説明

非加熱で製造できる2液式毛髪化粧料及びその製法

【課題】本発明の目的は、毛髪を脱色又は染色するための2液式毛髪化粧料に関わり、使用時に液ダレせず、毛髪を過脱脂せずに優れた脱色又は染毛効果を発揮し、かつ短時間で簡単に低エネルギーで製造できる2液式毛髪化粧料及びその製法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(1)カチオン性ポリマー0.05〜3.0重量%及びアルカリ剤を含有する第1液、ならびに(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を含有する第2液であって、該アクリル酸アルキル共重合体エマルションを第2液全重量に対するアクリル酸アルキル共重合体の重量%として、3〜13重量%含有する第2液からなる、2液式毛髪化粧料及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を脱色又は染色するための2液式毛髪化粧料に関し、使用時に液ダレせず、毛髪を過脱脂せずに優れた脱色又は染毛効果を発揮し、かつ短時間で簡単に低エネルギーで製造することができる2液式毛髪化粧料及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く使用されている毛髪化粧料は、別個に保存された第1液と第2液とからなり、使用直前に両者を混合して使用する形態のものである。そのような毛髪化粧料としては、第1液にアルカリ剤、第2液に酸化剤をそれぞれ必須成分として含有する2液式毛髪脱色剤又は2液式染毛剤が知られている。
【0003】
従来から、この種の2液式毛髪化粧料は混合性を容易にするために第1液及び第2液とも比較的低粘度の液状に設計されているが、脱色又は染毛時には毛髪に塗布しやすく、また塗布後に液ダレを起こさせないようにするため、所定の粘度を有するように増粘させることが必要である。
【0004】
所定の粘度を有する2液式毛髪化粧料を調整するために、従来、界面活性剤に一定量以上の水を加えることによりゲル化させる機構が採用されている(特許文献1)。しかしながら、かかる処方のもとでは界面活性剤を相当量配合する必要があり、それが毛髪を過脱脂してしまい、その結果、毛髪が痛んでパサつくという問題があった。
【0005】
また、近年、第1液と第2液の混合液を泡状に吐出するためのノンエアゾールタイプのフォーマー容器を使った2液式毛髪化粧料も知られているが、起泡性を良くし、タレ落ちをなくすためには相当量の界面活性剤を配合する必要があり、過脱脂の問題は解消できていなかった(特許文献2及び3)。
【0006】
かかる問題を解決し過脱脂から髪を保護するために、液状油剤やアミノ酸等の毛髪保護剤を配合する方法が採用されているものの本質的な解決には至っていない。
【0007】
エアゾールタイプの容器を用いて、第1液と第2液の混合液を泡状に吐出させる方法を採用した2液式毛髪化粧料も知られている(特許文献4)。しかしながら、起泡性を良くし、タレ落ちをなくすためには相当量の界面活性剤を配合する必要があり、過脱脂の問題は解決できていない上に、脱色ムラや染毛ムラが生じやすい、金属製の耐圧容器等が酸化剤により酸化され腐食する、酸化剤の分解によって耐圧容器の内圧が過度に上昇するといった問題があった。
【0008】
さらに、近年の地球温暖化問題を考慮して、2液式毛髪化粧料を製造する際にできるだけ二酸化炭素排出量を低減し、低エネルギーで製造できるよう、非加熱製法を採用することが製造業にとっては重要かつ最優先課題であるが、これらの2液式毛髪化粧料は、いずれも製造する際に加熱を必要とするという問題も有する。
【0009】
非加熱製法は二酸化炭素排出量を削減する方法の一つであり、非加熱製法で製造できる毛髪化粧料も存在していたが、脱色及び染毛効果が悪い、仕上がりの感触が悪い、施術の際に特別なアプリケーターが必要である等の解決すべき問題点が多くあった(特許文献2及び3)。またこれらの非加熱製法の2液式毛髪化粧料についても、相当量の界面活性剤を配合することによる過脱脂の問題は依然残っている。
【0010】
かかる問題点を解消することを提唱すべく、種々の検討がなされているものの解決には至っていない。
【特許文献1】特開2000−290150公報
【特許文献2】特開2006−124274公報
【特許文献3】特開2007−314524公報
【特許文献4】特開2002−284655公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、毛髪を脱色又は染色するための2液式毛髪化粧料に関わり、使用時に液ダレせず、毛髪を過脱脂せずに優れた脱色又は染毛効果を発揮し、かつ安価で簡単に低エネルギーで製造できる2液式毛髪化粧料及びその製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アルカリ剤を含有する第1液と酸化剤を含有する第2液からなる2液式毛髪化粧料において、該第1液中に毛髪を保護するカチオン性ポリマーを配合し、さらに該第2液中に混合液の粘度を出すアクリル酸アルキル共重合体をエマルションの状態で配合することにより、使用時に液ダレせず、毛髪を過脱脂せずに優れた脱色又は染毛効果を発揮し、かつ安価で簡単に低エネルギーで製造できる2液式毛髪化粧料及びその製法を提供することができることを見出した。本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、下記に掲げるものである。
【0013】
項1.
