説明

静脈パターン管理システム、静脈パターン登録装置、静脈パターン認証装置、静脈パターン登録方法、静脈パターン認証方法、プログラムおよび静脈データ構造

【課題】体表面に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定可能な、静脈パターン管理システム、静脈パターン登録装置、静脈パターン認証装置、静脈パターン登録方法、静脈パターン認証方法、プログラムおよび静脈データ構造を提供する。
【解決手段】体表面を拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、複数の近赤外光撮像データそれぞれから各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、抽出した複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、算出したフラクタル次元に基づいて、撮像した体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈パターン管理システム、静脈パターン登録装置、静脈パターン認証装置、静脈パターン登録方法、静脈パターン認証方法、プログラムおよび静脈データ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
個人を身体的特徴により本人と認証する方法として、本人の指紋、声紋、虹彩、網膜、手の甲や指の静脈パターン等を登録データとして予め登録しておき、認証時に入力されたデータと登録データとを照合・判定することで認証する方法がある。特に、静脈パターンによる個人認証は、その識別性の高さから、近年注目を集めている。
【0003】
上記のような個人認証方法の安全性を高めるためには、正規の認証者になりすまそうとする不正利用者を排除することが不可欠であり、このような不正利用者を排除する方法が、盛んに研究されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−259345号公報
【非特許文献1】松本勉、“金融取引における生体認証について”、平成17年4月15日、金融庁・第9回偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、静脈パターンを用いた個人認証方法では、近赤外光により手の甲や指などを撮像し、得られた撮像データを差分フィルタにより処理することで、静脈パターンを抽出することが行われる。
【0006】
しかしながら、近赤外光により撮像した撮像データから静脈部分と非静脈部分とを分離するために用いられる差分フィルタは、体表面にマジック等で描かれた疑似静脈パターンを静脈部分として出力してしまうことがあり、不正利用者のなりすましを防止するためにこのような疑似静脈パターンの有無を判別する方法が希求されていた。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、体表面に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定することが可能な、新規かつ改良された静脈パターン管理システム、静脈パターン登録装置、静脈パターン認証装置、静脈パターン登録方法、静脈パターン認証方法、プログラムおよび静脈データ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンの登録および認証を行なう静脈パターン管理システムであって、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて前記近赤外光静脈パターンを登録し、登録静脈パターンとする静脈パターン登録部と、前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて新たに生成された近赤外光静脈パターンと前記登録静脈パターンとを比較し、当該新たに生成された近赤外光静脈パターンを認証する静脈パターン認証部と、を備える静脈パターン管理システムが提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて前記近赤外光静脈パターンを登録し、登録静脈パターンとする静脈パターン登録部と、を備える静脈パターン登録装置が提供される。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて、既に登録されている登録静脈パターンと前記近赤外光静脈パターンとを比較し、当該近赤外光静脈パターンの認証を行う静脈パターン認証部と、を備える静脈パターン認証装置が提供される。
【0011】
擬似静脈パターン判定部は、算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記擬似静脈パターンが存在すると判定し、算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記擬似静脈パターンが存在しないと判定してもよい。
【0012】
フラクタル次元算出部は、前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いて前記フラクタル次元を算出してもよい。
【0013】
また、静脈パターン抽出部は、前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用い、前記近赤外光静脈パターンを抽出してもよい。
【0014】
上記差分フィルタは、微分フィルタであってもよく、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであってもよい。
【0015】
また、静脈パターン認証部は、静脈パターン登録装置から取得した前記登録静脈パターンに基づいて、前記近赤外光静脈パターンを認証してもよく、前記静脈パターン認証装置内に登録されている前記登録静脈パターンに基づいて、前記近赤外光静脈パターンを認証してもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンを登録する静脈パターン登録方法であって、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成するステップと、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出するステップと、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するステップと、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定するステップと、判定結果に基づいて、前記静脈パターンを登録静脈パターンとして登録するステップと、を備える静脈パターン登録方法が提供される。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンを認証する静脈パターン認証方法であって、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成するステップと、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出するステップと、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するステップと、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定するステップと、判定結果に基づいて既に登録されている登録近赤外光静脈パターンと比較し、前記静脈パターンを認証するステップと、を備える静脈パターン認証方法が提供される。
【0018】
上記疑似静脈パターンの有無を判定するステップでは、算出された前記フラクタル次元が所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記疑似静脈パターンが存在すると判定し、算出された前記フラクタル次元が所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記疑似静脈パターンが存在しないと判定してもよい。
【0019】
上記フラクタル次元を算出するステップでは、前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いてもよい。
【0020】
上記静脈パターンを抽出するステップでは、前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用いてもよい。
【0021】
上記差分フィルタは、微分フィルタであってもよく、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであってもよい。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンの登録を行なう静脈パターン登録装置を制御するコンピュータに、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像機能と、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出機能と、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出機能と、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定機能と、前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて前記近赤外光静脈パターンを登録し、登録静脈パターンとする静脈パターン登録機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【0023】
かかる構成によれば、コンピュータプログラムは、コンピュータが備える記憶部に格納され、コンピュータが備えるCPUに読み込まれて実行されることにより、そのコンピュータを上記の静脈パターン登録装置として機能させる。また、コンピュータプログラムが記録された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンの認証を行なう静脈パターン認証装置を制御するコンピュータに、生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像機能と、前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出機能と、抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出機能と、算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定機能と、前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて、既に登録されている登録静脈パターンと前記近赤外光静脈パターンとを比較し、当該近赤外光静脈パターンの認証を行う静脈パターン認証機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【0025】
