説明

電磁駆動装置及び電磁弁

【課題】駆動応答性及び耐久性を向上可能な電磁駆動装置を用いた電磁弁の提供。
【解決手段】吸引部34の径方向厚さは、それよりも絞られた収容部32の径方向厚さに比して厚くなるため、コイル70への通電による発生磁束MFは、可動コア22から収容部32よりも吸引部34へ流れ易くなる。故に、可動コア22と固定コア30とが互いに偏芯する場合においても、可動コア22からの磁束MFを、外周側の収容部32には受け渡し難くして、当該収容部32と往方向Dgにて接続の吸引部34に集中させて受け渡すことができ、可動コア22を外周側の収容部32に押し付けるサイドフォースを減らし、その結果、電磁駆動装置10の駆動応答性と耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁駆動装置及びそれを備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸方向に往復移動する可動体において、コイルへの通電による発生磁束が可動コアを通って固定コアの吸引部に受け渡されることにより、可動コアが吸引部に吸引駆動される電磁駆動装置が、知られている。このような電磁駆動装置は、例えば可動コアを有する可動体の往復移動に応じて、流体の流通するポートが開閉される電磁弁等において、好適に利用されている。
【0003】
さて、電磁駆動装置の一種として特許文献1に開示される装置の固定コアには、可動コアを同軸上に往復移動自在に収容する筒状の収容部が、当該可動コアを往方向へ吸引する吸引部と共に、設けられている。ここで、往方向の吸引部と接続される収容部の外周側には、コイルが設けられていると共に、同収容部の内周面には、可動コアが摺動して軸方向に案内されるようになっている。こうした構成により特許文献1の開示装置では、収容部外周側のコイルへの通電により発生した磁束を、収容部内周側の可動コアに通して、収容部と接続の吸引部に受け渡すことで、軸方向に安定した可動体の移動が可能となるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4569371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の電磁駆動装置では、吸引部と収容部とが同程度の径方向厚さをもって形成されているので、コイルへの通電による発生磁束が吸引部よりも、収容部へ流れて拡散するおそれがある。そのため、本来同軸上に配置されるべき可動コアと固定コアとが互いに偏芯している場合は特に、可動コアから外周側の収容部に磁束が受け渡され易くなり、可動コアから吸引部へと受け渡される磁束が減少することになる。その結果、外周側の収容部に磁束を受け渡す可動コアでは、径方向に作用するサイドフォースが増えるので、当該可動コアを有する可動体の駆動応答性が低下してしまう。また、サイドフォースが増えることにより、可動コアと収容部との摺動摩擦が増大するため、電磁駆動装置の耐久性を阻害してしまう。さらに、磁束の通過密度を高めるべく径方向厚さを増大させる必要のある吸引部に対して、同程度の径方向厚さを収容部が有しているため、当該収容部の外周側コイルの巻き数を増やして吸引力を増大させることは、難しい。こうした吸引力の増大が困難な状況は、可動体についての駆動応答性の向上を図る上においてネックとなるため、望ましくない。
【0006】
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、駆動応答性と耐久性の向上が可能な電磁駆動装置及びそれを備えた電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、可動コアを有し当該可動コアの軸方向に往復移動する可動体と、可動コアを同軸上に往復移動自在に収容する筒状の収容部と、可動コアを軸方向のうち往方向へ吸引する吸引部とを有する固定コアと、収容部の外周側に設けられ通電により磁束を発生するコイルとを備え、コイルの発生磁束が可動コアを通って吸引部に受け渡されることにより、可動コアが吸引部に吸引駆動される電磁駆動装置において、
吸引部は、収容部から往方向へ離間するに従って、外周面が拡径することにより吸引部の径方向厚さを増大させる外周面を形成し、収容部は、吸引部よりも絞られた径方向厚さをもって往方向の吸引部に接続される。
【0008】
