電線保護具及びワイヤハーネス
【課題】コルゲートチューブと同様に柔軟性があり、コルゲートチューブを切れ目の両側へ拡げる煩雑な作業を不要とし、電線の外径に応じて用意されるべき種類を少なくでき、電線の一部分のみを露出させる場合にも容易に対応できる電線保護具及びワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス1の電線保護具10は、電線9の両側から組み合わされることにより筒を形成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12を備える。第一カバー部材11は、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材である。第一カバー部材11の両側方の縁部に、内側に開口した溝151を有するフレーム部15が形成されている。第二カバー部材12は、両側方の縁部に、外側に張り出しており、フレーム部15の溝151に嵌め入れられるフランジ部16が形成されている。
【解決手段】ワイヤハーネス1の電線保護具10は、電線9の両側から組み合わされることにより筒を形成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12を備える。第一カバー部材11は、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材である。第一カバー部材11の両側方の縁部に、内側に開口した溝151を有するフレーム部15が形成されている。第二カバー部材12は、両側方の縁部に、外側に張り出しており、フレーム部15の溝151に嵌め入れられるフランジ部16が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の周囲を覆う電線保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、複数の電線の周囲を覆う電線保護具としてコルゲートチューブを備えることが多い。コルゲートチューブは、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有する筒状の部材である。電線は、コルゲートチューブで覆われることにより、振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材との接触することがなくなり、耐久性が高まる。
【0003】
また、コルゲートチューブは、通常、その長手方向全体に渡る一連の切れ目が形成されている。コルゲートチューブは、所定の治具を用いて切れ目の両側へ拡げられることによって長手方向全体に渡る隙間が形成され、電線は、その隙間からコルゲートチューブ内へ挿入される。また、電線が挿入されたコルゲートチューブは、電線が切れ目から外側へはみ出さないように、粘着テープで巻かれることによって筒状に保持される。
【0004】
ところで、電線とコルゲートチューブとの隙間が大き過ぎると、ワイヤハーネスの配線に必要なスペースが無駄に大きくなり、さらに、コルゲートチューブ内で電線が移動して異音が発生するという問題が生じる。そのため、コルゲートチューブは、太さの異なる多くの種類が用意され、保護対象である一本の電線の外径又は複数本の電線全体の外径に応じて、特定の種類のコルゲートチューブが選定される。
【0005】
また、特許文献1に示されたコルゲートチューブは、切れ目の両側の縁部に、相互に掛かり合う引っ掛け爪によって切れ目を塞ぐ状態に保持するロック機構を備える。特許文献1に示されたコルゲートチューブが採用されることにより、ワイヤハーネスの作製においてテーピングの工数が軽減されるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−287330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電線挿入用の切れ目が形成された従来のコルゲートチューブは、電線の挿入のために、治具を用いてコルゲートチューブを切れ目の両側へ拡げる煩雑な作業を要するという問題点を有している。
【0008】
また、従来のコルゲートチューブは、保護対象である電線又は電線束の外径に応じて、非情に多くの種類が用意される必要があるという問題点も有している。
【0009】
また、電線束から一部の電線のみを分岐させたい場合、又は電線の全周方向を覆いたい部分と電線の全周方向における一部の方向のみを覆いたい部分とが併存する場合などにおいて、電線の保護対象範囲における一部分のみを露出させたい場合がある。そのような場合に、従来のコルゲートチューブは、露出させたい部分を切り欠くなどの煩雑な加工が必要となるという問題点を有している。
【0010】
本発明は、コルゲートチューブと同様に柔軟性があり、電線の挿入のために、治具を用いてコルゲートチューブを切れ目の両側へ拡げる煩雑な作業を不要とし、保護対象である電線又は電線束の外径に応じて用意されるべき種類を少なくでき、さらに、電線の保護対象範囲における一部分のみを露出させたい場合に切り欠き加工などの煩雑な加工を必要としない電線保護具及びそのような電線保護具を備えたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電線保護具は、電線の周囲を覆う筒を形成する電線保護具であり、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であり、両側方の縁部に、内側へ開口し長手方向に沿った溝が形成された部分であるフレーム部、及び外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成されフレーム部の溝に嵌め入れられる部分であるフランジ部のうちの一方が形成された第一カバー部材である。
(2)第2の構成要素は、第一カバー部材と組み合わされることにより電線の周囲を覆う筒を形成する部材であり、両側方の縁部に、フレーム部及びフランジ部のうちの他方が形成された第二カバー部材である。
【0012】
また、本発明に係る電線保護具が、1つの第一カバー部材と、第一カバー部材に対してその長手方向における一部を除く部分に組み合わされる、第一カバー部材よりも短い1つ又は複数の第二カバー部材と、を備えることも考えられる。
【0013】
また、本発明に係る電線保護具において、第二カバー部材が、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であることが考えられる。
【0014】
一方、本発明に係る電線保護具において、第二カバー部材が、第一カバー部材が形成する溝を塞ぐ板状の基部と、その基部の両側方の縁部に連なるフレーム部又はフランジ部と、が形成された部材であることも考えられる。
【0015】
また、第二カバー部材の基部は、長手方向において第一カバー部材に対向する内側面又はその反対の外側面の側へ曲がった板状に形成されていることが考えられる。
【0016】
また、本発明に係る電線保護具が、第二カバー部材の基部における第一カバー部材に対向しない外側面に固定され、所定の支持部に取り付けられる取付具をさらに備えることが考えられる。
【0017】
また、本発明は、電線と、以上に示した本発明に係る電線保護具とを備えたワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電線保護具において、第一カバー部材は、蛇腹構造を有する半筒状の部材である。そのため、本発明に係る電線保護具が、1つの第一カバー部材と、その一部を除く部分に組み合わされる短い第二カバー部材とを備える場合、本発明に係る電線保護具は、第二カバー部材が設けられない部分において柔軟性を有する。また、その場合、電線の保護対象範囲における一部分のみが露出する状態となるが、そのような状態を実現するにあたり、第二カバー部材に対する切り欠き加工などの煩雑な加工は不要である。
【0019】
また、第二カバー部材が、第一カバー部材と同様の蛇腹構造を有する場合も、本発明に係る電線保護具は、コルゲートチューブと同様に柔軟性を有することになる。
【0020】
また、本発明に係る電線保護具は、電線の両側から組み合わされる第一カバー部材及び第二カバー部材を備えるため、従来のコルゲートチューブのように、治具を用いて切れ目のある筒状部材を拡げるという煩雑な作業を必要とせずに、電線に対して装着される。即ち、第一カバー部材及び第二カバー部材のうちの一方のフランジ部を他方のフレーム部の溝に嵌め入れるだけで、第一カバー部材及び第二カバー部材は筒状に保持される。
【0021】
さらに、本発明に係る電線保護具は、第一カバー部材が形成する溝の大きさと第二カバー部材の内側面の形状との組合せにより、筒の内側の空間の大きさが定まる。即ち、組合せ可能なN種類の第一カバー部材とM種類の第二カバー部材とが用意されること、即ち、(N+M)種類の部材が用意されることにより、(N×M)通りの太さの電線保護具が用意されることになる。そのため、本発明に係る電線保護具は、従来のコルゲートチューブに比べ、保護対象である電線又は電線束の外径のとり得る範囲が広いほど、用意されるべき部材の種類を少なくできる。
【0022】
また、第二カバー部材が、第一カバー部材における電線が挿入される溝を塞ぐ板状の基部と、フレーム部又はフランジ部と、が形成された部材である場合、第二カバー部材は、蛇腹構造を有する部材とは異なり、撓みの小さな或いはほとんど撓まない部材となる。本発明に係る電線保護具において、そのような第二カバー部材は、柔軟性を有する第一カバー部材及び電線を予め定められた経路に沿って保持することができる。
