説明

非晶質、超微結晶質、及び微結晶質金属スラブまたは他形状金属の鋳造のための低温・急速凝固・連続鋳造法及び装置

【課題】非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子から成る金属スラブあるいは他形状金属の鋳造に用いられるLRC法および装置を提供する。
【解決手段】作業室は−190℃、1バールに維持され、−190℃、1.877バールの液体窒素を冷却源として用いる。液体窒素は液体窒素エゼクタ5によって牽引バー7の表面上へ噴射量v及び噴射速度kで噴射される。噴射された液体窒素は断面cにおいて鋳造ブランクと接触する。この方法には超薄膜噴射技術が採用され、前記薄膜の厚さは2mm、液体窒素の噴射速度は30m/sとする。時間間隔△τの間に、種々冷却速度に対応して、連続鋳造速度uで作動する誘導牽引装置によって高温鋳造型4の取出し口から金属が長さ△m分引き出され、噴射された液体窒素の熱吸収及びガス化作用の下で、溶融金属は凝固し、さらに急速に冷却されて非晶質、超微結晶質、あるいは微結晶質金属構造を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は急速凝固技術、低温作業室技術、低温液体窒素高速噴射及び超薄液膜噴射、及び連続鋳造技術を用いた鉄合金及び非鉄合金の非晶質、超微結晶質質あるいは微結晶質構造の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質金属の引張り強度は一般金属の引張り強度よりも強く、また金属フィラメントの引張り強度に比べて若干劣る。直径1.6μmの鉄フィラメントの引張り強度は13400Mpaに達し、この強度は工業用純鉄の引張り強度の40倍以上に相当する。現在、最も強度の高い非晶質金属はFe8020であり、その強度は3630Mpaに達する。高強度性に加えて、非晶質金属には高強靭性、超伝導性、耐薬品腐食性等の特別な物理特性も備わっている。しかしながら、通常条件下において、非晶質金属のヤング率及び剪断弾性率は結晶質金属のそれらよりも約30〜40%低く、またモザム比は高く約0.4である。非晶質金属の引張り強度は温度に極めて依存している。非晶質転移温度Tgに近い温度においては明らかな軟化現象が発現する。液状のAl−Cu合金を強い冷却ベース上へ撒き散らしたときの該合金の冷却速度は10℃/Sに達する。凝固後、得られた合金粒子の直径は1μm未満であり、引張り強度は通常の鋳造方法によって得られる合金の引張り強度よりも6倍以上高い。微粒子の幅は1〜10μmであり、微粒子中に極めて緻密な微細構造が生じ、微粒子の機械的特性が大幅に向上される。(1)(2)(3)
急速凝固法を用いて種類の異なる鉄金属及び非鉄金属の非晶質、超微結晶質及び微結晶質金属スラブあるいは他形状金属が製造できることは、民間、軍事、航空宇宙産業において明らかに重要なことである。しかしながら、現在この方法を用いて製造を行っている鉄及び非鉄メーカーはない。その主たる理由を以下に述べる。
冷却源が十分強力でない。一般的に冷却源としての作用媒体は空気あるいは水であり、また作用温度は大気温である。
連続鋳造及び方向凝固を用いる方法の場合、溶融金属の温度を液体から固体へ相変化する部分においてのみ急速に降下させることが可能である。凝固後は低速冷却が用いられる。そのため、金属の温度は凝固後もなお高い。鋳造中に金属寸法が増大する場合、熱伝達に対する熱抵抗が増加するため熱消失が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】Yue Zhu, 急速凝固技術及び材料、Beijing, National Defence Industry Press, 1993. 11: 3-8, 22
【特許文献2】Zhou Yao He, Hu Zhuang Qi, 凝固技術、Beijing, Machinery Industry Press, 1998. 10: 227-224
【特許文献3】Cui Zhong Qi, 金属板技術及び熱処理、Beijing, Machinery Industry Press, 54-55
【特許文献4】Wen Bin, 低温の応用エンジニアリング、Beijing, Weaponry Industry Press, 1992.6
【特許文献5】W.R. Gambill ら、CEP Symp. Ser., 57(32); 127-137 (1961); R. Viskanta, Nuclea Eng. Sci., 10; 202 (1961)
【特許文献6】Wang Bu Xuan, 熱伝達及び大量移動のエンジニアリング(上下巻の下巻)、Beijing: Science press, 1998.9: 173
【特許文献7】Turkdogan, E.T., 鉄製造とスチール製造、1985.5: 79-86
【特許文献8】Cai Kai Ke, Pan Yu Chun, Zhao Jia Gui, 連続スチール鋳造に関する500の疑問、Beijing,: Metallurgical Industry Press, 1997.10: 208
【特許文献9】角田他、日本金属学会誌、44 (1980) 94
【特許文献10】N.B. Vargaftik, 液体と気体の熱物理的特性、第5章、E. d.Hohn willey & son, Inc., 1975
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は「非晶質、超微結晶質及び微結晶質金属スラブあるいは他形状金属の鋳造のためのLRC法、及び装置」を提供することを目的とする。
ここで、Lは「低温」を意味し、「L」は「低温」の頭文字である。
Rは急速凝固を意味し、「R」は「急速凝固」の頭文字である。
Cは連続鋳造を意味し、「C」は「連続鋳造」の頭文字である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記装置とは連続鋳造装置及びそのシステムである。L、R、C法及び連続鋳造システムを用いて製造される製品は、非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子状の金属スラブあるいは他形状金属である。言い換えれば、連続鋳造システムを用いた低温急速凝固法により、非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子から成る鉄金属及び非鉄金属の金属スラブあるいは他形状金属を種々品質及び規格に合わせて製造することが可能である。
【0006】
非晶質、微結晶質、微粒子から成る金属構造を生成するための限界冷却速度Vは金属の種類及び化学組成によって異なる。
【0007】
溶融金属を凝固し、及び冷却速度V(V≧10℃/S)で冷却することにより凝固後に非晶質金属を得ることが可能である。溶融金属の凝固中に放出される潜熱Lはゼロである。
【0008】
溶融金属を凝固し、10℃/S〜10℃/Sの範囲内の冷却速度Vで冷却することにより凝固後に微結晶質金属を得ることが可能である。この場合、溶融金属の凝固中に放出される潜熱Lはゼロではない。
【0009】
溶融金属を凝固し、冷却速度(V)10℃/Sで冷却することにより、凝固後に微粒子金属を得ることが可能である。この場合、溶融金属の凝固中に放出される潜熱Lはゼロではない。
【0010】
分析を容易にするため、金属の種類及び組成が決められた後、非晶質、微結晶質あるいは微粒子構造の金属を得るために用いる金属冷却速度Vの範囲に従って製造パラメータが算定される。製造試験後に、得られた結果に従ってこの製造パラメータを変更することが可能である。
【0011】
溶融金属を凝固し、冷却速度(V)10℃/S又は10℃/Sでそれぞれ冷却することにより、凝固後に非晶質構造金属及び微結晶質構造金属をそれぞれ得ることが可能である。溶融金属を10℃/S〜10℃/Sの範囲内の冷却速度Vで凝固冷却することにより、非晶質金属構造と微結晶質金属構造の中間の新たな金属構造が得られる。この新たな金属構造は、本願においては発明者によって超微結晶質金属構造と命名されている。この新たな金属構造の推定引張り強度は微結晶質金属構造の引張り強度よりも高い筈であり、また冷却速度Vを速めれば非晶質金属の引張り強度に接近する筈である。しかしながら、この新たな金属構造のヤング率、剪断弾性率及びモザム比νは微結晶質金属構造のそれら数値に近接した数値であるべきである。この新たな金属構造の引張り強度は温度に対して非依存的である。超微結晶質構造をもつ金属スラブあるいは他形状金属は新規であり、またより理想的な金属スラブあるいは他形状金属として期待される。本発明は新製品の開発のためさらに実験及び研究を行ってその新規性及び理想的特性を確認するものである。
【0012】
LRC法および連続鋳造システムを用いて非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子から成る金属スラブあるいは他形状金属を鋳造する原理は以下の通りである。金属スラブを例に上げてより明瞭に説明する。異なる種類の鉄金属及び非鉄金属、規格の異なる金属スラブ、及び非晶質、超微結晶質、微結晶質、及び微粒子構造を製造するための異なる要件に従って、本発明は重要な製造パラメータのすべてを決定する完全な計算方法、公式及びプログラムを提供する。本発明ではさらにこれらのパラメータを用いて連続鋳造システムを設計及び作製して上記金属スラブを製造する方法が提供される。LRC法及びその連続鋳造システムを用いて非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子から成る金属スラブあるいは他形状金属を鋳造する場合、図1及び図2に示された熱鋳造型(4)の取出し口の断面形状及び寸法を所望の金属スラブあるいは他形状金属のそれらと同一にすれば、それら所望の金属スラブあるいは他形状金属を製造することが可能である。製造パラメータは、金属スラブあるいは他形状金属の計算方法、公式及び計算プログラムに従って決定可能である。
【0013】