かかる構成によれば、コンピュータプログラムは、コンピュータが備える記憶部に格納され、コンピュータが備えるCPUに読み込まれて実行されることにより、そのコンピュータを上記の静脈パターン認証装置として機能させる。また、コンピュータプログラムが記録された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、近赤外光により撮像して取得した被照合用の画像データと照合される、個人の静脈パターンに対応したデータが格納される静脈データ格納領域と、前記個人の静脈パターンのフラクタル次元が格納されるフラクタル次元格納領域と、を備える静脈データ構造が提供される。
【0027】
上記静脈データ構造は、前記近赤外光により撮像して取得した画像データを構成する各画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタに対し、当該差分フィルタの出力特性を変化させるパラメータを格納するパラメータ格納領域を更に備え、前記パラメータは、前記近赤外光により撮像して取得した画像データが静脈部分であることを示す値と非静脈部分であることを示す値との差分よりも大きな差分を有する場合に、前記差分フィルタの出力値を大きく変化させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、体表面に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
なお、以下の説明においては、指静脈における静脈パターンを例に挙げて説明を行なうが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
<疑似静脈パターンについて>
本発明の第1の実施形態に係る静脈パターン管理システムについて説明するに先立ち、疑似静脈パターンの一例として、指表面に作為的に形成された疑似静脈パターンについて、以下に説明する。
【0032】
指静脈パターンによる生体認証は、静脈パターン自体が指内部に内包されているために、成りすましが困難であるが、静脈パターンを取得する際に、取得した静脈パターンが指内部に内包されているものなのか否かを判定することは困難である。静脈は近赤外光を吸収するために、体表面を撮像すると静脈は暗い影となって映るが、体表面に静脈と似た吸収特性を有する成分によって擬似静脈パターンが描かれた場合には、擬似静脈パターンを静脈パターンと誤認識してしまう場合がある。
【0033】
近赤外光は、身体組織に対して透過性が高い一方で、血液中のヘモグロビン(還元ヘモグロビン)に吸収されるという特徴を有するため、近赤外光を指や手のひらや手の甲に照射すると、指や手のひらや手の甲の内部に分布している静脈が影となって画像に現れる。画像に表れる静脈の影を、静脈パターンという。
【0034】
図9は、指表面に描かれた疑似静脈パターンを説明するための説明図である。図9の上段は、指表面に油性ペンで疑似静脈パターンが直接描かれている場合を示しており、下段は、指表面に疑似静脈パターンが描かれていない場合を示している。また、上段、下段ともに、左から可視光による撮像、近赤外光による撮像、差分フィルタの一種であるLog(Laplacian of gaussian)フィルタ出力を閾値処理した後の画像を示している。
【0035】
ここで、上記の閾値処理とは、Logフィルタの出力値に対して、予め所定の上限閾値および下限閾値を設定しておき、出力値が下限閾値よりも小さい場合には出力値をゼロとし、出力値が上限閾値よりも大きな場合には出力値を上限閾値の値とする処理である。
【0036】
油性ペンのインク成分は、静脈中に存在する還元ヘモグロビンに類似した吸光特性を有するため、図9の上段右端および下段右端に示したように、細線化前の中間画像においても、油性ペンで描いた擬似静脈パターンは静脈パターンとして残存しており、最終的に指静脈として認識されてしまう。
【0037】
かかる問題を解決するために、本願発明者が鋭意研究を行なった結果、以下に説明するような、指表面等に描かれた擬似静脈パターンの有無を判別することが可能な静脈パターン管理システム、静脈パターン登録装置、静脈パターン認証装置、静脈パターン登録方法、静脈パターン認証方法、プログラムおよび静脈データ構造に想到した。
【0038】
<本実施形態について>
(毛細血管の自己相似性について)
まず、図1〜図3を参照しながら、毛細血管の自己相似性について、詳細に説明する。図1は、静脈パターンの自己相似性について説明するための説明図であり、図2は、フラクタル次元算出のためのプロット図について説明するための説明図であり、図3は、フラクタル次元の変化について説明するためのグラフ図である。
【0039】
人間の血管(特に、毛細血管)は、自己相似性(フラクタル性)を有することが知られている。例えば、指表面を、拡大率を変化させながら撮像すると、従来の拡大率では見えなかった毛細血管が、拡大することにより新たに出現する。他方、人工的に製造した指等に擬似的に静脈パターンを形成しようとする場合には、拡大して撮像することにより新たに出現する毛細血管を作ることは、非常に困難である。
【0040】
換言すれば、図1に示したように、生体の場合(つまり、毛細血管がある場合)については、自己相似性のために、撮像時に拡大率を上げたとしても見える静脈パターンが著しく減少することは無いが、非生体の場合(つまり、擬似静脈パターンを形成したものであって、毛細血管がない場合)には、撮像時に拡大率を上げていくと、新たに出現する静脈パターンは、著しく減少すると考えられる。
【0041】
以上の知見を基に本願発明者が鋭意研究を行った結果、体表面を複数の拡大率で撮像して、撮像画像から得られる静脈パターンのフラクタル次元を算出し、得られたフラクタル次元の変化から、擬似静脈パターンの有無の判別、すなわち、生体・非生体の判別を行なうことが可能であることに想到した。
【0042】
図2は、図1で示した各静脈パターン(図1の左から順に、拡大率1の場合、拡大率1.5の場合、拡大率2の場合である。)に関して、フラクタル次元の算出方法の一種であるボックスカウント法を用いて、フラクタル次元の算出を行なった結果である。ボックスカウント法については、以下で詳述するが、この方法は、ある大きさδのボックスを用いて静脈パターンを全て被覆することを考える場合に、必要なボックスの個数をカウントする方法である。ボックスカウント法では、ボックスの大きさδを横軸にとり、必要なボックスの個数を縦軸にとったうえで両対数プロットを行った場合に、直線の勾配(傾き)がフラクタル次元となる。
【0043】
図3は、横軸に拡大率をとり、縦軸に図2から得られたフラクタル次元をとった場合の、フラクタル次元の変化を示したグラフ図である。図3を参照すると、毛細血管がある場合(すなわち、擬似静脈パターンが存在しない生体である場合)には、フラクタル次元はほぼ一定の値を示しているのに対し、毛細血管がない場合(すなわち、擬似静脈パターンが存在する非生体である場合)には、拡大率が大きくなるにつれてフラクタル次元が著しく減少することがわかる。
【0044】
これは、毛細血管が出現しない擬似静脈パターンにおいては、拡大することにより著しく静脈パターンが減少し、フラクタル次元が小さくなるのに対し、生体の場合には、拡大することで新たに毛細血管が見えるようになり、静脈パターン自体は変化するもののパターンとしての複雑さにはそれほど変化がなく、フラクタル次元として安定した値となるためであると考えられる。
【0045】
以上説明したように、所定のフラクタル次元の閾値を予め設定しておき、撮像により得られた近赤外光静脈パターンのフラクタル次元と比較を行なうことで、擬似静脈パターンの有無を判定可能であることがわかる。
【0046】
(静脈パターン管理システムについて)
続いて、図4を参照しながら、本実施形態に係る静脈パターン管理システム10について、詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る静脈パターン管理システム10を説明するための説明図である。
【0047】
図4に示したように、静脈パターン管理システム10は、例えば、静脈パターン登録装置20と、ネットワーク12を介して静脈パターン登録装置20に接続された複数の静脈パターン認証装置30A、30B・・・とを備える。
【0048】
通信網12は、静脈パターン登録装置20および静脈パターン認証装置30を双方向通信または一方向通信可能に接続する通信回線網である。この通信網12は、例えば、インターネット、電話回線網、衛星通信網、同報通信路等の公衆回線網や、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、IP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)、Ethernet(登録商標)、ワイヤレスLAN等の専用回線網等で構成されており、有線/無線を問わない。
【0049】
静脈パターン登録装置20は、静脈パターンの登録を希望する個人の体表面に所定波長の光を照射して撮像し、撮像した画像データから静脈パターンを抽出して、抽出した静脈パターンを、個人を特定する情報として登録する。また、静脈パターン登録装置20は、体表面に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定し、抽出した静脈パターンの登録の可否を決定することが可能である。また、静脈パターン登録装置20は、後述する静脈パターン認証装置30からの要求に応じて、個人を特定する情報として登録されている登録静脈パターンを開示してもよい。
【0050】
静脈パターン認証装置30A、30Bは、静脈パターンの認証を希望する個人の体表面に所定波長の光を照射して撮像し、撮像した画像データから静脈パターンを抽出して、抽出した静脈パターンを、既に登録されている静脈パターンと比較することで認証する。また、静脈パターン認証装置30は、体表面に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定し、抽出した静脈パターンの認証の可否を決定することが可能である。また、静脈パターン認証装置30A、30Bは、静脈パターン登録装置20に対して、既に登録されている登録静脈パターンを開示するように要求することが可能である。
【0051】
なお、静脈パターン登録装置20および静脈パターン認証装置30A、30Bは、図示のようにネットワーク12を介して接続されていてもよく、また、ネットワーク12を介さずに、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポートや、i.Link等のIEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等により直接接続されていてもよい。
