説明

静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、画像形成方法、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される静電荷像現像用キャリアの提供。
【解決手段】芯材粒子と、前記芯材粒子の表面を被覆し、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を含有する被覆層と、を有する静電荷像現像用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、画像形成方法、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャリア粒子表面に特定のメラミンホルムアルデヒド化合物を含有する樹脂組成物によって架橋されたアクリル系樹脂で被覆した電子写真用キャリアが開示されている。
【0003】
特許文献2には、キャリアの粒子が、コア粒子と該コア粒子を被覆する被覆層とを有し、該コア粒子が、表面に凹部を有し、かつ特定の磁性材料でなり、該被覆層が、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物でなり、該コア粒子の少なくとも該凹部を充填し、そして該コア粒子の表面の面積の0.1から60%を被覆する被覆層である、二成分系現像剤が開示されている。
【0004】
特許文献3には、少なくとも結着樹脂と粒子を含有するコート膜を有するキャリアにおいて、該粒子の粒子径と該コート膜の膜厚が特定の関係にあり、該粒子がシラザン化合物で表面処理されていることを特徴とする電子写真用キャリアが開示されている。
【0005】
特許文献4には、少なくとも結着樹脂と粒子からなるコート膜を有するキャリアにおいて、該粒子径と該結着樹脂膜厚が特定の関係にあり、該粒子が特定のシロキサン化合物を単独或いは2種以上で表面処理されていることを特徴とする電子写真用キャリアが開示されている。
【0006】
特許文献5には、少なくとも結着樹脂と粒子からなるコート膜を有するキャリアにおいて、該粒子の粒子径と該結着樹脂の膜厚が1特定の関係であり、該粒子が特定の有機金属化合物の単独或いは2種以上で表面処理されていることを特徴とする電子写真用キャリアが開示されている。
【0007】
特許文献6には、樹脂及び無機微粒子を含有する被覆層を備えた静電潜像現像用キャリアにおいて、前記無機微粒子の官能基と樹脂とが化学結合でグラフトしてなることを特徴とする静電潜像現像用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−216281号公報
【特許文献2】特開平08−076485号公報
【特許文献3】特開2004−170689号公報
【特許文献4】特開2005−024809号公報
【特許文献5】特開2006−078918号公報
【特許文献6】特開平10−104885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しない場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される静電荷像現像用キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に付着し、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂と、を有する静電荷像現像用キャリアである。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記芯材粒子と前記樹脂との混合物を気相中で加熱し、前記芯材粒子の表面に前記樹脂を付着させる工程を経て得られた、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0012】
請求項3に係る発明は、
トナーと、請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリアと、を含む静電荷像現像剤である。
【0013】
請求項4に係る発明は、
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電された前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
現像剤保持体に保持された請求項3に記載の静電荷像現像剤を用いて前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写工程と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着させる定着工程と、
を有する画像形成方法である。
【0014】
請求項5に係る発明は、
前記現像工程において、前記現像剤保持体の表面の移動速度が、前記像保持体の表面の移動速度の1.5倍以上5.0倍以下である、請求項4に記載の画像形成方法である。
【0015】
請求項6に係る発明は、
請求項3に記載の静電荷像現像剤が収容された現像剤カートリッジである。
【0016】
請求項7に係る発明は、
請求項3に記載の静電荷像現像剤が収容された現像手段を備えたプロセスカートリッジである。
【0017】
請求項8に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
現像剤保持体を備え、前記現像剤保持体の表面に保持された請求項3に記載の静電荷像現像剤を用いて前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置である。
【0018】
請求項9に係る発明は、
前記現像剤保持体の表面の移動速度が、前記像保持体の表面の移動速度の1.5倍以上5.0倍以下である、請求項8に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しない場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、気相中で芯材粒子の表面に樹脂を付着させたキャリアであっても、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しないキャリアを用いる場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しないキャリアを用いる場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、現像剤保持体表面の移動速度と像保持体表面の移動速度との比が上記範囲であっても、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しないキャリアを用いる場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しないキャリアを用いる場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂を有しないキャリアを用いる場合に比較して、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、現像剤保持体表面の移動速度と像保持体表面の移動速度との比が上記範囲であっても、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、画像形成方法、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
【0030】
[静電荷像現像用キャリア]
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリア(以下、単に「キャリア」と称することがある。)は、芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に付着し、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種(以下、「ホウ酸等」と称する場合がある)に由来する架橋構造を有する樹脂(以下、「ホウ素架橋樹脂」と称する場合がある)と、を有する。
【0031】
上記ホウ素架橋樹脂は、ホウ酸等が、高分子化合物中に含まれる2以上の官能基(前記ホウ酸等と反応する基)と反応して、架橋構造(高分子化合物に含まれる2以上の官能基がホウ素原子を介して連結された構造)が形成された樹脂である。具体的には、例えば、ホウ酸と、高分子化合物中に含まれる2つのOH基(ホウ酸等と反応する基)とが反応した場合、脱水反応により「−O−B−O−」構造を有する架橋構造が形成され、「−O−B−O−」構造を介して2つのOH基が連結されると考えられる。すなわちホウ素架橋樹脂においては、ホウ素原子が前記架橋構造の形成に寄与している(以下、ホウ素原子が形成に寄与した架橋構造を「ホウ素架橋構造」と称する場合がある)。
なお、前記高分子化合物中に含まれる2以上の官能基(前記ホウ酸等と反応する基)は、1つの分子中に含まれていてもよく、異なる分子に含まれていてもよい。すなわち、高分子化合物1分子の2箇所以上がホウ素原子を介して連結されていてもよく、異なる高分子化合物の分子がホウ素原子を介して連結されていてもよい。
【0032】
本実施形態のキャリアは、上記のようにホウ素架橋樹脂が芯材表面に付着しているため、画像部の用紙搬送方向下流側における非画像部のカブリ(以下、単に「カブリ」と称する場合がある)が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
