非接触認識装置を備えたシート状製品
【課題】使用中は破損し難く、廃棄時には情報読み出し機能を容易に失わせて機密性を確保することが出来る非接触認識装置(RFID)を備えたシート状製品を得る。
【解決手段】情報を記憶可能な記憶部、及び近接無線通信を可能とする通信回路を含む非接触認識装置本体部と、アンテナ配線とを備えた非接触認識装置をシート材に配してなるシート状製品(例えばチケットや書類)であって、非接触認識装置本体部とアンテナ配線とを、別個の基板にそれぞれ設け、シート材の異なる領域部分にそれぞれ配し、シート材に配した導電性部材により電気的に接続する。非接触認識装置本体部をシート材の一端に設け、アンテナ配線をシート材の他端に設けることが望ましい。シート材の破断を誘導可能な破断誘導部(ミシン目)をシート材に設け、導電性部材を破断誘導部と交差するように設ける。導電性部材は、例えば導電性インクを用いて印刷して形成する。
【解決手段】情報を記憶可能な記憶部、及び近接無線通信を可能とする通信回路を含む非接触認識装置本体部と、アンテナ配線とを備えた非接触認識装置をシート材に配してなるシート状製品(例えばチケットや書類)であって、非接触認識装置本体部とアンテナ配線とを、別個の基板にそれぞれ設け、シート材の異なる領域部分にそれぞれ配し、シート材に配した導電性部材により電気的に接続する。非接触認識装置本体部をシート材の一端に設け、アンテナ配線をシート材の他端に設けることが望ましい。シート材の破断を誘導可能な破断誘導部(ミシン目)をシート材に設け、導電性部材を破断誘導部と交差するように設ける。導電性部材は、例えば導電性インクを用いて印刷して形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触認識装置を備えたシート状製品に係り、特にRFIDのような非接触型ICタグを備えたシート状製品の情報読み出し機能を簡易に喪失させることが出来るようにすることにより、セキュリティ性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IC技術の進歩により、RFID(Radio Frequency Identification/電波方式認識)あるいはICタグと称される、近接無線交信を使用する非接触型の認識装置が開発され、近年利用されつつある。かかる非接触認識装置(以下、単にタグと称することもある)は、一般に、通信回路とメモリを内蔵するICチップと、アンテナとを備えており、ホスト装置(リーダライタ)と至近距離で無線交信を行うことにより、メモリ内の情報を読み出しあるいはメモリ内に情報を書き込むことが可能である。
【0003】
非接触認識装置の利用形態としては、例えばチケットにタグを取り付け、正規のチケットか否か判定を行ったり(下記特許文献1参照)、病院のカルテや個人情報を記載した書類、包装材など各種のシート状製品にタグを取り付け、当該シートに記載された情報を含め、様々な情報をメモリ内に格納する場合がある。
【0004】
このようなシート状製品にタグを設ける場合には、通常、肉薄の基板上に成膜技術を試用してアンテナ配線を作成しICを実装して、それをシートの表面や内部に固定するが(下記特許文献2,3参照)、アンテナ配線を印刷によりシート材に直接形成する方法も知られている(下記特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−326672号公報
【特許文献2】特開2002−120475号公報
【特許文献3】特開2002−337482号公報
【特許文献4】特開2003−155062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に個人情報などの秘密情報が入った書類を破棄する場合には、書類に記載された内容を判読できないように細かく手で破き、あるいはシュレッダにかけて書類を裁断することが広く行われている。
【0007】
ところが、上記のようなタグを備えたシートにあっては、タグ内の情報が廃棄後においてもそのまま容易に読み出せることが少なくなく、従来のタグを付したシート状製品には、機密保持性に欠けるという問題がある。
【0008】
なぜなら、上記のようにシートに設けられたタグは、基板上に設けたICとアンテナ等からなるため、シート(例えば紙)の再生上の理由から、あるいは刃を傷めるという機器上の理由から、シュレッダによる廃棄が出来ないことも多いからである。
【0009】
また、人が手で破る場合には、タグの基板は紙よりも硬いため、タグ部分は破れず、そのまま残る可能性が高い。書類は細かく破かれても、破り捨てた紙片にはタグがそのまま残り、廃棄前と全く同様に情報を読み出すことが出来てしまうのである。
【0010】