【0052】
さらに、図4では、ネットワーク12に接続されている静脈パターン登録装置20は、1つのみであるが、本実施形態は、上記の場合に限定されるわけではなく、静脈パターン登録装置20は、ネットワーク12上に複数接続されていてもよい。同様に、図4では、ネットワーク12に接続されている静脈パターン認証装置30は2つのみであるが、複数の静脈パターン認証装置30がネットワーク12上に接続されていてもよい。
【0053】
(静脈パターン登録装置20の構成について)
続いて、図5を参照しながら、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20のハードウェア構成について、詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0054】
図5に示したように、静脈パターン登録装置20は、主に、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)203と、RAM(Random Access Memory)205と、バス207と、撮像装置211と、入力装置213と、出力装置215と、ストレージ装置217と、ドライブ219と、通信装置221とを備える。
【0055】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM203、RAM205、ストレージ装置217、またはリムーバブル記録媒体14に記録された各種プログラムに従って静脈パターン登録装置20内の動作全般またはその一部を制御する。ROM203は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM205は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス207により相互に接続されている。
【0056】
撮像装置211は、CPU201の制御により、体表面を撮像して画像データを生成する装置である。撮像装置211は、例えば、所定波長の光を照射する照射装置と、体表面を透過した光を集光する光学レンズ等の集光装置と、を備える。照射装置は、所定波長の光を発光する光源から構成され、CPU201からの制御信号に基づいて、所定波長の光を照射する。また、集光装置は、照射装置から照射された光を集光して、画像データを生成する。
【0057】
入力装置213は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバー等のユーザが操作する操作手段と、マイクロフォンやヘッドセット等の音声入力手段とを備える。また、入力装置213は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、静脈パターン登録装置20の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器であってもよい。さらに、入力装置213は、例えば、上記の操作手段や音声入力手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。静脈パターン登録装置20のユーザは、この入力装置213を操作することにより、静脈パターン登録装置20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0058】
出力装置215は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)装置、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)装置、EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなど、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。
【0059】
ストレージ装置217は、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置217は、CPU201が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種データなどを格納する。
【0060】
ドライブ219は、記憶媒体用リーダライタであり、静脈パターン登録装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ219は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体14に記録されている情報を読み出して、RAM205に出力する。また、ドライブ219は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体14に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体14は、例えば、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、メモリースティック、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等である。また、リムーバブル記録媒体14は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0061】
通信装置221は、例えば、ネットワーク12に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置221は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等である。この通信装置221は、他の静脈パターン登録装置20や静脈パターン認証装置30との間で、各種の情報を送受信することができる。また、通信装置221に接続されるネットワーク12は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、または衛星通信等であってもよい。
【0062】
以上説明した構成により、静脈パターン登録装置20は、静脈パターンの登録を希望する個人の体表面に所定波長の光を照射して撮像し、撮像した画像データから静脈パターンを抽出して、抽出した静脈パターンを、個人を特定する情報として登録することが可能となる。また、静脈パターン登録装置20は、当該静脈パターン登録装置20に直接接続された静脈パターン認証装置30、または、ネットワーク12に接続された静脈パターン認証装置30とデータの送受信を行なうことが可能であり、リムーバブル記録媒体14を用いて、当該静脈パターン登録装置20に蓄積されている情報を持ち出すことも可能である。
【0063】
以上、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0064】
なお、静脈パターン認証装置30のハードウェア構成は、静脈パターン登録装置20ハードウェア構成と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0065】
続いて、図6を参照しながら、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20の構成について、詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20の構成について説明するためのブロック図である。
【0066】
図6に示したように、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20は、例えば、撮像部231と、静脈パターン抽出部241と、フラクタル次元算出部251と、擬似静脈パターン判定部261と、静脈パターン登録部271と、記憶部273と、登録静脈パターン開示部275と、を備える。
【0067】
撮像部231は、静脈パターンの登録を希望する個人の体表面Hを撮像して、撮像データを生成する。撮像部231は、例えば、所定波長の光を照射する照射部233と、体表面Hを透過した光を集光する光学レンズ237と、集光した光に基づいて撮像データを生成する撮像データ生成部239と、を備える。
【0068】
照射部233は、体表面Hに対して、近赤外光を照射するハロゲンランプや発光ダイオード等の光源から構成され、約600nm〜1300nm程度の波長を有する近赤外光235を照射する。
【0069】
光学レンズ237は、指表面等の体表面Hを透過した近赤外光235を集光し、撮像データ生成部239に結像する。本実施形態に係る光学レンズ237は、拡大率を所定の倍率に変化させて近赤外光235を集光することが可能である。種々の拡大率に近赤外光を結像させるために、本実施形態に係る光学レンズ237は、異なる焦点距離を有する複数の光学レンズから構成されてもよく、焦点距離が可変の多焦点レンズから構成されてもよい。
【0070】
撮像データ生成部239は、光学レンズ237により結像された近赤外光235の透過光を基に、様々な拡大率の近赤外光撮像データを生成する。撮像データ生成部239は、例えば、CCD(Charge−Coupled Device:電荷結合素子)型画像センサや、C−MOS(Complementary−Metal Oxide Semiconductor)型画像センサ等により構成され、近赤外光撮像データを、後述する静脈パターン抽出部241へと出力する。また、撮像データ生成部239は、生成した近赤外光撮像データを、後述する記憶部273に記憶してもよい。また、記憶部273への記憶に際しては、生成した近赤外光撮像データに撮像日や撮像時刻等を関連づけてもよい。なお、生成される近赤外光撮像データは、RGB(Red−Green−Blue)信号であってもよいし、それ以外の色やグレースケール等の画像データであってもよい。
【0071】
静脈パターン抽出部241は、例えば、撮像データ生成部239から伝送された近赤外光撮像データに対して、静脈パターン抽出の前処理を行なう機能と、静脈パターンの抽出を行なう機能と、静脈パターン抽出の後処理を行なう機能と、を備える。
【0072】
ここで、上記の静脈パターン抽出の前処理は、例えば、近赤外光撮像データから指の輪郭を検出し、近赤外光撮像データのどの位置に指があるかを識別する処理や、検出した指の輪郭を利用して近赤外光撮像データを回転させて、近赤外光撮像データの角度(撮像画像の角度)を補正する処理等を含む。
【0073】
また、上記の静脈パターンの抽出は、輪郭の検出や角度の補正が終了した近赤外光撮像データに対して差分フィルタを適用することで行なわれる。差分フィルタは、注目している画素とその周囲の画素について、注目している画素と周囲の画素との差分が大きな部分で、大きな値を出力値として出力するフィルタである。換言すれば、差分フィルタとは、注目している画素とその近傍の階調値の差分を用いた演算により、画像中の線や縁を強調するフィルタである。