具体的には、本実施形態のキャリアは、芯材粒子の表面にホウ素架橋樹脂が付着しているため、芯材粒子の表面に付着した樹脂が架橋構造を有しない場合に比べて、芯材粒子の表面に付着した樹脂の層(以下、「被覆層」と称する場合がある)の硬度が高い。そのため本実施形態では、キャリアの凝集が抑制されるとともに、現像装置内の撹拌による被覆層の剥離や摩耗が抑制されると考えられる。そして、被覆層の剥離や摩耗に起因して、キャリアの帯電付与力が低下し、帯電量の低いトナーが非画像部に飛散してカブリが発生することが抑制される。特に、例えばベタ画像形成後に文字画像を形成する場合のように、トナーを大量消費した後に供給されたトナーを即座に帯電させ、帯電量を確保する必要が生じた際に、非画像部を含む画像が形成された場合、非画像部において起こりやすい上記カブリが抑制される。なお、「被覆層」は、芯材粒子の表面の少なくとも一部を被覆した層であればよく、芯材粒子の表面が覆われていない(露出した)部分を有している形態を含む。
【0033】
また本実施形態のキャリアは、被覆層がホウ素架橋樹脂を含有するため、被覆層に含まれる樹脂がホウ素架橋樹脂以外の架橋樹脂(例えばポリアミド樹脂又はメラミン樹脂等)を含有する場合に比べて、被覆層の硬度が低く、現像装置内における撹拌によってキャリアの表面が研磨されやすいと考えられる。そのため、キャリア表面がトナーの成分によって汚染されることが抑制され、前記汚染に伴うキャリアの帯電付与力の低下が抑制され、上記カブリが抑制されると推測される。
【0034】
また本実施形態のキャリアは、芯材粒子の表面に樹脂を付着させる工程(すなわち芯材粒子の表面に被覆層を形成する工程であり、以下「被覆工程」と称する場合がある)において、芯材粒子と樹脂との混合物を、気相中で(溶媒を用いずに)加熱して製造されたキャリアであっても、上記カブリが抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
具体的には、本実施形態のキャリアは、被覆層がホウ素架橋樹脂を含有するため、加熱によりホウ素架橋構造が解離すると考えられる。そのため、ホウ素架橋樹脂以外の架橋樹脂を用いた場合に比べて、加熱による樹脂の硬度低下が大きく、被覆工程における樹脂の粘度が低くなるため、樹脂の粘度が高い場合に比べて被覆ムラが生じにくいと考えられる。よって、被覆ムラに起因してキャリアの帯電付与力のバラツキが生じ、トナーの帯電量分布の広がり、帯電量の低いトナーが非画像部に飛散することによるカブリが抑制されると推測される。
【0035】
また本実施形態のキャリアを用い、現像剤保持体表面の移動速度と像保持体表面の移動速度との比が上記範囲となる条件で画像形成を行っても、カブリが抑制される。ここで、現像剤保持体表面の移動速度とは、画像形成装置の動作によって現像剤保持体の表面が移動する速度であり、例えば現像剤保持体が円筒状である場合には、現像剤保持体の角速度及び直径に比例する。像保持体についても同様である。
そして、現像剤保持体表面の移動速度が速くなるにつれて、現像装置内における現像剤の撹拌速度も速くなり、キャリアが受ける衝撃も大きくなると考えられる。しかし本実施形態では、上記の通り撹拌による被覆層の剥離や摩耗が抑制されため、現像剤保持体表面の移動速度が像保持体表面の移動速度よりも大きく、速度比が上記範囲であったとしても、カブリが抑制されると考えられる。
【0036】
以下、本実施形態において使用される材料、工程条件、評価・分析条件などについて詳細に記載する。
【0037】
<ホウ素架橋樹脂>
まず、ホウ素架橋樹脂について説明する。
ホウ素架橋樹脂は、上記の通り、ホウ酸等が、高分子化合物中に含まれる2以上の官能基(前記ホウ酸等と反応する基)と反応して、ホウ酸等による架橋構造が形成された樹脂である。
【0038】
−ホウ酸及びホウ酸誘導体−
ホウ酸及びホウ酸誘導体としては、無置換のホウ酸のほか、ホウ酸誘導体として、例えば有機ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。
有機ホウ酸としては、例えば、n−ブチルホウ酸、2−メチルプロピルホウ酸、フェニルホウ酸、o−トリルホウ酸、p−トリルホウ酸、4−メトキシフェニルホウ酸等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、無機ホウ酸塩及び有機ホウ酸塩が挙げられ、具体的には、例えば、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ酸エステルとしては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリn-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリn−ブチルボレート、トリt−ブチルボレート、トリフェニルボレート、ジイソプロピルボレート、ブチルジイソプロピルボレート、トリヘキシルボレート、トリ2−エチルヘキシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリテトラデシルボレート、トリフェノキシボレート等が挙げられる。ホウ酸エステルは、環状構造を有していてもよく、環状構造を有するホウ酸エステルとしては、例えば、2,4,6−トリメトキシボロキシン、2,4,6−トリメチルボロキシン等が挙げられる。また、これらの化合物は無水物でも水和物でもよいが、無水物がより好ましい。そして、上記ホウ酸及びホウ酸誘導体の中でも特に、ホウ酸、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリイソプロピルボレートが好ましい。
【0039】
−ホウ酸等と反応する基を有する高分子化合物−
上記ホウ酸等と反応してホウ素架橋樹脂を形成する高分子化合物としては、前記ホウ酸等と反応する基(以下、「ホウ酸反応基」と称する場合がある)を有する高分子化合物が挙げられる。そして、上記ホウ酸反応基としては、例えばOH基等が挙げられる。また、上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物としては、例えば、上記ホウ酸反応基を有する単量体に由来する構造単位を含む高分子化合物が挙げられる。前記高分子化合物は、上記ホウ酸反応基を有する単量体に由来する構造単位の他に、その他の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。すなわち前記高分子化合物は、上記ホウ酸反応基を有する単量体の単独重合体であってもよく、上記ホウ酸反応基を有する単量体とその他の単量体との共重合体であってもよい。
【0040】
上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物は、上記ホウ酸反応基を有する単量体を重合させて得られたものでもよく、上記ホウ酸反応基を有する単量体及び上記その他の単量体を共重合させて得られたものでもよく、上記ホウ酸反応基を有さない高分子化合物に上記ホウ酸反応基を導入して得られたものでもよく、上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物にさらに上記ホウ酸反応基を導入して得られたものでもよい。
【0041】
上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物が上記ホウ酸反応基を有する単量体とその他の単量体との共重合体である場合、上記ホウ酸反応基を有する単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位との合計に対する、上記ホウ酸反応基を有する単量体に由来する構造単位の割合は、例えば5質量%以上70質量%以下が挙げられ、10質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0042】
上記高分子化合物は、上記ホウ酸反応基を有していればよく、高分子化合物の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等のアクリル系樹脂;これらアクリル系樹脂を用いた変性樹脂が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現であり、以下同様である。
【0043】
まず、上記高分子化合物の一例として、OH基を有するアクリル系樹脂について説明する。
上記OH基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ジヒドロキシフェネチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記の中でも特に、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。
【0044】
上記その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等が挙げられる。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、スルファモイルフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
上記(メタ)アクリルアミド類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N-トリル(メタ)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)(メタ)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0047】
上記ビニルエステル類の具体例としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
上記スチレン類の具体例としてはスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0048】
その他の単量体としては、上記の中でも、例えば(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特にメチル(メタ)アクリレート、(n−、i−、sec−、又はt−)ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
また、アクリル系樹脂を用いた変性樹脂はブロック共重合、グラフト重合によって得ることができる。
【0050】
−ホウ素架橋樹脂の製造方法−
