説明

非接触通信媒体

【課題】製造コストが小さく、さらなる薄型化が可能な、RFID技術を用いた非接触通信媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の非接触通信媒体は、第1の導線8と、第2の導線10と、集積回路チップ7と、基材5とを具備する。第1の導線8は、第1の端部8a及び第2の端部8bを有し、環状に形成されている。第2の導線は、第3の端部10a及び第4の端部10bを有し、第1の導線8の内側に環状に形成されている。
集積回路チップ7は、第1の端子7bと第4の端子7gとを介して第1の導線8と第2の導線10を含むループアンテナ6を形成し、第2の端子7cと第3の端子7fとを介して静電容量素子及びループアンテナ6を含む共振回路を形成する。
基材5は、第1の導線8、第2の導線10及び集積回路チップ7が実装される第1の面5aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID技術を用いた非接触通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)技術を用いた非接触通信が普及している。非接触通信システムは、典型的には、リーダライタと、IC(Integrated Circuit)カードのような非接触通信媒体によって構成され、両者は所定の周波数を有する電磁波を介して通信する。リーダライタに非接触通信媒体が接近すると、リーダライタから放射される電磁波によって誘起される誘導電流により非接触通信媒体に駆動電力が供給される。非接触通信媒体はこの駆動電力を利用してリーダライタに対して電磁波を放射し、リーダライタに信号を伝達する。
【0003】
非接触通信媒体は、アンテナコイル、アンテナコイルと共振回路を形成するためのコンデンサ、アンテナコイルを制御する制御回路、情報を記録する記憶素子等によって構成される。アンテナコイルとコンデンサによって形成される共振回路の共振周波数が、上述した電磁波の周波数である場合に最も高い伝送効率が得られる。非接触通信媒体は、上述のように、リーダライタから電力供給を受けて駆動されるために電源を内蔵する必要はなく、薄型軽量化が可能であり、カード状あるいはシート状に形成することができる。
【0004】
例えば特許文献1には、非接触通信のためのICカードが記載されている。このICカードは、1枚の絶縁基板にアンテナコイル、コンデンサー部及びICチップが実装されたICモジュールが、2枚の外装シートによって挟みこまれて形成されている。アンテナコイルを形成する導線は、絶縁基板の表面に平面的なスパイラル状に形成され、表面のアンテナコイルの内周側に配置されたICチップに接続されている。
【0005】
このICカードのアンテナコイルとICチップの接続を具体的にみると、アンテナコイルの内周側の一端は、絶縁基板の表面に形成された配線を介してICチップに接続されている。アンテナコイルの外周側の他端は、絶縁基板の表面から裏面に至るスルーホールと、裏面に形成された配線と、裏面から表面に至るスルーホールを介してICチップに接続されている。
【0006】
アンテナコイルとICチップがこのように接続されているのは、アンテナコイルの他端が接続されている配線とスパイラル状に形成されているアンテナコイルとの電気的な接触を回避するため、即ち、配線がアンテナコイルを跨ぐ必要があるためである。特許文献1の例に限らず、スパイラル状のアンテナコイルを有するICカードでは、アンテナコイルの配線がアンテナコイルを跨ぐための構成が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−58817号公報(段落[0062]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のICカードのように、配線が基材の表裏両面に形成される場合、非接触通信媒体の製造コストが高く、さらなる薄型化が困難という問題がある。配線は、例えば、基材の表面に一様に形成された導電性材料からなる薄膜をエッチングすることにより、あるいは基材に配線パターンを印刷することにより形成することができる。配線を基材の表裏に形成する場合、配線を基材の一面に形成する場合に比べて材料コストも高く、工程数も増加するために製造コストが高くなる。さらに、配線が基板の表裏に存在することにより、配線の厚さが表裏それぞれに加算され、非接触通信媒体のさらなる薄型化が困難である。