説明

非晶性樹脂フィルムの製造方法、非晶性樹脂フィルム、偏光板、および画像表示装置

【課題】フィルム端部の耐折性に優れ、膜厚精度が高い、非晶性樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、少なくとも横方向への延伸を行う延伸工程と冷却工程とをこの順に有する非晶性樹脂フィルムの製造方法であって、該冷却工程の入口温度をTstart(℃)、出口温度をTend(℃)、該冷却工程の全長さをLall(m)としたときに、80>(Tstart−Tend)>0であり、該冷却工程中の任意の地点の温度T(℃)と冷却工程入口からの距離L(m)とが実質的に式(1)を満たすように直線勾配関係で該冷却工程を行う。
T=−{(Tstart−Tend)/Lall}×L+Tstart (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶性樹脂フィルムの製造方法、その製造方法で得られる非晶性樹脂フィルム、それを用いた偏光板、および、その偏光板を少なくとも1枚含む、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料からなる偏光子の両面に、偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せたものが用いられている。
【0003】
最近、偏光子保護フィルムとして、(メタ)アクリル系樹脂のような非晶性樹脂フィルムを用いることが提案されている(特許文献1〜3)。
【0004】
非晶性樹脂フィルムは、押出し成形しただけでは十分な機械的強度を有さない場合がある。そこで、押出し成形後のフィルムについて延伸を行うことで、十分な機械的強度を付与することが行われている。延伸時にフィルムのガラス転移温度以上に昇温させることにより、該フィルム分子の自由度(配列方向)が延伸方向に制御される。そして、該延伸後に冷却を行うことにより、制御されたフィルム分子の配列が保持され、十分な機械的強度が付与される。
【0005】
しかし、延伸後の冷却によって、フィルム端部に割れが発生するという問題や、得られるフィルムの厚みムラが大きくなるという問題がある。
【0006】
フィルム端部に割れが発生するという問題、すなわち、フィルム端部の耐折性の低下や、得られるフィルムの厚みムラが大きくなるという問題、すなわち、フィルムの膜厚精度の低下は、特に、光学フィルムとして用いる際には大きな欠点となる。
【特許文献1】特開2007−52404号公報
【特許文献2】特開2007−41563号公報
【特許文献3】特開2007−25008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、(1)フィルム端部の耐折性に優れ、膜厚精度が高い、非晶性樹脂フィルムの製造方法を提供すること、(2)そのような製造方法で得られる、光学フィルムに特に適した非晶性樹脂フィルムを提供すること、(3)そのような非晶性樹脂フィルムを用いた、外観欠点が少ない偏光板を提供すること、(4)そのような偏光板を用いた高品位の画像表示装置を提供すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の製造方法は、少なくとも横方向への延伸を行う延伸工程と冷却工程とをこの順に有する非晶性樹脂フィルムの製造方法であって、
該冷却工程の入口温度をTstart(℃)、出口温度をTend(℃)、該冷却工程の全長さをLall(m)としたときに、80>(Tstart−Tend)>0であり、該冷却工程中の任意の地点の温度T(℃)と冷却工程入口からの距離L(m)とが実質的に式(1)を満たすように直線勾配関係で該冷却工程を行う。
T=−{(Tstart−Tend)/Lall}×L+Tstart (1)
【0009】
好ましい実施形態においては、上記延伸工程においてフィルムの両端を把持しているクリップが、上記冷却工程の出口から2m以内で開放される。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記冷却工程の入口温度Tstartが上記フィルムのガラス転移温度以上であり、上記冷却工程の出口温度Tendが上記フィルムのガラス転移温度以下である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記フィルムのガラス転移温度が110℃以上である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記冷却工程の全長さLallが上記延伸工程の全長さ以下である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記冷却工程の全長さLallが得られるフィルムの幅方向長さ以上である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記フィルムが(メタ)アクリル系樹脂フィルムである。
【0015】
本発明の別の局面によれば、非晶性樹脂フィルムが提供される。本発明の非晶性樹脂フィルムは、本発明の製造方法で得られる。
【0016】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。本発明の偏光板は、本発明の非晶性樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして含む。
【0017】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。本発明の画像表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも1枚含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルム端部の耐折性に優れ、膜厚精度が高い、非晶性樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。また、そのような製造方法で得られる、光学フィルムに特に適した非晶性樹脂フィルムを提供することができる。さらに、そのような非晶性樹脂フィルムを用いた、外観欠点が少ない偏光板を提供することができる。また、そのような偏光板を用いた高品位の画像表示装置を提供することができる。
【0019】
このような効果は、少なくとも横方向への延伸を行う延伸工程と冷却工程とをこの順に有する製造方法によって非晶性樹脂フィルムを製造するにあたり、該冷却工程における温度制御を、所定の関係式を実質的に満たすような直線勾配関係で行うことにより、発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0021】
〔A.非晶性樹脂フィルムの製造方法〕
〔A−1.原料樹脂組成物〕
本発明の製造方法で用い得る原料樹脂組成物は、非晶性樹脂フィルムを製造し得る樹脂であれば、任意の適切な樹脂を採用し得る。特に、光学フィルムへの適用を考慮すると、透明性および耐熱性に優れる点で、(メタ)アクリル系樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムは、Tg(ガラス転移温度)が110℃以上である(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含むことにより、例えば、偏光子保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなり得る。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0023】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0025】