上記ホウ酸等と上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物とを反応させてホウ素架橋樹脂を形成する方法としては、上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物を加熱溶融する方法や、溶剤に溶解させる方法等が挙げられる。
【0051】
上記加熱溶融する方法は、具体的には、例えば、上記ホウ酸等と上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物とを混合した後に加熱し、上記高分子化合物を熱溶融状態にして、混錬する方法である。上記加熱の温度としては、例えば100℃以上200℃以下が挙げられ、上記加熱の時間としては、例えば0.5時間以上10時間以下の範囲が挙げられる。
【0052】
溶剤に溶解させる方法は、具体的には、例えば、上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物を溶剤に溶解させた後に、上記ホウ酸等を添加する方法である。
上記溶剤としては、上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物を溶解させるものであれば特に限定されないが、例えば上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物を変質させない溶剤が挙げられ、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。上記溶媒の量としては、例えば、上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物1gに対し、0.5g以上100g以下の範囲が挙げられる。また上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物を溶解させるときの溶剤の温度としては、例えば10℃以上溶剤沸点−20℃以下の範囲が挙げられる。
【0053】
上記ホウ酸反応基を有する高分子化合物1gに対して添加する上記ホウ酸等の質量としては、例えば、0.3g以上5g以下の範囲が挙げられ、0.5g以上2g以下の範囲であってもよい。
また、上記高分子化合物のホウ酸反応基1モルに対する上記ホウ酸等の添加量としては、例えば、0.1モル以上1モル以下の範囲が挙げられ、0.3モル以上0.7モル以下の範囲であってもよい。
【0054】
−ホウ素架橋構造の確認方法−
(ゲル分により測定する方法)
以上のようにして得られた樹脂が、上記ホウ素架橋樹脂である(すなわち、ホウ素原子が架橋構造の形成に寄与している)ことを確認する方法としては、例えば、以下のように、ホウ素架橋構造が酸によって解離する性質を利用し、ゲル分により測定する方法が挙げられる。
【0055】
具体的には、まず、秤量した試料(ホウ素架橋樹脂)を三角フラスコに入れて、常温(25℃)の特級トルエンをフラスコ内に20ml注入し、常温(25℃)下にて4時間撹拌した後、冷蔵庫(0℃)において一晩(12時間)保管する。その後、遠心分離機の分離管に移し、1時間あたり12,000回転の回転速度で、20分間、遠心分離を行う。遠心分離後の分離管を常温(25℃)下に1.5時間放置する。そして、分離管の蓋を開け、上澄みをマイクロピペットにて吸い上げる。
【0056】
次に、溶けていない沈降物を乾燥することにより、ゲル分として取り出す。
そして、取り出されたゲル分に酸処理を行う。具体的には、取り出されたゲル分1gを、酸として水10ml及び0.3mol/L硝酸1mlで構成された酸性溶液に投入して常温(25℃)で1時間攪拌、その後にゲル分を濾過等により分離して取り出して常温で乾燥して酸処理を行う。
【0057】
上記酸処理の後、さらに常温(25℃)の特級トルエンをフラスコ内に20ml注入し、常温(25℃)下にて4時間撹拌した後、冷蔵庫(0℃)において一晩(12時間)保管する。その後、遠心分離機の分離管に移し、1時間あたり12,000回転の回転速度で、20分間、遠心分離を行う。遠心分離後の分離管を常温(25℃)下に1.5時間放置する。分離管の蓋を開け、上澄み2.5mlをマイクロピペットにて吸い上げ、別途秤量したアルミ皿に移し、ホットプレートにてトルエン成分を蒸発させる。アルミ皿は8時間の真空乾燥を行なう。真空乾燥後のアルミ皿の重量を秤量し、以下の計算式により、ホウ素架橋構造を有するゲル分を算出する。
ホウ素架橋構造を有するゲル分(%)={(B’−C’)×8}÷A’×100
A’ : 試料質量 [g]
B’ : トルエン可溶物+アルミ皿の質量 [g]
C’ : アルミ皿のみの質量 [g]
【0058】
なお、キャリアにホウ素架橋樹脂が含有されているかどうかについては、試料としてキャリアを用い、上記方法(ホウ素架橋構造が酸によって解離する性質を利用する方法)によって、ホウ素架橋構造を有するゲル分の有無が確認される。
【0059】
H−NMR測定により確認する方法)
また、以上のようにして形成された被覆層が上記ホウ素架橋樹脂である(ことを確認する方法としては、上記方法の他に、例えば、以下のようにH−NMR測定により確認する方法が挙げられる。
【0060】
具体的には、例えば、ホウ素架橋構造が形成される前のH−NMRスペクトルと、ホウ素架橋構造が形成された後(すなわち、第1の粒子の表面に形成されたホウ素架橋樹脂)のH−NMRスペクトルと、を測定する。そして、ホウ素架橋構造が形成される前のホウ素反応基を有する高分子化合物(又はホウ素反応基を有する単量体)における、ホウ素反応基が直接結合する炭素原子に結合する水素原子に由来するピークの化学シフト値が、ホウ素架橋構造の形成によってどのようにシフトするかを確認し、ホウ素架橋構造が形成されたか否かを確認する。
【0061】
ホウ素架橋構造の形成の一例として、以下に、グリセリンンモノメタクリレートのホウ素反応基である水酸基が、ホウ酸トリメチルと反応することにより、ホウ素架橋構造が形成される例を示す。
グリセリンモノメタクリレートGLMのH−NMRスペクトルと、グリセリンンモノメタクリレートとホウ酸トリメチルとの反応生成物のH−NMRスペクトルと、を比較すると、下記のように、グリセリンンモノメタクリレートの2位のプロトンに起因するピークが3.94ppmから3.69ppmにシフトし、3位のプロトンに起因するピークが3.49ppmから3.24ppmにシフトする。この性質を利用して、例えば、原料であるホウ素反応基を有する単量体のH−NMRスペクトルと、得られたトナー粒子のH−NMRスペクトルと、の比較から、ホウ素架橋構造が形成されたか否かが確認される。
【0062】
また、ホウ素架橋樹脂の酸処理(上記「ゲル分により測定する方法」に記載の酸処理)を行い、その前後で1H−NMR測定を行うことで、ケミカルシフト値の違いからホウ素架橋構造が形成されていたかどうかを確認することができる。
【0063】
【化1】

【0064】
上記製造方法により得られたホウ素架橋樹脂において、ホウ素架橋構造が解離する温度としては、例えば、100℃以上160℃以下の範囲が挙げられる。
【0065】
<被覆層>
キャリアの被覆層は、上記の通り少なくともホウ素架橋樹脂を含有するが、必要に応じて、その他の樹脂、無機粒子等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0066】
−その他の樹脂−
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;スチレン・アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられるが、これら以外の公知の樹脂を用いてもよい。
【0067】
被覆層がその他の樹脂を含む場合、ホウ素架橋樹脂とその他の樹脂との合計に対するホウ素架橋樹脂の割合としては、例えば30質量%以上90質量%以下が挙げられ、40質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0068】
−無機粒子−
被覆層は、例えば良好な画像を得る目的や電気抵抗の調整の目的で、無機粒子を含有させてもよい。無機粒子の含有量としては、被覆層全体に対し、例えば3質量%以上30質量%以下の範囲が挙げられ、5質量%以上20質量%以下であってもよい。
無機粒子としては、例えば、金、銀、銅などの金属;カーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛などの半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、又はチタン酸カリウム粉末等の表面を、酸化スズ、カーボンブラック、又は金属等で覆ったもの;等が挙げられる。これらの中でも特に、導電性の高いカーボンブラック(例えば体積固有抵抗が下記範囲のカーボンブラック)が挙げられる。
無機粒子の体積固有抵抗としては、例えば、10−4Ω・cm以上10Ω・cm以下の範囲が挙げられる。
無機粒子の体積平均粒径としては、例えば、0.005μm以上0.5μm以下の範囲が挙げられる。
【0069】
−その他の成分−
被覆層は、上記成分のほかに、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、含窒素樹脂、その他の粒子等が挙げられる。
【0070】
<芯材粒子>
芯材粒子としては、特に限定されるものではなく、キャリアの芯材粒子として用いられる公知の粒子が利用される。具体的には、例えば、磁性粒子を芯材粒子として用いてもよいし、磁性粒子が樹脂中に分散された磁性粒子分散樹脂粒子を芯材粒子として用いてもよい。
磁性粒子に含まれる磁性材料としては、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属;これらの磁性金属とマンガン、クロム、希土類等との合金;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;等があげられる。
【0071】
