静電型アクチュエータとその製造方法と液滴吐出ヘッド及び画像形成装置
【課題】静電型アクチュエータの大気開放孔(疎水剤導入孔)の封止性が完全でない場合でも、空隙内の疎水剤濃度の経時的な低下を防止して耐久性劣化を防止する。
【解決手段】振動板20と固定電極13aの空隙側15aの表面に疎水膜を形成し、空隙15a中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入するとともに、空隙15aを連通する連通路53に接して液体の疎水剤を保持する疎水剤保持部52を設け、空隙15a内における疎水剤の蒸気の封止が僅かに不完全であっても液体の疎水剤を保持した疎水剤保持部52より疎水剤の蒸気が供給されて、空隙15a内の疎水剤濃度の低下を防止して静電型アクチュエータの耐久性が劣化することを防ぐ。
【解決手段】振動板20と固定電極13aの空隙側15aの表面に疎水膜を形成し、空隙15a中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入するとともに、空隙15aを連通する連通路53に接して液体の疎水剤を保持する疎水剤保持部52を設け、空隙15a内における疎水剤の蒸気の封止が僅かに不完全であっても液体の疎水剤を保持した疎水剤保持部52より疎水剤の蒸気が供給されて、空隙15a内の疎水剤濃度の低下を防止して静電型アクチュエータの耐久性が劣化することを防ぐ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電型アクチュエータとその製造方法と液滴吐出ヘッド及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタやファクシミリ装置、複写装置、プロッタ等の画像記録装置あるいは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(吐出室、圧力室、インク流路とも称される)と、この液室内のインクを加圧するエネルギーを発生するアクチュエータ手段とを備え、アクチュエータ手段で発生するエネルギーによって液室内の記録液に圧力を作用させてノズルから液滴を吐出させる。
【0003】
液滴吐出ヘッドとしては、電気機械変換素子などの圧電型アクチュエータをもちいたもの、電気熱変換素子に膜沸騰を利用するサーマル型アクチュエータを用いたもの、振動板と電極間の静電力を利用する静電型アクチュエータを用いるものなどがあり、この中でも静電型アクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドは、小型化、高速化、高密度化、省電力化において他の方式の液滴吐出ヘッドに比べて優位であることから、現在開発が盛んに行なわれている。
【0004】
静電駆動方式の液滴吐出ヘッドなどで使用する静電型アクチュエータの駆動には振動板と対向電極を当接させない非当接駆動と、振動板と対向電極を当接させる当接駆動とがある。振動板と対向電極を当接させない非当接駆動では、大きな発生力を得るためには当接駆動の場合より非常に大きな電圧が必要となり、駆動素子等のコストが増大してしまう。これに対して、振動板と対向電極を当接させる当接駆動では大きな発生力を得られるが、振動板と対向電極を当接させる当接駆動を繰り返し行うと、静電吸引特性あるいは静電反発特性が低下する現象や電極表面の絶縁膜が剥がれることにより絶縁性が阻害され静電型アクチュエータが破壊する等の現象が見られる。
【0005】
この静電型アクチュエータの当接駆動時における弊害を回避するために、特許文献1に示されたインクジェットヘッドは、アクチュエータ表面を疎水化処理することが行われている。さらに、疎水膜の十分な耐久性を得るために、所定濃度以上の疎水剤の気体(蒸気)を振動板と電極の間の空隙内に気密封止することが行われている。このとき、複数の空隙を連通路(バイパス管)で繋ぎ、一箇所または少数の複数箇所から疎水剤導入を行うことで、短時間で封止を行うことを可能とするとともに、気密性の向上も可能としている。
【0006】
また、特許文献2に示された静電型アクチュエータは、大気開放孔(疎水剤導入孔)を封止剤で封止するとき、毛細管現象によって、封止剤が連通路を通じて振動板と電極の間の空隙内にまで達し、正常な動作ができなくなることを防止するため、封止剤の連通路内への流入に対して抵抗となり、かつ、距離を長くするための蛇行通路を形成し、封止剤の空隙内への浸入を防止するようにしている。
【0007】
また、特許文献3に示された静電型アクチュエータは、犠牲層エッチングで振動板と電極の間の空隙を形成したものにおいて、振動板と電極の間の空隙内部に疎水膜を形成する疎水剤の蒸気を効率的に空隙内に導入するために、個別電極形成層をパターニングするときに共通連通路を形成するための部分を形成し、電極形成層上の絶縁膜の共通連通路を形成する場所に開口を形成し、その上に堆積された犠牲層に共通連通路を形成するための部分を形成することにより、電極形成層と犠牲層で共通連通路を形成するための部分を一体的に形成した後に犠牲層エッチングで除去して空隙よりも高さの高い共通連通路を形成するようにしている。
【0008】
さらに、特許文献2や特許文献3には、疎水剤の効率的な導入および空隙間の均一性向上のため、大気開放孔と連通路の配置についても各種の提案がされている。
【特許文献1】特許第4038864号公報
【特許文献2】特開2007−77864号公報
【特許文献3】特開2006−115624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように振動板と電極の間の空隙に疎水剤の蒸気を導入しても、大気開放孔(疎水剤導入孔)の封止が完全でないと、空隙内の疎水剤濃度が経時的に低下して静電型アクチュエータの耐久性が劣化するという短所がある。
【0010】
この発明は、このような短所を改善し、大気開放孔(疎水剤導入孔)の封止性が完全でない場合でも、空隙内の疎水剤濃度の経時的な低下を防止して耐久性劣化を防止することができる静電型アクチュエータとその製造方法と液滴吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の静電型アクチュエータは、少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、前記空隙に連通する連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面には疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする。
【0012】
前記空隙に連通した連通路と疎水剤保持部の間に、液体の疎水剤を通さないが疎水剤の蒸気を通す膜を設けることを特徴とする。
【0013】
また、前記疎水剤保持部に吸収体を配置し、吸収体に液体の疎水剤を保持させると良い。
【0014】
この発明の他の静電型アクチュエータは、少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、前記空隙に連通する連通路と、該連通路と大気開放孔を有する大気開放部との間に設けられた疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面に疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする。
【0015】
この発明の他の静電型アクチュエータにおいて、前記疎水剤保持部の前記連通路側は蛇行形状として前記空隙に液体の疎水剤が流れ込まないようにすると良い。
【0016】
この発明の静電型アクチュエータの製造方法は、少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極と、前記振動板及び前記固定電極の前記空隙側の表面に形成された疎水膜と、空隙に連通して設けられた連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータの製造方法であって、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入した後、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を注入して封止することを特徴とする。
【0017】
この発明の液滴吐出ヘッドは、前記静電型アクチュエータを有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させることを特徴とする。
【0018】
この発明の画像形成装置は、前記液滴吐出ヘッドを有し、該液滴吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出させて画像を記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明の静電型アクチュエータは、振動板と固定電極の空隙側の表面に疎水膜を形成し、空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入するとともに、空隙を連通する連通路に接して液体の疎水剤を保持する疎水剤保持部を設けたから、空隙内における疎水剤の蒸気の封止が僅かに不完全であっても液体の疎水剤を保持した疎水剤保持部より疎水剤の蒸気が供給されるので空隙内の疎水剤濃度の低下を防止して静電型アクチュエータの耐久性が劣化することを防ぐことができる。
【0020】
また、空隙に連通した連通路と疎水剤保持部の間に、液体の疎水剤を通さないが疎水剤の蒸気を通す膜を設けることにより、空隙内に液体の疎水剤が浸入することを防止することができ、静電型アクチュエータを安定して駆動させることができる。
【0021】
さらに、疎水剤保持部に吸収体を配置し、吸収体に疎水剤を保持させることにより、空隙内に液体の疎水剤が浸入することを防止することができる。
【0022】
また、空隙に連通する連通路と大気開放孔を有する大気開放部との間に疎水剤保持部を設けて疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持することにより、疎水剤保持部を空隙と連通路と同時に形成することができ、製造工程を簡略化することができる。また、疎水剤保持部の連通路側は蛇行形状にすることにより、空隙に液体の疎水剤が流れ込むことを確実に防いで、静電型アクチュエータを安定して駆動させることができる。
【0023】
また、この静電型アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドは、耐久性を向上するとともに安定して液滴を吐出することができ、信頼性を向上することができる。
【0024】
さらに、この液滴吐出ヘッドを有し、液滴吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出させて画像を記録する画像形成装置は、インク滴を安定して吐出するから、良質な画像を安定して形成するとともに耐久性と信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1〜図9はこの発明の液滴吐出ヘッドの構成を示し、図1は分解斜視図、図2は透視状態を示す平面配置図、図3は図2のX11−X11断面図、図4は図2のX12−X12断面図、図5は図2のX13−X13断面図、図6は図2のY11−Y11断面図、図7は図2のY12−Y12断面図、図8は図2のY13−Y13断面図、図9は開放孔周辺の拡大図である。
【0026】
液滴吐出ヘッド1は圧力発生手段として静電型アクチュエータを使用したものであり、アクチュエータ基板10と液室基板30及び複数のノズル孔41を有するノズル板40と図示していないフレームとFPCとドライバーICで構成されている。
【0027】
ノズル板40は、例えば、紙面側(図2の上面側)に撥水膜をコーティングしたポリイミドフィルムであり、ノズル孔41はノズル板40を液室基板30に接着したのち、レーザ加工にて開口したものである。また、液室基板30の液体疎水剤保持部(液体疎水剤注入部)52と対応する部分には開口部42を有する。この開口部42は開口させる必要のある部分のみ抜く形で開口しているが、直線的に切り出すようにしても良い。また、ノズル板40と液室基板30を接着したのち開口しても良いし、あらかじめ開口しているものを接着しても良い。
【0028】
液室基板30には、結晶方位(110)のシリコン基板を用い、ノズル板40と反対側の面に共通液室31と流体抵抗部32及び加圧液室33が形成されている。また、ノズル孔41と加圧液室33を連通させるための連通管34が液室基板30を貫通して形成されている。このような構成にすることにより、液室基板30の厚みよりも加圧液室33の高さを低くすることができ、ハンドリングの容易な厚さの基板を用いたまま加圧液室33の高さを吐出特性面から最適化することが可能となっている。この液室基板30の厚みは例えば400μmで加圧液室30の高さは80μmとしている。また、液室基板30に結晶方位(110)のシリコン基板を用いているので、加圧液室33等を公知の異方性エッチングにて高精度に加工することが可能となっている。また、図4に示すように、加圧液室33その他を形成した後、熱酸化により表面に液室基板接液膜35となる酸化膜を形成し、濡れ性の向上とインク等の吐出液による基材であるシリコンの腐食防止を図っている。このとき、図示しないが、液室基板30のノズル板40との接着面側にはダミーパターンを設けておくことにより熱酸化後に酸化膜の内部応力により基板が反ることを防止している。ここで、吐出液の種類によっては液室基板接液膜35が不要な場合もあるし、他の膜とする場合もある。
