説明

電話応答システム

【課題】 オペレータと通話している顧客の感情状態の履歴を迅速且つ客観的に記録し得る。
【解決手段】 電話応答システムは、通話データから前記電話端末で入力された第1音声データDaを分離する音源分離部110Aと、音声データDaに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部111と、前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部112と、前記言語情報に基づいて電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部113と、当該判別結果とユーザー情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部117と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して電話端末とオペレータ端末との間を通信接続する電話応答システムにおいて、電話端末とオペレータ端末との間で交信された通話データを監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CTIシステム(Computer Telephony Integration)は、構内電話交換網とコンピュータ通信網とを連携させるシステムであり、電話による顧客からの問い合わせにオペレータが応答するコールセンタで広く使用されている。この種のCTIシステムは、顧客の電話端末から到来した着信呼を待機中のオペレータ端末のいずれかに分配して電話端末とオペレータ端末との間を通信接続するACD(自動呼分配:Automatic Call Distributor)制御機能を有している。
【0003】
また、CTIシステムに電話をかけてきた顧客の個人情報、商品の購入履歴あるいはサービスの利用履歴を保存し活用する技術が開発されている。この技術により、オペレータは、顧客からの問い合わせがあったときに、その顧客に関する過去の履歴を参照して個々の顧客に応じた適切な応答を行うことができる。このようなCTIシステムに関する従来技術は、たとえば、特許文献1(特開2002−215880号公報)に開示されている。
【特許文献1】特開2002−215880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のCTIシステムは、オペレータと通話中の顧客の感情状態の履歴を正確且つ簡便に記録することが難しかった。すなわち、オペレータは、顧客の通話音声に基づいて顧客の感情状態を判断してメモをとらなければならず、煩雑な手作業が必要となるため、顧客対応に集中することが難しくなる場合があった。また、オペレータは顧客の感情状態を主観的に判断するので、顧客の感情状態が客観的に記録されるとは限らない場合がある。さらには、オペレータと通話している顧客の感情状態が極度に悪化した場合、オペレータは適切に対処することができず、オペレータの顧客対応能力が低下する場合がある。
【0005】
上記に鑑みて本発明の主な目的は、オペレータと通話している顧客の感情状態の履歴を迅速且つ客観的に記録し得る電話応答システムを提供することである。また本発明の他の目的は、オペレータと通話している顧客の感情状態が極度に悪化した場合であっても、顧客の感情状態の履歴を客観的に記録しつつ、オペレータの顧客対応能力の低下を防止し得る電話応答システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明による第1の電話応答システムは、電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データを分離する音源分離部と、前記第1音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部と、前記言語情報に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、前記感情判別部による判別結果と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明による第2の電話応答システムは、電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データを分離する音源分離部と、前記第1音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部と、前記音声特徴量のうちの韻律的特徴量および前記言語情報に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、前記感情判別部による判別結果と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明による第3の電話応答システムは、電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のうちのいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データを分離する音源分離部と、前記第1音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、前記音声特徴量のうちの韻律的特徴量に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、前記感情判別部による判別結果と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明による第4の電話応答システムは、電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データと前記オペレータ端末で入力された第2音声データとを分離する音源分離部と、前記第2音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部と、前記言語情報に現れた語彙が予め登録されたキーワードに適合するか否かを判定する語彙認識部と、前記語彙認識部で適合した語彙の発話時刻に続く所定時間内に、前記音声特徴量のうちの韻律的特徴量に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、前記語彙認識部で適合したキーワードとこれに対応する前記感情状態と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記第1〜第3の電話応答システムは、電話端末を使用するユーザーの第1音声データに基づいてユーザーの感情状態を判別し、当該判別結果を当該ユーザーに関する情報に関連付けてユーザー情報記録部に記録する。