磁性粒子を芯材粒子として用いる場合、造粒、焼結により磁性粒子が形成されるが、その前処理として、磁性材料を粉砕してもよい。粉砕方法は特に問わず、公知の粉砕方法が挙げられ、具体的には例えば、乳鉢、ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。
焼結温度は、従来の場合よりも低く抑えてもよく、具体的には、用いる材質によって異なるが、例えば500℃以上1200℃以下が挙げられ、600℃以上1000℃以下がより好適である。焼結温度を低く抑える方法としては、例えば、焼結工程において、仮焼結を段階的に行う方法が挙げられ、その場合、全体の焼結にかける時間は長くしてもよい。
【0072】
磁性粒子分散樹脂粒子を芯材粒子として用いる場合、芯材粒子中における磁性粒子の含有量としては、例えば、80質量%以上99質量%以下が挙げられ、95質量%以上99質量%以下であってもよい。
また磁性粒子分散樹脂粒子に含まれる磁性粒子の体積平均粒径は、例えば、0.05μm以上5.0μm以下が挙げられ、0.1μm以上1.0μm以下であってもよい。なお、磁性粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定される。
磁性粒子分散樹脂粒子に含まれる磁性粒子の作製方法としては、例えば、上記磁性材料の粉末粒子に機械的せん断力等を加える方法が挙げられ、必要に応じて表面改質剤としてカップリング剤も用いてもよい。
【0073】
磁性粒子分散樹脂粒子に用いられる樹脂は特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられ、上記ホウ素架橋樹脂を用いてもよい。
磁性粒子分散樹脂粒子には、目的に応じて、さらに、帯電制御剤やフッ素含有粒子等のその他の成分を含有させてもよい。
磁性粒子分散樹脂粒子の製造方法としては、例えば、バンバリーミキサーやニーダ等を用いる溶融混練法、懸濁重合法、噴霧乾燥法等が挙げられる。
【0074】
芯材粒子の体積平均粒子径としては、例えば、10μm以上500μm以下が挙げられ、20μm以上100μm以下であってもよく、25μm以上60μm以下であってもよい。
【0075】
芯材粒子の磁力としては、例えば、3000エルステッドにおける飽和磁化が50emu/g以上であることが挙げられ、60emu/g以上であってもよい。
上記芯材粒子の磁力の測定では、測定装置として振動試料型磁気測定装置VSMP10−15(東英工業社製)を用いる。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3000エルステッドまで掃引する。ついで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。なお、上記芯材粒子の飽和磁化は、3000エルステッドの磁場において測定された磁化を示す。
【0076】
芯材粒子の体積電気抵抗(体積抵抗率)としては、例えば、10Ω・cm以上10.5Ω・cm以下の範囲であることが好ましく、107Ω・cm以上109Ω・cm以下の範囲が挙げられる。
上記芯材粒子の体積電気抵抗(Ω・cm)は以下のように測定する。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとする。20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cmの電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)を計算する。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
・式: R=E×20/(I−I)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。また、20の係数は、電極板の面積(cm)を表す。
【0077】
<被覆層の形成方法(被覆工程)>
芯材粒子の表面に被覆層を形成する方法としては、例えば、湿式塗布法及び乾式塗布法が挙げられる。
湿式塗布法としては、例えば、芯材粒子を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材粒子の表面に噴霧するスプレー法、芯材粒子を流動空気で浮遊させながら被膜形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で芯材粒子と被膜形成用溶液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0078】
乾式塗布法としては、例えば、芯材粒子と被膜層形成材料との混合物を乾燥状態で加熱して被覆層を形成する方法が挙げられる。具体的には、例えば、溶媒を用いずに、芯材粒子と被膜層形成材料とを気相中で混合して加熱溶融し、被膜層を形成する。
乾式塗布法は、被覆層に無機粒子を含有させる場合、加熱や機械的シェアにより無機粒子が樹脂中に容易に分散することから、被覆層形成用溶液を用いる湿式コートにおける無機粒子を溶媒中に分散する工程が省略される。また溶媒を用いないため、被覆層を形成する樹脂の溶媒に対する溶解性についての制約もなくなり、例えば、溶媒に溶解しにくい樹脂を使用してもよい。また乾式塗布法においては、二種以上の樹脂が互いに溶け混じり合う状態が避けられるため、被覆層厚み方向に個別の機能をもたせてもよく、例えば、抵抗を制御する面と帯電を制御する面とを共存させることが容易となる。
【0079】
乾式塗布法では、例えば、加熱や機械的シェアを加えることにより、被覆する樹脂を溶融し、芯材粒子表面に被膜層を形成する。なお、ホウ素架橋樹脂は、例えば、40℃以下の温度ではホウ素架橋構造を保つために高い硬度及び高い強度を有するが、150℃以上で熱により容易に架橋構造を消失して溶融、低粘度化するので乾式塗布法でも良好な被覆層が形成される。
【0080】
被覆層による芯材表面の被覆率としては、例えば80%以上が挙げられ、90%以上であってもよく、100%であってもよい。被覆率が80%以上であると、長期に渡って使用した場合にキャリアへの電荷注入の発生が抑制され、電荷注入が起こったキャリアが潜像保持体上へ移行し、画像上に白点が発生してしまうことが抑制される。
【0081】
なお、被覆層の被覆率は、XPS測定(X線光電子分光測定)により求められる。XPS測定装置としては、日本電子製、JPS80を使用し、測定は、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を20mVに設定して実施し、被覆層を構成する主たる元素(通常は炭素)と、芯材粒子を構成する主たる元素(例えば芯材粒子がマグネタイトなどの酸化鉄系材料の場合は鉄および酸素)とについて測定する。
【0082】
以下、芯材粒子が、酸化鉄系である場合を前提に説明する。ここで、炭素についてはC1sスペクトルを、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを、酸素についてはO1sスペクトルを測定する。これらの各々の元素のスペクトルに基づいて、炭素、酸素、及び鉄の元素個数(それぞれ、「AC」、「AO」、及び「AFe」と表す)を求めて、得られた炭素、酸素、鉄の元素個数比率より下記式(2)に基づいて、芯材粒子単体、および、芯材粒子を被覆層で被覆した後(キャリア)の鉄量率を求め、続いて、下記式(3)により被覆率を求める。
・式(2)
鉄量率(atomic%)=AFe/(AC+AO+AFe)×100
・式(3)
被覆率(%)={1−(キャリアの鉄量率)/(芯材粒子単体の鉄量率)}×100
【0083】
なお、芯材粒子として、酸化鉄系以外の材料を用いる場合には、酸素の他に芯材粒子を構成する金属元素のスペクトルを測定し、上述の式(2)や式(3)に準じて同様の計算を行えば被覆率が求められる。
【0084】
被覆層の平均膜厚としては、例えば、0.1μm以上10μm以下が挙げられ、0.1μm以上3.0μm以下であってもよく、0.1μm以上1.0μm以下であってもよい。
被覆層の平均膜厚(μm)は、芯材粒子の真比重をρ(無次元)、芯材粒子の体積平均粒子径をd(μm)、被覆層の平均比重をρC、芯材粒子1質量部に対する被覆層の全含有量をWC(質量部)とすると、下記式(4)で求められる。
・式(4)
平均膜厚(μm)=[キャリア1個当たりの被覆樹脂量(導電粉等の添加物もすべて含む)/キャリア1個当たりの表面積]÷被覆層の平均比重
=[4/3π・(d/2)・ρ・WC]/[4π・(d/2)]÷ρC
=(1/6)・(d・ρ・WC/ρC)
【0085】
<キャリアの物性>
キャリアの個数平均粒子径としては、例えば、15μm以上50μm以下が挙げられ、20μm以上40μm以下であってもよい。キャリアの個数平均粒子径は、電子顕微鏡SEM写真からその一つ一つの粒子の最大径を測定し、この粒子の100個の粒径から平均値を求める。
【0086】
キャリアの形状係数SF1としては、例えば、120以上145以下が挙げられる。なお、キャリアの形状係数SF1は、下記式(5)により求められる値を意味する。
・式(5) SF1=100π×(ML)/(4×A)
ここで、上記式(5)中、MLはキャリア粒子の最大長、Aはキャリア粒子の投影面積である。なお、キャリア粒子の最大長と投影面積は、スライドガラス上にサンプリングしたキャリア粒子を光学顕微鏡により観察し、ビデオカメラを通じて画像解析装置(LUZEX III、NIRECO社製)に取り込んで、画像解析を行うことにより求めたものである。この際のサンプリング数は100個以上で、その平均値を用いて、式(5)に示す形状係数を求める。
【0087】
キャリアの飽和磁化としては、例えば、40emu/g以上が挙げられ、50emu/g以上であってもよい。
上記飽和磁化の測定は、測定装置として振動試料型磁気測定装置VSMP10−15(東英工業社製)を用いる。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大1000エルステッドまで掃引する。ついで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。上記キャリアの飽和磁化は、1000エルステッドの磁場において測定された磁化を示す。
