説明

静圧軸受パッド、直動案内装置および回転案内装置

【課題】支持する被支持体の質量の変化に応じて静圧を制御することにより、被支持体の質量に関わらず安定に支持する静圧軸受パッドを提供する。
【解決手段】静圧軸受パッド110において、第1の給気溝51および第2の給気溝52とは互いに独立しており、互いに不連続となっている。軸受面21に供給するための加圧気体は、第1の給気溝51については加圧気体供給部としての第1の給気管41から、そして第2の給気溝52については加圧気体供給部としての第2の給気管42から、互いに独立に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静圧軸受パッド、直動案内装置および回転案内装置に関するものであり、より特定的には、支持する被支持体の質量の変化に応じて静圧を制御することにより、被支持体の質量に関わらず安定に当該被支持体を支持する静圧軸受パッド、および上述した静圧軸受パッドを用いた直動案内装置および回転案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精密工作機械や半導体露光装置においては、加工工具や被加工物の高精度な位置決め、支持部の摩耗防止等のために、位置決めなどを行なう可動部(被支持体)を支持する軸受としてパッド型の静圧空気軸受(静圧軸受パッド)が用いられる。静圧軸受パッドは、精密工作機械や半導体露光装置を構成する可動部および固定部からなる一対の対向する面の少なくとも一方に取り付けられる。そして、静圧軸受パッドのノズルまたは絞り孔から、当該静圧軸受パッドと対向する面に向けて加圧気体を噴出する静圧を利用して、静圧軸受パッドが上記対向する面に対して浮上する状態を保つ。以上の原理により、静圧軸受パッドは被支持体である、可動部または固定部を非接触状態で支持する。
【0003】
従来の静圧軸受パッドの構成は、たとえば特開昭63−231020号公報(以下、「特許文献1」という)に示すように、軸受部材と、軸受部材を収納するハウジングとから構成される。そして、図示されないコンプレッサ等の加圧気体供給源から、ハウジングの内部に備えられた給気管(特許文献1中「給気孔」)を介して、ハウジングが軸受部材を収納する凹部(特許文献1中「収納部」)に加圧気体を供給する。そして、ハウジングの凹部における、軸受部材と対向する面上に、同心円状に複数本配置された給気溝(特許文献1中「空気溝」)を介して、供給した加圧気体を、多孔質材料で形成される軸受部材に導入する。加圧気体は多孔質材料からなる軸受部材の多数の孔(間隙)に分散され、当該多数の間隙から軸受部材の外部に(静圧軸受パッドと対向する面に向けて)噴出する。以上の原理により、静圧軸受パッドの軸受部材と対向する面に対して当該静圧軸受パッドが浮上した状態を維持し、静圧軸受パッドにより被支持体を支持する。
【特許文献1】特開昭63−231020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示されている静圧軸受パッドは、ハウジングの凹部に配置された複数本の同心円状の給気溝が、軸受部材において給気溝と対向する領域へほぼ均一に加圧気体を供給する。これは、同心円状に配置される複数本の給気溝にほぼ垂直に交差する(径方向に形成された)給気溝が、給気管から供給された加圧気体を、複数本の同心円状の給気溝のすべてにほぼ均一に供給するためである。
【0005】
ここで、静圧軸受パッドが支持する被支持体の質量は、被支持体の種類や、被支持体が積載する積載物の種類によって変化する。したがって、静圧軸受パッドは、上述した質量の変化に対応するため、加圧気体の圧力を変更(制御)する必要がある。たとえば、大きな積載物を抱える被支持体を支持する場合には、静圧軸受パッドに供給される加圧気体の圧力を大きくすることにより、静圧軸受パッドが軸受部材と対向する面に対して噴出する加圧気体の圧力を大きくして、静圧軸受パッドが対向する面に対する浮上量を大きくする必要がある。ところが、大きな積載物を支持するためにたとえば加圧気体の供給圧力だけを高くすると、静圧軸受パッドには自励振動が生じ、静圧軸受パッドにより支持が不安定になる可能性がある。このため、加圧気体の供給圧力を無制限に高くすることはできず、加圧気体の圧力を変更できる範囲は小さい。その結果、静圧軸受パッドが対向する面に対する浮上量についての調整可能な範囲も小さくなるため、被支持体の積載物の質量に制限を設ける必要があった。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、支持する被支持体の質量の変化に応じて静圧を制御することにより、被支持体の質量に関わらず安定に支持する静圧軸受パッドを提供することである。また、当該静圧軸受パッドを用いた直動案内装置および回転案内装置を併せて提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る静圧軸受パッドは、加圧気体を用いて被支持体を支持する静圧軸受パッドであって、軸受面を有する軸受部材と、上記軸受部材を保持するためのハウジングとを備える。そして上記軸受部材と上記ハウジングとの接続部において、軸受部材とハウジングとの少なくとも一方に、上記加圧気体を上記軸受面に供給するための複数本の互いに独立した給気溝が形成されている。上記静圧軸受パッドは、その複数本の給気溝のそれぞれに独立して上記加圧気体を供給する加圧気体供給部をさらに備える。
【0008】
本発明に係る静圧軸受パッドに形成されている、複数本の互いに独立した給気溝同士は、互いに独立(不連続)となっている。このため、たとえば当該複数本の給気溝のそれぞれに独立して加圧気体を供給する加圧気体供給部を備えることにより、当該複数本の給気溝のうち、加圧気体の供給圧力を変更したい給気溝に対して加圧気体を供給する加圧気体供給部のみを制御すれば、軸受部材に供給される加圧気体の供給圧力をより細かく制御できる。たとえば、複数本の給気溝のうち加圧気体を供給したい給気溝のみから、加圧気体を軸受面に供給することができる。したがって、常にすべての給気溝から加圧気体を供給する必要はなく、所望の給気溝のみから加圧気体を供給することにより、静圧軸受パッドが被支持体を支持する圧力(静圧軸受パッドの浮上量)を調整することができる。また、静圧軸受パッドにより支持される被支持体の質量が大きく変化する場合にも、当該複数の給気溝のそれぞれについて加圧気体の供給の有無、さらには加圧気体の圧力条件などを個別に調整することにより、被支持体の質量の変化に応じて静圧軸受パッドの浮上量を容易に最適化することができる。その結果、被支持体の質量の変化が起きた場合にも、安定して被支持体を支持することが可能な静圧軸受パッドを実現できる。
【0009】
したがって、本発明に係る静圧軸受パッドにおいては、加圧気体供給部は、加圧気体を軸受面に供給する給気溝のそれぞれに供給する圧力を独立に調整可能であることが好ましい。すなわち上述した、複数本の給気溝のそれぞれに加圧気体供給部が備えられており、複数本の給気溝のうち所望の給気溝のみから加圧気体を供給することが可能な機能に加え、それぞれの給気溝が供給する加圧気体の圧力を独立に調整できるということである。このようにすれば、複数本の給気溝のそれぞれが供給する加圧気体の圧力を任意に調整可能なため、さらに自由に、静圧軸受パッドが被支持体を支持する圧力の大きさを調整することができる。
【0010】
また、給気溝毎に加圧気体の圧力を任意に調整可能なため、被支持体の質量やその質量バランスの変動が起きた場合であっても、静圧軸受パッドの軸受部材の軸受面と、当該軸受面と対向する面との間の距離を、軸受面の全面にわたってほぼ均一に保つことがより容易になる。
【0011】
また、本発明に係る静圧軸受パッドにおいては、軸受面は、軸受面から噴出された加圧気体を再度回収する排気溝によって分割されていることが好ましい。そして、軸受部材およびハウジングには、上記排気溝から、軸受部材およびハウジングの内部を延伸し、ハウジングの表面のうち、軸受部材と接続された部分以外の表面部分まで延在する排気孔が形成されていることがより好ましい。上記排気溝は軸受面において複数本形成されていてもよい。
【0012】
