説明

電線保護部材及びこれを備えた原稿搬送装置

【課題】低コスト化が図られた、市販化済みの機器にも後付けで追加できる簡便な構成で、複数電圧の電線を簡単に分配し、保護することが可能な電線保護部材を提供する。
【解決手段】電線保護部材20は、弾性を有するシート状材料で構成され、電線31、32を包含し得る筒形状に形成可能であるとともに着脱が自在な係止片21及びその係合孔22と、電線32の挿通が可能な切り込み部23とを備える。これにより、筒形状に形成したシートの内側に電線31、32を挿通させることができ、シート状材料一枚で簡単に複数の電線31、32をまとめて配線し、保護することができる。また、係止片21と係合孔22とを着脱することで、筒形状を形成したり、それを解除したり、組み立てが容易であるので、電線31、32の出し入れも簡単である。そして、切り込み部23を利用して電線31、32を分配することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線の、雑然とした状態を回避しながら、外力による破損に対して保護することが可能な電線保護部材に関する。また、この電線保護部材を搭載した原稿搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや家庭などで使用される電子機器には、動作を制御するための様々な電子部品や機能部材が必要であり、複写機やプリンタに代表される画像形成装置も例外ではない。それらのうち、電子部品は、動作制御に必要なパターンが予め形成されたプリント基板にまとめて搭載、接合されている。また、機能部材は、その動作対象となる他部材の近傍に配置されていることが多い。そして、電子部品を擁する制御基板と機能部材との間は、複数の電線によって接続され、電源の供給や信号の授受が行われている。
【0003】
上記のような電線は、複数の電線が雑然とした状態となるのを回避しながら、外力による破損に対して保護するため、電子機器の内部構造部材であるベースフレームなどにしっかりとまとめて保持されている。電子機器内部において電線を保持する電線保持部材の例を、特許文献1及び2に見ることができる。特許文献1及び2に記載された電線保持部材は、合成樹脂などで構成された結束材であって、この結束材が電線を保持しながら電子機器のフレームに取り付けられている。このような結束材によって電線を保持し、保護する方法は、比較的容易に実施することができ、汎用性があるので、従来一般的に利用され、様々な機器において採用されている。
【0004】
しかしながら、上記のような電線保持部材は、複数の電線を整然と所望の箇所で保持するために、多数の結束材が必要となる。これにより、部品コストが増加し、組み立て工数及び手間も増加することが懸念される。また、隣り合う結束材の間は比較的広範囲において電線が露出しているので、フレームに他の部材を取り付けたり、外装カバーを開閉したりすることで、その箇所において電線が破損する恐れがある。そこで、このような問題を解決すべく、結束材を用いることなく複数の電線をまとめて配線、保護することができる手法が提案され、その一例を特許文献3に見ることができる。
【特許文献1】特許第3681680号公報(第3−4頁、図1−2)
【特許文献2】特開2002−240393号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献3】特開2006−230149号公報(第3−4頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載された線材保護部材は、溝を備える樋形状の細長い本体部に、長手方向に沿って延びる切り込みを備える弾性を有する蓋部を設け、この蓋部を弾性変形させながら、切り込みから本体部内に対して電線を出し入れすることにより、結束材を用いることなく複数の電線をまとめて配線して、保護することができ、電線の出し入れも容易である。しかしながら、この構成は、複数の電線の配線し易さ、及び保護という観点から有利であるものの、本体部及び蓋部に関して部品コストが掛かるので、コストアップの問題を解消できていない。
【0006】
また、電子機器の電線は、比較的電圧の高い電源供給系の電線と、比較的電圧の低い信号系の電線とが備えられていることが多い。このような複数の電線をまとめて配線するに当たって、電源供給系の電線から発せられるノイズによる悪影響が信号系の電線に及ぶのを回避する方法を考慮する必要がある。しなしながら、この問題に関して、特許文献3に記載された線材保護部材では格別な配慮がなされていない。これにより、信号に不良が生じ、電子機器の誤動作を引き起こす恐れがある。ノイズによる悪影響を回避するためには、複数の線材保護部材が必要となり、さらにコストアップする可能性がある。
【0007】