一方、上記非接触認識装置におけるアンテナ配線はその構造上、線路の一部が立体的に交差する部分を通常有しており、アンテナ配線を印刷により形成する場合、この交差部分の形成が煩雑で、製造コストを上昇させる原因となる。さらに、このような交差部分を有する配線をシート状製品に直接印刷して形成すると、当該交差部分がシート材の撓みに追従することが出来ず、当該シート状製品の使用中にアンテナ配線が破損し、実用性に欠ける難もある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、使用中は破損し難く、廃棄時には情報読み出し機能を容易に失わせて機密性を確保することが可能な非接触認識装置を備えたシート状製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成して課題を解決するため、本発明に係るシート状製品は、情報を記憶可能な記憶部および通信回路を含む非接触認識装置本体部と、アンテナ配線とを備えた非接触認識装置をシート材に配してなるシート状製品であって、前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、別個の基板にそれぞれ設けるとともに、前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、前記シート材の異なる領域部分にそれぞれ配し、前記非接触認識装置本体部と前記アンテナ配線とを、前記シート材に配した導電性部材により電気的に接続したことを特徴とする。
【0013】
本発明のシート状製品では、非接触認識装置本体部とアンテナ配線は、それぞれ基板上に形成されるため、シート材が折り曲げられても非接触認識装置本体部とアンテナ配線とを破損から保護することができ、屈曲に対する強度を十分に確保することが出来る。
【0014】
一方、非接触認識装置本体部とアンテナ配線とを接続する線路となる導電性部材は、シート材に直接形成しても構造が単純なため、シート材を屈曲させたときにも破損し難い。
【0015】
他方、この線路部分(導電性部材)は、基板上でなくシート材に直接形成したものであるから、シート材と一緒に破って容易に切断することが出来る。したがって、当該シート状製品がその役割を終えたときに人手により簡単に破って非接触認識装置本体部とアンテナ配線との接続を切断し、これにより廃棄時に、当該非接触認識装置の情報読み出し機能を喪失させ、前記記憶部内に格納された情報を保護することが可能となる。
【0016】
尚、非接触認識装置には、情報の読み出しと書き込みの両方が可能なタイプ、1回だけ書き込み可能な追記タイプ、並びに、読み出しのみが可能なリード専用タイプの3種類の形式があるが、本発明にいう上記非接触認識装置は、これらいずれのタイプをも含むものである。
【0017】
シート状製品は、様々なものがあり特に限定されない。一例を挙げれば、チケット・クーポン券・入場券・割引券・商品券・各種サービス券のようなチケット類、あるいはカルテや個人情報書類、社内文書のような文書類、そのほか何らかの情報を含むシート状物品が含まれ、本発明はこれらに対し広く適用することが可能である。
【0018】
さらにシート材の種類(材質)は、典型的には、紙であるが、他の素材であっても良い。例えば、樹脂フィルムや布、2種類以上の材料により形成された複合シート材等が含まれる。また、シート材の形状やサイズ等についても特に限定はなく、様々な形状・サイズのものであって構わない。
【0019】
前記非接触認識装置本体部およびアンテナ配線のシート材への配置位置は、非接触認識装置本体部をシート材の一端部に設け、アンテナ配線をシート材の他端部に設けることが望ましい。
【0020】
書類のようなシートを破って廃棄する場合には、通常、まずシートの両端を手で持ってシート中央部を破くことが多いからである。上記配置によれば、意識的に破く場合だけでなく、たとえ無意識に書類等を破って廃棄した場合にあっても、導電性部材が切断され、非接触認識装置に格納された情報の機密性が保護されやすくなる。
【0021】
また、上記シート状製品は、前記シート材の破断を誘導可能な破断誘導部を備え、前記導電性部材が、当該破断誘導部と交差するように前記シート材に設けられていても良い。
【0022】
このようなシート構造によれば、当該シート状製品を破り捨てるときに、破断誘導部に誘導されてシート材が破断され、これに伴い破断誘導部と交差する導電性部材が切断されて非接触認識装置の情報読み出し機能を容易に喪失させることが出来る。また、シート状製品として例えばチケットを構成する場合には、チケット本体と半券との間に設けられた破断誘導部(いわゆるミシン目等)と交差するように前記導電性部材を設けることで、半券を切り離したときに同時にこの導電性部材が切断され、情報読み出し機能を喪失させるようにすることが出来る。したがって、チケットの不正な再使用を防ぐことも可能となる。
【0023】
上記破断誘導部は、例えば、シート材を貫通する複数の小孔を配列させてなる線状部(いわゆるミシン目等)を形成し、あるいはシート材に溝や折り目を形成するなど、他の部分より強度を低下させた部分(低強度部)をシート材に設けることにより形成することが出来る。
【0024】
