説明

非接触通信タグ及び電子機器

【課題】適正な通信特性と耐久性とを有し、かつ、デザイン性を向上させることができる非接触通信タグ及びその非接触通信タグが取り付けられた電子機器を提供すること。
【解決手段】非接触通信タグ100では、アンテナモジュール1が弾力性を有する透明樹脂からなる保護部材6により覆われる。従って非接触通信タグ100に加えられる外力によりアンテナモジュール1が破壊されることを防ぐことができる。また磁性層5a、金属層5b及び粘着層5cからなる取付け媒体5により、アンテナモジュール1が携帯情報端末500から電磁的に絶縁されるように、非接触通信タグ100が携帯情報端末500に取り付けられる。これにより携帯情報端末500から発生する電磁波の影響等でアンテナモジュール1の通信特性が低下することを防ぐことができる。さらにアンテナモジュール1と保護部材6との間に配置される加飾層7によりデザイン性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)システム等の非接触データ通信に用いられる非接触通信タグ及びその非接触通信タグが取り付けられた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、RFIDシステムに用いられる非接触型ICモジュールを内蔵する携帯情報端末が知られている(例えば特許文献1参照)。このような携帯情報端末により、非接触型ICカードを用いることなく、カードライタとの間で非接触データ通信が可能となる。例えば上記ICモジュールを内蔵する携帯情報端末に電子マネー機能を備えさせ、鉄道の改札や店舗のレジスターに設けられたカードライタに携帯情報端末を接近させる。これにより鉄道の運賃や商品購入時の料金等の支払いを済ませることができ便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−117944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非接触型ICモジュールを内蔵していない携帯情報端末も多数存在している。このような携帯情報端末に、非接触型ICモジュールを外付けして、非接触データ通信を可能にすることが考えられる。この場合、携帯情報端末から発生する電磁波の影響等でICモジュールによる通信機能が低下してしまうことがある。また外力によりICモジュールが破壊されてしまうこともある。さらに外付けされたICモジュールのデザイン性が悪いと、携帯情報端末の外観が悪くなってしまう。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、適正な通信特性と耐久性とを有し、かつ、デザイン性を向上させることができる非接触通信タグ及びその非接触通信タグが取り付けられた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る非接触通信タグは、電子機器の外部に取り付けられる非接触通信タグであって、非接触通信用のアンテナモジュールと、保護部材と、加飾層と、取付け媒体とを具備する。
前記保護部材は、前記アンテナモジュールを覆い、弾力性を有する透明樹脂からなる。
前記加飾層は、前記アンテナモジュール及び前記保護部材の間に配置される。
前記取付け媒体は、前記アンテナモジュールが前記電子機器から電磁的に絶縁されるように、前記非接触通信タグを前記電子機器に取り付けるためのものである。
【0007】
この非接触通信タグでは、アンテナモジュールが、弾力性を有する透明樹脂からなる保護部材により覆われる。従って非接触通信タグに加えられる外力等によりアンテナモジュールが破壊されることを防ぐことができる。また取付け媒体により、アンテナモジュールが電子機器から電磁的に絶縁されるように、非接触通信タグが電子機器に取り付けられる。これにより電子機器から発生する電磁波の影響等でアンテナモジュールの通信特性が低下することを防ぐことができる。さらに、アンテナモジュールと保護部材との間に配置される加飾層によりデザイン性を向上させることができる。
【0008】
前記保護部材は、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成されてもよい。これらの材料のうち、撥水性の高いシリコン樹脂又はウレタン樹脂が用いられる場合、水等が非接触通信タグ内に浸入し、アンテナモジュールが破壊されてしまうことを防ぐことができる。
【0009】
