説明

電線接続構造

【課題】電線や電子部品の導体部が小型のものや、捻じり方向の力に弱い部品であっても、容易かつ迅速に導通接続することができる電線接続構造を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの第1・第2かしめ片2a,2bを有する接続圧着端子1に、導体Aの導体端面aと、電線Dの電線端面bと、を対面状に接近させて配設し、第1・第2かしめ片2a,2bにてかしめ固着して連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電線の接続構造は、接続する電線の導通線(芯線又は撚り線等)同士を撚り合わせたものをハンダ付けによって接続している構造や、接続する電線同士の導通線(芯線又は撚り線等)を絡めて仮接続し、その絡み部を開口部が形成されたストレート型圧着端子に内装後に圧着して接続した構造が知られている。また、特許文献1記載のように絡み合わせた絡み部に熱圧着する電線の接続構造が知られている。
【0003】
また、基板等に用いられる小型のサーマルやヒューズ等の電子部品のリード線(導体)等に電線の導通線を接続する際は、電子部品の接続部の多くは針金状の導体(単線のリ−ド線)であるため、電子部品の導体(リード線等)の周囲を電線の導通線(撚り線又は芯線等)で囲うようにして、絡み合わせたり、電子部品の導体に電線の導通線を巻き付けたりして仮接続し、圧着端子やハンダで接続する構造であった。
【特許文献1】特許2927623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現場での修理や組立工程でのハンダ付け作業や、導通線(芯線又は撚り線等)を絡み合わせたり巻き付ける作業は、時間と手間を必要とした。さらに、電子部品等の導体(特に針金状のリード線等)に捩じれるような負荷がかかると、電子部品の単線が折れ、破損するといった問題があった。また、熱に弱い電子部品をはんだで接続するには、熟練した技能を必要とする問題があった。
【0005】
解決しようとする課題は、導通接続したい細い電線や小型部品の導体部(芯線,撚り線,単線,リード線等)を捻じり合わせるように撚って接続する(絡み部を形成する)には時間と手間がかかると共に、はんだ付等では容易に接続をおこなえなかった点である。
【0006】
そこで、本発明は、電線や電子部品の導体部が小型のものや、捻じり方向の力に弱い部品であっても、容易かつ迅速に導通接続することができる電線接続構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成させるために本発明に係る電線接続構造は、少なくとも2つの第1・第2かしめ片を有する接続圧着端子に、導体の導体端面と、電線の電線端面と、を対面状に接近乃至当接させて配設し、第1・第2かしめ片にてかしめ固着して連結したものである。
【0008】
また、上記接続圧着端子に、第3かしめ片を形成し、上記電線の絶縁被覆部をかしめ固着したものである。
【0009】
また、上記第1・2かしめ片は、かしめ固着状態で抱き込み状に形成されているものである。
また、上記第3かしめ片は、かしめ固着状態で抱き込み状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電線接続構造によれば、接続する導体及び電線を対面状に接近乃至当接させて配設し、第1・第2かしめ片にてかしめ固着して連結したものなので、導体と電線とを撚り合わせる(絡み部を形成する)必要がなく容易かつ迅速しかも確実に接続できる。また、熟練したはんだ付等の技能を必要とせず容易かつ確実に電線を接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明に係る電線接続構造の使用状態を示す斜視図であり、図2はその側面図であり、図3はその要部断面図である。
【0012】
本発明に係る電線接続構造は、小型電子部品のリード線等の導体Aの導体端面aと、直径の細い電線Dの電線端面bと、を対面状に接近乃至近接させて配設し、薄板金属製の接続圧着端子1でかしめ固着(圧着)して接続する構造であって、例えば、小型のヒューズやサーマル等の電子部品のリード線等の導体Aに電線Dを接続する際の接続構造として用いる。