【0023】
例えば、第二カバー部材の基部が、長手方向において第一カバー部材に対向する内側面又はその反対の外側面の側へ曲がった板状に形成されていれば、第一カバー部材及び電線は、第二カバー部材の第一部分が形成する曲がった経路に沿って保持される。その結果、電線を予め定められた経路に沿って保持するための別個の部材及びその部材をワイヤハーネスに取り付ける工程が不要となる。
【0024】
また、本発明に係る電線保護具が、第二カバー部材の基部に固定された取付具をさらに備えることにより、電線に取り付けられた電線保護具を、予め定められた配線経路の近傍に設けられた支持部に取り付ける作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の分解斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の側面図である。
【図3】ワイヤハーネス1が備える電線保護具10の正断面図である。
【図4】ワイヤハーネス1の正断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aの側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2が備える第二カバー部材の斜視図である。
【図7】ワイヤハーネス2の正断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Aの斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネス2Bが備える第二カバー部材の斜視図である。
【図10】ワイヤハーネス2Bの斜視図である。
【図11】ワイヤハーネス2に適用可能な第二カバー部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、例えば、自動車などの車両に搭載され、バッテリ又はインバータ回路などの電力供給源と電装機器との間、又は複数の電装機器相互間を接続する。
【0027】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。図1から図4に示されるように、ワイヤハーネス1は、1本又は複数本の電線9と、電線保護具10とを備える。また、電線保護具10は、電線9の両側から組み合わされることによって電線9の周囲を覆う筒を形成する2つの部材を備える。以下、2つの部材の一方を第一カバー部材11と称し、他方を第二カバー部材12と称する。なお、図1及び図4において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0028】
<電線>
電線9は、導線が絶縁被覆によって覆われたケーブルであり、例えば、丸ケーブル又はフラットケーブルなどである。また、電線9の端部には、通常、不図示のコネクタが設けられている。電線9は、その周囲に電線保護具10が取り付けられることにより、周囲に存在する物体との接触による破損が防がれる。また、電線9と電線保護具10との間には、電線9の周囲を覆う編組線などのシールド部材が設けられることもある。
【0029】
<電線保護具>
電線保護具10は、電線9の周囲を覆う筒を形成する用具であり、第一カバー部材11及び第二カバー部材12を備えている。第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、電線9の両側から組み合わされることにより、電線9の周囲を覆う筒を形成する。電線保護具10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0030】
<電線保護具:第一カバー部材>
第一カバー部材11は、その長手方向に沿って表面に出っ張り部13とへこみ部14とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。この蛇腹構造により、第一カバー部材11は、その長手方向において湾曲しやすい柔軟性を有している。
【0031】
なお、各図において、出っ張り部13は、第一カバー部材11における外側の周面において相対的に出っ張った部分を示しているが、外側の出っ張り部13の裏側に位置する内側の面は、相対的にへこんで形成されている。同様に、外側のへこみ部14は、第一カバー部材11における外側の周面において相対的にへこんだ部分を示しているが、外側のへこみ部14の裏側に位置する内側の面は、相対的に出っ張って形成されている。
【0032】
第一カバー部材11は、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材である。本実施形態において、第一カバー部材11は、蛇腹式の周面が形成された半円筒状の部材である。しかしながら、第一カバー部材11は、蛇腹式の周面が形成され、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材であれば、他の形状の部材であってもよい。例えば、第一カバー部材11は、蛇腹式の周面が形成された半楕円筒状又は半角柱状の部材であることも考えられる。
【0033】
また、第一カバー部材11における両側方の縁部に、長手方向に沿った溝151が形成された部分であるフレーム部15が形成されている。このフレーム部15の溝151は内側へ開口し、溝151の長手方向における両端は開放端である。このフレーム部15の溝151は、第二カバー部材12の縁部に形成されたフランジ部16が嵌め入れられる溝である。フランジ部16に関する詳細な説明は後に記載されている。
【0034】
なお、図3及び図4は、電線保護具10の長手方向に直交する平面での電線保護具10及びワイヤハーネス1各々の平断面図である。
【0035】
図1及び図2に示される例では、フレーム部15は、第一カバー部材11における両側方の縁部の長手方向全範囲に渡って一連に形成されている。しかしながら、第一カバー部材11における両側方の縁部に、それぞれ長手方向に伸びて形成された複数のフレーム部15が間隔を空けて形成された構成が採用されることも考えられる。複数のフレーム部15が間隔を空けて形成されることにより、第一カバー部材11は、フレーム部15が存在しない部分においてより湾曲しやすい柔軟性を有することになる。
【0036】
<電線保護具:第二カバー部材>
第二カバー部材12は、第一カバー部材11と同様に、その長手方向に沿って表面に出っ張り部13とへこみ部14とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。この蛇腹構造により、第二カバー部材12は、その長手方向において湾曲しやすい柔軟性を有している。
【0037】
第二カバー部材12は、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材である。本実施形態において、第二カバー部材12は、蛇腹式の周面が形成された半円筒状の部材である。しかしながら、第二カバー部材12は、蛇腹式の周面が形成され、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材であれば、他の形状の部材であってもよい。例えば、第二カバー部材12は、蛇腹式の周面が形成された半楕円筒状又は半四角な筒状の部材であることも考えられる。
【0038】
また、第二カバー部材12における両側方の縁部に、筒の外側へ張り出した板状の部分であるフランジ部16が形成されている。また、フランジ部16は、第二カバー部材12の長手方向に沿って伸びた板状に形成されている。このフランジ部16は、第一カバー部材11の縁部に形成されたフレーム部15の溝151に嵌め入れられる部分である。
【0039】
図1及び図2に示される例では、フランジ部16は、第二カバー部材12における両側方の縁部の長手方向全範囲に渡って一連に形成されている。しかしながら、第二カバー部材12における両側方の縁部に、それぞれ長手方向に伸びて形成された複数のフランジ部16が間隔を空けて形成された構成が採用されることも考えられる。複数のフランジ部16が間隔を空けて形成されることにより、第二カバー部材12は、フランジ部16が存在しない部分においてより湾曲しやすい柔軟性を有することになる。
【0040】
図2及び図4に示されるように、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、電線9の両側から組み合わされ、フランジ部16がフレーム部15の溝151に嵌め入れられる。例えば、フランジ部16は、その長手方向における一方の端部が、フレーム部15の溝151における一方の開放端に挿入された後、溝151内で長手方向にスライドされることによって溝151に嵌め入れられる。また、第二カバー部材12における一方の側方のフランジ部16全体が、第一カバー部材11における一方の側方のフレーム部15に挿入された後、第一カバー部材11が幅方向に拡げられつつ、他方の側方のフランジ部16全体が、他方の側方のフレーム部15に挿入されることも考えられる。
【0041】
電線保護具10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、フレーム部15の溝151とフランジ部16との嵌め入れ機構によって筒状に保持される。また、電線保護具10において、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、同等の長さで形成されている。そのため、それらが組み合わせにより構成される電線保護具10は、その長手方向全体に渡って、電線9の周囲を囲う筒状に形成される。なお、電線保護具10において、第一カバー部材11及び第二カバー部材12の一方が他方よりも短く形成されていることも考えられる。
