説明

電磁超音波探触子

電磁超音波探触子は、相互に直接隣接し作業面(4)に対して平行になるような形で配置され、実質的に矩形の横断面をもつ少なくとも3つの永久磁石(5、6)を内部に形成する磁気システムを備えた本体(1)を含んでなる。中央磁石(5)は、作業面(4)に対し垂直偏波を形成し、側方磁石(6)は水平偏波を形成し、かつ作業面(4)に向けた中央磁石(5)の磁極と同様の磁極を側方磁石(6)が中央磁石(5)に向けている。集中装置(7)は相互に離れて設置され、作業面に対して最も近い中央磁石の磁極表面と接している。その集中装置の下にはインダクタンスコイル(8)が設けられている。磁石は、直方体または環状に成形され、永久磁石または電磁石、すなわちソレノイドの形で組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査および計測技術装置、より特定的には電磁超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
交番する磁極をもつ環状永久磁石で形成された磁気システムと、少なくとも3つの平坦な誘導性コイルと、強磁性材料の3つの集中装置と、を含む電磁超音波探触子(EMAT)が知られている(ロシア特許第2215939号を参照)。
【0003】
しかしながら、既にある探触子は高い漏れ磁束を有し、これがその感度の低下を引き起こす。この探触子構成においては、磁束の大部分は空気内を通って流れ、作業ゾーン内に所要レベルの磁気誘導を確保できなくするという相当な抵抗を克服している。
【0004】
また、本体と、カバーと、ベースと、互いに直接隣接し外側側表面および内側側表面上に配置された磁極をもつ2つの環状永久磁石および、その端面の一方の上に設置されその内側磁極に対し同様の磁極によって面している1つの丸い永久磁石で形成された磁気システムと、からなるEMATも知られている。このEMATもまた、インダクタンスコイルと、強磁性材料で形成され丸い永久磁石と同軸上に設置された円筒形の集中装置とを含んでなる(ロシア出願第2003120724号を参照)。
【0005】
作業ゾーン内に共通の内側磁極を作り出すことで、既知のEMATは磁気誘導を増大させ、その結果、検査の感度が増強される。
【0006】
しかしながら、この既知のEMATは、10〜12mmに制限された狭い検査ゾーンを有する。検査対象の全表面について連続した検査を行うためには、この対象の周囲上で複数の列の形に複数の探触子を配置しなければならず、その結果、圧延金属探傷用の機器のコストは著しく上昇することになる。
【0007】
また、検査対象の側面に向けられるべき作業面を有する本体と、本体内に配置され永久磁石磁場を形成するための磁気システムと、該磁気システムと連動する磁場集中装置と、探傷パルスを生成し反射パルスを受信するように配置されたインダクタンスコイルと、からなるEMATも知られている。このEMATは、作業面に面している側を除いて、内側に向いた類似の磁極をもつ永久磁石によって全ての側面に取り囲まれた磁心の形をした磁気システムを有する。磁心は、複数の電気工学的鋼板として形成され、対称軸において電気的絶縁および遮音の機能をもつスペーサにより分離されている。磁心の作業部分は、小底辺が作業面に面する台形として形成される。このEMATは、2つのインダクタンスコイルを含んでなり、その1つは探傷用、もう1つは反射パルスの受信用である(RF,U,31305号参照)。
【0008】
EMATのこの変形形態は、プレート端面の切断、フライス加工および洗浄作業、スペーサの製造、塗装およびワニス作業への適用を必要とするため、磁心製造における高い労働投入量が特徴である。周囲上において磁心をとり囲む永久磁石は、それらの継目の場所で、磁気抵抗の増大した部位を作り出し、これが相当な漏れ磁束の発生を引き起こす。
【0009】
その上、この既知のEMATは、上述のものと同様、狭い検査ゾーンを有し、検査対象物体の連続的検査を実現する場合、該検査対象の棒材表面の周囲で一群のEMAPを回転させるための付加的な機器を使用しなければならない。
【特許文献1】ロシア特許第2215939号
【特許文献2】ロシア出願第2003120724号
