説明

電線端部絶縁キャップ

【課題】 先端の鋭利な単線の導電線によっても底面が破損されることなく所要の硬度と強度を有しキャップ内への挿入を確実容易にでき、挿入状態にあっては、キャップの脱落による不測の事態の発生を確実に防止し、キャップ内への挿入状態を外部からの視認によって挿入量不足等のないようにでき、挿入電線の通電点検を行う際には、キャップの短尺側の対向壁を挟圧して、突起間の間隔を広めて電線結束スリーブとの係合を解除し易くする手段を講じるようにしてある電線端保護キャップ。
【解決手段】 一端を開口した有底の筒状キャップ1であって、透明または半透明樹脂材で内部透視可能に薄肉に形成され、該筒状キャップ1の長さ方向の略中間点箇所の対向位置に筒内面に向かって突出する抜け止め係止用突起2,2が形成され、該突起2,2の形成部と直交する側の側壁3,3を挟圧することにより当該突起2,2間の間隔が広幅に変形する構造としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として単線導体の複数本の被覆電線を結束スリーブを用いて圧接結線した結束電線の端部を挿入して絶縁保護するために用いる電線端部絶縁キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被覆電線には、主として室内配線または各種室内機器の通電に用いられる多芯線と、主として天井裏とか壁内に配線され、電灯その他の固定機器やコンセントへの通電に用いられる単線ケーブルとに大別することができる。本発明は、後者の単線ケーブルを対象としたものであって、この単線ケーブルには単体の被覆線と、通称VVFケーブルと呼ばれている2本または3本の絶縁被覆線を更に外部被覆で覆った二重被覆線とがある。本発明はこれらの単体の被覆線とVVFケーブルとを対象としたものである。
【0003】
而して、このような単体の被覆線やVVFケーブルの導通結線を簡易な手段で行うようにした機具は、本出願人が既に出願し公開されている。この先行技術は、引用特許文献1にみられるように、括線側のVVFケーブルから分岐導線を得るためのVVFケーブルをそれぞれ内外の絶縁被覆を剥離することなく、二重被覆線のままで、外部からコンタクト通電金具を圧入して内部の導電線を挟持させることによって通電するようにしたものである。
【特許文献1】特開平10−144149号公報
【特許文献2】特開平10−125365号公報
【0004】
他方、このような特殊器具を使用することなく、単線ケーブルの被覆を図15のように所定長さ剥離除去してケーブル端を露出させ、このケーブル端に導電線素材で形成されたスリーブを嵌合し、その外周を加圧して圧縮変形させることにより複数の電線どうしを通電可能とし、これに絶縁キャップを被せて絶縁する結線手段も多用されている。(特許文献1の図15,特許文献2の図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるところ、現在使用されている前記絶縁キャップは加熱溶融樹脂溶液、即ちコロイド溶液中に所定径の棒状金属を差し込んで引き上げ、金属棒状に付着した溶融樹脂の固化物を金属棒から強制剥離して得た、所謂ディッピング法によって形成されたキャップが多用されている。
【0006】
しかしながら、現在多様されているこのようなディッピング法によって形成されたキャップの場合、樹脂が柔軟性に富んでいて変形が容易である点で多芯線ケーブルのキャップとしては使用に耐えるものであるが、硬度の高い単線ケーブルの絶縁キャップとして使用すると、ペンチ等の切断工具で切断されて尖鋭化したケーブルの先端でキャップの底部が突き破られて不側に損傷し、漏電事故の遠因となる危険性を孕んでいた。
【0007】
また、該ディッピング法によって形成された従来のキャップにあっては、透明性が必ずしもよくないため、キャップに対する電線端の挿入量と先端位置の確認が困難で奥まで挿入されていない嵌合不良によってキャップが外れることがあり、更には、キャップが滑り易く、そのため電線端へのキャップの嵌合に力を要するものとなっていた。
【0008】
