説明

電線への熱収縮チューブ被覆方法およびワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスの径の差に関わらず、グロメットや樹脂モールドに使用する金型を共用できるようにして、部品コストや設備コストを削減する。
【解決手段】押出成形されたチューブが予め軸線方向に引張され、加熱時に軸線方向に収縮して外径は変化せずに内径が小径化する熱収縮チューブ15−1、15−2を用い、該熱収縮チューブ15−1、15−2をワイヤハーネス10−1、10−2にの外周に取り付けて加熱収縮することにより、熱収縮チューブ15−1、15−2をワイヤハーネス10−1、10−2の外周に密着させると共に、ワイヤハーネス10−1、10−2の径の差に関わらず、チューブ被覆部A1、A2の外径D5、D6は同一径となる。ワイヤハーネス10−1、10−2にはグロメット20が挿通され、チューブ被覆部A1、A2の外周面を電線挿通部21の内周面に密着させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の熱収縮チューブ被覆方法および該方法で熱収縮チューブが被覆された電線を備えたワイヤハーネスに関し、詳しくは、ワイヤハーネスに止水グロメットを装着して車体パネルの貫通穴に挿通固定する場合や、電線接合部を樹脂モールドして防水処理する場合において、熱収縮チューブで電線を被覆しているものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に配索するワイヤハーネスを浸水領域に配索する場合は止水処理を施す必要がある。特に、エンジンルーム側から車体パネルの貫通穴を通して室内側へワイヤハーネスを配索する箇所では、図10に示すように、電線を挿通する小径筒部2と貫通穴に嵌着される拡径筒部3とを連続一体に形成したグロメット1にワイヤハーネスWを挿通し、このグロメット1を貫通穴に装着して貫通穴における止水を図っている。(特開2000−165061号参照)
【0003】
この種の止水用のグロメット1は、小径筒部2の内径をワイヤハーネスWの外径と同径、または、それよりも小さくなるように設定し、小径筒部2の内周面とワイヤハーネスWの外周面とを密着させて止水性を高める必要がある。
【0004】
しかしながら、ワイヤハーネスの径は車種や品番によって多種多様であるため、ワイヤハーネスの径が大きすぎる場合はグロメットを新設せざるを得ない。逆に、ワイヤハーネスの径が小さすぎてグロメット内径との間に隙間が生じる場合は、図10に示すように、ワイヤハーネスWの外周に発泡シート4を巻き付けて小径筒部2に挿通することにより、小径筒部2内で発泡シート4を圧縮変形させて密閉度を高める手法が用いられている。
そのため、ワイヤハーネスの径に応じて、グロメットや発泡シートのサイズも多様に設定して使い分けを行う必要があるため、部品点数が増え、コスト高となる点に問題がある。
【0005】
また、被水箇所に配索される複数の電線を、中間皮剥ぎして端子圧着や溶接等によって接続する場合、図11に示すように、この接続箇所を樹脂でモールドして防水加工を行う場合がある。即ち、電線5と電線6とを中間皮剥ぎして芯線5a、6aを露出させ、該露出部を端子7で加締めて接合し、該接合部を下型8のキャビティ8a内に配置すると共に、下型8のキャビティ8aを挟む両側の位置決め凹部8b、8cに電線5、6の絶縁被覆部5b、6bを載置し、上型9を被せて型締めした後、キャビティ内に樹脂を充填することによって、接合部および芯線露出部を樹脂モールドしている。(特開平7−308010号参照)
【0006】
しかしながら、位置決め凹部8b、8cのサイズよりも電線5、6の絶縁被覆部5b、6bの径が小さければ隙間が生まれ、充填する樹脂が漏れる一方、逆に大きければ、上型9が下型8から浮き上がってしまい、やはり隙間が生じて樹脂が漏れる。そのため、多種多様な電線径に対応するために何種類もの金型を準備して使い分ける必要があるため、設備費がかかるうえ、作業性が悪い点に問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−165061号公報
