説明

露光装置及び画像形成装置

【課題】レンズホルダの基板当接面と基板との絶縁性を安定的に確保することができる露光装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】露光装置は、複数の発光素子と、当該複数の発光素子が搭載された基板と、複数の発光素子から放射された光をそれぞれ結像させる光学系と、基板が当接する基板当接面を有し、さらに光学系を支持するレンズホルダとを備える。レンズホルダは、金属で形成された母材部と、絶縁性を有する樹脂で形成され、上記の基板当接面を有する基板当接部とが一体に形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等)では、一様に帯電された感光体ドラムの表面を露光装置(例えばLEDヘッド)で露光することにより、静電潜像を形成する。
【0003】
露光装置は、例えば、LEDアレイが実装された基板と、基板を支持するレンズホルダと、LEDアレイに対向するように上記基板に取り付けられたロッドレンズアレイとを有している。基板に実装されたLEDアレイから出射された光は、ロッドレンズアレイを通過して収束され、ロッドレンズアレイの結像位置に配設された感光体ドラムの表面に照射され、静電潜像が形成される。
【0004】
一般に、基板及びレンズアレイを保持するレンズホルダは、剛性を有するアルミニウムにより構成されている(例えば、特許文献1)。また、レンズホルダは、高精度に加工された基板当接面を有しており、基板の両縁近傍がレンズホルダの基板当接面に当接し、保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−154235号公報(段落0006、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の露光装置では、レンズホルダがアルミニウムで構成されているため、その基板当接面も導電性を有している。そのため、基板とレンズホルダの基板当接面との絶縁性を確保するために、基板の表面(レンズホルダの基板当接面に当接する面)のレジスト層を厚く形成する必要がある。しかしながら、このようにレジスト層を厚くすると、レンズホルダに基板を装着する際に、基板の表面がレンズホルダの基板当接面と接触し、あるいは干渉して基板の表面に傷が生じ、この傷により基板の絶縁性が損なわれる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、レンズホルダの基板当接面と基板との絶縁性を安定的に確保することができる露光装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の露光装置は、複数の発光素子と、当該複数の発光素子が搭載された基板と、複数の発光素子から放射された光をそれぞれ結像させる光学系と、基板が当接する当接面を有し、さらに光学系を支持するレンズホルダとを備え、レンズホルダが、金属で形成された母材部と、絶縁性を有する樹脂で形成され、上記の基板当接面を有する基板当接部とが一体に形成されたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、上記の露光装置と、露光装置により露光され、静電潜像が形成される静電潜像担持体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、母材部によりレンズホルダの剛性を確保し、絶縁性を有する基板当接部によりレンズホルダと基板との絶縁性を安定的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドの構成を示す横断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドの構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドのレンズホルダの上面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダを下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダを上方から見た分解斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダを下方から見た分解斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダの横断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるLEDヘッドのレンズホルダの上面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダを下方から見た斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダを上方から見た分解斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダを下方から見た分解斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダの要部を拡大して示す斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態において、環境温度が変化した場合のレンズホルダの変位量の測定結果を示すグラフである。
【図15】図14に示した変位量の測定位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
第1の実施の形態.