【0029】
アクチュエータ基板10は、結晶方位(100)のシリコン基板11の上に基板絶縁膜12を介して高精度の空隙形成が可能な犠牲層プロセスにて形成された振動板20と空隙15aと固定電極層13に形成された固定電極13aからなる静電型アクチュエータが形成されている。このアクチュエータ基板10にはノズル孔41の並び方向に各空隙15aを相互に連通する連通路53が形成され、連通路53の他端部は連通路53内とアクチュエータ基板10の外部とを繋ぐ開放孔51に連通されている。また、アクチュエータ基板10の液室基板30と反対の面(以後、裏面とする)側から吐出液を供給するため、液供給路60が貫通して設けられ、図6に示すように、その表面に液供給路接液膜61が形成されている。
【0030】
振動板20は積層膜で形成され、図3に示すように、空隙15a側から振動板側絶縁膜21と振動板電極層22と引張り応力膜23と犠牲層除去孔封止膜24及び接液膜25により形成されている。振動板側絶縁膜21は振動板20と固定電極13aが当接したときの短絡を防止するものであり、酸化シリコン膜で形成されている。振動板電極層22は固定電極13aとの間に電圧印可し静電力を発生させる振動板電極22aを有し、例えばヒ素ドープポリシリコン膜で形成されている。引張り応力膜23は振動板20を全体として引っ張り応力とすることで、撓まず張った状態にすることおよび駆動時の反発力確保するものであり、例えば窒化シリコン膜で形成されている。犠牲層除去孔封止膜24は犠牲層除去孔の封止と引張り応力膜23の割れ防止を兼ねるものであり、例えば酸化シリコン膜で形成されている。接液膜25はンク等の吐出液による腐食を防止するため例えばPBO(ポリベンゾオキサゾール)で形成されている。ここで振動板電極層22と引張り応力膜23の間に振動板撓み防止膜として酸化シリコン膜を設ける場合もある。
【0031】
固定電極層13にはリンドープのポリシリコンを用い、その空隙15a側には絶縁膜として酸化シリコン膜を形成している。また、固定電極層13とシリコン基板11の間にも基板絶縁膜12として酸化シリコン膜が形成され、固定電極層13とシリコン基板11間の絶縁を確保している。ここで、振動板電極22aと固定電極13aのどちらか一方をノズル(チャネル)枚に分離した個別電極、他方を複数ノズル(チャネル)、例えば全ノズル(チャネル)で共通の共通電極として吐出させるノズル(チャネル)の選択が可能であるが、ここでは振動板電極22aを共通電極とし固定電極13aを個別電極とした。
【0032】
空隙15aおよび連通路53は、ポリシリコンを犠牲層に用いた犠牲層プロセスにて形成した。この犠牲層プロセスにおける犠牲層除去孔やその周囲の詳細構造については図示していないが、特許文献2と同様な構成としている。振動板電極22aや固定電極13aは犠牲層と同じくポリシリコンにて形成されているが、先に述べたように、空隙15aとなる部分に面している部分は絶縁膜として設けたシリコン酸化膜で覆われているので、ポリシリコンとシリコン酸化膜で十分な選択性な選択性を有するエッチャント、例えばTMA(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液を用いて犠牲層除去を行うことにより犠牲層除去時にエッチングされることを防ぐ。
【0033】
連通路53については、特許文献3に開示されているように、固定電極層13のポリシリコンも連通路形成の犠牲層として利用することにより連通路53のコンダクタンス増加を図っている。特許文献1〜3と同様に連通路53を通してヘキサメチルジシラザン(HMDS)蒸気を導入することで、振動板20と固定電極側絶縁膜14の空隙15a側の表面に疎水膜を形成し、さらに空隙15a中にはHMDS蒸気を封入して静電アクチュエータの駆動耐久性を確保している。
【0034】
アクチュエータ基板10の開放孔51には第一の開放孔51aと第二の開放孔51bを有し、第一の開放孔51aは振動板接液膜25の形成時に同時に形成されたPBO膜(以下、振動板接液膜25と記載する)で覆われ、第二の開放孔51bは例えば紫外線硬化型のエポキシ樹脂からなる封止剤54aによって封止されている。第一の開放孔51aは、図9に示すように、開口径2μm程度の複数のものが形成されている。また、第一の開放孔51a上を覆う振動板接液膜25は第一の開放孔51a内には入らずに表面だけを覆うように形成している。一方、第二の開放孔51bは開口径30μm程度の大きさとし、その付近は蛇行通路とし、封止剤54aが第二の開放孔51bと蛇行通路内にある程度入り込む様にしている。
【0035】
第二の開放孔51bを封止する封止剤54aの部分の液室基板30には、図4に示すように窪み37を形成し、封止剤54aの盛り上がりによるアクチュエータ基板10と液室基板30の接合不良が起きないようにしている。ここで封止剤54aが盛り上がらないのであれば、この窪み37は不要である。また、図5に示すように、第一の開放孔51aを覆うように貫通部が設けられて疎水剤保持部52としている。疎水剤保持部52中に液体の疎水剤52aが保持され、疎水剤保持部52のノズル板40側は封止剤54bで封止している。
【0036】
なお、図では、ノズル孔42を上に描いているが、例えば記録液吐出ヘッドとして画像形成に搭載されるときにはノズル孔42を下にして搭載される。したがって装置への搭載状態では、ノズル孔42側に液体の疎水剤52aが溜まり、アクチュエータ基板10側が空間(気体部分)となる。第一の開放孔51aを覆う振動板接液膜25の形成材料であるPBO膜は液体は通さないが若干の透気性があり、空隙15aと連通路53内のHMDS濃度が低下した場合にはBBO膜を透過してHMDS蒸気が供給される。
【0037】
このように、空隙15aを連通する連通路53に接して液体の疎水剤52aを保持する疎水剤保持部52を設けているので、封止が僅かに不完全であっても液体の疎水剤保持部52より疎水剤蒸気が供給されて、空隙15a内の疎水剤濃度の低下することを防いで静電アクチュエータの耐久性劣化を防止できる。ここで液体疎水剤保持部52は液室基板30に形成された単なる空間であるが、この部分に例えば多孔質体からなる吸収体を配置して液体疎水剤を保持するようにしても良い。
【0038】
この開放孔51と液体の疎水剤52aを保持する疎水剤保持部52の他の構成と配置を図10〜図13に示す。図10に示すように、疎水剤保持部52の形状を封止剤54bで封止しやすいようにノズル側を絞った構成とすることができる。また、図11に示すように、第一の開放孔51aと第二の開放孔51bの両方を覆うように疎水剤保持部52を形成しても良い。また、図12に示すように、第二の開放孔51bを第一の開放孔51aよりも空隙15aに連通する連通路53側に形成し、第二の開放孔51bを覆うように液体の疎水剤52aを保持する疎水剤保持部52を形成しても良い。このような構成とした場合、第二の開放孔51b部分の透気性は封止剤54aの種類や塗布厚みや蛇行への入り込み有無あるいは入り込み量等にもよるが、第一の開放孔51a部分の透気性よりも(材料の透過率・厚さ・断面積を含めて)極めて小さいので、第二の開放孔51b部分の極めて小さい封止の不完全性のみ補われ、他部分の封止不完全性等による空隙15a内のHMDS濃度低下を補うようにはなっていない。一方、第一の開放孔51a部分で万一振動板接液膜25が開放孔51aから内部に入り込んだ場合でも、その影響は受けないで済む。
【0039】
前記説明では、第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bを直列に配置した例を示したが、図13に示すように、第一の開放孔51aと第二の開放孔51bを並列に配置しても良い。
【0040】
第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bと疎水剤保持部52を形成して疎水剤52aを封止する製造工程を図14のフローチャートと図15の工程図を参照して説明する。
【0041】
まず、公知例と同様に犠牲層プロセスを用いてアクチュエータ基板10の静電アクチュエータ主要部を形成する(ステップS1)。この静電アクチュエータ主要部を形成するとき犠牲層除去孔を減圧CVD法による酸化シリコン膜にて封止したので、この状態では空隙15a内は減圧に保持され、常温・常圧の環境下では振動板20は大気圧に押され固定電極13a側に撓んでいる。次に、図15(a)に示すように、振動板20に第一の開放孔51aをフォトリソ・エッチングによって開口する(ステップS2)。これにより空隙15a内の圧力を外界圧力と同一にすることができ、振動板20の撓みが解消される。
【0042】
次に、図15(b)に示すように、振動板接液膜25となるPBO膜を塗布法にて形成する(ステップS3)。この振動板接液膜25を形成するとき、PBOとなる前駆体を含んだ溶液をスピンコートにてアクチュエータ基板10の表面に塗布した後、ソフトベークを行い、溶媒を揮発させる。そしてPBO不要部をマスク露光にて露光してアルカリ溶液に浸漬し露光部のPBO前駆体膜を除去し、320℃程度の温度でハードベークを行いPBO化する。このように感光性材料を用いて容易に所望の部分にのみPBO膜を形成することができる。この振動板接液膜25の形成により第一の開放孔51aもPBO膜により覆われる。このPBO膜は透気性があるが、液体は透過しないので、後工程でアクチュエータ基板10表面が液体、例えばレジスト溶液やエッチング液、剥離液、純水、液体疎水剤等にさらされても、連通路53や空隙15a等にそれらの液体が入り込むことを防ぐ。
【0043】
次に、アクチュエータ基板10に液供給路60と液供給路接液膜61を形成する(ステップS4)。液供給路60は公知のフォトリソ・エッチング工程により形成する。すなわち、液供給路60を形成するとき、液供給路60が形成される部分が開口したレジストをマスクにして、アクチュエータ基板10表面の酸化膜・窒化膜積層膜は通常のドライエッチャーで、シリコン基板11はシリコンディープドライエッチャーにてエッチングを行う。他に、ウォータレーザやサンドブラスト等で形成する方法によっても可能である。また、液供給路接液膜61は、アクチュエータ基板10の裏面側よりPBO前駆体を含んだ溶液をスプレーコートにて液供給路60内壁に付着させ、その後ソフトベーク及びハードベークにより溶媒揮発とPBO化を行う。
【0044】
次に、図15(c)に示すように、第二の開放孔51bを開口する(ステップS5)。この第二の開放孔51bは、例えば、あらかじめその部分を開口していた振動板接液膜25をマスクにドライエッチングにより開口する。このとき、上記開口よりも一回り大きく開口したハードマスク55で第二の開放孔51b付近以外をカバーしてドライエッチング時のダメージを防止する。その後、図15(d)に示すように、酸素プラズマによるエッチングにてダメージを受けた部分の振動板接液膜25と酸化膜ドライエッチング時のデポ物を除去する。
【0045】
次に、空隙内疎水化処理を行う(ステップS6)。この空隙内疎水化処理では、第二の開放孔51bから連通路53を通じ空隙15aへのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)などの疎水膜となるガス導入を行って振動板側絶縁膜21と固定電極側絶縁膜14の空隙15aに面した部分の疎水化処理を行う。このとき、特許文献1に開示されているように、前処理(乾燥)工程を行い、表面に付着している水分等を可能な限り低減することが望ましい。例えば、ドライエアーを供給した処理槽内にアクチュエータ基板10を放置し、処理槽内を真空にして加熱する真空加熱工程、処理槽内を真空雰囲気と窒素雰囲気に交互に切り換える工程及びこれらの組合せを前処理工程として採用することができる。また、疎水膜形成工程も、特許文献1に開示されているものと同様に、アクチュエータ基板10と液相のHMDSを入れた容器を処理槽内に置き、常温、常圧の状態でHMDS蒸気が拡散により十分空隙15a内に侵入するまで放置する。または、減圧にした処理槽内で液相のHMDSを入れた容器中にアクチュエータ基板10を浸漬させて液相のHMDSを空隙15a内に導入し、その後、別の処理槽にてアクチュエータ基板10を加熱し、液相のHMDSを空隙内15a内から蒸発させ除去しても良い。このとき、所望の濃度のHMDS蒸気が空隙15a内に残るように加熱処理槽内には適度なHMDS蒸気を導入しておく。
【0046】
