露光装置
【課題】露光対象部材が連続的に供給される場合においても、マスク位置調整用のアライメントマークを露光対象部材の蛇行に応じて変化させ露光対象部材に対するマスクの位置を精度よく調整することができ、高精度で安定的な露光が可能な露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置1には、露光対象部材2の搬送方向における露光光の照射領域よりも上流側に第1マーク形成部17が設けられており、蛇行検出用マーク2bを検出し、検出部14は、露光対象部材2の移動方向に交差する方向の蛇行検出用マーク2bを検出し、これに基づいて演算された露光対象部材2の蛇行量を打ち消すように、アライメントマーク形成部13を移動させ、アライメントマーク2aを露光対象部材2に対して相対的に直線状に形成する。
【解決手段】露光装置1には、露光対象部材2の搬送方向における露光光の照射領域よりも上流側に第1マーク形成部17が設けられており、蛇行検出用マーク2bを検出し、検出部14は、露光対象部材2の移動方向に交差する方向の蛇行検出用マーク2bを検出し、これに基づいて演算された露光対象部材2の蛇行量を打ち消すように、アライメントマーク形成部13を移動させ、アライメントマーク2aを露光対象部材2に対して相対的に直線状に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送されてくる露光対象部材の露光精度を高めた露光装置に関し、特に、露光対象部材が移動方向に垂直な方向に蛇行した場合においても、マスク位置調整用のアライメントマークを露光対象部材の蛇行に応じて変化させ露光対象部材に対するマスクの位置を精度よく調整することができ、安定的な露光が可能な露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等のガラス基板上に例えば配向膜等を形成する場合には、表面上に配向材料膜等の材料膜が形成されたガラス基板を露光装置に供給し、配向材料膜を露光することにより、所定の方向に光配向させることが行われている。
【0003】
この露光装置においては、露光光源から所定の光学系を介して出射された露光光は、マスクの光透過領域のパターンを透過して照射され、露光対象のガラス基板は、例えば移動可能なステージ上に載置され、ステージを移動させることにより、露光光の照射領域に搬送される。そして、ガラス基板上に形成された材料膜をマスクのパターンに対応させて露光することにより、ガラス基板上に所定の露光領域を形成することが行われている。
【0004】
このように、ステージ等の搬送装置により搬送されるガラス基板等の露光対象部材は、配向膜等の形成領域が搬送装置又はマスク等の位置精度により大きく左右される。従って、露光対象部材の所定の領域を高精度に露光するための技術が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、フィルムの露光装置が開示されており、フィルムの露光対象領域の外側のフィルム側部の両側に1対の矩形のマーキングを施している。そして、フィルムの搬送を停止した状態で、前記アライメント用のマーキング形状をフィルムの移動方向及び移動方向に垂直な方向で光学的に検出することにより、フィルムの所定の領域に露光光が照射されるようにマスクの位置を調整している。
【0006】
また、露光対象部材がフィルムの場合においては、フィルムを露光装置に連続的に供給する搬送装置として、例えば図9及び図10に示すような1対のローラ80,81が使用される。即ち、図9及び図10に示すように、露光対象のフィルム2は、フィルム基材から製品としてのフィルムに加工されるまでの各工程間をロール状に巻き取られて搬送される。そして、露光装置に供給される際には、供給側のローラ80にフィルムのロールが同軸的に取り付けられ、フィルム2は先端部から巻き取り側ローラ81により順次巻き取られていく。そして、図9に示すように、供給側のローラ80から巻き取り側のローラ81に至るまでの間に、露光装置を通過させ、フィルムの表面に形成された例えば配向材料膜に露光光を連続的に照射して、フィルムの所定の露光領域をフィルムの移動方向に沿って露光することが行われている。この方式はロールトゥロール方式と呼ばれている。
【0007】
ロールトゥロール方式でフィルムを露光する場合においては、図10に示すように、供給側のローラ80から巻き取り側のローラ81へとフィルム2が送給されている間に、例えば搬送装置のローラ80,81とフィルムのロールとの間の隙間又はロールへのフィルムの巻き取り誤差等により、フィルム2がその移動方向に垂直な方向に蛇行する場合があり、これにより、フィルム2の露光精度が低下するという問題点がある。
【0008】
よって、例えば特許文献2及び3に開示されているように、フィルムの蛇行を補正する技術が種々提案されている。特許文献2に開示された技術は、フィルム等のウエブの縁部位置を検出する検出器を設け、検出器の検出結果により、供給側のローラをシリンダ等により軸方向に移動させ、移動方向に垂直な方向におけるウエブの蛇行を補正するものである。
【0009】
また、特許文献3には、フィルム等の長尺のワークを2回に分けて露光する場合において、1回目の露光の際に、ワーク上にパターンを形成すると共に、所定のパターン長さごとに間欠的にアライメント用のマーキングを施し、2回目の露光の際には、前記アライメントマークを撮像することにより、ワークの位置ずれ及び傾きを検出し、マスク位置及び傾きを補正する技術が開示されている。
【0010】
図11は、露光光を出射する露光光源11が1個のマスク12に対応して1対ずつ向かい合わせて配置され、互いに異なる方向から露光光を照射する型式の従来の露光装置を一例として示す図である。このような型式の露光装置は、例えば液晶ディスプレイ等のガラス基板上又は偏光フィルム等のフィルム基材上に配向膜を形成する際の配向材料膜の露光に使用されている。即ち、この露光装置による露光により配向膜を形成する場合には、表面に配向材料膜が形成された露光対象部材を露光装置内に供給し、所定の領域ごとに露光光を異なる方向から照射して、異なる方向に配向した配向膜を形成することが行われている。この露光装置によれば、例えばフィルムの1絵素に対応する領域をその幅方向に2分割して露光したり、画素に対応する領域ごとにフィルムをその幅方向に分割して露光し、各分割領域ごとに配向方向が異なる配向膜を形成することができる。この配向膜の配向方向の特徴により、ガラス基板間に挟持する液晶分子の電圧印加時の動作を配向膜の配向方向に応じて異ならせ、これにより、表示装置の視野角を広げることができ、また、製造したフィルムを3D(Three Dimensional)ディスプレイ等の偏光フィルムとしても使用することができ、近時、このようなフィルムの露光技術は注目を集めている。
【0011】
このような露光装置によりフィルムを露光する際には、フィルムには、搬送中に波打ちが発生しやすく、これにより、露光位置のずれが発生するという問題点がある。この露光位置のずれの影響を低減するために、例えば、上記のようなフィルムの移動方向に複数の光源を並置した露光装置においては、例えば図11及び図12に示すように、1個のマスクを使用して露光するのではなく、複数個のマスク12を使用し、各マスク12を露光対象部材の移動方向及びこれに垂直の幅方向に並ぶように千鳥状に配置して、露光光源11を各マスクごとに設けて露光することが行われている。そして、各マスク121乃至124に露光光源11からの露光光を透過させ、図12に示すように、フィルムが供給されてくる上流側にて、互いに離隔して配置されたマスク121及び122によりフィルム2を露光領域A及びCで露光し、下流側にて、露光領域A及びC間の領域Bをマスク123により露光し、露光領域Cに隣接する領域Dをマスク124により露光することが行われている。これにより、フィルム2のほぼ全面に配向分割したパターンを精度良く形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−323621号公報
【特許文献2】特開平8−301495号公報
【特許文献3】特開2009−216861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題点がある。特許文献1の技術は、ワークを搬送装置等により連続的に供給する場合には適していない。即ち、特許文献1の露光装置においては、アライメントマークの検出及びマスク位置の補正は、ワークの搬送を停止した状態で行っている。特に、ロールトゥロール方式でフィルムを供給して露光する場合においては、上記のように、移動方向に垂直な方向にフィルムが蛇行する場合があり、マスク位置の補正ごとにワークの搬送を停止する必要がある。よって、例えば露光領域を連続的に帯状に形成する場合等においては、生産性が極めて低いものである。特許文献3の技術においても、アライメントマークは所定の区間ごとにしか設置されておらず、露光精度を向上させるためには、アライメントマークの検出のためにワークの搬送を停止してマスク位置を補正する必要があり、生産性が低い。
【0014】
また、特許文献2に開示されたようなフィルムの搬送装置を使用した場合においても、図10に示すような移動方向に垂直な方向のフィルムの蛇行は周期的に発生してしまう。そして、特許文献2の技術は、搬送装置に対するフィルムの蛇行の解消を目的としたものであり、露光装置による露光精度を考慮したものではない。従って、フィルムの蛇行による露光精度の低下を解消できるものではない。
【0015】
更に、特許文献3の技術も、特許文献1と同様に、アライメントマークの検出及びマスク位置の補正は、ワークの搬送を停止した状態で行っており、フィルムを連続的に露光する場合においては、生産性が低いものである。
【0016】
そして、図11及び12に示すような複数個のマスク12により、各マスク12ごとに露光光を照射する形式の露光装置においては、図11に示すように、露光光源11を内蔵している部分(露光光源11の筐体部分)は、1光源につき、例えばフィルムの移動方向に約2m程度の長さを有しており、図12に示すような露光領域A及びCと露光領域B及びDとの間の距離は、少なくとも4m程度と長くなる。よって、上流側の露光領域A及びCから下流側の露光領域B及びDへの搬送中に、フィルムが容易に波打ち、その移動方向に垂直の幅方向にずれやすいという問題点がある。従って、フィルムの移動方向下流側の露光領域において、フィルムの幅方向の位置ずれにより、既に露光された領域が露光されてしまったり、また、未露光の領域も発生してしまうという問題点もある。
【0017】
この問題点を解決するために、本願出願人は、特願2010−089608号において、フィルム基材上の側部にアライメントマークを形成し、フィルムの移動方向における下流側にてアライメントマークのフィルム幅方向のずれをCCDカメラにより検出し、この検出信号に基づいて、下流側のマスク123及び124の位置をフィルムの幅方向に調節して露光領域のずれを補正する技術を提案した。しかしながら、この先行技術は、一定の位置に固定されたレーザマーカによりアライメントマークを形成するものであり、フィルムが蛇行した場合、フィルムに対するアライメントマークの相対的位置も蛇行してしまう。従って、フィルムの移動方向に対して蛇行するように形成されたアライメントマークを基準としてマスク位置を決めることにより、露光領域もフィルムの移動方向に対して蛇行するように形成される。また、フィルムに対して相対的に蛇行するようにアライメントマークを形成する場合においては、その形成誤差は大きく、各マスクに対応して設けられたCCDカメラによる検出誤差がアライメントマークの形成誤差に積算され、マスク位置の設定精度が若干低下する。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、露光対象部材が連続的に供給される場合においても、マスク位置調整用のアライメントマークを露光対象部材の蛇行に応じて変化させ露光対象部材に対するマスクの位置を精度よく調整することができ、高精度で安定的な露光が可能な露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る露光装置は、搬送装置により連続的に搬送されてくる露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光源から出射した露光光をマスクを介して照射することにより、前記露光パターン形成用領域に前記マスクの夫々に対応させたマスクパターンを露光する露光装置において、前記露光対象部材の移動方向における前記露光光の照射位置よりも上流側に配置され前記露光対象部材に蛇行検出用マークを形成する第1マーク形成部と、前記露光対象部材の移動方向における前記第1マーク形成部と前記露光光の照射位置との間に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの位置を検出する第1検出部と、この第1検出部が検出した前記蛇行検出用マークの位置に基づいて前記蛇行検出用マークの蛇行量を演算する第1蛇行演算部と、前記露光対象部材の移動方向における前記第1検出部の位置に対応する位置にて前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向に移動可能に配置され、前記マスクの位置調整用のアライメントマークを形成する第2マーク形成部と、前記第1蛇行演算部が求めた前記蛇行検出用マークの蛇行量を打ち消すように、前記第2マーク形成部を移動させる第1制御部と、を有することを特徴とする。
【0020】
この露光装置は、例えば前記露光対象部材の移動方向における前記第2マーク形成部の下流側に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記アライメントマークの位置を検出する第2検出部と、前記第2検出部が検出した前記指標位置における前記アライメントマークの位置に基づいて前記アライメントマークの蛇行量を演算する第2蛇行演算部と、この第2蛇行演算部が求めた前記アライメントマークの蛇行量に応じて、前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向の前記マスクの位置を調整する第2制御部と、を有する。
