説明

非常用燃料電池発電システム

【課題】燃料電池を用いる非常用発電システムの燃料電池や燃料を商用する筐体外壁面に太陽電池モジュールを設け、該太陽電池モジュールで発電する電力を待機電力として利用することで商用待機力を削減でき、ランニングコストを安価にできる非常用発電システムを提供すること。
【解決手段】筐体10内に、燃料電池11と、燃料となる水素ガスを収容した水素ガス容器を備え、停電時に手動又は自動で前記燃料電池の発電運転を開始し、対象とする重要負荷32に電力を供給する非常用燃料電池発電システムにおいて、筐体10の外壁面に太陽電池モジュール15を設け、該太陽電池モジュール15による発電電力により当該システムの待機電力の一部を賄うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号機管理システム等に代表される重要電力負荷に対する商用電力系統からの電力供給が停電等により停止された際に、燃料電池を起動して該重要電力負荷に対する電力供給を開始、継続する非常用燃料電池発電システムに関し、特に太陽電池を備え、該太陽電池による発電電力を有効に利用し、システムの待機電力に占める商用電力の割合を低減させることができる非常用燃料電池発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通信号機管理システム等に代表される重要電力負荷に対しては、その重要性から商用電力系統からの電力供給が停電等により停止された際に、これに代って非常電力を供給する手段を備えていることがある。これまでは非常電力供給手段としてディーゼルエンジン等の内燃機関を用いた発電設備が使用されていたが、ディーゼルエンジン等の内燃機関を用いた発電設備には、運転時に公害物質を排出することや、運転時の騒音値が大きい等の問題がある。
【0003】
燃料電池は発電時に排出されるのは水と熱だけのクリーンな発電方式であり、且つ運転時の騒音も小さい等の特徴を有しており、近年の燃料電池開発の進行とともに、非常用発電システムとしての運用が検討されてきている。特に水素を燃料とする固体高分子形燃料電池は起動時間が短く、迅速に起動できることから、最も非常用発電設備として適しているとして注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記燃料電池を用いる非常用発電システムでは、燃料電池や水素ガス容器を収容する筐体内温度は、当該非常用発電システムを設置する環境の周囲温度に左右されていた。待機状態において、周囲温度により筐体内温度が所定の温度以上になった場合は燃料電池に付随する換気ファンによる強制換気を実施している。また、筐体内温度が所定の温度以下になった場合は、筐体内に配置したスペースヒータ等の電力を利用する加熱器による加温を実施する構成となっている。上記のように換気ファンによる強制換気やスペースヒータ等による加温は商用電力系統からの商用電力を利用することにより行われるため、ランニングコストの増大を招くという欠点がある。
【0005】
また、待機中に換気ファンによる強制換気が必要となるのは、通常夏期の昼間で気温が高く、日射が強い時間帯になることが予想できる。このような環境では太陽電池にとっても好条件となり発電電力も大きくなるので、待機電力の需要と太陽電池の供給バランスが良い運転となる。これに対して、待機中にスペースヒータ等の電力を利用した加熱器による加温が必要となるのは、通常冬期の夜間で気温が低く、日射が無い時間帯になることが予想される。また、冬期の昼間は太陽高度が低いものの空気が澄んでいることから、比較的強い日射が得られることから、太陽電池による発電電力には余剰電力が多く生じることとなり、このような環境下では待機電力の需要と太陽電池の供給のバランスは非常に悪い運転となる。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、燃料電池を用いる非常用発電システムの燃料電池や燃料を商用する筐体外壁面に太陽電池モジュールを設け、該太陽電池モジュールで発電する電力を待機電力として利用することで商用待機力を削減でき、ランニングコストを安価にできる非常用発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、筐体内に、燃料電池と、燃料となる水素ガスを収容した水素ガス容器を備え、停電時に手動又は自動で前記燃料電池の発電運転を開始し、対象とする負荷系統に電力を供給する非常用燃料電池発電システムにおいて、前記筐体外壁面に太陽電池モジュールを設け、該太陽電池モジュールによる発電電力により当該システムの待機電力の一部を賄うように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の非常用燃料電池発電システムにおいて、蓄電池を設け、前記太陽電池モジュールによる発電電力に余剰が生じた場合、該余剰電力を前記蓄電池に蓄電し、該蓄電した電力を夜間の待機電力として使用することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の非常用燃料電池発電システムにおいて、前記燃料電池が固体高分子形燃料電池であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、筐体外壁面に太陽電池モジュールを設け、該太陽電池モジュールによる発電電力により当該システムの待機電力の一部を賄うように構成したので、その分商用系統から供給される待機電力を節約でき、ランニングコストが安価となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、蓄電池を設け、太陽電池モジュールによる発電電力に余剰が生じた場合、該余剰電力を蓄電池に蓄電し、該蓄電した電力を夜間の待機電力として使用するので、待機電力の需要と太陽電池の供給とのアンバランスを吸収することができ、さらなるランニングコストの低減が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明はによれば、燃料電池が固体高分子形燃料電池であるので、短い時間で迅速に起動できる非常用燃料電池発電システムが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明に係る非常用燃料電池発電システムの構成例を示す図である。図1において、10は内部に非常用燃料電池発電システムを構成する機器を収容する筐体であり、該筐体10内には燃料電池11、制御盤12、スペースヒータ13、換気ファン14及び図示は省略するが燃料となる水素ガスを収容する水素ガスボンベ等が収容配置されている。筐体10の外壁面には太陽電池モジュール15が設けられている。非常用燃料電池発電システムの待機中は商用電力系統30から分電盤31を介して商用電力100が供給され、電力切替器16の商用電力側接点16aを通して交通信号機管理システム等に代表される重要電力負荷32に供給されている。