【特許文献2】特開平7−308010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、被水領域に配索されるワイヤハーネスにグロメットを取り付けて車体パネルの貫通穴に装着固定する場合や、電線接合部をモールド樹脂で防水処理する場合において、止水・防水性能を低下させることなく、部品コスト、設備コストを削減でき、かつ、作業性を向上できる電線への熱収縮チューブ被覆方法および該方法で熱収縮チューブが被覆されたワイヤハーネスを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、第1の発明として、押出成形されたチューブを軸線方向に引張させ、加熱時に軸線方向に収縮して小径化する熱収縮チューブを用い、
1本の電線あるいは複数本の電線を前記熱収縮チューブ内に挿通し、該熱収縮チューブを加熱して、外径を維持した状態で軸線方向に収縮し、該熱収縮チューブの内周面を前記電線あるいは複数の電線群の外周に密着されていることを特徴とする電線への熱収縮チューブ被覆方法を提供している。
【0010】
前記熱収縮チューブは、予め軸線方向に引張させているため、加熱時には、樹脂の形状記憶効果により軸線方向に収縮する。軸線方向に収縮するチューブは、加熱によって内径が収縮し、径方向の収縮量により肉厚の増大し、熱収縮チューブは外径を一定に保持しながら内径を縮小する。また、該熱収縮チューブは、その中空部に挿通している電線群(または1本の電線)の径によって軸線方向の収縮量が異なる。即ち、電線群の外径が小さい場合は、チューブ内径の収縮量が増大するため、それに伴って軸線方向の収縮量も大きくなり、肉厚の増大量も大きくなる。一方、電線群の外径が大きい場合には、チューブ内径の収縮量が小さいため、それに伴って軸線方向の収縮量も小さくなり、肉厚の増大量も小さくなる。これにより、電線群の外径とチューブの内径の差は、熱収縮チューブの肉厚増大量の差で埋められることになる。
このように、本発明で用いる熱収縮チューブは、加熱前後で外径が変化せず、電線群の外径が異なっていても、前記熱収縮チューブで被覆された箇所の外径を同寸に揃えることができる。
また、熱収縮チューブの内周を電線群の外周に密着させることができるため、該熱収縮チューブで被覆した箇所の止水性能を向上させることができる。
【0011】
また、前記電線群は所要間隔をあけた両側を前記熱収縮チューブで被覆すると共に、これら熱収縮チューブに挟まれた区間の電線群を樹脂モールドして、より止水性能を高める場合もある。
【0012】
前記樹脂モールドする場合、前記一対の熱収縮チューブを電線群に10〜40mmの間隔をあけて被せ、
ついで、前記熱収縮チューブを加熱して外径は変化させずに内径を収縮し、前記電線群の外周に密着させ、
ついで、モールド金型の下型のキャビティを挟む両側の位置決め凹部に、前記両側の熱収縮チューブの被覆部分を載置した後に、上型の対向する位置決め凹部を前記熱収縮チューブに被せて型締めし、
ついで、前記モールド金型のキャビティ内に樹脂を充填して、前記熱収縮チューブの被覆部分に挟まれた電線群を樹脂モールドしている。
【0013】
前記金型を用いて電線群を樹脂モールドする場合、前記熱収縮チューブの被覆部分は、電線群の外径の大小に関わらず、同一外径となるように形成されるため、該熱収縮チューブの被覆部分を載置するモールド金型の位置決め凹部のサイズも統一することができる。従って、従来のように、ワイヤハーネス径に応じて何種類もの金型を準備する必要はなく、1種類の金型で多様な径のワイヤハーネスの樹脂モールド加工が可能となるため、設備費を削減できるうえ、作業性も向上する。
【0014】
また、前記熱収縮チューブは、内径が増大する方向に収縮し、強い収縮力で電線群に密集させることができるうえ、熱収縮チューブ被覆箇所の外径が一定化することで、金型の位置決め凹部にも常に正確に密着することができ、モールド加工に粘度の低い樹脂を使用することも可能となる。
【0015】
第2の発明として、前記熱収縮チューブで被覆された電線群を備えたワイヤハーネスを提供している。
【0016】
前記ワイヤハーネスは、車体パネルの貫通穴に装着するグロメットの筒状の電線挿通部に挿通され、該グロメットの電線挿通部の内周面に前記熱収縮チューブの外周面が密着されていることが好ましい。
さらに、前記熱収縮チューブの間を樹脂モールドし、この熱収縮チューブと樹脂モールドで被覆された領域を前記グロメットの電線挿通部に挿通することで、グロメットにおける止水性能を高めることができる。
【0017】
前記のように、熱収縮チューブの外周面とグロメットの電線挿通部の内周面とを密着させてグロメットを装着することにより、室外側から室内へ貫通穴を通じて水が浸入することを防止できるため、従来の発泡シートが不要となる。