したがって、オペレータと通話している電話端末のユーザーの感情状態の履歴を迅速且つ客観的に記録することができる。また、オペレータ端末のオペレータと通話している電話端末のユーザーの感情状態に関わらず、オペレータの主観に左右されずに顧客の感情状態を客観的に記録することができ、これにより電話端末のユーザーに対するオペレータの対応能力の向上が可能になる。
【0011】
また、上記第4の電話応答システムは、オペレータ端末を使用するオペレータが発話した語彙が登録キーワードに適合したときに、当該適合した語彙の発話時刻に続く所定時間内に電話端末のユーザーが示した感情状態を判別することができ、その登録キーワードとこれに対応する感情状態と当該ユーザーに関する情報とを関連づけてユーザー情報記録部に記録する。したがって、オペレータ端末のオペレータが発話した登録キーワードに対して、電話端末のユーザーがどのように反応したのかを客観的に示す感情状態の履歴を記録することができる。また、オペレータは、手作業で電話端末のユーザーの感情状態を主観的に判断して記録せずに済むので、電話端末のユーザーに対するオペレータの対応能力の向上と作業の効率化とが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る種々の実施例について説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る実施例の電話応答システム1の概略構成を示すブロック図である。この電話応答システム1は、公衆回線網30Aに接続されたゲートウェイサーバ10Aと、パケット交換網30Bに接続されたゲートウェイサーバ10Bとを有する。電話応答システム1は、さらに、LAN(ローカルエリアネットワーク)15、音声監視サーバ11、呼管理サーバ12および履歴管理サーバ13を有している。これらサーバ10A,10B,11〜13は、LAN(ローカルエリアネットワーク)15を介して相互接続されている。
【0014】
コールセンター2は、複数のオペレータ端末211,212,…,21N(Nは3以上の整数)と管理者端末23とを含み、これらオペレータ端末211〜21Nの各々がオペレータによって操作される。また、これらオペレータ端末211〜21Nと管理者端末23とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)20を介して相互に接続されている。電話応答システム1のLAN15とコールセンター2のLAN20とはハブなどの中継装置(図示せず)を介して接続されている。また、オペレータ端末211〜21Nは、それぞれ、通話データを記録する録音装置221〜22Nを有している。後述するように音声監視サーバ11の転送制御部(図示せず)からの制御指示に応じて、録音装置221〜22Nは録音データをLAN20,15を介して音声監視サーバ11に転送することができる。
【0015】
公衆回線網30Aには、移動体通信端末や固定電話機などの不特定多数の電話端末311,312,…,31M(Mは3以上の整数)が接続され、パケット交換網30Bには、電話端末321,322,…,32P(Pは3以上の整数)が接続されている。
【0016】
呼管理サーバ12は、電話端末から到来した呼に応じて、オペレータ端末の呼び出し、応答、通話および切断などのシーケンスを制御する。なお、呼管理サーバ12は、IETF(Internet Engineering Task Force)の技術仕様であるSIP(Session Initiation Protocol)や、ITU−T(ITU Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合・電気通信標準化部門)勧告のH.323などの呼制御プロトコルを使用することが可能である。
【0017】
ゲートウェイサーバ10Aまたは10Bが電話端末31iまたは32iから着信呼を受信すると、呼管理サーバ12は、端末管理テーブル(図示せず)を参照して、コールセンター2のオペレータ端末211〜21Mを検索して待機中の端末のいずれかを選択する。呼管理サーバ12は、当該選択された端末21iへのルーティングをする旨ゲートウェイサーバ10A,10Bに指示する。ゲートウェイサーバ10Aは、呼管理サーバ12による呼制御に従って、電話端末31i(iは1〜Mのうちのいずれか)からの着信呼をコールセンター2のオペレータ端末21j(jは1〜Nのうちのいずれか)に転送して電話端末31iとオペレータ端末21jとの間を通信接続する機能を有する。同様にゲートウェイサーバ10Bも、呼管理サーバ12による呼制御に従って、電話端末32iからの着信呼をコールセンター2のオペレータ端末21j(jは1〜Nのうちのいずれか)に転送して電話端末32iとオペレータ端末21jとの間を通信接続する機能を有している。
【0018】
履歴管理サーバ13は、オペレータ端末21jまたは音声監視サーバ11から転送された顧客の履歴情報を記録する機能と、オペレータ端末21jからの要求に応じて、記録されている顧客の履歴情報をオペレータ端末21jに転送する機能とを有している。
【0019】