このように請求項1に記載の発明において吸引部の径方向厚さは、それよりも絞られた収容部の径方向厚さに比して厚くなるため、コイルへの通電による発生磁束は、可動コアから収容部よりも吸引部へ流れ易くなる。故に、可動コアと固定コアとが互いに偏芯する場合においても、可動コアからの磁束を、外周側の収容部には受け渡し難くして、当該収容部と往方向にて接続の吸引部に集中して受け渡すことができる。その結果、可動コアを外周側の収容部に押し付けるサイドフォースが減るので、当該可動コアを有する可動体の駆動応答性を向上させることが可能となる。また、サイドフォースが減ることにより、可動コアと収容部との摺動摩擦が減るので、電磁駆動装置の耐久性を向上させることも可能となる。
【0009】
さらに請求項1に記載の発明の吸引部では、収容部から往方向への離間に従った外周面の拡径により、径方向厚さの増大が実現されるので、可動コアから受け渡される磁束の通過面積は、当該離間に従って大きくなる。これにより、吸引部における通過磁束の密度を高めて、可動コアを吸引駆動するための吸引力を増強させることができる。また、収容部の径方向厚さが吸引部よりも絞られる分、外周側のコイルの巻き数を増やして発生磁束の密度を高めることで、吸引力を増強させることができる。これらによれば、吸引力を受ける可動コアを有した可動体の駆動応答性を向上させることが、可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、吸引部において外周面の最小径部は、コイルよりも往方向に位置する。この発明において吸引部の外周面は、コイルよりも往方向に位置する最小径部を起点に、往方向への離間に従って拡径するので、当該吸引部の外周側からコイルの位置を外すことができる。これによれば、吸引部の最小径部と接続されることになる収容部の径方向厚さを、可及的に絞り得るので、当該収容部の外周側コイルの巻き数を増やして吸引力を増強させることができる。また、コイルの内周側からは外れることになる吸引部の径方向厚さを、収容部から往方向への離間に従って可及的に増大し得るので、それによっても吸引力を増強させることができる。これらのことから、可動コアを有する可動体についての駆動応答性の向上に貢献可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、吸引部は、可動コアに対し往方向にて対向して当該可動コアを吸引する吸引面を形成し、外周面の最小径部は、軸方向においてコイルと吸引面との間に位置する。この発明において吸引部は、可動コアに対し往方向にて対向する吸引面と、往方向とは反対方向のコイルとの間となる最小径部を起点に、往方向への離間に従って径方向厚さを増大させるので、当該吸引面に近接するほど磁束の通過面積が大きくなる。これによれば、最小径部がコイルよりも往方向に位置することによる上述の作用と相俟って、吸引面による可動コアの吸引力を増強させることができるので、当該可動コアを有する可動体についての駆動応答性の向上に大きく貢献可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、コイルを軸方向に挟んで吸引部と反対側に設けられるリングコアを備え、コイルの発生磁束がリングコアから収容部及び可動コアを通過して吸引部に受け渡される。この発明においてコイルへの通電による発生磁束は、当該コイルを軸方向に挟んで吸引部と反対側のリングコアから、収容部及び可動コアへと通過する。このとき、吸引部よりも絞られた径方向厚さの収容部では、リングコアから受け渡されることになる磁束が軸方向には拡散し難くなるので、可動コアと固定コアが互いに偏芯する場合においても、当該磁束を可動コアへ集中して受け渡すことができる。その結果、可動コアを外周側の収容部へ押し付けるサイドフォースが減るので、当該可動コアを有する可動体についての駆動応答性の向上に貢献可能となる。また、サイドフォースが減ることにより、可動コアと収容部との摺動摩擦が減るので、電磁駆動装置の耐久性の向上にも貢献可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明によると、吸引部において外周面は、収容部から往方向へ離間するに従って漸次拡径する。この発明の吸引部では、収容部から往方向への離間に従って外周面が漸次拡径するので、可動コアから受け渡される磁束は、当該漸次拡径の外周面に沿って通過し易くなる。これによれば、吸引部における通過磁束の密度を高めて、吸引力を増強させることができるので、可動コアを有する可動体についての駆動応答性の向上に貢献可能となる。