【0018】
また、前記熱収縮チューブの被覆箇所は、ワイヤハーネス径の大小に関わらず、同一外径となるように形成されるため、多種多様な径のワイヤハーネスに対して、一種類のグロメット、一種類の熱収縮チューブを共用することができる。そのため、ワイヤハーネスの径に応じてグロメットを新設する必要がないうえ、ワイヤハーネス径に応じて多種類のグロメットや熱収縮チューブを使い分ける必要もないため、部品点数が削減し、コスト低減を図ることができると共に、作業性も向上する。
【0019】
前記熱収縮チューブは、内面にホットメルトなどの接着層を設けたチューブであればなお好適である。ホットメルト付チューブであれば、電線群の外周とチューブとの僅かな隙間をも埋めることができ、止水性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明によれば、軸線方向に収縮する熱収縮チューブを電線群に被覆することにより、該チューブの被覆部分は、チューブの外径を変化させずに内径を収縮してワイヤハーネス外周に密着する。従って、電線群の外径の大小にかかわらず、前記熱収縮チューブの被覆部分の外径を一定寸法に揃えることができる。その結果、該チューブ被覆部分の外周に密着するように装着するグロメットは、異なる径のワイヤハーネスに対しても1種類のグロメットを共用することができる。
同様に、電線群を樹脂モールド加工するときに使用する金型についても、前記熱収縮チューブの被覆部分を金型の位置決め凹部に載置することにより、電線群の外径の大小にかかわらず1種類の金型を共用することができる。
【0021】
このように、前記熱収縮チューブの使用により電線群の外径を統一できるため、グロメッ
トや金型の種類を統合でき、設備費や部品費を削減できると共に、多種類の金型や部品の使い分けが不要となり、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
以下のいずれの実施形態も、自動車のエンジンルームに配索され、車体パネルPの貫通穴Hに挿通されて室内へと配索される電線群を集束したワイヤハーネスと、該ワイヤハーネスを挿通して前記貫通穴Hに装着されるグロメットに本発明を適用している。
【0023】
図1乃至図3は、本発明の第一実施形態に係るワイヤハーネス10−1、10−2および該ワイヤハーネス10−1、10−2を挿通しているグロメット20を示す。
ワイヤハーネス10−1は、多数本の電線11を束ねてなる外径D1の大きいハーネスであり、ワイヤハーネス10−2は、ワイヤハーネス10−2よりも電線本数が少なく外径D2の小さいハーネスである。
【0024】
前記ワイヤハーネス10−1、10−2の外周には、後述のグロメット20の電線挿通部21が取り付けられる箇所に、それぞれ熱収縮チューブ15−1、15−2を外装している。具体的には、前記熱収縮チューブ15−1、15−2をワイヤハーネス10−1、10−2を構成する電線群の外周に取り付けた後、このチューブ被覆箇所を所要温度で加熱し、図3に示すように、チューブ15−1、15−2の内径D3を軸線方向に収縮させてワイヤハーネス10−1、10−2の外周にそれぞれ密着させている。
【0025】
前記熱収縮チューブ15−1、15−2は、押出成形されたポリオレフィン製のチューブで、予め軸線方向に長さL1まで引張した同一形状で同一サイズのものを使用している。
【0026】
即ち、図3に示すように、熱収縮前の熱収縮チューブ15−1、15−2の外径及び内径が同一で肉厚はT1あり、また、軸線方向の長さL1も同一としている。
大径のワイヤハーネス10−1を貫通させた熱収縮チューブ15−1は、加熱時の熱収縮で長さL1からL1’に収縮し、チューブ15−2は長さL1からL1”に収縮する。それに伴い、肉厚T1は、チューブ15−1が肉厚T1’に、チューブ15−2は肉厚T1”へそれぞれ増大する。このとき、大径のワイヤハーネス10−1に取り付けたチューブ15−1の内径はD3からD3’に収縮するが、その収縮量が小さいため、軸線方向の長さL1からL1’への収縮量も小さく、肉厚T1からT1’への増大量も少ない。一方、小径のワイヤハーネス10−2に取り付けたチューブ15−2は内径D3からD3”に収縮し、その収縮量が大きいため、軸線方向の長さL1からL1”への収縮量も大きく、その分、肉厚T1からT1”への増大量が大きくなる。