そして、音声監視サーバ11は、電話端末31iまたは32iとオペレータ端末21jとの間で交信された通話データを監視する機能を有する。図2は、本発明に係る第1実施例の音声監視サーバ11(以下、音声監視サーバ11Aと呼ぶ。)の概略構成を示す機能ブロック図である。図2に示される音声監視サーバ11Aは、通話データのうち、電話端末31iまたは32iで入力された音声データを監視して電話端末31iまたは32iのユーザーである顧客の感情状態を判別する機能を有する。この音声監視サーバ11Aは、音源分離フィルタ110A、音声認識部111、言語解析部112、第1感情判別部113、第2感情判別部115A、総合判別部116Aおよび警報通知部118を含む。顧客情報記録部(ユーザー情報記録部)117は、図1の履歴管理サーバ13に組み込まれており、データベースを構成する顧客情報(たとえば、顧客のプロフィール、顧客からの問い合わせ時刻、顧客からの問い合わせ内容、オペレータによる応答内容)を蓄積する。
【0020】
音源分離フィルタ110Aは、オペレータの音声サンプルファイル120を用いて、LAN15を通して転送された通話データから、電話端末31iまたは32iで入力された音声データDaを分離する。音源分離フィルタ110Aには現在交信中の通話データが転送される。なお、オペレータ端末211〜21Nは、それぞれ、通話データを記録する録音装置221〜22Nを有している。現在交信中の通話データの代わりに、音声監視サーバ11Aの転送制御部(図示せず)は、録音装置221〜22Nに制御指示を送信して録音装置221〜22Nから録音データを音声監視サーバ11Aに転送させることができる。
【0021】
通話データから分離された音声データDaは、第1音声認識部111Aと第2音声認識部111Bとに供給される。第1音声認識部111Aは、音声データDaに対して、たとえば公知の隠れマルコフモデル(HMM:Hidden Markov Model)に従った音声認識を実行して音声特徴量を取得する。第2音声認識部111Bの機能は第1音声認識部111Aの機能と同じである。音声特徴量としては、母音部における音声基本周波数、音量(パワー)、第1フォルマント周波数、第2フォルマント周波数、第3フォルマント周波数、スペクトル傾斜、音韻長(音韻の継続時間)、発話速度および調音位置が挙げられるが、これらに限るものではない。音声特徴量は、韻律を示す特徴量(韻律的特徴量)と音韻を示す特徴量(音韻的特徴量)とを含む。ここで、音韻的特徴量は、発声内容を表す弁別性を持った音声情報を意味する。また、韻律的特徴量は、たとえば、音声のパワー(音量)、発話速度および声質を示す情報を含む。
【0022】
言語解析部112は、第1音声認識部111Aから供給された音声特徴量を解析して、音声が表す語彙、構文構造および文脈構造などの言語情報を生成する。次いで、第1感情判別部113は、テーブル記録部121に記録された判定テーブル121aを参照しつつ、言語解析部112から供給された言語情報を解析して顧客の感情状態を判別する。たとえば、判定テーブル121aには、予め設定された複数の感情状態とこれら感情状態にそれぞれ関連する言語情報が規定されている。予め設定される感情状態としては、たとえば、「平静」、「歓喜」、「満足」、「緊張」、「怒り」、「不満」、「不安」および「悲哀」が挙げられる。判定テーブル121aには、「平静」という感情状態に関連する語彙として、たとえば「うれしい」、「いいね」、「ありがとう」といった語彙を規定したり、「怒り」という感情状態に関連する語彙として、たとえば、「ふざけるな」、「どうするんだ」、「いらない」、「もういい」といった語彙を規定したりすることができる。第1感情判別部113は、言語解析部112から供給された言語情報を、判定テーブル121aに規定された複数の感情状態に分類する(振り分ける)ことによって顧客の感情状態を判別することができる。
【0023】
この結果、第1感情判別部113は、たとえば、下記表1に示すように感情状態に該当(ヒット)する言語状態の割合(ヒット率)を算出することができる。
【0024】
【表1】

【0025】
一方、第2感情判別部115Aは、テーブル記録部122に記録された判定テーブル122aを参照して、第2音声認識部111Bから供給された音声特徴量のうち韻律的特徴量のみに基づいて顧客の感情状態を判別する。具体的には、判定テーブル122aには、予め設定された複数の感情状態とこれら感情状態にそれぞれ関連する韻律的特徴量の閾値が規定されている。予め設定される感情状態としては、たとえば、「平静」、「歓喜」、「満足」、「緊張」、「怒り」、「不満」、「不安」および「悲哀」が挙げられる。たとえば、「不満」という感情状態に関連する韻律的特徴量「発話速度」、「音量」、「フォルマント周波数」の各閾値が規定される。第2感情判別部115Aは、「発話速度」が基準速度である閾値を超え、「音量」が基準パワーである閾値を超えれば、「不満」を示す割合を高い値に設定できる。第2感情判別部115Aは、第1感情判別部113と同様に、各感情状態に該当する言語状態の割合を算出することが可能である。
【0026】
総合判別部116Aは、第1感情判別部113による判別結果と第2感情判別部115Aによる判別結果とに基づいて顧客の感情状態を総合的に判別し、その判別結果を履歴管理サーバ13に転送して顧客情報記録部117に記録する。たとえば、第1感情判別部113による判別結果である各感情状態のヒット率と、第2感情判別部115Aによる判別結果である各感情状態のヒット率とを平均化することによって顧客の感情状態を総合的に判別することが可能である。
【0027】
警報通知部118は、総合判別部116Aによる判別結果に基づいて顧客の感情状態を監視し、顧客の感情状態が悪化していると判定した場合には、図1の管理者端末23にその判定結果とオペレータ端末のID(識別子)とを通知する。これにより、管理者端末23のユーザーである管理者は、その判定結果を知って、当該オペレータ端末を使用するオペレータの代わりに顧客と通話することができる。
【0028】
上記の如く、第1実施例の音声監視サーバ11Aを有する電話応答システム1は、オペレータと通話している顧客の感情状態の履歴を迅速且つ客観的に履歴管理サーバ13に記録することができる。よって、オペレータと通話している顧客の感情状態に関わらず、オペレータの主観に左右されずに顧客の感情状態を客観的に記録することができる。また、顧客の感情状態が悪化した場合には、管理者端末23を使用する管理者はその感情状態を知ることができるので、オペレータの代わりに適切且つ迅速に対処することができる。したがって、音声監視サーバ11により顧客対応能力の向上が可能になる。