次に、図15(e)に示すように、第二の開放孔51bを封止する(ステップS7)。第二の開放孔51bを封止する工程では、疎水化処理槽内からアクチュエータ基板10を取り出し、速やかに第二の開放孔51bを封止剤54aにて気密封止する。この封止剤54aとしては紫外線硬化型のエポキシ樹脂等を用いることができる。その後、図15(f)に示すように、液室基板20とアクチュエータ基板10を貼り合わせ、ノズル孔41と開口部42を有するノズル板40を公知例と同様に接着材にて接着する(ステップS8)。そして、図15(g)に示すように、疎水剤保持部52にノズル板40の開口部42から液体の疎水剤52aとなるHMDSを注入し、開口部を封止剤54bで封止する(ステップS9)。この封止剤54bには封止剤54aと同様に紫外線硬化型のエポキシ樹脂等を用いることができる。このようにして疎水剤52aを封止剤54bで封止する。
【0047】
次に、第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51b及び連通路53の配置例について、図16〜図19を参照して説明する。図16は各空隙15aの片側端部から連通路53を介して、チップ内に1箇所設けた第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bに連通させる例を示し、図17はチップ内の両側2箇所に第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bを設け、疎水剤をより短時間で導入できるようにすると同時に、空隙15a内のHMDS濃度が低下の抑制をより安定して行えるようにしたものである。図18は各空隙15aの両端部から連通路53を介して両側2箇所、チップ内の計4箇所に第一の大気開放孔51aを設けさらに効果的にしたものである。図19は各空隙15aの両端部から連通路53を設けた配置は、図18の配置例と同様であるが、第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bを両側の連通路53で共通として、大気開放孔の数を減らしたものである。図19に示す配置の場合、疎水剤の導入やHMDS濃度低下の抑制は図18の構成と同等のまま、封止が必要な箇所を減らすことで、封止に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、図示は省略したが、特許文献2に開示されるように、各空隙15aをそれぞれ所要数毎にグループ化し空隙群毎にサブ共通連通路を枝分かれさせながら形成する様に配置して各空隙15aへの疎水剤導入を均一に行うえるようにしても良い。また、図11〜図13に示した開放孔51と疎水剤保持部52の配置の場合も同様であるし、他にも様々な配置例が考えられる。
【0048】
次に第2の液滴吐出ヘッド1aについて図20のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の部品構成を示す分解斜視図と、図21のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の透視状態平面配置図及び図22に示した図21のY21−Y21断面図を参照して説明する。
【0049】
液滴吐出ヘッド1aの静電型アクチュエータは液滴吐出ヘッド1と同様な構成であるが、開放孔51を一種類のみ設けた構成である。液滴吐出ヘッド1の静電型アクチュエータは第一の開放孔51aを開口し空隙15a内と外界を連通させることで常圧環境での振動板20の撓みを無くし、その状態で塗布法にて振動板接液膜25の形成を行ったが、液滴吐出ヘッド1aの静電型アクチュエータは真空蒸着法にてポリパラキシリレン膜を成膜して振動板接液膜25とした。そのため、振動板接液膜25形成時に空隙15a内を大気圧にする必要が無く、開放孔51は一種類のみとすることができる。また、吐出液の種類によっては振動板接液膜25が不要であるが、その場合もこのような構成とすることができる。
【0050】
この液滴吐出ヘッド1aの静電型アクチュエータの大気開放孔51と疎水剤保持部52を形成して疎水剤52aを封止する製造工程を図23のフローチャートと図24の工程図を参照して説明する。
【0051】
まず、図24(a)に示すように、アクチュエータ基板10の主要部を犠牲層プロセスによりを形成する(ステップS11)。このプロセスで犠牲層除去孔を減圧CVD法による酸化シリコン膜にて封止したので、この状態では空隙15a内は減圧に保持されている。次に、アクチュエータ基板10に液供給路60をフォトリソ・エッチング工程により形成する(ステップS12)。次に、図24(b)に示すように、振動板接液膜25と液供給路接液膜61となるポリパラキシリレン膜を真空蒸着法により同時に形成する(ステップS13)。この方法では蒸着チャンバー内で露出している部分はほぼ均一に成膜が行われる。成膜後に、通常のフォトリソ・エッチングプロセスにより、例えば外部との電気的接続部29上など不要な部分に成膜されたポリパラキシリレンを除去する。このとき、同時に開放孔51を開孔する部分のポリパラキシリレンも除去する。エッチングは酸素プラズマにて容易に行われる。なお、マスクとなるレジストもエッチングされるが、ポリパラキシリレン膜より十分に厚くしておくことで、マスクとして使用可能である。その後、レジスト除去は剥離液にて行う。次に、図24(c)に示すように、あらかじめ開放孔51が形成される部分が開口した振動板接液膜25をマスクにドライエッチングにより開口する(ステップS14)。このとき、上記開口よりも一回り大きく開口したハードマスク55により開放孔51付近以外をカバーしてドライエッチング時のダメージを防止する。その後、酸素プラズマによるエッチングにてダメージを受けた部分の振動板接液膜25と酸化膜ドライエッチング時のデポ物を除去する。
【0052】
その後、図24(d)に示すように、開放孔51から連通路53を通じ空隙15aへのHMDSなどの疎水膜となるガス導入を行い振動板側絶縁膜21と固定電極側絶縁膜14の空隙15aに面した部分の疎水化処理を行う(ステップS15)。この疎水化処理では所望の濃度のHMDS蒸気が空隙15a内に残るようにしておく。次に、疎水化処理槽内からアクチュエータ基板10を取り出し、速やかに開放孔51を封止剤54aにて気密封止する(ステップS16)。この封止剤54aとしては、前述したように紫外線硬化型のエポキシ樹脂等を用いることができる。以下、液室基板30とアクチュエータ基板10を貼り合わせ(ステップS17)、疎水剤保持部52にノズル板40の開口部42から液体の疎水剤52aとなるHMDSを注入し、開口部を封止剤54bで封止する(ステップS18)。
【0053】
次に第3の液滴吐出ヘッド1bについて図25〜図27の断面図を参照して説明する。液滴吐出ヘッド1bの静電型アクチュエータは、図25〜図27のいずれの場合も、液体疎水剤保持部52に吸収体を配置し、吸収体に液体疎水剤を保持させるとともに第二の開放孔51bは封止せず開放のままにしたものである。このような構成とすることにより、疎水剤保持部52から空隙15aへ疎水剤蒸気の供給を行い易くできる。それ以外は液滴吐出ヘッド1の静電型アクチュエータ、と同様である。また、製造工程は、図25に示した構成では空隙内疎水化処理後に第二の開放孔51bを封止する工程を省略し、吸収体を開放孔51を覆うように配置することで得られる。また、図26に示した構成では第二の開放孔51bを封止する工程を省略し、あらかじめ液室基板30に設けた疎水剤保持部52に中に配置しておくことで得られる。また、図27に示した構成は、吸収体を配置後アクチュエータ基板10と液室基板30を貼り合わせる前に吸収体に疎水剤を含ませることで得られる。さらに、図示は省略したが図27の構成で吸収体を液室基板30側に配置することも可能である。
【0054】
次に第4の液滴吐出ヘッド1cについて図28のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の部品構成を示す分解斜視図と、図29のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の透視状態平面配置図と図30に示した図29のX41−X41断面図及び図31に示した図29のY42−Y42断面図を参照して説明する。
【0055】
液滴吐出ヘッド1から液滴吐出ヘッド1bの静電型アクチュエータは、液室基板30に液体疎水剤保持部52を形成しているのに対して、液滴吐出ヘッド1cは吸収体を液体疎水剤保持部とし、その周りを樹脂材料等による封止剤54bにて封止した構成としている。液体疎水剤は吸収体に保持されているので、図32の断面図に示すように、第一の開放孔51aを封止剤54aで封止しない構成としてもよい。また、開放孔51と液体疎水剤保持部52と連通路43の配置については、色々な変形例を採用することができる。また、静電アクチュエータを液滴吐出ヘッド以外の用途に使う場合にもこのような構成は適用できる。
【0056】
この液滴吐出ヘッド1cの静電型アクチュエータの大気開放孔51と疎水剤保持部52を形成する製造工程を図33のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
アクチュエータ基板10の主要部を形成して第二の開放孔封止までは液滴吐出ヘッド1の静電型アクチュエータの製造工程と同様である(ステップS21〜S27)。その後、吸収体を設置して液体疎水剤注入・封止を行ってから液室基板30とアクチュエータ基板10貼り合わせる(ステップS28〜S30)。この場合、特に第二の開放孔51bを封止剤54aで封止しない構成について、空隙内疎水化処理の後は、疎水剤は疎水剤保持部から再度供給されるので空隙内から抜けても大きな問題とはならないが、空隙15a内に水分が入り込むことは避ける必要があるので、このような工程としたのである。もちろん、保管や工程の環境を制御して、液室基板30とアクチュエータ基板10を貼り合わせた後に液体疎水剤注入した後に吸収体設置・液体疎水剤注入・封止を行っても良い。
【0058】
次に第5の液滴吐出ヘッド1dについて図34のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の部品構成を示す分解斜視図と、図35のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の透視状態平面配置図と、図36に示した図35のX51−X51断面図と、図37に示した図35のX52−X52断面図と、図38に示した図35のX53−X53断面図と、図39に示した図35のY51−Y51断面図及び図40の液体疎水剤保持部周辺の部分拡大平面図を参照して説明する。
【0059】
液滴吐出ヘッド1dの静電型アクチュエータは、アクチュエータ基板10に液体疎水剤保持部52を形成している。この液体疎水剤保持部52は第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bよりも空隙15aに近い側に形成する。なお、この配置例もいろいろな配置を採用しても良い。
【0060】
この疎水剤保持部52は連通路53と同じく空隙15aを形成するための犠牲層と断面積増加のために下部電極層をエッチングして形成する。また、断面積増加の必要がない場合は、犠牲層だけで形成しても良い。また、空隙15aが電極基板に形成した凹部と振動板形成基板を貼り合わせて形成される構成の場合についても、疎水剤保持部52と連通路53を空隙15aと同様に形成することができる。
【0061】
また、液体疎水剤を保持する疎水剤保持部52は、図40に示すように、例えば微細な管521を複数束ねる等で表面積を増やした構造とし、毛管力により液体疎水剤を保持する構造とし、疎水剤保持部52の空隙側522は蛇行形状として空隙15aに液体の疎水剤が流れ込まないようにすると良い。このように液体疎水剤を保持する疎水剤保持部52を構成して空隙内疎水化工程で疎水剤が導入されにくい場合は、疎水剤保持部52と並列に開放孔51を形成すれば良い。
【0062】
この静電型アクチュエータの製造工程は、図41のフローチャートに示すように、液滴吐出ヘッド1の製造工程と概ね同一の工程であるが、空隙内疎水化処理したのち(ステップS31〜S36)、液体疎水剤を第二の開放孔51bより液体疎水剤保持部52に注入し、その後、第二の開放孔51bを封止する(ステップS37,S38)。このように空隙内疎水化処理直後に液体疎水剤注入と封止を行えることから、疎水化処理後空隙内に水分が入らないようにすることが容易である。
【0063】