【0014】
請求項6に記載の発明によると、吸引部は、収容部から離間するに従って外周面の拡径率が一定又は減少するように、漸次拡径する。この発明の吸引部において、収容部から往方向への離間に従って拡径率が一定又は減少する漸次拡径形態の外周面は、可動コアから受け渡される磁束の通過を滑らかにし得る。これによれば、吸引部における通過磁束の密度を高めて、吸引力を増強させることができるので、可動コアを有する可動体についての駆動応答性の向上に大きく貢献可能となる。
【0015】
請求項7に記載の発明によると、吸引部は、外周面の内周側において可動体を往復移動自在に支持する。ここで、可動コアと固定コアとが偏芯している場合においてサイドフォースは、可動コアの往方向端部を収容部側の吸引部端部により吸引する際に径方向に発生するので、それら端部に集中して作用し易い。しかし、吸引部が外周面の内周側にて往復移動自在に支持する可動体においては、当該支持箇所が、吸引部端部に吸引される可動コアの往方向端部の近傍箇所となるので、サイドフォースの集中により径方向に働く荷重を確実に支えることができる。これによれば、サイドフォースに起因する可動コアと収容部との摺動摩擦を減らし得るので、当該可動コアを有する可動体についての駆動応答性の向上と、耐久性の向上とに貢献可能となる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、電磁駆動装置と、流体が流通するポートを可動体の往復移動に応じて開閉する弁部とを備える。この発明としての電磁弁において電磁駆動装置は、可動体の往復移動に応じて弁部のポートを開閉することで、当該ポートにおける流体流通を制御し得る。ここで電磁駆動装置では、可動コアと固定コアが互いに偏芯する場合でも可動コアへのサイドフォースを低減し得るのみならず、吸引部における通過磁束の密度を高め得ると共にコイルの巻き数を増やし得るので、駆動応答性及び耐久性を向上可能である。したがって、こうした電磁駆動装置により実現される流体流通制御では、高い制御応答性を長きに亘って発揮可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態による電磁弁を示す断面図である。
【図2】図1とは異なる作動状態を示す断面図である。
【図3】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図2の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態による電磁弁の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】図1の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図7】図1の他の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0019】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態による電磁弁1を示している。電磁弁1は、例えば車両用自動変速機の油圧制御装置等を構成する流体制御弁として利用される。電磁駆動装置10と弁部100とを組み合わせてなる電磁弁1は、当該弁部100のポート121,122,123,124,125を開閉することで、それら各ポート121,122,123,124,125における流体流通を制御する。
【0020】
(弁部の説明)
図1,2に示すように、電磁弁1において弁部100は、スリーブ120、スプール110及びリターンスプリング130等を備えている。
【0021】
スリーブ120は、金属により円筒状に形成され、スプール110を外周側から摺動支持している。スリーブ120には、入力ポート121、出力ポート122、フィードバックポート123及び排出ポート124,125が径方向に貫通形成されている。入力ポート121には、図示しないオイル供給源側からの作動油が入力される。出力ポート122は、その出力対象に対して作動油を出力する。フィードバックポート123は、出力ポート122と電磁弁1の外部で連通しており、当該出力ポート122から出力される作動油の一部が入力される。排出ポート124,125は、それぞれ軸方向において隣合うポート122,123からスリーブ120及びスプール110間を通じて漏出する作動油を、図示しないオイルパンへ排出する。
【0022】