前記取付け媒体は、粘着層と、金属層と、磁性層とを有してもよい。前記粘着層は、前記電子機器の外面に接着される。前記金属層は、前記粘着層及び前記アンテナモジュールの間に配置される。前記磁性層は、前記金属層及び前記アンテナモジュールの間に配置される。
【0010】
この非接触通信タグは、粘着層により電子機器の外面に接着される。そして粘着層及びアンテナモジュールの間に配置される金属層により、電子機器及びアンテナモジュール間の相互の電磁干渉を防止することができる。また金属層及びアンテナモジュールの間に配置された磁性層により、通信時に金属層に発生する渦電流に起因する磁場の影響を抑えることができる。これにより、アンテナモジュールの通信特性が低下することを防止することができる。
【0011】
前記アンテナモジュールは、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有してもよい。この場合、前記保護部材は、前記第1の面を覆ってもよい。また、前記磁性層、前記金属層、及び前記粘着層は、前記第2の面に設けられてもよい。
【0012】
前記取付け媒体は、前記電子機器に接続することが可能な第1の端部と、前記保護部材に接続される第2の端部とを有するストラップであってもよい。
この非接触通信タグは、ストラップを介して電子機器に取り付けられる。従ってアンテナモジュールを電子機器から離した状態で、非接触通信タグによる非接触データ通信を行うことができる。これにより電子機器から発生する電磁波の影響等でアンテナモジュールの通信特性が低下することを防ぐことができる。
【0013】
前記アンテナモジュールは、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有してもよい。この場合、前記保護部材は、前記第1の面及び前記第2の面の両方を覆ってもよい。また、前記加飾層は、前記第1の面及び前記保護部材の間と、前記第2の面及び前記保護部材の間とにそれぞれ配置されてもよい。
【0014】
この非接触通信タグでは、アンテナモジュールの第1の面及び第2の面の両方が、保護部材により覆われるので、アンテナモジュールを十分に保護することができる。また、アンテナモジュールの第1の面側と第2の面側の両方に加飾層が配置されるので、デザイン性を向上させることができる。
【0015】
本発明の一形態に係る電子機器は、本体と、非接触通信用のアンテナモジュールと、保護部材と、加飾層と、取付け媒体とを具備する。
前記保護部材は、前記アンテナモジュールを覆い、弾力性を有する透明樹脂からなる。
前記加飾層は、前記アンテナモジュール及び前記保護部材の間に配置される。
前記取付け媒体は、前記アンテナモジュール及び前記本体が電磁的に絶縁されるように、前記アンテナモジュールを前記本体の外部に取り付けるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、適正な通信特性と耐久性とを有し、かつ、デザイン性を向上させることができる非接触通信タグ及びその非接触通信タグが取り付けられた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る非接触通信タグを示す模式的な斜視図である。
【図2】図1に示す非接触通信タグを分解して示す模式的な斜視図である。
【図3】図1に示す非接触通信タグを分解して示す模式的な側面図である。
【図4】保護部材としてシリコン系樹脂が用いられる場合と、ウレタン系樹脂が用いられる場合との相違点を説明するための表である。
【図5】一実施例に係る保護部材の物性を示す表である。
【図6】第2の実施形態に係る非接触通信タグを示す模式的な斜視図である。
【図7】図6に示す非接触通信タグの製造方法を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係る非接触通信タグの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る非接触通信タグを示す模式的な斜視図である。この非接触通信タグ100は、電子機器としての携帯情報端末500に取り付けられるものである。携帯情報端末500は、外面501を有する本体502を備え、本体502の内部には、図示しない基板や基板上に配置された電子回路等が組み込まれている。図1に示すように、本実施形態では、本体502の裏面501’に非接触通信タグ100が接着される。これに限られず外面501の他の位置に非接触通信タグ100が接着されてもよい。
【0020】
[非接触通信タグ]
図2は、本実施形態の非接触通信タグ100を分解して示す模式的な斜視図である。図3は、非接触通信タグ100を分解して示す模式的な側面図である。