軸受面における排気溝が環状の形状を有する場合、当該排気溝は軸受面を複数の領域に分割する。ここでたとえば軸受面に1つの円環状の排気溝を有しており、当該排気溝により当該軸受面が円環状の中心部と外周部との2つの領域に分割される場合を考える。この場合、加圧気体供給部から給気溝を介して、軸受部材の内部に達した加圧気体が軸受面から噴出されるが、軸受面は排気溝により中心部と外周部とに分割されている。このため、加圧気体が噴出される軸受面の領域を、中心部または外周部のいずれかのみに限定することができる。
【0013】
また、本発明に係る静圧軸受パッドにおいては、排気溝が軸受面を分割することにより当該軸受面に形成される領域は、軸受面の面積重心を通る直線に関して対称に配置されることが好ましい。このようにすれば、軸受面において上記直線を中心としてほぼ対称な位置から加圧気体を噴出することができるとともに、当該直線を中心としてほぼ対称な位置から排気溝を介して当該加圧気体を回収することができる。このため、軸受部材が対向する面に対して静圧気体軸受の姿勢をより安定させることができる。
【0014】
また、本発明に係る静圧軸受パッドにおいては、給気溝から軸受部材側に供給された加圧気体を噴出するための構造としては以下に述べるものが考えられる。たとえば、上述した軸受部材は多孔質材料からなり、軸受部材を形成する当該多孔質材料の隙間を介して、複数本の給気溝から軸受部材に供給される加圧気体を、軸受面から噴出する構造としてもよい。基本的に給気溝から軸受部材側に供給された加圧気体は、軸受部材を構成する多孔質材料の隙間を介して軸受面に達する。そして当該加圧気体は、軸受面に存在する多孔質材料の隙間から噴出される。その際、加圧気体を供給した給気溝の近傍に存在する多孔質材料の隙間を選択して、軸受面に到達する。このため、軸受面のうち、加圧気体を供給する給気溝に対向する領域にほぼ一致する領域のみから選択的に加圧気体が噴出される。以上により、所望の給気溝のみから加圧気体を供給することにより、軸受面のうち所望の領域のみから加圧気体を噴出させることができる。
【0015】
なお上述した、本発明に係る静圧軸受パッドにおいては、複数本の給気溝は、軸受面の面積重心を通る直線に関して対称に配置されることが好ましい。ここでの「対称」には、面積重心を通る、軸受面の主表面に沿った方向に配置される直線に関して線対称ないし当該直線上の点に関して点対称である場合や、面積重心を通り、凹部の主表面に交差する方向に配置される直線に関して線対称ないし当該直線上の点に関して点対称である場合が含まれる。また、完全な線対称ないし点対称である場合および、ほぼ線対称ないし点対称である場合(たとえば、給気溝の中心線の位置が、完全な線対称または点対称である場合の当該中心線の位置からずれている場合であって、当該ずれ量が軸受面の形状に外接する円の直径に対して10%以内の場合)も含まれるものとする。
【0016】
上述したように、給気溝から供給される加圧気体は、給気溝の近傍に存在する多孔質材料の隙間を選択し、当該隙間を介して軸受面に到達する。このため軸受面のうち、加圧気体を供給する給気溝に対向する領域にほぼ一致する領域のみから選択的に噴出される。したがって、このように複数本の給気溝が、軸受部材の軸受面の面積重心を通る直線に関して対称に配置されていれば、給気溝から軸受部材に供給された加圧気体は、軸受面の面積重心に関してほぼ対称となる分布状態で、軸受面から噴出される。以上により、静圧軸受パッドの軸受部材の軸受面は対向する面に対して、軸受面と当該対向する面との間の間隔をほぼ一定に保つように保持される。その結果、静圧軸受パッドは被支持体を安定に支持する。つまり、静圧軸受パッドは、上述した軸受面が対向する面に対して安定した浮上量を保つことができる。
【0017】
また、本発明に係る静圧軸受パッドの他の局面として、軸受部材には、給気溝から軸受面まで延在する給気孔が形成され、給気孔を介して、複数本の給気溝から軸受部材に供給される加圧気体を、軸受面から噴出する構造としてもよい。ここで、供給された加圧気体が噴出される給気孔は、各給気溝に対して1通りに定まるような構成としておくことが好ましい。また、この場合において、当該給気孔は複数個形成され、軸受面における複数個の給気孔は、軸受面の面積重心を通る直線に関して対称な位置に配置されることが好ましい。このようにすれば、上述した軸受部材における多孔質材料の隙間を介して軸受面から加圧気体が噴出する静圧軸受パッドと同様に、軸受面の面積重心に関して対称となるように軸受面から噴出させることができる。また、この場合は加圧気体は当該給気孔から噴出されるため、給気溝の配置は軸受面から噴出される加圧気体の圧力分布に関係しない。このため、必ずしも複数本の給気溝が、軸受部材の軸受面の面積重心を通る直線に関して対称に配置されていなくてもよい。
【0018】
本発明に係る静圧軸受パッドにおいては、上述した軸受部材の多孔質材料の隙間を介して加圧気体を噴出する場合と、複数個の給気孔を介して加圧気体を噴出する場合とのいずれにおいても、加圧気体は、軸受面において上記直線に対して対称な位置から噴出する。したがって、静圧軸受パッドの軸受部材の軸受面について、当該軸受面と対向する面に対する位置を安定させることができる(軸受面と当該面との間の隙間が局所的に狭くなる可能性を低減できる)。その結果、静圧軸受パッドは被支持体を安定に支持できる。
【0019】
ここで、上述した複数個の給気孔のうち、複数本の給気溝のうちの一の給気溝に連なる一の給気孔と、複数本の給気溝のうちの他の給気溝に連なる他の給気孔との、軸受面における面積をそれぞれ互いに±10%以上変更してもよい。このように、一の給気溝に連なる一の給気孔と、他の給気溝に連なる他の給気孔との軸受面における面積を変更すれば、たとえば上記一の給気溝から一の給気孔に供給される加圧気体の圧力と、上記他の給気溝から他の給気孔に供給される加圧気体の圧力とが同じであっても、軸受面における給気孔の面積が異なるため、一の給気孔から噴出する加圧気体の圧力と他の給気孔から噴出する加圧気体の圧力とを異なるものとすることができる。したがって、上述した方法を用いても、加圧気体が被支持体を支持する圧力の大きさを調整する際の自由度を大きくすることができる。
【0020】
以上に述べたいずれかの局面をもつ静圧軸受パッドを備える直動案内装置、または回転案内装置は、以上に述べたように、静圧軸受パッドにより支持される被支持体の質量や被支持体に加わる応力が変化する場合であっても、軸受面から噴出する加圧気体を局所的に制御できるので、軸受面全体から噴出する加圧気体の圧力を一律に高める必要が無い。そのため、従来のような自励振動の発生を抑制することができる。
【0021】
また、加圧気体供給部材を制御することにより、軸受部材の軸受面から噴出する加圧気体の圧力を、軸受面内において局所的に変更することができるので、静圧軸受パッドの軸受部材の軸受面は対向する面に対して安定した姿勢を維持することが可能となる。したがって、静圧軸受パッドは被支持体を安定に支持できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、支持する被支持体の質量の変化に応じて加圧気体の圧力を給気溝ごとに制御することにより、被支持体の質量に関わらず安定に支持する静圧軸受パッドを提供することができる。また、当該静圧軸受パッドを用いた直動案内装置および回転案内装置を併せて提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の一の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。図2は、図1の線分II−IIにおける概略断面図である。また、図3は、図1の軸受面の主表面の構成を示す概略図である。以上の各図を用いて、実施の形態1について以下に説明する。
【0025】