【特許文献3】RF,U,31305号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、使用時に物体の超音波検査の効率および収益性を増大させることのできる小さな寸法を有すると共に、高感度で、きわめて広い検査帯域を特徴とし得る電磁超音波探触子を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、検査対象の側に向けられるように意図された作業面をもつ本体と、本体内にあり永久磁場を形成するための磁気システムと、磁気システムと協働する、磁場の集中装置と、探傷パルスを形成し反射パルスを受信するのに適合したインダクタンスコイルと、を含んでなる電磁超音波探触子において、本発明によれば、磁気システムが、作業面に対し平行して互いに直接隣接する本体内に配置された矩形横断面をもつ少なくとも3つの永久磁石を含み、中央磁石は作業面に対する垂直偏波を形成し、側方磁石が水平偏波を形成し、かつ中央磁石を作業面に向ける磁極と同様の磁極によって中央磁石に向けられており、各集中装置は、作業面に対しこの磁極の表面に接しており、各集中装置は互いに離れて設置され、作業面に対し最も近くに接しており、インダクタンスコイルが前記集中装置の下に取付けられていることによって、その目的が達成される。
【0012】
磁石は、直方体形状または環状を有することができる。
【0013】
後者の場合、磁石は電磁石−ソレノイドで形成することができる。
【0014】
実施形態の1つにおいては、磁石は、結束具によって締結されたセグメントで形成され得る。
【0015】
漏れ磁束を低減させるためには、強磁性プレートを磁気システムの表面上に設置し、該プレートは、作業面に向いた該表面の反対側にあることが有益である。
【0016】
探触子の感度を増大させるためには、集中装置は好ましくは、化合物を含浸させたカルボニル鉄粉から形成される。
【0017】
磁石材料内において渦電流を誘導する可能性を低減するため、導電性材料のスペーサを、対面する磁石対の各表面と集中装置との間に設けることが有益である。
【0018】
好ましい実施形態においては、集中装置とインダクタンスコイルとの間の空間は、探触子の構造を強化すべく、化合物が充填される。
【0019】
本発明について、特定の実施形態の記述および図面によってさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜3は、ベース2およびカバー3を有する本体1を含む電磁超音波探触子を示し、ベース2の底面は、探触子の作業面4である。磁気システムは、作業面4と平行に互いに直近で隣接して本体1の中に配置された実質的に矩形の横断面をもつ、実施例では少なくとも3つの、永久磁石5、6によって構成された本体1の中に形成される。記載した探触子の実施形態においては、永久磁石5、6は、直方体形状をしている。中央磁石5は垂直偏波を形成し、各側方磁石6は水平偏波を形成し、各該側方磁石6は、作業面4に向いた中央磁石5の磁極と同様の磁極(この場合は「S」極)をもって中央磁石5に対面する。磁場の集中装置7は、相互に予め定められた距離の間隔で配置され、作業面4に対して中央磁石5の直近の表面と接し、集中装置7の下には、インダクタンスコイル8が取付けられており、このインダクタンスコイル8は、探傷用パルスの形成用および検査対象からの反射パルスの受信用である。集中装置7は、例えば、エポキシ樹脂といった化合物が含浸されたカルボニル鉄粉でできている。
【0021】
作業面4に向いた表面とは反対側の磁気システムの表面上に、強磁性材料のプレート9が配置される。作業面4の平面内において、インダクタンスコイル8の下にセラミックプレート10が配置される。集中装置7とインダクタンスコイル8との間の空間には化合物11が充填される。カバー3内にコネクタ12が設置されて、カバー3とベース2は、ネジ13を用いて本体1に締付けられている。
【0022】
図4〜7に示すEMAT実施形態においては、上述のものとは異なり、磁気システムは、環状を有しかつ実施例では非磁性材料の結束具16に囲まれたセグメントの形で作られている3つの永久磁石14、15によって形成される。磁石14、15はまた、一体化された複数の部分として構成することができる。永久環状磁石と電磁石−ソレノイドの両方共、磁石14、15として使用可能である。永久環状磁石14、15は円筒形本体17内に相互に直接隣接して配置され、かくして中央磁石14(図5)は半径方向(横断面では垂直)偏波を形成し、側方磁石15は軸方向(横断面では水平)偏波を形成し、この例では各該側方磁石15は、円筒形状を有する作業面18に向いた中央磁石14の「N」極と同様のN極をもって、中央磁石に対面している。中央磁石14と同心状にセグメント20で形成されたセラミックリング19が、その周囲に沿って規則的間隔で設置されている。インダクタンスコイル8がセグメント20に接着され、集中装置7が、磁石14、15に向いたインダクタンスコイル表面に接着される。EMATのこの実施形態においては、上述のものと同様、インダクタンスコイル8と集中装置7との間の空間には化合物11が充填される。リング19は、溝22が円(図7)内にて規則的な間隔で形成された状態で、中間スリーブ21により円筒形の本体17内に保持される。溝22は内側の凹部23を有し、セグメント20はその内周面に接着される。