次に液滴吐出ヘッド1を搭載したインクジェット記録装置の一例について図42の斜視図と図43の機構部の構成を示す側面図を参照して説明する。このインクジェット記録装置90は、装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ98とキャリッジ98に搭載した液滴吐出ヘッド1及び液滴吐出ヘッド1へインクを供給するインクカートリッジ99等で構成される印字機構部91等を収納し、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙92を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)93を抜き差し自在に装着されている。また、用紙92を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ94を有し、給紙カセット93あるいは手差しトレイ94から給送される用紙92を取り込み、印字機構部91によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ95に排紙する。
【0064】
印字機構部91は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド96と従ガイドロッド97とでキャリッジ98を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ98にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッド1を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ98には液滴吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ99を交換可能に装着している。
【0065】
インクカートリッジ99は上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド1へインクを供給する供給口が設けられ、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッド1としては各色の液滴吐出ヘッド1を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液室吐出ヘッドでもよい。
【0066】
ここで、キャリッジ98は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド96に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド97に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ98を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ101で回転駆動される駆動プーリ102と従動プーリ103との間にタイミングベルト104を張装し、このタイミングベルト104をキャリッジ98に固定しており、主走査モータ101の正逆回転によりキャリッジ98が往復駆動される。
【0067】
一方、給紙カセット93にセットした用紙92を液滴吐出ヘッド1の下方側に搬送するために、給紙カセット93から用紙92を分離給装する給紙ローラ105及びフリクションパッド106と、用紙92を案内するガイド部材107と、給紙された用紙92を反転させて搬送する搬送ローラ108と、この搬送ローラ108の周面に押し付けられる搬送コロ109及び搬送ローラ108からの用紙92の送り出し角度を規定する先端コロ110とを有する。搬送ローラ108は副走査モータによってギヤ列を介して回転駆動される。
【0068】
そして、キャリッジ98の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ108から送り出された用紙92を液滴吐出ヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材111を設けている。この印写受け部材111の用紙搬送方向下流側には、用紙92を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ112と拍車113を設け、さらに用紙92を排紙トレイ95に送り出す排紙ローラ114と拍車115と、排紙経路を形成するガイド部材116,117とを配設している。
【0069】
このインクジェット記録装置90で記録時には、キャリッジ98を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙92にインクを吐出して1行分を記録し、その後、用紙92を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙92の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙92を排紙する。
【0070】
また、キャリッジ98の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ98は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0071】
また、吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド1の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0072】
このように、このインクジェット記録装置90においては前記静電型アクチュエータを具備した液滴吐出ヘッド1を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。また低電圧で駆動できるヘッドを搭載するので、インクジェット記録装置全体の消費電力も低減できる。
【0073】
前記説明ではインクジェット記録装置90に液滴吐出ヘッド1を使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する装置に液滴吐出ヘッド1を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図3】図2のX11−X11断面図である。
【図4】図2のX12−X12断面図である。
【図5】図2のX13−X13断面図である。
【図6】図2のY11−Y11断面図である。
【図7】図2のY12−Y12断面図である。
【図8】図2のY13−Y13断面図である。
【図9】アクチュエータ基板の開放孔周辺の拡大図である。
【図10】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第2の構成を示す配置図である。
【図11】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第3の構成を示す配置図である。
【図12】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第4の構成を示す配置図である。
【図13】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第5の構成を示す配置図である。
【図14】第一と第二の大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示すフローチャートである。
【図15】第一と第二の大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示す工程図である。
【図16】第一と第二の大気開放孔及び連通路の配置を示す配置図である。
【図17】第一と第二の大気開放孔及び連通路の第2の配置を示す配置図である。
【図18】第一と第二の大気開放孔及び連通路の第3の配置を示す配置図である。
【図19】第一と第二の大気開放孔及び連通路の第4の配置を示す配置図である。
【図20】第2の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図21】第2の液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図22】図21のY21−Y21断面図である。
【図23】第2の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示すフローチャートである。
【図24】第2の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示す工程図である。
【図25】第3の液滴吐出ユニットにおける疎水剤保持部の構成を示す断面図である。
【図26】第3の液滴吐出ユニットにおける疎水剤保持部の第2の構成を示す断面図である。
【図27】第3の液滴吐出ユニットにおける疎水剤保持部の第3の構成を示す断面図である。
【図28】第4の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図29】第4の液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図30】図29のX41−X41断面図である。
【図31】図29のY42−Y42断面図である。
【図32】第4の液滴吐出ユニットにおける第一と第二の開放孔の部分を示す断面図である。
【図33】第4の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成する製造工程を示すフローチャートである。
【図34】第5の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図35】第5の液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図36】図35のX51−X51断面図である。
【図37】図35のX52−X52断面図である。
【図38】図35のX53−X53断面図である。
【図39】図35のY51−Y51断面図である。
【図40】第5の液滴吐出ヘッドにおける液体疎水剤保持部周辺の構成を示す拡大平面図である。
【図41】第5の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示すフローチャートである。
【図42】液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図43】インクジェット記録装置の機構部の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
1;液滴吐出ヘッド、10;アクチュエータ基板、11;シリコン基板、
12;基板絶縁膜、13;固定電極層、13a;固定電極、14;固定電極側絶縁膜、
15a;空隙、20;振動板、21;振動板側絶縁膜、22;振動板電極層、
22a;振動板電極、30;液室基板、31;共通液室、32;流体抵抗部、
33;加圧液室、34;連通管、40;ノズル板、41;ノズル孔、42;開口部、
51;開放孔、51a;第一の開放孔、51b;第二の開放孔、52;疎水剤保持部、
53;連通路、54;封止剤、60;液供給路、90;インクジェット記録装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電型アクチュエータとその製造方法と液滴吐出ヘッド及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタやファクシミリ装置、複写装置、プロッタ等の画像記録装置あるいは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(吐出室、圧力室、インク流路とも称される)と、この液室内のインクを加圧するエネルギーを発生するアクチュエータ手段とを備え、アクチュエータ手段で発生するエネルギーによって液室内の記録液に圧力を作用させてノズルから液滴を吐出させる。
【0003】
液滴吐出ヘッドとしては、電気機械変換素子などの圧電型アクチュエータをもちいたもの、電気熱変換素子に膜沸騰を利用するサーマル型アクチュエータを用いたもの、振動板と電極間の静電力を利用する静電型アクチュエータを用いるものなどがあり、この中でも静電型アクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドは、小型化、高速化、高密度化、省電力化において他の方式の液滴吐出ヘッドに比べて優位であることから、現在開発が盛んに行なわれている。
【0004】
静電駆動方式の液滴吐出ヘッドなどで使用する静電型アクチュエータの駆動には振動板と対向電極を当接させない非当接駆動と、振動板と対向電極を当接させる当接駆動とがある。振動板と対向電極を当接させない非当接駆動では、大きな発生力を得るためには当接駆動の場合より非常に大きな電圧が必要となり、駆動素子等のコストが増大してしまう。これに対して、振動板と対向電極を当接させる当接駆動では大きな発生力を得られるが、振動板と対向電極を当接させる当接駆動を繰り返し行うと、静電吸引特性あるいは静電反発特性が低下する現象や電極表面の絶縁膜が剥がれることにより絶縁性が阻害され静電型アクチュエータが破壊する等の現象が見られる。
【0005】