【0027】
即ち、熱収縮チューブ15−1、15−2の径方向への収縮量は、肉厚増によって埋められ、ワイヤハーネス10−1、10−2の径の差はチューブ15−1、15−2の肉厚増大量の差で埋められるため、熱収縮チューブ15−1、15−2の外径D4は加熱後も変化しない。
【0028】
これにより、大径のワイヤハーネス10−1のチューブ被覆部A1の外径D5と、小径のワイヤハーネス10−2のチューブ被覆部A2の外径D6は、加熱前のチューブ15−1、15−2の外径D4と同一となり、ワイヤハーネス10−1、10−2の外径D1、D2の差に関わらず互いに同一径(D4=D5=D6)となる。
【0029】
なお、前記実施形態では、熱収縮チューブ15−1、15−2の軸線方向の収縮と、該収縮による肉厚の増大により内径が収縮することを明確にするため、熱収縮チューブ15−1、15−2とは熱収縮前で同一形状のものを用いて説明している。
熱収縮チューブ15−1、15−2を前記外径が相違するワイヤハーネス10−1、10−2に被せて後に熱収縮した状態で同一長さとすることが好ましい場合が多い。
この場合には、図4に示すように、小径のワイヤハーネス10−2に被せる熱収縮チューブ15−2の長さを熱収縮チューブ15−1よりも大としておき、熱収縮後において、小径のワイヤハーネス10−2を被覆する熱収縮チューブ15−2と大径のワイヤハーネス10−1を被覆する熱収縮チューブ15−1の長さを同一とすることができる。
【0030】
前記熱収縮チューブ15−1、15−2を加熱収縮させて被覆したワイヤハーネス10−1、10−2に、図2に示すように、グロメット20を取り付けている。
該グロメット20は、ワイヤハーネス10−1、10−2を挿通する小径の電線挿通部21と、該電線挿通部21の先端に連続する拡径筒部22とを、ゴムまたはエストラマーで連続一体に成形してなり、前記電線挿通部21内に前記熱収縮チューブ15−1、15−2の被覆箇所が位置するように取り付けられる。
拡径筒部22の先端側の外周には、前記車体パネルの貫通穴Hの周縁に内接して嵌合係止する環状溝23を周設している。
前記電線挿通部21の内径D7は、図1に示すように、小径のワイヤハーネス10−2の外径D2より大きいが、熱収縮チューブ15−1、15−2の外径D4よりは小径に設定されている。従って、いずれのチューブ被覆部A1、A2の外周にも、グロメット20の電線挿通部21の内周面が密着し、高度な止水性を備えることができる。
【0031】
このように、前記した外径を一定に維持できる熱収縮チューブで被覆したワイヤハーネスであれば、ワイヤハーネスの径が異なっても1種類のグロメットを共用することができる。また、熱収縮チューブの使用によって、従来使用していた発泡シートが不要となるうえ、ワイヤハーネスの径が異なっても1種類の熱収縮チューブを共用できる。
従って、部品種類を統合することができ、コストを削減できると共に、作業性を向上させることができる。
【0032】
図5乃至図9は、本発明の第二実施形態に係るワイヤハーネス10−3、10−4の製造方法を示し、これらワイヤハーネス10−3、10−4はそれぞれ電線群を所要寸法あけて一対の熱収縮チューブで被覆し、これら熱収縮チューブで挟まれた部分を樹脂モールドしている。
ワイヤハーネス10−3は、多数本の電線11を束ねてなる外径D8の大きいハーネスであり、ワイヤハーネス10−4は、ワイヤハーネス10−3よりも電線本数の少ない外径D9の小さいハーネスである。
【0033】
まず、前記ワイヤハーネス10−3は、中間の所要位置で各電線11の絶縁被覆を皮剥ぎして芯線11aを露出させ、この芯線11aの露出部に端子31を圧着して電線11同士を中間スプライス接続している。この端子圧着部を挟んで30mmの間隔をあけた両側の絶縁被覆部に、一対の熱収縮チューブ15−3、15−3を外装する。
同様に、前記小径のワイヤハーネス10−4も、中間皮剥ぎして端子32を圧着して電線11同士を中間スプライスし、この端子圧着部を挟んで30mmの間隔をあけた両側の絶縁被覆部に、一対の熱収縮チューブ15−4、15−4で外装する。
前記熱収縮チューブ15−3、15−4は第1実施形態と同様に、軸線方向に引張した熱収縮チューブであり、外径および内径は同一であるが、長さは熱収縮チューブ15−4を15−3より長くしている。
【0034】
