説明

露光装置の制御方法

【課題】クリーンルーム内の露光装置の前まで行かずにレシピを作成することにより、効率良く容易にしかもミスも無く作成されたレシピを使用することができる露光装置の制御方法を提供する。
【解決手段】露光装置1から離れた場所にあるコンピュータ100に予め露光装置の装置情報110を格納しておき、当該コンピュータに、使用する予定のマスクおよび基板の情報130を入力することで、当該コンピュータ上で、装置情報を参照しながら露光作業を行うためのレシピ120を作成し、そのレシピを、可搬式の記憶媒体200を介して、あるいはデータ転送路を介して、露光装置の制御装置5内部の記憶部6に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシピ(パラメータファイル)を用いて露光を行う露光装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶カラーフィルタを作成するための露光装置は、照明光学系、マスクを保持して位置決めするマスクステージ、基板を保持して位置決めする基板ステージ、マスクのアライメントマークと基板のアライメントマークとの相対位置を検出するアライメント検出系、露光作業の全般を制御するための制御装置などを備えており、制御装置がその内部の記憶部に格納したレシピに基づいて各要素を制御することで、照明光学系からの光束を、マスクステージによって位置決めされたマスクに照射し、マスクに形成されたマスクパターンを、基板ステージによって位置決めされた基板の感光剤に投影し転写させる。
【0003】
この場合のレシピは、露光工程を制御するための一群のパラメータ(レイアウト情報、アライメント情報、露光量やショット中心座標等の露光情報)を含むパラメータファイルであり、基板やマスクの種類ごとに露光装置に入力する必要がある。このようなレシピは、異機種の露光装置の間では当然に異なり、該当する露光装置の機能や諸元に適合するように作成する必要がある。
【0004】
従来、レシピの入力は、設計者が予め設定情報を記載した用紙を、図5に示すように、作業者Pがクリーンルーム内にある露光装置1まで持って行き、その場所で露光装置に備わっている入力装置2によりレシピを作成し、露光装置1の制御装置内部の記憶部(図示略)に格納している。また、同じレシピでも、露光装置1ごとに作成して入力している。
【0005】
また、他の露光装置からレシピを取得して、パラメータの増減により、そのレシピ内のパラメータの構成を自己(露光装置)に適合したパターン構成に変更し、コンフィグレーションファイルに基づいてそのパラメータの値を変更して、自己のメモリに格納する方法も開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ネットワークを構成している複数の露光装置と、サーバとを備えて、サーバが、ソフトウェアのバージョンアップがなされる露光装置で設定すべきパラメータの初期値を、他の露光装置における同一種類のパラメータのパラメータ値に基づいて求めることが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−37051号公報
【特許文献2】特開2000−306823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のように作業者が露光装置の前まで行ってレシピを作成し入力する方法は、非常に効率が悪かった。また、同じレシピを使用する場合であっても、露光装置ごとに入力作業を行わなければならないため、非常に面倒で手間がかかっていた。また、露光装置まで行っての人手による入力作業は、入力ミスが起きやすいという問題もあった。この点は、特許文献1に記載の技術においても同様であった。また、特許文献2に記載の技術では、ソフトウェアのバージョンアップ時のパラメータ設定に伴う生産停止や装置停止の時間短縮を目的としたものであり、レシピ作成時のものではない。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーンルーム内の露光装置の前まで行かずにレシピを作成することにより、効率良く容易にしかもミスも無く作成されたレシピを使用することができる露光装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 制御装置内部の記憶部に格納されたレシピに基づいて制御を行うことで、照明光学系からの光束を、マスクステージによって位置決めされたマスクに照射し、該マスクに形成されたマスクパターンを、基板ステージによって位置決めされた基板に転写する露光装置の制御方法において、
前記露光装置から離れた場所にあるコンピュータに予め前記露光装置の装置情報を格納する工程と、
前記コンピュータに、使用される前記基板の情報を少なくとも入力することで、前記装置情報、及び入力或いは予め格納された前記マスクの情報に基づいて、露光作業を行うための前記レシピを前記コンピュータ上で作成する工程と、
を備え、
前記コンピュータで作成された前記レシピは、可搬式の記憶媒体を介して、あるいはデータ転送路を介して、前記制御装置の前記記憶部に格納されることを特徴とする露光装置の制御方法。
(2) 前記制御装置の記憶部に格納されているレシピは、可搬式の記憶媒体を介して、あるいはデータ転送路を介して、前記コンピュータに取り込み可能であり、
該レシピは、該コンピュータ上で、前記装置情報、及び前記マスクの情報に基づいて編集され、
前記コンピュータで編集されたレシピは、前記可搬式の記憶媒体を介して、あるいは前記データ転送路を介して、前記制御装置の前記記憶部に格納されることを特徴とする(1)に記載の露光装置の制御方法。
