説明

非接触ICラベル

【課題】UHF帯及びHF帯の2種類の周波数、通信方式に対応可能とし、金属製の被接着体に取り付けても通信可能な非接触ICラベルを提供する。
【解決手段】磁性シート10と、磁性シート10の一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部25と、複数の第一アンテナ部25に接続される第一ICチップ21とを備えた非接触ICラベルにおいて、磁性シート10の一方の面側に配置され、複数の第一アンテナ部25を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部27と、該第二アンテナ部27と接続された第二ICチップ29とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信によってID情報を読み取り可能な非接触ICラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、RFIDタグ(非接触ICラベル)とリーダ等との間で、無線通信による情報の送受信が行われている。しかしながら、RFIDタグを金属製の被接着体に取り付けた場合には通信性能が低下してしまう。この問題点を解決するために、様々なRFIDタグの構成が検討されている。
【0003】
例えば、13.56MHz帯の電波を用いる電磁誘導方式のRFIDタグでは、アンテナと被接着体の間に高透磁率の磁性体(磁性シート)を設け、アンテナと被接着体との間にロスの少ない磁束のルートを確保することで、金属製の被接着体に取り付けても通信性能を維持できるRFIDタグを実現している。なお、通信性能は低下するが磁性体の厚さを、たとえば100μmまたは100μm以下と薄くすることもできるので、金属製の被接着体に対応した薄手の金属対応RFIDタグも作ることができる。
【0004】
これに対して、UHF帯及びSHF帯で用いられる電波方式のRFIDタグでは、アンテナと被接着体との間に誘電体また空気層を設けることで、アンテナと被接着体との隙間を確保し、被接着体の影響を抑える方法が一般的に用いられる。
しかしながら、この方法では、アンテナと被接着体との間に100μmの厚さの誘電体を用けた場合や100μmの厚さの空気層を設けた場合には、金属製の被接着体の影響を強く受けてしまい通信不能となってしまう。よって、現状では、HF帯で用いられるような薄手(厚さが数百μm以下)のRFIDタグを作ることは困難であるとされている。
【0005】
UHF帯及びSHF帯で用いられる電波方式の他のRFIDタグとしては、例えば特許文献1に示すように、アンテナと被接着体との間に磁性体を設ける構成も提案されている。このRFIDタグでは、アンテナと金属製の被接着体との間に軟磁性体を配置している。特許文献1では、軟磁性体については克明な記載がある。一方で、使用するアンテナに関してはダイポールアンテナ及びその変形アンテナといった程度の記載に留まっており、また実際の検証においてもアンテナ形状の詳細な記載はなく、磁性体の厚さも1mm(通信距離は15mm)の例しか記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−309811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、UHF帯及びSHF帯で用いられる上記の電波方式のRFIDタグでは、たとえば、ラベルとして用いられるには厚くなりすぎて、実用に耐えなくなるという問題がある。
一般的なRFIDタグでは、アンテナの幅は1mm以下のものが多く、また一部のRFIDタグでは小型化及びアンテナ利得向上のためにアンテナ幅を細くしてメアンダ形状を採用している。発明者が行った実験により、上記特許文献1に記載されたRFIDタグが前述のような一般的なアンテナを備えた場合において、軟磁性体を単に薄くするだけでは充分な通信性能が得られないことも分かった。
【0008】
一方、上記RFIDタグは、UHF帯において電波方式で動作するRFIDタグと、HF帯において電磁誘導方式で動作するRFIDタグの2種類が主流となっており、取り付けられる対象物(被接着体)、使用環境などにより2種類のRFIDタグは使い分けられている。
【0009】
このような状況において、近年では読み取り装置も前述の2種類の周波数、通信方式のRFIDタグが読み取り可能なマルチリーダーが開発され市販されている。しかしながら、電波方式の出力アンテナと電磁誘導方式の出力アンテナではアンテナの構造が全く異なることから高出力化が難しく、かつ高コストになってしまうという欠点があり、読み取り装置の主流にはなっていない。