具体的には、前記熱収縮チューブ15−3、15−3をワイヤハーネス10−3の外周に取り付けた後、このチューブ被覆箇所を加熱し、図5に示すように、チューブ15−3、15−3の内径D10を収縮させてワイヤハーネス10−3の外周にそれぞれ密着させている。
同様に、ワイヤハーネス10−4のチューブ被覆箇所を加熱し、図5に示すように、チューブ15−4、15−4の内径D10を収縮させてワイヤハーネス10−4の外周にそれぞれ密着させてている。
【0035】
このとき、熱収縮チューブ15−3、15−4は、前記第一実施形態の熱収縮チューブ15−1、15−2と同様に、加熱によって軸線方向に収縮し、肉厚が増大するため、熱収縮チューブ15−3、15−4の径方向への収縮量は、この肉厚増によって埋められ、ワイヤハーネス10−3、10−4の径D8、D9の差はチューブ15−3、15−4の肉厚増大量の差で埋められるため、熱収縮チューブ15−3、15−4の外径D11は加熱後も変化しない。
また、熱収縮チューブ15−4は小径なワイヤハーネス10−4の外周に密着させるために長さ方向の収縮量は、大径のワイヤハーネス10−3に被覆する熱収縮チューブ15−3より長さ方向の収縮量は大となるが、収縮前の状態で熱収縮チューブ15−4を熱収縮チューブ15−3より長さを大としているため、熱収縮後において、熱収縮チューブ15−4を熱収縮チューブ15−3の長さを同一のL3とすることができる。
【0036】
次に、前記ワイヤハーネス10−3は前記チューブの被覆部A3、A3で挟まれた区間、前記ワイヤハーネス10−4は前記チューブの被覆部A4、A4で挟まれた区間を、それぞれ樹脂モールドして止水加工を施す。
【0037】
前記樹脂モールドに使用する金型40は、図6に示すように下型41と上型42とからなり、下型41には、両側に位置決め凹部41b、41bと連続した同一径からなる断面半円形のキャビティ41aを溝状に凹設し、該キャビティ41aに連続して両端に電線挿通口41c、41cを開口している。上型42も、前記下型41に対応して、両側の位置決め凹部42b、42bと連続一体化したキャビティ42aを凹設し、該キャビティ42aに連続して両端に電線挿通口42c、42cを開口している。
前記キャビティ41a、42aおよび位置決め凹部41b、42bの内径D14は、熱収縮チューブ15−3、15−4の外径D11(=D12、D13)と同径に設定している。
【0038】
次に、前記樹脂モールド加工の手順を説明する。
まず、図6に示すように、下型41の両側の位置決め凹部41bに、ワイヤハーネス10−3の両側のチューブ被覆部A3、A3を載置して、前記キャビティ41a内に端子31の圧着部と芯線11aの露出部を配置する。
ついで、前記両側のチューブ被覆部A3、A3を覆うように上型42を被せて型締めする。
その後、チューブ被覆部A3、A3で挟まれたキャビティ41a、42a内に、上型42の注入口42cから樹脂を充填して固化させ、図8に示すように、チューブ被覆部A3、A3で挟まれた区間を樹脂モールド33する。
同様に、小径のワイヤハーネス10−4も、ワイヤハーネス10−3と同じ前記金型41、42を使って、図8に示すように、前記両側のチューブ被覆部A4、A4で挟まれた区間を樹脂モールド34する。
【0039】
前記方法で製造されたワイヤハーネス10−3、10−4は、熱収縮チューブ15−3、15−4の外径D11が加熱収縮しても変化しないため、大径のワイヤハーネス10−3のチューブ被覆部A3の外径D12と、小径のワイヤハーネス10−4のチューブ被覆部A4の外径D13は、加熱前のチューブ15−3、15−4の外径D11と同一となり、ワイヤハーネス10−3、10−4の外径D8、D9の差に関わらず互いに同一径(D11=D12=D13)となる。
従って、図7に示すように、ワイヤハーネス10−3のチューブ被覆部A3と、ワイヤハーネス10−4のチューブ被覆部A4はいずれも、チューブ外径D11と同一径に内径D14が設定された金型の前記位置決め凹部41b、42bの内周面にも正確に密着する。
【0040】
このように、ワイヤハーネスの多種多様な径に関わらず、一種類の金型を共用して樹脂モールドできるため、設備費を削減できると共に、作業性も向上できる。また、金型とチューブ被覆部A3、A4との密着性が高まるため、粘度の低い樹脂を使用することも可能となる。
【0041】