そして、この線材保護部材を電子機器で利用する場合、線材保護部材を取り付けるためのモールドを機器のフレームなどに予め設けておく必要がある。これにより、電子機器が大型化する恐れがあり、それに起因するコストアップも懸念される。さらに、市販化された既存の製品に後付けで追加することが非常に困難である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、低コスト化が図られた、市販化済みの機器にも後付けで追加することが可能な簡便な構成で、複数電圧の電線を簡単に分配し、保護することが可能な電線保護部材を提供することを目的とする。また、このような電線保護部材を備え、組み立て性及びメンテナンス性が向上し、さらに安全性が高められた原稿搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、電線保護部材において、弾性を有するシート状材料で構成され、電線を包含し得る筒形状に形成可能であるとともに着脱が自在な係止片及びその係合孔と、電線の挿通が可能な少なくとも1箇所の切り込み部とを備えることとした。
【0010】
また、上記構成の電線保護部材において、前記切り込み部に連続して、穴部を備えることとした。
【0011】
また、上記構成の電線保護部材において、電線が接続する基板に係合させて取り付けるための取り付け穴を備え、前記係止片及び前記係合孔を係合させて形成した筒形状の内部に前記基板を包含することとした。
【0012】
また、上記構成の電線保護部材において、前記シート状材料は、絶縁性材料で構成されていることとした。
【0013】
また本発明では、上記構成の電線保護部材を原稿搬送装置に備えることとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、電線保護部材が、弾性を有するシート状材料で構成され、電線を包含し得る筒形状に形成可能であるとともに着脱が自在な係止片及びその係合孔と、電線の挿通が可能な少なくとも1箇所の切り込み部とを備えることとしたので、筒形状に形成したシートの内側に電線を挿通させることができる。これにより、シート状材料一枚で簡単に複数の電線をまとめて配線し、保護することができる。また、係止片と係合孔とを着脱することで、筒形状を形成したり、それを解除したり、組み立てが容易であるので、電線の出し入れも簡単である。そして、切り込み部を利用して電線を分配することも可能であるので、電圧の異なる複数の電線をできるだけ離隔して配線することができる。また、電子機器のフレーム形状に柔軟に対応できるので、電線保護部材の配置スペースをできるだけ小さくすることが可能であって、市販化された既存の製品に後付けで追加することも容易である。そして、柔軟なシート状材料は、電線を締め付けることがないので、電源の供給や信号の授受に悪影響を与えるようなストレスが電線に掛かるのを防止することが可能である。このようにして、低コスト化が図られた、市販化済みの機器にも後付けで追加することが可能な簡便な構成で、複数電圧の電線を簡単に分配し、保護することが可能な電線保護部材を提供することができる。
【0015】
また、前記切り込み部に連続して、穴部を備えることとしたので、切り込み部を挿通させた電線を一層しっかりと保持することができる。これにより、電圧の異なる複数の電線を離隔する作用が高められ、電源供給系の電線から発せられるノイズによる悪影響が信号系の電線に及ぶのを回避する効果を向上させることが可能である。したがって、低コスト化が図られた簡便な構成で、電子機器の誤動作の発生を抑制することができる。
【0016】
また、電線が接続する基板に係合させて取り付けるための取り付け穴を備え、前記係止片及び前記係合孔を係合させて形成した筒形状の内部に前記基板を包含することとしたので、電線と制御基板とを一緒に保護することができる。これにより、電子機器において、電線だけではなく制御基板も、その周辺に他の部材を取り付けたり、外装カバーを開閉したりすることなどに起因する破損から保護することが可能である。また、電線保護部材が意図せず電線に沿って移動するのを防止することができ、電線保護部材の位置決めを行うことが可能である。したがって、電線や制御基板を保護する効果が一層向上する。
【0017】
また、前記シート状材料は、絶縁性材料で構成されていることとしたので、包含する電線が外部から受ける電気的な悪影響を回避する作用を高めることができる。したがって、物理的な外力による破損に加えて、電気的な障害の発生も防止することができ、一層効果的に電線を保護することが可能である。
【0018】
また本発明では、上記構成の電線保護部材を原稿搬送装置に備えることとしたので、低コスト化が図られた、市販化済みの機器にも後付けで追加することが可能な簡便な構成の電線保護部材で、複数電圧の電線を簡単に分配し、保護することが可能になり、組み立て性及びメンテナンス性が向上し、さらに安全性が高められた原稿搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図1〜図9に基づき説明する。
【0020】
最初に、本発明の第1の実施形態に係る電線保護部材を備えた原稿搬送装置について、図1〜図3を用いてその構造の概略を説明する。図1は原稿搬送装置の模型的垂直断面正面図、図2は原稿搬送装置の背面側上方から見た斜視図、図3は図2と同様の原稿搬送装置の背面側上方から見た斜視図にして、背面カバーを取り外した状態を示すものである。図1中の実線矢印は、用紙の搬送経路、及び搬送方向を示す。なお、本発明の実施形態に係る原稿搬送装置は、画像形成装置である複写機、ファクシミリ、または複写機やファクシミリ等の機能を兼ね備えた複合機の上部に搭載された原稿搬送装置として設計されたものとする。