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置としてのプリンタ11の基本構成を示す図である。図1に示すように、プリンタ11は、それぞれ、ブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の画像を形成する。これら画像形成ユニット12Bk,12Y,12M,12Cは、用紙(記録媒体)の搬送路に沿って上流側から下流側(ここでは右側から左側)に配列されている。記録媒体としては、用紙のほか、OHPシート、封筒、複写紙、特殊紙等を使用することができる。
【0014】
画像形成ユニット12Bk,12Y,12M,12Cは、それぞれ、静電潜像担持体としての感光体ドラム13Bk,13Y,13M,l3Cと、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cの表面を一様に帯電させる帯電装置としての帯電ローラ14Bk,14Y,14M,14Cと、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cの表面に形成された静電潜像に各色のトナー(現像剤)を付着させてトナー像(可視像)を形成する現像剤担持体としての現像ローラ16Bk,16Y,16M,16Cとを備えている。
【0015】
また、現像ローラ16Bk,16Y,16M,16Cに当接するように、現像ローラ16Bk,16Y,16M,16Cにトナーを供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ18Bk,18Y,18M,18Cと、現像ローラ16Bk,16Y,16M,16Cの表面に形成されるトナー層の厚さを規制する現像ブレード19Bk,19Y,19M,19Cとが配置されている。また、トナー供給ローラ18Bk,18Y,18M,18Cの上側には、トナーを落下させて供給するトナーカートリッジ20Bk,20Y,20M,20Cが着脱可能に取り付けられている。
【0016】
また、画像形成ユニット12Bk,12Y,12M,12Cの上側には、露光装置としてのLEDヘッド15Bk,15Y,15M,15Cが、それぞれ感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cに対向配置されている。LEDヘッド15Bk,15Y,15M,15Cは、各色の画像データに従い、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cの表面を露光して静電潜像を形成する。
【0017】
画像形成ユニット12Bk,12Y,12M,12Cの下側には、転写ユニットが配設されている。転写ユニットは、用紙を吸着して走行する搬送部材としての搬送ベルト21と、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cに搬送ベルト21を介して対向配置された転写部材としての転写ローラ17Bk,17Y,17M,17Cとを有している。搬送ベルト21及び転写ローラ17Bk,17Y,17M,17Cは、用紙をトナーと逆の極性に帯電させ、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cに形成された各色のトナー像を用紙に転写する。
【0018】
感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cの下流側(図中左側)には、定着器28が配置されている。定着器28は、用紙に転写されたトナー像を熱及び圧力により用紙に定着させる定着ローラ28a及び加圧ローラ28bと、定着ローラ28aの表面温度を検出する温度センサ28cを備えている。
【0019】
プリンタ11の下部には、搬送路に用紙を供給するための給紙機構が配設されている。給紙機構は、用紙を収容する媒体収容部としての用紙カセット24と、用紙カセット24に収容された用紙を一枚ずつ繰り出すホッピングローラ22と、ホッピングローラ22によって繰り出された用紙を搬送ベルト21まで搬送するレジストローラ23とを備えている。また、用紙カセット24に収容された用紙の色を検出(測色)するため、用紙色検出部25が備えられている。
【0020】
次に、プリンタ11の基本的な動作について説明する。
用紙カセット24内の用紙は、ホッピングローラ22によって一枚ずつ繰り出され、レジストローラ23によって搬送ベルト21まで搬送される。搬送ベルト21は、用紙を吸着保持して矢印eで示す方向に走行する。一方、画像形成ユニット12Bk,12Y,12M,12Cでは、LEDヘッド15Bk,15Y,15M,15Cにより感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cの各表面にそれぞれ静電潜像が形成されたのち、現像ローラ16Bk,16Y,16M,16Cにより現像が行われ、トナー像が形成される。さらに、搬送ベルト21の走行に伴い、用紙は、画像形成ユニット12Bk,12Y,12M,12Cと転写ローラ17Bk,17Y,17M,17Cとの間を通過し、その際、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cの各表面に形成されたトナー像が用紙に順次転写される。
【0021】
トナー像が転写された用紙は、定着器28に送られ、定着ローラ28a及び加圧ローラ28bにより加熱及び加圧され、トナー像が溶融、圧着されて用紙に定着し、カラー画像が形成される。カラー画像が形成された用紙は、図示しない排出ローラにより、プリンタ11の外部に排出され、プリンタ11の上部に設けられたスタッカ部29に積載される。