【0042】
<効果>
電線保護具10において、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、蛇腹構造を有する半筒状の部材である。従って、それらの組合せにより構成される電線保護具10は、従来のコルゲートチューブと同様に、長手方向において柔軟性を有する。
【0043】
また、電線保護具10は、電線9の両側から組み合わされる第一カバー部材11及び第二カバー部材12を備えるため、従来のコルゲートチューブのように、治具を用いて切れ目のある筒状部材を拡げるという煩雑な作業を必要とせずに、電線9に対して装着される。従って、電線保護具10を電線9に装着する作業は、従来のコルゲートチューブを電線9に装着する作業よりも容易である。
【0044】
また、電線保護具10は、第一カバー部材11が形成する溝の大きさと第二カバー部材12の内側面の形状との組合せにより、筒の内側の空間の大きさが定まる。即ち、組合せ可能なN種類の第一カバー部材11とM種類の第二カバー部材12とが用意されること、即ち、(N+M)種類の部材が用意されることにより、(N×M)通りの太さの電線保護具10が用意されることになる。そのため、電線保護具10は、従来のコルゲートチューブに比べ、保護対象である1本又は複数の電線9の外径のとり得る範囲が広いほど、用意されるべき部材の種類を少なくできる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1A及びそのワイヤハーネス1Aが備える電線保護具10について説明する。ワイヤハーネス1Aは、ワイヤハーネス1と比較して、第一カバー部材11及び第二カバー部材12の長さ及びそれらの組合せ方のみが異なる。図5において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス1Aにおけるワイヤハーネス1と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図5に示されるように、ワイヤハーネス1Aが備える電線保護具10は、1つの第一カバー部材11と、その1つの第一カバー部材11に対して組み合わされる複数の第二カバー部材12とを備える。複数の第二カバー部材12各々は、その長手方向の長さが第一カバー部材11の長さよりも短く形成されている。
【0047】
また、複数の第二カバー部材12は、1つの第一カバー部材11に対し、その第一カバー部材11の長手方向において間隔を空けて組み合わされる。即ち、第二カバー部材12は、1つの第一カバー部材11に対してその長手方向における一部を除く部分に組み合わされる。
【0048】
ワイヤハーネス1Aにおいて、電線9における第二カバー部材12が設けられた範囲は、全周方向が電線保護具10によって覆われている。一方、電線9における第二カバー部材12が設けられていない範囲は、全周方向における一部の方向において第一カバー部材11により覆われ、その他の方向において露出した状態となっている。
【0049】
<効果>
ワイヤハーネス1Aが採用された場合、ワイヤハーネス1が採用された場合と同様の効果が得られる。さらに、ワイヤハーネス1Aが備える電線保護具10は、電線9の保護対象範囲における一部分のみを露出させたい場合に有効である。例えば、複数の電線9の束から一部の電線9のみを分岐させたい場合、複数の第二カバー部材12の隙間の部分から一部の電線9を分岐させることができる。また、そのような状態を実現するにあたり、第二カバー部材12に対する切り欠き加工などの煩雑な加工は不要である。
【0050】
<第3実施形態>
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2及びそのワイヤハーネス2が備える電線保護具10Aについて説明する。ワイヤハーネス2は、ワイヤハーネス1と比較して、第二カバー部材12がそれとは形状の異なる第二カバー部材12Aに置き換えられた構成を備えている。図6及び図7において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2におけるワイヤハーネス1と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
ワイヤハーネス2における電線保護具10Aは、第一カバー部材11と第二カバー部材12Aとを備える。図6は、第二カバー部材12Aの斜視図である。また、図7は、ワイヤハーネス2の正断面図である。この正断面図は、電線保護具10Aの長手方向に直交する平面での断面図である。
【0052】
第二カバー部材12Aは、それ全体が矩形の平板状に形成されている。この第二カバー部材12Aの両側方の縁部は、第一カバー部材11のフレーム部15の溝151に嵌め入れられるフランジ部16である。また、第二カバー部材12Aにおける両側方の縁部を除いた残りの部分は、第一カバー部材11における電線9が挿入される溝を塞ぐ部分である。以下、その部分のことを基部121と称する。
【0053】
即ち、第二カバー部材12Aは、第一カバー部材11における電線9が挿入される溝を塞ぐ平板状の基部121と、その基部121の両側方の縁部に連なるフランジ部16とが形成された部材の一例である。第二カバー部材12Aのフランジ部16も、第二カバー部材12のフランジ部16と同様に、外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成された部分である。
【0054】
第二カバー部材12Aは、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。また、第二カバー部材12Aは、鉄又はアルミニウムなどの金属の部材であることも考えられる。
【0055】
図7に示されるように、電線保護具10Aを構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12Aは、フレーム部15の溝151とフランジ部16との嵌め入れ機構によって筒状に保持される。なお、図7において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0056】
また、電線保護具10Aにおいて、第一カバー部材11と第二カバー部材12Aとが1対1で組み合わされる場合と、1つの第一カバー部材11に対して複数の第二カバー部材12Aが組み合わされる場合とが考えられる。後者の場合、ワイヤハーネス1Aと同様に、複数の第二カバー部材12A各々は、その長手方向の長さが第一カバー部材11の長さよりも短く形成される。また、複数の第二カバー部材12Aは、1つの第一カバー部材11に対し、その第一カバー部材11の長手方向において間隔を空けて組み合わされる。
【0057】
<効果>
電線保護具10Aにおいて、第一カバー部材11は、蛇腹構造を有する半筒状の部材である。従って、電線保護具10Aは、第二カバー部材12Aが設けられない部分においては、従来のコルゲートチューブと同様に、長手方向において柔軟性を有する。その他、電線保護具10Aが採用されることにより、電線保護具10が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0058】
一方、第二カバー部材12Aは、蛇腹構造を有する第二カバー部材12とは異なり、撓みの小さな或いはほとんど撓まない部材である。従って、電線保護具10Aにおいて、第二カバー部材12Aは、柔軟性を有する第一カバー部材11及び電線9を予め定められた直線経路に沿って保持することができる。
【0059】
また、図7に示されるように、電線保護具10Aは、自動車のボディなどの支持体8における平坦な面に対し、第二カバー部材12Aにおける平板状の基部121が対向する向きで配置されることにより、支持体8との隙間がほとんど生じない状態で敷設される。その結果、配線のスペース効率が向上するとともに、電線保護具10Aが安定した状態で敷設される。
【0060】
<第4実施形態>
次に、図8を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2A及びそのワイヤハーネス2Aが備える電線保護具10Bについて説明する。電線保護具10Bは、図7に示された電線保護具10Aと比較して、クランプ20が追加された構成を備えている。図8において、図6及び図7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Aにおけるワイヤハーネス2と異なる部分についてのみ説明する。図8は、電線保護具10Bを備えるワイヤハーネス2Aの斜視図である。なお、図8において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0061】
ワイヤハーネス2Aにおける電線保護具10Bは、電線保護具10Aと同様に第一カバー部材11と第二カバー部材12Aとを備える。但し、電線保護具10Bにおいて、第二カバー部材12Aの基部121における第一カバー部材11に対向しない側の外側面に、クランプ20が固定されている。
【0062】
クランプ20は、支持体8の取付孔に挿入されることにより、その取付孔の縁部に固定される取付具の一例である。支持体は、例えば、自動車のボディ又はインストルメントパネル内のリンホースなどである。第二カバー部材12A及びクランプ20は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0063】