【0015】
商用電力100の一部100aは燃料電池11に内蔵されているバッテリー充電用としてとして燃料電池11に供給されている。また、商用電力100の一部100bは直流変換用として負荷切替器17のメイン側接点17aを介してAC/DC変換器18に供給され、変換されたDC電力はDC電源切替器19の接点19aを通してスペースヒータ13や換気ファンに供給できるようになっている。また、太陽電池モジュール15で発電されたDC電力はDC電源切替器19の接点19bを通してスペースヒータ13や換気ファン14に供給できるようになっている。また、商用電力100の一部100cは無停電電源装置(UPS)20に供給され、無停電電源装置(UPS)20から制御盤12に電源が供給されるようになっている。また、21は商用電力系統30の停電及び復電を検出する制御盤12に内蔵の停電/復電検出部である。
【0016】
制御盤12は、運転モード選択(自動/断/手動)、燃料電池運転・停止制御、非常運転制御、管理運転制御、換気・温調制御を行なう機能を有する。商用電力系統30が給電中であれば、上記のように商用電力系統30から分電盤31を介して商用電力100が重要電力負荷32に供給されている。太陽電池モジュール15が発電していれば、その発電DC電力はDC電源切替器19の接点19bを通してスペースヒータ13や換気ファン14に供給されており、制御盤12は筐体10内の温度を燃料電池11が何時でも運転できる所定温度範囲の温度になるように、スペースヒータ13や換気ファン14に運転/停止指令S1、S2を出力し、スペースヒータ13や換気ファン14を運転又は停止させている。
【0017】
また、夜間や雨天等で太陽電池モジュール15が発電していない時は制御盤12は負荷切替器17に負荷切替指令S3を送り該負荷切替器17をメイン側に切替、商用電力100の一部100bをメイン側接点17aを介してAC/DC変換器18に供給し、AC/DC変換器18で変換したDC電力をスペースヒータ13や換気ファン14に供給し、制御盤12からの運転/停止指令S1、S2により、スペースヒータ13や換気ファン14の運転・停止を行ない、筐体10内の温度を燃料電池11が何時でも運転できる所定温度範囲の温度に維持する。また、スペースヒータ13や換気ファン14等は比較的不安定な太陽電池モジュール15からの発電DC電力でも運転できるようになっている。
【0018】
商用電力系統30が停電になり、該停電/復電検出部21がそれを検出すると、制御盤12は燃料電池11に運転/停止指令S4の運転指令を出力し、該燃料電池11からの運転完了アンサS5を受信し、燃料電池11の運転を確認する。また、電力切替器16に切替指令S6を出力し、該燃料電池11を燃料電池側に切替える。これにより燃料電池11で発電された電力は電力切替器16の燃料電池側接点16bを通って、重要負荷32に供給される。この場合もに太陽電池モジュール15が発電していれば太陽電池モジュール15からの電力で、発電していなければ燃料電池11からの電力をAC/DC変換器18で変換したDC電圧でスペースヒータ13や換気ファン14の運転・停止を行ない、筐体10内の温度を適切な温度に維持する。
【0019】
上記のように非常用燃料電池発電システムの筐体10の外壁面に太陽電池モジュール15を設置し、その発電直流電力を比較的不安定な電源でも動作可能なスペースヒータ13や換気ファン14等の負荷に直接供給し、且つ独立電源(系統連系なし)として利用することにより、イニシャルコストを大幅に増大させることなく、スペースヒータ13や換気ファン14等の運転に必要な待機電力に太陽電池モジュール15で発電するDC電力を利用することができ、ランニングコストを低減させることが可能となる。
【実施例2】
【0020】
図2は本発明に係る非常用燃料電池発電システムの構成例を示す図である。図2において、図1と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示すので、その詳細な説明は省略する。本非常用燃料電池発電システムが図1の非常用燃料電池発電システムと異なる点は、蓄電池22を設け、該蓄電池22に太陽電池モジュール15による発電電力を一旦該蓄電池22に蓄電させることにより、余剰電力を蓄電池22に蓄電し、該蓄電した電力を夜間の待機電力としスペースヒータ13や換気ファン14等に使用する。これにより待機電力の需要と太陽電池の供給とのアンバランスを吸収することができ、さらなるランニングコストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る非常用燃料電池発電システムの構成例を示す図である。(実施例1)
【図2】本発明に係る非常用燃料電池発電システムの構成例を示す図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0022】
10 筐体
11 燃料電池
12 制御盤
13 スペースヒータ
14 換気ファン
15 太陽電池モジュール
16 電力切替器
17 負荷切替器
18 AC/DC変換器
19 DC電源切替器
20 無停電電源装置(UPS)
21 停電/復電検出部
22 蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、燃料電池と、燃料となる水素ガスを収容した水素ガス容器を備え、停電時に手動又は自動で前記燃料電池の発電運転を開始し、対象とする負荷系統に電力を供給する非常用燃料電池発電システムにおいて、
前記筐体外壁面に太陽電池モジュールを設け、該太陽電池モジュールによる発電電力により当該システムの待機電力の一部を賄うように構成したことを特徴とする非常用燃料電池発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非常用燃料電池発電システムにおいて、
蓄電池を設け前記太陽電池モジュールによる発電電力に余剰が生じた場合、該余剰電力を前記蓄電池に蓄電し、該蓄電した電力を夜間の待機電力として使用することを特徴とする非常用燃料電池発電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非常用燃料電池発電システムにおいて、
前記燃料電池が固体高分子形燃料電池であることを特徴とする非常用燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−4700(P2006−4700A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178237(P2004−178237)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】