本発明においては、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、上記(メタ)アクリル系樹脂として、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0026】
グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2006−283013号公報、特開2006−335902号公報、特開2006−274118号公報などに記載の、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0027】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0028】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
【0029】
【化1】

(一般式(1)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
【0030】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
【0031】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0032】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、例えば、偏光子保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなり得る。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0033】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下し、光学フィルムとして使用できないおそれがある。
【0034】
上記原料樹脂組成物に含有される上記(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。上記(メタ)アクリル系樹脂の含有量が50重量%未満の場合には、(メタ)アクリル系樹脂が本来有する高耐熱性、高透明性が十分に反映できないおそれがある。
【0035】
上記原料樹脂組成物中には、上記(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂成分が含まれていても良い。上記(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な樹脂成分を採用し得る。
【0036】
上記原料樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切なその他の成分を含有し得る。例えば、一般的な配合剤、具体的には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび剤、他の滑剤等が含まれていても良い。
【0037】
〔A−2.溶融押出し成型〕
本発明の製造方法の好ましい実施形態においては、上記原料樹脂組成物を溶融押出し成形(Tダイ法やインフレーション法などの溶融押出法)することによりフィルム化する。溶融押出し成型は、ドライラミネーション法と異なり、溶媒乾燥工程が不要であるため、生産性に優れる。具体的には、直接添加あるいはマスターバッチ法を用いた二軸混練を行うことが好ましい。混練方法としては、東芝機械社製のTEM等を用いて、混練を行うことが好ましい。
【0038】
上記溶融押出し成型する際の成型温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは250〜300℃である。成型温度が250℃未満の場合、十分に溶融させてフィルム化させることができないおそれがある。成型温度が上がりすぎると、原料樹脂の分解が進行しやすいおそれがある。
【0039】
上記溶融押出し成型の好ましい実施態様の一例としては、上記原料樹脂組成物を二軸混練機に添加して成型温度を250℃以上として溶融押出しを行って樹脂ペレットを作製し、得られた樹脂ペレットをTダイに連結した単軸押出し機に供給してダイス温度250℃以上で押出し、フィルムとする。
【0040】
〔A−3.延伸工程、冷却工程〕
本発明の製造方法においては、少なくとも横方向(フィルムの幅方向)への延伸を行う延伸工程を有する。好ましくは、縦方向(フィルムの流れ方向)への延伸を行って得られた一軸配向フィルムについて、少なくとも横方向への延伸を行う延伸工程を行う。
【0041】
本発明の製造方法における好ましい実施形態としては、上記溶融押出し成型により得られたフィルムに対して、(1)縦方向への延伸を行うことによって一軸配向フィルムを形成し、その後、(2)予熱工程を経て、(3)少なくとも横方向への延伸を行う延伸工程を行い、その後、(4)冷却工程を行うことにより、分子が二軸配向されたフィルムを形成する。
【0042】
上記縦方向への延伸は、縦延伸倍率が、好ましくは1.1〜3.0倍、より好ましくは1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.3〜2.0倍である。縦延伸倍率が1.1倍未満の場合、延伸倍率が低すぎて、延伸の効果がほとんどないおそれがある。縦延伸倍率が3.0倍を超えると、フィルム端面の平滑性の問題により、延伸切れが生じるおそれがある。上記縦方向への延伸の延伸温度は、延伸させるフィルムのTg〜(Tg+30℃)が好ましい。上記延伸温度がTgより低いと、フィルムが破断してしまうおそれがある。上記延伸温度が(Tg+30℃)を超えると、フィルムが溶融し始めて通紙が困難になるおそれがある。
【0043】
上記予熱工程は、任意の適切な方法で予熱を行う工程であれば良い。好ましくは、該予熱工程後に行う延伸工程における延伸温度と実質的に同じ温度で予熱を行う。
【0044】
上記延伸工程においては、少なくとも横方向への延伸を行う。横延伸倍率は、好ましくは1.1〜3.0倍、より好ましくは1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.4〜2.5倍である。横延伸倍率が1.1倍未満の場合、延伸倍率が低すぎて、延伸の効果がほとんどないおそれがある。横延伸倍率が3.0倍を超えると、フィルム端面の平滑性の問題により、延伸切れが生じるおそれがある。上記横方向への延伸の延伸温度は、延伸させるフィルムのTg〜(Tg+30℃)が好ましい。上記延伸温度がTgより低いと、フィルムが破断してしまうおそれがある。上記延伸温度が(Tg+30℃)を超えると、フィルムが溶融し始めて通紙が困難になるおそれがある。
【0045】