ただし、本発明の破断誘導部は、必ずしも上記低強度部のみに限定されるものではなく、当該シート状製品を扱う者に対して破断位置を表示する記載(例えば直線や破線等をシート材表面に単に印刷したもの)をも含む。例えばチケットでは、実際にミシン目が入れられたものだけでなく、単に切り取り表示線が印刷されただけのものも少なくなく、このような切り取り表示線も、上記低強度部によって構成された破断誘導部と同様に、導電性部材の切断を促すことが出来るからである。
【0025】
前記導電性部材は、前記シート材に印刷可能な導電性材料により形成されていても良い。
【0026】
シート状製品には、その種類・用途に応じて様々な印刷がなされることがあるが、上記構成によれば、当該印刷工程において導電性部材を一緒に印刷して(一般的な印刷工程で)形成することが可能となる。尚、上記「シート材に印刷可能な導電性材料」とは、具体的には、印刷工程で使用可能な導電性ペーストまたは導電性インクを意味する。
【0027】
また、アンテナ配線は、一般に非接触認識装置本体部に較べ形成面積が大きくなる。したがって、シート状製品の使用(撓み)を妨げることがないよう特にアンテナ配線を形成する基板は、可撓性を有する基板とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、非接触認識装置の情報読み出し機能を簡単に失わせることができ、非接触認識装置を備えたシート状製品の機密保持性を高めることが可能となる。
【0029】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。尚、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【0031】
図1は、本発明の第一の実施形態に係るシート状製品を示すもので、シート状製品としてチケットを構成したものである。
【0032】
同図に示すようにこのチケット1は、チケット紙片2の裏面に非接触認識装置(RFID)11を配したもので、チケット紙片2は、切り取り線(いわゆるミシン目)3を介して一体となったチケット本体2aと半券2bとからなる。また、非接触認識装置(RFID)11は、ICチップ15と、アンテナ12とを備え、これらICチップ15とアンテナ12とをチケット紙片2の裏面に配した導電性部材4a,4bにより電気的に接続してなる。
【0033】
また、ICチップ15はチケット本体2a側に、アンテナ12は半券2b側にそれぞれ貼付してあり、したがってICチップ15とアンテナ12を接続する導電性部材4a,4bは、切り取り線3と交差することとなる。導電性部材4a,4bは、導電性インクにより形成する。
【0034】
尚、チケット紙片2自体は、従来から使用されている通常の紙製のチケットと同様のものを使用することが出来る。切り取り線3は、紙片2を貫通する多数の孔が配列されたいわゆるミシン目であっても良いし、単に印刷された破線や実線等であっても構わない。
【0035】
図2は、RFID11を拡大して示すものである。アンテナ12は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミド等の可橈性を有する基材13上にめっき、スパッタまたはCVD等の成膜技術を用いてアンテナ配線14と、アンテナ端子14a,14bを形成したものである。尚、アンテナ配線14は、アンテナ端子14bを引き出すため、一部立体的に交差させる必要があるが、当該交差部分は、短絡しないよう絶縁性を確保した多層構造とする。
【0036】
一方、ICチップ15は、従来から知られたRFIDが有する機能を実現するための諸回路を内蔵している。具体的には、情報を記憶する記憶部として半導体メモリを、またリーダライタまたはリーダ(以下、単にリーダライタという)と近接無線通信を行うための通信回路として、発振回路、変復調回路、RF回路および制御回路等をそれぞれ備えている。動作用の電力は、リーダライタが供給する電力をアンテナ配線3が受け取ることにより供給される。また、RFID1に電力供給源を有して、リーダライタからの電力供給によらず動作するものであっても良い。
【0037】
RFID11は、情報の読み出しと書き込みの両方が可能なタイプ、1回だけ書き込み可能な追記タイプ、あるいは、読み出しのみが可能なリード専用タイプのいずれのタイプであっても良い。
【0038】
図3は、図1のX−X線断面図である。本実施形態では、チケット本体2aの裏面にICチップ15を、半券2bの裏面にアンテナ12を貼り付けてある。尚、図示の例とは逆に、アンテナ12をチケット本体2a側に、ICチップ15を半券2b側に設けるようにしても良い。導電性部材4aは、アンテナ12のアンテナ端子14aとICチップ15のICチップ端子15aを接続するようにチケット裏面に印刷してある。また、同様に導電性部材4bを、アンテナ12のアンテナ端子14bとICチップ15のICチップ端子15bを接続するようにチケット裏面に印刷してある(図3では図示せず/図2参照)。
【0039】