(1)カチオン性ポリマー0.05〜3.0重量%及びアルカリ剤を含有する第1液、ならびに
(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を含有する第2液であって、該アクリル酸アルキル共重合体エマルションを第2液全重量に対するアクリル酸アルキル共重合体の重量%として、3〜13重量%含有する第2液
からなる、2液式毛髪化粧料。
【0014】
項2.
第1液と第2液の混合液の25℃における粘度が1500〜12000mPa・Sである、項1に記載の2液式毛髪化粧料。
【0015】
項3.
(1)カチオン性ポリマー、アルカリ剤を水に溶解し、混合することにより第1液を調製する工程、および
(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を水に溶解し、混合することにより第2液を調製する工程、
を含む2液式毛髪化粧料の製造方法。
【0016】
項4.
前記(1)第1液の調製工程及び前記(2)第2液の調製工程の少なくとも一方を非加熱で行う、項3に記載の2液式毛髪化粧料の製造方法。
【0017】
項5.
上記工程(1)において、水に、さらに金属封鎖剤、染料、色素、pH調整剤、毛髪保護剤、着香料、溶解剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、安定剤、浸透剤及び湿潤剤からなる群より選択される少なくとも1つを溶解し、混合する、項3又は4に記載の方法。
【0018】
項6.上記工程(2)において、水に、さらにpH調整剤、毛髪保護剤、着香料、色素、紫外線吸収剤、安定剤、浸透剤及び湿潤剤からなる群より選択される少なくとも1つを溶解し、混合する、項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第2液にアクリル酸アルキル共重合体エマルションを配合することによって、第1液と混合したときに、第1液のアルカリ剤の一部でアクリル酸アルキル共重合体が中和され、混合液に適度な粘度を与える。これにより使用時の液ダレを防ぐことができる。また、第1液にカチオン性ポリマーを配合することによって、施術後のすすぎ及びシャンプー時の毛髪のからまりや摩擦による毛髪の損傷を防ぐことができる。
【0020】
また、配合される界面活性剤の量を少なくできるため、従来の2液式毛髪化粧料とは異なり、毛髪の過脱脂及びそれに伴う毛髪の損傷やパサつき等を解消でき、仕上がりの髪の手触りも良く、ツヤも損なわない。しかも、アルカリ剤や酸化剤、染料が毛髪に作用する際のキャリアーとなる水が非常に多い処方のため、脱色及び染毛効果も優れている。
【0021】
さらに、本発明の2液式毛髪化粧料は安価に短時間で非加熱製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の2液式毛髪化粧料の構成について詳細に説明する。
【0023】
I.2液式毛髪化粧料
本発明は、
(1)カチオン性ポリマー0.05〜3.0重量%及びアルカリ剤を含有する第1液、ならびに
(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を含有する第2液であって、該アクリル酸アルキル共重合体エマルションを第2液全重量に対するアクリル酸アルキル共重合体の重量%として、3〜13重量%含有する第2液
からなる、2液式毛髪化粧料を提供する。
【0024】
本発明において、2液式毛髪化粧料は、2液式脱色剤及び2液式染毛剤を包含する。
【0025】
I−1.第1液
第1液には、(A)カチオン性ポリマー及び(B)アルカリ剤が含有される。第1液の形態は、主として液状であるが、第2液との混合時に適度な粘度が得られるものであれば、粉末状、乳液状、ジェル状等の形態であっても良い。
【0026】
(A)カチオン性ポリマー
本発明において、カチオン性ポリマーは陽イオンに解離する部位を持っているポリマーを示し、全体としてカチオンとなる両性ポリマーも含まれる。このようなカチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリマー側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含むか、又は、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶液のものが挙げられる。
【0027】