【0013】
導体Aは、小型の電子部品(サーミスタ,サーマル,ヒューズ等)から突設される針金状(直径が0. 2mm〜1. 5mm)の単線(リード線)である。また、直径の細い(直径が0. 5mm〜2. 5mmの)電線Dは、金属製の複数の導通線B(撚り線又は芯線等であり導通断面積は0. 1mm2 〜0. 5mm2 である。)を絶縁部材から成る絶縁被覆部Cで覆ったものである。接続圧着端子1は、リン青銅にメッキ処理を施した(厚さが0. 1mm〜0. 5mmの)薄板状金属部材をプレス成形したものである。また、接続圧着端子1は、通電可能な電導体である。また、図1〜図3に示す電線Dは、接続方向先端部の絶縁被覆部Cを剥離して複数の導通線Bを露出させた状態である。
【0014】
接続圧着端子1の実施の一例を図に示す。図4は、その平面図であり、図5は、その側面図である。また、図6は、図5のA−A断面図であり、図7は、図5のB−B断面図であり、図8は、図5のC−C断面図である。
【0015】
接続圧着端子1は、薄い金属板を円弧状に曲げて塑性変形させたものである。また、接続圧着端子1の長手方向(軸心L方向)の一方端に、円弧を延長して短手方向断面視U字状と成るように突出して設けた対向する一対の第1かしめ片2a,2aを有する導体かしめ部2Aを形成している。導体かしめ部2Aは、導体Aを挟むように内装可能な大きさに形成している。また、各々の第1かしめ片2a,2aをU字の内面側へ折曲げるように塑性変形させて、導体1を接続圧着端子1にかしめ固着(圧着)可能に形成している。第1かしめ片2aは、かしめ固着状態(導体Aを接続圧着端子1に圧着させた状態)で導体Aを抱き込むような形状と成るように形成している。
【0016】
また、接続圧着端子1の長手方向(軸心L方向)の中間部に、円弧を延長して短手方向断面視U字状と成るように突出して設けた対向する一対の第2かしめ片2b,2bを有する導通線かしめ部2Bを形成している。導通線かしめ部2Bは、複数の導通線Bを挟むように内装可能な大きさに形成している。また、各々の第2かしめ片2b,2bをU字の内面側へ折曲げるように塑性変形させて、電線Dの導通線Bを接続圧着端子1に接触させてかしめ固着(圧着)可能に形成している。第2かしめ片2bは、かしめ固着状態(電線Dを接続圧着端子1に圧着させた状態)で電線Dの導通線Bを抱き込むような形状と成るように形成している。
【0017】
また、接続圧着端子1の軸心L方向の他方端に、円弧を延長して短手方向断面視U字状と成るように突出して設けた対向する一対の第3かしめ片2c,2cを有する被覆かしめ部2Cを形成している。被覆かしめ部2Cは、絶縁被覆部Cを挟むように内装可能な大きさに形成している。また、各々の第3かしめ片2c,2cをU字の内面側へ折曲げるように塑性変形させて、電線Dの被覆絶縁部Cを接続圧着端子1にかしめ固着(圧着)可能に形成している。第3かしめ片2cは、かしめ固着状態(電線Dを接続圧着端子1に圧着させた状態)で電線Dの導通線Bを抱き込むような形状となるように形成している。
【0018】
また、導体かしめ部2Aと導通線かしめ部2Bの間に(導体かしめ部2Aと導通線かしめ部2Bとを連結するように)短手方向断面視U字状の対面連結部3を形成している。対面連結部3は、導体Aを第1かしめ片2aで抱き込み状にかしめ固着し、電線Dの導通線Bを第2かしめ片2bで抱き込み状にかしめ固着した際に、導体Aの端面である導体端面aと、導通線Bの端面である(電線Dの端面でもある)電線端面bと、が対面状となって接近乃至当接可能に配設できるように形成している。
【0019】
また、導通線Bを、導通線かしめ部2Bに内装し、絶縁被覆部Cを、被覆かしめ部2Cに内装して配設して、かしめ固着した際に、導通線Bが急激に折れ曲がらないようにするために、導通線かしめ部2Bから被覆かしめ部2Cへ拡径状に連結する異径連結部4を形成している。また、異径連結部4は、導体Aと電線Dとを各々接続圧着端子1に内装した状態で、同心状となるように形成しているのが望ましい。
【0020】