(3) 前記露光装置の制御装置内部の記憶部に格納されているレシピを、可搬式の記憶媒体を介して、あるいはデータ転送路を介して、同一の仕様を有する別の露光装置の制御装置内部の記憶部にコピー可能であることを特徴とする(1)または(2)に記載の露光装置の制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光装置から離れた場所にあるコンピュータによってレシピを作成するので、効率良く容易にしかもミス無くレシピを作成することができる。また作成したレシピは、可搬式の記憶媒体を介してあるいはデータ転送路を介して、露光装置の記憶部に格納されるので、クリーンルーム内の面倒な入力作業をほとんど省略することができて、露光作業の時間短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の制御方法の概略説明図である。
【図2】同方法の概略を示すブロック図である。
【図3】同方法で使用するパーソナルコンピュータのディスプレイの表示画像の一例を示す図である。
【図4】同ディスプレイの表示画像の別の例を示す図である。
【図5】従来の制御方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る露光装置の制御方法について図面を参照して説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、クリーンルーム10内に装備された複数台A〜Cの露光装置1は、照明光学系、マスクステージ、基板ステージ、アライメント検出系(いずれも図示せず)、制御装置5などを備えている。制御装置5には、各種のプログラムや情報を記憶する記憶部6が備わっており、入力装置2を介して、記憶部6に外部データを取り込んだり、内部データを外部に取り出したりできるようになっている。
【0014】
この露光装置1は、制御装置5内部の記憶部6に格納されたレシピに基づいて制御を行うことで、照明光学系からの光束を、マスクステージによって位置決めされたマスクに照射し、マスクに形成されたマスクパターンを、基板ステージによって位置決めされた基板の感光剤に投影し転写するものである。
【0015】
この場合のレシピ120は、露光装置1から離れた場所(クリーンルーム外)にあるパーソナルコンピュータ100において作成される。パーソナルコンピュータ100には、予め各露光装置(A〜C)1の装置情報110を格納してあり、作業者Pが、これから使用する予定のマスクおよび基板の情報130をキーボード等の入力手段103を介してパーソナルコンピュータ100に入力することにより、内蔵された演算手段101が当該パーソナルコンピュータ100上で、装置情報110に基づいて、露光作業を行うための各露光装置(A〜C)1ごとのレシピ(A〜C)120を作成する。
【0016】
そこで、この作成したレシピ120をいったん可搬式の記憶媒体であるUSBメモリ200に格納した後、作業者PがUSBメモリ200をクリーンルーム内に持ち込んで、各露光装置1の入力装置2に設けてあるUSBジャックに差し込み、格納してある各レシピ120を該当する各露光装置(A〜C)1の制御装置5内部の記憶部6に格納する。これにより、レシピ120の入力を完了する。なお、USBメモリ200には、インターロック機能が備えられており、コンピュータ100或いは露光装置1でのみデータを取り出すように設定することができる。
【0017】
この場合の装置情報110には、アライメント検出系の情報、基板ステージの可動能力等の情報、マスクステージの可動能力等の情報、アパーチャの動き等に関する情報、マスクと基板のギャップ制御に関する情報、照明光学系の能力等の関する情報が含まれている。また、マスク情報には、マスクのサイズ、厚さ、アライメントマークの位置等に関する情報が含まれている。基板情報には、基板のサイズ、厚さ、アライメントマークの位置、露光する位置、感光剤等に関する情報が含まれている。なお、各露光装置に複数のマスクが準備されており、該マスクを選択的に使用する場合には、マスク情報もパーソナルコンピュータ100内に格納するようにしてもよい。さらに、レシピ120には、レイアウト情報、アライメント情報、露光位置情報、露光量の情報などが含まれている。
【0018】
従って、パーソナルコンピュータ100は、装置情報110及び使用されるマスク情報に基づいて、基板に所定の露光を行う際に各要素を駆動するためのパラメータをレシピ120として作成している。例えば、ステップ露光を行う露光装置1のレシピ120を作成する際、基板ステージの可動能力の情報、マスクステージの可動能力の情報が予めコンピュータ100に格納されていることで、演算手段101は、所望のステップ動作を確実に行うことができるようにレシピ120を作成できる。また、アライメント検出系の情報やマスクのアライメントマークの位置情報も予めコンピュータ100に格納されるので、演算手段101は、ステップ動作した際に、アライメント作業が確実に行えるようにレシピ120を作成できる。
【0019】