本実施形態のチケット1は、このように構成されているから、切り取り線3の位置でチケット1を破り、チケット本体2aと半券2bを切り離すと、導電性部材4a,4bが切断され、これによりRFID11の情報読み出し機能を喪失させることが出来る。したがって、チケット1の不正な再使用を防ぐことが可能となる。
【0040】
図4は、上記第一実施形態の変形例に係るシート状製品を示すものである。この変形例は、上記第一の実施形態と同様にチケットを構成したものであるが、チケット紙片(チケット本体2aおよび半券2b)が二層構造となっており、層間にアンテナ(基板13上に形成したアンテナ配線14)とICチップ15を挟み込んだ構造となっている。
【0041】
また、図5に拡大して示すように、チケット本体2aと半券2bの裏面側(図4の上側)の層では、アンテナ端子14aとICチップ端子15aに相当する部位に開口部2cを形成する。チケット紙片裏面に配する導電性部材により、開口部2cを通じてアンテナ端子14aとICチップ端子15aとを接続できるようにするためである。尚、図5では導電性部材4aは省略してある。
【0042】
そして、導電性インクを用いてチケット紙片の裏面に導電性部材4a,4bを印刷して形成し、上記開口部2cを通じてアンテナ端子14aとICチップ端子15a、並びにアンテナ端子14bとICチップ端子15bをそれぞれ接続することによりICチップ15とアンテナ12を接続する。このように開口部2cを通じた接続構造とすれば、二層間(紙片内部)に導電性部材を印刷する必要がなく、アンテナ12とICチップ15を挟み込んだ状態で、チケット1の表面に一般的な印刷をするときに導電性部材4a,4bを同時に印刷することが可能となる。
【0043】
図6は、本発明の第二の実施形態に係るシート状製品を示すものである。この実施形態は、書類を構成したもので、同図に示すように書類21は、書類紙片22の裏面にアンテナ12とICチップ15を貼り付け、これらアンテナ12とICチップ15を導電性インクからなる導電性部材4a,4bにより電気的に接続したものである。
【0044】
アンテナ12、ICチップ15および導電性部材4a,4bの各構成は、前記第一の実施形態と同様であるが、本実施形態では、書類紙片22の長辺方向について一方の端部にアンテナ12を、他方の端部にICチップ15をそれぞれ配置してある。このように紙片22の両端部にアンテナ12とICチップ15とを振り分けて配置しておけば、書類21を破り捨てるときに容易に(特に意識しなくても)導電性部材4a,4bが切断されることとなり、RFIDの情報読み出し機能を喪失させることが出来る。
【0045】
尚、かかる紙片においては、アンテナ12とICチップ15とを、短辺方向の両端部、あるいは対角線方向の両端部に設けるようにしても良い。
【0046】
以上、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るシート状製品(チケット)を示す平面図である。
【図2】前記第一実施形態に係るシート状製品が備える非接触認識装置(RFID)を拡大して示す平面図である。
【図3】図1のX−X線断面図である。
【図4】前記第一実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】図4のA部分を拡大して示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るシート状製品(書類)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 シート状製品(チケット)
2 チケット紙片
2a チケット本体
2b 半券
2c 開口部
3 切り取り線(ミシン目)
4a,4b 導電性部材
11 非接触認識装置(RFID)
12 アンテナ
13 基板
14 アンテナ配線
14a,14b アンテナ端子
15 ICチップ
15a,15b ICチップ端子
21 シート状製品(書類)
22 書類紙片
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触認識装置を備えたシート状製品に係り、特にRFIDのような非接触型ICタグを備えたシート状製品の情報読み出し機能を簡易に喪失させることが出来るようにすることにより、セキュリティ性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IC技術の進歩により、RFID(Radio Frequency Identification/電波方式認識)あるいはICタグと称される、近接無線交信を使用する非接触型の認識装置が開発され、近年利用されつつある。かかる非接触認識装置(以下、単にタグと称することもある)は、一般に、通信回路とメモリを内蔵するICチップと、アンテナとを備えており、ホスト装置(リーダライタ)と至近距離で無線交信を行うことにより、メモリ内の情報を読み出しあるいはメモリ内に情報を書き込むことが可能である。
【0003】