【0074】
一般的に、2次元平面の格子点(x,y)を変数とする画像データu(x,y)に対してフィルタh(x,y)を用いてフィルタ処理を行なうと、以下の式1に示すように、画像データν(x,y)を生成する。ここで、以下の式1において、‘*’は畳込み積分(コンボリューション)を表す。
【0075】
【数1】

【0076】
本実施形態に係る静脈パターンの抽出では、上記の差分フィルタとして、1次空間微分フィルタや2次空間微分フィルタ等の微分フィルタを用いてもよい。1次空間微分フィルタは、注目している画素について、横方向と縦方向の隣接している画素の階調値の差分を算出するフィルタであり、2次空間微分フィルタは、注目している画素について、階調値の差分の変化量が大きくなっている部分を抽出するフィルタである。
【0077】
上記の2次空間微分フィルタとして、例えば、以下に示すLog(Laplacian of Gaussian)フィルタを用いることが可能である。Logフィルタ(式3)は、ガウス関数を用いた平滑化フィルタであるガウシアン(Gaussian)フィルタ(式2)の2次微分で表される。ここで、以下の式2において、σはガウス関数の標準偏差を表し、ガウシアンフィルタの平滑化の度合いを表す変数である。また、以下の式3におけるσは、式2と同様にガウス関数の標準偏差を表すパラメータであり、σの値を変化させることで、Logフィルタ処理を行なった場合の出力値を変化させることができる。
【0078】
【数2】

【0079】
また、上記の静脈パターン抽出の後処理は、例えば、差分フィルタ適用後の画像データに対してなされる閾値処理や、2値化処理や、細線化処理等を含む。かかる後処理を経て、静脈パターンのスケルトンを抽出することが可能となる。
【0080】
静脈パターン抽出部241は、このようにして抽出した静脈パターンやスケルトンを、後述するフラクタル次元算出部251に伝送する。また、静脈パターン抽出部241は、抽出した静脈パターンやスケルトンを、後述する記憶部273に記憶してもよい。なお、静脈パターン抽出部241は、上述の各処理を行なうに当たって生成したパラメータや処理の途中経過等を、記憶部273に記憶してもよい。
【0081】
フラクタル次元算出部251は、静脈パターン抽出部241から伝送された様々な拡大率の近赤外光静脈パターンを用いて、静脈パターンのフラクタル次元を算出する。フラクタル次元を算出する方法としては、例えばボックスカウント法を用いることが可能であるが、上記の方法に限定されるわけではない。
【0082】
ボックスカウント法は、実験等で得られたデータのフラクタル次元を算出するために用いられる方法である。ボックスカウント法は、フラクタル次元を算出したいデータの集合Fを大きさδのボックス(箱)で被覆するのに必要なボックスの個数Nδ(F)から、フラクタル次元Dを算出する方法である。ボックスカウント法においては、フラクタル次元Dを以下の式4で定義する。
【0083】
【数3】

【0084】
実際のフラクタル次元Dは、複数の大きさδ(i=1,2,・・・n)に対してボックス個数Nδi(F)を求めて両対数プロットし、以下の式5に示すように、両対数プロットの勾配を各プロットから最小二乗法により求める。
【0085】
【数4】

【0086】
フラクタル次元算出部251は、各拡大率の近赤外光静脈パターンに対して、例えば上記式5に示した方法でフラクタル次元を算出し、後述する疑似静脈パターン判定部261へと伝送する。また、フラクタル次元算出部251は、算出したフラクタル次元を、記憶部273に記憶してもよい。
【0087】
擬似静脈パターン判定部261は、フラクタル次元算出部251から伝送された各拡大率の近赤外光静脈パターンのフラクタル次元に基づいて、体表面Hの一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する。具体的には、擬似静脈パターン判定部261は、フラクタル次元算出部251から伝送された各拡大率の近赤外光静脈パターンのフラクタル次元を、それぞれ所定の閾値と比較することで、擬似静脈パターンの有無を判定する。上記閾値は、例えば、多数の評価データを用いた事前の判定テスト等から算出された値であってもよく、ある特定の個人に固有の値であってもよい。
【0088】
擬似静脈パターン判定部261は、フラクタル次元算出部251から伝送されたフラクタル次元が所定の閾値よりも大きい場合には、体表面Hの一部に擬似静脈パターンが生成されていないと判定し、フラクタル次元が所定の閾値よりも小さい場合には、体表面Hの一部に擬似静脈パターンが生成されていると判定する。
【0089】
擬似静脈パターン判定部261は、判定結果を静脈パターン登録部271へと伝送する。また、擬似静脈パターン判定部261は、判定結果を記憶部273に記憶してもよい。また、記憶部への記憶に際しては、判定を行った静脈パターンと判定結果とが関連付けられて記憶されてもよい。
【0090】
なお、上述の説明においては、撮像した静脈パターンのフラクタル次元が所定の閾値未満である場合に、擬似静脈パターンが存在すると判定する場合について説明したが、撮像した静脈パターンのフラクタル次元が、ある上限値以上だった場合に擬似静脈パターンが存在すると判定するようにしてもよい。これは、拡大して撮像したときにも擬似静脈パターンが撮像されるように、予め密集した擬似静脈パターンを形成した場合に相当する。
【0091】
静脈パターン登録部271は、擬似静脈パターン判定部261から伝送された判定結果に基づいて、生成された近赤外光静脈パターンをテンプレートとして登録する。具体的には、擬似静脈パターン判定部261から「擬似静脈パターンは存在しない」旨を表す判定結果が伝送された場合には、静脈パターン登録部271は、静脈パターン抽出部251から伝送された近赤外光静脈パターンを、登録静脈パターンとして記憶部273に記憶する。また、擬似静脈パターン判定部261から「擬似静脈パターンが存在する」旨を表す判定結果が伝送された場合には、静脈パターン登録部271は、抽出された近赤外光静脈パターンを登録せずに、登録処理を終了する。また、登録静脈パターンの登録に際しては、近赤外光静脈パターンだけでなく、静脈パターンを有する個人を特定する他のデータ(例えば、指紋データ、顔画像データ、虹彩データ、声紋データ等)を近赤外光静脈パターンに関連づけて記憶してもよい。また、テンプレートとして登録される登録静脈パターンは、例えば、CBEFF(Common Biometric Exchange File Format:共通バイオメトリック交換ファイルフォーマットフレームワーク)等の規格に則ったヘッダ情報を有していてもよい。
【0092】
記憶部273は、静脈パターン登録部271から登録要請のあった登録静脈パターンや、当該登録静脈パターンに関連付けられた他のデータを記憶する。また、これらのデータ以外にも、撮像データ生成部245が生成した撮像データや、静脈パターン抽出部251が抽出した静脈パターン等を記憶することも可能である。更に、これらのデータ以外にも、静脈パターン登録装置20が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等を、適宜記憶することが可能である。この記憶部273は、撮像部231、静脈パターン抽出部241、フラクタル次元算出部251、擬似静脈パターン判定部261、静脈パターン登録部271等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
【0093】
登録静脈パターン開示部275は、例えば静脈パターン登録装置20に接続された静脈パターン認証装置30からの要求に応じて、記憶部273に記憶されている登録静脈パターンを開示する。
【0094】
なお、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20は、例えば、コンピュータやサーバ等の情報処理装置、携帯電話やPHS等の携帯端末や携帯情報端末(PDA)、現金自動預払機(ATM)、入退室管理装置等の各種装置に実装されてもよい。
【0095】
また、上述の説明では、テンプレートとして登録される登録静脈パターンが、静脈パターン登録装置20内に記憶される場合について説明したが、登録静脈パターンは、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック、または、SDメモリカード等の記録媒体や、非接触型ICチップを搭載したICカードまたは電子機器等に記憶されてもよい。
【0096】
以上、本実施形態に係る静脈パターン登録装置20の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0097】
(静脈パターン認証装置30の構成について)
続いて、図7を参照しながら、本実施形態に係る静脈パターン認証装置30の構成について、詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る静脈パターン認証装置30の構成について説明するためのブロック図である。
【0098】
図7に示したように、本実施形態に係る静脈パターン認証装置30は、例えば、撮像部301と、静脈パターン抽出部311と、フラクタル次元算出部321と、擬似静脈パターン判定部331と、静脈パターン認証部341と、記憶部343と、を備える。
【0099】
撮像部301は、静脈パターンの認証を希望する個人の体表面Hを撮像して、撮像データを生成する。撮像部301は、例えば、所定波長の光を照射する照射部303と、体表面Hを透過した光を集光する光学レンズ307と、集光した光に基づいて撮像データを生成する撮像データ生成部309と、を備える。
【0100】
照射部303は、体表面Hに対して、近赤外光を照射するハロゲンランプや発光ダイオード等の光源から構成され、約600nm〜1300nm程度の波長を有する近赤外光305を照射する。
【0101】
光学レンズ307は、指表面等の体表面Hを透過した近赤外光305を集光し、撮像データ生成部309に結像する。本実施形態に係る光学レンズ307は、拡大率を所定の倍率に変化させて近赤外光305を集光することが可能である。種々の拡大率に近赤外光を結像させるために、本実施形態に係る光学レンズ307は、異なる焦点距離を有する複数の光学レンズから構成されてもよく、焦点距離が可変の多焦点レンズから構成されてもよい。
【0102】
撮像データ生成部309は、光学レンズ307により結像された近赤外光305の透過光を基に、様々な拡大率の近赤外光撮像データを生成する。撮像データ生成部309は、例えば、CCD型画像センサや、C−MOS型画像センサ等により構成され、近赤外光撮像データを、後述する静脈パターン抽出部311へと出力する。また、撮像データ生成部309は、生成した近赤外光撮像データを、後述する記憶部343に記憶してもよい。また、記憶部343への記憶に際しては、生成した近赤外光撮像データに撮像日や撮像時刻等を関連づけてもよい。なお、生成される近赤外光撮像データは、RGB信号であってもよいし、それ以外の色やグレースケール等の画像データであってもよい。