図1に示す、本発明の実施の形態1に係る静圧軸受パッド110は、加圧気体を用いて被支持体を支持する静圧軸受パッドである。この静圧軸受パッド110は、大きくは軸受部材20とハウジング10とから構成されている。軸受部材20は、一方のすなわち静圧軸受パッド110の外側を向いた主表面としての軸受面21を有する。なお、ここでは主表面とは、表面のうち最も面積の大きい面をいうことにする。また、ハウジング10は図1における下部に、軸受部材20をハウジング10に嵌合するよう収納するための凹部11を有する。なお、静圧軸受パッド110においては、軸受部材20とハウジング10との接続を良好にするために、ハウジング10に凹部11が形成されている。しかし、ハウジング10には凹部11は必ずしも必要ない。具体的には、たとえばハウジング10が軸受部材20と接続する表面は凹部11を備えない平面であり、当該平面に接着剤で軸受部材20の主表面と固定接続させた構成であってもよい。
【0026】
静圧軸受パッド110は被支持体を支持するための部材であるため、使用時にたとえば静圧軸受パッド110の軸受面21が対向する面に対して姿勢をバランスよく保つ(対向する面と軸受面21との間の距離が軸受面21全体においてほぼ一定になっている)ことが好ましい。なお、先述したように、ここでの「対称」には、面積重心を通る、凹部11の主表面に沿った方向に配置される直線に関して線対称ないし当該直線状の点に関して点対称である場合や、面積重心を通り、凹部11の主表面に交差する方向に配置される直線に関して線対称ないし当該直線状の点に関して点対称である場合が含まれる。また、完全な線対称ないし点対称である場合および、ほぼ線対称ないし点対称である場合も含まれるものとする。
【0027】
ハウジング10が軸受部材20に接触する部分、すなわちハウジング10の凹部11の周壁と、第1の給気溝51,第2の給気溝52および排気溝31を除く凹部11の主表面(底壁)とは、たとえば接着剤によって軸受部材20の周壁ないし一方の主表面と接着することにより固定されている。しかし、ハウジング10と軸受部材20とを固定することができれば、接着剤以外の任意の手段を用いてもよい。
【0028】
ハウジング10の、軸受部材20との接続部である凹部11の主表面には、加圧気体を軸受面21に供給するための複数本の互いに独立した給気溝が形成されている。なお、図1〜図3に開示する静圧軸受パッド110においては、給気溝は第1の給気溝51と第2の給気溝52との2本形成されているが、たとえば3本以上の給気溝を形成した構造としてもよい。また、静圧軸受パッド110においては、ハウジング10に給気溝が形成されているが、軸受部材20の、たとえばハウジング10との接続部である主表面に同様の給気溝が形成されていてもよい。また、軸受部材20とハウジング10との両方に、同様の給気溝が形成されていてもよい。第1の給気溝51および第2の給気溝52とは互いに独立しており、互いに不連続となっている。図1、図2に示すように、軸受面21に供給するための加圧気体は、第1の給気溝51については加圧気体供給部としての第1の給気管41から、そして第2の給気溝52については加圧気体供給部としての第2の給気管42から、互いに独立に供給される。
【0029】
なお、図1の断面図においては、第1の給気管41と第2の給気管42との両方を記入している。しかし、これは静圧軸受パッド110の断面図の構成を容易にするためのものであり、実際にはそれぞれの給気管がたとえば軸受面21に沿った方向に延在する方向を図1の断面図に示すように1直線上に揃えなくてもよい(軸受面21の中心からみたときの第1の給気管41の延びる方向と第2の給気管42の延びる方向とのなす角度が180°以外の角度となっていてもよい)。
【0030】
図1において図示しないたとえばコンプレッサなどの加圧気体供給源から供給される加圧気体は、エアチューブ73と継ぎ手71とを介して第1の給気管41から第1の給気溝51に供給され、その一部は被支持体を支持する静圧として利用するために軸受部材20の内部を介して軸受面21から外部へ噴出される。ここで加圧気体供給源から供給される流体(気体)の圧力を制御するために、エアチューブ73には図1において図示しないバルブや減圧弁が接続されている。同様に図1において図示しないたとえばコンプレッサなどの加圧気体供給源から供給される加圧気体は、エアチューブ74と継ぎ手72とを介して第2の給気管42から第2の給気溝52に供給され、その一部は被支持体を支持する静圧として利用するために軸受面21から外部へ噴出される。そして第1の給気管41と同様に、エアチューブ74には図1において図示しないバルブや減圧弁が接続されている。
【0031】
第1の給気溝51と第2の給気溝52とは互いに不連続となっているため、第1の給気管41から第1の給気溝51に供給される加圧気体と、第2の給気管42から第2の給気溝52に供給される加圧気体とを独立に制御することができる。たとえば、エアチューブ73に接続されている、図1において図示しないバルブを開にし、エアチューブ74に接続されている、図1において図示しないバルブを閉にする。このようにすれば、第1の給気溝51には加圧気体が供給され、第2の給気溝52には加圧気体が供給されない状態とすることができる。したがって、加圧気体が軸受面21から噴出される際に、ハウジング10の凹部11の主表面に形成された複数本の給気溝の一部を自在に選択し、選択した給気溝のみから加圧気体を軸受面21に供給する状態とすることができる。したがって、常に第1の給気溝51と第2の給気溝52との両方から加圧気体を軸受面21に供給させる必要はなく、所望の給気溝であるたとえば第1の給気溝51のみから加圧気体を軸受面21に供給することにより、加圧気体が被支持体を支持する圧力を調整することができる。また、静圧軸受パッド110により支持される被支持体の質量が大きく変化する場合に、当該複数の給気溝である第1の給気溝51および第2の給気溝52のそれぞれについて加圧気体の供給の有無を個別に調整することにより、被支持体の質量の変化に応じて静圧軸受パッド110の浮上量を容易に最適化することができる。その結果、被支持体の質量の変化が起きた場合にも、安定して被支持体を支持することが可能な静圧軸受パッド110を実現できる。
【0032】
また、エアチューブ73およびエアチューブ74に、図1において図示しない減圧弁を接続すれば、被支持体を支持する静圧として利用するための加圧気体を軸受面21に供給する第1の給気溝51および第2の給気溝52のそれぞれに供給する加圧気体の圧力を独立に調整することができる。たとえば、エアチューブ73に接続されている減圧弁を全開にし、エアチューブ74に接続されている減圧弁を半開にする。このような手順により第1の給気溝51と第2の給気溝52とのそれぞれに供給される加圧気体の圧力を変化させることができる。このようにすれば、複数本の給気溝のそれぞれが供給する加圧気体の圧力を任意に調整可能なため、さらに自由に、加圧気体が被支持体を支持する圧力の大きさを独立に調整することができる。したがって、静圧軸受パッド110の軸受部材20の軸受面21は、対向する面に沿った方向での配置や当該面に対する姿勢をバランスよく保つことが可能となる。また、たとえば静圧軸受パッド110の、軸受面21の対向する面に対する浮上量を任意に調整することができる。
【0033】
本発明の実施の形態1に係る静圧軸受パッド110においては、軸受部材20はたとえばカーボンの焼結体などの多孔質材料にて形成されていることが好ましい。またはたとえばセラミックスの焼結体など、多孔質材料となりうる材料にて形成されていてもよい。第1の給気管41および第2の給気管42によって第1の給気溝51および第2の給気溝52に供給された加圧気体は、第1の給気溝51および第2の給気溝52によって、軸受部材20のうち、加圧気体を供給する第1の給気溝51または第2の給気溝52の近傍の領域に到達する。ここで、軸受部材20が多孔質材料で形成されておれば、軸受部材20のうち、加圧気体の供給された領域の近傍の領域だけが多孔質軸受として機能する。より具体的には、たとえばバルブの調整により第1の給気溝51にのみ加圧気体が供給された場合は、第1の給気溝51の存在する近傍の領域に存在する、軸受部材20を形成する多孔質材料の隙間を介して、軸受面21のうち第1の給気溝51の近傍の領域、たとえば軸受面21のうち第1の給気溝51と対向する領域のみから被支持体を支持する静圧として利用するための加圧気体が噴出される。
【0034】