また、配線を、基材の裏面を介さずに、アンテナコイル上に形成した絶縁材を介してICチップ等に接続する、いわゆるブリッジ構造も考えられる。この場合でも、工程数が多く、単に配線を基材の一面に形成する場合に比べて製造コストが高くなることは避けられない。薄型化も困難である。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、製造コストが小さく、さらなる薄型化が可能な、RFID技術を用いた非接触通信媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る非接触通信媒体は、第1の導線と、第2の導線と、集積回路チップと、基材とを具備する。
上記第1の導線は、第1の端部及び第2の端部を有し、環状に形成されている。
上記第2の導線は、第3の端部及び第4の端部を有し、上記第1の導線の内側に環状に形成されている。
上記集積回路チップは、上記第1の端部に接続される第1の端子と、上記第2の端部に接続される第2の端子と、上記第3の端部に接続される第3の端子と、上記第4の端部に接続される第4の端子と、静電容量素子とを有し、上記第1の端子と上記第4の端子とを介して上記1の導線と上記第2の導線を含むループアンテナを形成し、上記第2の端子と上記第3の端子とを介して上記静電容量素子及び上記ループアンテナを含む共振回路を形成する。
上記基材は、上記第1の導線、上記第2の導線及び上記集積回路チップが実装される第1の面を有する。
【0011】
上記非接触通信媒体では、第1の導線の第1の端部が集積回路チップの第1の端子に接続され、第2の導線の第4の端部が集積回路チップの第4の端子に接続されることで、第1の導線及び第2の導線が集積回路チップの内部に設けられた配線を介して接続され、ループアンテナが形成される。また、第1の導線の第2の端部が集積回路チップの第2の端子に接続され、第2の導線の第3の端部が集積回路チップの第3の端子に接続されることで、当該ループアンテナが集積回路チップに接続される。即ち、基材の第1の面に形成された第1の導線と第2の導線とによって、ループアンテナの形成とループアンテナの集積回路チップへの接続がなされる。このため、導線は基材の第1の面上に形成されればよく、製造コストの抑制及び薄型化が可能である。
【0012】
上記静電容量素子は、上記ループアンテナに対して並列的に接続された複数のコンデンサと、上記複数のコンデンサのうち上記ループアンテナと接続されるコンデンサを切り替えるスイッチ回路とを含んでもよい。
ループアンテナと静電容量素子によって形成される共振回路の共振周波数は、静電容量素子の静電容量に依存する。このため、スイッチ回路によってループアンテナに接続されるコンデンサを切り替えることで共振回路の共振周波数を変更することが可能となる。共振周波数の変更は、例えば、非接触通信媒体を製造した際にその共振周波数が所望の共振周波数に対してずれていた場合、そのずれを調節するために利用することができる。
【0013】
上記集積回路チップは、上記スイッチ回路を制御するスイッチ制御部をさらに有していてもよい。
非接触通信媒体の共振周波数を変更する手法として、導線によってループアンテナに並列接続された複数のコンデンサを基材上に設置し、所望の共振周波数となるようにいくつかのコンデンサの導線をカットする手法がある。しかし、このような手法では、製造段階において個々の非接触通信媒体に対して適切な導線をカットする工程が必要となる。本発明の構成によれば、集積回路チップに内蔵されたスイッチ制御部が電気的にスイッチ回路を制御するため、非接触通信媒体の製造段階での共振周波数を変更するための工程が不要となり、工程数の削減による製造コストの抑制が可能となる。
【0014】
上記スイッチ制御部は、通信対象機器から放射される電磁波の周波数と上記共振回路の共振周波数が一致するように上記スイッチを制御してもよい。
所定の周波数を放射するように製造されたリーダライタにも個体差が存在し、あるいは周囲の環境により、放射される周波数が所定の周波数からずれているリーダライタが存在する場合がある。そのような場合、非接触通信媒体の共振周波数が当該所定の周波数に調節されていても、このようなリーダライタとは共振周波数が一致せず、伝送効率が低下するおそれがある。本発明の構成によれば、非接触通信媒体は、通信を行うリーダライタ毎に共振周波数を調節することができ、伝送効率の低下を防止することが可能である。
