説明

非接触型携帯可能電子装置および非接触型ICカード

【課題】メモリへのデータ書込みの途中にエラーが発生しても、データ書込みを最初からやり直す必要がなく、書込みデータ長によっては大幅な処理時間の短縮効果が期待できる非接触型携帯可能電子装置および非接触型ICカードを提供する。
【解決手段】非接触型カードリーダ・ライタから送信される電磁波を受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、非接触型カードリーダ・ライタから送信される書込みコマンドに基づき不揮発性メモリにデータを書込む処理を行ない、その処理結果を非接触型カードリーダ・ライタへ送信する非接触型ICカードにおいて、不揮発性メモリに対するデータの書込み途中にエラーが発生し、書込みが途中まで正常に終了していた場合、その旨のレスポンスに、正常に書込みが終了したデータの長さ、書込みが終了していないデータの長さ、メモリの書込みに失敗したアドレスのうち少なくともいずれか1つを示すデータを付加して非接触型カードリーダ・ライタへ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、非接触型カードリーダ・ライタから送信される電磁波を受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、非接触型カードリーダ・ライタから送信される書込みコマンドに基づき不揮発性メモリにデータを書込む処理を行ない、その処理結果を非接触型カードリーダ・ライタへ送信する非接触型ICカード(無線カードともいわれる)などの非接触型携帯可能電子装置および非接触型ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の非接触型ICカードは、非接触型カードリーダ・ライタから送信される電磁波を受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作し、非接触型カードリーダ・ライタから振幅変調方式により送信されるデータを受信し、この受信した振幅変調されたデータ波形から振幅の変化量を検出することにより受信データを復調し各種データ処理を行ない、その処理結果を非接触型カードリーダ・ライタへ送信するようになっている。
【0003】
また、このような非接触型ICカードでは、コマンド(命令)やレスポンス(応答)を用いて、非接触型カードリーダ・ライタとの間でデータのやりとりを行なうようになっている。
【0004】
ところで、このような非接触型カードリーダ・ライタとの通信に電磁波を使用する非接触型ICカードにおいて、非接触型カードリーダ・ライタから送信される書込みコマンドに基づき不揮発性メモリにデータを書込む処理を行なう際、不揮発性メモリへのデータ書込み途中に何らかのエラーが発生した場合、非接触型ICカードの通信プロトコルに準拠している際には、書込みエラーあるいは無応答を非接触型カードリーダ・ライタへ応答することになっている(たとえば、非特許文献1、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−63795号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国際標準化規格 ISO/IEC14443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、通信に電磁波を使用する非接触型ICカードにおいて、不揮発性メモリへのデータ書込み途中にエラーが発生した場合、書込みエラーあるいは無応答を非接触型カードリーダ・ライタへ応答することになる。したがって、再度データ書込みを行なう際には、最初からやり直す必要があり、正常に書込みが終了したデータ部分を無駄にし、データ書込みに要した時間も無駄にしてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、メモリへのデータ書込みの途中にエラーが発生しても、データ書込みを最初からやり直す必要がなく、書込みデータ長によっては大幅な処理時間の短縮効果が期待できる非接触型携帯可能電子装置および非接触型ICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の非接触型携帯可能電子装置は、外部装置から送信される電磁波を受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、前記外部装置から送信される書込みコマンドに基づき、当該書込みコマンドに付加されたデータをメモリに書込む処理を行ない、その処理結果を前記外部装置へ送信する非接触型携帯可能電子装置において、前記メモリに対するデータの書込み途中にエラーが発生し、データ書込みが途中まで正常に終了していた場合、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを前記外部装置へ送信する手段を具備したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の非接触型ICカードは、外部装置との間で非接触による通信を行なうためのアンテナ部と、このアンテナ部と電気的に接続され、前記外部装