【0021】
上述の露光装置において、例えば前記マスクは、前記露光対象部材の移動方向に離隔して複数個配置されており、夫々のマスクに対応して前記第2蛇行演算部及び前記第2制御部が設けられている。また、前記アライメントマーク形成部は、例えば前記露光対象部材の移動方向に対して連続的又は断続的にアライメントマークを前記露光対象部材に形成する。
【0022】
前記第1マーク形成部は、例えば前記露光対象部材の移動方向に対して断続的な指標が付された蛇行検出用マークを前記露光対象部材に形成するものであり、前記第1検出部は、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの前記指標位置における位置を検出するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る露光装置は、露光対象部材の移動方向における露光光の照射位置よりも上流側にて露光対象部材に蛇行検出用マークを形成する第1マーク形成部と、露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの位置を検出する第1検出部と、を有し、第1蛇行演算部は、第1検出部が検出した蛇行検出用マークの位置に基づいて蛇行検出用マークの蛇行量を演算し、第1制御部は、第1蛇行演算部が求めた前記蛇行検出用マークの蛇行量を打ち消すように、第1検出部の位置に対応する位置に配置された第2マーク形成部を移動させ、この第2マーク形成部によりマスク位置調整用のアライメントマークを形成する。即ち、露光対象部材が連続的に供給されて移動方向に垂直な方向に蛇行した場合においても、第2マーク形成部は、この蛇行量を打ち消すようにてアライメントマークを形成する。これにより、アライメントマークは、露光対象部材に対して相対的に直線状に形成される。よって、この直線状のアライメントマークを使用してマスク位置を精度よく調整することができ、露光対象部材を高精度で安定的に連続露光することができる。
【0024】
また、第2マーク形成部は、アライメントマークを露光対象部材に相対的に直線状になるように形成するため、アライメントマークを露光対象部材に対して相対的に蛇行するように形成する場合に比して、その形成誤差は極めて小さい。よって、このアライメントマークを使用してマスク位置を調整することにより、例えばマスク位置調整用のCCDカメラ等の検出部が個体差による検出誤差を有していた場合においても、この検出誤差がアライメントマークの形成誤差にほぼ積算されず、マスク位置の設定精度が向上するため、高精度の露光が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る露光装置によるフィルムの露光を示す平面図である。
【図2】(a)乃至(e)は、蛇行検出用マークの蛇行を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る露光装置において、蛇行量の検出によるアライメントマークの形成位置の補正を示す図である。
【図4】(a)乃至(c)は、本発明の実施形態に係る露光装置において、アライメントマークの形成態様を一例として示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る露光装置において、蛇行検出用マークの検出方法を一例として示す図である。
【図6】マスクを一例として示す図である。
【図7】アライメントマーク形成部の位置及びマスク位置を制御する制御装置を一例として示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る露光装置によるマスク位置の補正を示す図である。
【図9】従来のロールトゥロール方式によるフィルムの露光を一例として示す模式図である。
【図10】従来のロールトゥロール方式のフィルム搬送装置において、フィルムの移動方向に垂直な方向のフィルムの蛇行を示す模式図である。
【図11】配向分割方式の露光装置を一例として示す斜視図である。
【図12】フィルムの移動方向に複数の光源を配置した構成の露光装置を一例として示す図である。
【図13】(a)及び(b)は、露光装置によるフィルムの露光領域を一例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置の構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係る露光装置によるフィルムの露光を示す平面図、図2(a)乃至図2(e)は、蛇行検出用マークの蛇行を示す図、図3は本発明の実施形態に係る露光装置において、蛇行量の検出によるアライメントマークの形成位置の補正を示す図である。本実施形態に係る露光装置1は、図9乃至図12に示す従来の露光装置と同様に、露光光を出射する露光光源11と、マスク12と、露光光源11から出射した露光光をマスク12を介してフィルム2に照射する光学系と、フィルム2を搬送する例えば搬送ローラ等のフィルム搬送部と、を有しており、例えばコリメータレンズ及び/又は反射鏡等の光学系により、露光光源11から出射した露光光を、マスク12を介して、表面に露光材料膜が形成されたガラス基板又はフィルム2の露光対象部材20に照射し、マスクパターンに対応させて、例えば配向材料膜等の露光材料膜を光配向させて配向膜を形成する。なお、露光対象部材がガラス基板の場合には、搬送ステージ等の可動の搬送装置にガラス基板を載置して搬送することにより、露光光の照射位置において、ガラス基板表面の露光材料膜にマスクパターンを順次連続的に露光する。又は、露光対象部材がフィルム2の場合には、従来と同様に、ロールトゥロール方式により、供給側のローラ80から供給したフィルム2を巻き取り側のローラ81によりフィルム2の緊張状態を維持しながら巻き取る間に、フィルム表面の露光材料膜に露光光を照射して、露光材料膜を順次連続的に露光する。フィルム2用の搬送装置においては、例えば、上記2個のローラ80,81間にもフィルム2の搬送用の搬送ローラ9が1以上配置されており、各搬送ローラ9等は、例えばモータにより駆動されている。本実施形態においては、露光対象部材20としてフィルム2を使用する場合について説明するが、露光対象部材20がガラス基板の場合においても、搬送装置の構成以外については、本実施形態と同様である。
【0027】
本実施形態においては、図9に示すような従来の露光装置10と同様に、露光対象のフィルム2は、例えばロールトゥロール方式の供給側のロール80から巻き解かれて露光装置1内に供給されるまでの間に、スリットコーター4に供給され、スリットコーター4にてフィルム基材20の表面に所定の露光材料、例えば光配向性の材料が膜状に塗布されている。そして、塗布された露光材料は、乾燥装置5にて乾燥又は焼成され、フィルム基材20の表面に所定の露光材料膜が形成されている。そして、露光装置1には、表面に露光材料膜が形成されたフィルム2が供給される。本実施形態においては、フィルム2の表面に形成された露光材料膜21が配向材料膜である場合について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の露光装置1には、フィルム2の移動方向における露光光の照射位置(マスクパターンの形成位置)よりも上流側にレーザマーカ17(本発明における第1マーク形成部)が設けられており、フィルム2の移動方向におけるレーザマーカ17と露光光の照射位置との間には、蛇行検出用のラインCCD14(本発明における第1検出部)が設けられている。本実施形態においては、レーザマーカ17及びラインCCD14は、露光対象のフィルム2の両側部の一方の例えばフィルム送給等に使用されている領域の上方に配置されている。また、フィルム2の他方の側部の上方には、フィルム2の移動方向におけるラインCCD14に対応する位置に、アライメント用レーザマーカ13が設けられている。そして、フィルム2の移動方向におけるアライメント用レーザマーカ13の下流には、各マスク12に対応する位置にラインCCD16(第2検出部)が設けられている。本実施形態においては、図1に示すように、マスク12は、上流側及び下流側に夫々1個ずつ設けられており、各マスク121,123に対応するように夫々ラインCCD16がフィルム2の移動方向の上流側及び下流側に夫々1個配置されている。なお、本実施形態においては、フィルム2の一方の側部を蛇行検出用マーク2bの形成領域として使用し、他方のフィルム側部をアライメントマーク2aの形成領域として使用する場合について説明するが、これらのマーク2a、2bは、フィルム2上の露光パターン形成用領域外の領域、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置に使用される際に画像表示領域とならない領域に形成できればよい。画像表示領域とならない領域としては、例えば図13(a)に示すように、従来では例えばフィルム送給用の領域等に使用されているフィルム側部を挙げることができる。又は、図13(b)に示すように、1枚のフィルム2をその移動方向に垂直の幅方向に分割して複数枚の偏光フィルム等を製造する場合においては、例えば偏光フィルムとなる領域間の領域は使用されない領域であるから、この露光対象領域間の使用されない領域に蛇行検出用マーク2b及び/又はアライメントマーク2aを形成する。
【0029】
レーザマーカ17は、例えばNd:YAGレーザ又は紫外光等を照射するレーザ光源を備えており、例えばキセノンフラッシュランプ等のパルス光源によりパルスレーザ光を出射してフィルム2の縁部から例えば25mm以内のフィルム2の側部に、例えば幅が20μm、長さが15mmの蛇行検出用マーク2bを断続的に形成する。なお、後述する蛇行検出用のラインCCD14によるフィルム蛇行の検出精度を高めるために、例えば図4(a)に示すように、レーザマーカ17により、2列の蛇行検出用マーク2bを相互に千鳥状に形成し、2列の各帯状の蛇行検出用マーク2bの先端部及び後端部がフィルム2の移動方向に交差する方向からみて、相互に重なるように形成してもよい。この場合においては、各蛇行検出用マーク2bの先端及び後端を蛇行検出用の指標として使用する。又は、例えば図4(b)に示すように、各蛇行検出用マーク2bをフィルムの移動方向に対して同一方向に傾斜するように1列形成し、各マークの先端及び後端をアライメントマーク2aの蛇行検出用の指標として使用してもよい。又は、図4(c)に示すように、蛇行検出用マーク2bをフィルムの移動方向に延びるように連続的に1本形成し、例えばフィルムの移動方向に交差する方向に断続的な指標を設けてもよい。
【0030】
蛇行検出用のラインCCD14は、レーザマーカ17により形成された蛇行検出用マーク2bのフィルム移動方向に交差する方向の位置を検出する。即ち、フィルム2は、例えば搬送装置のローラ80,81とフィルムのロールとの間の隙間又はロールへのフィルムの巻き取り誤差等により、フィルム2がその移動方向に垂直な方向に蛇行する場合がある。この場合に、フィルム2は、もっぱら巻き取り側のロール81寄りの下流側の蛇行に起因して、その移動方向に垂直な方向の蛇行が次第に上流側へと伝達していく。これにより、フィルム2は、図2(a)乃至図2(e)に示すように、レーザマーカ17からラインCCD14まで搬送されてくる間に、その移動方向に垂直な方向の蛇行が生じる。本実施形態においては、フィルム2の移動方向に垂直な方向に延びるように配置されたラインCCD14により、フィルム蛇行に伴って蛇行した蛇行検出用マーク2bの位置を検出する。ラインCCD14は、例えば、蛇行検出用マーク2bの先端及び後端を蛇行検出用の指標としてその位置を検出する。
【0031】
図5は、本実施形態の露光装置において、蛇行検出用マーク2bの蛇行の検出方法を一例として示す図である。なお、図5には、フィルム2がその移動方向に垂直な方向に蛇行した場合において、1個の蛇行検出用マーク2bについて、その移動軌跡を示している。本実施形態においては、ラインCCD14は、例えば図5に示すように、各蛇行検出用マーク2bについて、その先端及び後端を指標とし、フィルム移動方向に交差する方向における蛇行検出用マーク2bの先端及び後端の位置を検出する。なお、蛇行検出用マーク2bが図4(a)乃至図4(c)に示すように、フィルム2の移動方向に交差する方向からみて、相互に重なるように形成されている場合においては、ラインCCD14により計測できない区間がなくなり、ラインCCD14による蛇行検出用マーク2bの蛇行の検出精度が向上するため、好ましい。ラインCCD14は、後述する制御装置30に接続されており、ラインCCD14により測定された蛇行検出用マーク2bの位置の信号は制御装置30に送信され、フィルム2の蛇行量が算出される。
【0032】
アライメント用レーザマーカ13は、レーザマーカ17と同様に、例えばNd:YAGレーザ又は紫外光等を照射するレーザ光源を備えており、例えばキセノンフラッシュランプ等のパルス光源によりパルスレーザ光を出射してフィルム2の縁部から例えば25mm以内のフィルム2の側部に、例えば幅が20μm、長さが15mmのアライメントマーク2aを断続的に形成する。又は、アライメント用レーザマーカ13は、連続したアライメントマーク2aを形成する。本実施形態においては、図1に示すように、アライメント用レーザマーカ13は、フィルム2の移動方向に垂直な方向に延びるガイド部材13aにより、フィルム2の移動方向に垂直な方向に移動可能に支持されている。そして、アライメント用レーザマーカ13は、ガイド部材13aに沿って移動されることにより、フィルム2へのアライメントマーク2aの形成位置を適宜調整可能に構成されている。
【0033】
本実施形態においては、アライメント用レーザマーカ13は、図3に示すように、ラインCCD14により測定された蛇行検出用マーク2bの位置により制御装置30が算出したフィルム2の蛇行量を打ち消すように、その位置が補正される。即ち、フィルム2が、図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態を経て、図3(c)に示す状態へと蛇行した場合においては、ラインCCD14は、各状態における蛇行検出用マーク2bの位置を検出し、制御装置30は、この検出結果に基づいて、フィルム2の図3における上方への蛇行量を算出する。そして、制御装置30は、アライメント用レーザマーカ13の位置をフィルム2の蛇行量に合わせて、図3における上方へとフィルム2の蛇行量を打ち消すように移動させる。これにより、アライメント用レーザマーカ13は、フィルム2に対する相対的な位置が移動せず、従って、アライメントマーク2aをフィルム2に対して相対的に直線状に形成することができる。