軸受部材20を構成する多孔質材料は、多数の微小な(例えば粒状の)焼結体の結合にて形成される。それゆえ多孔質材料には、気体が通過可能な隙間が多数存在する。しかし上述したように、たとえば第1の給気溝51の近傍の領域に存在する軸受部材20に加圧気体が供給されても、軸受面21のうち第1の給気溝51に対向する領域のみから当該加圧気体の大部分は噴出される。このため、軸受面21の全領域から、被支持体を支持する静圧として利用するための加圧気体が噴出されるわけではない。したがって、上述したように、複数本の給気溝の一部を自在に選択し、選択した給気溝のみから加圧気体を軸受部材20に供給することにより、軸受部材20のうち多孔質軸受として機能する部位を選択することができる。この結果、軸受面21のうち、加圧気体を噴出させる領域を自在に選択することができる。
【0035】
さらに上述した減圧弁や、図1において図示しないレギュレータを用いて供給される加圧気体の供給圧力を調整することにより、静圧軸受パッド110の軸受面21のうち選択された領域から噴出される加圧気体の供給圧力を自在に調整することができる。したがって、静圧軸受パッド110の軸受部材20の軸受面21は、対向する面に対して適切な間隔を保つことが可能となる。また、静圧軸受パッド110の、軸受面21の対向する面に対する浮上量を任意に調整することができる。
【0036】
また軸受部材20のように多孔質材料で形成された多孔質軸受は、たとえば軸受面21に接着剤等を塗布したり、軸受部材20の内部の領域や軸受面21の近傍の領域を形成する多孔質材料を変更したりすれば、加圧気体が軸受部材20の内部を流通するときの流通抵抗を調整でき、結果的に軸受特性を変えることができる。したがって、静圧軸受パッド110を構成する給気溝ごとに、それらの近傍の軸受部材20の領域の軸受特性を変更してもよい。
【0037】
なお、図1〜図3における第1の給気溝51および第2の給気溝52は、凹部11の主表面の面積重心を通る直線に関して対称に配置されることが好ましい。ここで面積重心とは、軸受部材20の軸受面21となる主表面の中心点を意味する。この面積重心を通る直線に関してほぼ線対称または当該直線上の点に関してほぼ点対称となるように、第1の給気溝51および第2の給気溝52が配置されることが好ましい。このように第1の給気溝51および第2の給気溝52が、軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称に配置されていれば、第1の給気溝51および第2の給気溝52から軸受部材20を構成する多孔質材料の隙間を介して軸受面21から噴出される加圧気体は、軸受面21の面積重心を通る直線に関してほぼ対称となる圧力分布となるように噴出される。これは上述したように、たとえば第1の給気溝51から供給される加圧気体については、第1の給気溝51の近傍に存在する多孔質材料の隙間を選択し、軸受面21のうち、加圧気体を供給する第1の給気溝51に対向する領域にほぼ一致する領域のみから選択的に噴出される。このため、第1の給気溝51が軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称に配置されていれば、軸受面21から噴出される加圧気体の分布は、軸受面21の面積重心を通る直線に関してほぼ対称な配置となる。したがって、静圧軸受パッド110の軸受部材20の軸受面21は、対向する面に対する姿勢を良好に保つ(軸受面21と当該対向する面との間の距離をほぼ一定に保つ)ことが可能となる。また、たとえば静圧軸受パッド110の、軸受面21の対向する面に対する浮上量を任意に調整することができる。
【0038】
ここで、図2の断面図に示すように、静圧軸受パッド110においては、ハウジング10の凹部11の主表面には、第1の給気管41に連通する第1の給気溝51と、第2の給気管42に連通する第2の給気溝52とが同心円状に形成されている。そして、第1の給気溝51には第1の給気管41が、第2の給気溝52には第2の給気管42がそれぞれ接続されている。このようにすれば、たとえば各給気溝を形成する同心円の中心が、凹部11の主表面の面積重心とほぼ一致する場合、各給気溝51、52を凹部11の主表面の面積重心を通る直線に関して対称になるように配置することができる。このことは上述したように、静圧軸受パッド110の軸受部材20のバランスを保つ上で好ましい。
【0039】
ただし、本発明の実施の形態1における静圧軸受パッド110の主表面に沿った方向の形状は、必ずしもたとえば図2の断面図に示すように円形である必要はない。図4は、主表面に沿った方向の形状が四角形状である静圧軸受パッドの、図2に対応する概略断面図である。図4の断面図における態様は、四角形状であることにおいてのみ、図2の断面図と異なる。すなわち、円形ではなく四角形状(正方形状)となっていることを除き、図2の断面図と同様の態様を備えている。図4に示すように、本発明の実施の形態1における静圧軸受パッド110の主表面に沿った方向の形状は四角形状(正方形状)であってもよい。この場合においても、図2に示す断面を有する静圧軸受パッド110と同様の動作を示し、同様の効果を奏する。なお、静圧軸受パッド110の主表面に沿った方向の形状としてはこの他にもたとえば六角形状、三角形状や扇形形状など多種の形状から選択することができる。
【0040】
また、図4に示すように、第1の給気溝51や第2の給気溝52についても、静圧軸受パッド110と同様に、必ずしも円状である必要はなく、たとえば軸受部材20の主表面に沿った方向において三角形状、四角形状、五角形状、あるいは六角形状といった多角形状、もしくは扇形形状など、多種の形状から選択してもよい。ただし、上述した各種形状の給気溝についても、図2または図4に示すように、複数本の給気溝である第1の給気溝51や第2の給気溝52が、軸受部材20の軸受面21の面積重心を通る直線に関して、同心状に対称となるように配置されることが好ましい。このようにすれば、軸受面21において上記面積重心を通る直線を中心としてほぼ対称な位置から加圧気体を噴出することができる。このため、軸受部材が対向する面に対して静圧気体軸受の姿勢をより安定させることができる。
【0041】
また、たとえば図1に示すように、軸受部材20の軸受面21には、軸受面21から噴出された加圧気体を再度回収する排気溝33が形成されている。そして軸受部材20の内部およびハウジング10の内部には、排気溝33から、軸受部材20の内部を延伸する排気孔32および、ハウジング10の内部を延伸し、ハウジング10の凹部11以外の表面(たとえば図1においては、ハウジング10の、軸受部材20と対向する主表面と反対側の主表面)まで延在する排気孔30が形成されている。排気孔30と排気孔32とは、軸受部材20とハウジング10との境界である凹部11の主表面においては、凹部11に形成された排気溝31を介して接続されている。なお、軸受面21において排気溝33は2本以上(複数本)形成されていてもよい。また、排気溝33が複数本形成された場合には、それぞれの排気溝33について上述したような排気孔32、30などを形成してもよいし、複数の排気溝33について共通の排気孔32、30を形成してもよい。
【0042】
軸受部材20の内部に供給された加圧気体は、その一部は上述したように軸受部材20を構成する多孔質材料の隙間を介して軸受面21から、静圧として利用するために噴出される。このように軸受面21から噴出された加圧気体を、当該軸受面21と対向する面との間の空間から静圧軸受パッド110の外部に排気するために排気孔30、32や排気溝31が形成されている。具体的には、上記空間に供給された加圧気体の一部は、軸受部材20の軸受面21に形成された排気溝33を介して排気孔32に導入される。排気孔32に導入された加圧気体は、排気溝31、排気孔30を介して、排気孔30の出口(ハウジング10の表面のうち、軸受部材20と接続された部分以外の表面部分であり、図1における排気孔30の最上部)から排気される。
【0043】