【0021】
非接触通信タグ100は、非接触通信用のアンテナモジュール1を有する。アンテナモジュール1は、ベース基板2と、ベース基板2上に形成されたアンテナコイル3と、アンテナコイル3に電気的に接続される信号処理回路部4とを有する。
【0022】
アンテナコイル3は、非接触通信機能のためのもので、図示しない外部リーダーライタのアンテナ部と誘導結合されることで通信を行う。アンテナコイル3は、例えばベース基板2上にパターニングされた銅、アルミニウム等の金属パターンでなり、平面内でループ状に巻回するように形成される。このアンテナコイル3の開口面積を大きくすることで、非接触通信タグ100の通信特性を向上させることができる。
【0023】
ベース基板2は、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムでなる絶縁性フレキシブル基板で構成されているが、ガラスエポキシ等のリジッド性基板で構成されていてもよい。例えば本体502の裏面501’の形状が曲面状である場合には、ベース基板2としてフレキシブル基板が用いられることで、裏面501’に沿って非接触通信タグ100を接着することができる。
【0024】
図2に示すように、本実施形態のベース基板2の形状は略円形状である。しかしながらこれに限られず、ベース基板2の形状は例えば矩形状や多角形状でもよい。またベース基板2の大きさも適宜設定可能である。例えばアンテナコイル3の開口面積が所定のものとなるように、ベース基板2の形状や大きさ等が適宜設定される。
【0025】
信号処理回路部4は、非接触データ通信に必要な信号処理回路及び情報を格納したICチップ4aや同調用コンデンサ等の電気・電子部品で構成される。信号処理回路部4は、複数の部品群で構成されてもよいし、あるいは単一の部品で構成されてもよい。信号処理回路部4は、ベース基板2上の、例えばアンテナコイル3の内方側に配置される。
【0026】
ここで、ベース基板2のアンテナコイル3や信号処理回路部4が形成される面を、アンテナモジュール1の第1の面1aとし、その反対側の面をアンテナモジュール1の第2の面1bとする。
【0027】
図2及び図3に示すように、アンテナモジュール1の第2の面1bには、取付け媒体5としての磁性層5a、金属層5b、及び粘着層5cが設けられる。粘着層5c及びアンテナモジュール1の間に金属層5bが配置され、その金属層5b及びアンテナモジュール1の間に、磁性層5aが配置される。従って、磁性層5a、金属層5b、及び粘着層5cは、この順でアンテナモジュール1の第2の面1bに積層されることになる。各部材は、例えば図示しない両面粘着シート等によりそれぞれ接着される。
【0028】
金属層5bは、例えばステンレス、銅、アルミニウム等で形成されたシート状のものが用いられる。この金属層5bは、携帯情報端末500及びアンテナモジュール1間の相互の電磁干渉を防止するために設けられる。この金属層5bにより、例えば携帯情報端末500からの電磁波の影響を無くすことができる。
【0029】
また金属層5bは、アンテナモジュール1の共振周波数(本実施形態では、13.56MHz)の粗調整に用いられ、アンテナモジュール1単体のときと、携帯情報端末500に接着された状態のときとで、アンテナモジュール1の共振周波数に大きな変化を生じさせないようにするために設けられる。
【0030】
本実施形態の金属層5bは、矩形状でなり、アンテナモジュール1のベース基板2よりも大きい。しかしながらこれに限られず、例えばベース基板2の外形と略等しい形状で、金属層5bが形成されてもよい。なお、アンテナモジュール1単体のときと、携帯情報端末500に接着された状態のときとで、アンテナモジュール1の共振周波数の変化が予測できる場合で、かつ、携帯情報端末500からの電磁波の影響が少ない場合などは、この金属層5bが設けられなくてもよい。
【0031】
磁性層5aは、例えばアモルファス合金、パーマロイ、電磁軟鉄、ケイ素鋼板、センダスト合金、Fe−Al合金又は軟磁性フェライト等の軟磁性材料により形成される。本実施形態の磁性層5aは、金属層5bと略等しい形状で形成されるが、他の形状でもよい。
【0032】
仮に、この磁性層5aが形成されない場合、例えば外部リーダーライタからの電磁波により金属層5bに渦電流が発生する可能性がある。この渦電流はリーダーライタからの電磁波を打ち消すような磁場を発生させ、これにより非接触通信タグ100の通信距離が短くなる、あるいは通信自体ができなくなるという問題が発生するおそれがある。
【0033】