【0034】
アライメントマーク検出用のラインCCD16は、フィルム2の移動方向におけるマスク121,123の位置に対応する位置において、各マスク121,123とフィルムの幅方向に並ぶように、フィルム2の上方又は下方に配置されており、マスク12に対応する位置でアライメントマーク16aの位置を検出するように構成されている。図6に示すように、アライメントマーク検出用のラインCCD16は、例えばマスク12の覗き窓12aに対応する位置にて、フィルム2の移動方向に交差する方向におけるアライメントマーク2aの位置を検出する。例えば、フィルム2が移動する間にその幅方向に蛇行した場合、それに伴って、アライメントマーク2aも同一の蛇行量だけフィルム2の幅方向にずれるが、アライメントマーク検出用のラインCCD16は、蛇行により幅方向にずれたアライメントマーク2aの位置を検出する。
【0035】
ラインCCD16は、例えば図7に示すような制御装置30に接続されている。そして、検出したアライメントマーク2aのフィルム幅方向における位置を制御装置30に送信する。制御装置30は、ラインCCD16から送信されたアライメントマーク2aの位置に基づいて、各マスク12の位置を調整するように構成されている。これにより、本実施形態に係る露光装置1は、アライメントマーク2aを形成し、その蛇行量によりマスク12の位置を調整することができる。
【0036】
本実施形態における露光光源11は、例えば紫外光を出射する光源であり、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ及び紫外LED等であって、連続光又はパルスレーザ光を出射する光源が使用される。本実施形態においては、露光光源から出射した露光光の光路上には、例えばコリメータレンズ及び/又は反射鏡等の光学系が配置されており、例えばフィルム2上の露光材料膜上のパターン形成用領域に形成された配向材料膜(露光材料膜21)に所定の光量で露光光が照射されるように構成されている。露光光源は、例えば図示しない制御装置により、露光光の出射方向を調整することができ、これにより、フィルム2に対する露光光の入射角を調整可能に構成されている。本実施形態の露光装置1は、1の露光領域に対して夫々2つの露光光源が向かい合わせに、フィルム2の移動方向に並ぶように配置されている。これにより、各露光光源から出射した夫々プレチルト角が異なる2つの露光光をマスク12を介して配向材料膜(露光材料膜21)に照射し、配向材料膜をその移動方向に垂直の幅方向に分割して露光し、フィルム基材上に、配向方向が隣接する分割領域で互いに異なる配向膜を形成する。このような露光装置の方式は、配向分割方式と称されている。これにより、例えば1絵素となる領域がその幅方向に2分割された配向膜を使用し、配向膜間に液晶を挟持した表示装置に電圧を印加すれば、電圧印加時の液晶分子の向きは、配向膜の配向方向に応じて1絵素内で2方向となり、液晶ディスプレイ等の視野角を広くできる。また、幅方向に隣接する画素となる領域ごとに配向方向が異なる配向膜が形成されたフィルムは、例えば3D(Three Dimensional)ディスプレイ等の偏光フィルムとして使用することができる。なお、露光光源は、1カ所の露光領域について2個に限らず、3個以上設けてもよく、互いに異なる方向からの露光光により、例えば配向膜材料を3方向以上に配向させてもよい。また、例えば、1カ所の露光領域について、露光光源を1個設け、露光光源から出射された露光光を偏光板等により2以上に分割し、分割した露光光を互いに異なる方向から照射するように構成してもよい。例えば、偏光板により、露光光をP偏光の直線偏光の露光光とS偏光の直線偏光の露光光とに分割して、夫々異なる方向から照射することができる。
【0037】
マスク12は、図6に示すように、例えば枠体120とその中央のパターン形成部125により構成されており、パターン形成部125には、所定の光透過領域のパターン125aが形成されている。即ち、パターン形成部125には、フィルム2に形成するパターン形状に対応して、露光光を透過する開口が形成されているか、又は光透過性の部材が設置されている。そして、例えば配向分割方式の露光装置においては、パターン形成部125の透過光によりフィルム2の表面の配向材料膜にマスクパターンを露光する。本実施形態においては、マスク12ごとに1対の露光光源を配置し、夫々入射角の異なる露光光を出射する。従って、本実施形態においては、パターン125aは、入射角度が異なる2つの露光光に対応して、フィルムの移動方向の上流側及び下流側に矩形の開口パターンが夫々複数本設けられている。そして、これらの上流側及び下流側の光透過領域群は、露光光の照射領域同士が互いに重ならないように、互いに離隔して形成されている。また、例えば上流側のパターンと下流側のパターンとによる露光領域が互いに隣接するように、上流側パターンと下流側パターンとは、その幅方向に沿って千鳥状に形成されている。
【0038】
本実施形態においては、マスク12には、パターン125aよりも上流(図6における上)側に、フィルム2の移動方向に対して垂直の幅方向に延びるように、幅が300μm程度、長さが250mm程度のラインCCD用の覗き窓12aが設けられており、この覗き窓12aの長手方向の中間に露光光を遮光する例えば幅が15μm程度のライン状の遮光パターン12bが設けられている。そして、マスク12の下方には、例えばマスク位置検出用のラインCCD15が設けられており、ラインCCD15により遮光パターン12bの位置を検出し、マスク12の位置調整に使用する。なお、本実施形態における覗き窓12a及び遮光パターン12bの位置及び形状は、一例であり、マスク12の位置決めを精度よく行うことができる限り、本発明はこれらの位置及び形状により限定されるものではない。例えば覗き窓12a及び遮光パターン12bの位置は、2列に並ぶように形成されたパターン125a間の領域等に設けられていてもよく、例えば遮光パターン12bの代わりに、互いに(例えばN型に)交差する複数本のスリットが設けられていてもよい。
【0039】
マスク12は、例えば枠体120の部分がマスクステージにより支持されており、マスクステージの移動によりマスク12の全体が移動可能に構成されている。マスクステージは、例えば図7に示すような制御装置30に接続されており、制御装置30による制御により、その位置を、例えば水平方向(フィルムの幅方向、又はフィルムの幅方向及びフィルムの長手方向)に移動可能に構成されている。これにより、マスク12によるフィルム2の露光位置を水平方向に調整することができる。マスクステージは、例えば鉛直方向にも移動可能であり、これにより、フィルム2上の例えば配向膜材料が所定の大きさで露光されるように調整可能に構成されている。
【0040】
図7はアライメントマーク形成部の位置及びマスク位置を制御する制御装置30の構成を一例として示す図である。図7に示すように、制御装置30は、例えばマスクステージ駆動部及びフィルムの巻き取り側のロール81に設けられたモータの制御部に接続されている。図7に示すように、マスク位置制御部30は、蛇行検出用マーク2bの位置検出用のラインCCD14に接続された第1画像処理部31と、マスク12に対応する位置におけるアライメントマーク2aの位置検出用のラインCCD16に接続された第2画像処理部32と、マスク12の下方に設けられたマスク位置検出用ラインCCD15に接続された第3画像処理部33と、演算部34と、メモリ35と、モータ駆動制御部36と、レーザマーカ駆動制御部37と、マスクステージ駆動制御部38と、制御部39とを備えている。
【0041】
第1画像処理部31は、蛇行検出用マーク2bの位置検出用のラインCCD14により撮像された蛇行検出用マーク2bの画像処理を行い、例えば各蛇行検出用マーク2bの先端及び終端のフィルムの移動方向に交差する方向における位置を検出する。第2画像処理部32は、アライメントマーク検出用のラインCCD16により撮像されたアライメントマーク2aの画像処理を行い、各アライメントマーク2aのフィルムの移動方向に交差する方向における位置を検出する。第3画像処理部33は、マスク位置検出用のラインCCD15により撮像されたマスク12の遮光パターン12bの画像処理を行い、遮光パターン12bのフィルムの移動方向に交差する方向における位置を検出する。演算部34は、これらの検出結果に基づき、各検出対象のフィルムの移動方向に交差する方向における変位又は蛇行量を演算する。即ち、演算部34は、第1画像処理部31の検出結果により、蛇行検出用マーク2bがラインCCD14の位置でフィルムの移動方向に交差する方向に蛇行した量を演算し、第2画像処理部32及び第3画像処理部33の検出結果により、アライメントマーク2aの位置及びマスク12の位置により、両者間の距離を演算し、例えばフィルムの幅方向において、設定すべき両者間の相対的位置関係と実際の両者間の相対的位置関係とにより、設定すべき両者間の距離からのずれを演算する。メモリ35は、例えば第1画像処理部31、第2画像処理部32及び第3画像処理部33の検出結果及び演算部34の演算結果を記憶する。モータ駆動制御部36は、例えばフィルムの巻き取り側のロール81のモータの駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度を制御する。
【0042】
レーザマーカ駆動制御部37は、アライメント用レーザマーカ13の駆動を制御するものであり、例えばガイド部材13aに沿ったアライメント用レーザマーカ13の移動方向及び移動量を制御する。マスクステージ駆動制御部38は、マスクステージの駆動を制御するものであり、例えばマスクステージの移動方向及び移動量を制御することにより、マスク位置を調整できる。制御部37は、これらの第1乃至第3画像処理部31,32,33、演算部34、メモリ35、モータ駆動制御部36、レーザマーカ駆動制御部37及びマスクステージ駆動制御部38を制御する。これにより、露光装置1は、例えばマスク12の位置及びアライメント用レーザマーカ13の位置を、例えばフィルムの移動方向に交差する方向に調整したり、巻き取り側のロール81に設けられたモータの回転速度等を制御できるように構成されている。
【0043】
これにより、本実施形態においては、例えば、図2に示すように、フィルム2がその移動方向に交差する方向に蛇行した場合において、ラインCCD14は、各蛇行検出用マーク2bについて、その先端部及び終端部のフィルム移動方向に交差する方向における位置を検出する。そして、この検出結果に基づき、制御装置30は、フィルム2の移動方向に交差する方向における蛇行検出用マーク2bの蛇行量を演算し、この演算結果に基づいて、図3に示すように、アライメント用レーザマーカ13の位置を補正する。本実施形態においては、フィルム2が蛇行した場合においても、これをラインCCD14で検出して、フィルム2の蛇行を打ち消すようにアライメント用レーザマーカ13の位置を補正するため、アライメントマーク2aをフィルム2に対して相対的に直線状に形成することができる。これにより、本実施形態においては、アライメントマーク2aをフィルム2に対して相対的に蛇行するように形成する場合に比して、その形成誤差は極めて小さい。
【0044】
本実施形態においては、フィルム側部の例えばフィルム送給等に使用されている領域に、例えば焼成材料、光硬化性材料又はインク等を液状又はペースト状の状態で塗布して側部塗布膜22を形成してもよい。この側部塗布膜22となる焼成材料としては、焼成(ベーク)することによりフィルム基材20上に焼成膜を形成できる材料、例えば一般的に使用されている光学カラーフィルタ用の赤、緑、青及び/又は黒のレジスト材料を好適に使用することができる。但し、本発明における側部塗布膜は、フィルム蛇行の検出用のアライメントマークの形成のみに使用されるものであるため、レジスト材料により側部塗布膜を形成する場合においては、現像等の工程は特に必要としない。また、光硬化性材料としては、例えば光硬化性樹脂を使用することができる。又は、側部塗布膜22の材料にインクを塗布する場合には、顔料及び/又は染料等を含有する液状又はペースト状のインク全般を使用することができ、乾燥装置5で溶媒成分を揮発させて膜を形成できるインク、例えば、油性インクを好適に使用することができる。側部塗布膜22を焼成材料又は光硬化性材料により形成する場合においては、焼成材料又は光硬化性材料は、露光材料塗布用のスリットコーター4により露光材料と同時に塗布されてもよく、他のスリットコーターにより塗布されてもよい。側部塗布膜22をインクにより形成する場合においては、フィルム2の移動方向におけるスリットコーター4の上流側又は下流側、即ち、乾燥装置5よりも上流側に設けられた塗布装置により、フィルム基材20の側部にインクを塗布する。塗布装置としては、例えば適度な柔軟性を有する素材、例えばフェルト質の繊維等により形成された塗布部にインクを浸透させ、この塗布部を送給されてくるフィルム基材20の側部の露光材料を塗布しない領域に接触させることにより、インクを膜状に塗布する構成のものを使用すればよい。
【0045】