つまり、接続圧着端子1を言い換えると、電線Dの導通線Bを内装して圧着可能な導通線かしめ部2Bの長手方向(軸心L方向)の一方端に、導体Aを内装して圧着可能な導体かしめ部2Aを、対面連結部3を介して連結し、導通線かしめ部2Bの他方端に、電線Dの絶縁被覆部Cを内装して圧着可能な被覆かしめ部2Cを、電線Dを直線状に内装させるための異径連結部4を介して連結した形状となるように、金属製の薄板部材をプレス成形でU字状に一体成形したものである。また、導体Aの導体端面aと電線Dの電線端面b(導通線Bの端面でもある)とを、対面状に接近乃至当接させた状態で対面連結部3に内装して、接続圧着端子1に各々を圧着でき、電気を導通可能に接続することが可能な構造となっている。また、導体Aや電線D(の導通線B)を撚り合わせる(絡み合わせる)ことなく、接続可能な構造となっている。
【0021】
また、導体かしめ部2Aの電子部品側の端縁部が、かしめ固着状態で拡径状(フレア状)となって導体Aの圧着の際に切断及び損傷を防止する導体切断防止縁部10(ベルマウス)を形成するようにするのが望ましい。また、導通線かしめ部2Bの、絶縁被覆部C側の端縁部が、かしめ固着状態で拡径状(フレア状)となって導通線Bの圧着の際に切断又は損傷を防止する導通線切断防止縁部11(ベルマウス)を形成するようにするのが望ましい。
【0022】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、導体かしめ部2A、導通線かしめ部2B、被覆かしめ部2Cの大きさや長さは、導通接続する各種の電線やリード線に応じて設計変更自由である。また、電子部品からの導体A(リード線)に、絶縁部材が被覆されている際に、導体かしめ部2Aの電子部品側(一方端)に、導体A用の被覆かしめ部を連結するように一体状に形成しても良い。
【0023】
上述した本発明の電線の接続構造の接続方法と作用について説明する。
まず、電線Dの先端部の絶縁被覆部Cを剥離させ、電線D内部の複数の導通線Bを露出させる。電線Dの複数の導通線Bを導通線かしめ部2Bに内装すると共に、電線Dの絶縁被覆部Cを被覆かしめ部2Cに内装する。次に、導体Aを導体かしめ部2Aに内装すると共に、導体Aの導体端面aが電線Dの端面である電線端面b(導通線Bの端面でもある)に接近乃至当接するように対面連結部3に内装(配設)する。(この際、電線Dを接続圧着端子1に内装する前に、導体Aを先に導体かしめ部2Aに内装してもよい。)また、異径連結部4によって、電線Dの導通線Bは、被覆部Cの肉厚の影響を受けずに、接続圧着端子1の内面側底部に確実に接触するように配設される。また、導体Aと電線Dは同心状に配設される。
【0024】
そして、一対の第1かしめ片2a,2aと、一対の第2かしめ片2b,2bと、一対の第3かしめ片2c,2cとを、所定の工具等でかしめる。すると、一対の第1かしめ片2a,2aは、抱き込み状となって導体Aをかしめ固着する。また、一対の第2かしめ片2b,2bは、抱き込み状となって電線D(導通線B)をかしめ固着する。また、一対の第3かしめ片2c,2cは、抱き込み状となって電線D(絶縁被覆部C)をかしめ固着する。
【0025】
また、かしめ片1aをかしめる際に導体切断防止縁部10が僅かに拡径状(フレア状)となって、導体Aが損傷又は切断の虞れなく圧着接続端子1にかしめ固着される。また、導通線切断防止縁部11が僅かに拡径状(フレア状)となって、電線Dの導通線Bが損傷又は切断の虞れなく圧着接続端子1にかしめ固着される。また、異径連結部4によって、電線Dの導通線Bは、急激に折曲げられることなく、かしめ固着される。また、導通線Bは、U字内面底部に確実に接触してかしめ固着される。導体Aと電線Dは同心状にかしめ固着される。
【0026】
言い換えると、導体Aと電線D(導通線B)とで絡み部(撚り部)を形成せずに、導体Aの導体端面aと、電線Dの電線端面bを接近させて、各々をかしめ固着する。すると、導体Aと、電線Dの導通線Bと、は、接続圧着端子1に各々接触して固着される。つまり、お互いが直接接触していなくとも、接続圧着端子1によって通電可能に電線Dが電子部品に連結(接続)される電線接続構造となる。
なお、本発明に於て、導体Aとしては電線をも包含しており、従って、電線Aと電線Dの接続構造とするも好ましい。
【0027】