上述した排気溝33により、軸受面21において、図3に示すように、中心部22と外周部23との2つの領域に分割される。ここで、たとえば第1の給気溝51から供給された加圧気体が、第1の給気溝51の近傍に存在する多孔質材料の隙間を介して、軸受面21のうち、第1の給気溝51に対向する領域の近傍から噴出される。このときたとえば、第1の給気溝51が軸受面21と対向する領域が、軸受面21のうち中心部22であるとすれば、第1の給気溝51から多孔質材料の隙間を経て軸受面21に達した加圧気体は、中心部22から噴出されるが、外周部23からは噴出されない。軸受面21を中心部22と外周部23との2つの領域に分割させる排気溝33が、中心部22の加圧気体が外周部23から噴出することを抑制するためである。したがって、軸受面21において、加圧気体を噴出する領域を区画することができる。その結果、軸受面21から噴出される加圧気体をさらに精密に制御することができる。
【0044】
排気孔32は、図1および図3の軸受面21の概略図に示すように、たとえば軸受部材20の内部に、軸受部材20の主表面に沿った方向において、第1の給気溝51や第2の給気溝52と同様の同心円を描くように形成されていることが好ましい。しかし、第1の給気溝51や第2の給気溝52と同様、排気溝31および排気溝33についても、図4に示すように、必ずしも円状である必要はなく、たとえば軸受け部材20の主表面に沿った方向において三角形状、四角形状、五角形状、あるいは六角形状といった多角形状、もしくは扇形形状など、多種の形状から選択してもよい。
【0045】
上述したように、軸受面21に形成された排気溝33が、軸受面21を分割することにより形成される、中心部22と外周部23との2つの領域は、軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称に配置されることが好ましい。
【0046】
このようにすれば、軸受面21において上記直線を中心としてほぼ対称な位置から加圧気体を噴出することができるとともに、当該直線を中心としてほぼ対称な位置から排気溝33を介して当該加圧気体を回収することができる。このため、軸受部材20が対向する面に対して静圧軸受パッド110の姿勢をより安定させることができる。
【0047】
なお、図1の断面図において、排気孔30は、ハウジング10の凹部11の主表面の排気溝31から、ハウジング10の、軸受部材20と対向する面と反対側の主表面に向けて、ハウジング10の主表面に対して垂直に延びている。しかし、排気孔30は、図1の断面図においてハウジング10の主表面に対して斜めに延びる構造としてもよい。たとえば、図1の断面図におけるハウジング10の左右の側面に排気孔30の出口が存在する構造としてもよい。すなわち、ハウジング10の表面のうち、軸受部材20と接続された部分以外の任意の表面部分に出口が存在する構造とすることができる。ただし、排気孔30の出口から排気する際の、静圧軸受パッド110のバランスや浮上量などを安定にほぼ一定に保つためには、排気孔30の出口は、たとえば軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称となるように形成することが好ましい。
【0048】
図5は、本発明の実施の形態1の他の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。図6は、図5の線分VI−VIにおける概略断面図である。なお、以下の説明においては、静圧軸受パッド110の主表面に沿った方向および、各給気溝および排気溝は円形状としているが、上述したように他の形状を選択することもできる。
【0049】
先述した図1および図2に示すように、静圧軸受パッド110の場合、たとえば第1の給気溝51は直径の異なる2本の同心円状の給気溝(図2における同心溝Aと同心溝B)がバイパス49で連結されて1本の第1の給気溝51を形成している。したがって、たとえば図2における同心溝Bに存在する第1の給気管41から加圧気体が同心溝Bに供給されると、加圧気体はバイパス49を経由して同心溝Aに達し、連結された第1の給気溝51の同心溝Aと同心溝B、およびバイパス49のすべての領域に到達する。同様に、たとえば図2における同心溝Dに存在する第2の給気管42から加圧気体が同心溝Dに供給されると、加圧気体はバイパス48を経由して同心溝Cに達し、連結された第2の給気溝52の同心溝Cと同心溝D、およびバイパス48のすべての領域に到達する。
【0050】
しかし、図5および図6に示す静圧軸受パッド120の場合、第1の給気管41から加圧気体が供給される第1の給気溝51、第2の給気管42から加圧気体が供給される第2の給気溝52に加えて、第3の給気管43から加圧気体が供給される第3の給気溝53、および第4の給気管44から加圧気体が供給される第4の給気溝54が配置されている。
【0051】
図1〜図3に示した静圧軸受パッド110の場合、給気溝を構成する同心円溝A、B、C、Dが2本ずつバイパス48、49を介して連結されており、同心円溝2本で1組(1本)の給気溝(第1の給気溝51および第2の給気溝52)を形成している。しかし、図5および図6に示した静圧軸受パッド120は、静圧軸受パッド110と同一の同心円直径をそれぞれ有する同心円溝が4本形成されているが、当該同心円溝(給気溝51〜54)はバイパスで連結されておらず、独立に第1の給気溝51、第2の給気溝52、第3の給気溝53および第4の給気溝54を形成している。静圧軸受パッド110の場合は実質2本の給気管および給気溝を用いて加圧気体の軸受面21への供給を制御していたが、静圧軸受パッド120の場合は、静圧軸受パッド110と類似の構成の給気溝を備えていながら、実質4本の給気管および給気溝を用いて加圧気体の軸受面21への供給を制御することができる。このため、静圧軸受パッド120は、静圧軸受パッド110よりもさらに精密に、軸受部材20の軸受面21が対向する面に対する静圧軸受パッド120の姿勢をバランスよく保つことが可能となる。また、たとえば静圧軸受パッド120の、軸受面21の対向する面に対する浮上量をより厳密に調整することができる。
【0052】
なお、図5の断面図においても、図1の断面図と同様に、4本の給気管すべてを記入しているが、これは静圧軸受パッド120の断面図の構成を容易にするためのものであり、実際にはそれぞれの給気管について、たとえば軸受面21に沿った方向において延在する方向(角度)がそれぞれ異なっていてもよい(当該方向が図1の断面図に示すように1直線上に揃っていなくてもよい)。なお、図5においては、図を見やすくするために第3の給気管43および第4の給気管44の一部を記載していない。
【0053】
静圧軸受パッド120は、以上に述べた点についてのみ、静圧軸受パッド110と異なる。すなわち、静圧軸受パッド120について、上述しなかった構成や条件、効果などは、すべて静圧軸受パッド110に順ずる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2の一の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。図8は、図7の軸受面の主表面の構成を示す概略図である。また、図9は、図7の線分IX−IXにおける概略断面図である。以上の各図を用いて、実施の形態2について以下に説明する。
【0055】
本発明の実施の形態2に係る静圧軸受パッド130は、基本的には本発明の実施の形態1に係る静圧軸受パッド110および静圧軸受パッド120と同様の態様を備える。しかし、図7に示すように、静圧軸受パッド130においては、軸受部材20に、第1の給気溝51および第2の給気溝52と対向する軸受部材20の一方の主表面(図7における軸受部材20の上側の主表面)から軸受面21にまで延在する給気孔が形成されている。図7に示す第1の給気溝51は第1の給気孔61に、および第2の給気溝52は第2の給気孔62に、連なるように配置されている。
【0056】
第1の給気管41および第2の給気管42によって第1の給気溝51および第2の給気溝52に供給された加圧気体は、それぞれ第1の給気溝51および第2の給気溝52から軸受面21にまで延在する第1の給気孔61、第2の給気孔62の内部に導入される。そして図7および図8に示すように軸受面21にまで延在する第1の給気孔61、第2の給気孔62を介して、加圧気体は流通する。そして、図8に示す軸受面21における第1の給気孔61、第2の給気孔62の出口から、被支持体を支持する静圧として利用するための加圧気体が噴出される。第1の給気溝51から供給される加圧気体は第1の給気孔61から、第2の給気溝52から供給される加圧気体は第2の給気孔62から1対1で噴出される構成となっている。なお、図8に示すように、第1の給気孔61および第2の給気孔62はそれぞれ軸受面21において同心円状(円周状)に配置されている。