より具体的には、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合ジエチル硫酸塩液等が挙げられる。これらのうち、特にすすぎ時やシャンプー時の毛髪の絡まりや、毛髪の損傷を抑えること及び仕上がりの毛髪の感触を考慮すると、塩化O−[2−ヒドロキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液が好ましく、塩化O−[2−ヒドロキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液がより好ましく、塩化O−[2−ヒドロキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガムが最も好ましい。これらのカチオン性ポリマーは、1種単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0028】
本発明において、カチオン性ポリマーの配合量は本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、例えば、第1液の全重量に対して0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.2〜2重量%とすることができる。第1液におけるカチオン性ポリマーの配合量を上記範囲とすることにより、より高い感触改良及び毛髪損傷抑制効果が得られるため好ましい。
【0029】
カチオン性ポリマーは公知化合物であり、公知の方法によって製造できる。
また、本発明において、カチオン性ポリマーは市販のものを使用することもできる。市販されているカチオン性ポリマーの例示としては、商品名:UCARE Polymer JR400(ダウ・ケミカル ジャパン)(塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)、Jaguar C−13S(ローディア日華) (塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム)、Merquat280(ナルコジャパン)(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液)、ガフカット 440(アイエスピー・ジャパン)(ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合ジエチル硫酸塩液)等が挙げられる。
【0030】
(B)アルカリ剤
本発明において用いられるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等のアンモニア化合物、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアルカノールアミン、アルギニン等の有機アミン類等が挙げられる。
【0031】
本発明において使用時の粘度、臭い及び脱色効果を考慮すると、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが好ましく、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールがより好ましく、モノエタノールアミンが最も好ましい。これらのアルカリ剤は、1種単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0032】
本発明において、アルカリ剤の配合量は本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、好ましい実施形態において、例えば、2液式毛髪化粧料の第1液の全重量に対して2〜20重量%、より好ましくは2.5〜18重量%、より好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは3.5〜12重量%とすることができる。第1液中のアルカリ剤及びその塩の配合量を上記範囲とすることにより、十分な増粘効果及び脱色・染毛効果が得られつつ、かつ毛髪へのダメージを抑えることができる。
【0033】
アルカリ剤及びその塩は公知化合物であり、公知の方法によって製造できる。また、本発明において、アルカリ剤は市販のものを使用することもできる。市販されているアルカリ剤の例示としては、商品名:モノエタノールアミン Care(BASFジャパン)、AMP Cosmetic Grade(アンガスケミカル)(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)等が挙げられる。
【0034】
本発明の2液式毛髪化粧料の第1液には、必要に応じて、公知の金属封鎖剤、染料、色素、pH調整剤、毛髪保護剤、着香料、プロピレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール等の溶解剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、安定剤、浸透剤、湿潤剤等も本発明の2液式毛髪化粧料の性能を損なわない程度に適宜加えてもよい。
【0035】