上記延伸工程における延伸方法としては、フィルムの両端をクリップで把持して延伸を行うテンター延伸が好ましい。この場合、上記クリップが、後述する冷却工程の出口から2m以内で開放されることが好ましい。このようなタイミングでクリップを開放することにより、フィルム端部の耐折性に優れ、膜厚精度が高いフィルムを形成し得る。
【0046】
上記冷却工程においては、該冷却工程の入口温度をTstart(℃)、出口温度をTend(℃)、該冷却工程の全長さをLall(m)としたときに、80>(Tstart−Tend)>0であり、該冷却工程中の任意の地点の温度T(℃)と冷却工程入口からの距離L(m)とが実質的に式(1)を満たすように直線勾配関係で該冷却工程を行う。
T=−{(Tstart−Tend)/Lall}×L+Tstart (1)
【0047】
上記「実質的に式(1)を満たすように直線勾配関係で」とは、式(1)を完全に満たす場合だけでなく、温度制御を行う際に起こりうる温度の振れ範囲での該直線勾配関係からの逸脱範囲をも含む。具体的には、例えば、上記温度の振れ範囲として、好ましくは±10℃の範囲、より好ましくは±5℃の範囲、さらに好ましくは±3℃の範囲が挙げられる。
【0048】
上記TstartおよびTendは、80>(Tstart−Tend)>0であり、好ましくは70>(Tstart−Tend)>5、より好ましくは65>(Tstart−Tend)>10、さらに好ましくは60>(Tstart−Tend)>15、特に好ましくは55>(Tstart−Tend)>20である。(Tstart−Tend)が、80>(Tstart−Tend)>0の範囲を外れると、フィルム端部の耐折性の低下が起こるおそれや、フィルムの膜厚精度の低下が起こるおそれがある。
【0049】
上記Tstartは、好ましくは、非晶性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)以上である。より好ましくは(Tg+5)(℃)以上、さらに好ましくは(Tg+10)(℃)以上、特に好ましくは(Tg+20)(℃)以上である。上記Tstartが非晶性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)未満であると、フィルム端部の耐折性の低下が起こるおそれや、フィルムの膜厚精度の低下が起こるおそれがある。
【0050】
上記Tendは、好ましくは、非晶性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)以下である。より好ましくは(Tg−5)(℃)以下、さらに好ましくは(Tg−10)(℃)以下、特に好ましくは(Tg−20)(℃)以下である。上記Tendが非晶性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg(℃)を超えると、フィルム端部の耐折性の低下が起こるおそれや、フィルムの膜厚精度の低下が起こるおそれがある。
【0051】
上記ガラス転移温度Tgは、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。上記Tgの上限値は、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。上記Tgがこれらの範囲内にあれば、例えば、偏光子保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなり得る。
【0052】
上記冷却工程の全長さLallは上記延伸工程の全長さ以下であることが好ましい。より好ましくは、上記冷却工程の全長さLallは上記延伸工程の全長さの1/2以下、さらに好ましくは1/3以下、特に好ましくは1/4以下、最も好ましくは1/5以下である。下限値は、好ましくは1/50以上である。上記冷却工程の全長さLallが上記延伸工程の全長さより長いと、フィルム端部の耐折性の低下が起こるおそれや、フィルムの膜厚精度の低下が起こるおそれがある。
【0053】
上記冷却工程の全長さLallは得られるフィルムの幅方向長さ以上であることが好ましい。より好ましくは、上記冷却工程の全長さLallは得られるフィルムの幅方向長さの2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、特に好ましくは4倍以上、最も好ましくは5倍以上である。上限値は、好ましくは50倍以下である。上記冷却工程の全長さLallが得られるフィルムの幅方向長さ未満の場合、フィルム端部の耐折性の低下が起こるおそれや、フィルムの膜厚精度の低下が起こるおそれがある。
【0054】
本発明の製造方法における上記冷却工程の各温度制御は、任意の適切な方法で制御し得る。好ましくは、例えば、フィルムのライン速度の調整、冷却のための風量の調整が挙げられる。
【0055】
〔B.非晶性樹脂フィルム〕
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムの厚みは、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜60μmである。
【0056】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムは、光学的透明性を表す内部ヘイズが、低ければ低いほど良く、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下、特に好ましくは0.4%以下である。内部ヘイズが1.0%以下であると、フィルムに良好なクリヤー感を視覚的に与えることができる。
【0057】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムは、面内位相差Δndや厚み方向位相差Rthが低いものが好ましい。面内位相差Δndは、Δnd=(nx−ny)×dによって求めることができる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×dによって求めることができる。ここで、nx、nyは、それぞれ、遅相軸方向、進相軸方向における面内の屈折率であり、nzは厚み方向屈折率である。なお、遅相軸方向とは、面内の屈折率の最大となる方向をいう。
【0058】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムにおいては、面内位相差Δndは、好ましくは1.0nm以下、より好ましくは0.9nm以下、さらに好ましくは0.8nm以下である。上記面内位相差Δndが1.0nmを超えると、優れた光学的特性が発揮されないおそれがある。
【0059】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムにおいては、厚み方向位相差Rthは、好ましくは3.0nm以下、より好ましくは2.5nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下である。上記厚み方向位相差Rthが3.0nmを超えると、優れた光学的特性が発揮されないおそれがある。
【0060】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムにおいては、透湿度が、好ましくは100g/m・24hr以下、より好ましくは60g/m・24hr以下である。上記透湿度が100g/m・24hrを超えると、耐湿性に劣るおそれがある。