なお、これらの焼成材料、光硬化性材料又はインクは、有色の材料であることが好ましい。即ち、有色のインク、有色の光硬化性材料又はカラーフィルタ用のレジスト材料等により形成された側部塗布膜22は、例えば波長が532nmのレーザ光を照射した場合に、レーザ光の吸収率が90乃至98%であり、フィルム基材及び配向膜材料(フィルム基材及び配向膜材料共にレーザ光の吸収率はほぼ0%)に比して極めて高く、また、各レーザマーカ13,17からのレーザ光の照射により、容易に露光又はレーザ加工によりマーキングされる。よって、無色透明のフィルム基材にレーザ光を照射してマーキングする場合に比して、レーザ光によるマーキングが容易であり、アライメントマーク2a,蛇行検出用マーク2bの形成が容易である。例えば、フィルム基材にマーキングを行う場合においては、例えば使用するレーザ光を波長が266nmの紫外光とした場合に、レーザ光の照射エネルギーを例えば8J/cm2と極めて大きくしないと各マーク2a,2bの形成が難しい。また、配向材料膜にレーザマーキングを行う場合においては、フィルム基材のみの場合に比してレーザ光の照射エネルギーを小さくできるものの、各マーク2a,2bの周囲の配向材料膜も無色透明であることから、例えばSEM等の検出装置を使用する必要があり、露光装置のコストが若干高く、装置の大きさも若干大きくなる。しかし、側部塗布膜22を例えば有色のインクにより形成した場合、例えば使用するレーザ光を波長が532nmの紫外光とした場合に、レーザ光の照射エネルギーを0.6J/cm2程度まで小さくすることができる。また、例えば側部塗布膜22をカラーフィルタ用のレジスト材料で形成した場合においては、レーザ光の照射エネルギーは1.0J/cm2程度まで小さくできる。よって、側部塗布膜22を上記のような有色材料で形成することにより、レーザ光によるマーキングが容易であると共に、形成したマークの周囲には、有色の塗布膜が残っているため、CCDカメラ等の安価で小型の検出装置を使用した場合においても、形成したアライメントマーク2a,蛇行検出用マーク2bを容易に且つ精度よく検出することができる。従って、蛇行検出用マーク2bによるフィルム2の蛇行を精度よく検出でき、また、アライメントマーク2aにより、マスク12の位置を精度良く調整できるため、安定的にフィルムを露光することができる。
【0046】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。先ず、フィルム2は、露光装置1に供給される前に、図9に示すスリットコーター4により、フィルム基材20の中央には、配向膜(露光材料膜21)となる露光材料が塗布される。フィルム2の側部に側部塗布膜22を形成する場合においては、その材料として焼成材料又は光硬化性材料も塗布される。又は、側部塗布膜22の材料としてインクを塗布する場合においては、フィルムの移動方向におけるスリットコーター4の上流側又は下流側(乾燥装置5の上流側)に設けられた塗布装置により、フィルム基材の両側縁部(縁部から25mmまでの領域)の少なくとも一方には、インクが塗布される。インクの塗布の際には、例えばフェルト質の繊維等により形成された塗布部にインクが浸透されたものを、フィルム基材20の表面に接触させることにより、フィルム基材20の表面にインクを膜状に塗布する。これにより、フィルム基材20の表面には、液状又はペースト状の露光材料、並びに側部塗布膜22となるレジスト材料、光硬化性材料又はインクが膜状に塗布される。側部塗布膜22となるこれらの材料は、例えば有色の材料である。
【0047】
次に、フィルム2は、乾燥装置5に搬送され、表面の液状又はペースト状の露光材料が乾燥される。フィルム2の側部に塗布膜となる材料が塗布される場合においては、乾燥装置5にて、各材料も、その特性に応じて乾燥(溶媒成分の揮発)、光硬化、及び/又は焼成(ベーク)される。これにより、フィルム基材の表面には、露光材料膜21(配向材料膜)及び側部塗布膜22(レジスト膜)が形成される。即ち、フィルム基材の幅方向の中央には、所定の配向材料膜が形成され、フィルム基材の縁部から25mmまでの側部に側部塗布膜22を形成する場合においては、フィルム2の側部には、アライメントマーク及び蛇行検出用マーク形成用のレジスト、光硬化性材料又はインクによる材料膜が形成される。そして、この1種類又は2種類の材料膜が形成されたフィルム2が、例えば搬送ローラ9により、その先端部から露光装置1内に供給されていく。
【0048】
露光装置1内に供給されたフィルム2は、搬送ローラ等による搬送により、その側部がレーザマーカ17の下方に到達する。フィルム2の側部がレーザマーカ17の下方に到達したら、レーザマーカ17からレーザ光を照射することにより、蛇行検出用マーク2bの形成を開始する。この際、フィルム2の側部にレジスト膜等の側部塗布膜22を形成している場合には、レーザ光の照射によるマーキングは容易に進行し、蛇行検出用マーク2bも明瞭且つ精度よく形成されるため、後の工程における検出も容易となるので好ましい。レーザ光の照射により、フィルム基材には蛇行検出用マーク2bが形成されるが、このフィルム2の側部は、従来では例えばフィルム2の送給等に使用していた領域であり、表示装置の画像表示領域には使用されない領域であるから、問題はない。
【0049】
蛇行検出用マーク2bが形成されたフィルム2は、搬送により蛇行検出用マーク2bの位置検出用のラインCCD14の下方に到達するが、搬送されてくる間に、図2に示すように、フィルム2は、例えば搬送装置のローラ80,81とフィルムのロールとの間の隙間又はロールへのフィルムの巻き取り誤差等により、もっぱら移動方向の下流側において、その移動方向に垂直な方向に蛇行する場合がある。そして、このフィルム2の移動方向下流側の蛇行が次第に上流側へと伝達していく。本実施形態においては、フィルム2の移動方向に垂直な方向に延びるように配置されたラインCCD14によりフィルム2の移動方向に交差する方向の蛇行検出用マーク2bの位置を例えば指標位置にて検出し、検出信号により、制御装置30は、アライメント用レーザマーカ13の位置を補正する。即ち、蛇行検出用マーク2bが図2における上方に蛇行した場合、制御装置30は、この蛇行量を打ち消すように、アライメント用レーザマーカ13の位置を図2における上方に補正する。そして、アライメント用レーザマーカ13からレーザ光を照射することにより、アライメントマーク2aの形成を開始する。この際、フィルム2の側部にレジスト膜等の側部塗布膜22を形成している場合には、レーザ光の照射によるマーキングは容易に進行し、アライメントマーク2aも明瞭且つ精度よく形成されるため、後の工程における検出も容易となるので好ましい。レーザ光の照射により、フィルム基材にはアライメントマーク2aが形成されるが、このフィルム2の側部は、従来では例えばフィルム2の送給等に使用していた領域であり、表示装置の画像表示領域には使用されない領域であるから、問題はない。これにより、図2に示すように、アライメントマーク2aは、フィルム2に対して相対的に直線状に形成される。
【0050】
このラインCCD14による蛇行検出用マーク2bの検出の際には、例えばラインCCD14は、図5に示すように、各蛇行検出用マーク2bについて、その指標となる先端及び後端のフィルム移動方向に交差する方向の位置を検出する。このとき、蛇行検出用マーク2bの配置によっては、ラインCCD14により計測できない区間が存在する場合がある。しかしながら、例えば図4(a)に示すように、2列の蛇行検出用マーク2bを相互に千鳥状に配置して、2列の各帯状の蛇行検出用マーク2bの先端部及び後端部をフィルム2の移動方向に交差する方向からみて、相互に重なるように形成すれば、ラインCCD14により蛇行検出用マーク2bを計測できない区間はなく、蛇行検出用マーク2bの位置の検出精度が高くなるので好ましい。
【0051】
フィルム2に対して相対的に直線状にアライメントマーク2aが形成されたフィルム2は、搬送により、やがて、上流側マスク12(121)の下方に到達する。図8に示すように、フィルム2は、マスクの下方に搬送されてくるまでの間に、フィルム2の移動方向に垂直な方向に蛇行する場合があるが、本実施形態においては、この蛇行を補正する構成を備えている。即ち、マスクの覗き窓12a及び遮光パターン12bに対応する位置には、フィルム2の幅方向に延びるようにラインCCD15が配置されており、ラインCCD15は、マスク12の覗き窓12aの中間に設けられた遮光パターン12bの位置をマスク12の位置として検出する。また、フィルム2の移動方向におけるマスク12の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置には、アライメントマーク検出用のラインCCD16が設けられており、フィルム2の側部に形成されたアライメントマーク2aを検出する。これらのラインCCD15,16により検出された夫々マスク位置,アライメントマーク位置の信号は、制御装置30に送信され、各画像処理部(第2画像処理部32,第3画像処理部33)、演算部34及び制御部39等による処理を受けた後、マスクステージ駆動制御部38による制御により、マスクステージが駆動されることにより、アライメントマーク2aの位置を基準としてマスク位置を調整することができる。即ち、本実施形態においては、アライメントマーク2aは、フィルム2に対して相対的に直線状に形成されているが、このアライメントマーク2aの位置を基準としてマスク位置を補正することにより、例えばマスク位置調整用のCCDカメラ等の検出部が個体差による検出誤差を有していた場合においても、この検出誤差がアライメントマークの形成誤差にほぼ積算されず、マスク位置の設定精度が高い。
【0052】
その後、フィルム2は、マスク12のパターン125aの下方に到達する。このとき、露光光源から出射され、マスク12のパターン125aを透過した露光光の照射により、フィルム2の表面の配向膜材料(露光材料膜21)は、所定の方向に配向する。これにより、フィルム2には、露光パターンが形成される。そして、露光光源11から連続光を出射しながら、フィルム2を連続的に搬送することにより、フィルム2には、フィルムの移動方向に沿って帯状に延びるように露光パターンが形成されていく。本実施形態においては、フィルム2を連続露光する場合においても、フィルム2の蛇行を連続的に補正してアライメントマーク2aを相対的に直線状に形成することができ、また、このアライメントマーク2aを使用してマスク12の位置を精度よく調整することができるため、フィルム2が連続的に供給される場合においても、配向膜材料(露光材料膜21)を高精度で安定的に連続露光することができる。
【0053】
本実施形態においては、フィルムの移動方向における下流側にもマスク123が配置されており、図1に示すように、上流側マスク121により露光されたフィルム2は、やがて下流側のマスク123の下方に到達する。本実施形態においては、例えば上流側マスク121による露光領域と下流側マスク123による露光領域を相互に隣接するように形成するが、上記の如く、フィルム2に対して相対的に直線状に形成されたアライメントマーク2aを基準として下流側マスク123の位置を調整するので、マスク位置の設定精度が高い。よって、上流側マスク121により露光された領域が下流側マスク123により露光されてしまったり、また、未露光の領域が発生することもなく、高精度で各マスクによる露光領域を隣接するように形成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,10:露光装置、12:マスク、12a:覗き窓、12b:遮光パターン、120:枠体、121:(第1の)マスク、122:(第2の)マスク、123:(第3の)マスク、124:(第4の)マスク、125:パターン形成部、125a:(マスク)パターン、13:アライメント用レーザマーカ、14:(蛇行検出用マークの位置検出用)ラインCCD、15:(マスク位置検出用)ラインCCD、16:(アライメントマーク検出用)ラインCCD、17:レーザマーカ、2:フィルム、2a:アライメントマーク、2b:蛇行検出用マーク、20:露光対象部材、21:露光材料膜、22:側部塗布膜、30:制御装置、31:第1画像処理部、32:第2画像処理部、33:第3画像処理部、34:演算部、35:メモリ、36:モータ駆動制御部、37:レーザマーカ駆動制御部、38:マスクステージ駆動制御部、39:制御部、100:画像表示領域に対応する領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送されてくる露光対象部材の露光精度を高めた露光装置に関し、特に、露光対象部材が移動方向に垂直な方向に蛇行した場合においても、マスク位置調整用のアライメントマークを露光対象部材の蛇行に応じて変化させ露光対象部材に対するマスクの位置を精度よく調整することができ、安定的な露光が可能な露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等のガラス基板上に例えば配向膜等を形成する場合には、表面上に配向材料膜等の材料膜が形成されたガラス基板を露光装置に供給し、配向材料膜を露光することにより、所定の方向に光配向させることが行われている。
【0003】
この露光装置においては、露光光源から所定の光学系を介して出射された露光光は、マスクの光透過領域のパターンを透過して照射され、露光対象のガラス基板は、例えば移動可能なステージ上に載置され、ステージを移動させることにより、露光光の照射領域に搬送される。そして、ガラス基板上に形成された材料膜をマスクのパターンに対応させて露光することにより、ガラス基板上に所定の露光領域を形成することが行われている。
【0004】
このように、ステージ等の搬送装置により搬送されるガラス基板等の露光対象部材は、配向膜等の形成領域が搬送装置又はマスク等の位置精度により大きく左右される。従って、露光対象部材の所定の領域を高精度に露光するための技術が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、フィルムの露光装置が開示されており、フィルムの露光対象領域の外側のフィルム側部の両側に1対の矩形のマーキングを施している。そして、フィルムの搬送を停止した状態で、前記アライメント用のマーキング形状をフィルムの移動方向及び移動方向に垂直な方向で光学的に検出することにより、フィルムの所定の領域に露光光が照射されるようにマスクの位置を調整している。
【0006】
また、露光対象部材がフィルムの場合においては、フィルムを露光装置に連続的に供給する搬送装置として、例えば図9及び図10に示すような1対のローラ80,81が使用される。即ち、図9及び図10に示すように、露光対象のフィルム2は、フィルム基材から製品としてのフィルムに加工されるまでの各工程間をロール状に巻き取られて搬送される。そして、露光装置に供給される際には、供給側のローラ80にフィルムのロールが同軸的に取り付けられ、フィルム2は先端部から巻き取り側ローラ81により順次巻き取られていく。そして、図9に示すように、供給側のローラ80から巻き取り側のローラ81に至るまでの間に、露光装置を通過させ、フィルムの表面に形成された例えば配向材料膜に露光光を連続的に照射して、フィルムの所定の露光領域をフィルムの移動方向に沿って露光することが行われている。この方式はロールトゥロール方式と呼ばれている。