【0023】
環状磁石14、15をなす材料内の渦電流はEMAT動作の質に影響を及ぼすことから、この渦電流を防止するため、例えばホイル等の導電性材料からなるスペーサ24が、これらの磁石の表面と、中間スリーブ21の外部表面との間に敷設される。
【0024】
リング19を備えた中間スリーブ21は、端面から、ボルト30、31で本体17に締結される非磁性材料製フランジ25、26、27、28および29によって、固定される。
【0025】
インダクタンスコイル8のリード線32(図4)を敷設するために、中間スリーブ21内には溝22を通して敷設溝33が具備される。さらに、電源に探触子を接続するために、本体17上には電気コネクタ34が設置される。
【0026】
図1〜3に示されたEMAT実施形態は、鋼板、圧延金属等の平坦な物体の超音波品質検査を実現するために最も都合が良い。
【0027】
超音波検査の実際の実施形態においては、探触子は、その作業面4が検査対象の表面に向けられるような形でこの対象の近くに、そして探触子の磁場が、その検査対象の配置域全体を網羅できるような距離のところに、設置される。かくして、磁場は金属内に閉じた状態となる。インダクタンスコイル8は、検査対象内において超音波変動を誘発するような予め定められた周波数の探傷用パルスで励起され、そして探触子磁気システムの永久磁場におけるその変動は、交番磁場へと変換される。この交番磁場はインダクタンスコイル8内にて交流電流を誘発し、これは受信機(図示せず)により電気信号の形で受信される。欠陥のサイズおよび座標は、その欠陥からの反射パルスと基準(探傷用)パルスとの比により判定される。
【0028】
探触子磁気システムの提案された構成は、作業ギャップ「C」内において、中央磁石5の下に力線の最大の集中が観察される図8から明らかなように、この中央磁石5の下で最大の誘導を達成する。実際には、調査によれば、磁石5、6により作り出された磁束全体がインダクタンスコイル8の配置域内に集中し、これが超音波検査において欠陥から反射される信号の高いレベルを達成する。
【0029】
カルボニル鉄粉を集中装置7に適用することにより、信号を歪ませることになるその中での渦電流をなくす。
【0030】
磁石5、6の表面上に強磁性材料プレート9を設置することにより、漏洩による磁束の損失を低減させて、より高レベルの信号の受信を可能にする。
【0031】
実質的にその長さ全体にわたり中央磁石5の下に多数のインダクタンスコイル8を設置することにより、基本的に探触子検査帯域を拡張することができる。
【0032】
図4〜7に示した第2のEMAT実施形態は主として、棒材の超音波検査で使用するためのものである。このEMATは、検査対象35、特に検査中に環状磁石14、15内の開口を通過させられる棒材に対し、インダクタンスコイル8を放射状配置にしたマルチチャンネル構成を提供する。
【0033】
図5から分かるように、検査対象35の表面に対する、永久環状磁石または電磁石−ソレノイドの内側表面上でのインダクタンスコイル8の放射状配置は、該検査対象の事実上100%の(連続)検査の達成を可能にする。特に、該EMATを用いた95mmの直径をもつ棒材の超音波検査においては、本発明に基づき、インダクタンスコイル8によって、円における、全検査域120mmを達成する。
【0034】
その他の直径の棒材の超音波検査のために、設計は同様であるものの、インダクタンスコイルおよび磁石または電磁石−ソレノイドの数およびサイズが異なるEMATを作ることができる。
【0035】
控えを含んで100%を達成する必要がある場合、最初のものと類似であるが、それに対しわずかに違えたもう1つのEMATを、検査対象の進路中にさらに設置することができる。
【0036】
寸法が小さいこのEMAT実施形態は広い検査域を提供し、製造上の理由で1つの平面内に整列させることのできない単一チャネルの4台のEMATを、10台以上相当に置き代え得るものである。
【0037】
このEMAT実施形態は、前述のものと同様、磁石14、15により生成される全ての磁束が、図9および10に例示されたインダクタンスコイル8の下の作業ギャップ「C」内に集中することから、高感度をその特徴としている。
【0038】