この課題に対してRFIDタグ自身が前述の2種類の周波数、通信方式に対応でき、シンプルでかつ安価に作ることができれば、UHF帯用及びHF帯用どちらの読み取り装置であってもRFIDタグの情報が読み取ることが可能となり、使用環境における利便性は格段に向上する。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、UHF帯及びHF帯の2種類の周波数、通信方式に対応可能とし、金属製の被接着体に取り付けても通信可能な非接触ICラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る非接触ICラベルは、磁性シートと、前記磁性シートの一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部と、前記複数の第一アンテナ部に接続される第一ICチップとを備えた非接触ICラベルにおいて、前記磁性シートの一方の面側に配置され、前記複数の第一アンテナ部を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部と、該第二アンテナ部と接続された第二ICチップとをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
このような非接触ICラベルによれば、第一アンテナ部と第二アンテナ部とを備えているため、これら第一アンテナ部及び第二アンテナ部の周波数帯と通信方式を異ならせることで少なくとも2種類の周波数、通信方式に対応することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る非接触ICラベルは、磁性シートと、前記磁性シートの一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部と、前記複数の第一アンテナ部に接続される第一ICチップとを備えた非接触ICラベルにおいて、前記磁性シートの一方の面側に配置され、前記複数の第一アンテナ部を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部をさらに備え、前記第二アンテナ部が前記第一ICチップと接続されていることを特徴とする。
【0014】
このような非接触ICラベルによっても上記同様、これら第一アンテナ部及び第二アンテナ部の周波数帯と通信方式を異ならせることで少なくとも2種類の周波数、通信方式に対応することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る非接触ICラベルにおいて、前記第一アンテナ部はUHF帯の電波方式で動作するとともに、前記第二アンテナ部はHF帯の電磁誘導方式で動作することが好ましい。
【0016】
これにより、UHF帯の電波方式及びHF帯の電磁誘導方式の2種類に対応した非接触ICラベルを実現することができる。
【0017】
また、本発明に係る非接触ICラベルは、磁性シートと、前記磁性シートの一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部と、前記複数の第一アンテナ部に接続される第一ICチップとを備えた非接触ICラベルにおいて、前記磁性シートの一方の面側に配置され、前記複数の第一アンテナ部を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部と、該第二アンテナ部と接続された第二ICチップとをさらに備え、前記第二アンテナ部が、前記第二ICチップに加えて前記第一ICチップに接続されているものであってもよい。
【0018】
このような非接触ICラベルによれば、第二アンテナ部を2つの周波数帯の異なる方式で動作させることができるため、さらに第一アンテナ部を加えることで、最大で3波対応を実現することができる。
【0019】
さらに、上記非接触ICラベルでは、前記第一アンテナ部はUHF帯の電波方式で動作するとともに、前記第二アンテナ部はHF帯の電磁誘導方式及びUHF帯の電磁誘導方式の双方で動作することが好ましい。
これによって、3波対応を確実に実現することができる。
【0020】
また、本発明に係る非接触ICラベルでは、複数の前記第一アンテナ部として、前記第一ICチップとの接続部から延びるように一対の前記第一アンテナ部が配置されており、これら一対の第一アンテナ部がそれぞれ前記接続部から延びる方向が互いに逆向きであることが好ましい。