【0088】
キャリアの体積電気抵抗(25℃)としては、例えば、1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下の範囲が挙げられ、1×10Ω・cm以上1×1014Ω・cm以下であってもよく、1×10Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下の範囲であってもよい。
上記キャリアの体積電気抵抗は、芯材粒子の体積電気抵抗と同様にして測定を行う。
【0089】
キャリア被覆層の強度としては、剥がれ率としてみる。本実施形態のキャリアにおける剥がれ率としては、例えば、6wt%以上12wt%以下の範囲が挙げられる。
上記剥がれ率の測定は、混合装置或いは粉砕装置として用いられるサンプルミルにキャリアを30g投入し、攪拌回転数13000rpmで30秒間の攪拌を10回実施し、被覆層の剥がれ量をみることで行う。具体的には上記攪拌の後にキャリアを10g回収してガラスビーカーに投入し、磁石でキャリア粒子を拘束した状態でトリトン水溶液によってキャリアを洗浄し、洗浄後のキャリアを乾燥させて質量(A)を測定する。
一方、被覆層の質量は熱重量測定装置TGAにて500℃に加熱して質量減量(B)にて得られる。
剥がれ率(wt%)={(10−A)/B}×100
【0090】
[静電荷像現像剤]
本実施形態の静電荷像現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、トナーと、キャリアとを少なくとも含み、キャリアとして既述のキャリアが用いられるものである。
トナーとしては、特に制限はなく、公知のトナーが用いられる。トナーとしては、代表的には、例えば、結着樹脂と着色剤とを含む着色トナーが挙げられるが、着色剤の代わりに赤外線吸収剤を用いた赤外線吸収トナーなどを用いてもよい。また、これらの成分に加えて、必要に応じて離型剤や各種の内添剤、外添剤等のその他の成分を更に添加してもよい。また、かぶりに関しては結着樹脂の電気抵抗が高い方が好ましく、そのため含水量のなるべく低い樹脂や、結晶構造を有さないものが好ましい。
【0091】
結着樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に代表的な結着樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン等が挙げられる。
【0092】
着色剤としては、特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デユポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0093】
またトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含んでもよい。その際、特にカラートナー等に用いる場合には、例えば、色調に影響を与えない無色又は淡色の帯電制御剤を持ち手もよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用してもよいが、例えば、アゾ系金属錯体;サルチル酸もしくはアルキルサルチル酸の金属錯体もしくは金属塩;等が挙げられる。
【0094】
さらに、トナーには、必要であれば、オフセットの防止等を目的として、離型剤が含まれていてもよい。
離型剤は例えば、次のものが挙げられる。パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。誘導体とは、酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物を含む。この他に、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等を利用してもよい。
【0095】
またトナーは、内部に無機酸化物粒子を添加してもよい。無機酸化物粒子としては例えば、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、K2O、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が例示される。これらのうち、特に、シリカ粒子、チタニア粒子が挙げられる。酸化物粒子の表面は、必ずしも予め疎水化処理されている必要はないが、疎水化処理されていてもよい。
【0096】
疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機酸化物を浸漬等することにより行う。疎水化処理剤としては特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でもシランカップリング剤が好適に挙げられる。
疎水化処理剤の量としては、無機酸化物粒子の種類等により異なり一概に規定されないが、例えば、無機酸化物粒子100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲が挙げられる。
【0097】
またトナーは、無機酸化物粒子をトナー表面に添加してもよい。トナー表面に添加される無機酸化物粒子としては、上述したトナー内部に添加する無機酸化物粒子と同様のものが挙げられる。
【0098】
トナーの粒度分布としては、例えば、3μm以下の粒径のトナー粒子が、全トナー粒子数の6個数%以上25個数%以下であることが挙げられ、6個数%以上16個数%以下であってもよい。また、例えば、16μm以上の粒径のトナー粒子が、1.0体積%以下であってもよい。
また、トナーの体積平均粒子径としては、例えば、3.5μm以上9μm以下が挙げられる。
トナーの粒度分布および体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用して測定するが、測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒子径と定義する。
【0099】
トナーの製造方法は、一般に使用されている混練粉砕法や湿式造粒法等を利用してもよい。ここで、湿式造粒法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法、in−situ重合法、界面重合法、乳化分散造粒法、凝集・合一法等が挙げられる。
【0100】
混練粉砕法でトナーを作製する場合、例えば、結着樹脂、必要に応じて着色剤やその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により混合し、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、必要に応じて赤外線吸収剤、酸化防止剤等を分散又は溶解せしめ、冷却固化後粉砕及び分級を行ってトナーを得る。
【0101】
湿式造粒法によりトナーを作製する場合におけるトナー粒子の形状係数としては、例えば、110以上135以下の範囲が挙げられる。上記トナー粒子の形状係数は、キャリアの形状係数SF1と同様にして求められる。
【0102】
トナーとキャリアの混合質量比としては、例えば、トナー質量/キャリア質量が0.01以上0.3以下であることが挙げられ、0.03以上0.2以下であってもよい。
【0103】
本実施形態の現像剤は、予め現像装置内に収容される現像剤としてはもちろんのこと、例えば、現像によって消費されるトナーといっしょにキャリアを追加し、現像機内のキャリアを少しずつ入れ替えることにより帯電量の変化を抑制し画像濃度を安定化する現像方式(いわゆるトリクル現像方式)などに利用される補給用現像剤として適用してもよい。
なお、トリクル現像方式などに利用される補給用現像剤として本実施形態の現像剤を利用する場合における、トナーとキャリアの混合質量比としては、トナー質量/キャリア質量が2以上であることが挙げられ、3以上であってもよく、5以上であってもよい。
【0104】
[画像形成装置]
次に、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いた本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、現像剤保持体を備え、前記像保持体上に形成された前記静電荷像を前記現像剤保持体の表面に保持された本実施形態に係る静電荷像現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着する定着手段と、を有するものである。
【0105】
前記現像手段は、上記の通り、本実施形態にかかる静電荷像現像剤を保持する現像剤保持体を備えている。そして、前記像保持体表面と現像剤保持体表面との速度差(前記像保持体表面の回転速度:現像剤保持体表面の回転速度)としては、例えば、1:1.5以上、1:5以下の範囲が挙げられる。
現像剤保持体としては、例えば、回転しながら像保持体の表面にトナーを供給する筒状部材が挙げられる。
上記現像剤保持体表面の速度としては、例えば、400mm/s以上が挙げられ、450mm/s以上であってもよい。また現像剤保持体表面の速度としては、例えば1500mm/s以下が挙げられ、1200mm/s以下であってもよい。
【0106】
また現像手段は、例えば、現像剤を収容するための現像剤収容容器と、補給用現像剤を現像剤収容容器に供給するための現像剤供給手段と、現像剤収容容器内に収容されている現像剤の少なくとも一部を排出するための現像剤排出手段とを備える構成、すなわち、トリクル現像方式を採用した構成を有するものでもよい。
現像剤収容容器に供給するための補給用現像剤におけるトナー・キャリア混合質量比としては、例えば、トナー質量/キャリア質量≧2の範囲が挙げられ、トナー質量/キャリア質量≧3であってもよく、トナー質量/キャリア質量≧5であってもよい。
【0107】
本実施形態の画像形成装置は、上記のほかに、必要に応じてクリーニングブレード等を用いたクリーニング手段や、除電手段等を含んでいていても良い。