【0061】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムは、好ましくは、優れた機械的強度をも有する。引張強度は、MD方向において、好ましくは65N/mm以上、より好ましくは70N/mm以上、さらに好ましくは75N/mm以上、特に好ましくは80N/mm以上であり、TD方向において、好ましくは45N/mm以上、より好ましくは50N/mm以上であり、さらに好ましくは55N/mm以上、特に好ましくは60N/mm以上である。引張伸びは、MD方向において、好ましくは6.5%以上、より好ましくは7.0%以上、さらに好ましくは7.5%以上、特に好ましくは8.0%以上であり、TD方向において、好ましくは5.0%以上、より好ましくは5.5%以上、さらに好ましくは6.0%以上、特に好ましくは6.5%以上である。引張強度あるいは引張伸びが上記範囲を外れる場合は、優れた機械的強度が発揮されないおそれがある。
【0062】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムは、他の基材に積層して用いることができる。例えば、ガラス、ポリオレフィン樹脂、ハイバリア層となるエチレンビニリデン共重合体、ポリエステル等の基材に対して、接着性樹脂層を含めた多層押出成型や多層インフレーション成型によって、積層成形することもできる。熱融着性が高い場合には、接着層を省略することもある。
【0063】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムは、偏光子保護フィルムとしての用途に適している。また、偏光子保護フィルムとしての用途以外にも、例えば、窓やカーポート屋根材等の建築用採光部材、窓等の車輌用採光部材、温室等の農業用採光部材、照明部材、前面フィルター等のディスプレイ部材等に積層して用いることができ、また、従来から(メタ)アクリル系樹脂フィルムが被覆されていた家電の筐体、車輌内装部材、内装用建築材料、壁紙、化粧板、玄関ドア、窓枠、巾木等にも積層して用いることができる。
【0064】
〔C.偏光板〕
本発明の偏光板は、本発明の非晶性樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして含む。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子と本発明の非晶性樹脂フィルムとを含む偏光板であって、該偏光子が接着剤層を介して該非晶性樹脂フィルムに接着されてなる。
【0065】
本発明の偏光板の好ましい実施形態の1つは、図1に示すように、偏光子31の一方の面が、接着剤層32および易接着層33を介して本発明の非晶性樹脂フィルム34に接着されてなり、偏光子31のもう一方の面が、接着剤層35を介して光学フィルム36に接着されてなる形態である。光学フィルム36は本発明の非晶性樹脂フィルムであってもよいし、別の任意の適切な光学フィルム(偏光子保護フィルム)であってもよい。
【0066】
上記ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光子の厚みは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5〜80μmである。
【0067】
偏光子の製造方法としては、目的、使用材料および条件等に応じて任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗、および乾燥工程からなる一連の製造工程に供する方法が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む浴中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗、および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件等に応じて適宜設定され得る。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、特定の処理を省略してもよい。より詳細には、例えば延伸処理は、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、すべての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
【0068】
膨潤工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水で満たした処理浴(膨潤浴)中に浸漬することにより行われる。この処理により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄するとともに、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止し得る。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜添加され得る。膨潤浴の温度は、代表的には20〜60℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、代表的には0.1〜10分程度である。
【0069】
染色工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素等の二色性物質を含む処理浴(染色浴)中に浸漬することにより行われる。染色浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。二色性物質は、溶媒100重量部に対して、代表的には0.1〜1.0重量部の割合で用いられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合には、染色浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。染色効率が改善されるからである。助剤は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の割合で用いられる。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。染色浴の温度は、代表的には20〜70℃程度であり、染色浴への浸漬時間は、代表的には1〜20分程度である。
【0070】
架橋工程は、代表的には、上記染色処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、架橋剤を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬することにより行われる。架橋剤としては、任意の適切な架橋剤が採用され得る。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用され得る。架橋浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100重量部に対して、代表的には1〜10重量部の割合で用いられる。架橋剤の濃度が1重量部未満の場合には、十分な光学特性を得ることができない場合が多い。架橋剤の濃度が10重量部を超える場合には、延伸時にフィルムに発生する延伸力が大きくなり、得られる偏光板が収縮してしまう場合がある。架橋浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。面内に均一な特性が得られやすいからである。助剤の濃度は、好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化物の具体例は、染色工程の場合と同様である。架橋浴の温度は、代表的には20〜70℃程度、好ましくは40〜60℃である。架橋浴への浸漬時間は、代表的には1秒〜15分程度、好ましくは5秒〜10分である。