この静電型アクチュエータの当接駆動時における弊害を回避するために、特許文献1に示されたインクジェットヘッドは、アクチュエータ表面を疎水化処理することが行われている。さらに、疎水膜の十分な耐久性を得るために、所定濃度以上の疎水剤の気体(蒸気)を振動板と電極の間の空隙内に気密封止することが行われている。このとき、複数の空隙を連通路(バイパス管)で繋ぎ、一箇所または少数の複数箇所から疎水剤導入を行うことで、短時間で封止を行うことを可能とするとともに、気密性の向上も可能としている。
【0006】
また、特許文献2に示された静電型アクチュエータは、大気開放孔(疎水剤導入孔)を封止剤で封止するとき、毛細管現象によって、封止剤が連通路を通じて振動板と電極の間の空隙内にまで達し、正常な動作ができなくなることを防止するため、封止剤の連通路内への流入に対して抵抗となり、かつ、距離を長くするための蛇行通路を形成し、封止剤の空隙内への浸入を防止するようにしている。
【0007】
また、特許文献3に示された静電型アクチュエータは、犠牲層エッチングで振動板と電極の間の空隙を形成したものにおいて、振動板と電極の間の空隙内部に疎水膜を形成する疎水剤の蒸気を効率的に空隙内に導入するために、個別電極形成層をパターニングするときに共通連通路を形成するための部分を形成し、電極形成層上の絶縁膜の共通連通路を形成する場所に開口を形成し、その上に堆積された犠牲層に共通連通路を形成するための部分を形成することにより、電極形成層と犠牲層で共通連通路を形成するための部分を一体的に形成した後に犠牲層エッチングで除去して空隙よりも高さの高い共通連通路を形成するようにしている。
【0008】
さらに、特許文献2や特許文献3には、疎水剤の効率的な導入および空隙間の均一性向上のため、大気開放孔と連通路の配置についても各種の提案がされている。
【特許文献1】特許第4038864号公報
【特許文献2】特開2007−77864号公報
【特許文献3】特開2006−115624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように振動板と電極の間の空隙に疎水剤の蒸気を導入しても、大気開放孔(疎水剤導入孔)の封止が完全でないと、空隙内の疎水剤濃度が経時的に低下して静電型アクチュエータの耐久性が劣化するという短所がある。
【0010】
この発明は、このような短所を改善し、大気開放孔(疎水剤導入孔)の封止性が完全でない場合でも、空隙内の疎水剤濃度の経時的な低下を防止して耐久性劣化を防止することができる静電型アクチュエータとその製造方法と液滴吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の静電型アクチュエータは、少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、前記空隙に連通する連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面には疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする。
【0012】
前記空隙に連通した連通路と疎水剤保持部の間に、液体の疎水剤を通さないが疎水剤の蒸気を通す膜を設けることを特徴とする。
【0013】
また、前記疎水剤保持部に吸収体を配置し、吸収体に液体の疎水剤を保持させると良い。
【0014】
この発明の他の静電型アクチュエータは、少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、前記空隙に連通する連通路と、該連通路と大気開放孔を有する大気開放部との間に設けられた疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面に疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする。
【0015】
この発明の他の静電型アクチュエータにおいて、前記疎水剤保持部の前記連通路側は蛇行形状として前記空隙に液体の疎水剤が流れ込まないようにすると良い。
【0016】
この発明の静電型アクチュエータの製造方法は、少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極と、前記振動板及び前記固定電極の前記空隙側の表面に形成された疎水膜と、空隙に連通して設けられた連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータの製造方法であって、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入した後、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を注入して封止することを特徴とする。
【0017】
この発明の液滴吐出ヘッドは、前記静電型アクチュエータを有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させることを特徴とする。
【0018】
この発明の画像形成装置は、前記液滴吐出ヘッドを有し、該液滴吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出させて画像を記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明の静電型アクチュエータは、振動板と固定電極の空隙側の表面に疎水膜を形成し、空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入するとともに、空隙を連通する連通路に接して液体の疎水剤を保持する疎水剤保持部を設けたから、空隙内における疎水剤の蒸気の封止が僅かに不完全であっても液体の疎水剤を保持した疎水剤保持部より疎水剤の蒸気が供給されるので空隙内の疎水剤濃度の低下を防止して静電型アクチュエータの耐久性が劣化することを防ぐことができる。
【0020】
また、空隙に連通した連通路と疎水剤保持部の間に、液体の疎水剤を通さないが疎水剤の蒸気を通す膜を設けることにより、空隙内に液体の疎水剤が浸入することを防止することができ、静電型アクチュエータを安定して駆動させることができる。
【0021】
さらに、疎水剤保持部に吸収体を配置し、吸収体に疎水剤を保持させることにより、空隙内に液体の疎水剤が浸入することを防止することができる。
【0022】
また、空隙に連通する連通路と大気開放孔を有する大気開放部との間に疎水剤保持部を設けて疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持することにより、疎水剤保持部を空隙と連通路と同時に形成することができ、製造工程を簡略化することができる。また、疎水剤保持部の連通路側は蛇行形状にすることにより、空隙に液体の疎水剤が流れ込むことを確実に防いで、静電型アクチュエータを安定して駆動させることができる。
【0023】
また、この静電型アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドは、耐久性を向上するとともに安定して液滴を吐出することができ、信頼性を向上することができる。
【0024】
さらに、この液滴吐出ヘッドを有し、液滴吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出させて画像を記録する画像形成装置は、インク滴を安定して吐出するから、良質な画像を安定して形成するとともに耐久性と信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1〜図9はこの発明の液滴吐出ヘッドの構成を示し、図1は分解斜視図、図2は透視状態を示す平面配置図、図3は図2のX11−X11断面図、図4は図2のX12−X12断面図、図5は図2のX13−X13断面図、図6は図2のY11−Y11断面図、図7は図2のY12−Y12断面図、図8は図2のY13−Y13断面図、図9は開放孔周辺の拡大図である。
【0026】
液滴吐出ヘッド1は圧力発生手段として静電型アクチュエータを使用したものであり、アクチュエータ基板10と液室基板30及び複数のノズル孔41を有するノズル板40と図示していないフレームとFPCとドライバーICで構成されている。
【0027】
ノズル板40は、例えば、紙面側(図2の上面側)に撥水膜をコーティングしたポリイミドフィルムであり、ノズル孔41はノズル板40を液室基板30に接着したのち、レーザ加工にて開口したものである。また、液室基板30の液体疎水剤保持部(液体疎水剤注入部)52と対応する部分には開口部42を有する。この開口部42は開口させる必要のある部分のみ抜く形で開口しているが、直線的に切り出すようにしても良い。また、ノズル板40と液室基板30を接着したのち開口しても良いし、あらかじめ開口しているものを接着しても良い。
【0028】
液室基板30には、結晶方位(110)のシリコン基板を用い、ノズル板40と反対側の面に共通液室31と流体抵抗部32及び加圧液室33が形成されている。また、ノズル孔41と加圧液室33を連通させるための連通管34が液室基板30を貫通して形成されている。このような構成にすることにより、液室基板30の厚みよりも加圧液室33の高さを低くすることができ、ハンドリングの容易な厚さの基板を用いたまま加圧液室33の高さを吐出特性面から最適化することが可能となっている。この液室基板30の厚みは例えば400μmで加圧液室30の高さは80μmとしている。また、液室基板30に結晶方位(110)のシリコン基板を用いているので、加圧液室33等を公知の異方性エッチングにて高精度に加工することが可能となっている。また、図4に示すように、加圧液室33その他を形成した後、熱酸化により表面に液室基板接液膜35となる酸化膜を形成し、濡れ性の向上とインク等の吐出液による基材であるシリコンの腐食防止を図っている。このとき、図示しないが、液室基板30のノズル板40との接着面側にはダミーパターンを設けておくことにより熱酸化後に酸化膜の内部応力により基板が反ることを防止している。ここで、吐出液の種類によっては液室基板接液膜35が不要な場合もあるし、他の膜とする場合もある。
【0029】
アクチュエータ基板10は、結晶方位(100)のシリコン基板11の上に基板絶縁膜12を介して高精度の空隙形成が可能な犠牲層プロセスにて形成された振動板20と空隙15aと固定電極層13に形成された固定電極13aからなる静電型アクチュエータが形成されている。このアクチュエータ基板10にはノズル孔41の並び方向に各空隙15aを相互に連通する連通路53が形成され、連通路53の他端部は連通路53内とアクチュエータ基板10の外部とを繋ぐ開放孔51に連通されている。また、アクチュエータ基板10の液室基板30と反対の面(以後、裏面とする)側から吐出液を供給するため、液供給路60が貫通して設けられ、図6に示すように、その表面に液供給路接液膜61が形成されている。
【0030】
振動板20は積層膜で形成され、図3に示すように、空隙15a側から振動板側絶縁膜21と振動板電極層22と引張り応力膜23と犠牲層除去孔封止膜24及び接液膜25により形成されている。振動板側絶縁膜21は振動板20と固定電極13aが当接したときの短絡を防止するものであり、酸化シリコン膜で形成されている。振動板電極層22は固定電極13aとの間に電圧印可し静電力を発生させる振動板電極22aを有し、例えばヒ素ドープポリシリコン膜で形成されている。引張り応力膜23は振動板20を全体として引っ張り応力とすることで、撓まず張った状態にすることおよび駆動時の反発力確保するものであり、例えば窒化シリコン膜で形成されている。犠牲層除去孔封止膜24は犠牲層除去孔の封止と引張り応力膜23の割れ防止を兼ねるものであり、例えば酸化シリコン膜で形成されている。接液膜25はンク等の吐出液による腐食を防止するため例えばPBO(ポリベンゾオキサゾール)で形成されている。ここで振動板電極層22と引張り応力膜23の間に振動板撓み防止膜として酸化シリコン膜を設ける場合もある。
【0031】
固定電極層13にはリンドープのポリシリコンを用い、その空隙15a側には絶縁膜として酸化シリコン膜を形成している。また、固定電極層13とシリコン基板11の間にも基板絶縁膜12として酸化シリコン膜が形成され、固定電極層13とシリコン基板11間の絶縁を確保している。ここで、振動板電極22aと固定電極13aのどちらか一方をノズル(チャネル)枚に分離した個別電極、他方を複数ノズル(チャネル)、例えば全ノズル(チャネル)で共通の共通電極として吐出させるノズル(チャネル)の選択が可能であるが、ここでは振動板電極22aを共通電極とし固定電極13aを個別電極とした。
【0032】
空隙15aおよび連通路53は、ポリシリコンを犠牲層に用いた犠牲層プロセスにて形成した。この犠牲層プロセスにおける犠牲層除去孔やその周囲の詳細構造については図示していないが、特許文献2と同様な構成としている。振動板電極22aや固定電極13aは犠牲層と同じくポリシリコンにて形成されているが、先に述べたように、空隙15aとなる部分に面している部分は絶縁膜として設けたシリコン酸化膜で覆われているので、ポリシリコンとシリコン酸化膜で十分な選択性な選択性を有するエッチャント、例えばTMA(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液を用いて犠牲層除去を行うことにより犠牲層除去時にエッチングされることを防ぐ。