非接触認識装置の利用形態としては、例えばチケットにタグを取り付け、正規のチケットか否か判定を行ったり(下記特許文献1参照)、病院のカルテや個人情報を記載した書類、包装材など各種のシート状製品にタグを取り付け、当該シートに記載された情報を含め、様々な情報をメモリ内に格納する場合がある。
【0004】
このようなシート状製品にタグを設ける場合には、通常、肉薄の基板上に成膜技術を試用してアンテナ配線を作成しICを実装して、それをシートの表面や内部に固定するが(下記特許文献2,3参照)、アンテナ配線を印刷によりシート材に直接形成する方法も知られている(下記特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−326672号公報
【特許文献2】特開2002−120475号公報
【特許文献3】特開2002−337482号公報
【特許文献4】特開2003−155062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に個人情報などの秘密情報が入った書類を破棄する場合には、書類に記載された内容を判読できないように細かく手で破き、あるいはシュレッダにかけて書類を裁断することが広く行われている。
【0007】
ところが、上記のようなタグを備えたシートにあっては、タグ内の情報が廃棄後においてもそのまま容易に読み出せることが少なくなく、従来のタグを付したシート状製品には、機密保持性に欠けるという問題がある。
【0008】
なぜなら、上記のようにシートに設けられたタグは、基板上に設けたICとアンテナ等からなるため、シート(例えば紙)の再生上の理由から、あるいは刃を傷めるという機器上の理由から、シュレッダによる廃棄が出来ないことも多いからである。
【0009】
また、人が手で破る場合には、タグの基板は紙よりも硬いため、タグ部分は破れず、そのまま残る可能性が高い。書類は細かく破かれても、破り捨てた紙片にはタグがそのまま残り、廃棄前と全く同様に情報を読み出すことが出来てしまうのである。
【0010】
一方、上記非接触認識装置におけるアンテナ配線はその構造上、線路の一部が立体的に交差する部分を通常有しており、アンテナ配線を印刷により形成する場合、この交差部分の形成が煩雑で、製造コストを上昇させる原因となる。さらに、このような交差部分を有する配線をシート状製品に直接印刷して形成すると、当該交差部分がシート材の撓みに追従することが出来ず、当該シート状製品の使用中にアンテナ配線が破損し、実用性に欠ける難もある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、使用中は破損し難く、廃棄時には情報読み出し機能を容易に失わせて機密性を確保することが可能な非接触認識装置を備えたシート状製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成して課題を解決するため、本発明に係るシート状製品は、情報を記憶可能な記憶部および通信回路を含む非接触認識装置本体部と、アンテナ配線とを備えた非接触認識装置をシート材に配してなるシート状製品であって、前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、別個の基板にそれぞれ設けるとともに、前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、前記シート材の異なる領域部分にそれぞれ配し、前記非接触認識装置本体部と前記アンテナ配線とを、前記シート材に配した導電性部材により電気的に接続したことを特徴とする。
【0013】
本発明のシート状製品では、非接触認識装置本体部とアンテナ配線は、それぞれ基板上に形成されるため、シート材が折り曲げられても非接触認識装置本体部とアンテナ配線とを破損から保護することができ、屈曲に対する強度を十分に確保することが出来る。
【0014】
一方、非接触認識装置本体部とアンテナ配線とを接続する線路となる導電性部材は、シート材に直接形成しても構造が単純なため、シート材を屈曲させたときにも破損し難い。
【0015】
他方、この線路部分(導電性部材)は、基板上でなくシート材に直接形成したものであるから、シート材と一緒に破って容易に切断することが出来る。したがって、当該シート状製品がその役割を終えたときに人手により簡単に破って非接触認識装置本体部とアンテナ配線との接続を切断し、これにより廃棄時に、当該非接触認識装置の情報読み出し機能を喪失させ、前記記憶部内に格納された情報を保護することが可能となる。
【0016】
尚、非接触認識装置には、情報の読み出しと書き込みの両方が可能なタイプ、1回だけ書き込み可能な追記タイプ、並びに、読み出しのみが可能なリード専用タイプの3種類の形式があるが、本発明にいう上記非接触認識装置は、これらいずれのタイプをも含むものである。
【0017】
シート状製品は、様々なものがあり特に限定されない。一例を挙げれば、チケット・クーポン券・入場券・割引券・商品券・各種サービス券のようなチケット類、あるいはカルテや個人情報書類、社内文書のような文書類、そのほか何らかの情報を含むシート状物品が含まれ、本発明はこれらに対し広く適用することが可能である。