電線保護具10B及びそれを備えたワイヤハーネス2Aが採用された場合、図7に示される電線保護具10A及びそれを備えたワイヤハーネス2が採用された場合と同様の効果が得られる。さらに、電線保護具10Bが、第二カバー部材12Aの基部121に固定されたクランプ20を備えるため、電線9に取り付けられた電線保護具10Bを、予め定められた配線経路の近傍に設けられた支持部、即ち、支持体8における取付孔の縁部に取り付ける作業が容易となる。
【0064】
なお、電線保護具10Bにおいて、第二カバー部材12Aの基部121に固定される取付具として、クランプ20の他、所定の支持部に形成された突起部又は孔に対して嵌め合わせの機構を構成するブラケットなど、他の取付具が採用されることも考えられる。
【0065】
<第5実施形態>
次に、図9及び図10を参照しつつ、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネス2B及びそのワイヤハーネス2Bが備える電線保護具10Cについて説明する。電線保護具10Cは、図7に示された電線保護具10Aと比較して、第二カバー部材12Aが他の形状の第二カバー部材12Bに置き換えられた構成を備えている。図9及び図10において、図6及び図7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Bにおけるワイヤハーネス2と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
ワイヤハーネス2Aにおける電線保護具10Cは、第一カバー部材11と第二カバー部材12Cとを備える。図9は、第二カバー部材12Bの斜視図である。また、図10は、電線保護具10Cを備えるワイヤハーネス2Bの斜視図である。なお、図10において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0067】
図9に示されるように、第二カバー部材12Bは、曲がった板状に形成されている。この第二カバー部材12Bの両側方の縁部は、第一カバー部材11のフレーム部15の溝151に嵌め入れられるフランジ部16である。また、第二カバー部材12Bにおける両側方の縁部を除いた残りの部分は、第一カバー部材11における電線9が挿入される溝を塞ぐ基部121である。
【0068】
基部121を含む第二カバー部材12Bは、長手方向において第一カバー部材11に対向する側に対して反対側へ、即ち、外側面の側へ曲がった板状に形成されている。図9に示される例では、第二カバー部材12Bは、その長手方向における1箇所に湾曲部17が形成されており、湾曲部17の前後の部分は平板状に形成されている。図9に示される例の他、第二カバー部材12B全体が湾曲した板状であることも考えられる。なお、電線保護具10Cにおける第二カバー部材12Bも、電線保護具10Aにおける第二カバー部材12Aと同様の材料で構成される部材である。
【0069】
図10に示されるように、第一カバー部材11及び第二カバー部材12Bは、第一カバー部材11の両側方のフレーム部15の溝151に、第二カバー部材12Bにおける両側方のフランジ部16が嵌め入れられることにより、筒状に保持される。
【0070】
また、電線保護具10Cにおいて、第一カバー部材11と第二カバー部材12Bとが1対1で組み合わされる場合と、1つの第一カバー部材11に対して複数の第二カバー部材12Bが組み合わされる場合とが考えられる。図10は前者の場合を例示する図である。後者の場合、ワイヤハーネス1Aと同様に、複数の第二カバー部材12B各々は、その長手方向の長さが第一カバー部材11の長さよりも短く形成される。また、複数の第二カバー部材12Bは、1つの第一カバー部材11に対し、その第一カバー部材11の長手方向において間隔を空けて組み合わされる。
【0071】
電線保護具10C及びそれを備えたワイヤハーネス2Aが採用された場合、図7に示される電線保護具10A及びそれを備えたワイヤハーネス2が採用された場合と同様の効果が得られる。但し、第二カバー部材12Bの基部121は曲がって形成されているため、第二カバー部材12Bは、柔軟性を有する第一カバー部材11及び電線9を予め定められた曲線経路に沿って保持することができる。従って、電線保護具10Cは、電線9の配線経路が曲がった経路である場合に採用される。
【0072】
なお、図10に示される例では、第二カバー部材12Bは、第一カバー部材11に対向しない外側面の側へ反った板状に形成されている。しかしながら、第二カバー部材12Bが、第一カバー部材11に対向する内側面の側へ曲がった板状に形成されることも考えられる。例えば、図9に示される第二カバー部材12Bが、図10に示される向きに対して裏返された向きで第一カバー部材11に対して組み合わせられることが考えられる。
【0073】
<その他>
図6及び図7に示された第二カバー部材12Aにおいて、基部121は平板状であるが、第二カバー部材12Aにおける基部121は、平坦ではない板状であることも考えられる。
【0074】
図11は、図7に示されたワイヤハーネス2に適用可能な第二カバー部材の変形例である第二カバー部材12Cの斜視図である。図11に示されるように、第二カバー部材12Cは、第一カバー部材11の溝を塞ぐ基部121が、第一カバー部材11に対向する面において電線9が挿入される溝を形成する半筒状の板であることも考えられる。
【0075】
また、図5、図7、図8及び図10に示された電線保護具10,10A,10B,10Cにおいて、第一カバー部材11における両側方の縁部にフランジ部16が形成され、第二カバー部材12,12A,12Bにおける両側方の縁部にフレーム部15が形成された構成が採用されることも考えられる。
【0076】
なお、以上に示した各実施形態において、第一カバー部材11と第二カバー部材12,12A,12B,12Cとは、フレーム部15とフランジ部16とにより連結されるが、粘着テープによるテーピングが全く不要というわけではない。例えば、第一カバー部材11の両端部分においては、第一カバー部材11を電線9に固定するためのテーピングが必要である。但し、本発明に係るワイヤハーネス1,1A,2,2A,2Bは、フレーム部15及びフランジ部16からなる連結機構を有するため、従来の切れ目が形成されたコルゲートチューブに比べ、テーピングの工数が軽減される。
【符号の説明】
【0077】
1,1A、2,2A,2B ワイヤハーネス
8 支持体
9 電線
10,10A,10B,10C 電線保護具
11 第一カバー部材
12,12A,12B,12C 第二カバー部材
13 出っ張り部
14 へこみ部
15 フレーム部
16 フランジ部
17 湾曲部
20 クランプ
121 第二カバー部材の基部
151 フレーム部の溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の周囲を覆う電線保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、複数の電線の周囲を覆う電線保護具としてコルゲートチューブを備えることが多い。コルゲートチューブは、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有する筒状の部材である。電線は、コルゲートチューブで覆われることにより、振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材との接触することがなくなり、耐久性が高まる。
【0003】
また、コルゲートチューブは、通常、その長手方向全体に渡る一連の切れ目が形成されている。コルゲートチューブは、所定の治具を用いて切れ目の両側へ拡げられることによって長手方向全体に渡る隙間が形成され、電線は、その隙間からコルゲートチューブ内へ挿入される。また、電線が挿入されたコルゲートチューブは、電線が切れ目から外側へはみ出さないように、粘着テープで巻かれることによって筒状に保持される。
【0004】
ところで、電線とコルゲートチューブとの隙間が大き過ぎると、ワイヤハーネスの配線に必要なスペースが無駄に大きくなり、さらに、コルゲートチューブ内で電線が移動して異音が発生するという問題が生じる。そのため、コルゲートチューブは、太さの異なる多くの種類が用意され、保護対象である一本の電線の外径又は複数本の電線全体の外径に応じて、特定の種類のコルゲートチューブが選定される。
【0005】
また、特許文献1に示されたコルゲートチューブは、切れ目の両側の縁部に、相互に掛かり合う引っ掛け爪によって切れ目を塞ぐ状態に保持するロック機構を備える。特許文献1に示されたコルゲートチューブが採用されることにより、ワイヤハーネスの作製においてテーピングの工数が軽減されるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−287330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電線挿入用の切れ目が形成された従来のコルゲートチューブは、電線の挿入のために、治具を用いてコルゲートチューブを切れ目の両側へ拡げる煩雑な作業を要するという問題点を有している。
【0008】
また、従来のコルゲートチューブは、保護対象である電線又は電線束の外径に応じて、非情に多くの種類が用意される必要があるという問題点も有している。