このEMAT実施形態のさらにもう1つの利点は、検査対象の棒材表面にEMATを近接させまた検査の完了時にEMATを撤去するために必要とされるトラッキング機構が、棒材検査での超音波検査装置の構成の中にはないという点にある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により実施される電磁超音波探触子は、主として材料および物体、特に高品質圧延金属、鋼板、棒材の超音波非破壊品質検査のための装置において使用する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態の本発明による電磁超音波探触子の上面図である。
【図2】図1と同じ電磁超音波探触子を図1内のラインII−IIに沿った断面図である(上面カバーは条件付きで除去されている)。
【図3】図1と同じ電磁超音波探触子を、図1のラインIII −III に沿った断面図である。
【図4】第2の実施形態での本発明電磁超音波探触子の、図5の矢印Aによる側面図である。
【図5】図4と同じ電磁超音波探触子を、図4のラインV−Vに沿った断面図である。
【図6】図4と同じ電磁超音波探触子を図5内のラインVI−VIに沿った断面図である。
【図7】図5の部分「B」を拡大して示す図である。
【図8】図1〜3に示されるEMAT実施形態についての磁場力線の分布パターンを示す図である。
【図9】該磁気システムは永久磁石をベースとして構築される図4〜7に示されるEMAT実施形態についての磁場力線の分布パターンを示す図である。
【図10】電磁石−ソレノイドをベースとして磁気システムを構成した場合の、図9と同じ磁場力線の分布パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象側に向けた作業面をもつ本体(1)と、本体(1)内にあって永久磁場を形成する磁気システムと、該磁気システムと協働する、磁場の集中装置(7)と、探傷パルスの形成および反射パルスの受信に適合したインダクタンスコイル(8)と、を含んでなる電磁超音波探触子において、前記磁気システムが、作業面(4)に対して平行で相互に直接隣接して本体(1)内に配置されかつ矩形横断面を有する少なくとも3つの永久磁石(5、6)を含み、中央磁石(5)は作業面(4)に対して垂直偏波を形成し、側方磁石(6)は水平偏波を形成し、かつ中央磁石(5)の作業面(4)に向いた磁極と同様の磁極をもって側方磁石(6)が中央磁石(5)に向いており、集中装置(7)は相互に離れて設置されていて、前記作業面に対して最も近接しており、インダクタンスコイル(8)が前記集中装置の下に取付けられていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項2】
磁石(5、6)が、直方体形状を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁超音波探触子。
【請求項3】
磁石(5、6)が、環状を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁超音波探触子。
【請求項4】
磁石が、電磁石−ソレノイドからなることを特徴とする請求項3に記載の電磁超音波探触子。
【請求項5】
磁石(14、15)が、結束具(16)によって締結されたセグメントで形成されることを特徴とする請求項3に記載の電磁超音波探触子。
【請求項6】
強磁性プレート(9)が前記磁気システムの表面上に設置され、該プレートは作業面(4)に向けられた該表面の反対側にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁超音波探触子。
【請求項7】
集中装置(7)が化合物を含浸させたカルボニル鉄粉から形成されることを特徴とする請求項6に記載の電磁超音波探触子。
【請求項8】
導電性材料のスペーサ(24)が、対面する磁石(14、15)の表面と集中装置(7)との間に設置されていることを特徴とする請求項7に記載の電磁超音波探触子。
【請求項9】
集中装置(7)とインダクタンスコイル(8)との間の空間に化合物(11)が充填されることを特徴とする請求項8に記載の電磁超音波探触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−527532(P2007−527532A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500708(P2007−500708)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/RU2005/000047
【国際公開番号】WO2005/083419
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(507004004)
【Fターム(参考)】