【0015】
上記非接触通信媒体は、上記第1の面を覆う第1の被覆部材と、上記基材の上記第1の面の反対側の第2の面を覆う第2の被覆部材とをさらに具備していてもよい。
第1の被覆部材及び第2の被覆部材により、集積回路チップ及びループアンテナの機械的な損傷、化学変化による劣化、熱による劣化等を防止することが可能である。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る非接触通信媒体の製造方法は、基材の第1の面に、第1の端部及び第2の端部を有する環状の第1の導線と、前記第1の導線の外側に配置され第3の端部及び第4の端部を有する環状の第2の導線とをそれぞれ形成する。
前記第1の面に、静電容量素子を内蔵する集積回路チップを実装することで、前記第1の端部と前記第4の端部とを介する前記第1の導線と前記第2の導線とを含むループアンテナを形成し、かつ、前記第2の端部と前記第3の端部との間に前記静電容量素子を接続して前記静電容量素子及び前記ループアンテナを含む共振回路を形成する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、製造コストが小さく、さらなる薄型化が可能な、RFID技術を用いた非接触通信媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係るICカードの分解斜視図である。
【図2】同実施形態に係る本体を垂直な方向からみた平面図である。
【図3】同実施形態に係る本体を平行な方向からみた平面図である。
【図4】同実施形態に係るICチップを省略した本体を示す平面図である。
【図5】同実施形態に係るICチップの外観を示す平面図である。
【図6】同実施形態に係るICチップによるループアンテナの形成を示す図である。
【図7】同実施形態に係るICカードの回路構成を示す模式図である。
【図8】第2の実施形態に係るICカードの回路構成を示す模式図である。
【図9】比較例に係るICカードを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
本実施形態に係る非接触通信媒体として、IC(Integrated Circuit)カードを例にとって説明する。なお、非接触通信媒体は、ICカードに限られず、情報端末に内蔵される通信ユニット等であってもよい。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るICカード1を示す分解斜視図である。
同図に示すように、ICカード1は、第1の被覆部材2、本体3及び第2の被覆部材4を有する。本体3は板状であり、本体3の一方の面に第1の被覆部材2が、本体3の他方の面に第2の被覆部材4が積層されることで、ICカード1が形成されている。
【0021】
第1の被覆部材2及び第2の被覆部材4は、本体3を保護するための部材であり、本体3に入射し、あるいは本体3から放射される電磁波を遮蔽しない材料から形成することができる。第1の被覆部材2及び第2の被覆部材4により、本体3の機械的な損傷、化学変化による劣化、熱による劣化等を防止することが可能である。なお、ICカード1の構成はここに示すものに限られず、印画用のシート等の他の部材が積層されてもよい。
【0022】
本体3について説明する。
図2は本体3に垂直な方向からみた平面図であり、図3は本体3に平行な方向からみた平面図である。
図2及び図3に示すように、本体3は、基材5、ループアンテナ6及びICチップ7を有する。ループアンテナ6及びICチップ7は、基材5に実装されている。
【0023】
基材5は、板状であり、第1の面5aと、第1の面5aの裏側の第2の面5bを有する。ループアンテナ6及びICチップ7が実装されているのは第1の面5aである。基材5は、絶縁性材料、例えばPEN(Polyethylene naphthalate)、PET(Polyethylene terephthalate)等の合成樹脂等からなる。
【0024】
ループアンテナ6について説明する。
図4は、ICチップ7を省略した本体3を示す模式図である。