【0071】
延伸工程は、上記のように、いずれの段階で行ってもよい。具体的には、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよく、架橋処理の後に行ってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率は、5倍以上にすることが必要であり、好ましくは5〜7倍、さらに好ましくは5〜6.5倍である。累積延伸倍率が5倍未満である場合には、高偏光度の偏光板を得ることが困難となる場合がある。累積延伸倍率が7倍を超える場合には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(偏光子)が破断しやすくなる場合がある。延伸の具体的な方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、湿式延伸法を採用した場合には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、処理浴(延伸浴)中で所定の倍率に延伸する。延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えば、エタノール)などの溶媒中に、各種金属塩、ヨウ素、ホウ素または亜鉛の化合物を添加した溶液が好適に用いられる。
【0072】
水洗工程は、代表的には、上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、処理浴(水洗浴)中に浸漬することにより行われる。水洗工程により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの不要残存物を洗い流すことができる。水洗浴は、純水であってもよく、ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム)の水溶液であってもよい。ヨウ化物水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜10質量%である。ヨウ化物水溶液には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤を添加してもよい。水洗浴の温度は、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は、代表的には1秒〜1分である。水洗工程は1回だけ行ってもよく、必要に応じて複数回行ってもよい。複数回実施する場合、各処理に用いられる水洗浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜調整され得る。例えば、水洗工程は、ポリマーフィルムをヨウ化カリウム水溶液(0.1〜10重量%、10〜60℃)に1秒〜1分浸漬する工程と、純水ですすぐ工程とを含む。
【0073】
乾燥工程としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には20〜80℃であり、乾燥時間は代表的には1〜10分である。以上のようにして、偏光子が得られる。
【0074】
本発明の偏光板においては、上記偏光子が接着剤層を介して本発明の非晶性樹脂フィルムに接着されてなる。
【0075】
本発明において、本発明の非晶性樹脂フィルムと偏光子との接着は、接着剤から形成される接着剤層を介して行われる。この接着剤層は、より強い接着性を発現するために、ポリビニルアルコール系接着剤から形成される層が好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有する。
【0076】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール;などが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は1種のみ用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0077】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、接着性の点からは、平均重合度が好ましくは100〜3000、より好ましくは500〜3000であり、平均ケン化度が好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
【0078】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上する点で好ましい。
【0079】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等が挙げられる。また、ポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
【0080】
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不十分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは1〜20モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると架橋剤との反応点が少なくなり、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0081】
上記架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類(なかでもヘキサメチレンジアミンが好ましい);トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチレンプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物;などが挙げられる。架橋剤としては、メラミン系架橋剤が好ましく、特にメチロールメラミンが好適である。
【0082】
上記架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜35重量部、より好ましくは10〜25重量部である。一方、耐久性をより向上させるには、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、架橋剤を30重量部を超え46重量部以下の範囲で配合することができる。特に、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合には、架橋剤の使用量を30重量部を超えて用いるのが好ましい。架橋剤を30重量部を超え46重量部以下の範囲で配合することにより、耐水性が向上する。
【0083】