また本実施形態の画像形成装置は、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0108】
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0109】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0110】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0111】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y(帯電手段)、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3(静電潜像形成手段)、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置4Y(現像手段)、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが順に配置されている。なお、上記転写手段は、1次転写ローラ5Y、中間転写ベルト20、及び後述する2次転写ローラ26を含んで構成されている。
【0112】
1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0113】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0114】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0115】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。
現像効率、画像粒状性、階調再現性等の観点から、直流成分に交流成分を重畳させたバイアス電位(現像バイアス)を現像剤保持体に付与してもよい。具体的には、現像剤保持体直流印加電圧Vdcを−300乃至−700Vとしたとき、現像剤保持体交流電圧ピーク幅Vp−pを0.5乃至2.0kVの範囲としてもよい。
イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0116】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0117】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0118】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙P(被転写体)が供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0119】
この後、記録紙Pは定着装置28(定着手段)における一対の定着ロールの接触部へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。
【0120】
トナー像を転写する被転写体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【0121】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、現像装置にはトナーと本実施形態に係るキャリアとを含む現像剤が収容される。
【0122】
[プロセスカートリッジ、現像剤カートリッジ]
図2は、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、現像剤保持体111Aを備えた現像装置111とともに、感光体107、帯電ローラ108、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0123】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、感光体107、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像装置111のほかには、感光体107、帯電装置108、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0124】
次に、本実施形態に係る現像剤カートリッジについて説明する。本実施形態に係る現像剤カートリッジは、画像形成装置に着脱されるように装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収容する現像剤カートリッジにおいて、前記現像剤が既述した本実施形態に係る静電荷像現像剤としたものである。
なお、本実施形態に係る現像剤カートリッジは、トナー及びキャリアが混合された現像剤がそのまま収容されたカートリッジであってもよいし、トナーを単独で収容するカートリッジとキャリアを単独で収容するカートリッジとを含んで構成されたカートリッジであってもよい。
【0125】
現像剤カートリッジが着脱される構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収めた現像剤カートリッジを利用することにより、本実施形態に係る静電荷像現像剤が容易に現像装置に供給される。
【0126】
本実施形態においては、像保持体として感光体を用いているが、これに限られず、例えば誘電記録体でもよい。
また像保持体として電子写真感光体を用いる場合、帯電手段としては、例えば、コロトロン帯電器、接触帯電器等が挙げられる。また転写手段においてコロトロン帯電器を用いてもよい。
【0127】
[画像形成方法]
本実施形態の画像形成方法は、上記の通り、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電された像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤保持体に保持された現像剤を用いて像保持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程と、像保持体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写工程と、被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を少なくとも有するものであり、現像剤として上記本実施形態の静電荷像現像用トナーを含む現像剤を用いる。
【0128】
本実施形態の画像形成方法では、必要に応じて上記工程以外の工程を含むものであってもよく、上記工程以外の工程としては、例えば、転写工程の後に像保持体表面に残留したトナーを除去するトナー除去工程等が挙げられる。また、上記転写工程が像保持体から中間転写体を介して被転写体へとトナー像を転写する工程である形態(中間転写方式)であってもよい。
また現像工程において、例えば、像保持体表面と現像剤保持体表面との速度差(前記像保持体表面の回転速度:現像剤保持体表面の回転速度)が、1:1.5以上、1:5以下の範囲であってもよい。
【実施例】
【0129】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0130】
<樹脂1の合成>
下記成分を混合した溶液に、重合開始剤(和光純薬工業社製、商品名:V601)4質量部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で充分置換してから攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま撹拌(重合)を継続した。その後、トリメチルボレートを74質量部投入し、さらに1時間攪拌を継続した。その後、反応液をメタノール中に滴下して未反応モノマーを除去し、さらに、40℃において16時間真空乾燥を行って樹脂1を得た。得られた樹脂1について、ホウ素架橋構造を有するゲル分の測定を行った結果を表1に示す。
【0131】
−混合した成分−
スチレン 296質量部
グリセリンモノメタクリレート(日油株式会社製、商品名:ブレンマーGLM) 104質量部
【0132】
<樹脂2の合成>
トリメチルボレートを投入しない以外は、樹脂1と同様にして、樹脂2を合成した。得られた樹脂について、ホウ素架橋構造を有するゲル分の測定を行った結果を表1に示す。
【0133】
<樹脂3の合成>
スチレンの添加量を400質量部に変更し、グリセリンモノメタクリレートの添加量を0質量部に変更した以外は、樹脂1と同様にして、樹脂3を合成した。得られた樹脂について、ホウ素架橋構造を有するゲル分の測定を行った結果を表1に示す。
【0134】
<樹脂4の合成>
グリセリンモノメタクリレートの代わりに、グリセロールメタクリレートを104質量部用いた以外は、樹脂1と同様にして、樹脂4を合成した。得られた樹脂について、ホウ素架橋構造を有するゲル分の測定を行った結果を表1に示す。
【0135】
<樹脂5の合成>
トリメチルボレートの代わりに、トリエチルボレートを100質量部用いた以外は、樹脂1と同様にして、樹脂5を合成した。得られた樹脂について、ホウ素架橋構造を有するゲル分の測定を行った結果を表1に示す。
【0136】
<樹脂6の合成>
トリメチルボレートの代わりに、ジカテコールボレートのテトラメチルアンモニウム塩(ホウ素錯体)を74質量部用いた以外は、樹脂1と同様にして、樹脂6を得た。得られた樹脂について、ホウ素架橋構造を有するゲル分の測定を行った結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
<被覆層形成液1>
・樹脂1:2部
・スチレン・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体(共重合比1:1、重量平均分子量:58000):0.5部
・カーボンブラック(キャボット社製、VXC72):0.12部
・トルエン:14部
上記成分とジルコニアビーズ(粒径:1mm、トルエンと同質量)とを関西ペイント社製サンドミルに投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌し被覆層形成液1を作製した。