同図に示すように、第1の面5aには、第1の導線8、第2の導線9及び第3の導線10(以下、アンテナ導線と総称する)が形成されている。第1の導線8、第2の導線9及び第3の導線10は、それぞれ同心的な、大きさの異なる環状に形成されており互いに交差していない。アンテナ導線は、基材5の外周側から第1の導線8、第2の導線9、第3の導線10の順で並んでいるものとする。なお、以下では、アンテナ導線の数は3本であるものとして説明するが、2本以上であればよい。アンテナ導線は、箔状のアルミニウムや銅等の導電性材料からなる。
【0025】
第1の導線8、第2の導線9及び第3の導線10はそれぞれ、第1の面5aの、ICチップ7が実装される領域の近傍において分断されている。これにより、第1の導線8には第1の端部8a及び第2の端部8bが形成され、第2の導線9には第3の端部9a及び第4の端部9bが形成され、第3の導線10には第5の端部10a及び第6の端部10bが形成されている。なお、第1の端部8a、第3の端部9a及び第5の端部10aはアンテナ導線の分断箇所に対して同じ側(図4において右側)に位置し、第2の端部8b、第4の端部9b及び第6の端部10bはその反対側(図4において左側)に位置するものとする。第1の導線8、第2の導線9及び第3の導線10は、ICチップ7によって接続されることでコイル状のループアンテナ6を形成する。このループアンテナ6の形成については後述する。
【0026】
図5は、ICチップ7の外観を示す平面図である。
同図に示すように、ICチップ7は、チップ本体7aと、第1の端子7b、第2の端子7c、第3の端子7d、第4の端子7e、第5の端子7f及び第6の端子7g(以下、端子群と総称する)とを有する。チップ本体7aには回路(以下、内部回路)が内蔵されている。内部回路の回路構成については後述する。端子群は、チップ本体7aの同一面に形成されている。
【0027】
端子群の、ICチップ7における接続関係は次のようである。即ち、第2の端子7cと第5の端子7fは、上記内部回路に接続されている。第1の端子7bと第4の端子7eは、内部回路に接続されることなく、内部回路とは別途に形成された内部配線7hによって互いに直接に接続されている。第3の端子7dと第6の端子7gも、内部回路に接続されることなく、内部回路とは別途に形成された内部配線7iによって互いに直接に接続されている。第1の端子7bと第4の端子7eの接続及び第3の端子7dと第6の端子7gの接続をそれぞれ図5に一点鎖線で模式的に示す。
【0028】
端子群は、ICチップ7が第1の面5aに実装されると、上述したアンテナ導線に電気的に接続される。その接続関係は、第1の端子7bが第1の端部8aに、第2の端子7cが第2の端部8bに、第3の端子7dが第3の端部9aに、第4の端子7eが第4の端部9dに、第5の端子7fが第5の端部10aに、第6の端子7gが第6の端部10bに接続される関係である。即ち、端子群は、このような接続を可能とするようにチップ本体7aに配置されている。なお、ここでは、アンテナ導線が3本であるので端子の個数は6つであるが、端子の個数は1本のアンテナ導線の両端部に端子がそれぞれ接続されるように、アンテナ導線の本数に応じて増減される。
【0029】
図6は、ICチップ7によるループアンテナ6の形成について説明するための図である。
同図に示すように、アンテナ導線が形成された第1の面5aにICチップ7が実装されると、上述のようにICチップ7の各端子がアンテナ導線の各端部に接続される。これにより、チップ本体7aの内部回路に接続されている第2の端子7cは、第2の端部8b、第1の導線8、第1の端部8aを経由して第1の端子7bに導通する。上述のように、第1の端子7bと第4の端子7eは直接に接続されているため、第1の端子7bは、第4の端子7e、第4の端部9b、第2の導線9、第3の端部9aを経由して第3の端子7dに導通する。さらに、第3の端子7dは、上述のように第6の端子7gと直接に接続されているため、第3の端子7dは、第6の端子7g、第6の端部10b、第3の導線10、第5の端部10a、第5の端子7faを経由してチップ本体7aの内部回路に導通する。
【0030】
即ち、ICチップ7によって、第1の導線8、第2の導線9及び第3の導線10が間接的に相互に接続され、ループアンテナ6が形成される。このように、ループアンテナ6を形成するための導線は、基材5の第1の面5aにのみ形成されればよく、いずれの導線も第2の面5bに形成される必要はない。これにより、本体3の厚さは、基材5と、第1の面5a上に形成された各アンテナ導線の厚みだけとなり、第1の面5a及び第2の面5bに導線が形成され、又はブリッジ構造等が形成される場合に比べ本体3を薄型化することが可能である。