図1は非晶質、超微結晶質、微結晶質、及び微粒子から成る金属スラブあるいは他形状金属の鋳造に用いられるLRC法及びその連続鋳造システムの概略図である。低温低圧な気密作業室(8)の大きさは、金属スラブあるいは他形状金属の規格、及び該作業室内の器具及び装置に従って決定される。まず、3成分混合物冷却サイクルを備える低温冷却装置にスイッチを入れて室温を−140℃まで降下させ、次いで液体窒素噴射装置(5)を含まない他の液体窒素噴射装置(図1に図示せず)を用いて適量の液体窒素を噴射させて室温をさらに−190℃まで降下させ、室温を維持するとともに作業室圧力Pを1バールよりやや高く維持する。高温鋳造型の取出し口断面の形状及び寸法は製造される金属スラブあるいは他形状金属の断面の形状及び寸法に依存して決められる。溶融金属はターンテーブル(1)上の鋳造杓を用いて連続的に中央杓(2)中へ注入される。溶融金属(3)は図示されたレベルに保たれる。
【0014】
図2は溶融金属の急速凝固及び高温鋳造型の取出口における冷却工程を示した概略図である。電気ヒーター(9)によって高温鋳造型が加熱されるため、溶融金属と接する高温鋳造型内面の温度は溶融金属の液温より若干高くなる。その結果、溶融金属が高温鋳造型の内面上で凝固することはない。LRC法を用いて非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子の金属スラブの連続鋳造を開始する場合、まずしなければならないことは液体窒素噴射装置(5)にスイッチを入れ、一定量の液体窒素を−190℃に設定された牽引バー(金属スラブ)(7)に対して連続噴射することである。図2に示すように、噴射される液体窒素が金属スラブと接触する位置は高温鋳造型の取出し口の断面Cに設定される。次いで図1に示す誘導牽引装置(6)が直ちに始動され、牽引バー(7)が図1に示すように連続鋳造速度uで左へ牽引される。長さ△mの薄い金属微小片が時間間隔△τ中に引き出される。非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブを連続鋳造するためには、長さ△mの微小片中の溶融金属が凝固され、この全工程において同一冷却速度Vで最終温度tになるまで初温度tで冷却される。非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造に用いられるVはそれぞれ10℃/S、10℃/S〜10℃/S、10℃/S〜10℃/S、10℃/Sである。
ここで、
は溶融金属の初期凝固温度℃を表し、
は最終冷却温度℃、t=−190℃を表す。
【0015】
前記種々冷却速度V、及び長さ△m内の溶融金属について、初温度tから最終温度tまで冷却するために要する時間間隔△τは下記式から計算可能である。
△τ=△t/V s (1)
式中、△t=t−t
【0016】
各符号の意味は先述した通りである。
【0017】
0.23C低炭素鋼の場合、tは1550℃、tは−190℃である。非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造の連続鋳造における急速凝固及び冷却に必要な時間間隔△τを計算し、その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
長さ△mを引き出すのに要する時間間隔△τが長さ△mの溶融金属を急速凝固及び冷却して非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造を生成する時間間隔△τと同じであり、同時にガス化法を用いて熱を吸収する時間間隔△τと同じであるならば、急速凝固及び初期温度tから最終温度tまでの冷却中に長さ△mの溶融金属によって生成されるすべての熱が噴射された液体窒素によって吸収され、長さ△mの溶融金属は急速に凝固及び冷却され、薄金属微小片中に非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子構造が形成される。図2に示した長さ△mの部分において、断面Aの右側には溶融金属があり、断面b−cは高温鋳造型の取出し口を残して完全に凝固している金属の微小片である。表1から、0.23C炭素鋼の非晶質構造を形成する急速凝固に要する時間間隔△τは僅かに1.74×10−4Sであり、また微粒子金属構造の形成に要する時間間隔△τも僅かに1.74×10Sである。このように短い時間間隔△τにおいて連続鋳造される長さ△mは全くの最小値である。下記計算から、0.23C非晶質炭素鋼に関する△mは僅か0.03mmであり、超微結晶質炭素鋼に関する△mは0.03mm〜0.09mmの範囲内であり、微結晶質炭素鋼に関する△mは0.09mm〜0.3mmの範囲内であり、微粒子炭素鋼に関する△mは0.9mmであることが示される。平面スラブの熱伝導理論によれば、長さ及び幅が厚さの10倍を超えている場合、その熱伝導はエンジニアリングにおける1次元安定状態熱伝導であると考えることができる。すなわち、LRC法を用い0.23C非晶質スチールスラブを連続鋳造する場合において切片のすべての寸法が0.3mm以上であれば、またLRC法を用いて0.23C超微結晶質スチールスラブを連続鋳造する場合において切片のすべての寸法が0.3mm〜0.9mm以上であれば、さらにLRC法を用いて0.23C微結晶質スチールスラブを連続鋳造する場合において切片のすべての寸法が0.9mm〜3mm以上であれば、断面Aと断面C間の熱伝導は1次元安定状態熱伝導であると考えることができる。断面a、断面b、断面c、及びそれら断面に対して平行な他の切片はいずれも等温面となる。
【0020】
図3は急速凝固及び高温鋳造型取出し口における溶融金属の冷却中における温度分布を示した図である。縦軸は温度(℃)、横軸は距離(Xmm)である。噴射された液体窒素のガス化によって生ずる強力な冷却作用の下で、断面a上における溶融金属の温度は溶融金属の液相線温度である初期凝固温度tまで降下する。断面b上における溶融金属の温度は該溶融金属の固相線温度である凝固温度tまで降下する。断面bは高温鋳造型の取出し口に配置される。この位置は液体窒素エゼクタ(5)の始動と誘導牽引装置(6)の始動の時間差を変えることによって調整可能である。断面aと断面bの間にある長さ△Lの切片は液体と固体が共存する部分であり、断面bと断面cの間にある切片は固体状態にある部分である。断面cにおける金属温度は凝固最終温度t、すなわち−190℃である。長さ△mの切片全体における熱伝導過程は1次元安定状態熱伝導であるので、断面aと断面cの間における溶融金属の温度分布は図3に示すように直線性を有する筈である。断面bが金属の固体液体状態の界面であることが理解できる。金属は断面b上で凝固すると同時に直ちに引き出される。新たな溶融金属が断面b上で連続的に凝固するので、非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブを連続鋳造することが可能である。凝固した金属と高温鋳造型との接触はない。それらは溶融金属の界面張力によって互いに保持されるため、固体金属と高温鋳造型との摩擦は生じない。これにより、表面の滑らかな金属スラブの鋳造が可能とされている。他方、LRC法を用いて非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブを鋳造する工程が安定かつ連続的に進行し、鋳造される金属スラブの長さも継続的に増加する。しかしながら、断面cの位置及び温度に変化はなくtは−190℃のままである。それゆえ固体金属の耐熱性の増大はなく、急速凝固及び冷却処理に対する影響は生じないため、溶融金属及び長さ△mの固体金属の冷却速度Vは始めから終わりまで変化のないまま保持される。さらに、説明を容易にするため、図2及び図3に示した長さ△mは図示するための表示であって拡大されている。熱吸収後に噴射された液体窒素のガス化によって生ずる窒素ガスをすべて作業室から素早く放出するため、液体窒素エゼクタ(5)に対向する左方に強力な排気装置を設置すべきである(図1及び図2に図示せず)。これにより、作業室内温度を−190℃に安定して保持し、圧力を1パール以上の一定圧に保持することが確保される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子から成る金属スラブあるいは他形状金属の鋳造に用いられるLRC法および連続鋳造システムの概略図である。
【図2】溶融金属の急速凝固及び高温鋳造型取出し口における冷却処理の原理を説明するための図である。
【図3】急速凝固及び高温鋳造型取出し口における溶融金属の冷却中における温度分布を説明するための図である。
【図4】LRC法及びその連続鋳造システムを用いて、上向き取出し口を備える高温鋳造型を介して非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブあるいは他形状金属を鋳造する原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.LRC法及び該方法による連続鋳造システムの製造パラメータ計算式の決定
1)冷却速度Vの決定
非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブの製造から冷却速度Vを決めることに関しては上記参照。
2)急速凝固と冷却間の時間間隔の算定
前記参照。
△τ=△t/Vk s (1)
3)時間間隔△τにおいて連続鋳造される長さ△mの決定
断面aと断面c間の熱伝導は1次元安定状態熱伝導であるため、断面aと断面b間の熱伝導は下記式から算出される。
=λcA(△t/△m) w (2)
式中、
λcは平均熱伝導率(W/m.℃[付表1])、
Aは熱伝導方向に対して垂直な断面積(m)、
△tは断面aと断面c間の温度差(△t=t−t)、及び
△mは断面aと断面c間の距離(m)を表す。
【0023】
非晶質を得る際の冷却速度Vに対応する時間間隔△τにおいて、断面aから断面cへの熱伝導量は△Qである。
△Q=Q△τ KJ
式(1)の△τを上記式へ置き換えると、
△Q=Q(△t/V) KJ (3)
が導かれる。
【0024】
図2には断面aから断面cへ伝導される熱量△Qと、スラブ上面あるいは下面へ伝導される熱量△Q/2が示されている。スラブ上面及び下面へ噴射された液体窒素が非晶質を得る際の冷却速度Vに対応する時間間隔△τ中のガス化を介して熱量△Qを吸収できれば、長さ△mと厚さEの非晶質金属スラブそれぞれを鋳造することが可能である。長さが△mである超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブも同じ原理に従って鋳造可能である。△Qは時間間隔△τ中のガス化を介して噴射液低窒素によって吸収される熱量であり、従って△Qは時間間隔△τ中に噴射される液体窒素量を算出するための基礎となる。