【0018】
さらにシート材の種類(材質)は、典型的には、紙であるが、他の素材であっても良い。例えば、樹脂フィルムや布、2種類以上の材料により形成された複合シート材等が含まれる。また、シート材の形状やサイズ等についても特に限定はなく、様々な形状・サイズのものであって構わない。
【0019】
前記非接触認識装置本体部およびアンテナ配線のシート材への配置位置は、非接触認識装置本体部をシート材の一端部に設け、アンテナ配線をシート材の他端部に設けることが望ましい。
【0020】
書類のようなシートを破って廃棄する場合には、通常、まずシートの両端を手で持ってシート中央部を破くことが多いからである。上記配置によれば、意識的に破く場合だけでなく、たとえ無意識に書類等を破って廃棄した場合にあっても、導電性部材が切断され、非接触認識装置に格納された情報の機密性が保護されやすくなる。
【0021】
また、上記シート状製品は、前記シート材の破断を誘導可能な破断誘導部を備え、前記導電性部材が、当該破断誘導部と交差するように前記シート材に設けられていても良い。
【0022】
このようなシート構造によれば、当該シート状製品を破り捨てるときに、破断誘導部に誘導されてシート材が破断され、これに伴い破断誘導部と交差する導電性部材が切断されて非接触認識装置の情報読み出し機能を容易に喪失させることが出来る。また、シート状製品として例えばチケットを構成する場合には、チケット本体と半券との間に設けられた破断誘導部(いわゆるミシン目等)と交差するように前記導電性部材を設けることで、半券を切り離したときに同時にこの導電性部材が切断され、情報読み出し機能を喪失させるようにすることが出来る。したがって、チケットの不正な再使用を防ぐことも可能となる。
【0023】
上記破断誘導部は、例えば、シート材を貫通する複数の小孔を配列させてなる線状部(いわゆるミシン目等)を形成し、あるいはシート材に溝や折り目を形成するなど、他の部分より強度を低下させた部分(低強度部)をシート材に設けることにより形成することが出来る。
【0024】
ただし、本発明の破断誘導部は、必ずしも上記低強度部のみに限定されるものではなく、当該シート状製品を扱う者に対して破断位置を表示する記載(例えば直線や破線等をシート材表面に単に印刷したもの)をも含む。例えばチケットでは、実際にミシン目が入れられたものだけでなく、単に切り取り表示線が印刷されただけのものも少なくなく、このような切り取り表示線も、上記低強度部によって構成された破断誘導部と同様に、導電性部材の切断を促すことが出来るからである。
【0025】
前記導電性部材は、前記シート材に印刷可能な導電性材料により形成されていても良い。
【0026】
シート状製品には、その種類・用途に応じて様々な印刷がなされることがあるが、上記構成によれば、当該印刷工程において導電性部材を一緒に印刷して(一般的な印刷工程で)形成することが可能となる。尚、上記「シート材に印刷可能な導電性材料」とは、具体的には、印刷工程で使用可能な導電性ペーストまたは導電性インクを意味する。
【0027】
また、アンテナ配線は、一般に非接触認識装置本体部に較べ形成面積が大きくなる。したがって、シート状製品の使用(撓み)を妨げることがないよう特にアンテナ配線を形成する基板は、可撓性を有する基板とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、非接触認識装置の情報読み出し機能を簡単に失わせることができ、非接触認識装置を備えたシート状製品の機密保持性を高めることが可能となる。
【0029】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。尚、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【0031】
図1は、本発明の第一の実施形態に係るシート状製品を示すもので、シート状製品としてチケットを構成したものである。
【0032】
同図に示すようにこのチケット1は、チケット紙片2の裏面に非接触認識装置(RFID)11を配したもので、チケット紙片2は、切り取り線(いわゆるミシン目)3を介して一体となったチケット本体2aと半券2bとからなる。また、非接触認識装置(RFID)11は、ICチップ15と、アンテナ12とを備え、これらICチップ15とアンテナ12とをチケット紙片2の裏面に配した導電性部材4a,4bにより電気的に接続してなる。
【0033】
また、ICチップ15はチケット本体2a側に、アンテナ12は半券2b側にそれぞれ貼付してあり、したがってICチップ15とアンテナ12を接続する導電性部材4a,4bは、切り取り線3と交差することとなる。導電性部材4a,4bは、導電性インクにより形成する。
【0034】