第1液の溶媒としては、水が用いられ、通常、精製水が配合される。この場合、水の配合量としては、各成分を所定量配合した場合の残部であり、その配合量は、好ましくは第1液全重量に対して、10〜95重量%程度である。従って、当該第1液が、カチオン性ポリマー、(B)アルカリ剤に加えて、前述の任意の各種成分を含む場合には、水の配合量は、好ましくは10〜80重量%程度となるが、成分の種類、配合量等により当然に適宜調整される。
【0036】
I−2.第2液
第2液には、(A)アクリル酸アルキル共重合体エマルションと(B)酸化剤が含有される。第2液の形態は、主として液状であるが、第2液との混合時に十分な粘度が得られるならば、粉末状、乳液状、ジェル状等の形態であっても良い。
【0037】
(A)アクリル酸アルキル共重合体エマルション
第2液に含まれるアクリル酸アルキル共重合体エマルションは、主剤としてアクリル酸アルキル共重合体を含むエマルションであり、市販のものを広く使用できる。好ましい実施形態において、アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、通常、アクリル酸アルキル共重合体27〜33重量%、水66.5〜72.5重量%、界面活性剤0.4〜0.5重量%で構成されている。
【0038】
本発明において、アクリル酸アルキル共重合体とは、アクリル酸アルキルをモノマーの構成成分として含む共重合体を意味する。このような共重合体を構成するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、これらからなる群から選択される2種類以上のモノマーを共重合したものが含まれる。
【0039】
ここで、アクリル酸アルキル共重合体を構成するアクリル酸アルキルとしては、アルキル基の炭素数が1から4及び8のものが挙げられ、具体的には例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0040】
また、アクリル酸アルキル共重合体を構成するメタクリル酸アルキルとしては、アルキル基の炭素数が1から4及び8のものが挙げられ、具体的には例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0041】
市販されているアクリル酸アルキル共重合体エマルションの例示としては、商品名:アキュリンTM 33A(ローム・アンド・ハース・ジャパン、純分28%エマルション)、ルビフレックス Soft (BASFジャパン、純分30%エマルション)、カーボポール AQUA SF−1 POLYMER(ノベオン、純分30%エマルション)等が挙げられる。これらのアクリル酸アルキル共重合体エマルションは、1種単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0042】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量としては、第1液のアルカリ剤で中和されて、混合液が適度な粘度を有する程度であれば特に限定されないが、アクリル酸アルキル共重合体エマルションを、第2液中全重量に対するアクリル酸アルキル共重合体の重量%として、3〜13重量%程度、より好ましくは4〜10重量%程度配合するのがよい。
【0043】
また、第2液中にアクリル酸アルキル共重合体重量%として上記範囲で含まれれば特に限定されないが、アクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量としては、第2液中全重量に対して、好ましくは、10〜40重量%程度、より好ましくは12〜30重量%程度配合するのがよい。
【0044】
(B)酸化剤
第2液に含まれる酸化剤としては、公知のものを広く使用できる。具体的には、酸化剤としては、例えば、過酸化水素や水と接触して酸素を遊離する物質が挙げられる。
【0045】
より具体的には、酸化剤としては、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム等が挙げられる。ここで、過酸化水素は、通常、10〜35重量%水溶液として使用され、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム等は、これらの化合物をそのまま配合するか又は水溶液の状態で配合される。本発明において用いる酸化剤としては、好ましくは過酸化水素が挙げられる。これらの酸化剤を、1種又は2種以上混合して用いても良い。
【0046】
酸化剤の配合量としては、脱色又は染毛するのに十分な酸素が発生する量であれば特に限定されないが、第2剤中全重量に対して、酸化剤を0.01〜40重量%程度、好ましくは、0.1〜30重量%程度配合するのがよい。
【0047】
第2液には、更に必要に応じて、公知のpH調整剤、毛髪保護剤、着香料、色素、紫外線吸収剤、安定剤、浸透剤、湿潤剤等の任意成分も、第2剤の性能を損なわない範囲に適宜加えてもよい。
【0048】