これによって、通信感度を担保しながら薄型の構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非接触ICラベルによれば、UHF帯及びHF帯の2種類の周波数、通信方式に対応し、金属製の被接着体に取り付けても通信可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態に係る非接触ICラベルを模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る非接触ICラベルを模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る非接触ICラベルを模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係る非接触ICラベルを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一実施形態に係る非接触ICラベル1について図1を参照して説明する。この非接触ICラベル1は、データ読み取り装置(図示省略)との間で非接触にて通信を行うものである。
【0024】
図1に示すように、非接触ICラベル1は、磁性シート10と、磁性シート10の一方の面に配置された内側通信部20及び外側通信部30とを備えている。
【0025】
磁性シート10としては、磁性粒子や磁性フレークの磁性帯とプラスチックやゴムの合成樹脂との複合材からなり、ラベル用途として柔軟性が高い公知の材料を用いることができる。この磁性シート10は、所定の厚みを有する矩形シート状に形成されている。
【0026】
内側通信部20は、磁性シート10の一方の面の中央に配置されている。この内側通信部20は、第一ICチップ21と、該第一ICチップ21に接続された回路部22と、該回路部22に接続されるとともに回路部22を挟むように配置された一対の接続パッド(接続部)23,24と、これら接続パッド23,24にそれぞれ接続された一対のアンテナエレメント(第一アンテナ部)25,26とを有している。
【0027】
第一ICチップ21は公知の構成のものが用いられ、該第一ICチップ21内には所定の情報が記憶されている。そして、第一ICチップ21に設けられた不図示の電気接点から電波方式により該第一ICチップ21に対してUHF帯の電波のエネルギーが供給されることで、該第一ICチップ21に記憶された情報が電気接点を介して第一ICチップ21の外部に伝達されるようになっている。即ち、第一ICチップ21は、電波方式に対応したチップとされており、特に本実施形態ではUHF帯の電波方式とされている。
【0028】
また、回路部22及び接続パッド23,24は、PETなどで形成された不図示のフィルム上に銀ペーストインキを印刷することで、一体に形成されている。
回路部22は、所定の形状に蛇行させた配線により形成されている。この回路部22は、ICチップ21と接続パッド23,24との間、及び、ICチップと接続パッド23,24との間のそれぞれに、互いに等しい所定のインピーダンス及び抵抗値が生じるように構成されている。また、回路部22は第一ICチップ21内の電気接点(図示省略)に電気的に接続されている。
接続パッド23,24は、磁性シート10の短辺に沿う方向から回路部22を挟むように配置され、回路部22に電気的に接続されている。
【0029】
上記のように一体に形成された回路部22及び接続パッド23,24と、第一ICチップ21とで、いわゆるチップストラップを構成する。さらに、チップストラップ及びアンテナエレメント25,26で、いわゆるダイポールアンテナを構成する。
【0030】
一対のアンテナエレメント25,26は、上記一対の接続パッド23,24にそれぞれ一対一の関係で電気的に接続されており、それぞれ対応する接続パッド23,24から延びるように配置されている。より具体的には、これら一対のアンテナエレメント25,26は、接続パッド23,24から延びる方向が互いに逆向きに設定されている。即ち、一方のアンテナエレメント25(図1における上側のアンテナエレメント25)は、対応する接続パッド23から磁性シート10の長辺方向一方側(図1における左側)に向かって延在しており、他方のアンテナエレメント26(図2における下側のアンテナエレメント26)は、対応する接続パッド24から磁性シート10の長辺方向他方側(図2における右側)に向かって延在している。
【0031】
外側通信部30は、磁性シート10の一方の面における内側通信部20の外側に配置されている。この外側通信部30は、第二ICチップ29と、該第二ICチップ29に接続されたアンテナコイル(第二アンテナ部)27とを備えている。
【0032】
第二ICチップ29は公知の構成のものが用いられ、該第二ICチップ29内には所定の情報が記憶されている。そして、第二ICチップ29に設けられた不図示の電気接点から電磁誘導方式により該第2ICチップに対してエネルギーが供給されることで、該第二ICチップ29に記憶された情報が電気接点を介して第二ICチップ29の外部に伝達させることができるようになっている。即ち、第二ICチップ29は、電磁波方式に対応したチップとされており、特に本実施形態ではHF帯の電磁波方式とされている。