【0022】
次に、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,13Cと、LEDヘッド15Bk,15Y,15M,15Cとの関係について説明する。なお、感光体ドラム13Bk,13Y,13M,l3Cは、共通の構成を有しているため、以下では「感光体ドラム13」として説明する。また、LEDヘッド15Bk,15Y,15M,15Cは、共通の構成を有しているため、以下では「LEDヘッド15」として説明する。
【0023】
図2及び図3は、本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッド15及び感光体ドラム13を示す横断面図及び縦断面図である。図2に示すように、LEDヘッド15は、感光体ドラム13に対向配置された複数のLED(発光素子)を有するLEDアレイチップ31と、LEDアレイチップ31の各LEDから放射された光を感光体ドラム13の表面に結像させる複数のレンズ要素を有するロッドレンズアレイ32とを備えている。さらに、LEDヘッド15は、LEDアレイチップ31と、LEDアレイチップ31を制御するための図示しないドライバICとが搭載(実装)された基板33を有している。さらに、LEDヘッド15は、基板33が取り付けられ、ロッドレンズアレイ32が固着されたレンズホルダ34を有している。このレンズホルダ34は、後述するように、異種材料を一体的に組み合わせて形成される。
【0024】
レンズホルダ34は、下方(感光体ドラム13側)から上方に貫通する内部空間を有し、当該内部空間は、下側から順に、ロッドレンズアレイ32を収容する第1の領域R1と、第1の領域R1の上方に当該第1の領域R1と連通するように形成された第2の領域R2と、第2の領域R2の上方に当該第2の領域R2と連通するように形成された第3の領域R3とを有している。第3の領域R3は、第2の領域R2より幅が広く、第2の領域R2と第3の領域R3との境界をなす段差部分に、基板33に当接する基板当接面S1が形成されている。
【0025】
基板33は、レンズホルダ34の第3の領域R3に上方から挿入され、基板当接面S1に当接した状態で保持される。基板33の上側には、基板33を基板当接面S1に押し当てるための押圧部材としてのベース37が配置されている。ベース37は、付勢部材としてのコイルばね38により、基板当接面S1側に付勢されている。
【0026】
ロッドレンズアレイ32は、第1の領域R1内においてレンズホルダ34に固着されている。さらに、レンズホルダ34の内側空間への光及び異物の進入を防止するために、レンズホルダ34と第1の領域R1との隙間はシリコン製のシール41によって封止されている。
【0027】
ここで、感光体ドラム13の表面に正確に光を結像させるためには、LEDアレイチップ31の表面からロッドレンズアレイ32の入射端面(光が入射する端面)までの距離L11と、ロッドレンズアレイ32の出射端面から感光体ドラム13の表面までの距離L12とが同じになるように(L11=L12)、距離L12を調整する必要がある。
【0028】
そこで、図3に示すように、レンズホルダ34の長手方向の両端近傍に、調整機構としての偏心カム機構42,43が配設されている。偏心カム機構42,43は、感光体ドラム13の軸方向両端近傍の表面に接するように配置されたスペーサ39a,39bに当接している。ベース37の長手方向両端部の近傍には、上述した付勢部材としてのコイルバネ38がそれぞれ配設されており、各コイルバネ38は、レンズホルダ34を感光体ドラム13側(図中下側)に付勢し、偏心カム機構42,43をスペーサ39a,39bの当接面に当接させる。偏心カム機構42,43の調整により、レンズホルダ34の長手方向に亘って、距離L2を距離L1と同じに保つことができる。
【0029】
図4は、本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダ34の上面図である。図5は、本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダ34を下方から見た斜視図である。図6及び図7は、本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダ34を、それぞれ上方及び下方から見た分解斜視図である。図8は、本発明の第1の実施の形態におけるレンズホルダ34の横断面図(長手方向に直交する断面図)である。
【0030】
図4〜図7に示すように、レンズホルダ34は、基板33に当接する基板当接面S1を有する基板当接部34bと、ハウジングとしての機能を有する母材部34aとを有している。母材部34aは、レンズホルダ34の基体をなす部分であり、金属板で形成されている。一方、基板当接面S1を有する基板当接部34bは、絶縁性を有する樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂(より好ましくは、汎用エンジニアリングプラスチック)により形成されている。レンズホルダ34では、異種材料、すなわち、金属板である母材部34aと、熱可塑性樹脂である基板当接部34bとを一体的に形成したものである。
【0031】
具体的には、母材部34aとなる金属板を金型内にセットし、その金型内に絶縁性を有する樹脂を溶融状態で流し込むことにより、金属製の母材部34aと樹脂製の基板当接部34bとが一体的に形成されたレンズホルダ34をアウトサード成形する。