第2液の溶媒としては、水が用いられ、通常、精製水が配合される。この場合、水の配合量としては、各成分を所定量配合した場合の残部であり、その配合量は、好ましくは第2剤全重量に対して、10〜95重量%程度である。また、この場合、上記水の配合量は、(A)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び(B)酸化剤、さらに第2剤に配合される各種成分の種類、配合量等により当然に適宜調整される。
【0049】
また、本発明の2液式毛髪化粧料において、第1液及び第2液は各々別々のプラスチック又はアルミ容器に独立して保存されていてもよい。あるいは、第1液及び第2液は、一つのプラスチック又はアルミ容器の内部で2つあるいは複数に別れた空間に独立して保存されていてもよい。
【0050】
II.2液式毛髪化粧料の製造方法
本発明は、
(1)カチオン性ポリマー、アルカリ剤を水に溶解し、混合することにより第1液を調製する工程、及び
(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を水に溶解し、混合することにより第2液を調製する工程、
を含む2液式毛髪化粧料の製造方法
を提供する。
【0051】
II−1.第1液の調製工程
前述の(A)カチオン性ポリマー及び(B)アルカリ剤を水に溶解、混合することにより、第1液を製造することができる。
【0052】
(A)カチオン性ポリマー及び(B)アルカリ剤の使用割合は、得られる第1液中の各成分の濃度が前述の濃度範囲内となるような範囲であればよいが、好ましくは、前者1重量部に対して後者を2〜120重量部、より好ましくは3〜40重量部とすればよい。
【0053】
本発明の方法には、上記第1液の調製工程において、さらに、水に、前述の公知の任意成分、例えば、金属封鎖剤、染料、色素、pH調整剤、毛髪保護剤、着香料、溶解剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、安定剤、浸透剤及び湿潤剤からなる群より選択される少なくとも1つの成分を溶解し、混合する方法も含まれる。この場合、本発明の方法には、上記(A)カチオン性ポリマー、(B)アルカリ剤及び上記任意成分をいずれの順番で水に配合する方法も、これらを同時に配合する方法も含まれる。
【0054】
上記成分を水に添加し、混合する工程は、加熱下で行うこともできるが、本発明の方法においては、非加熱下で行うこともできる。当該操作は、好ましくは、10〜35℃、よりこのましくは、20〜25℃で行われる。
【0055】
本発明においては、第1液を前述の組成とすることにより、混合工程に要する時間を大幅に短縮することができる。例えば、混合工程を、通常、5〜29分、好ましくは5〜9分程度行うことにより第1液を得ることができる。
【0056】
II−2.第2液の調製工程
前述の(A)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び(B)酸化剤を水に溶解、混合することにより、第2液を製造することができる。
【0057】
(A)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び(B)酸化剤(過酸化水素水の場合、過酸化水素水に含まれるHの重量換算)の使用割合は、得られる第2液中の各成分の濃度が前述の濃度範囲内となるような範囲であればよいが、好ましくは、前者1重量部に対して後者を0.15〜0.6重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量部とすればよい。
【0058】
本発明の方法には、上記第2液の調製工程において、水にさらに、前述の公知の任意成分、例えば、pH調整剤、毛髪保護剤、着香料、色素、紫外線吸収剤、安定剤、浸透剤及び湿潤剤からなる群より選択される少なくとも1つを溶解し、混合する方法も含まれる。この場合、本発明の方法には、上記(A)カチオン性ポリマー、(B)アルカリ剤及び上記任意成分をいずれの順番で水に配合する方法も、これらを同時に配合する方法も含まれる。
【0059】
上記成分を水に添加し、混合する工程は、加熱下で行うこともできるが、本発明の方法においては、非加熱下で行うこともできる。当該操作は、好ましくは、10〜35℃、よりこのましくは、20〜25℃で行われる。
【0060】
本発明においては、第2液を前述の組成とすることにより、混合工程に要する時間を大幅に短縮することができる。例えば、混合工程を、通常、5〜29分、好ましくは5〜9分程度行うことにより第2液を得ることができる。
【0061】
こうして得られた第1液及び第2液を、公知の方法、例えば使用直前に第1液と第2液を混合することによって染毛に使用することができる。
【0062】
III.2液式毛髪化粧料の混合及び脱色又は染毛方法
本発明の2液式毛髪化粧料は、第1液と第2液を混合した後、例えば、これを毛髪に塗布するなど常法に従って脱色又は染毛処理することができる。