【0021】
原稿搬送装置1は、図1及び図2に示すように、原稿載置トレイ2、原稿送り部10、及び原稿排出トレイ3を備えている。
【0022】
原稿載置トレイ2は、原稿搬送装置1の上部に設けられている。原稿載置トレイ2には、原稿を上方から載置して、積み上げることができる。原稿載置トレイ2は、原稿搬送方向の上流から下流、すなわち図1において右方から左方に向かって下る傾斜をなす構成となっている。
【0023】
原稿送り部10は、原稿載置トレイ2の原稿搬送方向下流端に、原稿供給口11と、給紙装置12とを備えている。給紙装置12は、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿を、最上層から1枚ずつ分離し、原稿供給口11を通して原稿送り部10の内部に向かって供給する。原稿供給口11の下流側には、原稿送り部10の内部、下方に向かって原稿搬送路13が延びている。
【0024】
原稿搬送路13の先は、原稿搬送装置1の底面に到達し、この箇所に原稿読取部14が設けられている。原稿読取部14に送り込まれた原稿は、原稿搬送路13上をさらに下流側へ、すなわち図1において原稿読取部14の箇所を左方から右方へと移動する最中に、その下方に設けられた画像形成装置本体の画像読取装置(図示せず)により、下側の面である第1面の画像データが読み取られる。
【0025】
原稿搬送路13の、原稿読取部14の下流には、原稿分岐部15が設けられている。原稿の、表裏両面の画像データの読み取りが必要な場合、原稿分岐部15に到達した原稿は、原稿搬送路13の上方へと振り分けられ、その原稿搬送方向下流側に続く原稿反転部16にて搬送方向が切り替えられる。搬送方向が切り替えられた原稿は、原稿分岐部15の上側を経て、原稿読取部14の上流側の原稿搬送路13に送り込まれ、再度原稿読取部14で第2面の画像データが読み取られる。
【0026】
原稿分岐部15の下流であって、原稿搬送路13の下流端には、原稿排出口17が設けられている。画像データの読み取りが済んだ原稿は、原稿排出口17から原稿排出トレイ3に排出される。
【0027】
原稿排出トレイ3は、原稿載置トレイ2のすぐ下方に備えられ、これらのトレイが上下二段にして構成されている。原稿排出トレイ3に排出された原稿は、原稿搬送装置1の手前側から取り出すことができる。
【0028】
原稿載置トレイ2と、原稿排出トレイ3とは、互いの原稿搬送方向を逆にして、すなわち図1において原稿載置トレイ2は原稿を左方に向かって送り出し、原稿排出トレイ3は原稿を右方に向かって排出する形にして構成されている。これにより、原稿供給口11と原稿排出口17とが、原稿読取部14が存在する方向に対して各トレイの同じ側、すなわち図1において左側に設けられている。そして、原稿供給口11から原稿排出口17まで延びる前記原稿搬送路13は、図1に示すように、上下方向にU字形状に、すなわち正面から見てU字形状に湾曲した形で設けられている。
【0029】
上記構成により、原稿搬送装置1は、原稿載置トレイ2に積み上げられた原稿を、一枚ずつ分離して原稿送り部10内に送り込み、原稿読取部14でその画像データを読み取った後、原稿排出トレイ3に排出する。
【0030】
また、原稿送り部10は、その上側に、図2に示すように、開閉カバー18を備えている。開閉カバー18は、図2における装置の右端、すなわち正面から見た装置の左端の箇所に設けられた、原稿幅方向に略水平に延びる支軸(図示せず)の軸線を中心として、原稿載置トレイ2側を持ち上げるようにして開放することが可能である。この開閉カバー18を開放することにより、装置内部に形成される原稿搬送路13の、原稿載置トレイ2に近い側であって、装置上側に位置する箇所を部分的に露出させることができる。
【0031】
そして、原稿搬送装置1は、その背面側に、外装カバーである背面カバー4を備えている。背面カバー4は原稿搬送装置1の背面側の箇所ほとんどをカバーする部材であって、これを取り外すと、原稿搬送装置1は図3に示す形態となる。原稿搬送装置1の背面カバー4の内部には、原稿搬送の中核をなすメインモータ5、給紙のために使用される給紙用モータ6、原稿分岐部15で原稿を振り分ける際に使用されるソレノイド7、原稿搬送装置1自体及び開閉カバー18の開放状態を検知する開閉検知装置8、及び電線保護部材20が備えられている。
【0032】
続いて、この原稿搬送装置1の電線保護部材20の詳細な構成について、図3に加えて、図4〜図7を用いて説明する。図4は電線保護部材の斜視図、図5は電線保護部材の展開図、図6は電源保護部材の垂直断面側面図、図7は電源保護部材の垂直断面正面図にして、内部に電線を配線した状態を示すものである。
【0033】
電線保護部材20は、前述のように原稿搬送装置1の背面側の箇所に設けられ(図3参照)、同様にその近傍に設けられたメインモータ5、給紙用モータ6、ソレノイド7、及び開閉検知装置8といった機能部材に対して電源供給、信号授受を行うための電線をまとめて配線し、保護するためのものである。電線保護部材20は、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの弾性を有する絶縁性のシート状材料で構成され、図4に示すように、丸めることによって円筒形状に形成されている。そして、電線保護部材20は、図4及び図5に示すように、係止片21、係合孔22、切り込み部23、及び穴部24を備えている。