【0029】
次に、本発明に係る第2実施例の音声監視サーバ11(以下、音声監視サーバ11Bと呼ぶ。)について以下に説明する。図3は、本発明に係る第2実施例の音声監視サーバ11Bの概略構成を示すブロック図である。図3に示される音声監視サーバ11Bは、音源分離フィルタ110B、音声認識部111、言語解析部112、語彙認識部200、第2感情判別部115B、総合判別部116Bおよび警報通知部118を含む。顧客情報記録部(ユーザー情報記録部)117は、図2の顧客情報記録部117と同様にデータベースを構成する顧客情報を蓄積する。
【0030】
音源分離フィルタ110Bは、オペレータの音声サンプルファイル120を用いて、LAN15を通して転送された通話データから、電話端末31iまたは32iで入力された音声データDaと、オペレータ端末21jで入力された音声データDbとを分離する。音源分離フィルタ110Aには現在交信中の通話データが転送されてもよいし、あるいは、録音装置221〜22Nのいずれかから録音データが転送されてもよい。
【0031】
音声認識部111は、図2の音声認識部111と同じ機能を有する。ただし、第1音声認識部111Aは、音声データDbに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得し、第2音声認識部111Bは、音声データDaに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する。言語解析部112は、図2の言語解析部112と同じ機能を有し、第1音声認識部111Aから供給された音声特徴量を解析して、音声が表す語彙、構文構造および文脈構造などの言語情報を生成する。
【0032】
語彙認識部200は、テーブル記録部121に記録されたキーワードテーブル(辞書)121bを参照しつつ、言語解析部112から供給された言語情報に現れた語彙が、キーワードテーブル121bに登録されたキーワードに適合するか否かを判定する。たとえば、キーワードテーブル121bに商品名「xxx」やサービス名「yyy」が登録されている場合、語彙認識部200は、言語情報に現れた語彙がそれら商品名「xxx」やサービス名「yyy」と一致または類似する名称を含むか否かを判定することができる。語彙認識部200は、言語情報に現れた語彙が登録キーワードに適合すると判定した場合には、その判定結果と当該語彙の発話時刻とを第2感情判別部115Bと総合判別部116Bとに供給する。
【0033】
第2感情判別部115Bは、図2の第2感情判別部115Aと同様に、テーブル記録部122に記録された判定テーブル122aを参照して、第2音声認識部111Bから供給された音声特徴量のうち韻律的特徴量のみに基づいて顧客の感情状態を判別する機能を有する。特に本実施例の第2感情判別部115Bは、語彙認識部200で適合した語彙の発話時刻に続く所定時間、たとえば10秒の時間帯における顧客の感情状態を判別する機能を有している。たとえば、オペレータが商品名「xxx」を発話したとき、第2感情判別部115Bは、その発話時刻に続く所定時間における顧客の感情状態を判別することができる。その判別結果は、登録キーワードに関連づけられて総合判別部116Bに与えられる。
【0034】
総合判別部116Bは、語彙認識部200による認識結果と第2感情判別部115Bによる判別結果とに基づいて、登録キーワードに関連する顧客の感情状態を判別することができる。その判別結果は、履歴管理サーバ13に転送されて顧客情報記録部117に記録される。したがって、顧客情報記録部117には、登録キーワードと当該登録キーワードに反応した顧客の感情状態とを関連づけて保存することができる。
【0035】
上記の如く、第2実施例の音声監視サーバ11Bを有する電話応答システム1は、オペレータが発話した登録キーワードに対して、顧客がどのように反応したかを客観的に示す感情状態の履歴を顧客情報記録部117に記録することができる。したがって、オペレータは、手作業で顧客の感情状態を主観的に判断して記録せずに済むので、オペレータの顧客対応能力の向上と作業の効率化とが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る実施例の電話応答システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1実施例の音声監視サーバの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る第2実施例の音声監視サーバの概略構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電話応答システム
2 コールセンター
10A,10B ゲートウェイサーバ
11 音声監視サーバ
12 呼管理サーバ
13 履歴管理サーバ
211〜21N オペレータ端末
221〜22N 録音装置(RD)
23 管理者端末
311〜31M 電話端末(UT)
321〜32M 電話端末(UT)
110A、110B 音源分離フィルタ
111 音声認識部
112 言語解析部
113 第1感情判別部
115A,115B 第2感情判別部
117 顧客情報記録部(顧客情報データベース)
118 警報通知部
121B キーワードテーブル
200 語彙認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、
前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データを分離する音源分離部と、
前記第1音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、
前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部と、