【0057】
本発明の実施の形態1に係る静圧軸受パッド110および静圧軸受パッド120において、軸受部材20の内部に供給された加圧気体は、軸受部材20を形成する多孔質の隙間を介して軸受面21から噴出される。つまり、上記静圧軸受パッド110、120は多孔質絞り方式の静圧軸受パッドである。これに対して、本発明の実施の形態2に係る静圧軸受パッド130において、軸受部材20の内部に供給された加圧気体は、軸受部材20の内部に形成された第1の給気孔61、第2の給気孔62を介して軸受面21から噴出される。つまり、静圧軸受パッド130は自成絞り方式の静圧軸受パッドとなっている。このように、軸受部材20の多孔質の隙間の代わりに、軸受部材20の内部に形成した給気孔を介して軸受面21から加圧気体を噴出することも可能である。このようにすれば、軸受部材20の内部に形成した給気孔を介して軸受面21に到達した加圧気体のみが噴出されるので、給気孔の形成の仕方次第(給気孔のサイズや形状、配置)で加圧気体が被支持体を支持する圧力を調整することができる。
【0058】
なお、静圧軸受パッド130を構成する軸受部材20については、第1の給気孔61、第2の給気孔62を用いて加圧気体を供給するため、軸受部材20を構成する材料が必ずしも多孔質材料である必要はない。ただし、仮に軸受部材20を構成する材料として静圧軸受パッド110、120と同様の多孔質材料を用いる場合は、第1の給気孔61、第2の給気孔62以外の領域に存在する多孔質の隙間や、軸受面21に存在する多孔質の隙間を、たとえば樹脂などの充填材を用いて充填・封止することが好ましい。このようにすれば、第1の給気孔61、第2の給気孔62以外の軸受面21上の任意の箇所から加圧気体が噴出し、先述した静圧や浮上量などの制御が困難になる状況が発生することを防止できる。
【0059】
図7および図8に示すように複数個形成された第1の給気孔61、第2の給気孔62は、軸受面21において、軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称に配置されることが好ましい。このようにすれば、給気孔61、62から噴出される加圧気体は、軸受面21において上記直線に対して対称な位置から噴出する。したがって、噴出する加圧気体の圧力分布を、軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称にすることができるため、静圧軸受パッド130の軸受部材20の軸受面21について、当該軸受面21と対向する面に対する位置を安定させることができる(軸受面21と当該面との間の隙間が局所的に狭くなる可能性を低減できる)。その結果、静圧軸受パッド130は被支持体を安定に支持できる。また、たとえば静圧軸受パッド130の、軸受面21の対向する面に対する浮上量を軸受面21全体について均一に保つことが容易になる。
【0060】
ただし、静圧軸受パッド130の場合、たとえば先述した静圧軸受パッド110のように、給気溝から軸受部材に供給された加圧気体が、軸受部材20を構成する多孔質材料の隙間を経て軸受面21に到達する構成とはなっていない。したがって、第1の給気溝51や第2の給気溝52の配置は、軸受面21から噴出される加圧気体の加圧分布とほぼ無関係である。このため、静圧軸受パッド130においては、第1の給気溝51や第2の給気溝52が、必ずしも軸受面21の面積重心を通る直線に関して対称に配置されていなくてもよい。
【0061】
また、静圧軸受パッド130においては、たとえば図8に示す軸受面21における複数個の第1の給気孔61および第2の給気孔62の面積をそれぞれ互いに±10%以上変更してもよい。なお、ここで±10%とは、第1の給気孔61と第2の給気孔62のうち面積の小さい方を基準として、2種類の給気孔61、62の面積の差のパーセントの値が±10であることを意味する。
【0062】
たとえば、図8の軸受面21には中心部22に6個の第1の給気孔61と、外周部23に12個の第2の給気孔62とが形成されている場合、たとえば6個の第1の給気孔61と、12個の第2の給気孔62とのそれぞれの直径(孔の直径)を変更するなどの方法により、軸受面21における第1の給気孔61と第2の給気孔62との面積を変更する。このようにすれば、たとえば第1の給気溝51および第2の給気溝52に供給される加圧気体の圧力が同じであっても、第1の給気孔61を介して軸受面21に供給される加圧気体の圧力と、第2の給気孔62を介して軸受面21に供給される加圧気体の圧力とを変更できる。したがって、上述した方法を用いても、加圧気体が被支持体を支持する圧力の調整の自由度を大きくすることができる。
【0063】
なお、たとえば12個の第2の給気孔62のうち、たとえば図8に示すE、F、GおよびHの4個の第2の給気孔62のみ、上述したように軸受面21における面積を変更してもよい。このように、同一の給気溝と連通する複数個の給気孔の一部のみの面積を変更してもよい。ただしこの場合、上述したE、F、GおよびHのように、面積を変更するために選択する給気孔は、互いに軸受面21の面積重心に関して対称に配置されるよう選択することが好ましい。したがってたとえばEとGのみの面積を変更することも可能である。ただし、いずれにおいても、面積を変更する給気孔の面積はすべて等しいことが好ましい。以上のようにすれば、静圧軸受パッド110の軸受部材20の軸受面21は、対向する面に対する姿勢をバランスよく保つことが可能となる。また、たとえば静圧軸受パッド110の、軸受面21の対向する面に対する浮上量を調整する際の自由度を大きくできる。
【0064】
また、図8においては、第1の給気孔61および第2の給気孔62の軸受面21における出口の形状は円形としている。しかし、当該形状は必ずしも円形である必要はない。たとえば三角形状や四角形状などの多角形状、あるいは他の任意の形状を採用することができる。
【0065】
さらに、第1の給気孔61および第2の給気孔62の軸受面21における出口付近の領域に、たとえばある一定深さのザグリ穴を設けたポケットや、出口を形成する孔から周囲にある幅を持って広がる溝を設けてもよい。これらのポケットや溝を設けることにより、第1の給気孔61および第2の給気孔62の軸受面21における出口付近の圧力気体をポケットや溝を形成した部分に拡散させることにより、当該出口付近の圧力分布を変更することができる。
【0066】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2に関して上述しないたとえば構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の実施の形態1に順ずる。したがって、静圧軸受パッド130においては、たとえば図9に示すように第1の給気溝51および第2の給気溝52が、互いにたとえば先述したバイパス48(図1参照)などで連結されない1本の同心溝で形成された構成としている。しかしたとえば、図1の静圧軸受パッド110のように2本の同心溝Aと同心溝Bとをバイパス49で連結させて1本とした第1の給気溝51を備えたハウジング10に対して、静圧軸受パッド130のように自成絞り方式とするための給気孔を備えた軸受部材20を配置させた構成の静圧軸受パッドとしてもよい。または、図2の静圧軸受パッド120のように、4本の互いに連結しない給気溝を備えたハウジング10に対して、静圧軸受パッド130のように自成絞り方式とするための給気孔を備えた軸受部材20を配置させた構成の静圧軸受パッドとしてもよい。
【0067】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3の一の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。図11は、図10の線分XI−XIにおける概略断面図である。また、図12は、図10の軸受面の主表面の構成を示す概略図である。以上の各図を用いて、実施の形態3について以下に説明する。
