とに基づいて算出される。図6に電磁吸着形態A1,A4を示すように、少なくとも1つの電磁吸着形態が算出される。
【0066】
例えば、ステップS100で取得したワークWmの姿勢が水平面に対する中心軸Wcの傾きが75度より大きい姿勢の場合、図3(B)に示すような、電磁石ハンド18の主電磁吸着部20(電磁吸着面20a)でワークWmの端面Weを電磁吸着する電磁吸着形態と、図3(D)に示すような、電磁石ハンド18の副電磁吸着部22の電磁吸着面22aでワークWmの端面Weを電磁吸着する電磁吸着形態とが算出される。
【0067】
その電磁吸着形態を実現するロボット12の姿勢Jは、ステップS100で取得したワークWmの形状、位置、および姿勢と、そのワークWmに対する電磁吸着形態に基づいて算出される。
【0068】
具体的には、まず、ワークWmの形状、位置、および姿勢と、そのワークWmに対する電磁吸着形態とに基づいて、電磁石ハンド18の位置および姿勢(例えば、ベース座標系ΣBに対するツール座標系ΣTの位置および姿勢)が算出される。そして、算出された電磁石ハンド18の位置および姿勢に該電磁石ハンド18を配置することができるロボット12の姿勢、すなわち、関節12a〜12fの関節角度が算出される。この場合、図6に示す電磁吸着形態A4のように、1つの電磁吸着形態に対して複数のロボット12の姿勢が算出されることもある。
【0069】
したがって、図6に示すように、ワークWmに関連して複数の組み合わせ(Wm,zm,A1,J1)、(Wm,zm,A4,J2)、(Wm,zm,A4,J3)が算出される。
【0070】
続いて、ステップS120において、コントローラ16は、ステップS110で算出した全ての組み合わせそれぞれに対して所定に点数を付ける。
【0071】
各ワークWに関連する組み合わせ全てに付けられる点数は、組み合わせに含まれるワークWの高さz、電磁吸着形態A、およびロボット12の姿勢Jに基づいて決定される。
【0072】
具体的には、コントローラ16は、ワークWの高さzが高いほど、また、電磁吸着形態Aの優先順位が高いほど、組み合わせに対して高得点を付けるように構成されている。
【0073】
さらに、ロボット12の姿勢Jの妥当性が高いほど、コントローラ16は、その組み合わせに高得点を付けるように構成されている。
【0074】
例えば、組み合わせに含まれるロボット12の姿勢Jが、ロボット12がピッキングしたワークWを装置(後工程)に受け渡すときの姿勢(ねじり関節12aを除いて)に近いほど、その組み合わせにコントローラ16は高得点を付ける。これは、ワークWを電磁石ハンド18で電磁吸着してから装置(後工程)に受け渡すまでの姿勢変更が小さい方が好ましいという考えに基づいている。これに関連する具体的な一例として、後工程によって電磁石ハンド18が基準姿勢(主電磁吸着部20の電磁吸着面20aが水平面に対して平行であって且つ下方に向くときの姿勢)でワークWを受け渡すことが要求される場合、図1に示すねじり関節12dの関節角度が原点(ねじり関節12dを挟む2つの曲げ関節12cと12eの関節軸が互いに平行である状態)に近いほど、そのロボット12の姿勢Jに高得点を付ける。
【0075】
また例えば、組み合わせに含まれるロボット12の姿勢Jが関節にかかる負荷が小さい姿勢(すなわち無理のない姿勢)ほど、コントローラ16は高得点を付ける。例えば、図1に示すような曲げ関節12eとねじり関節12fの間のリンクが鉛直方向に延びる姿勢と、同リンクが水平方向に延びる姿勢とでは、曲げ関節12eにかかる負荷(トルク)が異なり、前者の方が曲げ関節12eにかかる負荷が小さい。
【0076】