【0063】
好ましい実施形態において、第1液と第2液とを混合することにより得られる混合液の濃度は、25℃における粘度で1500〜12000mPa・S、好ましくは2000〜10000mPa・Sとなる。本発明において、粘度とは、本願実施例中、「3.混合液の25℃における粘度」に記載の方法により測定された粘度を示す。
【0064】
本発明の2液式毛髪化粧料において、第1液と第2液の混合割合は、混合した際に適度な粘度が得られる割合であれば特に限定されないが、第1液の重量10重量部に対し、通常、第2液が10〜50重量部程度であればよく、好ましくは10〜30重量部程度であればよい。
【0065】
毛髪に対する塗布量は、所望に応じて適宜設定し得るが、長さ30cm程度の全頭で、第1剤を50〜90g程度、第2剤が50〜90g程度、好ましくは、第1剤を70g程度、第2剤が70g程度である。
【0066】
脱色又は染毛時間は、塗布量、アルカリ剤や染料の種類、量、希望の脱色又は染毛の程度によって、適宜選択されるが、5分以上、好ましくは5〜50分、より好ましくは10〜45分、通常40分程度までが例示される。
【0067】
このような本発明の2液式毛髪化粧料によれば、使用時に液ダレせず、毛髪を過脱脂せずに優れた脱色又は染毛効果を発揮し、かつ安価で簡単に低エネルギーで製造できる2液式毛髪化粧料及びその製法を提供することができる。
【実施例】
【0068】
以下の本発明の2液式毛髪化粧料及びその効果について実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、配合量は重量%で示す。
【0069】
試験例
下記表に記載の各成分及び配合割合の第1液を、実施例1〜15及び比較例1及び4〜7については非加熱で攪拌混合し、調製した。また比較例2、3、6及び7についてはアルカリ剤以外の各成分を混合して80℃で加熱溶解させ、攪拌しながら冷却し、ついで45℃付近でアルカリ剤を配合して混合し、室温まで冷却した。これにより、第1液を得た。
【0070】
第2液については、室温で、精製水に、下記表に記載の各成分を攪拌混合して調整した。これにより、第2液を得た。
【0071】
得られた第1液と第2液とを、使用直前に室温で混合し、むらがなくなるまで十分に混ぜ、下記に示した評価方法によって各項目の評価を行なった。
【0072】
1.製造工程
第1液を100g及び第2液100gをそれぞれ前述のように調整し、第1液及び第2液のうち製造により長い時間を要した方の製造時間に基づき、以下の基準で評価を行った。
◎:非加熱工程のみで、製造に要した時間が10分より短い。
○:非加熱工程のみで、製造に要した時間が10分以上、30分未満。
△:非加熱工程のみで、製造に要した時間が30分以上。
×:加熱工程を含み、製造に要した時間が30分以上。
2.使用性
ここで言う使用性とは液ダレしない適度な粘度であるかどうかを意味する。第1液20g、第2液40gを塗布用アプリケーター内にそれぞれ取り、第1液、第2液がきちんと混ざり合うよう、しっかりと混合する。その後、混合液をウィッグに塗布し、20分間放置後、使用性に関して以下の基準で評価した。なお、ここで使用する塗布用アプリケーターは2液式毛髪化粧料で使用される最も一般的なタイプであって、内容物が入っている本体ボトルと、吐出部を1個持ったノズルで構成されている。
◎:アプリケーターからスムーズに吐出可能で、塗布直後から放置後まで液ダレがない。
○:アプリケーターから出にくいが、塗布直後から放置後まで液ダレがない。
△:塗布直後から放置後までほぼ液ダレがない。
×:塗布直後から放置後までに液ダレが生じる。
【0073】
3.混合液の25℃における粘度
第1液20g、第2液40gを直径35mm×高さ78mmサイズの円柱ガラスサンプル管内にそれぞれ取り、フタを閉めて、第1液、第2液がきちんと混ざり合うよう、しっかりと混合する。その後、25℃の恒温相に30分間浸した後、恒温相から取り出し、25℃における粘度をB型粘度計(TVB−10M 東機産業株式会社製)にて、4号ローターで1分間、30回転で測定し、結果を数値で示した。
【0074】
4.手触り
第1液2g及び第2液4gを均一に混合し、混合液6gを得た。この混合液を、黒毛束(人毛)4gに塗布した。30℃で20分放置し、水洗、シャンプー及びコンディショナー後、熱風で乾燥した後のこの毛束の手触り感を、以下の基準で評価した。なお、シャンプー及びコンディショナーは市販品を使用した。
◎:髪のきしみがなく、なめらかな手触り。
○:髪のきしみがほとんどなく、なめらかな手触り。
△:髪がややきしみ、ややごわつきを感じる手触り。
×:髪がきしみ、ごわつきを感じる手触り。
【0075】
総合評価