以上のように、本発明は、少なくとも2つの第1・第2かしめ片2a,2bを有する接続圧着端子1に、導体Aの導体端面aと、電線Dの電線端面bと、を対面状に接近乃至当接させて配設し、第1・第2かしめ片2a,2bにてかしめ固着して連結したので、導体Aと、電線Dを絡めた絡み部を形成する必要がなく、容易かつ迅速に接続できる。また、熱に弱い部品や、捻じり方向に弱い導体部を有する様々な電子部品や電線であっても容易に接続できる。特に、電線Dの導通線Bを電子部品の導体Aに撚った絡み部を形成するのが困難であった小型の電子部品や細い電線を容易かつ迅速に接続できる。また、はんだ付け等の特別な技量を必要とぜず容易に作業できる。また、作業者の技量に影響を受けにくく接続後の仕上がりを均一にできる。また、導体Aと電線Dとが直接接触していなくとも接続圧着端子1を介して通電させることができる。
【0028】
また、接続圧着端子1に、第3かしめ片2cを形成し、電線Dの絶縁被覆部Cをかしめ固着したので、電線Dを接続圧着端子1に、より強固に接続できる。また、電線Dに捩じれや折れ等の力がかかっても、絶縁被覆部Cと第3かしめ片2cとの圧着部で負荷を保持し、導通線Bに負荷が加わらず、(導通線Bの弱い部分に応力集中が働かず)断線を防止できる。また、電線Dの抜けを防止できる。
【0029】
また、第1・2かしめ片2a,2bは、かしめ固着状態で抱き込み状に形成されているので、より確実に導体Aを、接続圧着端子1にかしめ固着(圧着)できる。また、より確実に電線Dを、接続圧着端子1にかしめ固着(圧着)できる。
また、第3かしめ片2cは、かしめ固着状態で抱き込み状に形成されているので、より確実に絶縁被覆部Cを接続圧着端子1にかしめ固着(圧着)できる。つまり、より確実に電線Dを、接続圧着端子1にかしめ固着(圧着)できる。
【0030】
当然ながら、上述した例の部品や電線に限らず、各種様々な電子部品のリード線同士や各種様々な電線の導通線同士でも、通電接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る電線接続構造の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る電線接続構造の使用状態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る電線接続構造の使用状態を示す要部断面図である。
【図4】接続圧着端子の一例を示す平面図である。
【図5】接続圧着端子の一例を示す側面図である。
【図6】接続圧着端子の一例を示す要部断面図である。
【図7】接続圧着端子の一例を示す要部断面図である。
【図8】接続圧着端子の一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 接続圧着端子
2a 第1かしめ片
2b 第2かしめ片
2c 第3かしめ片
A 導体
C 絶縁被覆部
D 電線
a 導体端面
b 電線端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの第1・第2かしめ片(2a)(2b)を有する接続圧着端子(1)に、導体(A)の導体端面(a)と、電線(D)の電線端面(b)と、を対面状に接近乃至当接させて配設し、第1・第2かしめ片(2a)(2b)にてかしめ固着して連結したことを特徴とする電線接続構造。
【請求項2】
上記接続圧着端子(1)に、第3かしめ片(2c)を形成し、上記電線(D)の絶縁被覆部(C)をかしめ固着した請求項1記載の電線接続構造。
【請求項3】
上記第1・2かしめ片(2a)(2b)は、かしめ固着状態で抱き込み状に形成されている請求項1記載の電線接続構造。
【請求項4】
上記第3かしめ片(2c)は、かしめ固着状態で抱き込み状に形成されている請求項2記載の電線接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−21148(P2009−21148A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183939(P2007−183939)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(501149651)染矢電線株式会社 (3)
【Fターム(参考)】