本発明は、このような従来のキャップが有していた諸課題を悉く解決することを目的としてなされたものであって、先端の鋭利な単線の導電線によっても底面が破損されることなく所要の硬度と強度を有し、金属スリーブで圧着挟持させた束線をキャップ内に挿入するに際して確実容易に挿入することができ、一旦挿入した状態にあっては、結束スリーブの挿入後端とキャップ内に突出形成させた突起とを係合させることによってキャップの脱落による不測の事態の発生を確実に防止し、更には、キャップ内に挿入した電線の挿入位置を外部から視認することによって挿入量不足による電線とキャップとの分離を阻止させることができ、キャップを電線から取り外して挿入電線の通電点検を行うに際しては、キャップの横断面形状を長短のあるものとし、長尺側の対向壁に突起を形成し、短尺側の対向壁を挟圧することによって、突起形成壁を外側に向かって膨出変形させ突起間の間隔を広めて電線結束スリーブとの係合を解除し易くする手段を講じることができるものとし、更に加えて、多数のキャップを作業中の腰袋に大小複数種混入して選択使用するとき、混入した多数のキャップの中から作業に必要なサイズのものを指先で選定して取出すことができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的を達成するために講じた本発明の主たる構成を実施例の説明に用いた符号を付加して説明すると、一端を開口した有底の筒状キャップ1であって、透明または半透明樹脂材で内部透視可能に薄肉に形成してあるものとし、該筒状キャップ1の長さ方向の略中間点箇所の対向位置に筒内面に向かって突出する抜け止め係止用突起2,2が形成され、該突起2,2の形成部と直交する側の側壁3,3を挟圧することにより当該突起2,2間の間隔が広幅に変形する構造としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明にいうところの電線端部絶縁キャップは、前記のような構成としたものであるから、ペンチ等の切断工具によって切断され、先端が尖鋭化した単線の導電線であっても、キャップへの挿入時にこの尖鋭化した単線の導電線端によってキャップの底壁が損傷されたり、底壁から導電線が突出して短絡や漏電事故を発生する危険性なく安全に使用することができる。また筒壁内面に突出させた突起によって結束電線端を所定の箇所に安定保持させることができ、その状態をキャップ外から視認することができるので安全に使用することができるという効果を有する。
【0011】
更に、請求項2に記載のように、キャップの構成を、その横断面形状が長円形,長楕円形,長方形のように長短のある異形形状として長尺側の対向壁に抜け止め係止用の突起を形成してあるものとすることによって、キャップに挿入した複数電線のそれぞれについて通電状況や点検確認を行うためにキャップから抜き出す操作の場合、キャップの前記突起形成部分と直交する短尺側の側壁部分を挟圧することによって、突起と突起との相対間隔を広げることにより、電線結束スリーブとの係合を解き易くして引き抜き操作を容易化することができる利点がある。
【0012】
また、請求項3に記載のように、底壁の外表面にサイズ識別用の小突起をサイズ毎に異
る形態のものとして形成しておくことによって、多数のキャップ中から指先の感触で所要サイズのキャップを取り出して使用することができるのでキャップ装着作業を効率よく行うことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するに当たっては、請求項2に記載のように、筒状キャップ1の形態を、その横断面形状が長短のある異形で長尺側の対向壁4,4に抜け止め係止用突起2,2が形成されているものとして実施することができる。また筒状キャップ1の底壁6の外表面にサイズ識別用の小突起5がキャップ1のサイズ毎に異なる形態で突出形成されているものとして実施することができる。このようにすることによって、前記のそれぞれの効果を期待するとことができるものとして効率よく使用することができる。
【実施例】
【0014】
以下本発明の実施例について図面と対比しながら詳述する。
【0015】
別紙添付の図面中、図1乃至図8は本発明にいうところの電線端部絶縁キャップの一形態を説明する図である。而して、図1は第1実施例のキャップを示す正面図、図2はその側面図、図3は同平面図、図4は同底面図である。また、図5は図2の側面図を中央で縦断した縦断面図、図6は図1の正面図を中央で縦断した縦断面図、図7は図1の正面図を上下方向略中間位置で横断して上半部方向を示した横断面図、図8は同キャップの斜視図である。
【0016】