【0009】
また、電線束から一部の電線のみを分岐させたい場合、又は電線の全周方向を覆いたい部分と電線の全周方向における一部の方向のみを覆いたい部分とが併存する場合などにおいて、電線の保護対象範囲における一部分のみを露出させたい場合がある。そのような場合に、従来のコルゲートチューブは、露出させたい部分を切り欠くなどの煩雑な加工が必要となるという問題点を有している。
【0010】
本発明は、コルゲートチューブと同様に柔軟性があり、電線の挿入のために、治具を用いてコルゲートチューブを切れ目の両側へ拡げる煩雑な作業を不要とし、保護対象である電線又は電線束の外径に応じて用意されるべき種類を少なくでき、さらに、電線の保護対象範囲における一部分のみを露出させたい場合に切り欠き加工などの煩雑な加工を必要としない電線保護具及びそのような電線保護具を備えたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電線保護具は、電線の周囲を覆う筒を形成する電線保護具であり、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であり、両側方の縁部に、内側へ開口し長手方向に沿った溝が形成された部分であるフレーム部、及び外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成されフレーム部の溝に嵌め入れられる部分であるフランジ部のうちの一方が形成された第一カバー部材である。
(2)第2の構成要素は、第一カバー部材と組み合わされることにより電線の周囲を覆う筒を形成する部材であり、両側方の縁部に、フレーム部及びフランジ部のうちの他方が形成された第二カバー部材である。
【0012】
また、本発明に係る電線保護具が、1つの第一カバー部材と、第一カバー部材に対してその長手方向における一部を除く部分に組み合わされる、第一カバー部材よりも短い1つ又は複数の第二カバー部材と、を備えることも考えられる。
【0013】
また、本発明に係る電線保護具において、第二カバー部材が、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であることが考えられる。
【0014】
一方、本発明に係る電線保護具において、第二カバー部材が、第一カバー部材が形成する溝を塞ぐ板状の基部と、その基部の両側方の縁部に連なるフレーム部又はフランジ部と、が形成された部材であることも考えられる。
【0015】
また、第二カバー部材の基部は、長手方向において第一カバー部材に対向する内側面又はその反対の外側面の側へ曲がった板状に形成されていることが考えられる。
【0016】
また、本発明に係る電線保護具が、第二カバー部材の基部における第一カバー部材に対向しない外側面に固定され、所定の支持部に取り付けられる取付具をさらに備えることが考えられる。
【0017】
また、本発明は、電線と、以上に示した本発明に係る電線保護具とを備えたワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電線保護具において、第一カバー部材は、蛇腹構造を有する半筒状の部材である。そのため、本発明に係る電線保護具が、1つの第一カバー部材と、その一部を除く部分に組み合わされる短い第二カバー部材とを備える場合、本発明に係る電線保護具は、第二カバー部材が設けられない部分において柔軟性を有する。また、その場合、電線の保護対象範囲における一部分のみが露出する状態となるが、そのような状態を実現するにあたり、第二カバー部材に対する切り欠き加工などの煩雑な加工は不要である。
【0019】
また、第二カバー部材が、第一カバー部材と同様の蛇腹構造を有する場合も、本発明に係る電線保護具は、コルゲートチューブと同様に柔軟性を有することになる。
【0020】
また、本発明に係る電線保護具は、電線の両側から組み合わされる第一カバー部材及び第二カバー部材を備えるため、従来のコルゲートチューブのように、治具を用いて切れ目のある筒状部材を拡げるという煩雑な作業を必要とせずに、電線に対して装着される。即ち、第一カバー部材及び第二カバー部材のうちの一方のフランジ部を他方のフレーム部の溝に嵌め入れるだけで、第一カバー部材及び第二カバー部材は筒状に保持される。
【0021】
さらに、本発明に係る電線保護具は、第一カバー部材が形成する溝の大きさと第二カバー部材の内側面の形状との組合せにより、筒の内側の空間の大きさが定まる。即ち、組合せ可能なN種類の第一カバー部材とM種類の第二カバー部材とが用意されること、即ち、(N+M)種類の部材が用意されることにより、(N×M)通りの太さの電線保護具が用意されることになる。そのため、本発明に係る電線保護具は、従来のコルゲートチューブに比べ、保護対象である電線又は電線束の外径のとり得る範囲が広いほど、用意されるべき部材の種類を少なくできる。
【0022】
また、第二カバー部材が、第一カバー部材における電線が挿入される溝を塞ぐ板状の基部と、フレーム部又はフランジ部と、が形成された部材である場合、第二カバー部材は、蛇腹構造を有する部材とは異なり、撓みの小さな或いはほとんど撓まない部材となる。本発明に係る電線保護具において、そのような第二カバー部材は、柔軟性を有する第一カバー部材及び電線を予め定められた経路に沿って保持することができる。
【0023】
例えば、第二カバー部材の基部が、長手方向において第一カバー部材に対向する内側面又はその反対の外側面の側へ曲がった板状に形成されていれば、第一カバー部材及び電線は、第二カバー部材の第一部分が形成する曲がった経路に沿って保持される。その結果、電線を予め定められた経路に沿って保持するための別個の部材及びその部材をワイヤハーネスに取り付ける工程が不要となる。
【0024】
また、本発明に係る電線保護具が、第二カバー部材の基部に固定された取付具をさらに備えることにより、電線に取り付けられた電線保護具を、予め定められた配線経路の近傍に設けられた支持部に取り付ける作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の分解斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の側面図である。
【図3】ワイヤハーネス1が備える電線保護具10の正断面図である。
【図4】ワイヤハーネス1の正断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aの側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2が備える第二カバー部材の斜視図である。
【図7】ワイヤハーネス2の正断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Aの斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネス2Bが備える第二カバー部材の斜視図である。
【図10】ワイヤハーネス2Bの斜視図である。
【図11】ワイヤハーネス2に適用可能な第二カバー部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、例えば、自動車などの車両に搭載され、バッテリ又はインバータ回路などの電力供給源と電装機器との間、又は複数の電装機器相互間を接続する。
【0027】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。図1から図4に示されるように、ワイヤハーネス1は、1本又は複数本の電線9と、電線保護具10とを備える。また、電線保護具10は、電線9の両側から組み合わされることによって電線9の周囲を覆う筒を形成する2つの部材を備える。以下、2つの部材の一方を第一カバー部材11と称し、他方を第二カバー部材12と称する。なお、図1及び図4において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0028】
<電線>
電線9は、導線が絶縁被覆によって覆われたケーブルであり、例えば、丸ケーブル又はフラットケーブルなどである。また、電線9の端部には、通常、不図示のコネクタが設けられている。電線9は、その周囲に電線保護具10が取り付けられることにより、周囲に存在する物体との接触による破損が防がれる。また、電線9と電線保護具10との間には、電線9の周囲を覆う編組線などのシールド部材が設けられることもある。
【0029】
<電線保護具>
電線保護具10は、電線9の周囲を覆う筒を形成する用具であり、第一カバー部材11及び第二カバー部材12を備えている。第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、電線9の両側から組み合わされることにより、電線9の周囲を覆う筒を形成する。電線保護具10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0030】
<電線保護具:第一カバー部材>
第一カバー部材11は、その長手方向に沿って表面に出っ張り部13とへこみ部14とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。この蛇腹構造により、第一カバー部材11は、その長手方向において湾曲しやすい柔軟性を有している。
【0031】