【0068】
本発明の実施の形態3に係る静圧軸受パッド140は、基本的には本発明の実施の形態2に係る静圧軸受パッド130と同様の態様を備える、自成絞り方式の静圧軸受パッドである。しかし、図10および図11に示すように、静圧軸受パッド140においては、図11の各給気溝のうち外側の(同心円の直径が大きい)第1の給気溝51がなす同心円の外周、および第2の給気溝52がなす同心円の内周に6箇所ずつ、溝を歯車の歯状に突出させた領域(図11における領域I〜T)が形成されている。そして、第1の給気溝51、第2の給気溝52のうち、上述したI〜Tのそれぞれの領域から、軸受面21まで延在する第1の給気孔61、第2の給気孔62が形成されている。図11のI〜Tのそれぞれの領域から延在する各給気孔は、軸受面21における加圧気体の噴出する出口である、図12におけるI’〜T’のそれぞれの給気孔まで連通する。図12の軸受面21の概略図には、各第1の給気孔61、第2の給気孔62、および図10、図11に示す第3の給気溝53から形成される第3の給気孔63が記載されている。
【0069】
図12に示す静圧軸受パッド140の軸受面21の構成は、先述した図8に示す静圧軸受パッド130の軸受面21の構成と同様である。給気孔の参照番号が異なるが、たとえば図8における第2の給気孔62のE、F、G、Hは、図12における第1の給気孔61(第2の給気孔62)のI’、L’、O’、R’と同様の態様である。しかし、本発明の実施の形態2における静圧軸受パッド130の軸受面21における各給気孔については、たとえば図8の、軸受面21の外周部23に存在する12個の給気孔はすべて第2の給気孔62として、第2の給気管42および第2の給気溝52を介して供給された加圧気体が供給される。これに対して、本発明の実施の形態3における静圧軸受パッド140の軸受面21の外周部23に存在する12個の給気孔(図12中のI’〜T’)は、I’、K’、M’、O’、Q’およびS’がそれぞれ図11に示す第1の給気溝51の領域I、K、M、O、QおよびSを起点とする第1の給気孔61である。またJ’、L’、N’、P’、R’およびT’がそれぞれ図11に示す第2の給気溝52のJ、L、N、P、RおよびTを起点とする第2の給気孔62である。
【0070】
このようにすれば、軸受面21上に多数形成された自成絞り方式の給気孔のうち、加圧気体を噴出させる給気孔として選択する個数を容易に制御することができる。たとえば、静圧軸受パッド130の場合は、第2の給気管42から加圧気体を供給すれば、図8の軸受面21の外周部23に存在する12個の第2の給気孔62すべてから加圧気体が噴出される。これに対して、静圧軸受パッド140の場合は、第2の給気管42のみから加圧気体を供給すれば、図12の軸受面21の外周部23に存在する12個の給気孔のうち6個(J’、L’、N’、P’、R’およびT’)のみから加圧気体が噴出される。また、第1の給気管41のみから加圧気体を供給すれば、図12の軸受面21の外周部23に存在する12個の給気孔のうち6個(I’、K’、M’、O’、Q’およびS’)のみから加圧気体が噴出される。したがって、加圧気体が噴出されることによる静圧や浮上量などの制御をより容易に行なうことができる。
【0071】
なお、本発明の実施の形態3においても、先述した本発明の実施の形態2のように、たとえば図12に示す軸受面21における複数個の第1の給気孔61および第2の給気孔62の面積をそれぞれ互いに±10%以上変更してもよい。このとき、当該面積を変更する給気孔は、軸受面21の面積重心に関して対称となるように選択することが好ましい。また、圧力分布を調整するためのポケットや溝を、当該給気孔の軸受面21における出口付近の領域に設けてもよい。
【0072】
本発明の実施の形態3は、以上に述べた点についてのみ、本発明の実施の形態1または2と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3に関して上述しないたとえば構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の実施の形態1または2に順ずる。
【0073】
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態1〜3に係る静圧軸受パッドを用いた直動案内装置の態様を示す概略断面図である。図13を参照して、本発明の静圧軸受パッドを備えた直動案内装置を説明する。
【0074】
図13に示す直動案内装置150は、たとえばフォトリソグラフィーを行なう半導体露光装置の一部である。土台125の一方の主表面上(図13における上側)に、たとえば図13における紙面の奥行き方向に沿った方向に、図13において図示しないモータやエンコーダ、コントローラを用いて移動を制御することができる可動テーブル100や、静圧軸受パッドを安定な位置に配置するための基準となる案内部材108が設置されている。可動テーブル100には、位置制御対象物であるワーク135(たとえば半導体ウェハの表面上に素子を形成するためのフォトリソグラフィーを行なう場合における露光対象となる基板および当該基板ホルダなど)が搭載されている。
【0075】
ワーク135の質量が変動しても、案内部材108の主表面に対する可動テーブル100の配置を安定に保ちながら可動テーブル100を支持するために、静圧軸受パッド110(図13においては例として静圧軸受パッド110を記入しているが、たとえば静圧軸受パッド120、130、140であってもよい)が配置されている。
【0076】
図13に示すように、可動テーブル100において案内部材108と対向する各面上に静圧軸受パッド110を配置する。なお、静圧軸受パッド110のハウジング10(図1参照)の、軸受部材20(図1参照)と対向する主表面(凹部11(図1参照))と反対側の主表面(裏面)が、ボールスタッド106を介して可動テーブル100の各面と接続されている。このようにすれば、可動テーブル100の主表面のなす方向に対する静圧軸受パッド110の主表面の方向(軸受面の方向)を可変とすることができる。なお、ボールスタッド106は、静圧軸受パッド110のハウジング10の裏面に取り付けられており、その取り付け位置は軸受面の面積重心付近を通り軸受面にほぼ直交する直線と、ハウジング10の裏面とが交差する位置の近傍に配置されることが好ましい。このようにすれば、静圧軸受パッド110を可動テーブル100に対して安定に取り付けることができ、静圧軸受パッド110が軸受面21から不要なモーメント荷重を受けることを抑制することができる。
【0077】
この状態でたとえば当該直動案内装置150を稼動すると、ワーク135を搭載した可動テーブル100は、可動テーブル100を駆動するためのモータコイル部145およびモータマグネット部142の可動方向に沿って、紙面の奥行き方向に移動する。このとき、センサ141によっても可動テーブル100の位置を随時確認するが、可動テーブル100の主表面上に取り付けられた静圧軸受パッド110が、対向する案内部材108の主表面に対する浮上量を調整したり、軸受面21が対向する案内部材108の主表面に沿った方向となるよう、可動テーブル100の配置をバランスよく保つ役割を果たす。ここで、たとえばワーク135の質量が変動しても、静圧軸受パッド110は軸受面21と案内部材108の主表面との間の静圧を調整する(静圧軸受パッド110に供給される加圧気体の圧力を変更したり、第1および第2の給気溝51、52(図1参照)への加圧気体の供給の有無を制御したりする)ことにより、静圧軸受パッド110が、対向する案内部材108の主表面に対する浮上量を調整することができる。このようにして、静圧軸受パッド110は被支持体である、可動部(図13における可動テーブル100)または固定部を支持する。
【0078】
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態1〜3に係る静圧軸受パッドと同様の静圧軸受パッドを用いた回転案内装置の態様を示す概略断面図である。図14を参照して、本発明に従った静圧軸受パッドを備えた回転案内装置を説明する。