【0031】
ICカード1の回路構成について説明する。
図7は、ICカード1の回路構成を示す模式図である。
上述したように、ICチップ7が、第2の端子7c及び第5の端子7fによってループアンテナ6に接続されている。チップ本体7aには、配線11、配線12、配線15、コンデンサ13及びアンテナ制御部14が収容されている。配線11、配線12、配線15、コンデンサ13及びアンテナ制御部14が上述したICチップ7の内部回路である。
【0032】
図6に示すように、配線11は第2の端子7cとアンテナ制御部14を接続し、配線12は第5の端子7fとアンテナ制御部14を接続している。配線15はコンデンサ13を介して配線11と配線12を接続している。これにより、コンデンサ13は、ループアンテナ6と並列にアンテナ制御部14に接続される。
【0033】
コンデンサ13は、所定の静電容量を有し、ループアンテナ6と共振回路を形成する。共振回路の共振周波数はコンデンサ13の静電容量に依存するため、コンデンサ13の静電容量は、共振周波数が所望の周波数となるような静電容量とされる。本実施形態に係るICカード1では、コンデンサ13が静電容量素子に相当する。
【0034】
アンテナ制御部14は、配線11及び配線12を介して接続されているループアンテナ6を制御する。具体的には、アンテナ制御部14は、電源回路、復調回路、変調回路、演算処理回路、記憶素子等から構成されている。アンテナ制御部14は、ループアンテナ6を介して供給された電力により駆動され、ループアンテナ6との間で電流信号を授受する。なお図示せずとも、上記共振回路とアンテナ制御部14との間には、ループアンテナに生じた誘導電流を整流する整流素子が設けられている。
【0035】
ICカード1は以上のような回路構成を有する。一般的なICカードでは、コンデンサは基材を挟んで対向する2枚の導体によって形成されるため、基材の両面に導体を配置する必要がある。これに対し、本実施形態に係るICカード1では、コンデンサ13はICチップ7に内蔵されているため、基材5上に形成する必要はない。即ち、基材5の第2の面5bに導体を形成する必要はない。
【0036】
以上のように構成されたICカード1の動作を説明する。なお、以下に示すICカード1の動作は一例であり、ここに示すものに限られない。
ICカード1が図示しないリーダライタに接近すると、ICカード1とリーダライタの間で通信がなされる。リーダライタは共振回路を構成するアンテナ(以下、RWアンテナ)を有し、ICカード1と同一の共振周波数(例えば13.56MHz)を有する。以下、リーダライタは、当該周波数の電磁波を放射しているものとする。
【0037】
ICカード1がリーダライタのアンテナコイルに十分(例えば10cm程度)接近すると、RWアンテナが形成する電磁界にループアンテナ6が進入する。これにより、ループアンテナ6において交流電圧が発生する。この交流電圧は、ループアンテナ6及びコンデンサ13によって構成される共振回路の共振周波数が、RWアンテナが形成する電磁界の周波数と一致したときに最大となる。ループアンテナ6で発生した交流電圧はアンテナ制御部14に内蔵された電源回路において直流化及び定電圧化され、ICチップ7の駆動電力として利用される。
【0038】
リーダライタからICカード1に信号を送信する場合、リーダライタは、例えばマンチェスタ方式により符号化された信号を、RWアンテナから放射する電磁波の振幅を変調して放射する。変調方式は、例えばASK(amplitude shift keying)10%変調とすることができる。具体的には、ビットの前半を大きい振幅とし、後半を小さい振幅とすることで「1」とし、ビットの前半を小さい振幅とし、ビットの後半を大きい振幅とすることで「0」する。ループアンテナ6に流れる誘導電流は、ICチップ7に入力され、信号に復調される。
【0039】
ICカード1からリーダライタに信号を送信する場合、ICカード1は、リーダライタから放射される電磁波を振幅を変調して反射する。具体的には、リーダライタと同様にマンチェスタ方式により符号化された信号を、ループアンテナ6に入射する電磁波に対してASK10%変調方式により変調して反射する。反射波は、RWアンテナに誘導電流を発生させ、リーダライタは誘導電流を信号に復調する。
【0040】