【0025】
同じ時間間隔△τにおいて、断面a中の溶融金属は断面cへ移動し、そこで金属冷却は終了される。長さ△m、厚さEの溶融金属中の内部熱エネルギーは、
△Q=A△mρcp(Ccp△t+L) KJ (4)
から算出される。
式中、
Aは熱伝導方向に対して垂直な断面積(m
A=B×E
Bは金属スラブの幅(m)
Eは金属スラブの厚さ(m)
△mは時間間隔△τ中に連続鋳造される厚さEの金属の長さ、すなわち断面aと断面c間の距離(m)、
ρcpは金属の平均密度(g/cm3[付表1])、
cpは平均比熱(KJ/Kg℃[付表1])、
△tは断面aと断面c間の温度差、△t=t−t(℃)
Lは金属潜熱(KJ/Kg)を表す。
非晶質金属については、V≧10℃/S, L=0
△Q=BE△mρcpcp△t KJ (5)から算出され、
超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造については、
△Q=BE△mρcp(Ccp△t+L) KJ (6)から算出される。
【0026】
△Q>△Qであれば、噴射された液体窒素によって吸収される熱は長さ△m、厚さEの溶融金属中の内部熱エネルギー以上となる。図2に示すように、中央杓中、高温鋳造型の取出し口における断面aの右側上にある溶融金属の熱は、長さ△mの溶融金属の内部熱エネルギーの不足を補うために断面cへ伝導される。その結果、断面bは徐々に右へ移動し、最終的に高温鋳造型(4)の取出し口は凝固した金属で充満し、これによって連続鋳造が停止される。この問題を解決するための方策は2つある。その一つは連続鋳造速度u及び△mを増大させて、△Q=△Qとなるまで△Qを減じ、かつ△Qを増加させる方法である。しかしながらこの方法では牽引装置(6)に限界がある。別の方法は電気ヒーター(9)の出力を上げて△Qの熱量不足を補う方法である。しかしながら、この方法ではさらにエネルギーが要求されるため明らかに経済的でない。
【0027】
△Q<△Qであれば、長さ△m、厚さEの溶融金属中の内部熱エネルギーは噴射された液体窒素によって吸収される熱よりも大きく、内部熱エネルギーの一部は長さ△mの溶融金属中に残り、急速凝固及び冷却工程に影響が及ぶ可能性がある。急速凝固及び冷却に期待通りの結果を得るためには、連続鋳造速度u及び長さ△mを減じて△Q=△Qとなるまで△Qを増加させ、かつ△Qを減少させなければならない。
【0028】
△Q=△Qであれば、冷却速度Vに対応した時間間隔△τ中における非晶質金属の製造中に断面aから断面cへ伝導される熱量△Qが噴射された液体窒素によって取り去られてしまう。Qは、まさに長さ△m、厚さEの溶融金属中の内部熱エネルギー△Qのすべてである。それゆえ、長さ△mの溶融金属は急速に凝固し、所定の冷却速度Vで冷却され、所望の非晶質金属スラブが製造される。同様に超微結晶質、微結晶質、あるいは微粒子金属の製造では、冷却速度Vに対応する時間間隔△τ中の吸収熱量が△Q=△Qであると、長さ△m、厚さEの溶融金属から所望の超微結晶質、微結晶質、あるいは微粒子金属スラブが生成される。
【0029】
△Q=△Qとして、式(3)中の△Qと式(4)中の△Qを置き換える。
λcpA(△t/△m)△τ=A△mρcp(Ccp△t+L)
△m=√(λ cp△ t △τ/p cp(C cp△ t +L)) mm ( 7 )
非晶質金属の場合、L=0
△m=√(λ cp △τ / ρ cp C cp mm ( 8 )
△m=√(α cp △ τ)
式中、αcpは金属の平均熱伝導率を表す。
αcp=λcp/ρcpcp/s
超微結晶質、微結晶質、あるいは微粒子金属構造については、△τ=△t/Vを式(7)へ置き換える。
△m=√(λ cp/ ρcp (Ccp△t+L)Vk)・△t mm (9)
【0030】
式(6)、(7)及び(8)は△mがλcp、ρcp、Ccp、L、△t及び△τ等のパラメータに依存することを示している。ここでλcp、ρcp、Ccp及びLはすべて金属の物理的パラメータであり、また△tは△t=t−tであって、tは初期凝固温度、tは冷却最終温度、すなわち一定温度としての−190℃である。従って△tも金属の物理的パラメータと考えることができる。これらのパラメータは金属スラブの組成が決まれば決定可能である。他方、△τは製造されるスラブの金属構造に依存する。例えば、非晶質金属構造のスラブを製造することに決めた場合、冷却速度Vは10℃/Sに等しいので、Vが決まる。これは、製造される金属の組成と構造が決まれば△τが決まることを示している。また、△mは2つの因子に依存することが理解できる。一つは金属の種類及び組成であり、もう一つは要求される金属構造である。
【0031】
4)連続鋳造速度uの算定
非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造については、下記式より連続鋳造速度uを得ることができる。
u=△m/△τ (m/s) (10)
【0032】
5)噴射される液体窒素量の算定
非晶質、超微結晶質、微結晶質、あるいは微粒子金属構造から成るスラブを製造するためには、要求される金属構造に対応する時間間隔△τ内において、噴射された△V量の液体窒素のガス化によって、厚さE及び長さ△mの溶融金属の内部熱エネルギー△Qのすべてが吸収できなければならない。時間間隔△τ中に噴射された液体窒素量△Vは下記式から算定することができる。
△V=(△Q/r)V‘ dm (11)
式中、
△Vは時間間隔△τ中に噴射された液体窒素量(dm)、
rは液体窒素の潜熱、すなわち、圧力1.877バール、温度−190℃の条件下で吸収された液体窒素1Kgがガス化するときに発する熱エネルギー(KJ/Kg)、
V‘は液体窒素の比体積、すなわち、圧力1.877バール、温度−190℃の条件下における液体窒素1Kgの体積(dm/Kg[付表2])、及び
△Qは、時間間隔△τにおける厚さE、長さ△mの溶融金属中の内部エネルギー(KJ)、すなわち断面aから断面cへ伝導される熱量△Qを表す。
非晶質金属については、△Qは式(5)から算定可能である。
超微結晶質、微結晶質、あるいは微粒子金属については、△Qは式(6)から算定可能である。r及びV‘の値は付表2から見出し得る。r及びV’を用いて式(11)から△Vを算出することができる。△Vが決まれば、噴射された液体窒素量Vを下記式によって算定可能である。
V=(△V/△τ)・60 dm/分 (12)
式中、Vは噴射された液体窒素量を表す。
【0033】
6)噴射液体窒素層の厚さhの算定
金属スラブの上面あるいは底面上の噴射液体窒素層の厚さは下記式により算定可能である。
h=△V/2BK△τ mm (13)
式中、hは噴射液体窒素層の厚さ(mm)、
Kは液体窒素の噴射速度(m/s)、
Bは前記上面及び下面の幅と2つの側面の変換厚(mm)の和を表し、
△Vと△τは前記と同様である。
【0034】
7)噴射された液体窒素の容積Vのガス化によって生成されるガスの容積Vの算定
△Q及びr等のパラメータが決まったら、Vは下記式より算定可能である。
=(△Q/r)V“(60/△τ) dm/分 (14)
式中、
は、圧力1.877パール、温度−190℃の条件下で噴射された液体窒素の容積Vのガス化によって生ずる窒素ガス容積(dm/分)、
v“は、圧力1.877パール、温度−190℃の条件下で液体窒素1kGがガス化することによって生ずる窒素ガスの容積(dm/kG[付表2])、
△Q及び△τは前記と同様である。
算定されたVを用いて強力排気装置のスループットを設計することが可能である。
【0035】
2.金属スラブ内における熱伝導
図2に示すように、急速凝固及び冷却工程において、熱量△Qは金属スラブの中心からその表面へ伝導され、次いでスラブ表面へ噴射された液体窒素のガス化によってその表面から取り去られなければならない。しかしながら、熱量をスラブの中心からその表面へ素早く伝導できるかが問題となる。それが可能であれば、スラブ表面へ液体窒素を噴射することによって熱量を完全に取り去ることが可能である。スラブ中心からその表面への熱伝導速度が制限要因となっていることは明らかである。
【0036】
断面a及び断面cの間及びそれらに平行なすべての断面a−cは等温面であり、また断面cの左にあるすべての断面も温度−190℃の等温面である。スラブ内部の熱量のこれら等温面を介したスラブ表面への伝導は下記熱伝導式に従って行われる。
△t=QRλ
式中、
Qは等温面を通しての熱伝導量(W)を表し、その数値は断面a−cの熱伝導量に依存する。
△tは等温面間における熱伝導の温度差(℃)を表す。
λは等温面における熱伝導に対する熱抵抗(℃/W)を表す。
【0037】
等温面には温度差がないため、△t=0である。熱伝導量Qは△Qに依存する。すなわち、Qは噴射される液体窒素量に依存する。従って、
Q≠0であり、Rλは0でなければならないのでRλ=0である。
【0038】
λ=0は、熱がスラブ内部から表面へ等温面を通って伝導する時にその熱伝導に熱抵抗がないことを意味している。断面cの左の金属は温度−190℃の等温面であり、内部の熱のスラブ表面へのいかなる方向への伝導にも熱抵抗は全くない。それゆえ、断面cの左方においては、スラブ内部の熱のスラブ表面への伝導に際して、スラブ表面へ噴射された液体窒素による熱吸収の影響を受けることなく、熱をスラブ表面へ素早く完全に伝導させることが可能である。
【0039】
3.LRC法及び該方法による連続鋳造システムにおける液体窒素の利用
液体窒素は無色、透明、かつ流れ易い液体であり、流体としての一般的性質を備えている。液体窒素噴射装置において、その圧力p及び流速Vを一般的方法を用いて制御することが可能である。液体窒素がその境界状態に近づくと、その物理的性質、特に比熱Cp及び熱伝導率λに異常な変化が起こる。しかしながら、急速凝固及び冷却工程においては、噴射液体窒素はその境界部分において作用しない。従って、境界状態においてその物理的性質の異常な変化を考慮する必要はない。液体窒素の標準沸点(tboil)は、圧力p=1.013バール[付表2]において−195.81℃である。
【0040】