スプール110は、金属により円柱状に形成されてスリーブ120の内周側に略同軸上に収容され、軸方向に往復移動自在となっている。スプール110の一端面は、電磁駆動装置10の構成要素のうち後述する可動体20のシャフト24の一端面に、当接している。故に、可動体20の駆動によりスプール110に働く力は、スプール110を電磁駆動装置10とは反対側(ここでは、図1,2の左方向)に押圧する軸力となる。また、スプール110においてスリーブ120により支持されるランド150,152,154のうちランド150,152には、フィードバックポート123から入力される作動油の油圧が働く。ここで、ランド150,152が油圧を受ける受圧面積は相異なっている。故に、フィードバックポート123からの油圧によりスプール110に働く力も、スプール110を電磁駆動装置10とは反対側に押圧する軸力となる。
【0023】
リターンスプリング130は、金属製の圧縮コイルスプリングからなり、スプール110を挟んで電磁駆動装置10とは反対側に配置されている。リターンスプリング130の一端部は、スリーブ120に固定のリテーナ140により係止されている。リターンスプリング130の弾性変形によりスプール110に働く復元力は、スプール110を電磁駆動装置10側(ここでは、図1,2の右方向)に押圧する軸力となる。
【0024】
以上の構成からスプール110は、電磁駆動装置10の可動体20の駆動による軸力と、フィードバックポート123からの油圧による軸力と、リターンスプリング130の復元力による軸力とが釣り合う位置に、図1,2の如く往復移動する。こうしたスプール110の往復移動によって、入力ポート121から出力ポート122へ流通する作動油量が減少または増加するため、出力ポート122から出力される作動油の油圧が上昇または下降することになる。
【0025】
(電磁駆動装置)
図1,2に示すように、電磁弁1において電磁駆動装置10は、可動体20、固定コア30、ヨーク40、リングコア50及びコイル70等を備えている。
【0026】
可動体20は、可動コア22と、当該可動コア22に同軸上に接続されるシャフト24とを有している。可動コア22は、鉄等の磁性材により円筒状に形成されて固定コア30の内周側に収容され、軸方向へ往復移動自在となっている。そこで本実施形態では、可動コア22の軸方向のうち、図1,2の矢印Dgが示す方向を「往方向Dg」定義とし、図1,2の矢印Drが示す方向を「復方向Dr」と定義する。
【0027】
シャフト24は、金属により円柱状に形成され、可動コア22に嵌入固定されている。シャフト24は、往方向Dgの端面をスプール110の端面に当接させることで、後に詳述するように可動コア22に生じる往方向Dgの駆動力を、スプール110へ伝達する。
【0028】
固定コア30は、鉄等の磁性材により円筒状に形成され、収容部32及び吸引部34を軸方向に並んで有している。収容部32は、軸方向に実質一定の内径をもって円筒孔状の支持孔32aを形成することにより、当該可動コア22を軸方向へ往復移動自在に収容して同軸上に摺動支持している。
【0029】
吸引部34は、収容部32に対して往方向Dgに接続されている。吸引部34は、収容部32の支持孔32aと実質同一且つ軸方向に一定の内径をもって円筒孔状の吸引孔34dを形成することにより、当該吸引孔34dに対して可動コア22が摺動状態で同軸上に進入可能となっている。吸引部34は、吸引孔34dの往方向Dgの端部に略垂直に吸引面34aを形成しており、可動コア22に対して当該吸引面34aを往方向Dgにて対向させている。これらの構成により、コイル70の発生する磁束MF(図3の矢印参照)が可動コア22から吸引部34に受け渡されることで、吸引孔34d及び吸引面34aの少なくとも一方との間に吸引力が発生する当該可動コア22は、往方向Dgに吸引されることになる。
【0030】
ヨーク40は、鉄等の磁性材により有底円筒状に形成され、可動コア22、固定コア30、リングコア50及びコイル70等を収容している。ヨーク40の開口部には、固定コア30のうち吸引部34がかしめによって固定されており、それによって、吸引部34とヨーク40とが磁気的に接続されている。
【0031】