しかしながら本実施形態では、上記したように、金属層5b及びアンテナモジュール1の間に磁性層5aが形成される。軟磁性材料は、透磁率が大きく、保磁力が小さく、かつヒステリシス損が小さいため、外部から磁場を受けると容易に磁化する。これにより金属層5bに発生した渦電流に起因する磁場を磁性層5aにより吸収し、アンテナモジュール1の通信特性の低下を抑えることができる。
【0034】
粘着層5cは、例えば粘着シート等からなり、この粘着層5cにより非接触通信タグ100が携帯情報端末500の裏面501’に接着される。
【0035】
このように本実施形態では、取付け媒体5により、アンテナモジュール1と携帯情報端末500との間を電磁的に遮蔽することできる。すなわち、これらの間を電磁的に絶縁させるように、非接触通信タグ100を携帯情報端末500に取り付けることができる。これにより携帯情報端末500から発生する電磁波の影響等でアンテナモジュール1の通信特性が低下することを防ぐことができる。
【0036】
また図2及び図3に示すように、アンテナモジュール1の第1の面1aを覆うように、保護部材6が形成される。またアンテナモジュール1の第1の面1a及び保護部材6の間には加飾層7が配置される。
【0037】
加飾層7としては、例えば印刷等により加飾されたアクリル系樹脂等のフィルムが用いられる。あるいは、シート状のものが加飾され、アンテナモジュール1の第1の面1a及び保護部材6の間に配置されてもよい。加飾層7の大きさ、形、色、透明度等は、所定のデザイン性が得られるように適宜設定される。この加飾層7により、非接触通信タグ100のデザイン性を向上させることができる。
【0038】
保護部材6は透明樹脂からなり、例えばウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又は塩化ビニル系樹脂等からなる液体材料がポッティングされることで形成される。例えば、所定の型に液体材料が充填され固められることで作成された保護部材6が、図示しない粘着シートによりアンテナモジュール1の第1の面1a側に接着されてもよい。または、アンテナモジュール1の第1の面1a側に液体材料が滴下されることで、保護部材6が形成されてもよい。
【0039】
保護部材6が透明樹脂からなるので、非接触通信タグ100の外部から加飾層7が視認可能となる。また保護部材6により加飾層7が保護されるので、加飾層7の劣化が防止され、長期にわたり非接触通信タグ100のデザイン性が維持される。保護部材6は、無色透明に限られず、有色透明、無色半透明、又は有色半透明でもよい。また、保護部材6の内部に加飾用の粉末や着色剤が含有されてもよい。さらに加飾層7が保護部材6の内部に埋め込まれてもよい。
【0040】
本実施形態では、保護部材6がポッティングにより形成されるので、保護部材6の形状、大きさ、厚み等を種々のものに設定することが容易であり、非接触通信タグ100のデザイン性を向上させることができる。また保護部材6を形成するために金型を用いる必要がないので、保護部材6の形状変更等を伴うモデルチェンジの対応に多大なコストを要することがない。この結果、非接触通信タグ100の多品種少ロット生産を容易に実現することができる。
【0041】
また保護部材6としては、弾力性を有するものが用いられる。これにより非接触通信タグ100に加えられる外力等により、アンテナモジュール1が破壊されることを防ぐことができる。例えば約20℃程度の常温状態において、ショア硬度A0以上A90以下の範囲となるように、保護部材6の硬度が適宜設定される。例えば保護部材6がショア硬度A0以下の硬度となると、保護部材6の強度が不十分となる。一方、保護部材6がショア硬度A90以上の硬度となると、外力等を吸収することができなくなる。いずれにしても、保護部材6によりアンテナモジュール1を十分に保護することが難しくなる。
【0042】
また、弾力性を有する保護部材6が用いられることで、携帯情報端末500の裏面501’の形状に沿って非接触通信タグ100を接着することができる。さらに、保護部材6により、部品等が配置されているアンテナモジュール1の第1の面1a上を、配置されている部品の形状に沿って覆うことができる。
【0043】
図4は、保護部材6としてシリコン系樹脂が用いられる場合と、ウレタン系樹脂が用いられる場合との相違点を説明するための表である。図4に示すように、保護部材6としてシリコン系樹脂が用いられると、耐熱性、耐寒性、耐久性がよい。一方、保護部材6としてシリコン系の樹脂が用いられると、コストパフォーマンスがよくなる。撥水性については、保護部材6としてどちらの樹脂が用いられても良好である。従って、保護部材6としてシリコン系樹脂又はウレタン系樹脂が用いられることで、水等が非接触通信タグ100内に侵入することで、アンテナモジュール1が破壊されることを防ぐことができる。