【0032】
なお、図6及び図7の分解斜視図では、母材部34aと基板当接部34bとが互いに分離した状態で示されているが、これは両者の形状を分かり易く示すためであり、実際には、母材部34aと基板当接部34bとは上記のように一体形成されている。
【0033】
図6に示すように、金属板である母材部34aは、一方向に長い長尺形状を有し、その長手方向に直交する断面において、底板部340と側壁部341,342とを有して略コの字状に形成されている。母材部34aの底板部340には、ロッドレンズアレイ32を収容する長孔H1が設けられている。長孔H1は、図2に示した領域R1に対応している。なお、ここでは、長孔H1は、母材部34aの幅方向中心に対して一方の側(側壁部341の側)に寄った位置で、母材部34aの長手方向のほぼ全域(長手方向両端を除く)に亘って延在している。また、母材部34aの側壁部341,342には、上述したベース37の幅方向両側に形成された突出部371(図2)に係合してベース37の移動範囲を規制するガイド孔343が形成されている。
【0034】
基板当接部34bは、一方向に長い長尺形状を有し、母材部34aの長孔H1をその全周に亘って囲むように形成されている。すなわち、基板当接部34bは、母材部34aの長孔H1よりも僅かに長く、幅も太い長孔H2を有している。基板当接部34bは、長孔H2の長手方向に沿って直線状に延在する部位351,352の上面に、所定の間隔で形成された複数の長方形の基板当接面S1を有している。基板当接部34bは、また、長孔H2の長手方向両端にコの字状に形成された部位353にも、基板当接面S1を有している。なお、基板当接部34bの部位351,352の間の部分は、図2に示した領域R2に対応する。
【0035】
図8に示すように、母材部34aは、幅方向における長孔H1の一方の側に孔T1を有し、他方の側に切欠きT2を有している。ここでは、孔T1は、母材部34aの底板部340から側壁部342にかけて形成されており、切欠きT2は、母材部34aの底板部340から側壁部341にかけて形成されている。また、孔T1及び切欠きT2は、図7に示すように、母材部34aの長手方向に沿って複数形成されている。
【0036】
基板当接部34bは、溶融した樹脂(熱可塑性樹脂)を、金属板である母材部34aの孔T1又は切欠きT2(ここでは孔T1及び切欠きT2の両方)に流し込んで成形することにより、母材部34aを表裏両側から(上下に)挟み込んだ状態で、母材部34aと一体的に形成されている。
【0037】
ここで、LEDアレイチップ31が搭載される基板33は、その長手方向における真直性が高いことが必要である。そのためには、レンズホルダ34が剛性を有し、基板当接部34bの基板当接面S1が高い平面度を有している必要がある。前述したように感光体ドラム13の表面に正確に光を結像させるためには、LEDアレイチップ31の表面からロッドレンズアレイ32の入射端面までの距離L11とし、ロッドレンズアレイ32の出射端面から感光体ドラム13の表面までの距離L12とが同じ(L11=L12)ことが必要であるが、レンズホルダ34の基板当接面S1にうねりがあると、基板当接面S1に倣ってLEDアレイチップ31もうねりを生じ、感光体ドラム13上において一直線上に像を結ぶことができなくなるためである。
【0038】
良好な印刷結果を得るためには、LEDアレイチップ31の各LED素子から発せられた光がロッドレンズアレイ32を介して感光体ドラム13の表面に形成する像(一次元像)の真直度は、±50μmが許容範囲である。例えば、レンズホルダ34の基板当接面S1の平面度を±30μmとし、ロッドレンズアレイ32の真直度を±10μmとすれば、感光体ドラム13の表面に結像される一次元像の真直度は±40μmとなり、良好な印刷結果を得ることができる。本実施の形態では、基板当接面S1を有する基板当接部34bを、剛性を有する金属板からなる母材部34aと一体に形成することにより、基板当接面S1が高い平面度(±30μm以内)を有するようにしている。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、剛性を有する金属板で形成された母材部34aと、絶縁性を有する樹脂で形成された(基板当接面S1を有する)基板当接部34bとが一体に形成されているため、基板33の絶縁性を安定的に確保できると共に、基板33の高い真直性を確保して感光体ドラム13の表面に正確に光を結像させることができる。
【0040】
また、従来技術(特許文献1参照)と異なり、基板33のレジスト層を厚くする必要がないため、基板33をレンズホルダ34に装着する際に基板33に傷が付きにくく、また仮に傷が付いたとしても基板33の絶縁性が損なわれることない。このように、基板33の絶縁性を安定して確保することができるため、品質の安定した露光装置及び画像形成装置を実現することができる。
【0041】
また、レンズホルダ34の基板当接部34bは、溶融樹脂を母材部34aの孔T1又は切欠きT2に流し込むことにより、母材部34a(金属板)を表裏両側から挟み込むように一体的に形成されるため、異種材料からなる母材部34aと基板当接部34bとを一体的に形成することができる。
【0042】
また、レンズホルダ34の基板当接面S1が高い平面度(±30μm以内)を有するため、基板当接面S1に当接して保持される基板33に搭載されたLEDアレイチップ31の真直度を高めることができ、これにより感光体ドラム13の表面に形成される一次元像の真直度を高めることができる。
【0043】
第2の実施の形態.