置から送信される電磁波を前記アンテナ部を介して受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、前記外部装置から送信される書込みコマンドに基づき、当該書込みコマンドに付加されたデータをメモリに書込む処理を行ない、その処理結果を前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する機能を有するICチップと、前記アンテナ部および前記ICチップを一体的に収納したカード本体とを具備し、前記ICチップは、前記メモリに対するデータの書込み途中にエラーが発生し、データ書込みが途中まで正常に終了していた場合、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メモリへのデータ書込みの途中にエラーが発生しても、データ書込みを最初からやり直す必要がなく、書込みデータ長によっては大幅な処理時間の短縮効果が期待できる非接触型携帯可能電子装置および非接触型ICカードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る非接触型携帯可能電子装置としての非接触型ICカードの構成を概略的に示すブロック図。
【図2】非接触型ICカードの外観構成を模式的に示す平面図。
【図3】不揮発性メモリに対してデータ書込みを行なっている途中にエラーが発生した場合の処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る非接触型携帯可能電子装置としての非接触型ICカードの構成を概略的に示すものである。この非接触型ICカードは、外部装置としての非接触型カードリーダ・ライタ10との間でデータを送受信するための送受信アンテナ部11、送受信アンテナ部11で受信した非接触型カードリーダ・ライタ10からの電力波を整流回路にて整流、平滑することにより安定化された直流電圧を生成して各機能部(後述する機能部13〜19)に動作電圧として供給する電源生成部12、同じく受信した電力波から動作クロックを生成して各機能部(後述する機能部14〜19)に供給するクロック(CLK)生成部13、受信データを復調する復調部14、送信データを変調する変調部15、送受信データの通信制御や各種割込み処理などを行なうとともに各種データ処理や全体的な制御を行なう制御手段としての制御部16、制御部16の制御プログラム等があらかじめ格納されているROM(リード・オンリ・メモリ)17、一時的なデータの書込み/読出しが行なわれるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)18、および、各種データが格納されるEEPROM(エレクトリカリ・イレーザブル・アンド・プログラマブル・リード・オンリ・メモリ)などの不揮発性メモリ19を有して構成される。
【0014】
送受信アンテナ部11は、前記したように、非接触型カードリーダ・ライタ10との間で非接触による通信を行なうためのもので、アンテナコイルLとコンデンサCとでLC共振回路を形成し、非接触型カードリーダ・ライタ10からの電磁波(13.56MHz)を効率よく受信可能な共振周波数に同調される。
【0015】
制御部16は、上記したように、送受信データの通信制御や各種割込み処理などを行なうとともに各種データ処理や全体的な制御を行なうもので、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)を主体に構成されている。
【0016】
送受信アンテナ部11を除く他の各機能部12〜16は、1つ(あるいは複数)のICチップ20で構成され、さらに、このICチップ20と送受信アンテナ部11とが電気的に接続された状態で一体化されてICモジュール21とされ、このICモジュール21が図2に示すようにICカード本体22内に収納(埋設)されている。
【0017】
次に、上記のように構成された非接触型ICカードの基本的な動作について簡単に説明する。
【0018】
非接触型ICカードと非接触型カードリーダ・ライタ10との間のデータの送受信は、それぞれアンテナ部11を用いて電磁誘導方式等により行なわれる。非接触型カードリーダ・ライタ10は、非接触型ICカードへの送信データを内部で作成し、変調信号としてアンテナ部11を介して非接触型ICカードへ送信する。
【0019】
通信エリア内に存在する非接触型ICカードは、アンテナ部11にて変調されたデータを受信する。受信したデータは復調部14で復調され、制御部16へ送られる。制御部16は、ROM17に格納された制御プログラムにしたがって動作し、受信データの解析や受信したデータを不揮発性メモリ19に格納するなどの処理を行なう。なお、受信データをRAM18内の送受信バッファに一旦書込むようにしてもよい。
【0020】
その後、制御部16は、受信データについて、不揮発性メモリ19においてデータの読出し、書込み処理を行ない、応答のための送信データを作成する。この送信データは、制御部16から変調部15へ送られて変調され、この変調信号がアンテナ部11から非接触型カードリーダ・ライタ10へ送信される。
【0021】