なお、各図において、出っ張り部13は、第一カバー部材11における外側の周面において相対的に出っ張った部分を示しているが、外側の出っ張り部13の裏側に位置する内側の面は、相対的にへこんで形成されている。同様に、外側のへこみ部14は、第一カバー部材11における外側の周面において相対的にへこんだ部分を示しているが、外側のへこみ部14の裏側に位置する内側の面は、相対的に出っ張って形成されている。
【0032】
第一カバー部材11は、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材である。本実施形態において、第一カバー部材11は、蛇腹式の周面が形成された半円筒状の部材である。しかしながら、第一カバー部材11は、蛇腹式の周面が形成され、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材であれば、他の形状の部材であってもよい。例えば、第一カバー部材11は、蛇腹式の周面が形成された半楕円筒状又は半角柱状の部材であることも考えられる。
【0033】
また、第一カバー部材11における両側方の縁部に、長手方向に沿った溝151が形成された部分であるフレーム部15が形成されている。このフレーム部15の溝151は内側へ開口し、溝151の長手方向における両端は開放端である。このフレーム部15の溝151は、第二カバー部材12の縁部に形成されたフランジ部16が嵌め入れられる溝である。フランジ部16に関する詳細な説明は後に記載されている。
【0034】
なお、図3及び図4は、電線保護具10の長手方向に直交する平面での電線保護具10及びワイヤハーネス1各々の平断面図である。
【0035】
図1及び図2に示される例では、フレーム部15は、第一カバー部材11における両側方の縁部の長手方向全範囲に渡って一連に形成されている。しかしながら、第一カバー部材11における両側方の縁部に、それぞれ長手方向に伸びて形成された複数のフレーム部15が間隔を空けて形成された構成が採用されることも考えられる。複数のフレーム部15が間隔を空けて形成されることにより、第一カバー部材11は、フレーム部15が存在しない部分においてより湾曲しやすい柔軟性を有することになる。
【0036】
<電線保護具:第二カバー部材>
第二カバー部材12は、第一カバー部材11と同様に、その長手方向に沿って表面に出っ張り部13とへこみ部14とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。この蛇腹構造により、第二カバー部材12は、その長手方向において湾曲しやすい柔軟性を有している。
【0037】
第二カバー部材12は、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材である。本実施形態において、第二カバー部材12は、蛇腹式の周面が形成された半円筒状の部材である。しかしながら、第二カバー部材12は、蛇腹式の周面が形成され、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材であれば、他の形状の部材であってもよい。例えば、第二カバー部材12は、蛇腹式の周面が形成された半楕円筒状又は半四角な筒状の部材であることも考えられる。
【0038】
また、第二カバー部材12における両側方の縁部に、筒の外側へ張り出した板状の部分であるフランジ部16が形成されている。また、フランジ部16は、第二カバー部材12の長手方向に沿って伸びた板状に形成されている。このフランジ部16は、第一カバー部材11の縁部に形成されたフレーム部15の溝151に嵌め入れられる部分である。
【0039】
図1及び図2に示される例では、フランジ部16は、第二カバー部材12における両側方の縁部の長手方向全範囲に渡って一連に形成されている。しかしながら、第二カバー部材12における両側方の縁部に、それぞれ長手方向に伸びて形成された複数のフランジ部16が間隔を空けて形成された構成が採用されることも考えられる。複数のフランジ部16が間隔を空けて形成されることにより、第二カバー部材12は、フランジ部16が存在しない部分においてより湾曲しやすい柔軟性を有することになる。
【0040】
図2及び図4に示されるように、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、電線9の両側から組み合わされ、フランジ部16がフレーム部15の溝151に嵌め入れられる。例えば、フランジ部16は、その長手方向における一方の端部が、フレーム部15の溝151における一方の開放端に挿入された後、溝151内で長手方向にスライドされることによって溝151に嵌め入れられる。また、第二カバー部材12における一方の側方のフランジ部16全体が、第一カバー部材11における一方の側方のフレーム部15に挿入された後、第一カバー部材11が幅方向に拡げられつつ、他方の側方のフランジ部16全体が、他方の側方のフレーム部15に挿入されることも考えられる。
【0041】
電線保護具10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、フレーム部15の溝151とフランジ部16との嵌め入れ機構によって筒状に保持される。また、電線保護具10において、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、同等の長さで形成されている。そのため、それらが組み合わせにより構成される電線保護具10は、その長手方向全体に渡って、電線9の周囲を囲う筒状に形成される。なお、電線保護具10において、第一カバー部材11及び第二カバー部材12の一方が他方よりも短く形成されていることも考えられる。
【0042】
<効果>
電線保護具10において、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、蛇腹構造を有する半筒状の部材である。従って、それらの組合せにより構成される電線保護具10は、従来のコルゲートチューブと同様に、長手方向において柔軟性を有する。
【0043】
また、電線保護具10は、電線9の両側から組み合わされる第一カバー部材11及び第二カバー部材12を備えるため、従来のコルゲートチューブのように、治具を用いて切れ目のある筒状部材を拡げるという煩雑な作業を必要とせずに、電線9に対して装着される。従って、電線保護具10を電線9に装着する作業は、従来のコルゲートチューブを電線9に装着する作業よりも容易である。
【0044】
また、電線保護具10は、第一カバー部材11が形成する溝の大きさと第二カバー部材12の内側面の形状との組合せにより、筒の内側の空間の大きさが定まる。即ち、組合せ可能なN種類の第一カバー部材11とM種類の第二カバー部材12とが用意されること、即ち、(N+M)種類の部材が用意されることにより、(N×M)通りの太さの電線保護具10が用意されることになる。そのため、電線保護具10は、従来のコルゲートチューブに比べ、保護対象である1本又は複数の電線9の外径のとり得る範囲が広いほど、用意されるべき部材の種類を少なくできる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1A及びそのワイヤハーネス1Aが備える電線保護具10について説明する。ワイヤハーネス1Aは、ワイヤハーネス1と比較して、第一カバー部材11及び第二カバー部材12の長さ及びそれらの組合せ方のみが異なる。図5において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス1Aにおけるワイヤハーネス1と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図5に示されるように、ワイヤハーネス1Aが備える電線保護具10は、1つの第一カバー部材11と、その1つの第一カバー部材11に対して組み合わされる複数の第二カバー部材12とを備える。複数の第二カバー部材12各々は、その長手方向の長さが第一カバー部材11の長さよりも短く形成されている。
【0047】
また、複数の第二カバー部材12は、1つの第一カバー部材11に対し、その第一カバー部材11の長手方向において間隔を空けて組み合わされる。即ち、第二カバー部材12は、1つの第一カバー部材11に対してその長手方向における一部を除く部分に組み合わされる。
【0048】
ワイヤハーネス1Aにおいて、電線9における第二カバー部材12が設けられた範囲は、全周方向が電線保護具10によって覆われている。一方、電線9における第二カバー部材12が設けられていない範囲は、全周方向における一部の方向において第一カバー部材11により覆われ、その他の方向において露出した状態となっている。
【0049】
<効果>
ワイヤハーネス1Aが採用された場合、ワイヤハーネス1が採用された場合と同様の効果が得られる。さらに、ワイヤハーネス1Aが備える電線保護具10は、電線9の保護対象範囲における一部分のみを露出させたい場合に有効である。例えば、複数の電線9の束から一部の電線9のみを分岐させたい場合、複数の第二カバー部材12の隙間の部分から一部の電線9を分岐させることができる。また、そのような状態を実現するにあたり、第二カバー部材12に対する切り欠き加工などの煩雑な加工は不要である。
【0050】
<第3実施形態>
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2及びそのワイヤハーネス2が備える電線保護具10Aについて説明する。ワイヤハーネス2は、ワイヤハーネス1と比較して、第二カバー部材12がそれとは形状の異なる第二カバー部材12Aに置き換えられた構成を備えている。図6及び図7において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2におけるワイヤハーネス1と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