【0044】
図5は、一実施例に係る保護部材6の物性を示す表である。本実施例の保護部材6としては、主にポリオール成分からなる主剤(図5に示すA)と、主にイソシアネート成分からなる硬化剤(図5に示すB)とを混合し硬化させる二液硬化型ウレタン樹脂(株式会社エクシールコーポレーション製)が用いられている。
【0045】
なお、本実施形態の非接触通信タグ100は、何度でも貼り替えて用いることが可能である。従って、新しい携帯情報端末を購入した場合でも、その携帯情報端末に非接触通信タグ100を装着することで、非接触データ通信を行うことができる。しかしながら、例えば非接触通信タグ100が無断で剥がされて他人に使用されることを防ぐために、剥がされたときにアンテナモジュール1の非接触通信機能が停止するようにしてもよい。
【0046】
上記した構成を有する非接触通信タグ100が接着された携帯情報端末500を用いて、外部のリーダーライタと非接触データ通信を行う際には、携帯情報端末500の裏面501’をリーダーライタのアンテナ部に接近させる。そして、リーダーライタのアンテナ部から発振された電磁波あるいは高周波磁界が、アンテナモジュール1のアンテナコイル3内を通過することで、アンテナコイル3に電磁波あるいは高周波磁界の強さに応じて誘導電流が発生する。この誘導電流は信号処理回路部4において整流され、ICチップ4aに記録された情報の読出し電圧に変換される。読み出された情報は、信号処理回路部4において変調され、アンテナコイル3を介してリーダーライタのアンテナ部へ送信される。
【0047】
このような非接触データ通信は、例えば鉄道等の交通機関における運賃の清算、レジスター等における各種料金の決済等に用いられる。また、建物の入退出におけるセキュリティシステムや、工場等における製品管理システム等にも用いられる。非接触データ通信機能を有さない電子機器に、非接触通信タグ100を取り付けることで、例えば電子マネー機能等の新たな機能を電子機器に付与することができる。
【0048】
また、例えばキャラクター等がデザインされたギフトカードを他人に贈る場合、そのカードに非接触通信タグ100が貼り付けられてもよい。そしてギフトカードのキャラクター部分が非接触通信タグ100の加飾層7によりデザインされてもよい。ギフトカードを受け取った他人は、キャラクターのデザインが施された非接触通信タグ100をギフトカードから剥がし、電子機器に接着して用いることができる。その他、名刺や葉書等に非接触通信タグ100が貼り付けられて配られてもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る非接触通信タグについて説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した非接触通信タグ100における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0050】
図6は、本実施形態の非接触通信タグ200を示す模式的な斜視図である。図6(A)及び(B)は、非接触通信タグ200の表面200a及び裏面200bをそれぞれ示している。非接触通信タグ200の表面200a及び200bには、保護部材206a及び206bがそれぞれ形成されている。保護部材206a及び206bには、貫通孔208が形成されている。
【0051】
本実施形態の非接触通信タグ200は、取付け媒体205としてのストラップ205’を有している。ストラップ205’は、第1の端部205’a及び第2の端部205’bを有しており、第1の端部205’aが図示しない電子機器に接続される。ストラップ205’の第2の端部205’bには、リング状の取付け部材212が設けられており、この取付け部材212が貫通孔208に取り付けられる。ストラップ205’としては、例えばゴム製、プラスチック製、又は金属製等の、各種のストラップが用いられる。
【0052】
図7は、非接触通信タグ200の製造方法を説明するための図である。図7(A)に示すように、台紙209上に両面粘着シート210が接着され、両面粘着シート210上に加飾層207aが接着される。このときに台紙209の所定の位置Xが、両面粘着シート210に向けて押圧され、両面粘着シート210に図示しない凹部が形成される。
【0053】