【0139】
<被覆層形成液2から被覆層形成液6>
被覆層形成液1の作製において、樹脂1を樹脂2から樹脂6にそれぞれ変更したこと以外、被覆層形成液1の作製と同様にして、被覆層形成液2から被覆層形成液6をそれぞれ作製した。
【0140】
<被覆層形成液7>
被覆層形成液1の作製において、樹脂1を2部から2.5部に変更したこと以外、被覆層形成液1の作製と同様にして、被覆層形成液7を作製した。
【0141】
<被覆層形成液8>
被覆層形成液1の作製において、スチレン・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体をポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂(綜研化学社製:重量平均分子量65000)に変更したこと以外、被覆層形成液1の作製と同様にして、被覆層形成液8を作製した。
【0142】
<被覆層形成液9>
被覆層形成液1の作製において、樹脂1をポリメタクリル酸メチル樹脂(重量平均分子量:75000、綜研化学社製)に変更したこと以外、被覆層形成液1の作製と同様にして、被覆層形成液9を作製した。なお、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂は、架橋構造を有さず、後述するキャリアの作製過程(被覆工程)においても架橋構造は形成されない樹脂である。
【0143】
<被覆層形成液10>
被覆層形成液1の作製において、樹脂1を未架橋メラミン樹脂(DIC株式会社製、品番:スーパーベッカミンJ−820−60)に変更したこと以外、被覆層形成液1の作製と同様にして、被覆層形成液10を作製した。なお、上記未架橋メラミン樹脂は、架橋構造を有さない樹脂であるが、後述するキャリアの作製過程(被覆工程)において、湿式塗布法においては加熱乾燥することにより、また乾式塗布法においては加熱溶融することにより、架橋構造が形成される樹脂である。
【0144】
<キャリア1の作製(湿式塗布法)>
真空脱気型5Lニーダーに磁性体粒子DFC350(芯材粒子、同和鉱業社製:Mn−Mgフェライト、表面の凹凸の平均間隔Sm:0.4μm)を100部入れ、更に被覆層形成液1を12部入れ、攪拌しながら、60℃にて−200mmHgまで減圧し20分混合した後、昇温及び減圧させ90℃及び−720mHgで30分間攪拌乾燥させ、被覆層を形成した芯材粒子を得た。更に、目開き75μメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア1を得た。キャリア被覆層の剥がれ率の値を上記方法により求めた結果を表2に示す。以下のキャリアについても同様に測定し、結果を表2に示す。
【0145】
<キャリア2からキャリア10の作製(湿式塗布法)>
キャリア1の作製において、被覆層形成液1を被覆層形成液2から被覆層形成液10にそれぞれ変更したこと以外、キャリア1の作製と同様にして、キャリア2からキャリア10をそれぞれ作製した。
【0146】
<キャリア11の作製(乾式塗布法)>
樹脂1と、スチレン・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体(共重合比1:1、重量平均分子量:58000)と、をそれぞれジェットミルで粉砕して、それぞれ体積平均粒子径5μm、3.5μmの樹脂粒子を得た。
【0147】
磁性体粒子DFC350(芯材粒子、同和鉱業社製:Mn−Mgフェライト、)100部と、上記樹脂1の樹脂粒子1.7部と、スチレン・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体の樹脂粒子0.5部と、カーボンブラック0.3部と、をV型ブレンダーで混合し、この混合物を1リットル横型ニーダーに入れ、ジャケット設定温度200℃で60分撹拌した後、さらに撹拌しながら60分間放冷した。そして、目開き75μメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア11を得た。
得られたキャリア11をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、被覆層がムラ無く形成されていることが分かった。
【0148】
<キャリア12の作製(乾式塗布法)>
樹脂5をジェットミルで粉砕して、体積平均粒子径4μmの樹脂粒子を得た。
キャリア11の作製において、樹脂1の樹脂粒子の代わりに、上記樹脂2の樹脂粒子を用いた以外、キャリア11の作製と同様にして、キャリア12を作製した。
得られたキャリア12をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、被覆層がムラ無く形成されていることが分かった。
【0149】
<キャリア13の作製(乾式塗布法)>
キャリア11の作製において、樹脂1の樹脂粒子の代わりに、メラミン架橋樹脂粒子(、日本触媒社製、品番:エポスターS)を用いた以外、キャリア11の作製と同様にして、キャリア13を作製した。
得られたキャリア13をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、被覆層に大きなムラがあることが分かった。
【0150】
<トナー1の作製>
−結晶性ポリエステル樹脂の重合−
加熱乾燥した三口フラスコに、デカンジカルボン酸100mol%と、ノナンジオール100mol%とで構成されるモノマー成分100質量%と、ジブチル錫オキサイド0.3質量%とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌・還流を行った。
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂を重合した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)を行ったところ、得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は23300で数平均分子量(Mn)は7300であった。
また、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は72.2℃であった。
【0151】
−結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調整−
次いで、得られた結晶性ポリエステル樹脂を用い、下記組成の樹脂粒子分散液を調整した。
・結晶性ポリエステル樹脂:90部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水:210部
以上の成分を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、平均粒径230nm,固形分量30質量%の結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
【0152】
−非晶性ポリエステル樹脂の重合−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:30mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物: 70mol%
・テレフタル酸:45mol%
・フマル酸 :40mol%
・ドデセニルコハク酸:15mol%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が攪拌されていることを確認した後、仕込みモノマー100質量%に対しジステアリン酸スズの0.8質量%を投入した。
さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移温度が57℃、酸価14.6mgKOH/g、重量平均分子量が20000、数平均分子量6500の非晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0153】
−非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調整−
・非晶性ポリエステル樹脂:100部
・酢酸エチル:50部
・イソプロピルアルコール:15部
5Lのセパラブルフラスコに酢酸エチル及びイソプロピルアルコールを投入し、その後上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で3質量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、非晶性ポリエステル樹脂を含む非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。この分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は150nmであった。なお、分散液の樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした。
【0154】
−着色剤分散液の調製−
・シアン顔料:銅フタロシアニンB15:3(大日精化):50部
・アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬):5部
・イオン交換水:200部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:杉野マシン製)を用い圧力245Mpaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の中心粒径が182nmで固形分量が20.0質量%の着色剤分散液を得た。
【0155】
−離型剤分散液の調製−
・パラフィンワックス:HNP−9(日本精鑞):20部
・アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬):1部
・イオン交換水:80部