【0034】
係止片21は、図5に示すように、電線保護部材20の本体端部から外側に突出する形で設けられ、円筒形状に形成した電線保護部材20の長手方向中央部に1個配置されている。係止片21は、先端部21aが根元部21bより大きいT字形形状をなしている。
【0035】
係合孔22は、係止片21に対応した反対側の箇所に、係止片21同様1個が設けられている。係合孔22は、挿通部22aと、係合部22bとを備えたT字形形状をなしている。挿通部22aは係止片21の先端部21a及び根元部21bの挿通が可能な大きさをなし、係合部22bは根元部21bの挿通が可能であるが、先端部21aが引っ掛かり、挿通不可能な大きさをなしている。これにより、図6に示すように係止片21を係合孔22に挿入して係合させることで、シート状の電線保護部材20を、図4及び図7に示すように電線31、32を包含し得る円筒形状に形成することが可能である。また、この電線保護部材20の内部は、電線31、32の先端に各々設けられたコネクタ31a、32aも挿通させることができる。なお、係止片21と係合孔22とは着脱が自在である。
【0036】
切り込み部23は、図4及び図5に示すように、円筒形状に形成した電線保護部材20の長手方向に沿って延び、電線保護部材20の内面から外面まで貫通する形にして形成されている。電線保護部材20が弾性を有するシート状材料で形成されているので、この切り込み部23周辺の箇所を弾性変形させることにより、図7に示すように切り込み部23を通して電線32を出し入れすることが可能である。なお、切り込み部23は、電線保護部材20の長手方向に比較的長い長さで形成されているので、電線32の先端に設けられたコネクタ32aも挿通することが可能である。
【0037】
穴部24は、切り込み部23に連続する形で設けられている。穴部24は、円形状をなし、切り込み部23同様、電線保護部材20の内面から外面まで貫通している。これにより、図7に示すように穴部24で電線32を保持することが可能である。
【0038】
上記のように、電線保護部材20が、弾性を有するシート状材料で構成され、電線31、32を包含し得る筒形状に形成可能であるとともに着脱が自在な係止片21及びその係合孔22と、電線32の挿通が可能な切り込み部23とを備えているので、筒形状に形成したシートの内側に電線31、32を挿通させることができる。これにより、シート状材料一枚で簡単に複数の電線31、32をまとめて配線し、保護することができる。また、係止片21と係合孔22とを着脱することで、筒形状を形成したり、それを解除したり、組み立てが容易であるので、電線31、32の出し入れも簡単である。そして、切り込み部23を利用して電線31、32を分配することも可能であるので、電圧の異なる複数の電線31、32をできるだけ離隔して配線することができる。また、原稿搬送装置1のフレーム形状に柔軟に対応できるので、電線保護部材20の配置スペースをできるだけ小さくすることが可能であって、市販化された既存の製品に後付けで追加することも容易である。そして、柔軟なシート状材料は、電線31、32を締め付けることがないので、電源の供給や信号の授受に悪影響を与えるようなストレスが電線31、32に掛かるのを防止することが可能である。このようにして、低コスト化が図られた、市販化済みの機器にも後付けで追加することが可能な簡便な構成で、複数電圧の電線31、32を簡単に分配し、保護することが可能な電線保護部材20を提供することができる。
【0039】
また、切り込み部23に連続して、穴部24を備えているので、切り込み部23を挿通させた電線32を一層しっかりと保持することができる。これにより、電圧の異なる複数の電線31、32を離隔する作用が高められ、電源供給系の電線から発せられるノイズによる悪影響が信号系の電線に及ぶのを回避する効果を向上させることが可能である。したがって、低コスト化が図られた簡便な構成で、原稿搬送装置1の誤動作の発生を抑制することができる。
【0040】
さらに、電線保護部材20のシート状材料は、PETなどの絶縁性材料で構成されているので、包含する電線31、32が外部から受ける電気的な悪影響を回避する作用を高めることができる。したがって、物理的な外力による破損に加えて、電気的な障害の発生も防止することができ、一層効果的に電線31、32を保護することが可能である。
【0041】