さらに例えば、組み合わせに含まれるロボット12の姿勢Jが、予め設定されている、ワークWのピッキングを開始する直前の姿勢(ピッキング開始姿勢)に近いほど、コントローラ16は高得点を付ける。ロボット12は、例えば、図1に示すように、電磁石ハンド18が上述の基準姿勢で箱体C中央の上方に位置する状態であって、且つ関節12a〜12fそれぞれの角度が標準的な角度であるピッキング開始姿勢から、常にワークWのピッキングを開始するようにされている。したがって、電磁石ハンド18がワークWを電磁吸着するときのロボット12の姿勢Jがピッキング開始姿勢に近いほど、その姿勢変更に必要な時間が短くなる、すなわち1つのワークWをピッキングするために必要なサイクルタイムが短縮される。
【0077】
なお、ロボット12の姿勢Jの妥当性は、これらの理由に限らず、様々な理由を考慮して設定可能であり、また自由に設定可能である。
【0078】
組み合わせに付けられる点数は、例えば数式1に示す式を用いて算出される。
【数1】

【0079】
P((W,z,A,J))は、ワークWに関連する組み合わせ(W,z,A,J)の点数を示している。P(A)は、予め設定されている電磁吸着形態の優先順位に基づく点数であり、優先順位が高順位であればあるほど高い点数になるように設定されている。P(z)は、ワークWの高さ位置zに基づく得点であり、高さ位置zが高いほど(他のワークと比較して)高い点数になるように設定されている。P(J)は、ロボット12の姿勢に基づく得点であり、ロボット12の姿勢の妥当性が高いほど高い点数になるように設定されている。この3つの得点P(A),P(z),P(J)の合計により、組み合わせ(W,z,A,J)の得点P((W,z,A,J))が算出される。
【0080】
なお、数式1に示す組み合わせの得点を求める式は、一例である。例えば、3つの得点P(A),P(z),P(J)のいずれかを重み付け(例えば、1より大きい係数をかける)して、組み合わせの点数を算出してもよい。
【0081】
続いて、ステップS130において、コントローラ16は、組み合わせに含まれるワークWを、組み合わせに含まれる電磁吸着形態Aで且つロボット12の姿勢Jで電磁吸着するときに干渉が発生するか否かを判定(チェック)する。
【0082】
例えば、図6に示す組み合わせ(Wm,zm,A1,J1)で言えば、電磁吸着形態A1で且つロボット12の姿勢J1で高さ位置zmに位置するワークWmを電磁石ハンド18によって電磁吸着するときに、ワークWm以外のワークWや箱体Cが電磁石ハンド18やロボット12に対して干渉するか否かを判定する。
【0083】
干渉の判定は、三次元ビジョンセンサ14が検出した箱体CやワークWそれぞれの形状、位置、および姿勢データに基づいてコンピュータ上で行われる。
【0084】
具体的には、コントローラ16は、ステップS100で三次元ビジョンセンサ14から取得した箱体CやワークWそれぞれの形状、位置、および姿勢に基づいて、これらの三次元モデル(点群データ)を作成する。続いて、この箱体Cと複数のワークWの3次元モデルと、予め用意されている電磁石ハンド18を備えるロボット12の三次元モデルとを用いて、コントローラ16は干渉チェックを行う。すなわち、コンピュータ上において、対象のワークWを電磁吸着したときに、例えば、図7(A)に示すように電磁石ハンド18が箱体Cと交差したり、図7(B)に示すように電磁石ハンド18が他のワークWと交差するなどの干渉が発生するか否かを判定する。
【0085】
なお、組み合わせについての干渉判定は、ステップS120で付けられた点数が高い組み合わせから順に行われる。理由は、ステップS120で最高点を付けられた組み合わせについて干渉が発生しないのであれば、後のステップにおいて、そのまま最高点の組み合わせに含まれるワークWを、その組み合わせに含まれる電磁吸着形態Aで且つロボット12の姿勢Jでピッキングするからである(すなわち、最高点に比べて低い点数の組み合わせについて干渉チェックを行う必要がなくなる)。
【0086】
ステップS140において、コントローラ16は、干渉が発生せず且つ最高点が付けられた組み合わせを選択し、その選択した組み合わせに基づいて、ロボット12を制御する。すなわち、選択した組み合わせに含まれるワークWを、その組み合わせに含まれる電磁吸着形態Aで且つロボット12の姿勢Jで電磁石ハンド18を介してロボット12にピッキングさせる。