別の検討において、炭素鋼を液体窒素中で直接攪拌して急冷させた場合、その硬度は炭素鋼を水中で急冷させた場合よりも遥かに低くなる[4]。この現象は、赤熱した部分を大形容器中の液体窒素中へ入れると、液体窒素が熱を吸収して急速にガス化することを示している。大形容器中で生成した窒素ガスはその赤熱部分を取り囲んで該部分と液体窒素を分離させる窒素ガス層を形成する。このガス層は熱を伝導せず、前記赤熱部分に対する断熱層となる。その結果、熱が十分に放散されず、冷却速度が低下し、液体窒素中で急冷された炭素鋼の硬度は、水中で急冷された炭素鋼の硬度よりも大幅に低下する。
【0041】
圧力p1バール下において、大形容器中に水を入れ、沸騰が始まるまで加熱してから該水中における温度分布を測定する。加熱面に直近の2〜5mmの薄い水層中において、温度は約100.6℃から109.1℃まで急激に上昇する。急激な温度変化によって、容器壁付近の水中に広い温度勾配が生ずる。しかしながら、前記薄層の外側の水温は大きくは変化しない。前記容器壁付近に生じた広い温度勾配によって、水の沸騰熱伝達係数aは水の対流熱伝達係数よりも遥かに高くなる。このことにより、加熱面から水への熱伝達及び水の蒸発は主に前記2〜5mmの薄い水層において起こり、前記薄い水層の外側の水はこれに殆ど関与しないという重要な結論が導き出される。さらに、前記加熱面付近の薄い水層中に広い温度勾配が生ずる特性はあらゆる他の沸騰過程にも存在することが見出されている。液深が2〜5mmを超えない浅いプール、液厚が2〜5mm以内の流れ沸騰等による加熱方法が利用され始めている。これらいずれの方法によっても壁に近接してさらに大きな温度勾配が生成される。このような低水位液中での沸騰は液膜沸騰と呼ばれる。薄い液膜による流れ沸騰の場合、液流速度が働くため壁に近接した温度勾配はさらに大きくなり、この種の薄い液膜による流れ沸騰の熱伝達能はさらに高くなる。高流速効果を利用すべく、30m/秒の高流速で直径5mmの円筒管へ水を流す検討が行われ、q=1.73×10W/mの結果が得られている[5]
【0042】
上記データに関する分析に基づいて、LRC法では高噴射速度と極めて薄い膜を用いた噴射熱伝達技術が用いられる。ここで下記式が与えられる。
h=△V/2BK△τ mm (13)
式中の符号の意味は前記と同様である。
【0043】
△τ及び△Vを決定した後、液体窒素の噴射速度Kを30m/sあるいはそれ以上まで高め、噴射された液体窒素層の厚さhを2〜3mm以内、あるいはさらに1〜2mm以内に保持することにより高噴射速度及び極めて薄い液膜噴射技術を実現することが可能である。
【0044】
図2に示した液体窒素エゼクタ(5)の噴射口における噴射液体窒素及び作業室(8)に関するパラメータは下記のとおりである。
p:液体窒素の噴射圧、p=1.887バール
t:液体窒素の温度、t=−190℃
max:液体窒素の最大噴射速度、Kmax=30m/s
h:噴射された液体窒素層の厚さ、h=2〜3mmまたは1〜2mm
:作業室の室内圧、p=1バール
:作業室の温度、t=−190℃
【0045】
液体窒素は2〜3mmまたは1〜2mmの高さをもつエゼクタ(5)‘の噴射口から作業室内の空間全体へ噴射される。液体窒素のジェット流は非常に希薄であり、その速度は極めて速く、ジェットビームが短間隔後方のスラブへ達すると、端部から中心に至るジェットビームの断面全体の圧力は1.887バールから1バールへ急速に降下する。この圧力においては、液体窒素の飽和温度はその沸騰温度tboil(tboil=−195.81℃)でもある(付表2)。しかしながら、噴射された液体窒素の温度は沸騰温度よりも高いt=−190℃のままである。従って液体窒素は沸騰状態にある。熱をその中へ伝達すれば、液体窒素を急速にガス化させることが可能である。ガス化速度は液体窒素温度と沸点との温度差と相関関係にある。この場合、この温度差は5.75℃である。温度差がさらに増大すれば、液体窒素のガス化速度はさらに高くなる。
【0046】
前記噴射液体窒素の圧力が1.887バールから1バールへ降下した時、液体窒素の温度は圧力1バールで飽和温度(沸点温度)よりも猶高い。これは容積沸騰の物理的条件に従ったものである。熱供給が十分である限り、噴射された液体窒素層全体に等相ガス化が起こる。当然のこととして、噴射液体窒素を分離する窒素ガス層は生じない。
【0047】
液体窒素の流速は30m/sまでひき上げられて設定され、及び噴射された液体窒素層の厚さは2〜3mm、さらには1〜2mmに制御される。これは、壁に近接して極めて高い温度勾配を示す薄層に必ずなるように速い流速で薄層を形成することを目的とするためである。このようにして、液体窒素の薄層全体は壁に近接した極めて高い温度勾配中に含まれ、強力な熱伝達の一翼を担う。さらに、流速を高めることにより熱伝達能がさらに増大し、薄層中のすべての液体窒素による熱吸収及びガス化が引き起こされる。ガス化中に生じた蒸気は排気装置によって迅速に取り除かれるので、金属スラブの底面であっても噴射された液体窒素を分離させる窒素ガス層は存在しない。噴射された液体窒素からの急速なガス化及び冷却による効果は上面と底面のいずれにおいても同様に得られることが理解されよう。壁近接部分の温度及び熱伝達の強さのいずれも金属スラブ表面の温度によって影響を受ける。
【0048】
上記分析より、LRC法及びその連続鋳造システムにおいては、高速噴射及び極めて薄い液膜噴射技術を用いることにより、金属スラブ表面上において噴射された液体窒素を分離させる窒素層を形成することなく、熱吸収及びガス化を通して噴射された液体窒素によって要求された時間間隔△τ中に熱量△Qが取り除かれることが理解されよう。
【0049】
4.噴射液体窒素と金属スラブ間での熱交換
図2に示すようにLRC連続鋳造システムによる鋳造が開始されると、噴射された液体窒素は断面cにおいて金属スラブと接触するようになる。鋳造初期段階においては、金属スラブの温度及び噴射された液体温度の温度はいずれも−190℃である。それゆえ、時間間隔△τの開始時点では液体窒素と金属スラブ間には熱交換は起こらない。しかしながら、時間間隔△τにおいて極めて短期間後に熱量の少量△Q/2が接触部分においてスラブ表面へ伝達される。スラブ表面の温度は直ぐに急速に上昇するため、液体窒素とスラブ表面間に温度差が生ずる。液体窒素はスラブ表面との熱交換を開始し、その熱をガス化を通して取り除くのでスラブ表面の温度は直ぐに−190℃へと降下する。さらに極めて短い時間間隔中に、前記接触部分へ噴射された液体窒素のガス化によって生じた窒素ガスのすべては強力排気装置によって作業室(8)から取り除かれる。前記時間間隔△τのうちの極めて短期間に続く別の極めて短期間において、金属スラブは左方へ極めて短い距離だけ移動する。次いで液体窒素がスラブ表面の新たな部分上へ新たに噴射される。液体窒素とスラブ間の熱交換は上記工程において反復される。時間間隔△τ後、噴射された液体窒素によって最終的に熱量△Q/2が取り除かれる。金属スラブには上面と底面があることから、噴射された液体窒素によって最終的には熱量△Qのすべてが取り除かれる。急速凝固及び冷却は予定通り進行し、最終的に非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造が生成される。
【0050】
液体窒素と金属スラブ間の熱交換の実際の状態は上述したものとは少し異なっており、スラブの最終冷却終了温度は−190℃よりも10〜20℃高い。すなわちt=−180℃〜−170℃である。しかしながら、このことは非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造から成る金属スラブの製造には影響しない。金属スラブの最終温度は−190℃のままである。
【0051】
また、作業室(8)の作業圧は、強力排気装置を用いてp=1バールの一定値に維持されなければならない。作業温度tは試験製造の結果を見て−190℃に調整可能である。
【0052】
5.最大厚Emaxをもつ非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブの鋳造における製造パラメータの計算式
ここでの目的は幅Bが1mの金属スラブの製造である。
噴射された液体窒素の厚さhは2mmに決められ、一定に保たれる。壁に近接した極めて高い温度勾配と噴射された液体窒素の減圧によって起こる等相ガス化の両作用の下で、厚さhが2mmの噴射液体窒素層のすべてが熱を吸収しガス化することによって非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブを製造することが可能である。厚さhが2mmより厚ければ、要求された金属構造をもつスラブの鋳造ができなくなる可能性がある。hが2mmに一定に保たれれば、液体窒素エゼクタ(5)の噴射ノズルを変える必要がなく、取り付けられたサイズのまま使用可能である。
【0053】
液体窒素の最大噴射速度KmaxはKmax=30m/sと決められる。幅B=1m、h=2mm、Kmax=30m/sである時、液体窒素エゼクタ(5)から噴射される液体窒素最大量はVmaxである。この量の液体窒素の存在下で、最大厚Emaxの非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブを連続鋳造することが可能である。
計算の詳細について以下に示す。
【0054】
1)冷却速度の算定
非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属構造のいずれが要求されるかによってそれぞれ異なる冷却速度Vが算定される。
2)急速凝固及び冷却の時間間隔△τの算定
△τは下記式(1)から求められる。
△τ=△t/V (s) (1)
3)時間間隔△τにおける鋳造スラブ長△mの算定
非晶質金属構造に関し、△mは下記式(8)から求められる。
△m=√(λcp△τ/ρcpCcp) mm (8)
超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造に関し、△mは下記式(9)から求められる。
△m=√(λcp/ρcp(Ccp△t+L)Vk)・△t mm (9)
4)連続鋳造速度uの算定
uは下記式(10)から求められる。
u=△m/△τ m/s (10)
パラメータV、△τ、△m、及びuは、金属の熱物理的特性及び非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属構造の相違にのみ依存する。これらパラメータは金属スラブの厚さとは無関係である。金属の種類及び組成と、所望される金属構造が決まれば、パラメータV、△τ、△m、及びuの数値も決まる。金属スラブの厚さを変えてもこれらパラメータの数値に影響はない。