【0007】
ロールトゥロール方式でフィルムを露光する場合においては、図10に示すように、供給側のローラ80から巻き取り側のローラ81へとフィルム2が送給されている間に、例えば搬送装置のローラ80,81とフィルムのロールとの間の隙間又はロールへのフィルムの巻き取り誤差等により、フィルム2がその移動方向に垂直な方向に蛇行する場合があり、これにより、フィルム2の露光精度が低下するという問題点がある。
【0008】
よって、例えば特許文献2及び3に開示されているように、フィルムの蛇行を補正する技術が種々提案されている。特許文献2に開示された技術は、フィルム等のウエブの縁部位置を検出する検出器を設け、検出器の検出結果により、供給側のローラをシリンダ等により軸方向に移動させ、移動方向に垂直な方向におけるウエブの蛇行を補正するものである。
【0009】
また、特許文献3には、フィルム等の長尺のワークを2回に分けて露光する場合において、1回目の露光の際に、ワーク上にパターンを形成すると共に、所定のパターン長さごとに間欠的にアライメント用のマーキングを施し、2回目の露光の際には、前記アライメントマークを撮像することにより、ワークの位置ずれ及び傾きを検出し、マスク位置及び傾きを補正する技術が開示されている。
【0010】
図11は、露光光を出射する露光光源11が1個のマスク12に対応して1対ずつ向かい合わせて配置され、互いに異なる方向から露光光を照射する型式の従来の露光装置を一例として示す図である。このような型式の露光装置は、例えば液晶ディスプレイ等のガラス基板上又は偏光フィルム等のフィルム基材上に配向膜を形成する際の配向材料膜の露光に使用されている。即ち、この露光装置による露光により配向膜を形成する場合には、表面に配向材料膜が形成された露光対象部材を露光装置内に供給し、所定の領域ごとに露光光を異なる方向から照射して、異なる方向に配向した配向膜を形成することが行われている。この露光装置によれば、例えばフィルムの1絵素に対応する領域をその幅方向に2分割して露光したり、画素に対応する領域ごとにフィルムをその幅方向に分割して露光し、各分割領域ごとに配向方向が異なる配向膜を形成することができる。この配向膜の配向方向の特徴により、ガラス基板間に挟持する液晶分子の電圧印加時の動作を配向膜の配向方向に応じて異ならせ、これにより、表示装置の視野角を広げることができ、また、製造したフィルムを3D(Three Dimensional)ディスプレイ等の偏光フィルムとしても使用することができ、近時、このようなフィルムの露光技術は注目を集めている。
【0011】
このような露光装置によりフィルムを露光する際には、フィルムには、搬送中に波打ちが発生しやすく、これにより、露光位置のずれが発生するという問題点がある。この露光位置のずれの影響を低減するために、例えば、上記のようなフィルムの移動方向に複数の光源を並置した露光装置においては、例えば図11及び図12に示すように、1個のマスクを使用して露光するのではなく、複数個のマスク12を使用し、各マスク12を露光対象部材の移動方向及びこれに垂直の幅方向に並ぶように千鳥状に配置して、露光光源11を各マスクごとに設けて露光することが行われている。そして、各マスク121乃至124に露光光源11からの露光光を透過させ、図12に示すように、フィルムが供給されてくる上流側にて、互いに離隔して配置されたマスク121及び122によりフィルム2を露光領域A及びCで露光し、下流側にて、露光領域A及びC間の領域Bをマスク123により露光し、露光領域Cに隣接する領域Dをマスク124により露光することが行われている。これにより、フィルム2のほぼ全面に配向分割したパターンを精度良く形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−323621号公報
【特許文献2】特開平8−301495号公報
【特許文献3】特開2009−216861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題点がある。特許文献1の技術は、ワークを搬送装置等により連続的に供給する場合には適していない。即ち、特許文献1の露光装置においては、アライメントマークの検出及びマスク位置の補正は、ワークの搬送を停止した状態で行っている。特に、ロールトゥロール方式でフィルムを供給して露光する場合においては、上記のように、移動方向に垂直な方向にフィルムが蛇行する場合があり、マスク位置の補正ごとにワークの搬送を停止する必要がある。よって、例えば露光領域を連続的に帯状に形成する場合等においては、生産性が極めて低いものである。特許文献3の技術においても、アライメントマークは所定の区間ごとにしか設置されておらず、露光精度を向上させるためには、アライメントマークの検出のためにワークの搬送を停止してマスク位置を補正する必要があり、生産性が低い。
【0014】
また、特許文献2に開示されたようなフィルムの搬送装置を使用した場合においても、図10に示すような移動方向に垂直な方向のフィルムの蛇行は周期的に発生してしまう。そして、特許文献2の技術は、搬送装置に対するフィルムの蛇行の解消を目的としたものであり、露光装置による露光精度を考慮したものではない。従って、フィルムの蛇行による露光精度の低下を解消できるものではない。
【0015】
更に、特許文献3の技術も、特許文献1と同様に、アライメントマークの検出及びマスク位置の補正は、ワークの搬送を停止した状態で行っており、フィルムを連続的に露光する場合においては、生産性が低いものである。
【0016】
そして、図11及び12に示すような複数個のマスク12により、各マスク12ごとに露光光を照射する形式の露光装置においては、図11に示すように、露光光源11を内蔵している部分(露光光源11の筐体部分)は、1光源につき、例えばフィルムの移動方向に約2m程度の長さを有しており、図12に示すような露光領域A及びCと露光領域B及びDとの間の距離は、少なくとも4m程度と長くなる。よって、上流側の露光領域A及びCから下流側の露光領域B及びDへの搬送中に、フィルムが容易に波打ち、その移動方向に垂直の幅方向にずれやすいという問題点がある。従って、フィルムの移動方向下流側の露光領域において、フィルムの幅方向の位置ずれにより、既に露光された領域が露光されてしまったり、また、未露光の領域も発生してしまうという問題点もある。
【0017】
この問題点を解決するために、本願出願人は、特願2010−089608号において、フィルム基材上の側部にアライメントマークを形成し、フィルムの移動方向における下流側にてアライメントマークのフィルム幅方向のずれをCCDカメラにより検出し、この検出信号に基づいて、下流側のマスク123及び124の位置をフィルムの幅方向に調節して露光領域のずれを補正する技術を提案した。しかしながら、この先行技術は、一定の位置に固定されたレーザマーカによりアライメントマークを形成するものであり、フィルムが蛇行した場合、フィルムに対するアライメントマークの相対的位置も蛇行してしまう。従って、フィルムの移動方向に対して蛇行するように形成されたアライメントマークを基準としてマスク位置を決めることにより、露光領域もフィルムの移動方向に対して蛇行するように形成される。また、フィルムに対して相対的に蛇行するようにアライメントマークを形成する場合においては、その形成誤差は大きく、各マスクに対応して設けられたCCDカメラによる検出誤差がアライメントマークの形成誤差に積算され、マスク位置の設定精度が若干低下する。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、露光対象部材が連続的に供給される場合においても、マスク位置調整用のアライメントマークを露光対象部材の蛇行に応じて変化させ露光対象部材に対するマスクの位置を精度よく調整することができ、高精度で安定的な露光が可能な露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る露光装置は、搬送装置により連続的に搬送されてくる露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光源から出射した露光光をマスクを介して照射することにより、前記露光パターン形成用領域に前記マスクの夫々に対応させたマスクパターンを露光する露光装置において、前記露光対象部材の移動方向における前記露光光の照射位置よりも上流側に配置され前記露光対象部材に蛇行検出用マークを形成する第1マーク形成部と、前記露光対象部材の移動方向における前記第1マーク形成部と前記露光光の照射位置との間に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの位置を検出する第1検出部と、この第1検出部が検出した前記蛇行検出用マークの位置に基づいて前記蛇行検出用マークの蛇行量を演算する第1蛇行演算部と、前記露光対象部材の移動方向における前記第1検出部の位置に対応する位置にて前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向に移動可能に配置され、前記マスクの位置調整用のアライメントマークを形成する第2マーク形成部と、前記第1蛇行演算部が求めた前記蛇行検出用マークの蛇行量を打ち消すように、前記第2マーク形成部を移動させる第1制御部と、を有することを特徴とする。
【0020】
この露光装置は、例えば前記露光対象部材の移動方向における前記第2マーク形成部の下流側に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記アライメントマークの位置を検出する第2検出部と、前記第2検出部が検出した前記指標位置における前記アライメントマークの位置に基づいて前記アライメントマークの蛇行量を演算する第2蛇行演算部と、この第2蛇行演算部が求めた前記アライメントマークの蛇行量に応じて、前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向の前記マスクの位置を調整する第2制御部と、を有する。
【0021】
上述の露光装置において、例えば前記マスクは、前記露光対象部材の移動方向に離隔して複数個配置されており、夫々のマスクに対応して前記第2蛇行演算部及び前記第2制御部が設けられている。また、前記アライメントマーク形成部は、例えば前記露光対象部材の移動方向に対して連続的又は断続的にアライメントマークを前記露光対象部材に形成する。
【0022】
前記第1マーク形成部は、例えば前記露光対象部材の移動方向に対して断続的な指標が付された蛇行検出用マークを前記露光対象部材に形成するものであり、前記第1検出部は、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの前記指標位置における位置を検出するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る露光装置は、露光対象部材の移動方向における露光光の照射位置よりも上流側にて露光対象部材に蛇行検出用マークを形成する第1マーク形成部と、露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの位置を検出する第1検出部と、を有し、第1蛇行演算部は、第1検出部が検出した蛇行検出用マークの位置に基づいて蛇行検出用マークの蛇行量を演算し、第1制御部は、第1蛇行演算部が求めた前記蛇行検出用マークの蛇行量を打ち消すように、第1検出部の位置に対応する位置に配置された第2マーク形成部を移動させ、この第2マーク形成部によりマスク位置調整用のアライメントマークを形成する。即ち、露光対象部材が連続的に供給されて移動方向に垂直な方向に蛇行した場合においても、第2マーク形成部は、この蛇行量を打ち消すようにてアライメントマークを形成する。これにより、アライメントマークは、露光対象部材に対して相対的に直線状に形成される。よって、この直線状のアライメントマークを使用してマスク位置を精度よく調整することができ、露光対象部材を高精度で安定的に連続露光することができる。
【0024】
また、第2マーク形成部は、アライメントマークを露光対象部材に相対的に直線状になるように形成するため、アライメントマークを露光対象部材に対して相対的に蛇行するように形成する場合に比して、その形成誤差は極めて小さい。よって、このアライメントマークを使用してマスク位置を調整することにより、例えばマスク位置調整用のCCDカメラ等の検出部が個体差による検出誤差を有していた場合においても、この検出誤差がアライメントマークの形成誤差にほぼ積算されず、マスク位置の設定精度が向上するため、高精度の露光が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る露光装置によるフィルムの露光を示す平面図である。
【図2】(a)乃至(e)は、蛇行検出用マークの蛇行を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る露光装置において、蛇行量の検出によるアライメントマークの形成位置の補正を示す図である。
【図4】(a)乃至(c)は、本発明の実施形態に係る露光装置において、アライメントマークの形成態様を一例として示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る露光装置において、蛇行検出用マークの検出方法を一例として示す図である。
【図6】マスクを一例として示す図である。
【図7】アライメントマーク形成部の位置及びマスク位置を制御する制御装置を一例として示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る露光装置によるマスク位置の補正を示す図である。
【図9】従来のロールトゥロール方式によるフィルムの露光を一例として示す模式図である。
【図10】従来のロールトゥロール方式のフィルム搬送装置において、フィルムの移動方向に垂直な方向のフィルムの蛇行を示す模式図である。
【図11】配向分割方式の露光装置を一例として示す斜視図である。