上記を耐熱容器中で混合し、90℃に昇温して30分、攪拌を行った。次いで、容器底部より溶融液をゴーリンホモジナイザーへと流通し、5MPaの圧力条件のもと、3パス相当の循環運転を行った後、圧力を35MPaに昇圧し、更に3パス相当の循環運転を行った。こうして出来た乳化液を前記耐熱溶液中で40℃以下になるまで冷却し、中心粒径が182nmで固形分量が20.0質量%離型剤分散液を得た。
【0156】
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液:40部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液:170部
・着色剤分散液:30部
・離型剤分散液:40部
以上の成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.20質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら45℃まで加熱した。45℃で60分保持した後、ここに非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液60部を追加した。
その後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でフラスコ内の溶液のpHを8.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。
【0157】
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1Lに再分散し、15分300rpmで攪拌・洗浄した。
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmtとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続して、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂等を含むコア層と、このコア層を被覆する非晶性ポリエステル樹脂を含むシェル層とを有するコアシェル構造を有するトナー粒子1を得た。
【0158】
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は5.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.22であった。また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は136であった。
更に、このトナー粒子1に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを、それぞれの着色粒子の表面に対する被覆率が40%となるように添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を作製した。
【0159】
<トナー2の作製>
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の代わりに、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を用いた以外は、トナー1と同様にして、トナー2を作製した。
【0160】
<現像剤1から現像剤13の作製>
得られたトナー2と、得られたキャリア1からキャリア13のそれぞれとを、現像剤全体に対するトナー2の含有量が8質量%になるように混合し、現像剤1から現像剤13を作製した。
【0161】
<現像剤14作製>
得られたトナー1と、得られたキャリア12とを、現像剤全体に対するトナー1の含有量が8質量%になるように混合し、現像剤14を作製した。
【0162】
<評価1>
富士ゼロックス製DocuCenterColor400(改造機:感光体(像保持体)表面に対して現像剤保持体の速度を可変とし、また出力前の現像器から回しを行わないようにしたもの)に得られた現像剤を仕込み、32℃、92%RHの環境に移動し、8時間放置した。その後、画像先端から10cmまでトナー載り量0.6g/mのソリッド画像を用意しA4C2紙(富士ゼロックス社製)で10枚の出力を行った。この10枚目を基準画像とした。
【0163】
次に、そのままの環境下でA4C2紙にて画像カバレッジ3%相当の全面文字画像を1万枚プリントし更に翌日(24時間後)に同様に1万枚プリントをした。そして、その翌日(24時間後)に画像先端から10cmまでトナー載り量0.6g/mのソリッド画像1枚の出力を行い評価画像とした。前記基準画像に対し前記評価画像の濃度を比較した。また、前記評価画像の下部(用紙搬送方向下流側)のカブリを下記の基準で評価した。
【0164】
このときの感光体表面に対する現像剤保持体表面の速度比(感光体表面と現像剤保持体表面との速度差(感光体表面の速度:現像剤保持体表面の速度))は1:2であった。
また感光体表面の速度及び現像剤保持体表面の速度は次のようにして求めた。感光体の直径L(cm)、感光体の回転数R(回転/分)、現像剤保持体の直径l(cm)、現像剤保持体の回転数r(回転/分)から、感光体表面の速度はL×R(cm/分)、現像剤保持体の速度はl×r(cm/分)である。
【0165】
評価画像下部のカブリの評価と評価画像の濃度の評価は以下の様に行った。
−評価画像の下部のカブリ−
評価画像の後端(用紙搬送方向下流側の端部)から1cmの部分のカブリを、目視及びルーペ(×20)で確認した。
◎−目視でも、ルーペでもカブリは確認されない。
○−目視では確認されないが、ルーペでは僅かに確認される。
△−目視で僅かに確認されるが、許容される範囲である。
×−目視で明らかに確認される。
なお、△以上を可とした。結果を表2に示す。
【0166】
−評価画像の濃度−
画像濃度計(X−Rite404A:X−Rite社製)を用いて基準画像及び評価画像のソリッド部(画像部)における画像濃度を測定した。基準画像の画像濃度を100%とし、これに対する評価画像の画像濃度を%で示した。100%に近いものほど良く、目標は85%以上110%未満とし、85%未満、110%以上を問題ありとした。結果を表2に示す。
【0167】
【表2】

【0168】
<評価2>
現像剤4を用い、感光体表面に対する現像剤保持体の速度比を、それぞれ1:1.4、1:1.5、1:4、1:5、1:5.1に変更し、上記評価1と同様の評価(カブリの評価及び画像濃度の評価)を実施した。結果を表3に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
上記表に示すように、実施例においては、比較例に比べ、カブリが抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0171】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ(帯電手段)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置(静電潜像形成手段)
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
111A 現像剤保持体
112 転写装置(転写手段)
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に付着し、ホウ酸及びホウ酸誘導体の少なくとも1種に由来する架橋構造を有する樹脂と、を有する静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記芯材粒子と前記樹脂との混合物を気相中で加熱し、前記芯材粒子の表面に前記樹脂を付着させる工程を経て得られた、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
トナーと、請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリアと、を含む静電荷像現像剤。
【請求項4】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電された前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
現像剤保持体に保持された請求項3に記載の静電荷像現像剤を用いて前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写工程と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着させる定着工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項5】
前記現像工程において、前記現像剤保持体の表面の移動速度が、前記像保持体の表面の移動速度の1.5倍以上5.0倍以下である、請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
請求項3に記載の静電荷像現像剤が収容された現像剤カートリッジ。
【請求項7】
請求項3に記載の静電荷像現像剤が収容された現像手段を備えたプロセスカートリッジ。
【請求項8】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
現像剤保持体を備え、前記現像剤保持体の表面に保持された請求項3に記載の静電荷像現像剤を用いて前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項9】
前記現像剤保持体の表面の移動速度が、前記像保持体の表面の移動速度の1.5倍以上5.0倍以下である、請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−22157(P2012−22157A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160064(P2010−160064)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】