5)△Vmaxの算定
液体窒素の最大噴射速度Kmaxが30m/sである場合、噴射液体窒素層の厚さhは2mm、また金属スラブの幅Bは1mに一定に保たれ、時間間隔△τ中に液体窒素エゼクタ(5)によって噴射される液体窒素容積が△Vmaxである。この噴射液体窒素量は時間間隔△τにおいて噴射される液体窒素の最大量である。△Vmaxは式(13)から算出可能であり、式(13)の△Vを△Vmaxへ置き換えて式(15)を得、この式(15)から求めることが可能である。
△Vmax=2BKmax・△τ・h dm (15)
6)△Q2maxの算定
△Q2maxは完全なガス化が行われる間に液体窒素の最大噴射量△Vmaxによって吸収される熱量である。式(11)の△V及び△Qを△Vmaxと△Q2maxにそれぞれ置き換えて式(16)を得、この式(16)から△Q2maxを算出することが可能である。
△Q2max=△Vmaxr/V‘ KJ (16)
7)非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブの最大厚Emaxの算定
2maxは完全なガス化が行われる期間における液体窒素の最大噴射容積△Vmaxであると同時に、長さ△mの非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブの溶融金属中に含まれる内部熱エネルギーである。従って、最大厚Emaxは下記式から算出可能である。
非晶質金属スラブに関し、式(5)の△Q及びEを△Q2maxとEmaxにそれぞれ置き換えて式(17)を得、この式(17)からEmaxの数値を算出することが可能である。
max=△Q2max/B△mρcpcp△t mm (17)
超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブに関し、式(6)の△Q及びEmaxを△Q2maxとEにそれぞれ置き換えて式(18)を得、この式(18)からEmaxを算出することが可能である。
max=△Q2max/B△mρcp(Ccp△t+L) mm (18)
8)Vmaxの算定
式(12)のV及び△Vを△Q2maxとEmaxにそれぞれ置き換えて式(19)を得、この式(19)からVmaxの数値を算出することができる。
max=△Vmax/△τ・60 dm (19)
式(15)を上記式へ置き換えれば、
max=120BKmaxh dm/分 (19)‘
となり、この場合B、Emax及びhが一定であればEmaxも一定である。
9)Vgmaxの算定
式(14)のV及び△QをVgmaxと△Q2maxにそれぞれ置き換えて式(20)を得、この式(20)からVgmaxの数値を算出することができる。
gmax=(△Q2max/r)V“(60/△τ) dm/分 (20)
△Q2maxの計算式を上記式へ置き換えれば、
gmax=120BKmaxh/V‘・V“ dm/分 (20)’
V‘及びV“は液体窒素の熱物理的特性のパラメータである。これらのパラメータは温度tに伴って変化する。液体窒素の温度tが−190℃であると、V’及びV”も決まる。B、Kmax及びhが一定であれば、Vmaxも一定である。
【0055】
6.厚さEの非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブ鋳造のための製造パラメータ計算式
前述したようにパラメータV、△τ、△m、及びuは金属スラブの厚さとは無関係である。これらの数値は最大厚がEmaxである非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブの鋳造における数値と同一である。しかしながら、熱量に依存するパラメータ△V、△Q、V、Vは長さ△mのスラブの厚さ、溶融金属量及び内部熱エネルギーと共にEmaxからEへ減少する。これら数値の計算式は下記の通りである。
1)比例係数Xの算出
X=Emax/E (21)
式中、
maxは非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブの最大厚(mm)、
Eは非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブの厚さ(mm)、及び
Xは比例係数を表す。
2)△Q、△V、V及びVの算定
長さ△mの溶融金属中の内部熱エネルギーは金属スラブの厚さに直接比例するため、下記式が成り立つ。
X=△Q2max/△Q=△Vmax/△V=Vmax/V
=Vgmax/V (22)
3)液体窒素の噴射速度Kの算定
液体窒素層の厚さが2mmに一定に保たれるならば、噴射される液体窒素量がVmaxからVへ減少すると液体窒素の噴射速度はKmaxからKへと降下する。このようなKmaxとKとの関係から式(23)が成り立つ。
X=Kmax/K (23)
上記式は、比例係数式(21)、(22)及び(23)を用いることによって、厚さEの非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブの製造パラメータをEmaxに関するパラメータを用いて算出できることを示している。
これら式に従って、種々金属種及び非晶質、超微結晶質、微結晶質あるいは微粒子金属スラブの厚さに関する製造パラメータが算出可能である。計算結果を試験製造及び設計、さらにLRC法連続鋳造システムの製造に利用して所望のスラブを製造することが可能である。
前記計算式を用いて製造パラメータの決定方法、及びLRC法及びその連続鋳造システムを通して非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブを鋳造するための製造構成方法を説明するため、幅Bが1mの0.23Cスチールスラブ及び幅Bが1mのアルミニウムスラブをそれぞれ鉄金属及び非鉄金属の例として用いて前記式をどのように適用して製造パラメータ及び製造構成方法を決めるかについて説明する。
【0056】
7.LRC法及びその連続鋳造システムを用いた非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
0.23Cスチールスラブの重要パラメータ及び熱パラメータは下記の通りである。
B:スチールスラブの幅、B=1m
E:スチールスラブの厚さ、E=Xm
L:潜熱、L=310KJ/Kg
λcp:平均熱伝導率、λcp=36.5×10−3KJ/m・℃s[付表2]
ρcp:平均密度、ρcp=7.86×10Kg/m3[付表1]
cp:平均比熱、Ccp=0.822KJ/Kg℃[付表1]
t1:初期凝固温度、t=1550℃
t2:終了凝固冷却温度、t=−190℃
液体窒素の熱パラメータは下記表に示す通りである[付表2]
【0057】
【表2】

【0058】
上記表中、
tは液体窒素の温度(℃)、すなわち、t=−190℃を表し、
pは液体窒素のt=−190℃における圧力(バール)、すなわちp=1.877バールを表し、
V‘は液体窒素1Kgのt=−190℃及びp=1.877バールにおける容積(dm/Kg)を表し、
V“は窒素ガス1Kgのt=−190℃及びp=1.877バールにおける容積(dm/Kg)を表し、及び
rはt=−190℃及びp=1.877バールにおける潜熱、すなわち液体窒素1Kgがt=−190℃及びp=1.877バールにおいてガス化される時に吸収される熱量(KJ/Kg)を表す。
【0059】
1)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた0.23C非晶質スチールスラブの鋳造及び製造パラメータの算定
1.1)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた厚さEmaxの0.23C非晶質スチールスラブの鋳造及び製造パラメータの算定
(1)0.23C非晶質スラブの凝固冷却工程全体における冷却速度Vの算定
は10℃/sとする。
(2)△τの算定
、t、tに関するデータを式(1)へ置き換えることにより、
△τ=(t−t)/V=1550−(−190)/10
=1.74×10−4
(3)△mの算定
非晶質スチールスラブに関し、△mは下記式(8)から求められる。
△m=√((λcp/ρcpCcp)△τ)
=√((36.5×10―3/7.86×103×0.822)×1.74×10−4
=0.03135mm
(4)uの算出
uは式(10)から算出される。
u=△m/△τ=0.03135/1.74×10−4=10.81m/分
(5)△Vmaxの算定
maxは式(15)から算出される。
max=30m/sとすると、
△Vmax=2BKmax△τh
=2×1×10×30×10×1.74×10−4×2
=0.02088dm
(6)△Q2maxの算定
△Q2maxは式(16)から算出される。
△Q2max=△Vmaxr/V‘
=0.02088×190.7/1.281=3.1084KJ
(7)Emaxの算出
maxは式(17)から算出される。
max=△Q2max/B△mρcpcp△t
=3.1084/100×0.003135×7.8×10−3×0.822×1740=8.9mm
(8)Vmaxの算出
maxは式(19)‘から算出される。
max=120BKmax
=120×1×10×30×10×2=7200dm/分
(9)Vgmaxの算出
gmaxは式(20)‘から算出される。
gmax=(120BKmaxh/V‘)×V“
=(120×1×10×30×10×2/1.281)×122.3
=687400.5dm/分
【0060】
上記計算は、液体窒素エゼクタ(5)中の液体窒素が高温鋳造型(4)の取出し口において0.23Cスチールスラブへ厚さhが2mmとなるように最大噴射速度Kmax=30m/s及び最大噴射量Vmax=7200dm/分で噴射される場合、誘導牽引装置(6)がスラブを連続鋳造速度u=10.81m/分で引き出して高温鋳造型(4)の取出し口から離脱させることを示している。LRC法及びそれによる連続鋳造システムにより、温度t=1550℃、断面積1000×8.9mm、及び長さ△m=0.03135mmの溶融金属を凝固させ及び冷却速度V=10℃/sで冷却させて最終的に最大厚Emax=8.9mm及び幅B=1000mmの0.23C非晶質スチールスラブを連続鋳造することが可能である。