【0103】
静脈パターン抽出部311は、例えば、撮像データ生成部309から伝送された近赤外光撮像データに対して、静脈パターン抽出の前処理を行なう機能と、静脈パターンの抽出を行なう機能と、静脈パターン抽出の後処理を行なう機能と、を備える。
【0104】
ここで、上記の静脈パターン抽出の前処理は、例えば、近赤外光撮像データから指の輪郭を検出し、近赤外光撮像データのどの位置に指があるかを識別する処理や、検出した指の輪郭を利用して近赤外光撮像データを回転させて、近赤外光撮像データの角度(撮像画像の角度)を補正する処理等を含む。
【0105】
また、上記の静脈パターンの抽出は、輪郭の検出や角度の補正が終了した近赤外光撮像データに対して差分フィルタを適用することで行なわれる。差分フィルタは、注目している画素とその周囲の画素について、注目している画素と周囲の画素との差分が大きな部分で、大きな値を出力値として出力するフィルタである。換言すれば、差分フィルタとは、注目している画素とその近傍の階調値の差分を用いた演算により、画像中の線や縁を強調するフィルタである。
【0106】
一般的に、2次元平面の格子点(x,y)を変数とする画像データu(x,y)に対してフィルタh(x,y)を用いてフィルタ処理を行なうと、以下の式6に示すように、画像データν(x,y)を生成する。ここで、以下の式1において、‘*’は畳込み積分(コンボリューション)を表す。
【0107】
【数5】

【0108】
本実施形態に係る静脈パターンの抽出では、上記の差分フィルタとして、1次空間微分フィルタや2次空間微分フィルタ等の微分フィルタを用いてもよい。1次空間微分フィルタは、注目している画素について、横方向と縦方向の隣接している画素の階調値の差分を算出するフィルタであり、2次空間微分フィルタは、注目している画素について、階調値の差分の変化量が大きくなっている部分を抽出するフィルタである。
【0109】
上記の2次空間微分フィルタとして、例えば、以下に示すLog(Laplacian of Gaussian)フィルタを用いることが可能である。Logフィルタ(式8)は、ガウス関数を用いた平滑化フィルタであるガウシアン(Gaussian)フィルタ(式7)の2次微分で表される。ここで、以下の式7において、σはガウス関数の標準偏差を表し、ガウシアンフィルタの平滑化の度合いを表す変数である。また、以下の式8におけるσは、式7と同様にガウス関数の標準偏差を表すパラメータであり、σの値を変化させることで、Logフィルタ処理を行なった場合の出力値を変化させることができる。
【0110】
【数6】

【0111】
また、上記の静脈パターン抽出の後処理は、例えば、差分フィルタ適用後の画像データに対してなされる閾値処理や、2値化処理や、細線化処理等を含む。かかる後処理を経て、静脈パターンのスケルトンを抽出することが可能となる。
【0112】
静脈パターン抽出部241は、このようにして抽出した静脈パターンやスケルトンを、後述するフラクタル次元算出部251に伝送する。また、静脈パターン抽出部241は、抽出した静脈パターンやスケルトンを、後述する記憶部273に記憶してもよい。なお、静脈パターン抽出部241は、上述の各処理を行なうに当たって生成したパラメータや処理の途中経過等を、記憶部273に記憶してもよい。
【0113】
フラクタル次元算出部321は、静脈パターン抽出部311から伝送された様々な拡大率の近赤外光静脈パターンを用いて、静脈パターンのフラクタル次元を算出する。フラクタル次元を算出する方法としては、例えばボックスカウント法を用いることが可能であるが、上記の方法に限定されるわけではなく、例えば相関積分法等を用いてもよい。
【0114】
ボックスカウント法は、実験等で得られたデータのフラクタル次元を算出するために用いられる方法である。ボックスカウント法は、フラクタル次元を算出したいデータの集合Fを大きさδのボックス(箱)で被覆するのに必要なボックスの個数Nδ(F)から、フラクタル次元Dを算出する方法である。ボックスカウント法においては、フラクタル次元Dを以下の式9で定義する。
【0115】
【数7】

【0116】
実際のフラクタル次元Dは、複数の大きさδ(i=1,2,・・・n)に対してボックス個数Nδi(F)を求めて両対数プロットし、以下の式10に示すように、両対数プロットの勾配を各プロットから最小二乗法により求める。
【0117】
【数8】

【0118】
フラクタル次元算出部321は、各拡大率の近赤外光静脈パターンに対して、例えば上記式10に示した方法でフラクタル次元を算出し、後述する疑似静脈パターン判定部331へと伝送する。また、フラクタル次元算出部321は、算出したフラクタル次元を、記憶部343に記憶してもよい。
【0119】
擬似静脈パターン判定部331は、フラクタル次元算出部321から伝送された各拡大率の近赤外光静脈パターンのフラクタル次元に基づいて、体表面Hの一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する。具体的には、擬似静脈パターン判定部331は、フラクタル次元算出部321から伝送された各拡大率の近赤外光静脈パターンのフラクタル次元を、それぞれ所定の閾値と比較することで、擬似静脈パターンの有無を判定する。上記閾値は、例えば、多数の評価データを用いた事前の判定テスト等から算出された値であってもよく、ある特定の個人に固有の値であってもよい。
【0120】
擬似静脈パターン判定部331は、フラクタル次元算出部321から伝送されたフラクタル次元が所定の閾値よりも大きい場合には、体表面Hの一部に擬似静脈パターンが生成されていないと判定し、フラクタル次元が所定の閾値よりも小さい場合には、体表面Hの一部に擬似静脈パターンが生成されていると判定する。
【0121】
擬似静脈パターン判定部331は、判定結果を静脈パターン認証部341へと伝送する。また、擬似静脈パターン判定部331は、判定結果を記憶部343に記憶してもよい。また、記憶部への記憶に際しては、判定を行った静脈パターンと判定結果とが関連付けられて記憶されてもよい。
【0122】
なお、上述の説明においては、撮像した静脈パターンのフラクタル次元が所定の閾値未満である場合に、擬似静脈パターンが存在すると判定する場合について説明したが、撮像した静脈パターンのフラクタル次元が、ある上限値以上だった場合に擬似静脈パターンが存在すると判定するようにしてもよい。これは、拡大して撮像したときにも擬似静脈パターンが撮像されるように、予め密集した擬似静脈パターンを形成した場合に相当する。
【0123】
静脈パターン認証部341は、擬似静脈パターン判定部331から伝送された判定結果に基づいて、生成された近赤外光静脈パターンの認証を行なう。具体的には、擬似静脈パターン判定部331から「擬似静脈パターンは存在しない」旨を表す判定結果が伝送された場合には、静脈パターン認証部341は、例えば静脈パターン登録装置20に対して登録静脈パターンの開示を要求し、静脈パターン登録装置20から取得した登録静脈パターンと、静脈パターン抽出部311から伝送された近赤外光静脈パターンとの比較を行なう。登録静脈パターンと近赤外光静脈パターンとの比較は、例えば以下に示す相関係数を算出し、算出した相関係数に基づいて実行することが可能である。静脈パターン認証部341は、比較の結果登録静脈パターンと近赤外光静脈パターンが類似している場合には、近赤外光静脈パターンを認証し、類似していない場合には、認証を行なわない。
【0124】
相関係数は、以下の式11で定義されるものであり、2つのデータx={x},y={y}間の類似度を示す統計学指標であって、−1から1までの実数値をとる。相関係数が1に近い値を示す場合には、2つのデータは類似していることを示し、相関係数が0に近い値を示す場合には、2つのデータは類似していないことを示す。また、相関係数が−1に近い値を示す場合には、2つのデータの符号が反転しているような場合を示す。
【0125】
【数9】

【0126】
また、擬似静脈パターン判定部331から「擬似静脈パターンが存在する」旨を表す判定結果が伝送された場合には、静脈パターン認証部341は、抽出された近赤外光静脈パターンの認証処理を行なうことなく、処理を終了する。
【0127】
記憶部343は、撮像データ生成部309が生成した撮像データや、静脈パターン抽出部311が抽出した静脈パターン等を記憶することが可能である。更に、これらのデータ以外にも、静脈パターン認証装置30が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等を、適宜記憶することが可能である。この記憶部343は、撮像部301、静脈パターン抽出部311、フラクタル次元算出部321、擬似静脈パターン判定部331、静脈パターン認証部341等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
【0128】
なお、本実施形態に係る静脈パターン認証装置30は、例えば、コンピュータやサーバ等の情報処理装置、携帯電話やPHS等の携帯端末や携帯情報端末(PDA)、現金自動預払機(ATM)、入退室管理装置等の各種装置に実装されてもよい。
【0129】
また、上述の説明では、登録静脈パターンを静脈パターン登録装置20から取得する場合について説明したが、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック、または、SDメモリカード等の記録媒体や、非接触型ICチップを搭載したICカードまたは電子機器等に記憶された登録静脈パターンに基づいて認証を行なってもよい。また、登録静脈パターンは、静脈パターン認証装置30に記憶されていてもよい。
【0130】
以上、本実施形態に係る静脈パターン認証装置30の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0131】
(静脈パターンの登録方法について)
続いて、図8を参照しながら、本実施形態に係る静脈パターンの登録方法について、詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る疑似静脈パターンの判別方法について説明するための流れ図である。
【0132】
体内に存在する血管は、自己相似性を有することが知られている。そこで、本実施形態に係る静脈パターンの登録方法では、拡大率を変化させながら撮像した静脈パターンのフラクタル次元を算出し、算出したフラクタル次元を基に、疑似静脈パターンの有無を判定することを特徴とする。
【0133】
以下の説明においては、被撮像体を拡大率1(実寸大で撮像)、拡大率1.5(1.5倍の大きさで撮像)、拡大率2(2倍の大きさで撮像)の3種類の拡大率で撮像する場合について説明するが、本実施形態に係る静脈パターンの登録方法における拡大率の選択は、上記の場合に限定されるわけではない。