該第1実施例に示した絶縁キャップ1は、特に素材を限定するものではないが、例えばポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニール(PVC),ポリアミド糸合成高分子(商標名=ナイロン),ポリカーボネイト(PC),ポリエチレン(PE),ポリブチレン−テレフタレート(PBT)等の素材を用いることができる。該実施例に示した硬質の電線端部絶縁キャップ1は、ポリプロピレン樹脂を用いてインゼクション成形した有底の筒状物であって、主として電線6本を束ねた電線端の絶縁に使用するものである。その外形はやや先細とした概略長方形の筒体で、その横断面形状は図3,4並びに図7にみられるように、長尺側の側壁(図4において上下に位置する側壁)4,4が外方に向かって突出する円弧状に形成してあり、この側壁4,4と直交する短尺側の側壁3,3は略偏平形状に形成してあり、その外側面には滑り止め用の突出段部3a,3aを複数段形成してある。また、該短尺側側壁3,3の開口部8側の外方にも強度保持と滑り止めを兼ねた突出部7,7を形成してある。更に、該筒体の側壁6の外面にはサイズ識別用の小突起5が該実施例のものにあっては3箇突出形成してある。
【0017】
前記長尺側の側壁4,4の奥行き方向の略中間部分には、それぞれの対向する位置に筒の内面側に向かって突出する突起2,2が図6にみられるように、奥行方向に向かって側面視略三角形に突出形成してあり、該筒内への結束電線挿入姿勢において、図18のように、電線を結束するのに使用した導電性の金属スリーブ13と両側から係合して抜け止め作用を果たすようにしてある。
【0018】
次に、このような構造に形成した電線端部絶縁キャップ1について、その概寸を示しておくと次の通りである。図1における上下長さ≒38mm、図4に示した開口部8の横幅≒14mm、同上下幅≒10mm、内面突起2の上下長さ≒4mm、内面側への突出量≒1mm、図5,7に示した短尺側の側壁3,3の肉厚≒0.8mm、図6,7に示した長尺側の側壁4,4の肉厚≒0.6mmとしてある。このように短尺側の側壁3,3の肉厚に比して、突起2を形成してある長尺側の側壁4,4の肉厚を薄く形成しておくことによって、結束電線のキャップ1への挿入操作を容易にし、キャップ1からの引き抜き操作時における短尺側側壁3,3への加圧による突起2,2間の離間を容易とする配慮をしてある。
【0019】
図9及び図10は、第2実施例の電線端部絶縁キャップ1を示したものであって、該実施例のキャップ1は、前記第1実施例に示したキャップ1に比して長尺側の側壁4の幅を少し小さいものとした中サイズのものであって、その底壁6の外側には2箇のサイズ識別用小突起5を形成してある。その他の点については前記第1実施例に示した電線端部絶縁キャップに準ずる。
【0020】
図11及び図12は、第3実施例の電線端部絶縁キャップ1を示したものであって、該実施例のキャップ1は、前記第1実施例や第2実施例に示したキャップ1に比して長尺側の側壁4の幅も短尺側の側壁3の幅も少し小さいものとして筒内の空間を小さくした小サイズのキャップであって、その底壁6の外側に形成してある小突起の数を1箇としたものである。その他の点は前記第1実施例に示した電線端部絶縁キャップに準ずる。
【0021】
このように、大中小三サイズの電線端部絶縁キャップについて説明したが、サイズ数はこれらの三種類のみに限定されるものではなく四種類か五種類製造されることがある。また、サイズ識別用の小突起5は、必ずしも図示のとおりの円形突起に限られるものではなく、幅方向に伸びる線状のリブであってもよく、幅方向に1本のリブまたは、2本のリブと、長手方向に伸びる1本のリブのように形成することもでき、この識別用小突起は複数種のうち1種類については突起なしのものとして他のサイズのものと識別できるようにして実施することもできる。更に、この小突起は突起とすることで識別の容易性を確保することができるものであるが、突起に代えてディンプルとすることによっても実施可能なものである。このようにした電線端部絶縁キャップの使用手段については次に説明する。
【0022】
ここにいうところの電線ケーブルは図13に示したように、2本の被覆電線10,10を平行させて更にその外周を絶縁被覆した2線VVFケーブル11や図14に示したように、3本の被覆電線10,10,10を平行させて更にその外周を絶縁被覆した3線VVFケーブル11を主として使用する。勿論、VVF線以外の単線の被覆電線も使用する。
【0023】