【0061】
1.2)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた厚さEの0.23Cスチールスラブの鋳造及び製造パラメータの決定
(1)E=5mmとする。E=5mmに対応するパラメータV、△τ、△m、uの数値はE=8.9mmに対応する上記パラメータ数値と同一である。すなわち、V=10℃/s、△τ=1.74×10−4s、△m=0.03135mm、u=10.81m/分である。
(2)Xの算出
Xは式(21)から算出される。
X=Emax/E=8.9/5=1.78
(3)△Vの算出
△Vは式(22)から算出される。
△V=Vmax/V=0.02088/1.78=0.01173dm
(4)△Qの算出
△Qは式(22)から算出される。
△Q=△Q2max/X=3.1084/1.78=1.746KJ
(5)Vの算出
Vは式(22)から算出される。
V=Vmax/X=7200/1.78=4044.9dm/分
(6)Vgの算出
は式(22)から算出される。
=Vgmax/X=687400.5/1.78
=386180.1dm/分
(7)Kの算出
Kは式(23)から算出される。
K=Kmax/X=30/1.78=16.9m/s
【0062】
上記計算は、連続鋳造速度が0.18m/分に固定され、また噴射される液体窒素層の厚さが2mmに固定される場合、液体窒素の噴射量がv=4044.9dm/分に低下し、それに対応する液体窒素の噴射速度もk=16.9m/sに降下することを示している。この場合では、厚さE=5mmの0.23C非晶質スチールスラブが連続鋳造される。
【0063】
2)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた0.23C超微結晶質スチールスラブの鋳造及び製造パラメータの算定
0.23C超微結晶質スチールスラブの連続鋳造に関する検討において、最大厚Emaxあるいは他の厚さEをもつスラブ製造のための製造パラメータが種々冷却速度Vにおいて調べられた。冷却速度としては、2×10℃/s、4×10℃/s、6×10℃/s、及び8×10℃/sをそれぞれ組み合せて用いた。
【0064】
2.1)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いて冷却速度V=2×106℃/sで0.23C超微結晶質スチールスラブを鋳造する場合の最大厚Emaxの算定、及び製造パラメータの決定
ここでKmax=30m/s、h=2mm、及びV=2×10℃/sに一定に維持する。
(1)△τの算出
△τは式(1)から算出される。
△τ=t−t/V=1550−(−190)/2×10
=8.7×10−4
(2)△mの算出
超微結晶質スチールスラブに関しては、凝固過程において潜熱が存在し、△mは式(9)から算出される。
△m=√(λcpcp△t+L)Vk)・△t
=√[36.5×10-3/7.86×103(0.822×1740+310)×2×10]×1740=0.0636mm
(3)uの算出
uは式(10)から算出される。
u=△m/△τ=0.0636/8.7×10−4=4.39m/分
(4)△Vmaxの算出
△Vmaxは式(15)から算出される。
△Vmax=2BKmax△τh
=2×1×10×30×10×8.7×10−4×2=0.1044dm
(5)△Q2maxの算出
△Q2maxは式(16)から算出される。
△Q2max=△Vmaxr/V‘
=0.1044×190.7/1.281=15.55KJ
(6)Emaxの算出
超微結晶質スチールスラブに関し、Emaxは式(18)から算出される。
max=△Q2max/B△mρcp(Ccp△t+L)
=15.55/100×0.00636×7.8
×10−3(0.822×1740+310)=18mm
(7)Vmaxの算出
maxは式(19)‘から算出される。
max=120BKmax
=120×1×10×30×10×2=7200dm/分
(8)Vgmaxの算出
gmaxは式(20)‘から算出される。
gmax=(120BKmaxh/V‘)V“
=(120×1×10×30×10×2/1.281)×122.3
=687400.5dm/分
【0065】
2.2)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた冷却速度V=2×10℃/sで厚さEをもつ超微結晶質スチールスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
(1)E=15mmとする。E=15mmに対応するパラメータV、△τ、△m及びuの数値は、E=18mmに対応するそれらパラメータ数値と同一である。すなわち、V=2×10℃/s、△τ=8.7×10−4s、△m=0.0636mm、u=4.39m/分である。
(2)Xの算出
Xは式(21)から算出される。
X=Emax/E=18/15=1.2
(3)△Vの算出
△Vは式(22)から算出される。
△V=Vmax/X=0.1044/1.2=0.087dm
(4)△Qの算出
△Qは式(22)から算出される。
△Q=△Q2max/X=15.55/1.2=12.96KJ
(5)Vの算出
Vは式(22)から算出される。
V=Vmax/X=7200/1.2=6000dm/分
(6)Vの算出
は式(22)から算出される。
=Vgmax/X=687400.5/1.2
=572833.8dm/分
(7)Kの算出
Kは式(23)から算出される。
K=Kmax/X=30/1.2=25m/s
【0066】
他の冷却速度Vの組合せにおいて最大厚Emaxあるいは他の厚さEをもつ0.23C超微結晶質スチールスラブを製造するための製造パラメータの計算に用いられる式(パラメータ)は冷却速度V=2×10℃/sにおけるそれら式(パラメータ)と同一である。計算結果は表3、表4、表5、表6、表7及び表8に示した通りである。計算方法は前記と同様である。
【0067】
3)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた最大厚Emaxあるいは他の厚さEの0.23C微結晶質スチールスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
微結晶質構造に用いる冷却速度Vの範囲はV≧10℃/s〜10℃/sである。凝固及び冷却において冷却速度V=10℃/sで連続鋳造されるスチールスラブを微結晶質スチールスラブAと呼ぶ。また、凝固及び冷却において冷却速度V=10℃/sで連続鋳造されるスチールスラブを微結晶質スチールスラブBと呼ぶ。最大厚Emaxあるいは他の厚さEをもつ微結晶質スチールスラブA及び微結晶質スチールスラブBを連続鋳造するために用いられるLRC法及び該方法による連続鋳造とステムの製造パラメータを算定する。計算プログラム及び計算式は超微結晶質スチールスラブに関するそれらと同様に適用される。関連製造パラメータは表3、表4、表5、表6、表7及び表8に示された通りである。なお、計算方法は前記と同様である。
【0068】
4)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた最大厚Emaxあるいは他の厚さEの0.23C微粒子スチールスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
微粒子構造に用いる冷却速度Vの範囲はV≦10℃/sである。関連製造パラメータは表3、表4、表5、表6、表7及び表8に示された通りである。なお、計算方法は前記と同様である。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
表3には、0.23C非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子スチールスラブを連続鋳造するための最大厚Emax及びそれに対応する製造パラメータが与えられている。表4〜8には、厚さEが20mm、15mm、10mm、5mm及び1mmである場合の、それぞれに対応する0.23C非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子スチールスラブの製造パラメータが与えられている。上記厚さ範囲における対応製造パラメータはこれら表を参照することによって決定可能である。
【0076】
微結晶質スチールスラブBに関しては、△m=0.284mmであるため、もし該スチールスラブの厚さが2.84mm未満(△m>E/10)であれば、このスラブは1次元安定状態熱伝導に関する条件に適合しない。同様に△m=0.899mmの微粒子スチールスラブについても、スチールスラブの厚さが9mm未満であれば同じく1次元安定状態熱伝導に関する条件に適合しない。すなわち、表8に示された微結晶質Bに関するデータ及び表7に示された微粒子に関するデータは使用不可である。
【0077】
表3〜8に示した製造パラメータ要求に適合させるため、LRC法による連続鋳造装置の噴射装置には下記特徴が備えられていなければならない。
E=1mm〜8.9mmの0.23C非晶質スチールスラブの場合、噴射される液体窒素量は809dm/分〜7200dm/分の範囲内で調節可能でなければならず、また液体窒素の噴射速度は3.37m/s〜30m/sの範囲内で調節可能でなければならない。
E=1mm〜18mmの0.23C超微結晶質スチールスラブの場合、噴射される液体窒素量は400dm/分〜7200dm/分の範囲内で調節可能でなければならず、また液体窒素の噴射速度は1.7m/s〜30m/sの範囲内で調節可能でなければならない。
E=1mm〜25.5mmの0.23C微結晶質スチールスラブAの場合、噴射される液体窒素量は282.4dm/分〜7200dm/分の範囲内で調節可能でなければならず、また液体窒素の噴射速度は1.18m/s〜30m/sの範囲内で調節可能でなければならない。
E=1mm〜80.6mmの0.23C微結晶質スチールスラブBの場合、噴射される液体窒素量は89.3dm/分〜7200dm/分の範囲内で調節可能でなければならず、また液体窒素の噴射速度は0.37m/s〜30m/sの範囲内で調節可能でなければならない。