また、前記方法で製造されたワイヤハーネス10−3は、図8に示すように、一側のチューブ被覆部A3から他側のチューブ被覆部A3まで、樹脂モールド部33と一体化して外径D12の筒状外装部35が形成される。同様に、ワイヤハーネス10−4も、一側のチューブ被覆部A4から他側のチューブ被覆部A4まで、樹脂モールド部34と一体化して外径D13の筒状外装部36が形成される。
前記ワイヤハーネス10−3にグロメットを取り付ける場合、電線挿通部21の内径が熱収縮チューブ15−3の外径D11(=D12、D13)と同径、またはそれよりも小径に設定されているグロメット20であれば、図9に示すように、大径のワイヤハーネス10−3の前記筒状外装部35の外周面に電線挿通部21の内周面を密着させて、高い止水性を備えることができる。
小径のワイヤハーネス10−4も、前記筒状外装部36の外径D13は、大径のワイヤハーネス10−3の筒状外装部35の外径D12と同径であるため、図9示すように、前記グロメット20を共用して、電線挿通部21の内周面を筒状外装部36の外周面に密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)(B)は本発明の第一実施形態に係るワイヤハーネスおよびグロメットを示す側面図である。
【図2】(A)(B)は図1に示す大径のワイヤハーネスと小径のワイヤハーネスにグロメットを挿通した状態を示す断面図である。
【図3】(A)(B)は図1に示す大径のワイヤハーネスと小径のワイヤハーネスへの熱収縮チューブの外装工程を示す説明斜視図である。
【図4】(A)(B)は変形例を示す説明図である。
【図5】(A)(B)は本発明の第二実施形態に係る大径のワイヤハーネスと小径のワイヤハーネスへの熱収縮チューブの外装工程を示す説明斜視図である。
【図6】図6に示すワイヤハーネスの樹脂モールド工程を示す斜視図である。
【図7】(A)(B)は樹脂モールドされた大径ワイヤハーネスと小径のワイヤハーネスの斜視図である。
【図8】(A)(B)は図5に示す工程において、型締めした状態を示す断面図である。
【図9】(A)(B)は樹脂モールドされた大径のワイヤハーネスと小径のワイヤハーネスにグロメットを挿通した状態を示す断面図である。
【図10】従来例の図である。
【図11】従来例の図である。
【符号の説明】
【0043】
10−1〜10−4 ワイヤハーネス
11 電線
15−1〜15−4 熱収縮チューブ
20 グロメット
21 電線挿通部
40 金型
41 下型
42 上型
A1〜A4 チューブ被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形されたチューブを軸線方向に引張させ、加熱時に軸線方向に収縮して小径化する熱収縮チューブを用い、
1本の電線あるいは複数本の電線を前記熱収縮チューブ内に挿通し、該熱収縮チューブを加熱して、外径を維持した状態で軸線方向に収縮し、該熱収縮チューブの内周面を前記電線あるいは複数の電線群の外周に密着させることを特徴とする電線への熱収縮チューブ被覆方法。
【請求項2】
前記一対の熱収縮チューブを電線群に10〜40mmの間隔をあけて被せ、
ついで、前記熱収縮チューブを加熱して外径は変化させずに内径を収縮し、前記電線群の外周に密着させ、
ついで、モールド金型の下型のキャビティを挟む両側の位置決め凹部に、前記両側の熱収縮チューブの被覆部分を載置した後に、上型の対向する位置決め凹部を前記熱収縮チューブに被せて型締めし、
ついで、前記モールド金型のキャビティ内に樹脂を充填して、前記熱収縮チューブの被覆部分に挟まれた電線群を樹脂モールドしていることを特徴とする請求項1に記載の電線への熱収縮チューブ被覆方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法で熱収縮チューブが被覆された電線を備えたワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項3に記載の電線が、車体パネルの貫通穴に装着するグロメットの筒状の電線挿通部に挿通され、該グロメットの電線挿通部の内周面に前記熱収縮チューブの外周面が密着されていることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−257926(P2008−257926A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96901(P2007−96901)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】