【0033】
アンテナコイル27は、上記内側アンテナを含む内側通信部20を外周側から取り囲むように配置されたコイル状をなしている。即ち、アンテナコイル27は、線状をなす導線部が幾重にも重なって巻回されるように磁性シート10の一方の面に配置されている。このアンテナコイル27の両端は上記第二ICチップ29に接続されており、外部の読み取り装置とHF帯における電磁誘導方式の通信を行うように構成されている。
なお、非接触ICラベル1を例えば金属製の被接着体に取り付ける場合であっても、アンテナコイル27と被接着体との間には高透磁率の磁性シート10が存在するため、アンテナコイル27と被接着体との間にロスの少ない磁束のルートが確保され、通信性を良好に確保することができる。
【0034】
以上のような本実施形態の非接触ラベルによれば、内側通信部20がUHF帯の電波方式に対応しており、外側通信部30がHF帯の電磁誘導方式に対応しているため、これら2種類の周波数、通信方式で情報通信を行うことが可能となる。
【0035】
また、通信方式が電磁誘導のアンテナコイル27の場合には、そのアンテナ利得(感度)はアンテナコイル27の大きさ(直径)に比例するので、一対のアンテナエレメント25,26の外側に、これらアンテナエレメント25,26を囲むように成形することで、アンテナコイル27の直径を最大限に大きくすることができる。
【0036】
次に、本発明の第二実施形態図について図2を参照して説明する。第二実施形態の非接触ICラベル1は、第二ICチップ29が設けられておらず、アンテナコイル27の両端が第一ICチップ21に接続されている点で第一実施形態とは相違する。
即ち、第二実施形態の第一ICチップ21は、第一実施形態における第二ICチップ29の機能を取り込むように一チップ化されたものである。
この一チップ化のメリットは大きく、まずはICチップ1個分の実装コストが削減できることと、さらにチップ内のユーザーメモリ域を共有化することで、2チップの場合に比べてチップサイズを小さくすることもできる。
【0037】
なお、通信距離が短くなるという欠点はあるが、主に液体、RFIDタグ同士の接近等、周囲の影響を受けにくくするためにUHF帯であっても電磁誘導方式を用いることがある。そのため、同電磁誘導方式に特化したUHF帯の読み取りアンテナ(コイルアンテナ)も市販されている。
【0038】
次に、本発明の第三実施形態図について図3を参照して説明する。図3に示すように、第三実施形態の非接触ICラベル1は、アンテナコイル27の一部27aが第一ICチップ21に接続されている点で第一実施形態とは相違する。
即ち、この非接触ICラベル1は、アンテナコイル27の一部27aををUHF帯の電磁誘導方式のアンテナとしたものであり、上述した電磁誘導方式の読み取りアンテナコイル26に対応している。
【0039】
アンテナコイル27の一部27aの両端は、第一ICチップ21のUHF帯の電磁誘導方式に対応した接続部(バンプ)に接続されている。したがって、第一ICチップ21としては電波方式及び電磁誘導方式の2方式に対応したチップを用いる必要がある。
本実施形態では、2波対応(UHF帯及びHF帯の2種類の周波数、2種類の通信方式)に加えUHF帯の電磁誘導方式にも対応している。即ち、本実施形態では、第一アンテナ部はUHF帯の電波方式で動作するとともに、第二アンテナ部はHF帯の電磁誘導方式及びUHF帯の電磁誘導方式の双方で動作する。したがって、本実施形態の非接触ICラベル1によれば、3波対応を実現することができる。
【0040】
次に、本発明の第四実施形態について図4を参照して説明する。なお、図4において図1と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図4に示すように、第四実施形態の非接触ICラベル1は、平面視において磁性シート10が2つのエリアに分割されている点において第一実施形態と相違する。
【0041】
即ち、第四実施形態では、磁性シート10は内側通信部20が配置された第一領域10aと外側通信部30が配置された第二領域10bとに分割されており、これら第一領域10a及び第二領域10bはそれぞれ異なる物性に設定されている。
【0042】
このようにすることで以下に示す改善が可能となる。即ち、磁性シート10の第一領域10aでは、その電気的な物性値(透磁率、磁性損失、誘電率、誘電損失など)をUHF帯の電波方式にあった好適なものにすることができる。また、磁性シート10の第二領域10bも同様に、その電気的な物性値(透磁率、磁性損失、誘電率、誘電損失など)をHF帯の電磁誘導方式にあった好適なものにすることができる。