図7(B)に示すように、ディスペンサー213により、加飾層207a上に、第1の実施形態で説明したものと同様の例えばウレタン系樹脂等からなる液体材料206’aがポッティングされる。このときに所定の型が用いられてもよいし、用いられなくてもよいが、所定の型が用いられない場合には、保護部材6の形状変更等を伴うモデルチェンジの対応に多大なコストを要することがない。この結果、非接触通信タグ200の多品種少ロット生産を容易に実現することができる。
【0054】
図7(C)に示すように、液体材料206’aが固まることで、加飾層207a上に保護部材206aが形成される。これにより台紙209、両面粘着シート210、加飾層207a、及び保護部材206aからなる保護部250aが形成される。
【0055】
図7(D)に示すように、両面粘着シート210から台紙209が剥がされ、アンテナモジュール201の第1の面201aに、保護部250aが接着される。このときに図7(A)の工程で両面粘着シート210に形成された凹部内に、ICチップ204a等の部品が配置されるようにする。これにより第1の面201a上の部品の形状に沿って、保護部250aを第1の面201aに接着することができる。なお、ICチップ204a等の部品が十分に薄い場合には、凹部を形成するための上記押圧工程を省略することもできる。また、保護部材206a(206b)又は加飾層207aを構成する樹脂が粘着性を有する場合には、両面粘着シート210を省略することができる。
【0056】
アンテナモジュール201の第2の面201bには、保護部250bが接着される。保護部250bは、保護部250aと同様に図7(A)〜(C)に示す工程で作成されたものであり、両面粘着シート210、加飾層207b、及び保護部材206bを有する。
【0057】
これにより、アンテナモジュール201の第1及び第2の面201a及び201bの両方が、保護部材206a及び206bによりそれぞれ覆われる。これによりアンテナモジュール201を十分に保護することができる。また、アンテナモジュール201の第1の面201a側と第2の面201b側の両方に加飾層207a及び207bがそれぞれ配置される。これにより非接触通信タグ200のデザイン性を向上させることができる。
【0058】
アンテナモジュール201の第1及び第2の面201a及び201bに、保護部250a及び250bがそれぞれ接着された後に、貫通孔208(図6参照)が形成される。この貫通孔208にストラップ205’の第2の端部205’bが接続されて、本実施形態の非接触通信タグ200が製造される。
【0059】
図7(B)に示す工程で保護部材206a(206b)が形成されるときに、例えば所定の型を用いることで、貫通孔208が形成されてもよい。この場合には、保護部材206a(206b)の下部にある加飾層207a及び両面粘着シート210にも、該所定の型に対応する貫通孔が設けられる。あるいは、保護部材206a及び206bに貫通孔208が形成されず、例えばストラップ205’の第2の端部205’bにクリップ等の係止部材が設けられてもよい。この係止部材によりストラップ205’が保護部材206a及び206bに接続される。
【0060】
以上のように、本実施形態の非接触通信タグ200は、ストラップ205’を介して図示しない電子機器に取り付けられる。従って、例えばストラップ205’に接続された非接触通信タグ200のみを手に持ち外部リーダーライタに接近させることができる。すなわち非接触通信タグ200は、アンテナモジュール201を電子機器から空間的に離間した状態で、非接触通信タグ200による非接触データ通信が可能である。この結果、アンテナモジュール201と電子機器とが電磁的に絶縁された状態となり、電子機器から発生する電磁波の影響等でアンテナモジュール201の通信特性が低下することを防ぐことができる。
【0061】
また本実施形態では、第1の実施形態で説明した金属層や磁性層が不要となるので、非接触通信タグ200の小型化及び薄型化を図ることができる。また、部品コストを抑えることができる。
【0062】
上記の各実施形態で説明した非接触通信タグが取り付けられる電子機器としては、例えば、デジタルカメラ及びデジタルビデオカメラ等の撮像装置、携帯電話及び携帯型オーディオビジュアル機器等の端末装置、携帯ゲーム機器、PDA(Personal Digital Assistance)、オンスクリーンキーボード、電子辞書、ディスプレイ装置、オーディオ/ビジュアル機器、プロジェクタ、ゲーム機器、ロボット機器、その他の電化製品等が挙げられる。
【0063】
<変形例>
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、種々変更され得る。