【0134】
まず、静脈パターン登録装置20の撮像部231は、当該撮像部231内の光学レンズ237の拡大率を1に設定し、拡大せずに被撮像体を撮像するように光学レンズ237を制御する(ステップS101)。続いて、撮像部231は、体表面の一部(例えば、指表面)を拡大することなく近赤外光により撮像し、撮像部231中の撮像データ生成部239は、近赤外光撮像データを生成する(ステップS105)。撮像データ生成部239は、生成した近赤外光撮像データを、例えば撮像日時や撮像時刻と関連付けて記憶部273に記憶するとともに、静脈パターン抽出部241へと伝送する。
【0135】
近赤外光撮像データが伝送された静脈パターン抽出部241は、近赤外光撮像データに対して、指の輪郭を検出し指の位置を識別する処理や、近赤外光撮像データを回転させ角度を補正する処理といった、静脈パターンのスケルトン抽出前処理を行なう(ステップS107)。
【0136】
スケルトン抽出前処理が終了すると、静脈パターン抽出部241は、続いて、前処理の終了した近赤外光撮像データに対して、差分フィルタの一種であるLogフィルタ処理を行なってLogフィルタ出力を算出し(ステップS109)、近赤外光静脈パターンとする。続いて、静脈パターン抽出部241は、生成された近赤外光静脈パターンに対して、閾値処理、2値化処理、細線化処理等の後処理を施し(ステップS111)、後処理が施された近赤外光静脈パターンを記憶部273に記憶するとともに、フラクタル次元算出部251に伝送する。
【0137】
フラクタル次元算出部251では、静脈パターン抽出部241から伝送された拡大率1の近赤外光静脈パターンを用いて、ボックスカウント法によりフラクタル次元Dを算出する(ステップS113)。具体的には、ボックスの大きさδを変化させながら、近赤外光静脈パターンを被覆するボックスの個数をカウントしていき、ボックスの個数を縦軸、ボックスの大きさを横軸として両対数プロットを行う。プロットされた各点について最小二乗法を用いて勾配を算出し、得られた勾配を、拡大率1で撮像した近赤外光静脈パターンのフラクタル次元Dとする。フラクタル次元算出部251は、算出したフラクタル次元Dを、擬似静脈パターン判定部261に伝送するとともに、記憶部273に記憶する。
【0138】
擬似静脈パターン判定部261は、フラクタル次元算出部251から伝送されたフラクタル次元Dとフラクタル次元の閾値とを比較して、擬似静脈パターンの有無を判定する(ステップS115)。具体的には、擬似静脈パターン判定部261は、フラクタル次元算出部251から伝送されたフラクタル次元Dと所定のフラクタル次元閾値の大小を比較し、伝送されたフラクタル次元Dが閾値未満である場合には、擬似静脈パターンが存在すると判定し、静脈パターンの登録処理を終了する。また、伝送されたフラクタル次元Dが所定の閾値以上である場合には、その旨を撮像部231に伝送する。
【0139】
次に、撮像部231は、当該撮像部231内の光学レンズ237の拡大率を1.5に設定し、被撮像体である指表面を、1.5倍の大きさで撮像するように制御する(ステップS101)。その後は、上述の説明と同様にしてフラクタル次元Dを算出し、算出したフラクタル次元Dと所定の閾値との比較を行なう。拡大率1.5の場合もフラクタル次元Dが所定の閾値以上であった場合には、擬似静脈パターン判定部261はその旨を撮像部231に伝送する。
【0140】
次いで、撮像部231は、当該撮像部231内の光学レンズ237の拡大率を2に設定し、被撮像体である指表面を、2倍の大きさで撮像するように制御し(ステップS101)、上記と同様にして、フラクタル次元Dの比較を行なう。
【0141】
拡大率が1の場合、1.5の場合、および、2の場合のいずれにおいても、算出されたフラクタル次元Dが所定の閾値以上であった場合には、拡大率の変化が終了したこととなり(ステップS103)、擬似静脈パターン判定部261は、擬似静脈パターンが存在しない旨を静脈パターン登録部271へと伝送する。
【0142】
静脈パターン登録部271は、擬似静脈パターン判定部261から「擬似静脈パターンは存在しない」旨を表す信号が通知された場合には、静脈パターン抽出部241から伝送された、後処理が施された近赤外光静脈パターンを、登録静脈パターンとして記憶部273に格納されているデータベース(図示せず。)に記憶する。また、登録静脈パターンには、個人のIDや他のバイオメトリクスデータ等が関連づけられてもよい。
【0143】
また、静脈パターン登録部271は、擬似静脈パターン判定部261から「擬似静脈パターンが存在する」旨を表す信号が通知された場合には、静脈パターンの登録処理は行なわず、一連の処理を終了する。
【0144】
以上説明したように、本実施形態に係る静脈パターン登録方法によれば、撮像された近赤外光静脈パターンのフラクタル次元に着目することで、体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定することが可能である。本実施形態に係る静脈パターン登録方法は、擬似静脈パターンの有無を静脈パターンの登録前に判定可能であるため、登録静脈パターンが格納されているデータベース等に不要なデータが記憶される可能性が無くなり、登録静脈パターンの管理が容易となる。
【0145】
(静脈パターンの認証方法について)
続いて、同じく図8を参照しながら、本実施形態に係る静脈パターン認証方法について、詳細に説明する。
【0146】
体内に存在する血管は、自己相似性を有することが知られている。そこで、本実施形態に係る静脈パターンの認証方法では、拡大率を変化させながら撮像した静脈パターンのフラクタル次元を算出し、算出したフラクタル次元を基に、疑似静脈パターンの有無を判定することを特徴とする。
【0147】
以下の説明においては、被撮像体を拡大率1(実寸大で撮像)、拡大率1.5(1.5倍の大きさで撮像)、拡大率2(2倍の大きさで撮像)の3種類の拡大率で撮像する場合について説明するが、本実施形態に係る静脈パターンの認証方法における拡大率の選択は、上記の場合に限定されるわけではない。
【0148】
まず、静脈パターン認証装置30の撮像部301は、当該撮像部301内の光学レンズ307の拡大率を1に設定し、拡大せずに被撮像体を撮像するように光学レンズ307を制御する(ステップS101)。続いて、撮像部301は、体表面の一部(例えば、指表面)を拡大することなく近赤外光により撮像し、撮像部301中の撮像データ生成部309は、近赤外光撮像データを生成する(ステップS105)。撮像データ生成部309は、生成した近赤外光撮像データを、例えば撮像日時や撮像時刻と関連付けて記憶部343に記憶するとともに、静脈パターン抽出部311へと伝送する。
【0149】
近赤外光撮像データが伝送された静脈パターン抽出部311は、近赤外光撮像データに対して、指の輪郭を検出し指の位置を識別する処理や、近赤外光撮像データを回転させ角度を補正する処理といった、静脈パターンのスケルトン抽出前処理を行なう(ステップS107)。
【0150】
スケルトン抽出前処理が終了すると、静脈パターン抽出部311は、続いて、前処理の終了した近赤外光撮像データに対して、差分フィルタの一種であるLogフィルタ処理を行なってLogフィルタ出力を算出し(ステップS109)、近赤外光静脈パターンとする。続いて、静脈パターン抽出部311は、生成された近赤外光静脈パターンに対して、閾値処理、2値化処理、細線化処理等の後処理を施し(ステップS111)、後処理が施された近赤外光静脈パターンを記憶部343に記憶するとともに、フラクタル次元算出部321に伝送する。
【0151】
フラクタル次元算出部321では、静脈パターン抽出部311から伝送された拡大率1の近赤外光静脈パターンを用いて、ボックスカウント法によりフラクタル次元Dを算出する(ステップS113)。具体的には、ボックスの大きさδを変化させながら、近赤外光静脈パターンを被覆するボックスの個数をカウントしていき、ボックスの個数を縦軸、ボックスの大きさを横軸として両対数プロットを行う。プロットされた各点について最小二乗法を用いて勾配を算出し、得られた勾配を、拡大率1で撮像した近赤外光静脈パターンのフラクタル次元Dとする。フラクタル次元算出部321は、算出したフラクタル次元Dを、擬似静脈パターン判定部331に伝送するとともに、記憶部343に記憶する。
【0152】
擬似静脈パターン判定部331は、フラクタル次元算出部321から伝送されたフラクタル次元Dとフラクタル次元の閾値とを比較して、擬似静脈パターンの有無を判定する(ステップS115)。具体的には、擬似静脈パターン判定部331は、フラクタル次元算出部321から伝送されたフラクタル次元Dと所定のフラクタル次元閾値の大小を比較し、伝送されたフラクタル次元Dが閾値未満である場合には、擬似静脈パターンが存在すると判定し、静脈パターンの登録処理を終了する。また、伝送されたフラクタル次元Dが所定の閾値以上である場合には、その旨を撮像部301に伝送する。
【0153】
次に、撮像部301は、当該撮像部301内の光学レンズ307の拡大率を1.5に設定し、被撮像体である指表面を、1.5倍の大きさで撮像するように制御する(ステップS101)。その後は、上述の説明と同様にしてフラクタル次元Dを算出し、算出したフラクタル次元Dと所定の閾値との比較を行なう。拡大率1.5の場合もフラクタル次元Dが所定の閾値以上であった場合には、擬似静脈パターン判定部311はその旨を撮像部301に伝送する。
【0154】
次いで、撮像部301は、当該撮像部301内の光学レンズ307の拡大率を2に設定し、被撮像体である指表面を、2倍の大きさで撮像するように制御し(ステップS101)、上記と同様にして、フラクタル次元Dの比較を行なう。
【0155】
拡大率が1の場合、1.5の場合、および、2の場合のいずれにおいても、算出されたフラクタル次元Dが所定の閾値以上であった場合には、拡大率の変化が終了したこととなり(ステップS103)、擬似静脈パターン判定部331は、擬似静脈パターンが存在しない旨を静脈パターン認証部341へと伝送する。
【0156】
静脈パターン認証部341は、擬似静脈パターン判定部331から「擬似静脈パターンは存在しない」旨を表す信号が通知された場合には、静脈パターン登録装置20に対して、登録静脈パターンの開示を要求する。静脈パターン登録装置20の登録静脈パターン開示部275により登録静脈パターンが開示されると、静脈パターン認証部341は、開示された登録静脈パターンを取得して、静脈パターン抽出部311から伝送された後処理後の近赤外光静脈パターンと比較する。登録静脈パターンと近赤外光静脈パターンとの比較は、例えば、上記の相関係数のように、画像データの類似度を定量的に算出可能な方法を用いて行なわれる。登録静脈パターンと近赤外光静脈パターンが類似している場合には、静脈パターン認証部341は、生成された近赤外光静脈パターンを認証し、類似していない場合には、認証しない。
【0157】