【0043】
なお、図示は省略するが、UHF帯の電磁誘導方式のアンテナコイル27においても同様である。よって、UHF帯及びHF帯のそれぞれの通信距離をさらに伸ばすことが可能となる。
また、磁性シート10の第一領域10a及び第二領域10bを設定する際には、それぞれが別行程で製造され分割された形態(形状を含む)、または同一行程で製造され一体となった形態等、前述のとおり磁性シート10の電気的な物性値を変えることが可能であればどのような形態であってもかまわない。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0045】
例えば、実施形態では、アンテナエレメント25,26の平面視した形状を矩形状とした。しかし、アンテナエレメント25,26の形状はこれに限定されず、アンテナエレメント25,26を平面視した形状は、円形、楕円形、多角形状などでもよい。さらに、アンテナエレメント25,26及びアンテナエレメント25,26が互いに異なる形状であってもよい。またアンテナコイル27においても同様であり、アンテナエレメント25,26をその周囲から囲むような構成であればいかなる形状であってもよい。
【0046】
また、実施形態では、一対のアンテナエレメント25,26が延びる方向を互いに逆向きとしたがこれらの延びる方向が互いに異なる方向となるように配置されていれば、特に配置は限定されない。
さらに、記実施形態では、内側通信部20及び外側通信部30は磁性シート10の一方の面に配置されていたが、磁性シート10の一方の面と内側通信部20及び外側通信部30との間に樹脂などで形成された部材を配置したり、空気層を設けたりしてもよい。
【0047】
なお、非接触ICラベル1が実際に用いられる際には、図には示さないが、目視または機械読み取りのための文字、図形などの情報が記載されたフィルム、紙類が、ICチップの保護も兼ねて、内側通信部20及び外側通信部30に対する磁性シート10とは反対側に設けられてもよい。なお、この情報は、非接触ICラベル1にフィルムなどを設けた後に、プリンタ等によりフィルムに記載しても構わない。また、磁性シート10の他方の面には、被接着体である金属面に貼り付けるための接着層が設けられてもよい。
【実施例】
【0048】
第一実施形態の非接触ICラベル1を用いた読み取り実験を行った。その内容を以下に示す。
(実験条件)
実験には、下記に示す機材及び材料を使用した。
・磁性シート10:大同特殊鋼(株)製 NRC010(厚さ100μm)
・第一ICチップ21:NXP社製 UCODE G2iL
・アンテナエレメント25,26:厚さ12μmのアルミニウムの薄膜
・チップストラップ(インピーダンス回路(回路部22)付き):ICチップ21以外は
自社製
PETフィルム(厚さ50μm)上に銀ペーストインキでパターン印刷(厚さ8μm)
・第二ICチップ29及びアンテナコイル27:オムロン(株)製 75mm×46mm
13.56MHz用ICインレット
・UHF帯高出力ハンディリーダー:SAMSUNG VLACG1 最大出力:1W
・HF帯読み取り装置:セントラルエンジニアリング(株)製 MR04A
・HF帯読み取りアンテナ:セントラルエンジニアリング(株)製 FLAM−T21A
・金属板:ステンレス製(250mm×250mm×0.5mm)
【0049】
(実験手順)
ステンレス製の金属板上に、上記磁性シート10を配置した。そして、この磁性シート10上にアンテナエレメント25,26を配置し、さらにその上に、PET上に印刷されたチップストラップを接続パッド23,24がアンテナエレメント25,26に電気的に接続されるように配置した。また、PETフィルム上に発泡スチロールを載置するとともに、アンテナエレメント25,26と接続パッド23,24との接続が確実になるように、金属板から発泡スチロールまでをまとめて、バンドで固定した。
続いて、発泡スチロール側からハンディリーダーを近づけ、電波方式により第一ICチップ21に記憶された情報を読み取った。そして、ハンディリーダーが非接触で内側通信部20から情報を読み取ることができる距離の最大値(通信距離)を求めた。
さらに、発泡スチロール側からハンディリーダーを近づけ、電磁誘導方式により第二ICチップ29に記憶された情報を読み取った。そして、ハンディリーダーが非接触で第二通深部から情報を読み取ることができる距離の最大値(通信距離)を求めた。
なお、発泡スチロール及びPETフィルムは、通信距離の測定結果にはほとんど影響を与えないことが判明している。
【0050】
(結果)