【0033】
連通路53については、特許文献3に開示されているように、固定電極層13のポリシリコンも連通路形成の犠牲層として利用することにより連通路53のコンダクタンス増加を図っている。特許文献1〜3と同様に連通路53を通してヘキサメチルジシラザン(HMDS)蒸気を導入することで、振動板20と固定電極側絶縁膜14の空隙15a側の表面に疎水膜を形成し、さらに空隙15a中にはHMDS蒸気を封入して静電アクチュエータの駆動耐久性を確保している。
【0034】
アクチュエータ基板10の開放孔51には第一の開放孔51aと第二の開放孔51bを有し、第一の開放孔51aは振動板接液膜25の形成時に同時に形成されたPBO膜(以下、振動板接液膜25と記載する)で覆われ、第二の開放孔51bは例えば紫外線硬化型のエポキシ樹脂からなる封止剤54aによって封止されている。第一の開放孔51aは、図9に示すように、開口径2μm程度の複数のものが形成されている。また、第一の開放孔51a上を覆う振動板接液膜25は第一の開放孔51a内には入らずに表面だけを覆うように形成している。一方、第二の開放孔51bは開口径30μm程度の大きさとし、その付近は蛇行通路とし、封止剤54aが第二の開放孔51bと蛇行通路内にある程度入り込む様にしている。
【0035】
第二の開放孔51bを封止する封止剤54aの部分の液室基板30には、図4に示すように窪み37を形成し、封止剤54aの盛り上がりによるアクチュエータ基板10と液室基板30の接合不良が起きないようにしている。ここで封止剤54aが盛り上がらないのであれば、この窪み37は不要である。また、図5に示すように、第一の開放孔51aを覆うように貫通部が設けられて疎水剤保持部52としている。疎水剤保持部52中に液体の疎水剤52aが保持され、疎水剤保持部52のノズル板40側は封止剤54bで封止している。
【0036】
なお、図では、ノズル孔42を上に描いているが、例えば記録液吐出ヘッドとして画像形成に搭載されるときにはノズル孔42を下にして搭載される。したがって装置への搭載状態では、ノズル孔42側に液体の疎水剤52aが溜まり、アクチュエータ基板10側が空間(気体部分)となる。第一の開放孔51aを覆う振動板接液膜25の形成材料であるPBO膜は液体は通さないが若干の透気性があり、空隙15aと連通路53内のHMDS濃度が低下した場合にはBBO膜を透過してHMDS蒸気が供給される。
【0037】
このように、空隙15aを連通する連通路53に接して液体の疎水剤52aを保持する疎水剤保持部52を設けているので、封止が僅かに不完全であっても液体の疎水剤保持部52より疎水剤蒸気が供給されて、空隙15a内の疎水剤濃度の低下することを防いで静電アクチュエータの耐久性劣化を防止できる。ここで液体疎水剤保持部52は液室基板30に形成された単なる空間であるが、この部分に例えば多孔質体からなる吸収体を配置して液体疎水剤を保持するようにしても良い。
【0038】
この開放孔51と液体の疎水剤52aを保持する疎水剤保持部52の他の構成と配置を図10〜図13に示す。図10に示すように、疎水剤保持部52の形状を封止剤54bで封止しやすいようにノズル側を絞った構成とすることができる。また、図11に示すように、第一の開放孔51aと第二の開放孔51bの両方を覆うように疎水剤保持部52を形成しても良い。また、図12に示すように、第二の開放孔51bを第一の開放孔51aよりも空隙15aに連通する連通路53側に形成し、第二の開放孔51bを覆うように液体の疎水剤52aを保持する疎水剤保持部52を形成しても良い。このような構成とした場合、第二の開放孔51b部分の透気性は封止剤54aの種類や塗布厚みや蛇行への入り込み有無あるいは入り込み量等にもよるが、第一の開放孔51a部分の透気性よりも(材料の透過率・厚さ・断面積を含めて)極めて小さいので、第二の開放孔51b部分の極めて小さい封止の不完全性のみ補われ、他部分の封止不完全性等による空隙15a内のHMDS濃度低下を補うようにはなっていない。一方、第一の開放孔51a部分で万一振動板接液膜25が開放孔51aから内部に入り込んだ場合でも、その影響は受けないで済む。
【0039】
前記説明では、第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bを直列に配置した例を示したが、図13に示すように、第一の開放孔51aと第二の開放孔51bを並列に配置しても良い。
【0040】
第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bと疎水剤保持部52を形成して疎水剤52aを封止する製造工程を図14のフローチャートと図15の工程図を参照して説明する。
【0041】
まず、公知例と同様に犠牲層プロセスを用いてアクチュエータ基板10の静電アクチュエータ主要部を形成する(ステップS1)。この静電アクチュエータ主要部を形成するとき犠牲層除去孔を減圧CVD法による酸化シリコン膜にて封止したので、この状態では空隙15a内は減圧に保持され、常温・常圧の環境下では振動板20は大気圧に押され固定電極13a側に撓んでいる。次に、図15(a)に示すように、振動板20に第一の開放孔51aをフォトリソ・エッチングによって開口する(ステップS2)。これにより空隙15a内の圧力を外界圧力と同一にすることができ、振動板20の撓みが解消される。
【0042】
次に、図15(b)に示すように、振動板接液膜25となるPBO膜を塗布法にて形成する(ステップS3)。この振動板接液膜25を形成するとき、PBOとなる前駆体を含んだ溶液をスピンコートにてアクチュエータ基板10の表面に塗布した後、ソフトベークを行い、溶媒を揮発させる。そしてPBO不要部をマスク露光にて露光してアルカリ溶液に浸漬し露光部のPBO前駆体膜を除去し、320℃程度の温度でハードベークを行いPBO化する。このように感光性材料を用いて容易に所望の部分にのみPBO膜を形成することができる。この振動板接液膜25の形成により第一の開放孔51aもPBO膜により覆われる。このPBO膜は透気性があるが、液体は透過しないので、後工程でアクチュエータ基板10表面が液体、例えばレジスト溶液やエッチング液、剥離液、純水、液体疎水剤等にさらされても、連通路53や空隙15a等にそれらの液体が入り込むことを防ぐ。
【0043】
次に、アクチュエータ基板10に液供給路60と液供給路接液膜61を形成する(ステップS4)。液供給路60は公知のフォトリソ・エッチング工程により形成する。すなわち、液供給路60を形成するとき、液供給路60が形成される部分が開口したレジストをマスクにして、アクチュエータ基板10表面の酸化膜・窒化膜積層膜は通常のドライエッチャーで、シリコン基板11はシリコンディープドライエッチャーにてエッチングを行う。他に、ウォータレーザやサンドブラスト等で形成する方法によっても可能である。また、液供給路接液膜61は、アクチュエータ基板10の裏面側よりPBO前駆体を含んだ溶液をスプレーコートにて液供給路60内壁に付着させ、その後ソフトベーク及びハードベークにより溶媒揮発とPBO化を行う。
【0044】
次に、図15(c)に示すように、第二の開放孔51bを開口する(ステップS5)。この第二の開放孔51bは、例えば、あらかじめその部分を開口していた振動板接液膜25をマスクにドライエッチングにより開口する。このとき、上記開口よりも一回り大きく開口したハードマスク55で第二の開放孔51b付近以外をカバーしてドライエッチング時のダメージを防止する。その後、図15(d)に示すように、酸素プラズマによるエッチングにてダメージを受けた部分の振動板接液膜25と酸化膜ドライエッチング時のデポ物を除去する。
【0045】
次に、空隙内疎水化処理を行う(ステップS6)。この空隙内疎水化処理では、第二の開放孔51bから連通路53を通じ空隙15aへのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)などの疎水膜となるガス導入を行って振動板側絶縁膜21と固定電極側絶縁膜14の空隙15aに面した部分の疎水化処理を行う。このとき、特許文献1に開示されているように、前処理(乾燥)工程を行い、表面に付着している水分等を可能な限り低減することが望ましい。例えば、ドライエアーを供給した処理槽内にアクチュエータ基板10を放置し、処理槽内を真空にして加熱する真空加熱工程、処理槽内を真空雰囲気と窒素雰囲気に交互に切り換える工程及びこれらの組合せを前処理工程として採用することができる。また、疎水膜形成工程も、特許文献1に開示されているものと同様に、アクチュエータ基板10と液相のHMDSを入れた容器を処理槽内に置き、常温、常圧の状態でHMDS蒸気が拡散により十分空隙15a内に侵入するまで放置する。または、減圧にした処理槽内で液相のHMDSを入れた容器中にアクチュエータ基板10を浸漬させて液相のHMDSを空隙15a内に導入し、その後、別の処理槽にてアクチュエータ基板10を加熱し、液相のHMDSを空隙内15a内から蒸発させ除去しても良い。このとき、所望の濃度のHMDS蒸気が空隙15a内に残るように加熱処理槽内には適度なHMDS蒸気を導入しておく。
【0046】
次に、図15(e)に示すように、第二の開放孔51bを封止する(ステップS7)。第二の開放孔51bを封止する工程では、疎水化処理槽内からアクチュエータ基板10を取り出し、速やかに第二の開放孔51bを封止剤54aにて気密封止する。この封止剤54aとしては紫外線硬化型のエポキシ樹脂等を用いることができる。その後、図15(f)に示すように、液室基板20とアクチュエータ基板10を貼り合わせ、ノズル孔41と開口部42を有するノズル板40を公知例と同様に接着材にて接着する(ステップS8)。そして、図15(g)に示すように、疎水剤保持部52にノズル板40の開口部42から液体の疎水剤52aとなるHMDSを注入し、開口部を封止剤54bで封止する(ステップS9)。この封止剤54bには封止剤54aと同様に紫外線硬化型のエポキシ樹脂等を用いることができる。このようにして疎水剤52aを封止剤54bで封止する。
【0047】
次に、第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51b及び連通路53の配置例について、図16〜図19を参照して説明する。図16は各空隙15aの片側端部から連通路53を介して、チップ内に1箇所設けた第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bに連通させる例を示し、図17はチップ内の両側2箇所に第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bを設け、疎水剤をより短時間で導入できるようにすると同時に、空隙15a内のHMDS濃度が低下の抑制をより安定して行えるようにしたものである。図18は各空隙15aの両端部から連通路53を介して両側2箇所、チップ内の計4箇所に第一の大気開放孔51aを設けさらに効果的にしたものである。図19は各空隙15aの両端部から連通路53を設けた配置は、図18の配置例と同様であるが、第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bを両側の連通路53で共通として、大気開放孔の数を減らしたものである。図19に示す配置の場合、疎水剤の導入やHMDS濃度低下の抑制は図18の構成と同等のまま、封止が必要な箇所を減らすことで、封止に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、図示は省略したが、特許文献2に開示されるように、各空隙15aをそれぞれ所要数毎にグループ化し空隙群毎にサブ共通連通路を枝分かれさせながら形成する様に配置して各空隙15aへの疎水剤導入を均一に行うえるようにしても良い。また、図11〜図13に示した開放孔51と疎水剤保持部52の配置の場合も同様であるし、他にも様々な配置例が考えられる。
【0048】
次に第2の液滴吐出ヘッド1aについて図20のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の部品構成を示す分解斜視図と、図21のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の透視状態平面配置図及び図22に示した図21のY21−Y21断面図を参照して説明する。
【0049】
液滴吐出ヘッド1aの静電型アクチュエータは液滴吐出ヘッド1と同様な構成であるが、開放孔51を一種類のみ設けた構成である。液滴吐出ヘッド1の静電型アクチュエータは第一の開放孔51aを開口し空隙15a内と外界を連通させることで常圧環境での振動板20の撓みを無くし、その状態で塗布法にて振動板接液膜25の形成を行ったが、液滴吐出ヘッド1aの静電型アクチュエータは真空蒸着法にてポリパラキシリレン膜を成膜して振動板接液膜25とした。そのため、振動板接液膜25形成時に空隙15a内を大気圧にする必要が無く、開放孔51は一種類のみとすることができる。また、吐出液の種類によっては振動板接液膜25が不要であるが、その場合もこのような構成とすることができる。