【図12】フィルムの移動方向に複数の光源を配置した構成の露光装置を一例として示す図である。
【図13】(a)及び(b)は、露光装置によるフィルムの露光領域を一例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置の構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係る露光装置によるフィルムの露光を示す平面図、図2(a)乃至図2(e)は、蛇行検出用マークの蛇行を示す図、図3は本発明の実施形態に係る露光装置において、蛇行量の検出によるアライメントマークの形成位置の補正を示す図である。本実施形態に係る露光装置1は、図9乃至図12に示す従来の露光装置と同様に、露光光を出射する露光光源11と、マスク12と、露光光源11から出射した露光光をマスク12を介してフィルム2に照射する光学系と、フィルム2を搬送する例えば搬送ローラ等のフィルム搬送部と、を有しており、例えばコリメータレンズ及び/又は反射鏡等の光学系により、露光光源11から出射した露光光を、マスク12を介して、表面に露光材料膜が形成されたガラス基板又はフィルム2の露光対象部材20に照射し、マスクパターンに対応させて、例えば配向材料膜等の露光材料膜を光配向させて配向膜を形成する。なお、露光対象部材がガラス基板の場合には、搬送ステージ等の可動の搬送装置にガラス基板を載置して搬送することにより、露光光の照射位置において、ガラス基板表面の露光材料膜にマスクパターンを順次連続的に露光する。又は、露光対象部材がフィルム2の場合には、従来と同様に、ロールトゥロール方式により、供給側のローラ80から供給したフィルム2を巻き取り側のローラ81によりフィルム2の緊張状態を維持しながら巻き取る間に、フィルム表面の露光材料膜に露光光を照射して、露光材料膜を順次連続的に露光する。フィルム2用の搬送装置においては、例えば、上記2個のローラ80,81間にもフィルム2の搬送用の搬送ローラ9が1以上配置されており、各搬送ローラ9等は、例えばモータにより駆動されている。本実施形態においては、露光対象部材20としてフィルム2を使用する場合について説明するが、露光対象部材20がガラス基板の場合においても、搬送装置の構成以外については、本実施形態と同様である。
【0027】
本実施形態においては、図9に示すような従来の露光装置10と同様に、露光対象のフィルム2は、例えばロールトゥロール方式の供給側のロール80から巻き解かれて露光装置1内に供給されるまでの間に、スリットコーター4に供給され、スリットコーター4にてフィルム基材20の表面に所定の露光材料、例えば光配向性の材料が膜状に塗布されている。そして、塗布された露光材料は、乾燥装置5にて乾燥又は焼成され、フィルム基材20の表面に所定の露光材料膜が形成されている。そして、露光装置1には、表面に露光材料膜が形成されたフィルム2が供給される。本実施形態においては、フィルム2の表面に形成された露光材料膜21が配向材料膜である場合について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の露光装置1には、フィルム2の移動方向における露光光の照射位置(マスクパターンの形成位置)よりも上流側にレーザマーカ17(本発明における第1マーク形成部)が設けられており、フィルム2の移動方向におけるレーザマーカ17と露光光の照射位置との間には、蛇行検出用のラインCCD14(本発明における第1検出部)が設けられている。本実施形態においては、レーザマーカ17及びラインCCD14は、露光対象のフィルム2の両側部の一方の例えばフィルム送給等に使用されている領域の上方に配置されている。また、フィルム2の他方の側部の上方には、フィルム2の移動方向におけるラインCCD14に対応する位置に、アライメント用レーザマーカ13が設けられている。そして、フィルム2の移動方向におけるアライメント用レーザマーカ13の下流には、各マスク12に対応する位置にラインCCD16(第2検出部)が設けられている。本実施形態においては、図1に示すように、マスク12は、上流側及び下流側に夫々1個ずつ設けられており、各マスク121,123に対応するように夫々ラインCCD16がフィルム2の移動方向の上流側及び下流側に夫々1個配置されている。なお、本実施形態においては、フィルム2の一方の側部を蛇行検出用マーク2bの形成領域として使用し、他方のフィルム側部をアライメントマーク2aの形成領域として使用する場合について説明するが、これらのマーク2a、2bは、フィルム2上の露光パターン形成用領域外の領域、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置に使用される際に画像表示領域とならない領域に形成できればよい。画像表示領域とならない領域としては、例えば図13(a)に示すように、従来では例えばフィルム送給用の領域等に使用されているフィルム側部を挙げることができる。又は、図13(b)に示すように、1枚のフィルム2をその移動方向に垂直の幅方向に分割して複数枚の偏光フィルム等を製造する場合においては、例えば偏光フィルムとなる領域間の領域は使用されない領域であるから、この露光対象領域間の使用されない領域に蛇行検出用マーク2b及び/又はアライメントマーク2aを形成する。
【0029】
レーザマーカ17は、例えばNd:YAGレーザ又は紫外光等を照射するレーザ光源を備えており、例えばキセノンフラッシュランプ等のパルス光源によりパルスレーザ光を出射してフィルム2の縁部から例えば25mm以内のフィルム2の側部に、例えば幅が20μm、長さが15mmの蛇行検出用マーク2bを断続的に形成する。なお、後述する蛇行検出用のラインCCD14によるフィルム蛇行の検出精度を高めるために、例えば図4(a)に示すように、レーザマーカ17により、2列の蛇行検出用マーク2bを相互に千鳥状に形成し、2列の各帯状の蛇行検出用マーク2bの先端部及び後端部がフィルム2の移動方向に交差する方向からみて、相互に重なるように形成してもよい。この場合においては、各蛇行検出用マーク2bの先端及び後端を蛇行検出用の指標として使用する。又は、例えば図4(b)に示すように、各蛇行検出用マーク2bをフィルムの移動方向に対して同一方向に傾斜するように1列形成し、各マークの先端及び後端をアライメントマーク2aの蛇行検出用の指標として使用してもよい。又は、図4(c)に示すように、蛇行検出用マーク2bをフィルムの移動方向に延びるように連続的に1本形成し、例えばフィルムの移動方向に交差する方向に断続的な指標を設けてもよい。
【0030】
蛇行検出用のラインCCD14は、レーザマーカ17により形成された蛇行検出用マーク2bのフィルム移動方向に交差する方向の位置を検出する。即ち、フィルム2は、例えば搬送装置のローラ80,81とフィルムのロールとの間の隙間又はロールへのフィルムの巻き取り誤差等により、フィルム2がその移動方向に垂直な方向に蛇行する場合がある。この場合に、フィルム2は、もっぱら巻き取り側のロール81寄りの下流側の蛇行に起因して、その移動方向に垂直な方向の蛇行が次第に上流側へと伝達していく。これにより、フィルム2は、図2(a)乃至図2(e)に示すように、レーザマーカ17からラインCCD14まで搬送されてくる間に、その移動方向に垂直な方向の蛇行が生じる。本実施形態においては、フィルム2の移動方向に垂直な方向に延びるように配置されたラインCCD14により、フィルム蛇行に伴って蛇行した蛇行検出用マーク2bの位置を検出する。ラインCCD14は、例えば、蛇行検出用マーク2bの先端及び後端を蛇行検出用の指標としてその位置を検出する。
【0031】
図5は、本実施形態の露光装置において、蛇行検出用マーク2bの蛇行の検出方法を一例として示す図である。なお、図5には、フィルム2がその移動方向に垂直な方向に蛇行した場合において、1個の蛇行検出用マーク2bについて、その移動軌跡を示している。本実施形態においては、ラインCCD14は、例えば図5に示すように、各蛇行検出用マーク2bについて、その先端及び後端を指標とし、フィルム移動方向に交差する方向における蛇行検出用マーク2bの先端及び後端の位置を検出する。なお、蛇行検出用マーク2bが図4(a)乃至図4(c)に示すように、フィルム2の移動方向に交差する方向からみて、相互に重なるように形成されている場合においては、ラインCCD14により計測できない区間がなくなり、ラインCCD14による蛇行検出用マーク2bの蛇行の検出精度が向上するため、好ましい。ラインCCD14は、後述する制御装置30に接続されており、ラインCCD14により測定された蛇行検出用マーク2bの位置の信号は制御装置30に送信され、フィルム2の蛇行量が算出される。
【0032】
アライメント用レーザマーカ13は、レーザマーカ17と同様に、例えばNd:YAGレーザ又は紫外光等を照射するレーザ光源を備えており、例えばキセノンフラッシュランプ等のパルス光源によりパルスレーザ光を出射してフィルム2の縁部から例えば25mm以内のフィルム2の側部に、例えば幅が20μm、長さが15mmのアライメントマーク2aを断続的に形成する。又は、アライメント用レーザマーカ13は、連続したアライメントマーク2aを形成する。本実施形態においては、図1に示すように、アライメント用レーザマーカ13は、フィルム2の移動方向に垂直な方向に延びるガイド部材13aにより、フィルム2の移動方向に垂直な方向に移動可能に支持されている。そして、アライメント用レーザマーカ13は、ガイド部材13aに沿って移動されることにより、フィルム2へのアライメントマーク2aの形成位置を適宜調整可能に構成されている。
【0033】
本実施形態においては、アライメント用レーザマーカ13は、図3に示すように、ラインCCD14により測定された蛇行検出用マーク2bの位置により制御装置30が算出したフィルム2の蛇行量を打ち消すように、その位置が補正される。即ち、フィルム2が、図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態を経て、図3(c)に示す状態へと蛇行した場合においては、ラインCCD14は、各状態における蛇行検出用マーク2bの位置を検出し、制御装置30は、この検出結果に基づいて、フィルム2の図3における上方への蛇行量を算出する。そして、制御装置30は、アライメント用レーザマーカ13の位置をフィルム2の蛇行量に合わせて、図3における上方へとフィルム2の蛇行量を打ち消すように移動させる。これにより、アライメント用レーザマーカ13は、フィルム2に対する相対的な位置が移動せず、従って、アライメントマーク2aをフィルム2に対して相対的に直線状に形成することができる。
【0034】
アライメントマーク検出用のラインCCD16は、フィルム2の移動方向におけるマスク121,123の位置に対応する位置において、各マスク121,123とフィルムの幅方向に並ぶように、フィルム2の上方又は下方に配置されており、マスク12に対応する位置でアライメントマーク16aの位置を検出するように構成されている。図6に示すように、アライメントマーク検出用のラインCCD16は、例えばマスク12の覗き窓12aに対応する位置にて、フィルム2の移動方向に交差する方向におけるアライメントマーク2aの位置を検出する。例えば、フィルム2が移動する間にその幅方向に蛇行した場合、それに伴って、アライメントマーク2aも同一の蛇行量だけフィルム2の幅方向にずれるが、アライメントマーク検出用のラインCCD16は、蛇行により幅方向にずれたアライメントマーク2aの位置を検出する。
【0035】
ラインCCD16は、例えば図7に示すような制御装置30に接続されている。そして、検出したアライメントマーク2aのフィルム幅方向における位置を制御装置30に送信する。制御装置30は、ラインCCD16から送信されたアライメントマーク2aの位置に基づいて、各マスク12の位置を調整するように構成されている。これにより、本実施形態に係る露光装置1は、アライメントマーク2aを形成し、その蛇行量によりマスク12の位置を調整することができる。
【0036】
本実施形態における露光光源11は、例えば紫外光を出射する光源であり、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ及び紫外LED等であって、連続光又はパルスレーザ光を出射する光源が使用される。本実施形態においては、露光光源から出射した露光光の光路上には、例えばコリメータレンズ及び/又は反射鏡等の光学系が配置されており、例えばフィルム2上の露光材料膜上のパターン形成用領域に形成された配向材料膜(露光材料膜21)に所定の光量で露光光が照射されるように構成されている。露光光源は、例えば図示しない制御装置により、露光光の出射方向を調整することができ、これにより、フィルム2に対する露光光の入射角を調整可能に構成されている。本実施形態の露光装置1は、1の露光領域に対して夫々2つの露光光源が向かい合わせに、フィルム2の移動方向に並ぶように配置されている。これにより、各露光光源から出射した夫々プレチルト角が異なる2つの露光光をマスク12を介して配向材料膜(露光材料膜21)に照射し、配向材料膜をその移動方向に垂直の幅方向に分割して露光し、フィルム基材上に、配向方向が隣接する分割領域で互いに異なる配向膜を形成する。このような露光装置の方式は、配向分割方式と称されている。これにより、例えば1絵素となる領域がその幅方向に2分割された配向膜を使用し、配向膜間に液晶を挟持した表示装置に電圧を印加すれば、電圧印加時の液晶分子の向きは、配向膜の配向方向に応じて1絵素内で2方向となり、液晶ディスプレイ等の視野角を広くできる。また、幅方向に隣接する画素となる領域ごとに配向方向が異なる配向膜が形成されたフィルムは、例えば3D(Three Dimensional)ディスプレイ等の偏光フィルムとして使用することができる。なお、露光光源は、1カ所の露光領域について2個に限らず、3個以上設けてもよく、互いに異なる方向からの露光光により、例えば配向膜材料を3方向以上に配向させてもよい。また、例えば、1カ所の露光領域について、露光光源を1個設け、露光光源から出射された露光光を偏光板等により2以上に分割し、分割した露光光を互いに異なる方向から照射するように構成してもよい。例えば、偏光板により、露光光をP偏光の直線偏光の露光光とS偏光の直線偏光の露光光とに分割して、夫々異なる方向から照射することができる。