なお、上記ポリビニルアルコール系接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0084】
本発明の非晶性樹脂フィルムは、偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理等の表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
【0085】
上記アンカー層としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層が挙げられる。反応性官能基を有するシリコーン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基含有のアルコキシシラノール類、アミノ基含有アルコキシシラノール類、メルカプト基含有アルコキシシラノール類、カルボキシ含有アルコキシシラノール類、エポキシ基含有アルコキシシラノール類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノール類、ハロゲン基含有アルコキシラノール類、イソシアネート基含有アルコキシシラノール類が挙げられ、アミノ系シラノールが好ましい。さらに上記シラノールを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコーンに他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらにはテルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を用いても良い。また、アンカー層として、セルロースアセテートブチレート樹脂をケン化させたものからなる層も挙げられる。
【0086】
上記反応性官能基を有するシリコーン層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。シリコーン層の厚みは、乾燥後で、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。塗工の際、反応性官能基を有するシリコーンを溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤は特に制限はされないが、アルコール類があげられる。希釈濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
【0087】
上記接着剤層の形成は、上記接着剤を本発明の非晶性樹脂フィルムのいずれかの側または両側、偏光子のいずれかの側または両側に塗布することにより行う。本発明の非晶性樹脂フィルムと偏光子とを貼り合せた後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。接着剤層を形成した後にこれを貼り合わせることもできる。偏光子と本発明の非晶性樹脂フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
【0088】
接着剤層の厚みは、乾燥後の厚みで厚くなりすぎると、本発明の非晶性樹脂フィルムの接着性の点で好ましくないことから、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0089】
偏光子への本発明の非晶性樹脂フィルムの貼り合わせは、偏光子の両面に、本発明の非晶性樹脂フィルムの一方の側で接着することができる。
【0090】
また、偏光子への本発明の非晶性樹脂フィルムの貼り合わせは、偏光子の片面に本発明の非晶性樹脂フィルムの一方の側で接着し、もう一方の片面にセルロース系樹脂を貼り合わせることができる。
【0091】
上記セルロール系樹脂は特には限定されないが、トリアセチルセルロールが透明性、接着性の点で好ましい。セルロース系樹脂の厚さは、好ましくは30〜100μm、より好ましくは40〜80μmである。厚さが30μmより薄いとフィルム強度が低下し作業性が劣り、100μmより厚いと耐久性において光透過率の低下が著しくなる。
【0092】
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、本発明の非晶性樹脂フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
【0093】
上記粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用い得る。特に、炭素数が4〜12のアクリル系ポリマーよりなるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0094】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が好ましい。
【0095】
上記粘着剤層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着剤層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。
【0096】
また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などであってもよい。
【0097】
上記粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれを偏光子保護フィルム面に移着する方式などがあげられる。
【0098】
粘着剤層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板の片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板の表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着剤層とすることもできる。
【0099】
粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、好ましくは1〜40μmであり、より好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは10〜25μmである。1μmより薄いと耐久性が悪くなり、また、40μmより厚くなると発泡などによる浮きや剥がれが生じやすく外観不良となる。
【0100】
本発明の非晶性樹脂フィルムと上記粘着剤層との間の密着性を向上させるために、その層間にアンカー層を設けることも可能である。
【0101】
上記アンカー層としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー層が用いられ、特に好ましくは分子中にアミノ基を含んだポリマー類が使用される。分子中にアミノ基を含んだポリマーは、分子中のアミノ基が、粘着剤中のカルボキシル基や、導電性ポリマー中の極性基と反応もしくはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0102】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、前述アクリル系粘着剤の共重合モノマーで示したジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