また本発明では、上記構成の電線保護部材20を原稿搬送装置1に備えたので、低コスト化が図られた、市販化済みの機器にも後付けで追加することが可能な簡便な構成の電線保護部材20で、複数電圧の電線31、32を簡単に分配し、保護することが可能になり、組み立て性及びメンテナンス性が向上し、さらに安全性が高められた原稿搬送装置1を提供することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る電線保護部材の詳細な構成について、図8及び図9を用いて説明する。図8は電線保護部材の展開図、図9は電源保護部材の垂直断面正面図にして、内部に電線を配線した状態を示すものである。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1〜図7を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成要素には前と同じ符号を付し、説明は省略するものとする。
【0043】
第2の実施形態に係る電線保護部材20は、図8及び図9に示すように、係止片21、係合孔22、切り込み部23、及び穴部24に加えて、取り付け穴25を備えている。なお、切り込み部23、及び穴部24は、各々2箇所ずつ設けられている。
【0044】
取り付け穴25は、図8に示すように、電線保護部材20の端部に2箇所設けられている。この取り付け穴25には、図9に示すように、電線33、34が接続する制御基板9の脚部9aが挿通されている。これにより、電線保護部材20は、制御基板9の箇所からの移動が阻止されている。
【0045】
そして、電線保護部材20は、円筒形上に形成されたその内部に、複数の電線33〜37が挿通され、制御基板9も包含している。2箇所の切り込み部23、及び穴部24には、電線36、37が別々にして挿通されている。
【0046】
このようにして、電線保護部材20は、電線33、34が接続する制御基板9に係合させて取り付けるための取り付け穴25を備え、係止片21及び係合孔22を係合させて形成した筒形状の内部に制御基板9を包含するので、電線33、34と制御基板9とを一緒に保護することができる。これにより、原稿搬送装置1において、電線だけではなく制御基板9も、その周辺に他の部材を取り付けたり、外装カバーを開閉したりすることなどに起因する破損から保護することが可能である。また、電線保護部材20が意図せず電線に沿って移動するのを防止することができ、電線保護部材20の位置決めを行うことが可能である。したがって、電線33〜37や制御基板9を保護する効果が一層向上する。
【0047】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電線全般に対して利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電線保護部材を備えた原稿搬送装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の原稿搬送装置の背面側上方から見た斜視図である。
【図3】図2と同様の原稿搬送装置の背面側上方から見た斜視図にして、背面カバーを取り外した状態を示すものである。
【図4】図3の電線保護部材の斜視図である。
【図5】図3の電線保護部材の展開図である。
【図6】図3の電線保護部材の垂直断面側面図である。
【図7】図6の電源保護部材の垂直断面正面図にして、内部に電線を配線した状態を示すものである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る電線保護部材の展開図である。
【図9】図8の電源保護部材の垂直断面正面図にして、内部に電線を配線した状態を示すものである。
【符号の説明】
【0050】
1 原稿搬送装置
2 原稿載置トレイ
3 原稿排出トレイ
4 背面カバー
9 制御基板(基板)
20 電線保護部材
21 係止片
22 係合孔
23 切り込み部
24 穴部
25 取り付け穴
31〜37 電線
31a、32a コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するシート状材料で構成され、
電線を包含し得る筒形状に形成可能であるとともに着脱が自在な係止片及びその係合孔と、電線の挿通が可能な少なくとも1箇所の切り込み部とを備えることを特徴とする電線保護部材。
【請求項2】
前記切り込み部に連続して、穴部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電線保護部材。
【請求項3】
電線が接続する基板に係合させて取り付けるための取り付け穴を備え、前記係止片及び前記係合孔を係合させて形成した筒形状の内部に前記基板を包含することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線保護部材。
【請求項4】
前記シート状材料は、絶縁性材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電線保護部材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電線保護部材を備えたことを特徴とする原稿搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−57259(P2010−57259A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218992(P2008−218992)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】