【0037】
マスク12は、図6に示すように、例えば枠体120とその中央のパターン形成部125により構成されており、パターン形成部125には、所定の光透過領域のパターン125aが形成されている。即ち、パターン形成部125には、フィルム2に形成するパターン形状に対応して、露光光を透過する開口が形成されているか、又は光透過性の部材が設置されている。そして、例えば配向分割方式の露光装置においては、パターン形成部125の透過光によりフィルム2の表面の配向材料膜にマスクパターンを露光する。本実施形態においては、マスク12ごとに1対の露光光源を配置し、夫々入射角の異なる露光光を出射する。従って、本実施形態においては、パターン125aは、入射角度が異なる2つの露光光に対応して、フィルムの移動方向の上流側及び下流側に矩形の開口パターンが夫々複数本設けられている。そして、これらの上流側及び下流側の光透過領域群は、露光光の照射領域同士が互いに重ならないように、互いに離隔して形成されている。また、例えば上流側のパターンと下流側のパターンとによる露光領域が互いに隣接するように、上流側パターンと下流側パターンとは、その幅方向に沿って千鳥状に形成されている。
【0038】
本実施形態においては、マスク12には、パターン125aよりも上流(図6における上)側に、フィルム2の移動方向に対して垂直の幅方向に延びるように、幅が300μm程度、長さが250mm程度のラインCCD用の覗き窓12aが設けられており、この覗き窓12aの長手方向の中間に露光光を遮光する例えば幅が15μm程度のライン状の遮光パターン12bが設けられている。そして、マスク12の下方には、例えばマスク位置検出用のラインCCD15が設けられており、ラインCCD15により遮光パターン12bの位置を検出し、マスク12の位置調整に使用する。なお、本実施形態における覗き窓12a及び遮光パターン12bの位置及び形状は、一例であり、マスク12の位置決めを精度よく行うことができる限り、本発明はこれらの位置及び形状により限定されるものではない。例えば覗き窓12a及び遮光パターン12bの位置は、2列に並ぶように形成されたパターン125a間の領域等に設けられていてもよく、例えば遮光パターン12bの代わりに、互いに(例えばN型に)交差する複数本のスリットが設けられていてもよい。
【0039】
マスク12は、例えば枠体120の部分がマスクステージにより支持されており、マスクステージの移動によりマスク12の全体が移動可能に構成されている。マスクステージは、例えば図7に示すような制御装置30に接続されており、制御装置30による制御により、その位置を、例えば水平方向(フィルムの幅方向、又はフィルムの幅方向及びフィルムの長手方向)に移動可能に構成されている。これにより、マスク12によるフィルム2の露光位置を水平方向に調整することができる。マスクステージは、例えば鉛直方向にも移動可能であり、これにより、フィルム2上の例えば配向膜材料が所定の大きさで露光されるように調整可能に構成されている。
【0040】
図7はアライメントマーク形成部の位置及びマスク位置を制御する制御装置30の構成を一例として示す図である。図7に示すように、制御装置30は、例えばマスクステージ駆動部及びフィルムの巻き取り側のロール81に設けられたモータの制御部に接続されている。図7に示すように、マスク位置制御部30は、蛇行検出用マーク2bの位置検出用のラインCCD14に接続された第1画像処理部31と、マスク12に対応する位置におけるアライメントマーク2aの位置検出用のラインCCD16に接続された第2画像処理部32と、マスク12の下方に設けられたマスク位置検出用ラインCCD15に接続された第3画像処理部33と、演算部34と、メモリ35と、モータ駆動制御部36と、レーザマーカ駆動制御部37と、マスクステージ駆動制御部38と、制御部39とを備えている。
【0041】
第1画像処理部31は、蛇行検出用マーク2bの位置検出用のラインCCD14により撮像された蛇行検出用マーク2bの画像処理を行い、例えば各蛇行検出用マーク2bの先端及び終端のフィルムの移動方向に交差する方向における位置を検出する。第2画像処理部32は、アライメントマーク検出用のラインCCD16により撮像されたアライメントマーク2aの画像処理を行い、各アライメントマーク2aのフィルムの移動方向に交差する方向における位置を検出する。第3画像処理部33は、マスク位置検出用のラインCCD15により撮像されたマスク12の遮光パターン12bの画像処理を行い、遮光パターン12bのフィルムの移動方向に交差する方向における位置を検出する。演算部34は、これらの検出結果に基づき、各検出対象のフィルムの移動方向に交差する方向における変位又は蛇行量を演算する。即ち、演算部34は、第1画像処理部31の検出結果により、蛇行検出用マーク2bがラインCCD14の位置でフィルムの移動方向に交差する方向に蛇行した量を演算し、第2画像処理部32及び第3画像処理部33の検出結果により、アライメントマーク2aの位置及びマスク12の位置により、両者間の距離を演算し、例えばフィルムの幅方向において、設定すべき両者間の相対的位置関係と実際の両者間の相対的位置関係とにより、設定すべき両者間の距離からのずれを演算する。メモリ35は、例えば第1画像処理部31、第2画像処理部32及び第3画像処理部33の検出結果及び演算部34の演算結果を記憶する。モータ駆動制御部36は、例えばフィルムの巻き取り側のロール81のモータの駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度を制御する。
【0042】
レーザマーカ駆動制御部37は、アライメント用レーザマーカ13の駆動を制御するものであり、例えばガイド部材13aに沿ったアライメント用レーザマーカ13の移動方向及び移動量を制御する。マスクステージ駆動制御部38は、マスクステージの駆動を制御するものであり、例えばマスクステージの移動方向及び移動量を制御することにより、マスク位置を調整できる。制御部37は、これらの第1乃至第3画像処理部31,32,33、演算部34、メモリ35、モータ駆動制御部36、レーザマーカ駆動制御部37及びマスクステージ駆動制御部38を制御する。これにより、露光装置1は、例えばマスク12の位置及びアライメント用レーザマーカ13の位置を、例えばフィルムの移動方向に交差する方向に調整したり、巻き取り側のロール81に設けられたモータの回転速度等を制御できるように構成されている。
【0043】
これにより、本実施形態においては、例えば、図2に示すように、フィルム2がその移動方向に交差する方向に蛇行した場合において、ラインCCD14は、各蛇行検出用マーク2bについて、その先端部及び終端部のフィルム移動方向に交差する方向における位置を検出する。そして、この検出結果に基づき、制御装置30は、フィルム2の移動方向に交差する方向における蛇行検出用マーク2bの蛇行量を演算し、この演算結果に基づいて、図3に示すように、アライメント用レーザマーカ13の位置を補正する。本実施形態においては、フィルム2が蛇行した場合においても、これをラインCCD14で検出して、フィルム2の蛇行を打ち消すようにアライメント用レーザマーカ13の位置を補正するため、アライメントマーク2aをフィルム2に対して相対的に直線状に形成することができる。これにより、本実施形態においては、アライメントマーク2aをフィルム2に対して相対的に蛇行するように形成する場合に比して、その形成誤差は極めて小さい。
【0044】
本実施形態においては、フィルム側部の例えばフィルム送給等に使用されている領域に、例えば焼成材料、光硬化性材料又はインク等を液状又はペースト状の状態で塗布して側部塗布膜22を形成してもよい。この側部塗布膜22となる焼成材料としては、焼成(ベーク)することによりフィルム基材20上に焼成膜を形成できる材料、例えば一般的に使用されている光学カラーフィルタ用の赤、緑、青及び/又は黒のレジスト材料を好適に使用することができる。但し、本発明における側部塗布膜は、フィルム蛇行の検出用のアライメントマークの形成のみに使用されるものであるため、レジスト材料により側部塗布膜を形成する場合においては、現像等の工程は特に必要としない。また、光硬化性材料としては、例えば光硬化性樹脂を使用することができる。又は、側部塗布膜22の材料にインクを塗布する場合には、顔料及び/又は染料等を含有する液状又はペースト状のインク全般を使用することができ、乾燥装置5で溶媒成分を揮発させて膜を形成できるインク、例えば、油性インクを好適に使用することができる。側部塗布膜22を焼成材料又は光硬化性材料により形成する場合においては、焼成材料又は光硬化性材料は、露光材料塗布用のスリットコーター4により露光材料と同時に塗布されてもよく、他のスリットコーターにより塗布されてもよい。側部塗布膜22をインクにより形成する場合においては、フィルム2の移動方向におけるスリットコーター4の上流側又は下流側、即ち、乾燥装置5よりも上流側に設けられた塗布装置により、フィルム基材20の側部にインクを塗布する。塗布装置としては、例えば適度な柔軟性を有する素材、例えばフェルト質の繊維等により形成された塗布部にインクを浸透させ、この塗布部を送給されてくるフィルム基材20の側部の露光材料を塗布しない領域に接触させることにより、インクを膜状に塗布する構成のものを使用すればよい。
【0045】
なお、これらの焼成材料、光硬化性材料又はインクは、有色の材料であることが好ましい。即ち、有色のインク、有色の光硬化性材料又はカラーフィルタ用のレジスト材料等により形成された側部塗布膜22は、例えば波長が532nmのレーザ光を照射した場合に、レーザ光の吸収率が90乃至98%であり、フィルム基材及び配向膜材料(フィルム基材及び配向膜材料共にレーザ光の吸収率はほぼ0%)に比して極めて高く、また、各レーザマーカ13,17からのレーザ光の照射により、容易に露光又はレーザ加工によりマーキングされる。よって、無色透明のフィルム基材にレーザ光を照射してマーキングする場合に比して、レーザ光によるマーキングが容易であり、アライメントマーク2a,蛇行検出用マーク2bの形成が容易である。例えば、フィルム基材にマーキングを行う場合においては、例えば使用するレーザ光を波長が266nmの紫外光とした場合に、レーザ光の照射エネルギーを例えば8J/cm2と極めて大きくしないと各マーク2a,2bの形成が難しい。また、配向材料膜にレーザマーキングを行う場合においては、フィルム基材のみの場合に比してレーザ光の照射エネルギーを小さくできるものの、各マーク2a,2bの周囲の配向材料膜も無色透明であることから、例えばSEM等の検出装置を使用する必要があり、露光装置のコストが若干高く、装置の大きさも若干大きくなる。しかし、側部塗布膜22を例えば有色のインクにより形成した場合、例えば使用するレーザ光を波長が532nmの紫外光とした場合に、レーザ光の照射エネルギーを0.6J/cm2程度まで小さくすることができる。また、例えば側部塗布膜22をカラーフィルタ用のレジスト材料で形成した場合においては、レーザ光の照射エネルギーは1.0J/cm2程度まで小さくできる。よって、側部塗布膜22を上記のような有色材料で形成することにより、レーザ光によるマーキングが容易であると共に、形成したマークの周囲には、有色の塗布膜が残っているため、CCDカメラ等の安価で小型の検出装置を使用した場合においても、形成したアライメントマーク2a,蛇行検出用マーク2bを容易に且つ精度よく検出することができる。従って、蛇行検出用マーク2bによるフィルム2の蛇行を精度よく検出でき、また、アライメントマーク2aにより、マスク12の位置を精度良く調整できるため、安定的にフィルムを露光することができる。
【0046】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。先ず、フィルム2は、露光装置1に供給される前に、図9に示すスリットコーター4により、フィルム基材20の中央には、配向膜(露光材料膜21)となる露光材料が塗布される。フィルム2の側部に側部塗布膜22を形成する場合においては、その材料として焼成材料又は光硬化性材料も塗布される。又は、側部塗布膜22の材料としてインクを塗布する場合においては、フィルムの移動方向におけるスリットコーター4の上流側又は下流側(乾燥装置5の上流側)に設けられた塗布装置により、フィルム基材の両側縁部(縁部から25mmまでの領域)の少なくとも一方には、インクが塗布される。インクの塗布の際には、例えばフェルト質の繊維等により形成された塗布部にインクが浸透されたものを、フィルム基材20の表面に接触させることにより、フィルム基材20の表面にインクを膜状に塗布する。これにより、フィルム基材20の表面には、液状又はペースト状の露光材料、並びに側部塗布膜22となるレジスト材料、光硬化性材料又はインクが膜状に塗布される。側部塗布膜22となるこれらの材料は、例えば有色の材料である。
【0047】
次に、フィルム2は、乾燥装置5に搬送され、表面の液状又はペースト状の露光材料が乾燥される。フィルム2の側部に塗布膜となる材料が塗布される場合においては、乾燥装置5にて、各材料も、その特性に応じて乾燥(溶媒成分の揮発)、光硬化、及び/又は焼成(ベーク)される。これにより、フィルム基材の表面には、露光材料膜21(配向材料膜)及び側部塗布膜22(レジスト膜)が形成される。即ち、フィルム基材の幅方向の中央には、所定の配向材料膜が形成され、フィルム基材の縁部から25mmまでの側部に側部塗布膜22を形成する場合においては、フィルム2の側部には、アライメントマーク及び蛇行検出用マーク形成用のレジスト、光硬化性材料又はインクによる材料膜が形成される。そして、この1種類又は2種類の材料膜が形成されたフィルム2が、例えば搬送ローラ9により、その先端部から露光装置1内に供給されていく。
【0048】
露光装置1内に供給されたフィルム2は、搬送ローラ等による搬送により、その側部がレーザマーカ17の下方に到達する。フィルム2の側部がレーザマーカ17の下方に到達したら、レーザマーカ17からレーザ光を照射することにより、蛇行検出用マーク2bの形成を開始する。この際、フィルム2の側部にレジスト膜等の側部塗布膜22を形成している場合には、レーザ光の照射によるマーキングは容易に進行し、蛇行検出用マーク2bも明瞭且つ精度よく形成されるため、後の工程における検出も容易となるので好ましい。レーザ光の照射により、フィルム基材には蛇行検出用マーク2bが形成されるが、このフィルム2の側部は、従来では例えばフィルム2の送給等に使用していた領域であり、表示装置の画像表示領域には使用されない領域であるから、問題はない。