このように、リーダライタとICカード1の間で通信が行われる。ここで示した通信方式は一例であり、ICカード1は、例えば反射波ではなく、入射する電磁波と波長の異なる副搬送波を放射してリーダライタに信号を送信するものとすることもできる。
【0041】
一連の通信の例としては、リーダライタがICカード1に読み出しコマンドを送信し、ICカード1が記憶している情報をリーダライタに送信する、あるいはリーダライタがICカード1に情報を送信し、ICカード1が送信された情報を記憶する等である。
【0042】
次に、ICカード1の製造方法を説明する。
まず、基材5上に、図4に示したようにアンテナ導線(第1の導線8、第2の導線9及び第3の導線10)を形成する。
アンテナ導線は、例えば基材5の第1の面5aに箔状の材料を張り、エッチング法によりパターニングすることで形成することができる。また、予めパターニングされたアンテナ導線を第1の面5aにプリントし、あるいは第1の面5aにアンテナ導線のパターン状にメッキ、蒸着等することによっても形成することができる。
【0043】
次に、図2に示したようにICチップ7を第1の面5aに、各端子がアンテナ導線の各端部に電気的に接続されるように実装する。実装方法は、フリップチップ実装あるいはハンダ付け等の方法を用いることができる。
【0044】
その後、図1に示すように、基材5の第1の面5a側に第1の被覆部材を、第2の面5b側に第2の被覆部材を接着剤等により貼付する。
【0045】
ICカード1は以上のようにして製造される。この製造方法では、アンテナ導線を第1の面5aに形成すればよく、第2の面5bに、ループアンテナ6をICチップ7に接続するための導線やスルーホール(内周に導体が配置された貫通孔)等を形成する必要がない。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るICカード1は、第1の面5aに形成されたアンテナ導線が第1の面5aに実装されたICチップ7によって接続され、ループアンテナ6が形成される構成である。このため、基材5の第1の面5a以外に導線が形成される必要はなく、基材5の両面に導線が形成され、又はブリッジ構造等が形成される場合に比べ製造コストの低減が可能である。さらに、本体3の厚みは、基材5の厚みと、第1の面に形成されたアンテナ導線の厚みのみであり、ICカード1を薄型化することが可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第2の実施形態を説明する。
本実施形態に係る非接触通信媒体として、IC(Integrated Circuit)カードを例にとって説明する。以下、本実施形態の説明において第1の実施形態に係るICカード1と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図8は、第2の実施形態に係るICカード200の回路構成を示す図である。
同図に示すように、チップ本体7aには、配線201、配線202、配線203、配線204、コンデンサ群205、スイッチ群206、スイッチ制御部207及びアンテナ制御部14が収容されている。
【0049】
配線201は第2の端子7cとアンテナ制御部14を、スイッチ制御部207を介して接続し、配線202は第5の端子7fとアンテナ制御部14を、スイッチ制御部207を介して接続している。
【0050】
コンデンサ群205は複数のコンデンサを有し、スイッチ群206はコンデンサと同数のスイッチから構成されている。なお、コンデンサ及びスイッチの数は適宜変更することが可能である。
【0051】
配線203は、コンデンサ群205のコンデンサの一つとスイッチ群206のスイッチの一つを配線202及び配線203にそれぞれ接続する。これにより、コンデンサ群205のそれぞれのコンデンサは、スイッチ群206のそれぞれのスイッチと直列に接続され、かつ、ループアンテナ6と並列にアンテナ制御部14に接続される。
【0052】
コンデンサ群205はループアンテナ6と共振回路を形成する。コンデンサ群205のそれぞれのコンデンサは所定の静電容量を有する。それぞれのコンデンサの間で静電容量は異なってもよく、同一であってもよい。それぞれのコンデンサの間で静電容量は異なってもよく、同一であってもよい。本実施形態に係るICカード200では、コンデンサ群が静電容量素子に相当する。
【0053】