また、静脈パターン認証部341は、擬似静脈パターン判定部331から「擬似静脈パターンが存在する」旨を表す信号が通知された場合には、静脈パターンの認証処理は行なわず、一連の処理を終了する。
【0158】
以上説明したように、本実施形態に係る静脈パターン認証方法によれば、撮像された近赤外光静脈パターンのフラクタル次元に着目することで、体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定することが可能である。本実施形態に係る静脈パターン認証方法は、擬似静脈パターンの有無を静脈パターンの認証前に判定可能であるため、悪意ある利用者が試行錯誤を繰り返すことで擬似静脈パターンを最適化して他人に成りすますことを、事前に防止することが可能である。
【0159】
(静脈データ構造について)
また、本発明によれば、生体の一部の体表面を近赤外光により撮像して取得した画像データと照合される、個人の静脈パターンに対応したデータが格納された静脈データ格納領域と、個人の静脈パターンのフラクタル次元が格納されるフラクタル次元格納領域と、を備える静脈データ構造が提供される。
【0160】
静脈データ格納領域は、例えば静脈パターン登録装置20によって登録静脈パターンとして登録された静脈パターンが格納される領域である。この静脈データ格納領域に格納されたデータは、例えば静脈パターン認証装置30が撮像した近赤外光静脈パターンを認証する際に利用される。
【0161】
フラクタル次元格納領域は、個人の静脈パターンのフラクタル次元が格納される領域であり、このフラクタル次元格納領域に格納されるフラクタル次元は、例えば静脈パターン登録装置20や静脈パターン認証装置30が、体表面上に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する際に利用される。
【0162】
また、上記の静脈データ構造は、近赤外光により撮像して取得した画像データを構成する各画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタに対し、当該差分フィルタの出力特性を変化させるパラメータを格納するパラメータ格納領域を、更に備えてもよい。
【0163】
パラメータ格納領域に格納されるパラメータは、例えば静脈パターン登録装置20や静脈パターン認証装置30が、近赤外光や可視光により撮像した撮像データから静脈パターンを抽出する際に利用する差分フィルタのパラメータであり、例えば、近赤外光により撮像して取得した画像データが静脈部分であることを示す値と非静脈部分であることを示す値との差分よりも大きな差分を有する場合に、差分フィルタの出力値を大きく変化させるものである。
【0164】
上記パラメータは、差分フィルタの種類ごとに別個に格納されるものであり、体表面に形成された擬似静脈パターンを差分フィルタで検出できる値とする。例えば、差分フィルタとしてLogフィルタが使用される場合には、Logフィルタが擬似静脈パターンを検出できる値が、パラメータ格納領域に格納される。この場合に、格納されるパラメータの値は、少なくとも2.0以上とする。
【0165】
以上説明したような静脈データ構造は、例えば、非接触型ICチップや、携帯電話等に用いられるSIM(Subscriber Identity Module)カード等のICカードに適用可能である。また、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック、または、SDメモリカード等の記録媒体にも適用することが可能である。
【0166】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0167】
例えば、上述した実施形態においては、静脈パターン登録装置20および静脈パターン認証装置30がそれぞれ別個に設けられる場合について説明したが、静脈パターン登録装置20および静脈パターン認証装置30の双方の機能を備えた静脈パターン管理装置を設けてもよい。
【0168】
また、上述した実施形態においては、静脈パターン登録装置20および静脈パターン認証装置30に透過型の撮像部が設けられる場合について説明したが、撮像する体表面の部位に応じて、例えば反射型の撮像部を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】静脈パターンの自己相似性について説明するための説明図である。
【図2】フラクタル次元算出のためのプロット図について説明するための説明図である。
【図3】フラクタル次元の変化について説明するためのグラフ図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る静脈パターン管理システムを説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係る静脈パターン登録装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【図6】同実施形態に係る静脈パターン登録装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】同実施形態に係る静脈パターン認証装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】同実施形態に係るフラクタル次元による擬似静脈パターン判別方法について説明するための流れ図である。
【図9】指表面に描かれた疑似静脈パターンを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0170】
10 静脈パターン管理システム
12 ネットワーク
14 リムーバブル記憶媒体
20 静脈パターン登録装置
30 静脈パターン認証装置
201 CPU
203 ROM
205 RAM
207 バス
211 撮像装置
213 入力装置
215 出力装置
217 ストレージ装置
219 ドライブ
221 通信装置
231,301 撮像部
233,303 照射部
235,305 近赤外光
237,307 光学レンズ
239,309 撮像データ生成部
241,311 静脈パターン抽出部
251,321 フラクタル次元算出部
261,331 擬似静脈パターン判定部
271,341 静脈パターン登録部
273,343 記憶部
275 登録静脈パターン開示部
H 体表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンの登録および認証を行なう静脈パターン管理システムであって、
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて前記近赤外光静脈パターンを登録し、登録静脈パターンとする静脈パターン登録部と、
前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて新たに生成された近赤外光静脈パターンと前記登録静脈パターンとを比較し、当該新たに生成された近赤外光静脈パターンを認証する静脈パターン認証部と、
を備えることを特徴とする、静脈パターン管理システム。
【請求項2】
前記擬似静脈パターン判定部は、
算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記擬似静脈パターンが存在すると判定し、
算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記擬似静脈パターンが存在しないと判定する
ことを特徴とする、請求項1に記載の静脈パターン管理システム。
【請求項3】
前記フラクタル次元算出部は、
前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いて前記フラクタル次元を算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の静脈パターン管理システム。
【請求項4】
前記静脈パターン抽出部は、
前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用い、前記近赤外光静脈パターンを抽出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の静脈パターン管理システム。
【請求項5】
前記差分フィルタは、微分フィルタであることを特徴とする、請求項4に記載の静脈パターン管理システム。
【請求項6】
前記差分フィルタは、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであることを特徴とする、請求項5に記載の静脈パターン管理システム。
【請求項7】
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、
前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて前記近赤外光静脈パターンを登録し、登録静脈パターンとする静脈パターン登録部と、
を備えることを特徴とする、静脈パターン登録装置。
【請求項8】
前記擬似静脈パターン判定部は、
算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記擬似静脈パターンが存在すると判定し、
算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記擬似静脈パターンが存在しないと判定する
ことを特徴とする、請求項7に記載の静脈パターン登録装置。
【請求項9】
前記フラクタル次元算出部は、
前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いて前記フラクタル次元を算出する
ことを特徴とする、請求項7に記載の静脈パターン登録装置。
【請求項10】
前記静脈パターン抽出部は、
前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用い、前記近赤外光静脈パターンを抽出する
ことを特徴とする、請求項7に記載の静脈パターン登録装置。
【請求項11】
前記差分フィルタは、微分フィルタであることを特徴とする、請求項10に記載の静脈パターン登録装置。
【請求項12】
前記差分フィルタは、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであることを特徴とする、請求項11に記載の静脈パターン登録装置。
【請求項13】
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像部と、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部と、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出部と、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定部と、