【0087】
本実施の形態によれば、電磁石ハンド18は、箱体C内にバラ積み状態で収容された複数の円柱形状のワークWそれぞれを、異なる複数の電磁吸着形態のいずれか一つで電磁吸着することができる。そのため、電磁石ハンド18を有するロボット12は、箱体C内においてあらゆる位置や姿勢をとりうるバラ積み状態の複数のワークWを、中断することなく、干渉することなく、箱体Cの角で直立するワークW(箱体Cの隣接し合う2つの側壁Csに円周面Wpが接触した状態のワークW)であっても、一つずつ自動ピッキングすることが可能になる。
【0088】
例えば、箱体Cの隣接し合う2つの側壁Csに円周面Wpが接触した直立状態のワークW、または、図7(A)に示すように中心軸Wcが略鉛直方向に延びる姿勢で且つ円周面Wpが箱体Cの一つの側壁Csに密着しているワークWは、図3(D)に示すように、電磁石ハンド18がその副電磁吸着部22(電磁吸着面22a)でワークWの端面Weを電磁吸着することにより、ピッキングすることができる。また、中心軸Wcが略水平方向に延びる姿勢で且つ円周面Wpが箱体Cに密着しているワークWも、図3(C)に示すように、電磁石ハンド18がその副電磁吸着部22(電磁吸着面22a,22b)でワークWの円周面Wpを電磁吸着することにより、ピッキングすることができる。
【0089】
以上、上述の一実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0090】
例えば、電磁石ハンドは、図2に示すような形状に限らない。
【0091】
図8は、本発明に係る別の実施の形態の電磁石ハンドを示している。図8に示す電磁石ハンド118は、概括的に言えば、図2に示す電磁石ハンド18をツール座標系ΣTのYt軸方向に2つ並列させた構造である。
【0092】
電磁石ハンド118は、ワークWを電磁吸着する主電磁吸着部120と副電磁吸着部122とを備える。主電磁吸着部120は、2つの電磁吸着面120aと、2つの電磁吸着面120bとを備える。2つの電磁吸着面120aは、同一平面上にあって、図2に示す電磁吸着面20aに相当する。ツール座標系ΣTの原点Otは、2つの電磁吸着面120aを含み且つ最小面積の仮想平面Pvの中心に位置し、Zt軸は仮想平面Pvに直交する。
【0093】
主電磁吸着部120の2つの電磁吸着面120bは、仮想平面Pvに対して鋭角に交差し、ツール座標系ΣTのXt軸に平行であって、且つツール座標系ΣTのXt−Zt平面対称の平面である。仮想平面Pvに対する電磁吸着面120bの角度は、30度が好ましい(すなわち、2つの電磁吸着面120bの間の角度は120度が好ましい)。
【0094】
電磁石ハンド118の副電磁吸着部122は、2つの電磁吸着面122aと、2つの電磁吸着面122bとを備える。2つの電磁吸着面122aは、同一平面上にあって、図2に示す電磁石ハンド18の電磁吸着面22aに相当する。2つの電磁吸着面122bは、同一平面上にあって、電磁石ハンド18の電磁吸着面22bに相当する。電磁吸着面122a,122bは互いに鈍角に、好ましくは120度で配置されている。また、電磁吸着面122aは、電磁吸着面120aに対して平行である。
【0095】
また、2つの電磁吸着面122aのXt軸方向長さは、箱体Cの側壁Csに円周面Wpが接触した状態のワークWに電磁石ハンド118が電磁吸着できるように、ワークWの端面Weの直径に比べて小さく設定されている。
【0096】
さらに、副電磁吸着部122の2つの電磁吸着面122aおよび2つの電磁吸着面122bは、ツール座標系ΣTのYt軸に対して平行である。
【0097】
このような電磁石ハンド118は、以下のように、円柱形状ワークWを様々な形態で電磁吸着可能である。
【0098】