【0079】
図14では、回転案内装置250として、一例としてのCTスキャナの構成を示している。図14に示す回転案内装置(CTスキャナ)は非回転部201と、回転体としての回転軸202とを備える。そしてこの非回転部201に固定された複数の静圧軸受パッド203が、回転軸202を支持する。静圧軸受パッド203は回転案内装置250用なので、たとえば軸受部材20(図1参照)が回転軸202の外周面に沿った形状となるよう、軸受部材20の主表面(軸受面21)が曲面形状となっているといった点では、上記した本発明の各実施の形態に示す静圧軸受パッドとは異なる。しかし、静圧軸受パッド203においても、上記した本発明の各実施の形態に示す静圧軸受パッドと同様の原理にて、軸受部材20の軸受面21(図1参照)から加圧気体が噴出され、回転軸202の外周面を非接触で支持することができる。図14に示すように、静圧軸受パッド203は、回転軸202の外周面上の5箇所に配置されている。このように、回転軸202の外周面上の多方向から、静圧軸受パッド203から噴出する加圧気体により、回転軸202は軸方向および半径方向において非接触支持されている。そのため、回転軸202の静粛な高速運転が可能である。
【0080】
そして、静圧軸受パッド203についても、上記した本発明の各実施の形態に示す静圧軸受パッドと同様に、回転軸202の質量に応じて、静圧軸受パッド203から噴出する加圧気体を調整する。このようにすれば、回転軸202の外周面に対する浮上量や、回転軸202の外周面と静圧軸受パッド203の軸受面との間の静圧を調整することが可能である。
【0081】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、被支持体の質量の変化に応じて静圧を制御することにより、被支持体の質量に関わらず安定に支持する技術として、特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1の一の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の線分II−IIにおける概略断面図である。
【図3】図1の軸受面の主表面の構成を示す概略図である。
【図4】主表面に沿った方向の形状が四角形状である静圧軸受パッドの、図2に対応する概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の他の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。
【図6】図5の線分VI−VIにおける概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2の一の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。
【図8】図7の軸受面の主表面の構成を示す概略図である。
【図9】図7の線分IX−IXにおける概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3の一の局面に係る静圧軸受パッドの構成を示す概略断面図である。
【図11】図10の線分XI−XIにおける概略断面図である。
【図12】図10の軸受面の主表面の構成を示す概略図である。
【図13】本発明の実施の形態1〜3に係る静圧軸受パッドを用いた直動案内装置の態様を示す概略断面図である。
【図14】本発明の実施の形態1〜3に係る静圧軸受パッドと同様の静圧軸受パッドを用いた回転案内装置の態様を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0084】
10 ハウジング、11 凹部、20 軸受部材、21 軸受面、22 中心部、23 外周部、30 排気孔、31 排気溝、32 排気孔、33 排気溝、41 第1の給気管、42 第2の給気管、43 第3の給気管、44 第4の給気管、48 バイパス、49 バイパス、51 第1の給気溝、52 第2の給気溝、53 第3の給気溝、54 第4の給気溝、61 第1の給気孔、62 第2の給気孔、63 第3の給気孔、71 継ぎ手、72 継ぎ手、73 エアチューブ、74 エアチューブ、100 可動テーブル、106 ボールスタッド、108 案内部材、110 静圧軸受パッド、120 静圧軸受パッド、125 土台、130 静圧軸受パッド、135 ワーク、140 静圧軸受パッド、141 センサ、142 モータマグネット部、145 モータコイル部、150 直動案内装置、201 非回転部、202 回転軸、203 静圧軸受パッド、250 回転案内装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧気体を用いて被支持体を支持する静圧軸受パッドであって、
軸受面を有する軸受部材と、
前記軸受部材を保持するためのハウジングとを備え、
前記軸受部材と前記ハウジングとの接続部において、前記軸受部材と前記ハウジングとの少なくとも一方に、前記加圧気体を前記軸受面に供給するための複数本の互いに独立した給気溝が形成され、
複数本の前記給気溝のそれぞれに独立して前記加圧気体を供給する加圧気体供給部を備える、静圧軸受パッド。
【請求項2】
前記加圧気体供給部は、前記加圧気体を前記軸受面に供給する前記給気溝のそれぞれに供給する圧力を独立に調整可能である、請求項1に記載の静圧軸受パッド。
【請求項3】
前記軸受面は、前記軸受面から噴出された加圧気体を再度回収する排気溝によって分割され、
前記軸受部材および前記ハウジングには、前記排気溝から、前記軸受部材および前記ハウジングの内部を延伸し、前記ハウジングの表面のうち、前記軸受部材と接続された部分以外の表面部分まで延在する排気孔が形成されている、請求項1または2に記載の静圧軸受パッド。
【請求項4】
前記排気溝が前記軸受面を分割することにより前記軸受面に形成される領域は、前記軸受面の面積重心を通る直線に関して対称に配置される、請求項3に記載の静圧軸受パッド。
【請求項5】
前記軸受部材は多孔質材料からなり、前記軸受部材を形成する前記多孔質材料の隙間を介して、複数本の前記給気溝から前記軸受部材に供給される前記加圧気体を、前記軸受面から噴出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静圧軸受パッド。
【請求項6】
複数本の前記給気溝は、前記軸受面の面積重心を通る直線に関して対称に配置される、請求項5に記載の静圧軸受パッド。
【請求項7】
前記軸受部材には、前記給気溝から前記軸受面まで延在する給気孔が形成され、
前記給気孔を介して、複数本の前記給気溝から前記軸受部材に供給される前記加圧気体を、前記軸受面から噴出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静圧軸受パッド。
【請求項8】
前記給気孔は複数個形成され、
前記軸受面における複数個の前記給気孔は、前記軸受面の面積重心を通る直線に関して対称な位置に配置される、請求項7に記載の静圧軸受パッド。
【請求項9】
複数個の前記給気孔のうち、複数本の前記給気溝のうちの一の給気溝に連なる一の給気孔と、複数本の前記給気溝のうちの他の給気溝に連なる他の給気孔との、前記軸受面における面積をそれぞれ互いに±10%以上変更した、請求項7または8に記載の静圧軸受パッド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の静圧軸受パッドにより支持された前記被支持体を備える直動案内装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の静圧軸受パッドにより支持された前記被支持体を備える回転案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−96311(P2010−96311A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268946(P2008−268946)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】