【0050】
この液滴吐出ヘッド1aの静電型アクチュエータの大気開放孔51と疎水剤保持部52を形成して疎水剤52aを封止する製造工程を図23のフローチャートと図24の工程図を参照して説明する。
【0051】
まず、図24(a)に示すように、アクチュエータ基板10の主要部を犠牲層プロセスによりを形成する(ステップS11)。このプロセスで犠牲層除去孔を減圧CVD法による酸化シリコン膜にて封止したので、この状態では空隙15a内は減圧に保持されている。次に、アクチュエータ基板10に液供給路60をフォトリソ・エッチング工程により形成する(ステップS12)。次に、図24(b)に示すように、振動板接液膜25と液供給路接液膜61となるポリパラキシリレン膜を真空蒸着法により同時に形成する(ステップS13)。この方法では蒸着チャンバー内で露出している部分はほぼ均一に成膜が行われる。成膜後に、通常のフォトリソ・エッチングプロセスにより、例えば外部との電気的接続部29上など不要な部分に成膜されたポリパラキシリレンを除去する。このとき、同時に開放孔51を開孔する部分のポリパラキシリレンも除去する。エッチングは酸素プラズマにて容易に行われる。なお、マスクとなるレジストもエッチングされるが、ポリパラキシリレン膜より十分に厚くしておくことで、マスクとして使用可能である。その後、レジスト除去は剥離液にて行う。次に、図24(c)に示すように、あらかじめ開放孔51が形成される部分が開口した振動板接液膜25をマスクにドライエッチングにより開口する(ステップS14)。このとき、上記開口よりも一回り大きく開口したハードマスク55により開放孔51付近以外をカバーしてドライエッチング時のダメージを防止する。その後、酸素プラズマによるエッチングにてダメージを受けた部分の振動板接液膜25と酸化膜ドライエッチング時のデポ物を除去する。
【0052】
その後、図24(d)に示すように、開放孔51から連通路53を通じ空隙15aへのHMDSなどの疎水膜となるガス導入を行い振動板側絶縁膜21と固定電極側絶縁膜14の空隙15aに面した部分の疎水化処理を行う(ステップS15)。この疎水化処理では所望の濃度のHMDS蒸気が空隙15a内に残るようにしておく。次に、疎水化処理槽内からアクチュエータ基板10を取り出し、速やかに開放孔51を封止剤54aにて気密封止する(ステップS16)。この封止剤54aとしては、前述したように紫外線硬化型のエポキシ樹脂等を用いることができる。以下、液室基板30とアクチュエータ基板10を貼り合わせ(ステップS17)、疎水剤保持部52にノズル板40の開口部42から液体の疎水剤52aとなるHMDSを注入し、開口部を封止剤54bで封止する(ステップS18)。
【0053】
次に第3の液滴吐出ヘッド1bについて図25〜図27の断面図を参照して説明する。液滴吐出ヘッド1bの静電型アクチュエータは、図25〜図27のいずれの場合も、液体疎水剤保持部52に吸収体を配置し、吸収体に液体疎水剤を保持させるとともに第二の開放孔51bは封止せず開放のままにしたものである。このような構成とすることにより、疎水剤保持部52から空隙15aへ疎水剤蒸気の供給を行い易くできる。それ以外は液滴吐出ヘッド1の静電型アクチュエータ、と同様である。また、製造工程は、図25に示した構成では空隙内疎水化処理後に第二の開放孔51bを封止する工程を省略し、吸収体を開放孔51を覆うように配置することで得られる。また、図26に示した構成では第二の開放孔51bを封止する工程を省略し、あらかじめ液室基板30に設けた疎水剤保持部52に中に配置しておくことで得られる。また、図27に示した構成は、吸収体を配置後アクチュエータ基板10と液室基板30を貼り合わせる前に吸収体に疎水剤を含ませることで得られる。さらに、図示は省略したが図27の構成で吸収体を液室基板30側に配置することも可能である。
【0054】
次に第4の液滴吐出ヘッド1cについて図28のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の部品構成を示す分解斜視図と、図29のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の透視状態平面配置図と図30に示した図29のX41−X41断面図及び図31に示した図29のY42−Y42断面図を参照して説明する。
【0055】
液滴吐出ヘッド1から液滴吐出ヘッド1bの静電型アクチュエータは、液室基板30に液体疎水剤保持部52を形成しているのに対して、液滴吐出ヘッド1cは吸収体を液体疎水剤保持部とし、その周りを樹脂材料等による封止剤54bにて封止した構成としている。液体疎水剤は吸収体に保持されているので、図32の断面図に示すように、第一の開放孔51aを封止剤54aで封止しない構成としてもよい。また、開放孔51と液体疎水剤保持部52と連通路43の配置については、色々な変形例を採用することができる。また、静電アクチュエータを液滴吐出ヘッド以外の用途に使う場合にもこのような構成は適用できる。
【0056】
この液滴吐出ヘッド1cの静電型アクチュエータの大気開放孔51と疎水剤保持部52を形成する製造工程を図33のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
アクチュエータ基板10の主要部を形成して第二の開放孔封止までは液滴吐出ヘッド1の静電型アクチュエータの製造工程と同様である(ステップS21〜S27)。その後、吸収体を設置して液体疎水剤注入・封止を行ってから液室基板30とアクチュエータ基板10貼り合わせる(ステップS28〜S30)。この場合、特に第二の開放孔51bを封止剤54aで封止しない構成について、空隙内疎水化処理の後は、疎水剤は疎水剤保持部から再度供給されるので空隙内から抜けても大きな問題とはならないが、空隙15a内に水分が入り込むことは避ける必要があるので、このような工程としたのである。もちろん、保管や工程の環境を制御して、液室基板30とアクチュエータ基板10を貼り合わせた後に液体疎水剤注入した後に吸収体設置・液体疎水剤注入・封止を行っても良い。
【0058】
次に第5の液滴吐出ヘッド1dについて図34のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の部品構成を示す分解斜視図と、図35のノズル基板・液室基板・アクチュエータ基板の透視状態平面配置図と、図36に示した図35のX51−X51断面図と、図37に示した図35のX52−X52断面図と、図38に示した図35のX53−X53断面図と、図39に示した図35のY51−Y51断面図及び図40の液体疎水剤保持部周辺の部分拡大平面図を参照して説明する。
【0059】
液滴吐出ヘッド1dの静電型アクチュエータは、アクチュエータ基板10に液体疎水剤保持部52を形成している。この液体疎水剤保持部52は第一の大気開放孔51aと第二の大気開放孔51bよりも空隙15aに近い側に形成する。なお、この配置例もいろいろな配置を採用しても良い。
【0060】
この疎水剤保持部52は連通路53と同じく空隙15aを形成するための犠牲層と断面積増加のために下部電極層をエッチングして形成する。また、断面積増加の必要がない場合は、犠牲層だけで形成しても良い。また、空隙15aが電極基板に形成した凹部と振動板形成基板を貼り合わせて形成される構成の場合についても、疎水剤保持部52と連通路53を空隙15aと同様に形成することができる。
【0061】
また、液体疎水剤を保持する疎水剤保持部52は、図40に示すように、例えば微細な管521を複数束ねる等で表面積を増やした構造とし、毛管力により液体疎水剤を保持する構造とし、疎水剤保持部52の空隙側522は蛇行形状として空隙15aに液体の疎水剤が流れ込まないようにすると良い。このように液体疎水剤を保持する疎水剤保持部52を構成して空隙内疎水化工程で疎水剤が導入されにくい場合は、疎水剤保持部52と並列に開放孔51を形成すれば良い。
【0062】
この静電型アクチュエータの製造工程は、図41のフローチャートに示すように、液滴吐出ヘッド1の製造工程と概ね同一の工程であるが、空隙内疎水化処理したのち(ステップS31〜S36)、液体疎水剤を第二の開放孔51bより液体疎水剤保持部52に注入し、その後、第二の開放孔51bを封止する(ステップS37,S38)。このように空隙内疎水化処理直後に液体疎水剤注入と封止を行えることから、疎水化処理後空隙内に水分が入らないようにすることが容易である。
【0063】
次に液滴吐出ヘッド1を搭載したインクジェット記録装置の一例について図42の斜視図と図43の機構部の構成を示す側面図を参照して説明する。このインクジェット記録装置90は、装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ98とキャリッジ98に搭載した液滴吐出ヘッド1及び液滴吐出ヘッド1へインクを供給するインクカートリッジ99等で構成される印字機構部91等を収納し、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙92を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)93を抜き差し自在に装着されている。また、用紙92を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ94を有し、給紙カセット93あるいは手差しトレイ94から給送される用紙92を取り込み、印字機構部91によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ95に排紙する。
【0064】
印字機構部91は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド96と従ガイドロッド97とでキャリッジ98を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ98にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッド1を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ98には液滴吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ99を交換可能に装着している。
【0065】
インクカートリッジ99は上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド1へインクを供給する供給口が設けられ、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッド1としては各色の液滴吐出ヘッド1を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液室吐出ヘッドでもよい。
【0066】
ここで、キャリッジ98は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド96に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド97に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ98を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ101で回転駆動される駆動プーリ102と従動プーリ103との間にタイミングベルト104を張装し、このタイミングベルト104をキャリッジ98に固定しており、主走査モータ101の正逆回転によりキャリッジ98が往復駆動される。
【0067】
一方、給紙カセット93にセットした用紙92を液滴吐出ヘッド1の下方側に搬送するために、給紙カセット93から用紙92を分離給装する給紙ローラ105及びフリクションパッド106と、用紙92を案内するガイド部材107と、給紙された用紙92を反転させて搬送する搬送ローラ108と、この搬送ローラ108の周面に押し付けられる搬送コロ109及び搬送ローラ108からの用紙92の送り出し角度を規定する先端コロ110とを有する。搬送ローラ108は副走査モータによってギヤ列を介して回転駆動される。
【0068】
そして、キャリッジ98の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ108から送り出された用紙92を液滴吐出ヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材111を設けている。この印写受け部材111の用紙搬送方向下流側には、用紙92を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ112と拍車113を設け、さらに用紙92を排紙トレイ95に送り出す排紙ローラ114と拍車115と、排紙経路を形成するガイド部材116,117とを配設している。