【0103】
上記アンカー層に帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電ポリマー系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などが挙げられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。これは、帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗布工程に際して有機溶剤による光学フィルム基材の変質を抑える事が出来るためである。
【0104】
本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や光学フィルム(偏光子保護フィルム等)、また粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0105】
本発明の偏光板は、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。
【0106】
〔C.画像表示装置〕
次に、本発明の画像表示装置について説明する。本発明の画像表示装置は本発明の偏光板を少なくとも1枚含む。ここでは一例として液晶表示装置について説明するが、本発明が偏光板を必要とするあらゆる表示装置に適用され得ることはいうまでもない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。図2は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。図示例では透過型液晶表示装置について説明するが、本発明が反射型液晶表示装置等にも適用されることはいうまでもない。
【0107】
液晶表示装置100は、液晶セル10と、液晶セル10を挟んで配された位相差フィルム20、20’と、位相差フィルム20、20’の外側に配された偏光板30、30’と、導光板40と、光源50と、リフレクター60とを備える。偏光板30、30’は、その偏光軸が互いに直交するようにして配置されている。液晶セル10は、一対のガラス基板11、11’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層12とを有する。一方の基板11には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板11’には、カラーフィルターを構成するカラー層と遮光層(ブラックマトリックス層)とが設けられている(いずれも図示せず)。基板11、11’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー13によって制御されている。本発明の液晶表示装置においては、偏光板30、30’の少なくとも1つとして、上記記載の本発明の偏光板が採用される。
【0108】
例えば、TN方式の場合には、このような液晶表示装置100は、電圧無印加時には液晶層12の液晶分子が、偏光軸を90度ずらすような状態で配列している。そのような状態においては、偏光板によって一方向の光のみが透過した入射光は、液晶分子によって90度ねじられる。上記のように、偏光板はその偏光軸が互いに直交するようにして配置されているので、他方の偏光板に到達した光(偏光)は、当該偏光板を透過する。したがって、電圧無印加時には、液晶表示装置100は白表示を行う(ノーマリホワイト方式)。一方、このような液晶表示装置100に電圧を印加すると、液晶層12内の液晶分子の配列が変化する。その結果、他方の偏光板に到達した光(偏光)は、当該偏光板を透過できず、黒表示となる。このような表示の切り替えを、アクティブ素子を用いて画素ごとに行うことにより、画像が形成される。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例、比較例中のパーセントは重量基準である。評価は以下のようにして行った。
【0110】
<温度測定>
オーブン内フィルムの実温を測定した。
評価装置:(株)キーエンス製 モバイル温度レコーダー NR−1000
測定方法:オーブン内に30μm厚のPETフィルムを通紙し、そのフィルム上にK型熱電対をポリイミドテープにて固定した状態で7m/minにてフィルムを走行させ、フィルム実温を測定した。
【0111】
<MIT試験:端部および中央部におけるTD方向の耐折度>
フィルムの端部および中央部におけるTD方向の耐折度を測定した。
評価装置:テスター産業(株) MIT耐折度試験機 BE−202
荷重:200g
チャック寸法:開き0.25mm 先端R0.38
サンプル形状:MD15mm×TD110mmの帯状
参考規格:JIS P−8115
測定値はn=10での平均値
【0112】
<膜厚精度:TD方向の1200mm幅での膜厚精度>
評価装置:(株)山文電気 オフライン厚み計測装置 TOF−5R
サンプル形状:MD50mm×TD1200mmの帯状
R:幅方向における最小厚みと最大厚みとの差の絶対値
R≦3の場合:加工性および製品化において問題がないレベル
3<R≦6の場合:製品化は可能であるが、加工性に支障がある(後工程で、フィルムを搬送させた際にフィルムが厚み方向にバタつき破断のおそれがあり
6<Rの場合:製品化が困難であるレベル
【0113】
〔実施例1〕
ポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レーヨン社製、アクリペットVH)を溶解してTダイより押出し、キャストロール上でフィルム状に成形した後、ゾーン延伸法により、縦方向の延伸倍率を1.8倍として縦延伸された一軸配向ポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。その後、テンター延伸法により、横方向の延伸倍率を2.2倍として、逐次二軸延伸にて、二軸配向ポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。なお、予熱工程は4m、延伸工程は8m、冷却工程は3mであり、延伸工程から排出される際に2.2倍に延伸されるようにテンター延伸した。テンター内における温度は、予熱温度を140℃、延伸温度を140℃とした。冷却温度は、冷却工程入口が140℃、冷却工程出口が110℃となるように直線状に傾斜降温させた。このとき、フィルムの両端を把持するクリップ部を含むフィルム幅は1400mmであり、冷却工程距離は3mであった。また、ライン速度は7m/minとし、冷却工程の風速は9m/secとした。
得られたフィルム(1)について、端部および中央部におけるTD方向の耐折度、TD方向の1200mm幅での膜厚精度を測定した。結果を表1に示した。
【0114】
〔比較例1〕
冷却温度を140℃で一定とした以外は実施例1と同様に行い、フィルム(C1)を得た。
得られたフィルム(C1)について、端部および中央部におけるTD方向の耐折度、TD方向の1200mm幅での膜厚精度を測定した。結果を表1に示した。
【0115】
〔比較例2〕
冷却温度を、冷却工程入口が140℃、冷却工程出口が50℃となるように直線状に傾斜降温させた以外は実施例1と同様に行い、フィルム(C2)を得た。