スイッチ群206は、配線203の配線202への接続を開閉し、即ち、コンデンサ群205のそれぞれのコンデンサのループアンテナ6への接続を開閉する。スイッチ群206のそれぞれのスイッチは電界効果トランジスタ等のトランジスタであり、コレクタはコンデンサに、エミッタは配線202にそれぞれ接続されている。また、ベースは、配線204によってスイッチ制御部207にそれぞれ接続されている。なお図示せずとも、上記共振回路とアンテナ制御部14との間には、ループアンテナに生じた誘導電流を整流する整流素子が設けられている。
【0054】
なお、スイッチ群206は、それぞれコンデンサ群205のコンデンサにそれぞれ接続された複数のスイッチからなるものとしたがこれに限られない。スイッチ群206を一つ一つの切り替えスイッチとし、コンデンサのいずれか一つがループアンテナ6と接続されるように配線203を切り替えるものとすることも可能である。
【0055】
スイッチ制御部207は、アンテナ制御部14によって制御される。スイッチ制御部207は、配線204を介してスイッチ群206のそれぞれのスイッチのベースに電圧を印加することが可能に構成されている。また、スイッチ制御部207は、ループアンテナ6とコンデンサ群205によって形成される共振回路の共振周波数が、ループアンテナ6に入射する電磁波の周波数と一致しているかを測定するための構成、例えば電流測定回路を有する。
【0056】
以上のように構成されたICカード200の動作を説明する。
第1の実施形態に係るICカード1と同様に、ICカード200は電磁誘導によりリーダライタから電力を供給され、信号の送受信を行う。このために、ループアンテナ6に入射する電磁波の周波数とICカード200の共振周波数がずれていると、ICチップ7の駆動電力が不足し、あるいは通信可能距離が短くなるおそれがある。これに対しICカード200は、ループアンテナ6とコンデンサ群205によって形成される共振回路の共振周波数を調節することが可能である。
【0057】
ICカード200の共振周波数の調節は、その製造の際に実施することができる。
例えば、ICカード200に、試験用のリーダライタから所定の周波数の電磁波を放射する。スイッチ制御部207は、ベース電圧を印加するスイッチを順次切り替え、電磁波の周波数と共振周波数が最も接近する状態を決定する。スイッチ制御部207は、例えば、電流測定回路により測定される電流が最大の時に、電磁波の周波数と共振周波数が最も接近したと判断することができる。これにより、ICカード200の製造時に共振周波数を所定の周波数に調節することが可能となる。
【0058】
また、スイッチ制御部207によるスイッチの制御は製造の際に限られず、使用時にリーダライタに接近する毎に実施されてもよい。具体的には、リーダライタからICカード200に電磁波が放射されると、通信を開始する前に上述のようにして共振周波数を調節する。リーダライタによっては、個体毎あるは周囲の環境により放射される電磁波の周波数が所定の周波数からずれている場合がある。本実施形態に係るICカード200では、このような場合であっても最適な共振周波数に調節される。
【0059】
(比較例)
以下、比較例に係るICカードについて説明する。
比較例に係るICカードは、RFID技術を利用する非接触通信のためのICカードであって、一般的な構造のものである。
【0060】
図9は、比較例に係るICカードの本体300を示す図である。図9(a)は本体300に垂直な方向からみた平面図であり、図9(b)は本体300に平行な方向からみた平面図である。
【0061】
同図に示すように、本体300は、基材301、ループアンテナ302、コンデンサ303、ICチップ304及び裏面配線305を有する。基材301の、ICチップ304が実装されている側の面を第1の面301a、その反対側の面を第2の面301bとする。
【0062】
スパイラス状のループアンテナ302は、第1の面301a上に形成されている。しかし、ループアンテナ302の外周側端部は、基材301に形成されたスルーホール301cを経由して、第2の面301bに形成された裏面配線305に接続されている。裏面配線305は、さらにスルーホール301dを経由して第1の面301aに戻り、ICチップ304に接続されている。
【0063】
このように、ループアンテナ302がスパイラル形状を有するために、ループアンテナの外周側端部302aをICチップ304に接続させるためには、第2の面301bに裏面配線305を形成することが必要である。しかしながら、本発明の実施形態によれば、裏面配線を形成することを要しない。