【0064】
例えば、図8は、第2の実施形態に係る非接触通信タグ200の変形例を示す図である。図8では、ストラップが省略されて図示されている。
【0065】
この非接触通信タグ300は、例えば図示しない所定の型内にアンテナモジュール301が配置され、その型内に液体材料306’が充填されることで形成される。これによりアンテナモジュール301の第1及び第2の面301a及び301bの両方を覆う保護部材306が形成される。これにより図7に示す両面粘着シート210が不要となり、非接触通信タグ300のさらなる薄型化を図ることができる。また、1つの工程でアンテナモジュール301の第1及び第2の面301a及び301bの両方を覆う保護部材306が形成される。これにより、非接触通信タグ300の製造時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、201、301…アンテナモジュール
1a、201a、301a…アンテナモジュールの第1の面
1b、201b、301b…アンテナモジュールの第2の面
5、205…取付け媒体
5a…磁性層
5b…金属層
5c…粘着層
6、206a、206b、306…保護部材
7、207a、207b…加飾層
100、200、300…非接触通信タグ
205’…ストラップ
205’a…ストラップの第1の端部
205’b…ストラップの第2の端部
500…携帯情報端末
501…携帯情報端末の外面
501’…携帯情報端末の裏面
502…携帯情報端末の本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外部に取り付けられる非接触通信タグであって、
非接触通信用のアンテナモジュールと、
前記アンテナモジュールを覆い、弾力性を有する透明樹脂からなる保護部材と、
前記アンテナモジュール及び前記保護部材の間に配置される加飾層と、
前記アンテナモジュールが前記電子機器から電磁的に絶縁されるように、前記非接触通信タグを前記電子機器に取り付けるための取付け媒体と
を具備する非接触通信タグ。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信タグであって、
前記保護部材は、シリコン樹脂又はウレタン樹脂により形成される非接触通信タグ。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触通信タグであって、
前記取付け媒体は、前記電子機器の外面に接着される粘着層と、前記粘着層及び前記アンテナモジュールの間に配置される金属層と、前記金属層及び前記アンテナモジュールの間に配置される磁性層とを有する非接触通信タグ。
【請求項4】
請求項3に記載の非接触通信タグであって、
前記アンテナモジュールは、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記保護部材は、前記第1の面を覆い、
前記磁性層、前記金属層、及び前記粘着層は、前記第2の面に設けられる
非接触通信タグ。
【請求項5】
請求項2に記載の非接触通信タグであって、
前記取付け媒体は、前記電子機器に接続することが可能な第1の端部と、前記保護部材に接続される第2の端部とを有するストラップである非接触通信タグ。
【請求項6】
請求項5に記載の非接触通信タグであって、
前記アンテナモジュールは、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記保護部材は、前記第1の面及び前記第2の面の両方を覆い、
前記加飾層は、前記第1の面及び前記保護部材の間と、前記第2の面及び前記保護部材の間とにそれぞれ配置される
非接触通信タグ。
【請求項7】
本体と、
非接触通信用のアンテナモジュールと、
前記アンテナモジュールを覆い、弾力性を有する透明樹脂からなる保護部材と、
前記アンテナモジュール及び前記保護部材の間に配置される加飾層と、
前記アンテナモジュール及び前記本体が電磁的に絶縁されるように、前記アンテナモジュールを前記本体の外部に取り付けるための取付け媒体と
を具備する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−123544(P2011−123544A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278522(P2009−278522)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】