第1の実施の形態で説明したように、プリンタ11の定着器28では、熱及び圧力によりトナー像を溶融・圧着して用紙に定着し、画像(カラー画像)を形成するが、印刷時の定着器28の温度は200℃以上の高熱となるため、各LEDヘッド15の周囲環境温度は55℃程度にまで達する場合がある。すなわち、常温を25℃とすると、約30℃の温度変化が生じることとなる。第1の実施の形態では、基板当接面S1を有する基板当接部34bが、母材部34aの長孔H1の全周に沿って延在しているが、基板当接部34b(樹脂)と母材部34a(金属)とでは線膨張係数が異なるため、いわゆるバイメタル効果により、レンズホルダ34が変形することが考えられる。
【0044】
一方、感光体ドラム13の表面に正確に光を結像させるためには、前述したように、LEDアレイチップ31の表面からロッドレンズアレイ32の入射端面までの距離L11と、ロッドレンズアレイ32の出射端面から感光体ドラム13の表面までの距離L12とを同じ(L11=L12)に保つことが必要であるが、レンズホルダ34が変形していると、安定して上記の関係(L11=L12)を保持することが難しい。そこで、第2の実施の形態では、以下のように温度変化に起因するレンズホルダ34の変形を抑制することで、より確実に、感光体ドラム13の表面に高精度に像を結像させている。
【0045】
図9は、本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダ34の上面図である。図10は、本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダ34を下方から見た斜視図である。図11及び図12は、本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダ34を、それぞれ上方及び下方から見た分解斜視図である。図13は、本発明の第2の実施の形態におけるレンズホルダ34の一部を拡大して示す図である。図9〜図13において、第1の実施の形態と同様の、又は対応する構成要素には、同一の符号を付す。
【0046】
図9〜図13に示すように、レンズホルダ34は、第1の実施の形態と同様、ハウジングとしての機能を有する母材部34aと、基板33に当接する基板当接面S1を有する基板当接部34bとを有している。母材部34aは金属板で形成され、レンズホルダ34の剛性を確保している。基板当接部34bは、絶縁性を有する樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂(より好ましくは汎用エンジニアリングプラスチック)で形成されている。レンズホルダ34は、異種材料、すなわち母材部34a(金属板)と基板当接部34b(樹脂)とを一体的に形成したものである。
【0047】
図11〜図13に示すように、母材部34a(金属板)は、第1の実施の形態と同様に構成されているが、基板当接部34bは、母材部34aの長孔H1に沿って分割された構造を有している。
【0048】
分割された各基板当接部34bは、それぞれ基板当接面S1を有している。各基板当接部34bは、それぞれ、母材部34aから容易に外れないよう、溶融した樹脂を、母材部34aの金属板に設けた孔T1又は切欠きT2(ここでは孔T1及び切欠きT2の両方)に流し込み、母材部34aを表裏両側から挟み込むように一体的に形成される。
【0049】
より具体的には、図13において、各基板当接部34bは、母材部34aの側壁部341,342の内側に沿って配設される板状片であり、この板状片の上面に基板当接面S1が形成されている(図13では、図示の便宜上、基板当接部34bは、側壁部341,342の外側に図示されている)。また、各基板当接部34bの板状片と一体に、母材部34aの底板部340の底面に接する底部355、及び、母材部34aの孔T1及び切欠きT2に接する凸部356が一体に形成されている。
【0050】
また、母材部34aの長手方向両端に位置する基板当接部34bは、母材部34aの側壁部341,342の内側に延在する延在部360を有する。また、延在部360の幅方向両側には、母材部34aの底板部340から側壁部341,342にかけて形成された切欠き345に係合する凸部361と、母材部34aの側壁部341,342の長手方向の各端面に形成された凹部346に係合する凸部362とが形成されている。また、延在部360を幅方向に横切るように、基板当接面S1が形成されている。
【0051】
図14は、第2の実施の形態において、環境温度が25℃の常温から55℃の高温に変化したときに、レンズホルダ34が感光体ドラム13に接近する方向(Y方向とする)に変位する変位量を測定した結果を示すグラフである。
【0052】
図15は、レンズホルダ34の変位量の測定位置を示す図である。図15に示すように、レンズホルダ34の長手方向(X方向とする)に略均等に設定したP1,P2,P3,P4,P5の5箇所でレンズホルダ34の変位量を測定した。P1のX方向位置を0とし、P2〜P5のX方向位置を図15に示したとおりとした。レンズホルダ34の変位量は、感光体ドラム13に接近する方向の変位をプラス(+)とした。
【0053】
実験では、母材部34aを電気亜鉛メッキ鋼板で形成し、その線膨張係数は1.17×10−5/℃であった。基板当接面S1を有する基板当接部34bは、絶縁性を有する熱可塑性の液晶ポリマーで形成し、その線膨張係数は0.5×10−5/℃(樹脂流動方向)及び5.5×10−5/℃(樹脂流動方向に対して直交する方向)であった。これら母材部34aと基板当接部34bとを上述したように一体に形成し、レンズホルダ34とした。
【0054】