リングコア50は、鉄等の磁性材により円環状に形成され、コイル70を軸方向に挟んで吸引部34とは反対側に配置されている。リングコア50は、収容部32の外周側において、コイル70を覆う樹脂絶縁材72との間に弾性部材52を挟持している。リングコア50は、この弾性部材52の復元力を復方向Drへ受けることにより、ヨーク40の底部に押し付けられている。これによりリングコア50は、固定コア30のうち収容部32に対する外周側での軸ずれを低減されているとともに、収容部32とヨーク40との間を磁気的に接続している。
【0032】
コイル70は、エナメル線等の導線が樹脂絶縁材72に巻装されてなり、固定コア30のうち収容部32の外周側に同軸上に配置されている。コイル70は、樹脂絶縁材72に埋設されたターミナル74を通じて通電されることにより、ヨーク40、リングコア50、固定コア30の収容部32、可動コア22及び固定コア30の吸引部34を、図3の矢印の如く順次通過する磁束MFを発生する。その結果、吸引部34と可動コア22との間に働く吸引力は、コイル70への通電電流と共に通過磁束MFの密度が増加することにより、増大する。このような吸引力を受ける可動コア22を一体に有した可動体20は、軸方向のうち収容部32側から吸引部34側へ向かう往方向Dgに、駆動される。なお、図2は、コイル70への通電により可動体20が往方向Dgの吸引部34に吸引駆動された状態を示し、図1は、当該通電の停止により、弁部100のリターンスプリング130から復元力を受ける可動体20が復方向Drへリターン駆動された状態を示している。
【0033】
(特徴)
次に、本発明の第一実施形態の特徴部分について、図3,4に基づき説明する。なお、図3は、図1の部分拡大図として、可動体20が復方向Drへリターン駆動された状態を示し、図4は、図2の部分拡大図として、可動体20が往方向Dgの吸引部34に吸引駆動された状態を示す。
【0034】
固定コア30において特徴部分としての吸引部34は、軸方向のうち収容部32から往方向Dgへ離間するに従って漸次拡径する外周面34bを、吸引孔34dの外周側に同軸上に形成している。ここで、特に本実施形態の外周面34bは、収容部32の外周側のコイル70よりも往方向Dgにて外径が最小となる最小径部34cを起点に、往方向Dgの単位長さに対する外径の変化率である拡径率が同方向Dgにて実質一定となるように、形成されている。このような外周面34bの形成と、先述した軸方向に実質一定外径の吸引孔34dの形成とにより吸引部34は、その径方向の厚さを、収容部32から往方向Dgへ離間するに従って漸次増大させている。それと共に本実施形態の吸引部34では、外周面34bの最小径部34cがコイル70と吸引面34aとの間に位置していることから、当該吸引面34aに対して往方向Dgに近接するほど、径方向厚さの増大により磁束MFの通過面積が大きくなっている。
【0035】
吸引部34はさらに、外周面34bの内周側において吸引面34aよりもさらに内周側へと突出する支持部34eを、円環状に形成している。この支持部34eは、可動体20のうちシャフト24を外周側から同軸上に、往復移動自在に支持している。こうして支持される可動体20の復方向Drの移動端では、図3に示すように、可動コア22の往方向Dgの端部から、最小径部34cを形成する吸引部34の復方向Drの端部までの距離は、コイル70への通電に応じて発生する磁束MFを、可動コア22から吸引部34へ受け渡し可能な程度の距離に設定されている。
【0036】
固定コア30において別の特徴部分としての収容部32は、先述した軸方向に実質一定内径の支持孔32aの外周側に、軸方向に実質一定外径の外周面32bを同軸上に形成している。ここで、特に本実施形態の外周面32bは、吸引部34の外周面34bのうち最小径部34cと実質同一外径に設定されている。これにより、収容部32の径方向厚さは、最小径部34cの形成箇所にて最薄となる吸引部34の径方向厚さよりも、軸方向の全域で絞られた形となっている。それと共に、本実施形態における収容部32の径方向厚さは、可動コア22の径方向厚さと比較しても、薄く設定されている。
【0037】
以上の構成から固定コア30では、吸引部34よりも絞られた収容部32の径方向厚さに比して、当該吸引部34の厚さが厚くなるため、図1の状態からコイル70への通電により発生する磁束MFは、可動コア22から収容部32よりも吸引部34へと流れ易くなる。故に、可動コア22と固定コア30とが互いに偏芯する場合においても、可動コア22からの磁束MFを、外周側の収容部32には受け渡し難くして、当該収容部32とは往方向Dgにて接続の吸引部34に集中して受け渡すことができる。その結果、可動コア22を外周側の収容部32に押し付けるサイドフォースが減るので、当該可動コア22を有する可動体20の駆動応答性を向上させることが可能となる。また、サイドフォースが減ることにより、可動コア22と収容部32との摺動摩擦が減るので、電磁駆動装置10の耐久性を向上させることも可能となる。