尚、チケット紙片2自体は、従来から使用されている通常の紙製のチケットと同様のものを使用することが出来る。切り取り線3は、紙片2を貫通する多数の孔が配列されたいわゆるミシン目であっても良いし、単に印刷された破線や実線等であっても構わない。
【0035】
図2は、RFID11を拡大して示すものである。アンテナ12は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミド等の可橈性を有する基材13上にめっき、スパッタまたはCVD等の成膜技術を用いてアンテナ配線14と、アンテナ端子14a,14bを形成したものである。尚、アンテナ配線14は、アンテナ端子14bを引き出すため、一部立体的に交差させる必要があるが、当該交差部分は、短絡しないよう絶縁性を確保した多層構造とする。
【0036】
一方、ICチップ15は、従来から知られたRFIDが有する機能を実現するための諸回路を内蔵している。具体的には、情報を記憶する記憶部として半導体メモリを、またリーダライタまたはリーダ(以下、単にリーダライタという)と近接無線通信を行うための通信回路として、発振回路、変復調回路、RF回路および制御回路等をそれぞれ備えている。動作用の電力は、リーダライタが供給する電力をアンテナ配線3が受け取ることにより供給される。また、RFID1に電力供給源を有して、リーダライタからの電力供給によらず動作するものであっても良い。
【0037】
RFID11は、情報の読み出しと書き込みの両方が可能なタイプ、1回だけ書き込み可能な追記タイプ、あるいは、読み出しのみが可能なリード専用タイプのいずれのタイプであっても良い。
【0038】
図3は、図1のX−X線断面図である。本実施形態では、チケット本体2aの裏面にICチップ15を、半券2bの裏面にアンテナ12を貼り付けてある。尚、図示の例とは逆に、アンテナ12をチケット本体2a側に、ICチップ15を半券2b側に設けるようにしても良い。導電性部材4aは、アンテナ12のアンテナ端子14aとICチップ15のICチップ端子15aを接続するようにチケット裏面に印刷してある。また、同様に導電性部材4bを、アンテナ12のアンテナ端子14bとICチップ15のICチップ端子15bを接続するようにチケット裏面に印刷してある(図3では図示せず/図2参照)。
【0039】
本実施形態のチケット1は、このように構成されているから、切り取り線3の位置でチケット1を破り、チケット本体2aと半券2bを切り離すと、導電性部材4a,4bが切断され、これによりRFID11の情報読み出し機能を喪失させることが出来る。したがって、チケット1の不正な再使用を防ぐことが可能となる。
【0040】
図4は、上記第一実施形態の変形例に係るシート状製品を示すものである。この変形例は、上記第一の実施形態と同様にチケットを構成したものであるが、チケット紙片(チケット本体2aおよび半券2b)が二層構造となっており、層間にアンテナ(基板13上に形成したアンテナ配線14)とICチップ15を挟み込んだ構造となっている。
【0041】
また、図5に拡大して示すように、チケット本体2aと半券2bの裏面側(図4の上側)の層では、アンテナ端子14aとICチップ端子15aに相当する部位に開口部2cを形成する。チケット紙片裏面に配する導電性部材により、開口部2cを通じてアンテナ端子14aとICチップ端子15aとを接続できるようにするためである。尚、図5では導電性部材4aは省略してある。
【0042】
そして、導電性インクを用いてチケット紙片の裏面に導電性部材4a,4bを印刷して形成し、上記開口部2cを通じてアンテナ端子14aとICチップ端子15a、並びにアンテナ端子14bとICチップ端子15bをそれぞれ接続することによりICチップ15とアンテナ12を接続する。このように開口部2cを通じた接続構造とすれば、二層間(紙片内部)に導電性部材を印刷する必要がなく、アンテナ12とICチップ15を挟み込んだ状態で、チケット1の表面に一般的な印刷をするときに導電性部材4a,4bを同時に印刷することが可能となる。
【0043】
図6は、本発明の第二の実施形態に係るシート状製品を示すものである。この実施形態は、書類を構成したもので、同図に示すように書類21は、書類紙片22の裏面にアンテナ12とICチップ15を貼り付け、これらアンテナ12とICチップ15を導電性インクからなる導電性部材4a,4bにより電気的に接続したものである。
【0044】
アンテナ12、ICチップ15および導電性部材4a,4bの各構成は、前記第一の実施形態と同様であるが、本実施形態では、書類紙片22の長辺方向について一方の端部にアンテナ12を、他方の端部にICチップ15をそれぞれ配置してある。このように紙片22の両端部にアンテナ12とICチップ15とを振り分けて配置しておけば、書類21を破り捨てるときに容易に(特に意識しなくても)導電性部材4a,4bが切断されることとなり、RFIDの情報読み出し機能を喪失させることが出来る。
【0045】
尚、かかる紙片においては、アンテナ12とICチップ15とを、短辺方向の両端部、あるいは対角線方向の両端部に設けるようにしても良い。
【0046】