電磁石ハンド118は、主電磁吸着部120の2つの電磁吸着面120aで、円柱形状ワークWの端面Weを電磁吸着することができる。
【0099】
電磁石ハンド118は、主電磁吸着部120の2つの電磁吸着面120bで、円柱形状ワークWの円周面Wpを、ワークWの端面Weがツール座標系ΣTのXt軸方向に向いた状態で電磁吸着することができる。
【0100】
電磁石ハンド118は、副電磁吸着部122の2つの電磁吸着面122aと2つの電磁吸着面122bで、円柱形状ワークWの円周面Wpを電磁吸着することができる。
【0101】
電磁石ハンド118は、副電磁吸着部122の2つの電磁吸着面122aで円柱形状ワークWの端面Weを電磁吸着することができる。
【0102】
電磁石ハンド118は、副電磁吸着部122の2つの電磁吸着面122bで円柱形状ワークWの端面weを電磁吸着することができる。
【0103】
電磁石ハンド118はまた、その利点として、図2に示す電磁石ハンド18と比較した場合、軽量である(同一の外形サイズである場合)。
【0104】
電磁石ハンド118はさらに、ツール座標系ΣTのXt軸と平行な2つの電磁吸着面120bがガイド面としても機能するため、図2に示す電磁石ハンド18に比べて、ワークWをその端面WeがXt軸方向に正確に向いた状態で電磁吸着することができる。これにより、後工程によって端面WeがXt軸方向に正確に向いた姿勢のワークWが要求される場合、その要求に応じることができる。
【0105】
なお、図2に示す電磁石ハンド18の場合、例えば、2つの面がXt軸に平行で且つ鈍角のV字面を電磁吸着面20aに形成すれば、機能的には図8に示す電磁石ハンド118と同等になる。また、この場合、電磁石ハンド18は、副電磁吸着部22の電磁吸着面22a,22bをV字面と解釈すれば、異なる姿勢で配置された2つのV字面を備えていると解釈することができる。
【0106】
また、図2に示す電磁石ハンド18の3つの電磁吸着面20a,22a,および22bと、図8に示す電磁石ハンド118の電磁吸着面120a,122a,および122bは連続しているが、本発明はこれに限らない。例えば、図2に示す電磁吸着面22a,22bは、離れていてもその間の角度が鈍角であれば、円柱形状ワークWのその円周面Wpで電磁吸着可能であることは、当業者であれば明らかである。
【0107】
さらに、図2に示す電磁石ハンド18の電磁吸着面20aと22aとが平行であって、また図8に示す電磁石ハンド120aと122aとが平行であるが、本発明はこれに限らない。
【0108】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、図2に示す電磁石ハンド18の3つの電磁吸着面20a,22a,および22bと、図8に示す電磁石ハンド118の電磁吸着面120a,120b、122a、および122bは、平面であるが、本発明はこれに限らない。本発明は、広義には、電磁吸着面が平面である場合と同様の姿勢(電磁石ハンドに対する姿勢)で円柱形状ワークを電磁吸着できるのであれば、電磁吸着面は、例えば凹凸面であってもよい。
【0109】
加えて、本発明は、円柱形状ワークに限らず、円筒形状ワークにも適用可能である。また、円柱形状ワークは、中空であってもよく、また重心が形状中心と異なる位置にあってもよい。円柱形状ワークの重心が形状中心と異なる場合、重心位置に基づいて、ワークがとりうる姿勢に対する電磁吸着形態を設定する必要がある。また、本発明は、一部分が円柱形状または円筒形状のワークにも、適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明に係る電磁石ハンドおよびそれを用いたロボットシステムは、円柱形状ワークを複数の電磁吸着形態でピッキングして搬送することが可能であるため、様々な用途に使用可能である。例えば、複数の搬送先それぞれに異なる姿勢で円柱形状ワークを振り分けるロボットシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