【0049】
蛇行検出用マーク2bが形成されたフィルム2は、搬送により蛇行検出用マーク2bの位置検出用のラインCCD14の下方に到達するが、搬送されてくる間に、図2に示すように、フィルム2は、例えば搬送装置のローラ80,81とフィルムのロールとの間の隙間又はロールへのフィルムの巻き取り誤差等により、もっぱら移動方向の下流側において、その移動方向に垂直な方向に蛇行する場合がある。そして、このフィルム2の移動方向下流側の蛇行が次第に上流側へと伝達していく。本実施形態においては、フィルム2の移動方向に垂直な方向に延びるように配置されたラインCCD14によりフィルム2の移動方向に交差する方向の蛇行検出用マーク2bの位置を例えば指標位置にて検出し、検出信号により、制御装置30は、アライメント用レーザマーカ13の位置を補正する。即ち、蛇行検出用マーク2bが図2における上方に蛇行した場合、制御装置30は、この蛇行量を打ち消すように、アライメント用レーザマーカ13の位置を図2における上方に補正する。そして、アライメント用レーザマーカ13からレーザ光を照射することにより、アライメントマーク2aの形成を開始する。この際、フィルム2の側部にレジスト膜等の側部塗布膜22を形成している場合には、レーザ光の照射によるマーキングは容易に進行し、アライメントマーク2aも明瞭且つ精度よく形成されるため、後の工程における検出も容易となるので好ましい。レーザ光の照射により、フィルム基材にはアライメントマーク2aが形成されるが、このフィルム2の側部は、従来では例えばフィルム2の送給等に使用していた領域であり、表示装置の画像表示領域には使用されない領域であるから、問題はない。これにより、図2に示すように、アライメントマーク2aは、フィルム2に対して相対的に直線状に形成される。
【0050】
このラインCCD14による蛇行検出用マーク2bの検出の際には、例えばラインCCD14は、図5に示すように、各蛇行検出用マーク2bについて、その指標となる先端及び後端のフィルム移動方向に交差する方向の位置を検出する。このとき、蛇行検出用マーク2bの配置によっては、ラインCCD14により計測できない区間が存在する場合がある。しかしながら、例えば図4(a)に示すように、2列の蛇行検出用マーク2bを相互に千鳥状に配置して、2列の各帯状の蛇行検出用マーク2bの先端部及び後端部をフィルム2の移動方向に交差する方向からみて、相互に重なるように形成すれば、ラインCCD14により蛇行検出用マーク2bを計測できない区間はなく、蛇行検出用マーク2bの位置の検出精度が高くなるので好ましい。
【0051】
フィルム2に対して相対的に直線状にアライメントマーク2aが形成されたフィルム2は、搬送により、やがて、上流側マスク12(121)の下方に到達する。図8に示すように、フィルム2は、マスクの下方に搬送されてくるまでの間に、フィルム2の移動方向に垂直な方向に蛇行する場合があるが、本実施形態においては、この蛇行を補正する構成を備えている。即ち、マスクの覗き窓12a及び遮光パターン12bに対応する位置には、フィルム2の幅方向に延びるようにラインCCD15が配置されており、ラインCCD15は、マスク12の覗き窓12aの中間に設けられた遮光パターン12bの位置をマスク12の位置として検出する。また、フィルム2の移動方向におけるマスク12の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置には、アライメントマーク検出用のラインCCD16が設けられており、フィルム2の側部に形成されたアライメントマーク2aを検出する。これらのラインCCD15,16により検出された夫々マスク位置,アライメントマーク位置の信号は、制御装置30に送信され、各画像処理部(第2画像処理部32,第3画像処理部33)、演算部34及び制御部39等による処理を受けた後、マスクステージ駆動制御部38による制御により、マスクステージが駆動されることにより、アライメントマーク2aの位置を基準としてマスク位置を調整することができる。即ち、本実施形態においては、アライメントマーク2aは、フィルム2に対して相対的に直線状に形成されているが、このアライメントマーク2aの位置を基準としてマスク位置を補正することにより、例えばマスク位置調整用のCCDカメラ等の検出部が個体差による検出誤差を有していた場合においても、この検出誤差がアライメントマークの形成誤差にほぼ積算されず、マスク位置の設定精度が高い。
【0052】
その後、フィルム2は、マスク12のパターン125aの下方に到達する。このとき、露光光源から出射され、マスク12のパターン125aを透過した露光光の照射により、フィルム2の表面の配向膜材料(露光材料膜21)は、所定の方向に配向する。これにより、フィルム2には、露光パターンが形成される。そして、露光光源11から連続光を出射しながら、フィルム2を連続的に搬送することにより、フィルム2には、フィルムの移動方向に沿って帯状に延びるように露光パターンが形成されていく。本実施形態においては、フィルム2を連続露光する場合においても、フィルム2の蛇行を連続的に補正してアライメントマーク2aを相対的に直線状に形成することができ、また、このアライメントマーク2aを使用してマスク12の位置を精度よく調整することができるため、フィルム2が連続的に供給される場合においても、配向膜材料(露光材料膜21)を高精度で安定的に連続露光することができる。
【0053】
本実施形態においては、フィルムの移動方向における下流側にもマスク123が配置されており、図1に示すように、上流側マスク121により露光されたフィルム2は、やがて下流側のマスク123の下方に到達する。本実施形態においては、例えば上流側マスク121による露光領域と下流側マスク123による露光領域を相互に隣接するように形成するが、上記の如く、フィルム2に対して相対的に直線状に形成されたアライメントマーク2aを基準として下流側マスク123の位置を調整するので、マスク位置の設定精度が高い。よって、上流側マスク121により露光された領域が下流側マスク123により露光されてしまったり、また、未露光の領域が発生することもなく、高精度で各マスクによる露光領域を隣接するように形成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,10:露光装置、12:マスク、12a:覗き窓、12b:遮光パターン、120:枠体、121:(第1の)マスク、122:(第2の)マスク、123:(第3の)マスク、124:(第4の)マスク、125:パターン形成部、125a:(マスク)パターン、13:アライメント用レーザマーカ、14:(蛇行検出用マークの位置検出用)ラインCCD、15:(マスク位置検出用)ラインCCD、16:(アライメントマーク検出用)ラインCCD、17:レーザマーカ、2:フィルム、2a:アライメントマーク、2b:蛇行検出用マーク、20:露光対象部材、21:露光材料膜、22:側部塗布膜、30:制御装置、31:第1画像処理部、32:第2画像処理部、33:第3画像処理部、34:演算部、35:メモリ、36:モータ駆動制御部、37:レーザマーカ駆動制御部、38:マスクステージ駆動制御部、39:制御部、100:画像表示領域に対応する領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置により連続的に搬送されてくる露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光源から出射した露光光をマスクを介して照射することにより、前記露光パターン形成用領域に前記マスクの夫々に対応させたマスクパターンを露光する露光装置において、
前記露光対象部材の移動方向における前記露光光の照射位置よりも上流側に配置され前記露光対象部材に蛇行検出用マークを形成する第1マーク形成部と、
前記露光対象部材の移動方向における前記第1マーク形成部と前記露光光の照射位置との間に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの位置を検出する第1検出部と、
この第1検出部が検出した前記蛇行検出用マークの位置に基づいて前記蛇行検出用マークの蛇行量を演算する第1蛇行演算部と、
前記露光対象部材の移動方向における前記第1検出部の位置に対応する位置にて前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向に移動可能に配置され、前記マスクの位置調整用のアライメントマークを形成する第2マーク形成部と、
前記第1蛇行演算部が求めた前記蛇行検出用マークの蛇行量を打ち消すように、前記第2マーク形成部を移動させる第1制御部と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光対象部材の移動方向における前記第2マーク形成部の下流側に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記アライメントマークの位置を検出する第2検出部と、
前記第2検出部が検出した前記指標位置における前記アライメントマークの位置に基づいて前記アライメントマークの蛇行量を演算する第2蛇行演算部と、
この第2蛇行演算部が求めた前記アライメントマークの蛇行量に応じて、前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向の前記マスクの位置を調整する第2制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記マスクは、前記露光対象部材の移動方向に離隔して複数個配置されており、夫々のマスクに対応して前記第2蛇行演算部及び前記第2制御部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記アライメントマーク形成部は、前記露光対象部材の移動方向に対して連続的又は断続的にアライメントマークを前記露光対象部材に形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第1マーク形成部は、前記露光対象部材の移動方向に対して断続的な指標が付された蛇行検出用マークを前記露光対象部材に形成するものであり、前記第1検出部は、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの前記指標位置における位置を検出するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項1】
搬送装置により連続的に搬送されてくる露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光源から出射した露光光をマスクを介して照射することにより、前記露光パターン形成用領域に前記マスクの夫々に対応させたマスクパターンを露光する露光装置において、
前記露光対象部材の移動方向における前記露光光の照射位置よりも上流側に配置され前記露光対象部材に蛇行検出用マークを形成する第1マーク形成部と、
前記露光対象部材の移動方向における前記第1マーク形成部と前記露光光の照射位置との間に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの位置を検出する第1検出部と、
この第1検出部が検出した前記蛇行検出用マークの位置に基づいて前記蛇行検出用マークの蛇行量を演算する第1蛇行演算部と、
前記露光対象部材の移動方向における前記第1検出部の位置に対応する位置にて前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向に移動可能に配置され、前記マスクの位置調整用のアライメントマークを形成する第2マーク形成部と、
前記第1蛇行演算部が求めた前記蛇行検出用マークの蛇行量を打ち消すように、前記第2マーク形成部を移動させる第1制御部と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光対象部材の移動方向における前記第2マーク形成部の下流側に配置され、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記アライメントマークの位置を検出する第2検出部と、
前記第2検出部が検出した前記指標位置における前記アライメントマークの位置に基づいて前記アライメントマークの蛇行量を演算する第2蛇行演算部と、
この第2蛇行演算部が求めた前記アライメントマークの蛇行量に応じて、前記露光対象部材の移動方向に垂直な方向の前記マスクの位置を調整する第2制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記マスクは、前記露光対象部材の移動方向に離隔して複数個配置されており、夫々のマスクに対応して前記第2蛇行演算部及び前記第2制御部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記アライメントマーク形成部は、前記露光対象部材の移動方向に対して連続的又は断続的にアライメントマークを前記露光対象部材に形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第1マーク形成部は、前記露光対象部材の移動方向に対して断続的な指標が付された蛇行検出用マークを前記露光対象部材に形成するものであり、前記第1検出部は、前記露光対象部材の移動方向に交差する方向における前記蛇行検出用マークの前記指標位置における位置を検出するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−103366(P2012−103366A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250104(P2010−250104)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]