ワイヤハーネス2における電線保護具10Aは、第一カバー部材11と第二カバー部材12Aとを備える。図6は、第二カバー部材12Aの斜視図である。また、図7は、ワイヤハーネス2の正断面図である。この正断面図は、電線保護具10Aの長手方向に直交する平面での断面図である。
【0052】
第二カバー部材12Aは、それ全体が矩形の平板状に形成されている。この第二カバー部材12Aの両側方の縁部は、第一カバー部材11のフレーム部15の溝151に嵌め入れられるフランジ部16である。また、第二カバー部材12Aにおける両側方の縁部を除いた残りの部分は、第一カバー部材11における電線9が挿入される溝を塞ぐ部分である。以下、その部分のことを基部121と称する。
【0053】
即ち、第二カバー部材12Aは、第一カバー部材11における電線9が挿入される溝を塞ぐ平板状の基部121と、その基部121の両側方の縁部に連なるフランジ部16とが形成された部材の一例である。第二カバー部材12Aのフランジ部16も、第二カバー部材12のフランジ部16と同様に、外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成された部分である。
【0054】
第二カバー部材12Aは、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。また、第二カバー部材12Aは、鉄又はアルミニウムなどの金属の部材であることも考えられる。
【0055】
図7に示されるように、電線保護具10Aを構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12Aは、フレーム部15の溝151とフランジ部16との嵌め入れ機構によって筒状に保持される。なお、図7において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0056】
また、電線保護具10Aにおいて、第一カバー部材11と第二カバー部材12Aとが1対1で組み合わされる場合と、1つの第一カバー部材11に対して複数の第二カバー部材12Aが組み合わされる場合とが考えられる。後者の場合、ワイヤハーネス1Aと同様に、複数の第二カバー部材12A各々は、その長手方向の長さが第一カバー部材11の長さよりも短く形成される。また、複数の第二カバー部材12Aは、1つの第一カバー部材11に対し、その第一カバー部材11の長手方向において間隔を空けて組み合わされる。
【0057】
<効果>
電線保護具10Aにおいて、第一カバー部材11は、蛇腹構造を有する半筒状の部材である。従って、電線保護具10Aは、第二カバー部材12Aが設けられない部分においては、従来のコルゲートチューブと同様に、長手方向において柔軟性を有する。その他、電線保護具10Aが採用されることにより、電線保護具10が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0058】
一方、第二カバー部材12Aは、蛇腹構造を有する第二カバー部材12とは異なり、撓みの小さな或いはほとんど撓まない部材である。従って、電線保護具10Aにおいて、第二カバー部材12Aは、柔軟性を有する第一カバー部材11及び電線9を予め定められた直線経路に沿って保持することができる。
【0059】
また、図7に示されるように、電線保護具10Aは、自動車のボディなどの支持体8における平坦な面に対し、第二カバー部材12Aにおける平板状の基部121が対向する向きで配置されることにより、支持体8との隙間がほとんど生じない状態で敷設される。その結果、配線のスペース効率が向上するとともに、電線保護具10Aが安定した状態で敷設される。
【0060】
<第4実施形態>
次に、図8を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2A及びそのワイヤハーネス2Aが備える電線保護具10Bについて説明する。電線保護具10Bは、図7に示された電線保護具10Aと比較して、クランプ20が追加された構成を備えている。図8において、図6及び図7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Aにおけるワイヤハーネス2と異なる部分についてのみ説明する。図8は、電線保護具10Bを備えるワイヤハーネス2Aの斜視図である。なお、図8において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0061】
ワイヤハーネス2Aにおける電線保護具10Bは、電線保護具10Aと同様に第一カバー部材11と第二カバー部材12Aとを備える。但し、電線保護具10Bにおいて、第二カバー部材12Aの基部121における第一カバー部材11に対向しない側の外側面に、クランプ20が固定されている。
【0062】
クランプ20は、支持体8の取付孔に挿入されることにより、その取付孔の縁部に固定される取付具の一例である。支持体は、例えば、自動車のボディ又はインストルメントパネル内のリンホースなどである。第二カバー部材12A及びクランプ20は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0063】
電線保護具10B及びそれを備えたワイヤハーネス2Aが採用された場合、図7に示される電線保護具10A及びそれを備えたワイヤハーネス2が採用された場合と同様の効果が得られる。さらに、電線保護具10Bが、第二カバー部材12Aの基部121に固定されたクランプ20を備えるため、電線9に取り付けられた電線保護具10Bを、予め定められた配線経路の近傍に設けられた支持部、即ち、支持体8における取付孔の縁部に取り付ける作業が容易となる。
【0064】
なお、電線保護具10Bにおいて、第二カバー部材12Aの基部121に固定される取付具として、クランプ20の他、所定の支持部に形成された突起部又は孔に対して嵌め合わせの機構を構成するブラケットなど、他の取付具が採用されることも考えられる。
【0065】
<第5実施形態>
次に、図9及び図10を参照しつつ、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネス2B及びそのワイヤハーネス2Bが備える電線保護具10Cについて説明する。電線保護具10Cは、図7に示された電線保護具10Aと比較して、第二カバー部材12Aが他の形状の第二カバー部材12Bに置き換えられた構成を備えている。図9及び図10において、図6及び図7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Bにおけるワイヤハーネス2と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
ワイヤハーネス2Aにおける電線保護具10Cは、第一カバー部材11と第二カバー部材12Cとを備える。図9は、第二カバー部材12Bの斜視図である。また、図10は、電線保護具10Cを備えるワイヤハーネス2Bの斜視図である。なお、図10において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0067】
図9に示されるように、第二カバー部材12Bは、曲がった板状に形成されている。この第二カバー部材12Bの両側方の縁部は、第一カバー部材11のフレーム部15の溝151に嵌め入れられるフランジ部16である。また、第二カバー部材12Bにおける両側方の縁部を除いた残りの部分は、第一カバー部材11における電線9が挿入される溝を塞ぐ基部121である。
【0068】
基部121を含む第二カバー部材12Bは、長手方向において第一カバー部材11に対向する側に対して反対側へ、即ち、外側面の側へ曲がった板状に形成されている。図9に示される例では、第二カバー部材12Bは、その長手方向における1箇所に湾曲部17が形成されており、湾曲部17の前後の部分は平板状に形成されている。図9に示される例の他、第二カバー部材12B全体が湾曲した板状であることも考えられる。なお、電線保護具10Cにおける第二カバー部材12Bも、電線保護具10Aにおける第二カバー部材12Aと同様の材料で構成される部材である。
【0069】
図10に示されるように、第一カバー部材11及び第二カバー部材12Bは、第一カバー部材11の両側方のフレーム部15の溝151に、第二カバー部材12Bにおける両側方のフランジ部16が嵌め入れられることにより、筒状に保持される。
【0070】
また、電線保護具10Cにおいて、第一カバー部材11と第二カバー部材12Bとが1対1で組み合わされる場合と、1つの第一カバー部材11に対して複数の第二カバー部材12Bが組み合わされる場合とが考えられる。図10は前者の場合を例示する図である。後者の場合、ワイヤハーネス1Aと同様に、複数の第二カバー部材12B各々は、その長手方向の長さが第一カバー部材11の長さよりも短く形成される。また、複数の第二カバー部材12Bは、1つの第一カバー部材11に対し、その第一カバー部材11の長手方向において間隔を空けて組み合わされる。
【0071】
電線保護具10C及びそれを備えたワイヤハーネス2Aが採用された場合、図7に示される電線保護具10A及びそれを備えたワイヤハーネス2が採用された場合と同様の効果が得られる。但し、第二カバー部材12Bの基部121は曲がって形成されているため、第二カバー部材12Bは、柔軟性を有する第一カバー部材11及び電線9を予め定められた曲線経路に沿って保持することができる。従って、電線保護具10Cは、電線9の配線経路が曲がった経路である場合に採用される。