【0069】
このインクジェット記録装置90で記録時には、キャリッジ98を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙92にインクを吐出して1行分を記録し、その後、用紙92を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙92の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙92を排紙する。
【0070】
また、キャリッジ98の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ98は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0071】
また、吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド1の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0072】
このように、このインクジェット記録装置90においては前記静電型アクチュエータを具備した液滴吐出ヘッド1を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。また低電圧で駆動できるヘッドを搭載するので、インクジェット記録装置全体の消費電力も低減できる。
【0073】
前記説明ではインクジェット記録装置90に液滴吐出ヘッド1を使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する装置に液滴吐出ヘッド1を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図3】図2のX11−X11断面図である。
【図4】図2のX12−X12断面図である。
【図5】図2のX13−X13断面図である。
【図6】図2のY11−Y11断面図である。
【図7】図2のY12−Y12断面図である。
【図8】図2のY13−Y13断面図である。
【図9】アクチュエータ基板の開放孔周辺の拡大図である。
【図10】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第2の構成を示す配置図である。
【図11】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第3の構成を示す配置図である。
【図12】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第4の構成を示す配置図である。
【図13】アクチュエータ基板の開放孔と疎水剤保持部の第5の構成を示す配置図である。
【図14】第一と第二の大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示すフローチャートである。
【図15】第一と第二の大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示す工程図である。
【図16】第一と第二の大気開放孔及び連通路の配置を示す配置図である。
【図17】第一と第二の大気開放孔及び連通路の第2の配置を示す配置図である。
【図18】第一と第二の大気開放孔及び連通路の第3の配置を示す配置図である。
【図19】第一と第二の大気開放孔及び連通路の第4の配置を示す配置図である。
【図20】第2の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図21】第2の液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図22】図21のY21−Y21断面図である。
【図23】第2の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示すフローチャートである。
【図24】第2の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示す工程図である。
【図25】第3の液滴吐出ユニットにおける疎水剤保持部の構成を示す断面図である。
【図26】第3の液滴吐出ユニットにおける疎水剤保持部の第2の構成を示す断面図である。
【図27】第3の液滴吐出ユニットにおける疎水剤保持部の第3の構成を示す断面図である。
【図28】第4の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図29】第4の液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図30】図29のX41−X41断面図である。
【図31】図29のY42−Y42断面図である。
【図32】第4の液滴吐出ユニットにおける第一と第二の開放孔の部分を示す断面図である。
【図33】第4の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成する製造工程を示すフローチャートである。
【図34】第5の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図35】第5の液滴吐出ヘッドの構成を示す平面配置図である。
【図36】図35のX51−X51断面図である。
【図37】図35のX52−X52断面図である。
【図38】図35のX53−X53断面図である。
【図39】図35のY51−Y51断面図である。
【図40】第5の液滴吐出ヘッドにおける液体疎水剤保持部周辺の構成を示す拡大平面図である。
【図41】第5の液滴吐出ヘッドの大気開放孔と疎水剤保持部を形成して疎水剤を封止する製造工程を示すフローチャートである。
【図42】液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図43】インクジェット記録装置の機構部の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
1;液滴吐出ヘッド、10;アクチュエータ基板、11;シリコン基板、
12;基板絶縁膜、13;固定電極層、13a;固定電極、14;固定電極側絶縁膜、
15a;空隙、20;振動板、21;振動板側絶縁膜、22;振動板電極層、
22a;振動板電極、30;液室基板、31;共通液室、32;流体抵抗部、
33;加圧液室、34;連通管、40;ノズル板、41;ノズル孔、42;開口部、
51;開放孔、51a;第一の開放孔、51b;第二の開放孔、52;疎水剤保持部、
53;連通路、54;封止剤、60;液供給路、90;インクジェット記録装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、
前記空隙に連通する連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面には疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする静電型アクチュエータ。
【請求項2】
前記空隙に連通した連通路と疎水剤保持部の間に、液体の疎水剤を通さないが疎水剤の蒸気を通す膜を設けることを特徴とする請求項1記載の静電型アクチュエータ。
【請求項3】
前記疎水剤保持部に吸収体を配置し、吸収体に液体の疎水剤を保持させることを特徴とする請求項1又は2記載の静電型アクチュエータ。
【請求項4】
少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、
前記空隙に連通する連通路と、該連通路と大気開放孔を有する大気開放部との間に設けられた疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面に疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする静電型アクチュエータ。
【請求項5】
前記疎水剤保持部の前記連通路側は蛇行形状として前記空隙に液体の疎水剤が流れ込まないようにしたことを特徴とする請求項4記載の静電型アクチュエータ。
【請求項6】
少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極と、前記振動板及び前記固定電極の前記空隙側の表面に形成された疎水膜と、空隙に連通して設けられた連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータの製造方法であって、
前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入した後、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を注入して封止することを特徴とする静電型アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の静電型アクチュエータを有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項7記載の液滴吐出ヘッドを有し、該液滴吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出させて画像を記録することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、
前記空隙に連通する連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面には疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする静電型アクチュエータ。
【請求項2】
前記空隙に連通した連通路と疎水剤保持部の間に、液体の疎水剤を通さないが疎水剤の蒸気を通す膜を設けることを特徴とする請求項1記載の静電型アクチュエータ。
【請求項3】
前記疎水剤保持部に吸収体を配置し、吸収体に液体の疎水剤を保持させることを特徴とする請求項1又は2記載の静電型アクチュエータ。
【請求項4】
少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータにおいて、
前記空隙に連通する連通路と、該連通路と大気開放孔を有する大気開放部との間に設けられた疎水剤保持部を有し、前記振動板と前記固定電極の前記空隙側の表面に疎水膜が形成され、前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気が封入されているとともに、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を保持したことを特徴とする静電型アクチュエータ。
【請求項5】
前記疎水剤保持部の前記連通路側は蛇行形状として前記空隙に液体の疎水剤が流れ込まないようにしたことを特徴とする請求項4記載の静電型アクチュエータ。
【請求項6】
少なくとも一部が可動電極となっている変形可能な振動板と、該振動板に空隙を介して対向配置された固定電極と、前記振動板及び前記固定電極の前記空隙側の表面に形成された疎水膜と、空隙に連通して設けられた連通路と、該連通路を外部に連通させる大気開放孔を有する大気開放部と、前記連通路に接した疎水剤保持部を有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させる静電型アクチュエータの製造方法であって、
前記空隙中に疎水基を有する疎水剤の蒸気を封入した後、前記疎水剤保持部に液体の疎水剤を注入して封止することを特徴とする静電型アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の静電型アクチュエータを有し、前記可動電極と前記固定電極間に電圧を印可したときに発生する静電力で前記振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項7記載の液滴吐出ヘッドを有し、該液滴吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出させて画像を記録することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図18】
【図19】
【図20】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2009−248440(P2009−248440A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98918(P2008−98918)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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