【0038】
ここで、可動コア22と固定コア30とが偏芯している場合においてサイドフォースは、可動コア22の往方向Dgの端部を吸引部34の復方向Dr(収容部32側)の端部により吸引する際に径方向に発生するので、それら端部に集中して作用し易い。しかし、吸引部34が外周面34bの内周側の支持部34eにより往復移動自在に支持する可動体20においては、当該支持箇所が、吸引部34の復方向Drの端部に吸引される可動コア22の往方向Dgの端部に対して近傍箇所となる。その結果、サイドフォースの集中により径方向に働く荷重は、当該集中対象の吸引部34の端部にて確実に支えられることになるので、サイドフォースに起因する可動コア22と収容部32との摺動摩擦を減らし得る。したがって、可動コア22を有する可動体20についての駆動応答性の向上と、耐久性の向上とに貢献可能である。
【0039】
さらに、固定コア30において吸引部34よりも絞られた径方向厚さの収容部32では、リングコア50から収容部32へと受け渡されることになるコイル70の発生磁束MFが、軸方向には拡散し難くなる。故に、可動コア22と固定コア30が互いに偏芯する場合においても、リングコア50からの磁束MFを収容部32に略径方向に通過させて、可動コア22へと集中して受け渡すことができる。これによっても、可動コア22を外周側の収容部32へ押し付けるサイドフォースが減るので、可動体20の駆動応答性の向上並びに摺動摩擦の低減による耐久性の向上が可能となる。
【0040】
またさらに、固定コア30の吸引部34では、収容部32から往方向Dgへの離間に従った外周面34bの拡径により径方向厚さの増大が実現されることで、可動コア22から受け渡される磁束MFの通過面積が当該離間に従って大きくなっている。これにより、吸引部34における通過磁束MFの密度を高めて、可動コア22を吸引駆動するための吸引力を増強させることができる。ここで、特に本実施形態の吸引部34では、収容部32から往方向Dgへの離間に従う一定の拡径率での漸次拡径を実現している外周面34bに沿って、磁束MFが滑らかに通過し易いことから、吸引力の増強作用が確実なものとなる。また、本実施形態の吸引部34は、コイル70の内周側から往方向Dgに外れた最小径部34cを起点に、さらに往方向Dgの吸引面34a側へと向かって厚さを増大させているので、吸引力を増強させる磁束MFの通過面積の増大量が可及的に大きくされ得ている。これらによれば、吸引力を受ける可動コア22を有した可動体20の駆動応答性を向上させることが、可能である。
【0041】
加えて固定コア30では、吸引部34がコイル70よりも往方向Dgに位置して、当該コイル70の内周側から確実に外れていることにより、吸引部34に対する収容部32の径方向厚さの絞り量が可及的に大きくされ得ている。これにより、コイル70の巻き数を増やして、コイル70が発生する磁束MF自体の密度を高めることができるので、吸引力のさらなる増強による駆動応答性の向上が可能となるのである。
【0042】
ここまで説明した電磁弁1によれば、駆動応答性及び耐久性の向上された電磁駆動装置10により弁部100における流体流通が制御されるので、当該流体流通についての高い制御応答性を長きに亘って発揮可能となるのである。
【0043】
(第二実施形態)
図5に示すように第二実施形態は、第一実施形態の特徴部分を変形させたものである。第二実施形態の吸引部2034は、軸方向のうち収容部32から往方向Dgへ離間するに従って漸次拡径する外周面2034bにつき、拡径率を当該往方向Dgへの離間に従って減少させている。ここで、外周面2034bの漸次拡径部分のうち最小径部34cから往方向Dgに所定距離離れた箇所に設定される最大径部2034fは、第一実施形態の外周面34bの漸次拡径部分のうち同最大径部に対して、実質同一外径に設定されている。
【0044】
このような外径設定下、収容部32からの往方向Dgへの離間に従って外周面2034bの拡径率が減少する吸引部2034では、図5に二点鎖線で示す第一実施形態の場合よりも、径方向厚さが増大することになる。これによれば、漸次拡径を実現する外周面2034bに沿うことで滑らかに通過し易くなる磁束MFにつき、吸引部2034における通過面積をさらに増大させて、吸引力の増強作用を高めることができる。したがって、吸引力を受ける可動コア22を有した可動体20の駆動応答性を、より効果的に向上させることが可能である。