E=1mm〜255mmの0.23C微粒子スチールスラブの場合、噴射される液体窒素量は28.2dm/分〜7200dm/分の範囲内で調節可能でなければならず、また液体窒素の噴射速度は0.12m/s〜30m/sの範囲内で調節可能でなければならない。
【0078】
8.LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子アルミニウムスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
アルミニウムスラブの重要パラメータ及び熱パラメータは下記のとおりである。
B:アルミニウムスラブの幅、B=1m
E:アルミニウムスラブの厚さ、E=Xm
L:潜熱、L=397.67KJ/Kg
λcp:平均熱伝導率、λcp=256.8×10−3KJ/m・℃s[付表1]
ρcp:平均密度、ρcp=2.591×10Kg/m3[付表1]
cp:平均比熱、Ccp=1.085KJ/Kg℃[付表1]
:初期凝固温度、t=750℃
:凝固冷却終了温度、t=−190℃
【0079】
冷却源に関する条件は0.23Cスチールスラブの連続鋳造において用いられる条件と同一である。液体窒素に関する熱パラメータは表2に示す通りである。
1)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた非晶質アルミニウムスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
1.1)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた最大厚Emaxの非晶質アルミニウムスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
(1)アルミニウムスラブの凝固冷却工程全体における冷却速度Vの算定
は107℃/sに設定する。
(2)△τの算出
△τは式(1)から算出される。
△τ=t−t/V=750−(−190)/10
=9.4×10−5
(3)△mの算出
△mは式(8)から算出される。
△m=√(λcp/ρcpCcp)・△τ
=√(256.8×10―3/2.591×10×1.085)×9.4×10−5=0.093mm
(4)uの算出
uは式(10)から算出される。
u=△m/△τ=0.093/9.4×10−5=59.15m/分
(5)△Vmaxの算出
△Vmaxは式(15)から算出される。
max=30m/sに設定する。
△Vmax=2BKmax△τh
=2×1×10×30×10×9.4×10−5×2=0.01128dm
(6)△Q2maxの算出
△Q2maxは式(16)から算出される。
△Q2max=△Vmaxr/V‘
=0.01128×190.7/1.281=1.679KJ
(7)Emaxの算出
maxは式(17)から算出される。
=1.679/100×0.0093×2.591×10−3×1.085×940=6.8mm
(8)Vmaxの算出
maxは式(19)‘から算出される。
max=120BKmax
=120×1×10×30×10×2=7200dm3/分
(9)Vgmaxの算出
gmaxは式(20)‘から算出される。
gmax=(120BKmaxh/V‘)V“
=(120×1×10×30×10×2/1.281)×122.3
=687400.5dm/分
【0080】
1.2)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた厚さEの非晶質アルミニウムスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
(1)E=5mmとする。E=5mmに対応するV、△τ、△m及びuの数値は、Emax=6.8mmに対応するそれらパラメータ数値と同一である。すなわち、V=10℃/s、△τ=9.4×10−5s、△m=0.093mm、u=59.15m/分である。
(2)Xの算出
Xは式(21)から算出される。
X=Emax/E=6.8/5=1.36
(3)△Vの算出
△Vは式(22)から算出される。
△V=△Vmax/X=0.0128/1.36=0.0083dm
(4)△Qの算出
△Qは式(22)から算出される。
△Q=△Q2max/X=1.679/1.36=1.24KJ
(5)Vの算出
Vは式(22)から算出される。
V=Vmax/X=7200/1.36=5294.1dm/分
(6)Vgの算出
Vgは式(22)から算出される。
Vg=Vgmax/X=687400.5/1.36
=505441.5dm3/分
(7)Kの算出
Kは式(23)から算出される。
K=Kmax/X=30/1.36=22.1m/s
【0081】
0.23C非晶質スチールスラブの連続鋳造に用いられるLRC法の製造パラメータとアルミニウムスラブの連続鋳造に用いられるそれらパラメータとを比較すると、液体窒素の製造パラメータが同一(Vmax=7200dm/分、Kmax=30m/s、h=2mm)である場合、0.23C非晶質スチールスラブの最大厚Emaxが8.9mmであるのに対して、他方非晶質アルミニウムスラブの最大厚Emaxが6.8mmであることが分かる。スチールスラブのEmaxはアルミニウムスラブのEmaxよりも1.3倍厚い。非晶質スチールスラブの鋳造速度uは10.81m/分にあるのに対して、非晶質アルミニウムスラブの鋳造速度uは59.15m/分である。すなわち、12分間で、厚さ8.9mmの0.23C非晶質スチールスラブの場合10.81m鋳造できるのに対して、厚さ6.8mmの非晶質アルミニウムスラブの場合には59.15m鋳造可能である。この相違の主たる理由は、これら2種のスラブの△m値が異なるためである。非晶質金属構造の△m値は式(8)によって決まる。
△m=√(αcp△τ) (8)
式中、αcpは金属の平均熱拡散係数であり、下記式から求められる。
αcp=λcp/ρcpcp/s
【0082】
LRC法を用いて金属スラブを連続鋳造する場合、一定金属のλcpが大きく、かつρcpcpが小さければ、該金属によって伝達される熱量が大きくなり、また蓄積される熱量が小さくなることから、該金属の△m値が増大される。図2に示した断面a〜cを通って伝達される熱量は△Qであり、下記式で表わされる。
△Q=λcpA(△t/△m)・△τ
【0083】
λcpが増加すると△Qの数値も増加する。△Q=△Qを維持するためには△Qの数値も増加しなければならない。△Qは長さ△mの溶融金属中の内部熱量である。
△Q=BE△mρcpcp△t
【0084】
アルミニウムのρcpcpはさらに小さい。それゆえ、△Qの数値が増加すれば、△mの数値も増加させなければならない。△mの数値が増加すれば△Qは増加するが、△Qは減少する。△mが△Q=△Qとなる一定値まで増加すると△mの数値が決まる。
【0085】
この計算に従えば、0.23Cスチールについてはαcp=0.0203m/h及び△τ=1.74×10−4sであり、またアルミニウムについてはαcp=0.329m/h及び△τ=9.4×10−5sである。αcpと△τを組み合わせることにより、非晶質アルミニウムについて△m=0.093mmとなり、また0.23Cスチールについて△m=0.03135mmとなる。これら2つの△m間には3倍の相違がある。アルミニウムのより大きな△mによって連続鋳造速度uは59.15m/分まで増加する。図1に示した誘導牽引装置(6)の牽引速度が59.15m/分に達することが要求されるだけでなく、全く変動のない安定な移動が要求されるため、装置の設定に一定程度の困難性が生ずる。
【0086】
2)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いた超微結晶質アルミニウムスラブの鋳造、及び製造パラメータの決定
超微結晶質アルミニウムスラブに用いられる冷却速度の組み合わせは、2×10℃/s、4×10℃/s、6×10℃/s及び8×10℃/sの各組み合わせである。
2.1)LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いて冷却速度V=2×10℃/sで超微結晶質アルミニウムスラブを鋳造する場合の最大厚Emaxの算定、及び製造パラメータの決定
maxを30m/sとし、高さhを2mmに一定に保持する。
(1)△τの算出
△τは式(1)から算出される。
△τ=(t−t)/V
=750−(−190)/2×10=4.7×10−4
(2)△mの算出
超微結晶質アルミニウムの場合、凝固過程において潜熱が放出される。△mは式(9)から算出される。
△m=√(λcp/ρcp(Ccp△t+L)Vk)・△t
=√(256.8×10−3/2.591×103(1.085×940+
397.67)×2×10)×940=0.176mm
(3)uの算出
uは式(10)から算出される。
u=△m/△τ=0.176/4.7×10−4=22.5m/分
(4)△Vmaxの算出
△Vmaxは式(15)から算出される。
△Vmax=2BKmax△τh
=2×1×10×30×10×4.7×10−4×2=0.0564dm
(5)△Q2maxの算出
△Q2maxは式(16)から算出される。
△Q2max=△Vmaxr/V‘
=0.0564×190.7/1.281=8.4KJ
(6)Emaxの算出
超微結晶質アルミニウムスラブに関し、Emaxは式(18)から算出される。
max=△Q2max/B△mρcp(Ccp△t+L)
=8.4/100×0.0176×2.591×10−3×(1.085×940+397.67)=13mm
(7)Vmaxの算出
maxは式(19)‘から算出される。
max=120BKmax
=120×1×10×30×10×2=7200dm/分
(8)Vgmaxの算出
gmaxは式(20)‘から算出される。
gmax=(120BKmaxh/V‘)V“
=(120×1×10×30×10×2/1.281)×122.3
=687400.5dm/分
【0087】
冷却速度V=2×10℃/sを用いて他の厚さEをもつ超微結晶質アルミニウムスラブを製造する場合の製造パラメータを算定する。また、冷却速度V=4×10℃/s、6×10℃/s、あるいは8×10℃/sを用いて最大厚あるいは他の厚さEをもつ超微結晶質アルミニウムスラブを製造する場合の製造パラメータを算定する。また、冷却速度V=10℃/s、10℃/s、あるいは10℃/sを用いて最大厚あるいは他の厚さEをもつ微結晶質A、微結晶質Bあるいは微粒子アルミニウムスラブを製造する場合の製造パラメータを算定する。上記すべての計算結果を表9、表10、表11、表12、表13、及び表14に列記する。なお、計算方法は前記と同様であるのでここでは説明を省く。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