また、パーソナルコンピュータ100は、レシピエディタ機能を有しており、図3に示すような画面をディスプレイ102上に表示することで、設定パラメータを確認することができる。例えば、ショットサイズ、露光順番、アライメントカメラの位置、ギャップセンサの指定座標、アパーチャの有無などを視覚的に分かりやすく示すことができる。また、図4に示すようなシミュレーション画像を入力項目ごとに切り替えて表示することにより、その画像を見ながら設定内容が適正であるかどうかの確認ができるようになっている。例えば、図4はアパーチャの位置などを示しており、31〜34はアパーチャ、Mはマスク、30はアパーチャにより形成される照射領域を示している。このような画像を表示することによって、照射領域が適切に設定されているかを視覚的に確認することができる。また、基板ステージとマスクステージを相対的に移動させながら露光を行う場合には、このようなシミュレーション画像を表示することで、方向間違いといったケアレスミスを防ぐことができる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態の露光装置の制御方法によれば、露光装置1から離れた場所にあるパーソナルコンピュータ100に予め露光装置1の装置情報110を格納する工程と、パーソナルコンピュータ100に、使用される基板の情報を入力することで、コンピュータ上で、装置情報、及び入力或いは予め格納されたマスクの情報に基づく露光作業を行うためのレシピを作成する工程と、を備えるので、効率良く容易にしかもミス無くレシピを作成することができる。また、制御装置5には、パーソナルコンピュータ100で作成されたレシピ120が、USBメモリ200を介して、記憶部に格納されるので、クリーンルーム内の面倒な入力作業をほとんど省略することができて、露光作業の時間短縮を図ることができる。
【0021】
なお、上記においては、USBメモリ200を用いて、パーソナルコンピュータ100で作成したレシピ120を露光装置1の記憶部6に入力する場合を示したが、LANなどのデータ転送路を介して、レシピ120を露光装置1に転送することもできる。
【0022】
また、上記においては、パーソナルコンピュータ100上で全く新しいレシピ120を装置情報110を参照して作成する場合を想定して説明したが、露光装置1の制御装置5内部の記憶部6に格納されているレシピを、USBメモリ200を介して、あるいはデータ転送路を介して、パーソナルコンピュータ100に取り込み、そのレシピを、当該コンピュータ100上で、装置情報110などに基づいて再編集することにより、新規のレシピ120として再生させて、そのレシピ120を再びUSBメモリ200等を介して、露光装置1の制御装置5内部の記憶部6に格納するようにしてもよい。このようにすれば、はじめからレシピ120を作成する手間が省ける。
【0023】
また、照明光学系の照度等、使用によって変化する露光装置1の装置情報110は、USBメモリ200を介して、あるいはデータ転送路を介して、パーソナルコンピュータ100に取り込み、パーソナルコンピュータ100上の装置情報110を編集するようにしてもよい。これにより、現状の露光装置の装置情報110に基づいてレシピ120を作成することができる。
【0024】
また、露光装置1の制御装置5内部の記憶部6に格納されているレシピを、USBメモリ200等を介して、同一の使用を有する別の露光装置1の制御装置5内部の記憶部6にコピーするようにしてもよい。このようにすれば、露光装置1毎にレシピ120を作成する手間が省ける。
【0025】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 露光装置
5 制御装置
6 記憶部
100 パーソナルコンピュータ
110 装置情報
120 レシピ
200 USBメモリ(可搬式の記憶装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置内部の記憶部に格納されたレシピに基づいて制御を行うことで、照明光学系からの光束を、マスクステージによって位置決めされたマスクに照射し、該マスクに形成されたマスクパターンを、基板ステージによって位置決めされた基板に転写する露光装置の制御方法において、
前記露光装置から離れた場所にあるコンピュータに予め前記露光装置の装置情報を格納する工程と、
前記コンピュータに、使用される前記基板の情報を少なくとも入力することで、前記装置情報、及び入力或いは予め格納された前記マスクの情報に基づいて、露光作業を行うための前記レシピを前記コンピュータ上で作成する工程と、
を備え、
前記コンピュータで作成された前記レシピは、可搬式の記憶媒体を介して、あるいはデータ転送路を介して、前記制御装置の前記記憶部に格納されることを特徴とする露光装置の制御方法。
【請求項2】
前記制御装置の記憶部に格納されているレシピは、可搬式の記憶媒体を介して、あるいはデータ転送路を介して、前記コンピュータに取り込み可能であり、
該レシピは、該コンピュータ上で、前記装置情報、及び前記マスクの情報に基づいて編集され、
前記コンピュータで編集されたレシピは、前記可搬式の記憶媒体を介して、あるいは前記データ転送路を介して、前記制御装置の前記記憶部に格納されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置の制御方法。
【請求項3】
前記露光装置の制御装置内部の記憶部に格納されているレシピを、可搬式の記憶媒体を介して、あるいはデータ転送路を介して、同一の仕様を有する別の露光装置の制御装置内部の記憶部にコピー可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の露光装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−22309(P2011−22309A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166502(P2009−166502)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】