図14に示すように、55℃の環境温度(印刷時に想定される温度)において、レンズホルダ34は、下方(感光体ドラム13に接近する方向)に向けて約4μmの反りを生じている。第1の実施の形態で説明したように、ロッドレンズアレイ32の出射端面と感光体ドラム15の表面との距離L12の変動量が±10μm以内であれば良好な印刷結果が得られるため、上記の55℃の環境温度(反り:約4μm)において良好な印刷結果が得られることが分かる。
【0055】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、基板当接部34bが、母材部34aの長孔H1の周囲に所定の問隔で分割された構造を有し、それぞれが当接面S1を有しているため、線膨張係数が異なる異種材料の組み合わせで一体的に形成したレンズホルダ34においても、温度変化に伴うバイメタル効果による変形を防止することができる。従って、LEDアレイチップ31の表面からロッドレンズアレイ32の入射端面まで距離と、ロッドレンズアレイ32の出射端面から感光体ドラム15の表面まで距離とを一定に保つことができ、品質の安定した露光装置及び画像形成装置を実現することができる。
【0056】
なお、上記の第1及び第2の実施の形態では、基板当接部34bを構成する樹脂について、熱可塑性樹脂が好ましく、エンジニアリングプラスチックが特に好ましいと説明したが、エンジニアリングプラスチック以外のものを用いても良いことは言うまでもない。また、母材部34aとの一体形成が可能であれば、熱硬化性樹脂を用いてもよい。但し、母材部34aの孔T1又は切欠きT2に溶融樹脂を流し込んで基板当接部34bを容易に一体形成できるという点で、熱可塑性樹脂が好ましい。
【符号の説明】
【0057】
11 プリンタ(画像形成装置)、 12Bk,12Y,12M,12C 画像形成ユニット、 13,13Bk,13Y,13M,13C 感光体ドラム(静電潜像担持体)、 15,15Bk,15Y,15M,15C LEDヘッド(露光装置)、 16Bk,16Y,16M,16C 現像ローラ、 17Bk,17Y,17M,17C 転写ローラ、 21 搬送ベルト、 22 ホッピングローラ、 23 レジストローラ、 28 定着器、 31 LEDアレイチップ、 32 ロッドレンズアレイ(光学系)、 33 基板、 34 レンズホルダ、 34a 母材部、 34b 基板当接部、 37 ベース(押圧部材)、 38 コイルばね(付勢部材)、 39a,39b スペーサ、 41 シール材、 42,43 偏心カム機構、 340 底板部、 341,342 側壁部、 H1,H2 長孔、 S1 基板当接面、 T1 孔、 T2 切欠き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子が搭載された基板と、
前記複数の発光素子から放射された光をそれぞれ結像させる光学系と、
前記基板が当接する基板当接面を有し、さらに前記光学系を支持するレンズホルダと
を備え、
前記レンズホルダは、金属で形成された母材部と、絶縁性を有する樹脂で形成され、前記基板当接面を有する基板当接部とが一体に形成されたものであること
を特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記レンズホルダの前記基板当接部を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記レンズホルダの前記基板当接部を構成する樹脂は、エンジニアリングプラスチックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記レンズホルダの前記基板当接部は、アウトサート成形により前記母材部と一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記レンズホルダの前記基板当接部は、前記母材部に設けられた孔又は切欠きに溶融樹脂を流し込むことにより、前記母材部を表裏両側から挟み込むように一体形成されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記レンズホルダの前記母材部には、前記光学系を収容する長孔が形成され、
前記母材部の前記孔又は切欠きは、前記長孔に対して幅方向の少なくとも一方の側に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記基板は、前記複数の発光素子が少なくとも一列に配列され、当該配列の方向に長い長尺形状を有し、
前記レンズホルダの前記基板当接部は、前記基板の長手方向に沿って複数に分割されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記レンズホルダの前記基板当接部の前記基板当接面は、±30μm以内の平面度を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記基板の前記基板当接面に当接する側とは反対の側に当接する押圧部材と、
前記押圧部材を前記基板当接面に向けて付勢する付勢部材と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置により露光され、静電潜像が形成される静電潜像担持体と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−88384(P2011−88384A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244566(P2009−244566)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】