【0064】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【0065】
上述した各実施形態では、非接触通信媒体は、電池を内蔵しないパッシブ型のものとしたが、電池を内蔵し、自ら電磁波を放射するアクティブ型にものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、200…ICカード
2…第1の被覆部材
4…第2の被覆部材
5…基材
5a…第1の面
5b…第2の面
6…ループアンテナ
7…ICチップ
7b…第1の端子
7c…第2の端子
7d…第3の端子
7e…第4の端子
7f…第5の端子
7g…第6の端子
7fa…第5の端子
8…第1の導線
8a…第1の端部
8b…第2の端部
9…第2の導線
9a…第3の端部
9b…第4の端部
9d…第4の端部
10…第3の導線
10a…第5の端部
10b…第6の端部
13…コンデンサ
14…アンテナ制御部
205…コンデンサ群
206…スイッチ群
207…スイッチ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部及び第2の端部を有し、環状に形成された第1の導線と、
第3の端部及び第4の端部を有し、前記第1の導線の内側に環状に形成された第2の導線と、
前記第1の端部に接続される第1の端子と、前記第2の端部に接続される第2の端子と、前記第3の端部に接続される第3の端子と、前記第4の端部に接続される第4の端子と、静電容量素子とを有し、前記第1の端子と前記第4の端子とを介して前記1の導線と前記第2の導線を含むループアンテナを形成し、前記第2の端子と前記第3の端子とを介して前記静電容量素子及び前記ループアンテナを含む共振回路を形成する集積回路チップと
前記第1の導線、前記第2の導線及び前記集積回路チップが実装される第1の面を有する基材と
を具備する非接触通信媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信媒体であって、
前記静電容量素子は、
前記ループアンテナに対して並列的に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサのうち、前記ループアンテナと接続されるコンデンサを切り替えるスイッチ回路とを含む
非接触通信媒体。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触通信媒体であって、
前記集積回路チップは、前記スイッチ回路を制御するスイッチ制御部をさらに有する
非接触通信媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の非接触通信媒体であって、
前記スイッチ制御部は、通信対象機器から放射される電磁波の周波数と前記共振回路の共振周波数が一致するように前記スイッチを制御する
非接触通信媒体。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触通信媒体であって、
前記第1の面を覆う第1の被覆部材と、
前記基材の前記第1の面の反対側の第2の面を覆う第2の被覆部材と、
をさらに具備する非接触通信媒体。
【請求項6】
基材の第1の面に、第1の端部及び第2の端部を有する環状の第1の導線と、前記第1の導線の外側に配置され第3の端部及び第4の端部を有する環状の第2の導線とをそれぞれ形成し、
前記第1の面に、静電容量素子を内蔵する集積回路チップを実装することで、前記第1の端部と前記第4の端部とを介する前記第1の導線と前記第2の導線とを含むループアンテナを形成し、かつ、前記第2の端部と前記第3の端部との間に前記静電容量素子を接続して前記静電容量素子及び前記ループアンテナを含む共振回路を形成する
非接触通信媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−164990(P2011−164990A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27913(P2010−27913)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】