以上、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るシート状製品(チケット)を示す平面図である。
【図2】前記第一実施形態に係るシート状製品が備える非接触認識装置(RFID)を拡大して示す平面図である。
【図3】図1のX−X線断面図である。
【図4】前記第一実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】図4のA部分を拡大して示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るシート状製品(書類)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 シート状製品(チケット)
2 チケット紙片
2a チケット本体
2b 半券
2c 開口部
3 切り取り線(ミシン目)
4a,4b 導電性部材
11 非接触認識装置(RFID)
12 アンテナ
13 基板
14 アンテナ配線
14a,14b アンテナ端子
15 ICチップ
15a,15b ICチップ端子
21 シート状製品(書類)
22 書類紙片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶可能な記憶部および通信回路を含む非接触認識装置本体部と、アンテナ配線とを備えた非接触認識装置をシート材に配してなるシート状製品であって、
前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、別個の基板にそれぞれ設けるとともに、
前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、前記シート材の異なる領域部分にそれぞれ配し、
前記非接触認識装置本体部と前記アンテナ配線とを、前記シート材に配した導電性部材により電気的に接続した
ことを特徴とするシート状製品。
【請求項2】
前記非接触認識装置本体部を前記シート材の一端部に設け、
前記アンテナ配線を前記シート材の他端部に設けた
ことを特徴とする請求項1に記載のシート状製品。
【請求項3】
前記シート材の破断を誘導可能な破断誘導部を備え、
前記導電性部材は、前記破断誘導部と交差するように前記シート材に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシート状製品。
【請求項4】
前記導電性部材を、前記シート材に印刷可能な導電性材料により形成した
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシート状製品。
【請求項5】
前記アンテナ配線を形成する基板が、可撓性を有する基板である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシート状製品。
【請求項1】
情報を記憶可能な記憶部および通信回路を含む非接触認識装置本体部と、アンテナ配線とを備えた非接触認識装置をシート材に配してなるシート状製品であって、
前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、別個の基板にそれぞれ設けるとともに、
前記非接触認識装置本体部と、前記アンテナ配線とを、前記シート材の異なる領域部分にそれぞれ配し、
前記非接触認識装置本体部と前記アンテナ配線とを、前記シート材に配した導電性部材により電気的に接続した
ことを特徴とするシート状製品。
【請求項2】
前記非接触認識装置本体部を前記シート材の一端部に設け、
前記アンテナ配線を前記シート材の他端部に設けた
ことを特徴とする請求項1に記載のシート状製品。
【請求項3】
前記シート材の破断を誘導可能な破断誘導部を備え、
前記導電性部材は、前記破断誘導部と交差するように前記シート材に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシート状製品。
【請求項4】
前記導電性部材を、前記シート材に印刷可能な導電性材料により形成した
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシート状製品。
【請求項5】
前記アンテナ配線を形成する基板が、可撓性を有する基板である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシート状製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−99535(P2006−99535A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286209(P2004−286209)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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