次に、不揮発性メモリ19に対してデータ書込みを行なっている途中にエラーが発生した場合の処理について図3に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0022】
非接触型カードリーダ・ライタ10により非接触型ICカードが活性化され、その後、非接触型カードリーダ・ライタ10から非接触ICカードへ書込みコマンドが送信される。非接触型カードリーダ・ライタ10からの書込みコマンドを受信すると(ステップS1)、制御部16は、書込みコマンドで指定された通り、当該書込みコマンドに付加されたデータを不揮発性メモリ19へ書込む処理を実行する(ステップS2)。
【0023】
次に、制御部16は、不揮発性メモリ19へのデータ書込み処理が正常に終了したか否かをチェックし(ステップS3)、当該データ書込み処理が正常に終了すれば、その旨のレスポンス(たとえば、ステータスコード:90 00)を非接触型カードリーダ・ライタ10へ送信する(ステップS4)。
【0024】
ここで、ステップS3におけるチェックの具体例について説明すると、一般に非接触型カードリーダ・ライタ10からはデータが250バイトごとに送信されるので、250バイトごとにチェックが行なわれる。
【0025】
ステップS3におけるチェックの結果、当該データ書込み処理が正常に終了していない場合(エラーが発生した場合)、当該データ書込み処理が途中まで正常に終了したか否かをチェックし(ステップS5)、当該データ書込み処理が途中まで正常に終了しなかった場合、その旨のレスポンス(たとえば、ステータスコード:65 81)を非接触型カードリーダ・ライタ10へ送信する(ステップS6)。
【0026】
ステップS5におけるチェックの結果、当該データ書込み処理が途中まで正常に終了した場合、途中まで正常に書込めた旨のレスポンス(たとえば、ステータスコード:65 81)を非接触型カードリーダ・ライタ10へ送信する(ステップS6)。
【0027】
また、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを非接触型カードリーダ・ライタ10へ応答する際に、正常に書込みが終了したデータの長さ、書込みが終了していないデータの長さ、不揮発性メモリ19の書込みに失敗したアドレス(番地)のうち少なくともいずれか1つを示すデータを当該レスポンスに付加して非接触型カードリーダ・ライタ10へ送信するようにしてもよい。
【0028】
このように、不揮発性メモリ19へのデータ書込みの途中にエラーが発生し、書込みが途中まで正常に終了していた場合、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを非接触型カードリーダ・ライタ10へ応答することにより、データ書込みを最初からやり直す必要がなく、書込みのデータ長によっては大幅な処理時間の短縮効果が期待できる。
【0029】
また、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを非接触型カードリーダ・ライタ10へ応答する際に、正常に書込みが終了したデータの長さを示すデータを付加することにより、再度書込みを行なう際に、非接触型カードリーダ・ライタ10から差分の書込みデータを送ることで送受信および書込みの時間を短縮できる。特に、書込みデータおよび途中まで正常に書込みが完了しているデータが長ければ長いほど有効となる。
【0030】
また、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを非接触型カードリーダ・ライタ10へ応答する際に、書込みが終了していないデータの長さを示すデータを付加することにより、再度書込みを行なう際に、非接触型カードリーダ・ライタ10から書込みが終了していない分の書込みデータを送ることで送受信および書込みの時間を短縮できる。特に、書込みデータおよび途中まで正常に書込みが完了しているデータが長ければ長いほど有効となる。
【0031】
さらに、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを非接触型カードリーダ・ライタ10へ応答する際に、不揮発性メモリ19の書込みに失敗したアドレスを示すデータを付加することにより、再度書込みを行なう際に、非接触型カードリーダ・ライタ10から残りの書込み開始アドレスおよびデータを送信すればよく、送受信および書込みの時間を短縮できる。特に、書込みデータおよび途中まで正常に書込みが完了しているデータが長ければ長いほど有効となる。
【符号の説明】
【0032】
10…非接触型カードリーダ・ライタ(外部装置)、11…送受信アンテナ部、12…電源生成部、13…クロック(CLK)生成部、14…復調部、15…変調部、16…制御部(制御手段)、17…ROM、18…RAM、19…不揮発性メモリ(EEPROM)、20…ICチップ、21…ICモジュール、22…ICカード本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から送信される電磁波を受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、前記外部装置から送信される書込みコマンドに基づき、当該書込みコマンドに付加されたデータをメモリに書込む処理を行ない、その処理結果を前記外部装置へ送信する非接触型携帯可能電子装置において、