10 ロボットシステム
12 ロボット
18 電磁石ハンド
20 主電磁吸着部
20a 第1の電磁吸着面(電磁吸着面)
22 副電磁吸着部
22a 第2の電磁吸着面(電磁吸着面)
22b 第3の電磁吸着面(電磁吸着面)
24 先端
C 箱体
W ワーク
Wp 円周面
We 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱または円筒形状ワークを電磁吸着する電磁石ハンドであって、
第1の電磁吸着面でワークの円周面または端面を電磁吸着する主電磁吸着部と、
電磁石ハンドの先端に且つ互いに鈍角に配置された第2および第3の電磁吸着面の両方でワークの円周面を電磁吸着するまたは第2または第3の電磁吸着面のいずれか一方でワークの端面を電磁吸着する副電磁吸着部とを有する電磁石ハンド。
【請求項2】
第1〜第3の電磁吸着面が、電磁石ハンドの先端から、第2、第3、第1の電磁吸着面の順に一方向に並んでいる、請求項1に記載の電磁石ハンド。
【請求項3】
第1および第2の電磁吸着面が平行である、請求項1または2に記載の電磁石ハンド。
【請求項4】
主電磁吸着部の第1の電磁吸着面でワークの円周面を電磁吸着するときに、主電磁吸着部および副電磁吸着部の並列方向にワークの端面が略向くように該ワークを方向付ける、互いに鈍角に配置された2つのガイド面を備える、請求項1から3のいずれか一に記載の電磁石ハンド。
【請求項5】
箱体内にバラ積み状態で収容された複数の円柱または円筒形状ワークをピッキングするロボットを有するロボットシステムであって、
ロボットは、
第1の電磁吸着面でワークの円周面または端面を電磁吸着する主電磁吸着部と、先端に且つ互いに鈍角に配置された第2および第3の電磁吸着面の両方でワークの円周面を電磁吸着するまたは第2または第3の電磁吸着面のいずれか一方でワークの端面を電磁吸着する副電磁吸着部とを有する電磁石ハンドを有し、
ロボットが、バラ積み状態の複数のワークそれぞれを、異なる複数の電磁吸着形態でピッキングするロボットシステム。
【請求項6】
ワークの位置および姿勢を検出するワーク位置姿勢検出手段と、
ワークと、そのワークの高さ位置と、そのワークの姿勢に対応付けされた電磁吸着形態と、その電磁吸着形態を実現するロボットの姿勢との組み合わせを全て算出し、各組み合わせについて所定に点数を付ける組み合わせ点数付け手段と、
最高点の組み合わせを選択し、その選択した組み合わせに基づいて、電磁石ハンドを介してロボットにワークをピッキングさせるロボット制御手段とを有する、請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
組み合わせ点数付け手段は、ワークの高さ位置が高いほど、電磁吸着形態に予め設定された優先順位が高いほど、ロボットの姿勢の妥当性が高いほど、組み合わせに対して高得点を付ける、請求項6に記載のロボットシステム。
【請求項8】
組み合わせに含まれるワークを、その組み合わせに含まれる電磁吸着形態で且つロボットの姿勢でワークを電磁吸着するときに、電磁石ハンドおよびロボットに対する干渉が発生するか否かを判定する干渉判定手段を有し、
ロボット制御手段は、干渉判定手段が干渉を判定した組み合わせを除いた残りから最高点の組み合わせを選択し、その選択した組み合わせに基づいて、ロボットにワークをピッキングさせる、請求項6または7に記載のロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−183593(P2012−183593A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46444(P2011−46444)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】