前記言語情報に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、
前記感情判別部による判別結果と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、
を備えることを特徴とする電話応答システム。
【請求項2】
電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、
前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データを分離する音源分離部と、
前記第1音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、
前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部と、
前記音声特徴量のうちの韻律的特徴量および前記言語情報に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、
前記感情判別部による判別結果と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、
を備えることを特徴とする電話応答システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の電話応答システムであって、前記言語情報は、語彙、構文構造および文脈構造の中から選択された少なくとも1つの言語要素を含むことを特徴とする電話応答システム。
【請求項4】
電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のうちのいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、
前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データを分離する音源分離部と、
前記第1音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、
前記音声特徴量のうちの韻律的特徴量に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、
前記感情判別部による判別結果と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、
を備えることを特徴とする電話応答システム。
【請求項5】
請求項2または4記載の電話応答システムであって、前記韻律的特徴量は、発話速度および音量を少なくとも含むことを特徴とする電話応答システム。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の電話応答システムであって、前記感情判別部は、前記言語情報を予め定められた複数種の感情状態に分類することによって前記ユーザーの感情状態を判別することを特徴とする電話応答システム。
【請求項7】
請求項6記載の電話応答システムであって、前記複数種の感情状態は、平静、歓喜、満足、緊張、怒り、不満、不安および悲哀の中から選択された少なくとも1つの状態を含むことを特徴とする電話応答システム。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の電話応答システムであって、前記感情判別部で判別された感情状態が特定の感情状態を示すときに管理者端末に警報を通知する警報発信部をさらに備えることを特徴とする電話応答システム。
【請求項9】
電話端末から到来した着信呼を複数のオペレータ端末のいずれかに分配する呼分配制御を実行して前記電話端末と前記オペレータ端末との間を通信接続し、前記電話端末と前記オペレータ端末との間で交信された通話データを監視する電話応答システムであって、
前記通話データから前記電話端末で入力された第1音声データと前記オペレータ端末で入力された第2音声データとを分離する音源分離部と、
前記第2音声データに対して音声認識を実行して音声特徴量を取得する音声認識部と、
前記音声特徴量を解析して言語情報を生成する言語解析部と、
前記言語情報に現れた語彙が予め登録されたキーワードに適合するか否かを判定する語彙認識部と、
前記語彙認識部で適合した語彙の発話時刻に続く所定時間内に、前記音声特徴量のうちの韻律的特徴量に基づいて前記電話端末のユーザーの感情状態を判別する感情判別部と、
前記語彙認識部で適合したキーワードとこれに対応する前記感情状態と前記ユーザーに関する情報とを関連づけて記録するユーザー情報記録部と、
を備えることを特徴とする電話応答システム。
【請求項10】
請求項9記載の電話応答システムであって、前記言語情報は、語彙、構文構造および文脈構造の中から選択された少なくとも1つの言語要素を含むことを特徴とする電話応答システム。
【請求項11】
請求項9または10記載の電話応答システムであって、前記韻律的特徴量は、発話速度および音量を少なくとも含むことを特徴とする電話応答システム。
【請求項12】
請求項9から11のうちのいずれか1項に記載の電話応答システムであって、前記感情判別部は、前記言語情報を予め設定された複数種の感情状態に分類することによって前記ユーザーの感情状態を判別することを特徴とする電話応答システム。
【請求項13】
請求項12記載の電話応答システムであって、前記感情状態は、平静、歓喜、満足、怒り、不満、不安および悲哀の中から選択された少なくとも1つの状態を含むことを特徴とする電話応答システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−53826(P2008−53826A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225582(P2006−225582)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】