前記メモリに対するデータの書込み途中にエラーが発生し、データ書込みが途中まで正常に終了していた場合、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを前記外部装置へ送信する手段を具備したことを特徴とする非接触型携帯可能電子装置。
【請求項2】
外部装置から送信される電磁波を受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、前記外部装置から送信される書込みコマンドに基づき、当該書込みコマンドに付加されたデータをメモリに書込む処理を行ない、その処理結果を前記外部装置へ送信する非接触型携帯可能電子装置において、
前記メモリに対するデータの書込みが正常に終了したか否かを判定する第1の判定手段と、
この第1の判定手段による判定の結果、前記メモリに対するデータの書込みが正常に終了した場合、その旨のレスポンスを前記外部装置へ送信する手段と、
前記第1の判定手段による判定の結果、前記メモリに対するデータの書込みが正常に終了していない場合、当該データの書込みが途中まで正常に終了したか否かを判定する第2の判定手段と、
この第2の判定手段による判定の結果、当該データの書込みが途中まで正常に終了していない場合、その旨のレスポンスを前記外部装置へ送信する手段と、
前記第2の判定手段による判定の結果、当該データの書込みが途中まで正常に終了していた場合、その旨のレスポンスに、正常に書込みが終了したデータの長さ、書込みが終了していないデータの長さ、前記メモリの書込みに失敗したアドレスのうち少なくともいずれか1つを示すデータを付加して前記外部装置へ送信する手段と、
を具備したことを特徴とする非接触型携帯可能電子装置。
【請求項3】
外部装置との間で非接触による通信を行なうためのアンテナ部と、
このアンテナ部と電気的に接続され、前記外部装置から送信される電磁波を前記アンテナ部を介して受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、前記外部装置から送信される書込みコマンドに基づき、当該書込みコマンドに付加されたデータをメモリに書込む処理を行ない、その処理結果を前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する機能を有するICチップと、
前記アンテナ部および前記ICチップを一体的に収納したカード本体とを具備し、
前記ICチップは、前記メモリに対するデータの書込み途中にエラーが発生し、データ書込みが途中まで正常に終了していた場合、途中まで正常に書込めた旨のレスポンスを前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する手段を具備したことを特徴とする非接触型ICカード。
【請求項4】
外部装置との間で非接触による通信を行なうためのアンテナ部と、
このアンテナ部と電気的に接続され、前記外部装置から送信される電磁波を前記アンテナ部を介して受信し、この受信した電磁波により動作電圧を生成して動作するもので、前記外部装置から送信される書込みコマンドに基づき、当該書込みコマンドに付加されたデータをメモリに書込む処理を行ない、その処理結果を前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する機能を有するICチップと、
前記アンテナ部および前記ICチップを一体的に収納したカード本体とを具備し、
前記ICチップは、
前記メモリに対するデータの書込みが正常に終了したか否かを判定する第1の判定手段と、
この第1の判定手段による判定の結果、前記メモリに対するデータの書込みが正常に終了した場合、その旨のレスポンスを前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する手段と、
前記第1の判定手段による判定の結果、前記メモリに対するデータの書込みが正常に終了していない場合、当該データの書込みが途中まで正常に終了したか否かを判定する第2の判定手段と、
この第2の判定手段による判定の結果、当該データの書込みが途中まで正常に終了していない場合、その旨のレスポンスを前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する手段と、
前記第2の判定手段による判定の結果、当該データの書込みが途中まで正常に終了していた場合、その旨のレスポンスに、正常に書込みが終了したデータの長さ、書込みが終了していないデータの長さ、前記メモリの書込みに失敗したアドレスのうち少なくともいずれか1つを示すデータを付加して前記アンテナ部を介して前記外部装置へ送信する手段と、
を具備したことを特徴とする非接触型ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−198208(P2010−198208A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41102(P2009−41102)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】