【0045】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0046】
具体的には、図6に変形例を示すように、固定コア30において吸引部34の外周面34bは、収容部32から往方向Dgへ離間するに従って段階的に拡径することにより、吸引部34の径方向厚さを段階的に増大させるものであってもよい。また、図7に変形例を示すように、吸引部34の外周面34bは、拡径率が往方向Dgへ離間するに従って増加するように、当該方向Dgへの離間に従って漸次拡径して吸引部34の径方向厚さを漸次増大させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 電磁弁、10 電磁駆動装置、20 可動体、22 可動コア、24 シャフト、30 固定コア、32 収容部、32a 支持孔、32b 外周面、34,2034 吸引部、34a 吸引面、34b,2034b 外周面、34c 最小径部、34d 吸引孔、34e 支持部、2034f 最大径部、40 ヨーク、50 リングコア、70 コイル、100 弁部、110 スプール、120 スリーブ、121 入力ポート、122 出力ポート、123 フィードバックポート、124,125排出ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動コアを有し当該可動コアの軸方向に往復移動する可動体と、
前記可動コアを同軸上に往復移動自在に収容する筒状の収容部と、前記可動コアを軸方向のうち往方向へ吸引する吸引部とを有する固定コアと、
前記収容部の外周側に設けられ通電により磁束を発生するコイルとを備え、前記コイルの発生磁束が前記可動コアを通って前記吸引部に受け渡されることにより、前記可動コアが前記吸引部に吸引駆動される電磁駆動装置において、
前記吸引部は、前記収容部から前記往方向へ離間するに従って、外周面が拡径することにより前記吸引部の径方向厚さを増大させる外周面を形成し、
前記収容部は、前記吸引部よりも絞られた径方向厚さをもって前記往方向の前記吸引部に接続されることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記吸引部において前記外周面の最小径部は、前記コイルよりも前記往方向に位置することを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記吸引部は、前記可動コアに対し前記往方向にて対向して当該可動コアを吸引する吸引面を形成し、
前記外周面の最小径部は、軸方向において前記コイルと前記吸引面との間に位置することを特徴とする請求項2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記コイルを軸方向に挟んで前記吸引部と反対側に設けられるリングコアを備え、
前記コイルの発生磁束が前記リングコアから前記収容部及び前記可動コアを通過して前記吸引部に受け渡されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
前記吸引部において前記外周面は、前記収容部から往方向へ離間するに従って漸次拡径することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
前記吸引部は、前記収容部から離間するに従って前記外周面の拡径率が一定又は減少するように、漸次拡径することを特徴とする請求項5に記載の電磁駆動装置。
【請求項7】
前記吸引部は、前記外周面の内周側において前記可動体を往復移動自在に支持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁駆動装置と、
流体が流通するポートを前記可動体の往復移動に応じて開閉する弁部とを備えることを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24380(P2013−24380A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162364(P2011−162364)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】