【0072】
なお、図10に示される例では、第二カバー部材12Bは、第一カバー部材11に対向しない外側面の側へ反った板状に形成されている。しかしながら、第二カバー部材12Bが、第一カバー部材11に対向する内側面の側へ曲がった板状に形成されることも考えられる。例えば、図9に示される第二カバー部材12Bが、図10に示される向きに対して裏返された向きで第一カバー部材11に対して組み合わせられることが考えられる。
【0073】
<その他>
図6及び図7に示された第二カバー部材12Aにおいて、基部121は平板状であるが、第二カバー部材12Aにおける基部121は、平坦ではない板状であることも考えられる。
【0074】
図11は、図7に示されたワイヤハーネス2に適用可能な第二カバー部材の変形例である第二カバー部材12Cの斜視図である。図11に示されるように、第二カバー部材12Cは、第一カバー部材11の溝を塞ぐ基部121が、第一カバー部材11に対向する面において電線9が挿入される溝を形成する半筒状の板であることも考えられる。
【0075】
また、図5、図7、図8及び図10に示された電線保護具10,10A,10B,10Cにおいて、第一カバー部材11における両側方の縁部にフランジ部16が形成され、第二カバー部材12,12A,12Bにおける両側方の縁部にフレーム部15が形成された構成が採用されることも考えられる。
【0076】
なお、以上に示した各実施形態において、第一カバー部材11と第二カバー部材12,12A,12B,12Cとは、フレーム部15とフランジ部16とにより連結されるが、粘着テープによるテーピングが全く不要というわけではない。例えば、第一カバー部材11の両端部分においては、第一カバー部材11を電線9に固定するためのテーピングが必要である。但し、本発明に係るワイヤハーネス1,1A,2,2A,2Bは、フレーム部15及びフランジ部16からなる連結機構を有するため、従来の切れ目が形成されたコルゲートチューブに比べ、テーピングの工数が軽減される。
【符号の説明】
【0077】
1,1A、2,2A,2B ワイヤハーネス
8 支持体
9 電線
10,10A,10B,10C 電線保護具
11 第一カバー部材
12,12A,12B,12C 第二カバー部材
13 出っ張り部
14 へこみ部
15 フレーム部
16 フランジ部
17 湾曲部
20 クランプ
121 第二カバー部材の基部
151 フレーム部の溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の周囲を覆う筒を形成する電線保護具であって、
蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に前記電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であり、両側方の縁部に、内側へ開口し長手方向に沿った溝が形成された部分であるフレーム部、及び外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成され前記フレーム部の溝に嵌め入れられる部分であるフランジ部のうちの一方が形成された第一カバー部材と、
前記第一カバー部材と組み合わされることにより電線の周囲を覆う筒を形成する部材であり、両側方の縁部に、前記フレーム部及び前記フランジ部のうちの他方が形成された第二カバー部材と、を備えることを特徴とする電線保護具。
【請求項2】
1つの前記第一カバー部材と、
前記第一カバー部材に対してその長手方向における一部を除く部分に組み合わされる、前記第一カバー部材よりも短い1つ又は複数の前記第二カバー部材と、を備える請求項1に記載の電線保護具。
【請求項3】
前記第二カバー部材は、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に前記電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材である、請求項1又は請求項2に記載の電線保護具。
【請求項4】
前記第二カバー部材は、前記第一カバー部材における前記電線が挿入される溝を塞ぐ板状の基部と、該基部の両側方の縁部に連なる前記フレーム部又は前記フランジ部と、が形成された部材である、請求項1又は請求項2に記載の電線保護具。
【請求項5】
前記第二カバー部材の前記基部は、長手方向において前記第一カバー部材に対向する内側面又はその反対の外側面の側へ曲がった板状に形成されている、請求項4に記載の電線保護具。
【請求項6】
前記第二カバー部材の前記基部における前記第一カバー部材に対向しない外側面に固定され、所定の支持部に取り付けられる取付具をさらに備える、請求項4又は請求項5に記載の電線保護具。
【請求項7】
電線と該電線の周囲を覆う筒を形成する電線保護具とを備えたワイヤハーネスであって、
前記電線保護具は、
蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に前記電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であり、両側方の縁部に、内側へ開口し長手方向に沿った溝が形成された部分であるフレーム部、及び外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成され前記フレーム部の溝に嵌め入れられる部分であるフランジ部のうちの一方が形成された第一カバー部材と、
前記第一カバー部材と組み合わされることにより電線の周囲を覆う筒を形成する部材であり、両側方の縁部に、前記フレーム部及び前記フランジ部のうちの他方が形成された第二カバー部材と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項1】
電線の周囲を覆う筒を形成する電線保護具であって、
蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に前記電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であり、両側方の縁部に、内側へ開口し長手方向に沿った溝が形成された部分であるフレーム部、及び外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成され前記フレーム部の溝に嵌め入れられる部分であるフランジ部のうちの一方が形成された第一カバー部材と、
前記第一カバー部材と組み合わされることにより電線の周囲を覆う筒を形成する部材であり、両側方の縁部に、前記フレーム部及び前記フランジ部のうちの他方が形成された第二カバー部材と、を備えることを特徴とする電線保護具。
【請求項2】
1つの前記第一カバー部材と、
前記第一カバー部材に対してその長手方向における一部を除く部分に組み合わされる、前記第一カバー部材よりも短い1つ又は複数の前記第二カバー部材と、を備える請求項1に記載の電線保護具。
【請求項3】
前記第二カバー部材は、蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に前記電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材である、請求項1又は請求項2に記載の電線保護具。
【請求項4】
前記第二カバー部材は、前記第一カバー部材における前記電線が挿入される溝を塞ぐ板状の基部と、該基部の両側方の縁部に連なる前記フレーム部又は前記フランジ部と、が形成された部材である、請求項1又は請求項2に記載の電線保護具。
【請求項5】
前記第二カバー部材の前記基部は、長手方向において前記第一カバー部材に対向する内側面又はその反対の外側面の側へ曲がった板状に形成されている、請求項4に記載の電線保護具。
【請求項6】
前記第二カバー部材の前記基部における前記第一カバー部材に対向しない外側面に固定され、所定の支持部に取り付けられる取付具をさらに備える、請求項4又は請求項5に記載の電線保護具。
【請求項7】
電線と該電線の周囲を覆う筒を形成する電線保護具とを備えたワイヤハーネスであって、
前記電線保護具は、
蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有し、内側に前記電線が挿入される溝を形成する半筒状の部材であり、両側方の縁部に、内側へ開口し長手方向に沿った溝が形成された部分であるフレーム部、及び外側へ張り出し長手方向に沿った板状に形成され前記フレーム部の溝に嵌め入れられる部分であるフランジ部のうちの一方が形成された第一カバー部材と、
前記第一カバー部材と組み合わされることにより電線の周囲を覆う筒を形成する部材であり、両側方の縁部に、前記フレーム部及び前記フランジ部のうちの他方が形成された第二カバー部材と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−85442(P2012−85442A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229685(P2010−229685)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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