【表12】

【0092】
【表13】

【0093】
【表14】

【0094】
表9には非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子アルミニウムスラブ鋳造のための最大厚Emax及びそれに対応する製造パラメータが与えられている。表10〜14には、厚さEがそれぞれE=20mm、15mm、10mm、5mm及び1mmである非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子アルミニウムスラブを連続鋳造する場合の対応製造パラメータが与えられている。厚さがこれら範囲を越える場合には、これら表を参照して対応パラメータを決めることが可能である。
【0095】
超微結晶質アルミニウムスラブに関して、冷却速度Vは2×10℃/s〜6×10℃/sの範囲内であり、また△mは0.176mm〜0.102mmの範囲内である。アルミニウムスラブの厚さが1.76mm〜1.02mm未満であれば、△m>E/10となり、この場合には1次元安定状態熱伝導の要求を満たすことができない。微結晶質Aアルミニウムスラブの場合△m=0.249mmである。従ってアルミニウムスラブの厚さが2.5mm未満であれば1次元安定状態熱伝導に関する要求を満たすことができない。また微結晶質Bアルミニウムスラブの場合△m=0.786mmである。従ってアルミニウムスラブの厚さが7.86mm未満であれば1次元安定状態熱伝導に関する要求を満たすことができない。微粒子アルミニウムスラブの場合は△m=2.49mmであるので、アルミニウムスラブの厚さは25mm以上でなければ1次元安定状態熱伝導に関する要求を満たすことができない。
【0096】
表9〜14には、液体窒素噴射量V及び噴射速度KにおけるLRC法及び該方法による連続鋳造システムの調整範囲に関するデータも与えられている。
【0097】
図2に示した高温鋳造型の取出し口に断面bを保持するためには、誘導牽引装置(6)及び液体窒素エゼクタ(5)の設計に際して、断面bが高温鋳造型取出し口の右に位置することを確保できるように、断面bの実際位置によって連続鋳造速度u及び液体窒素噴射量Vを微調整すべく考慮しなければならない。液体窒素の噴射が形状化された金属(スラブ)(7)と接触する断面cについては、液体窒素の噴射が断面c上において形状化された金属(スラブ)と接触するように、図2に示したノズル構造を修正しなければならない。
【0098】
LRC法及び該方法による連続鋳造システムの用途は多様である。これら方法及びシステムにより、非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブあるいは他形状金属をあらゆる型および規格に連続鋳造することが可能である。このような金属にはスチール、アルミニウム、銅、チタン等の鉄金属及び非鉄金属も含まれる。作業原則及び製造パラメータを決定するために、0.23Cスチール及びアルミニウムから成る非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブの連続鋳造に関する前記計算を参照することが可能である。
【0099】
図4に、上側に取出し口をもつ高温鋳造型を用いた非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子構造から成る金属スラブあるいは他の形状の金属の鋳造原理を示す。この態様は代替例として設計された例であるので、本願では詳細な説明は省略する。
【0100】
LRC法及び該方法による連続鋳造システムを用いて非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブあるいは他の形状の金属を鋳造することにより以下のような経済的利益が得られる。
【0101】
現在まで、非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子構造から成る鉄金属及び非鉄金属スラブあるいは他形状金属を製造することが可能な工場あるいは企業はない。しかしながら、本発明によればこのような金属の製造が可能である。LRC法及び該方法による連続鋳造システムはその優れた特徴と妥当な価格から関連世界市場へ普及されるであろう。
【0102】
LRC法の原理及び図1及び図2に示した重要パラメータに従って設計及び建造されたLRC法装置及び該方法による連続鋳造装置製造ラインのすべてを組み合わることにより国際市場において支配的優位性を得るであろう。
【0103】
LRC法及びそれによる連続鋳造装置を用いて非晶質、超微結晶質、微結晶質及び微粒子金属スラブあるいは他形状の鉄金属及び非鉄金属を連続鋳造する巨大コングロマリットとしては、基本的なものとして鉱業及び精錬所の他、精錬プラント、空気液化及び分離プラント、及びLRC法連続鋳造プラントがある。旧形態の鉄及びスチールコングロマリットには画期的な変化が起こるであろう。
【0104】
以上述べたように、本発明によって得られる経済的利益は想像を遥かに越えるものである。
【0105】
【表15】

【0106】
【表16】

異なる温度における一般的非鉄金属の熱物理的特性
アルミニウム Al
【0107】
金属の熱物理的特性平均値の算定
鉄金属及び非鉄金属の熱物理的特性データは温度によって変動する。製造パメータを算定する場合、工程において熱物理的特性平均値が採用される。しかしながら、金属の熱物理的特性及び温度データに含まれる温度範囲は現状では常態温度だけである。0℃以下での熱物理的特性に関するデータはない。便宜上、低温における熱特製データとして0℃における熱特製データが採用されている。しかしながら、このようにして得られた熱特製平均値は実際の数値よりも高くなる傾向がある。そのため、熱物理的特性平均値を用いて得られた製造パラメータも実際の数値より高くなる。正当な製造パラメータは製造試験を通して決められるべきである。
【0108】
0.23Cスチールの熱物理的特性平均値の決定
平均比熱Ccpの決定
表15から得られた0.23Cスチールの温度と比熱の関係に関するデータを表17に示す。
【表17】

【0109】
表17から、750℃以下の温度においては、比熱は温度の低下に伴って低下することが分かる。0℃以下のすべての比熱データには0℃における比熱データ、すなわち0.469KJ/Kg・Kが用いられる。この数値は実際の比熱よりも高い。
【0110】
急速凝固冷却の過程においては、非晶質金属の転移温度T及び融点Tmelt間にはT/Tmelt>0.5[1]の関係が成り立つ。
【0111】
0.23C溶融スチールの温度が急速に降下する1550℃〜750℃の温度範囲は非晶質転移が起こる温度範囲である。表17に示したt・c間の関係データから、上記温度範囲において計算される比熱平均値が実際の数値より高いことが理解される。この比熱平均値を温度が1550℃から750℃へ降下する全過程における比熱平均値とすれば実際のそれより高くなるが、信頼できる数値である。
【0112】
1330℃〜1550℃の温度範囲における比熱平均値
溶融スチールの比熱値Cをこの温度範囲における比熱平均値とする。
=0.84KJ/Kg・℃[8]
1300℃〜750℃における比熱平均値Ccp1を算出する。
cp1=(0.686+0.661+0.644+0.644+0.644+0.954+1.431)/7=0.8031KJ/Kg・℃
1550℃〜750℃における比熱平均値Ccp1を算出する。
cp1=(CL+Ccp1)/2
=(0.84+0.8031)/2=0.822KJ/Kg・℃
0.23Cスチールの比熱平均値Ccpを、Ccp=0.822KJ/Kg・℃とする。
【0113】
平均熱伝導率λcpの算定
【表18】

【0114】
0.23Cの熱伝導率平均値λcpを36.5×10−3KJ/m.s.℃とする。温度範囲750℃〜1200℃における数値λから、λcp=36.5KJ/m.s.℃は実際値より高いことが理解される。この数値を用いて熱伝達量および噴射液体窒素量を計算すると実際値より高く、信頼できる数値である。
【0115】
アルミニウムの熱物理的特性平均値の算定
平均比熱Ccpの決定
【表19】

【0116】
平均熱伝導率λcpの算定
【表20】

【0117】
平均密度ρcpの算定
【表21】

【0118】
アルミニウム合金、銅合金、チタン合金等の他の非鉄金属の熱物理的特性については関連手引書に記載されているので本願では繰り返し説明しない。
【0119】
【表22】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続成型システムであって、
i)室温−190℃及び室内圧が1バールに維持され、かつ、金属体を切断及び移送する装置を備えた作業室;
ii)可変出力の加熱装置を有する鋳造装置、
前記加熱装置は前記鋳造装置の出口における、又は出口近くの金属を加熱できるものであり;
iii)液体窒素を噴射する装置であって、前記鋳造装置の内側に位置する噴射装置;及び噴射された窒素ガスが金属体と接触する熱鋳造装置の出口を覆っている熱絶縁材料;
iV)連続的な造型の速度の変化を容易にするため、調節され得る噴射液体窒素の量とで溶融金属の固化する位置を調節し得る可動牽引装置;
V)噴射された液体窒素と金属体との接触によりもたらされる窒素ガスを除去する排気システム;
Vi)溶融金属を供給及び注ぎ入れる補助的装置;
からなる連続成型システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236233(P2012−236233A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174594(P2012−174594)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2008−523098(P2008−523098)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(508026113)
【Fターム(参考)】