2液式染毛化粧料は、上記4項目について満遍なく高い性能を示す必要があり、いずれか一項目において性能が劣る場合であっても、製品化上問題を生じ得る。従って、上記4項目全て◎の場合に総合評価◎とし、4項目中1つでも○がある場合、他の項目に◎があっても総合評価○とする。同様に、4項目中1つでも△がある場合に総合評価△とし、そして4項目中1つでも×がある場合に総合評価×とする。上記総合評価する際、粘度項目については、1500〜12000mPa・Sを◎とし、1500mPa・S未満及び12000mPa・Sを超える場合に×として評価した。
各実施例及び比較例の組成及び評価結果を、下記の表1〜6に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
各実施例及び比較例において、アクリル酸アルキル共重合体エマルションとしては、カーボポール AQUA SF−1 POLYMER(ノベオン、純分30%エマルション)を用いた。当該エマルションは、アクリル酸アルキル共重合体を30重量%を含む。
【0078】
実施例1〜3と比較例1〜4を比較することにより、第1液にカチオン性ポリマー及びアルカリ剤を配合し、第2液にアクリル酸アルキル共重合体エマルションと酸化剤を配合すると短時間で加熱せずに簡単に製造でき、かつ使用性及び仕上がりの手触りが優れている2液式脱色剤を提供できることがわかった。
【0079】
【表2】

【0080】
2液式脱色剤同様、実施例4〜6と比較例5〜8との比較より、第1液にカチオン性ポリマー及びアルカリ剤を配合し、第2液にアクリル酸アルキル共重合体エマルションと酸化剤を配合すると短時間で加熱せずに簡単に製造でき、かつ使用性及び仕上がりの手触りが優れている2液式染毛剤を提供できることがわかった。
【0081】
なお、2液式脱色剤及び2液式染毛剤のいずれも同様の効果が得られるため、次項以降、2液式染毛剤の試験例のみで例証する。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
実施例4及び10〜13と比較例9及び10との比較より、2液式染毛剤に含有される第1液中のカチオン性ポリマーの配合量は、第1剤の全量に対して0.05〜3重量%でも十分に所望の効果を得ることができ、0.2〜2重量%でさらに好ましい効果が得られることが分かった。
【0085】
【表5】

【0086】
実施例4及び14〜18、ならびに比較例11及び12より、2液式染毛剤に含有される第2液中のアクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量は、第1剤の全量に対して10〜40重量%(アクリル酸アルキル共重合体の含有量で3〜12重量%)でも十分に所望の効果を得ることができ、12〜30重量%(アクリル酸アルキル共重合体の含有量で4〜9重量%)でさらに好ましい効果が得られることが分かった。
【0087】
【表6】

【0088】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションに代えてアクリル酸アルキル共重合体またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いた場合(比較例13及び14)、いずれも製造に長時間を要し、またそれぞれ、手触り感、または使用性が著しく悪化した。これらの結果より、2液式毛髪化粧料にアクリル酸アルキル共重合体をエマルションの状態で配合することが必要不可欠であることがわかった。
【0089】
表1〜5より、本発明の2液式毛髪化粧料(実施例1〜18)には、比較例1〜14に記載の2液式毛髪化粧料と比べ、製造工程が簡単で、使用時に液ダレすることがなく、仕上がりの感触がよいことが確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)カチオン性ポリマー0.05〜3.0重量%及びアルカリ剤を含有する第1液、ならびに
(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を含有する第2液であって、該アクリル酸アルキル共重合体エマルションを第2液全重量に対するアクリル酸アルキル共重合体の重量%として、3〜13重量%含有する第2液
からなる、2液式毛髪化粧料。
【請求項2】
(1)カチオン性ポリマー、アルカリ剤を水に溶解し、混合することにより第1液を調製する工程、および
(2)アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び酸化剤を水に溶解し、混合することにより第2液を調製する工程、
を含む2液式毛髪化粧料の製造方法。

【公開番号】特開2010−150210(P2010−150210A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332053(P2008−332053)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】