得られたフィルム(C2)について、端部および中央部におけるTD方向の耐折度、TD方向の1200mm幅での膜厚精度を測定した。結果を表1に示した。
【0116】
〔比較例3〕
冷却温度を、130℃、120℃と、段階的に行った以外は実施例1と同様に行い、フィルム(C3)を得た。上記段階的な降温は、ライン速度は7m/minの時に、冷却工程の風速を5m/secに減少させることで行った。
得られたフィルム(C3)について、端部および中央部におけるTD方向の耐折度、TD方向の1200mm幅での膜厚精度を測定した。結果を表1に示した。
【0117】
〔比較例4〕
冷却温度を、冷却工程入口が140℃で、冷却工程中央までを125℃まで直線状に傾斜降温させ、その後、冷却工程出口までを50℃となるように設定した以外は実施例1と同様に行い、フィルム(C4)を得た。
得られたフィルム(C4)について、端部および中央部におけるTD方向の耐折度、TD方向の1200mm幅での膜厚精度を測定した。結果を表1に示した。
【0118】
【表1】

【0119】
〔実施例2〕
(偏光子の製造)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、40℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子を得た。
(接着剤)
アセトアセチル基変性したポリビニルアルコール樹脂100重量部(アセチル化度13%)に対してメチロールメラミン20重量部を含む水溶液を、濃度0.5重量%になるように調整したポリビニルアルコール系接着剤水溶液を調整した。
【0120】
(偏光板の作製)
偏光子の両面に実施例1で得られたフィルム(1)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。ポリビニルアルコール系接着剤は、それぞれアクリル樹脂面側に塗布し、70℃で10分間乾燥させて偏光板を得た。
【0121】
(粘着剤)
ベースポリマーとして、ブチルアクリレート:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルアクリレート=100:5:0.1(重量比)の共重合体からなる重量平均分子量200万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分30%)を用いた。上記アクリル系ポリマー溶液にイソシアネート系多官能性化合物である日本ポリウレタン社製コロネートLをポリマー固形分100部に対して4部、および添加剤(KBM403、信越シリコーン製)を0.5部、粘度調整のための溶剤(酢酸エチル)を加え、粘着剤溶液(固形分12%)を調製した。当該粘着剤溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート基材:ダイヤホイルMRF38、三菱化学ポリエステル製)上に塗布した後、熱風循環式オーブンで乾燥して、粘着剤層を形成した。
【0122】
(偏光板アンカー層)
ポリアクリル酸エステルのポリエチレンイミン付加物(日本触媒社製、商品名ポリメントNK380)をメチルイソブチルケトンで50倍に希釈した。これを偏光板のナイロン樹脂側に、ワイヤーバー(#5)を用いて乾燥後の厚みが50nmとなるように塗布乾燥した。
【0123】
(粘着型偏光板の作製)
上記偏光板のアンカー層に、上記粘着剤層を形成した離型フィルムを貼り合わせ、粘着剤型偏光板を作製した。
【0124】
(偏光板の評価)
得られた偏光板における、フィルムと偏光子の接着性、および外観を評価した。接着性は良好であり、偏光子とフィルムとが一体化して剥がれが生じなかった。また、外観の評価結果は目視で良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルムおよび偏光板は、各種画像表示装置(液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等)に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の偏光板の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0127】
10 液晶セル
11、11´ ガラス基板
12 液晶層
13 スペーサー
20、20´ 位相差フィルム
30、30´ 偏光板
31 偏光子
32 接着剤層
33 易接着層
34 光学フィルム
35 接着剤層
36 光学フィルム
40 導光板
50 光源
60 リフレクター
100 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも横方向への延伸を行う延伸工程と冷却工程とをこの順に有する非晶性樹脂フィルムの製造方法であって、
該冷却工程の入口温度をTstart(℃)、出口温度をTend(℃)、該冷却工程の全長さをLall(m)としたときに、80>(Tstart−Tend)>0であり、該冷却工程中の任意の地点の温度T(℃)と冷却工程入口からの距離L(m)とが実質的に式(1)を満たすように直線勾配関係で該冷却工程を行う、
非晶性樹脂フィルムの製造方法。
T=−{(Tstart−Tend)/Lall}×L+Tstart (1)
【請求項2】
前記延伸工程においてフィルムの両端を把持しているクリップが、前記冷却工程の出口から2m以内で開放される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程の入口温度Tstartが前記フィルムのガラス転移温度以上であり、前記冷却工程の出口温度Tendが前記フィルムのガラス転移温度以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記フィルムのガラス転移温度が110℃以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記冷却工程の全長さLallが前記延伸工程の全長さ以下である、請求項1から4までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程の全長さLallが得られるフィルムの幅方向長さ以上である、請求項1から5までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記フィルムが(メタ)アクリル系樹脂フィルムである、請求項1から6までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載の製造方法で得られる非晶性樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の非晶性樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして含む、偏光板。
【請求項10】
請求項9に記載の偏光板を少なくとも1枚含む、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−302570(P2008−302570A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151277(P2007−151277)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】