図面の複雑化を回避するため、以下において2本の単線の被覆電線10,10について使用順序を経時的に説明する。図15に示したように、先ず、結束して通電させようとする所要の本数の被覆電線10,10・・・の先端の被覆11を所要長さ剥離除去して裸の導電線12を形成する。続いて、図16に示したように複数の裸導電線12,12・・・を平行させて導電性金属で形成した電線結束用スリーブ13に対して裸導電線12が先端側に突出するように貫通させて挿通する。このようにした状態で、図17に示したように専用の加圧工具14を用いてスリーブ13を加圧圧縮して変形させることにより複数の電線を一つの電線束にする。通常はスリーブ13の長手方向おいて間隔を隔てて2箇所を加圧する。
【0024】
このように金属スリーブ13によって結束した複数本の被覆電線の束、所謂結束電線15を、スリーブ13の先端から突出した裸導電線12の先端部がキャップ1の底壁16に接当するように奥部にまでキャップ1に挿入する。このようにすることによって、結束スリーブ13の手前側の環状端がキャップ1に形成した突起2,2間を越えて内奥側に入るようにする。このスリーブ13の手前側の環状端が突起2,2よりも奥側に位置することによって結束電線15がキャップ1から抜け出そうとする外力に対し突起2,2と係合し抜け出しを確実に阻止するようにしたのである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明にいうところの電線端部絶縁キャップは、このように従来から多用されているディッピング方式によって形成した願質のキャップであって、電線端の挿入状態を外部から確認しにくく先端破損の多いキャップが有していた課題を悉く解決したものとなっているので、市場において歓迎され大いに普及するものと思われます。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施例のキャップを示す正面図。
【図2】同キャップの側面図。
【図3】同キャップの平面図。
【図4】同キャップの底面図。
【図5】同キャップの中央縦横正面図。
【図6】同キャップの中央縦横側面図。
【図7】同キャップの略中間部分の横断面図。
【図8】同キャップの斜視図。
【図9】第2実施例のキャップを示す図5相当の中央縦横正面図。
【図10】同キャップの斜視図。
【図11】第3実施例のキャップを示す図5相当の中央縦横正面図。
【図12】同キャップの斜視図。
【図13】被覆電線の斜視図。
【図14】他の被覆電線の斜視図。
【図15】被覆電線の被覆剥離状態を示す説明図。
【図16】被覆電線へのスリーブの嵌合を示す説明図。
【図17】被覆電線へ嵌めたスリーブの加圧操作を示す説明図。
【図18】結束電線を示す斜視図。
【図19】結束電線のキャップへの挿通状態を示す斜視図。
【図20】従来例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1 キャップ
2 係止用突起
3 短尺側の側壁
4 長尺側の側壁
5 小突起
6 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を開口した有底の筒状キャップ1であって、透明または半透明樹脂材で内部透視可能に薄肉に形成され、該筒状キャップ1の長さ方向の略中間点箇所における対向位置に筒内面に向かって突出する抜け止め係止用突起2,2が形成され、該突起2,2の形成部と直交する側の側壁3,3を挟圧することにより当該突起2,2間の間隔が広幅に変形する構造とされている電線端部絶縁キャップ。
【請求項2】
筒状キャップ1の横断面形状が長短のある異形で長尺側の対向壁4,4に抜け止め係止用突起2,2が形成されているものである電線端部絶縁キャップ。
【請求項3】
底壁6の外表面にサイズ識別用の小突起5がキャップ1のサイズ毎に異なる形態で形成されている電線端部絶縁キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−59109(P2007−59109A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240664(P2005−240664)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(591028773)株式会社ニチフ端子工業 (23)
【Fターム(参考)】