アンテナエレメント25,26は、30mm(長さ)×10mm(幅)の1種類とし、ハンディリーダーRの出力は0.5W(27dBm)とした場合の実験結果を以下に示す。
・UHF帯における通信距離:120mm
・HF帯における通信距離 : 90mm
その他に、UHF帯用のアンテナであるアンテナエレメント25,26と、HF帯用のアンテナであるアンテナコイル27とのアンテナ間の相互干渉の程度を調べる実験も行った。
UHF帯における通信距離で、一対のアンテナエレメント25,26の外側に設けられているアンテナコイル27がある場合と無い場合での通信距離の差はほとんどみられなかった。またHF帯における通信距離で、アンテナコイル27の内側に設けられている一対のアンテナエレメント25,26が、ある場合と無い場合での通信距離の差はほとんどみられなかった。
【0051】
以上の実験結果より、本発明の目的である、UHF帯及びHF帯の2種類の周波数、通信方式に対応し、金属製の被接着体に取り付けても通信可能で、かつ薄型の非接触ICラベル1が作れることが分かった。
【符号の説明】
【0052】
1 非接触ICラベル
10 磁性シート
10a 第一領域
10b 第二領域

20 内側通信部
21 第一ICチップ
22 回路部
23 接続パッド(接続部)
24 接続パッド(接続部)
25 アンテナエレメント(第一アンテナ)
26 アンテナエレメント(第一アンテナ)
30 外側通信部
29 第二ICチップ
27 アンテナコイル(第二アンテナ)
27a 一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性シートと、
前記磁性シートの一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部と、
前記複数の第一アンテナ部に接続される第一ICチップとを備えた非接触ICラベルにおいて、
前記磁性シートの一方の面側に配置され、前記複数の第一アンテナ部を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部と、
該第二アンテナ部と接続された第二ICチップとをさらに備えることを特徴とする非接触ICラベル。
【請求項2】
磁性シートと、
前記磁性シートの一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部と、
前記複数の第一アンテナ部に接続される第一ICチップとを備えた非接触ICラベルにおいて、
前記磁性シートの一方の面側に配置され、前記複数の第一アンテナ部を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部をさらに備え、
前記第二アンテナ部が前記第一ICチップと接続されていることを特徴とする非接触ICラベル。
【請求項3】
前記第一アンテナ部はUHF帯の電波方式で動作するとともに、
前記第二アンテナ部はHF帯の電磁誘導方式で動作することを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触ICラベル。
【請求項4】
磁性シートと、
前記磁性シートの一方の面側に配置されたシート状をなす複数の第一アンテナ部と、
前記複数の第一アンテナ部に接続される第一ICチップとを備えた非接触ICラベルにおいて、
前記磁性シートの一方の面側に配置され、前記複数の第一アンテナ部を取り囲むコイル状をなす第二アンテナ部と、
該第二アンテナ部と接続された第二ICチップとをさらに備え、
前記第二アンテナ部が、前記第二ICチップに加えて前記第一ICチップに接続されていることを特徴とする非接触ICラベル。
【請求項5】
前記第一アンテナ部はUHF帯の電波方式で動作するとともに、
前記第二アンテナ部はHF帯の電磁誘導方式及びUHF帯の電磁誘導方式の双方で動作することを特徴とする請求項4に記載の非接触ICラベル。
【請求項6】
複数の前記第一アンテナ部として、前記第一ICチップとの接続部から延びるように一対の前記第一アンテナ部が配置されており、
これら一対の第一アンテナ部がそれぞれ前記接続部から延びる方向が互いに逆向きであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触ICラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−248106(P2012−248106A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120897(P2011−120897)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】