前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて、既に登録されている登録静脈パターンと前記近赤外光静脈パターンとを比較し、当該近赤外光静脈パターンの認証を行う静脈パターン認証部と、
を備えることを特徴とする、静脈パターン認証装置。
【請求項14】
前記擬似静脈パターン判定部は、
算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記擬似静脈パターンが存在すると判定し、
算出された前記フラクタル次元が、所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記擬似静脈パターンが存在しないと判定する
ことを特徴とする、請求項13に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項15】
前記フラクタル次元算出部は、
前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いて前記フラクタル次元を算出する
ことを特徴とする、請求項13に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項16】
前記静脈パターン抽出部は、
前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用い、前記近赤外光静脈パターンを抽出する
ことを特徴とする、請求項13に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項17】
前記差分フィルタは、微分フィルタであることを特徴とする、請求項16に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項18】
前記差分フィルタは、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであることを特徴とする、請求項17に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項19】
前記静脈パターン認証部は、
静脈パターン登録装置から取得した前記登録静脈パターンに基づいて、前記近赤外光静脈パターンを認証する
ことを特徴とする、請求項13に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項20】
前記静脈パターン認証部は、
前記静脈パターン認証装置内に登録されている前記登録静脈パターンに基づいて、前記近赤外光静脈パターンを認証する
ことを特徴とする、請求項13に記載の静脈パターン認証装置。
【請求項21】
生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンを登録する静脈パターン登録方法であって、
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成するステップと、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出するステップと、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するステップと、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定するステップと、
判定結果に基づいて、前記静脈パターンを登録静脈パターンとして登録するステップと、
を備えることを特徴とする、静脈パターン登録方法。
【請求項22】
前記疑似静脈パターンの有無を判定するステップでは、
算出された前記フラクタル次元が所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記疑似静脈パターンが存在すると判定し、
算出された前記フラクタル次元が所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記疑似静脈パターンが存在しないと判定する
ことを特徴とする、請求項21に記載の静脈パターン登録方法。
【請求項23】
前記フラクタル次元を算出するステップでは、
前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いることを特徴とする、請求項21に記載の静脈パターン登録方法。
【請求項24】
前記静脈パターンを抽出するステップでは、
前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用いる
ことを特徴とする、請求項23に記載の静脈パターン登録方法。
【請求項25】
前記差分フィルタは、微分フィルタであることを特徴とする、請求項24に記載の静脈パターン登録方法。
【請求項26】
前記差分フィルタは、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであることを特徴とする、請求項25に記載の静脈パターン登録方法。
【請求項27】
生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンを認証する静脈パターン認証方法であって、
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成するステップと、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出するステップと、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するステップと、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に形成された擬似静脈パターンの有無を判定するステップと、
判定結果に基づいて既に登録されている登録近赤外光静脈パターンと比較し、前記静脈パターンを認証するステップと、
を備えることを特徴とする、静脈パターン認証方法。
【請求項28】
前記疑似静脈パターンの有無を判定するステップでは、
算出された前記フラクタル次元が所定のフラクタル次元閾値よりも小さい場合に、前記疑似静脈パターンが存在すると判定し、
算出された前記フラクタル次元が所定のフラクタル次元閾値よりも大きい場合に、前記疑似静脈パターンが存在しないと判定する
ことを特徴とする、請求項27に記載の静脈パターン認証方法。
【請求項29】
前記フラクタル次元を算出するステップでは、
前記静脈パターンを構成する複数の画素について、ボックスカウント法を用いることを特徴とする、請求項27に記載の静脈パターン認証方法。
【請求項30】
前記静脈パターンを抽出するステップでは、
前記近赤外光撮像データを構成する複数の画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタを用いる
ことを特徴とする、請求項27に記載の静脈パターン認証方法。
【請求項31】
前記差分フィルタは、微分フィルタであることを特徴とする、請求項30に記載の静脈パターン認証方法。
【請求項32】
前記差分フィルタは、Log(Laplacian of Gaussian)フィルタであることを特徴とする、請求項31に記載の静脈パターン認証方法。
【請求項33】
生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンの登録を行なう静脈パターン登録装置を制御するコンピュータに、
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像機能と、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出機能と、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出機能と、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定機能と、
前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて前記近赤外光静脈パターンを登録し、登録静脈パターンとする静脈パターン登録機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項34】
生体の一部に光を照射して取得した静脈パターンの認証を行なう静脈パターン認証装置を制御するコンピュータに、
生体の一部の体表面を、拡大率を変化させながら近赤外光により撮像し、拡大率の異なる複数の近赤外光撮像データを生成する撮像機能と、
前記複数の近赤外光撮像データそれぞれから、各近赤外光撮像データに対応する複数の静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出機能と、
抽出した前記複数の静脈パターンに対して、各静脈パターンに対応するフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出機能と、
算出した前記フラクタル次元に基づいて、撮像した前記体表面の一部に作為的に生成された擬似静脈パターンの有無を判定する擬似静脈パターン判定機能と、
前記擬似静脈パターン判定部の判定結果に基づいて、既に登録されている登録静脈パターンと前記近赤外光静脈パターンとを比較し、当該近赤外光静脈パターンの認証を行う静脈パターン認証機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項35】
近赤外光により撮像して取得した被照合用の画像データと照合される、個人の静脈パターンに対応したデータが格納される静脈データ格納領域と、
前記個人の静脈パターンのフラクタル次元が格納されるフラクタル次元格納領域と、
を備えることを特徴とする、静脈データ構造。
【請求項36】
前記静脈データ構造は、
前記近赤外光により撮像して取得した画像データを構成する各画素について、周囲の画素との差分が大きな画素において大きな値を出力する差分フィルタに対し、当該差分フィルタの出力特性を変化させるパラメータを格納するパラメータ格納領域を更に備え、
前記パラメータは、
前記近赤外光により撮像して取得した画像データが静脈部分であることを示す値と非静脈部分であることを示す値との差分よりも大きな差分を有する場合に、前記差分フィルタの出力値を大きく変化させるものである
ことを特徴とする、請求項35に記載の静脈データ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−287433(P2008−287433A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130858(P2007−130858)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】