説明

非水性医薬組成物

本発明は、薬物の鼻腔内送達用組成物であって、
(i)薬物、ならびに
(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよび少なくとも1種のプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ(ii)非水性媒体
を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、当該薬物が非水性液媒体に溶解している、水難溶性薬物化合物を鼻内投与するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達の鼻内経路は、血液循環中へ薬物を迅速に吸収させることができる。幾つかの例では、ほぼ全用量の吸収を実現でき、その薬物動態は、静脈内投与で得られる動態に類似することができる。このような迅速で有効な薬物送達は、疼痛(抑え難い痛みおよび外傷痛を含む)、片頭痛、不安、痙攣、インポテンスおよび吐気などの緊急状況の処置で有用になり得る。
【0003】
一般に、薬物の鼻内送達用組成物は水溶液の形態であるのが好ましい。これは、製造容易性、送達容易性および良好な患者許容性による。しかし、薬物を水溶液として処方することは、例えば、薬物の水性媒体に対する溶解性が不十分であれば、必ずしも実行可能ではない。
【0004】
このような状況では、1つの選択肢は、薬物の溶解性が上がる溶媒を用いた非水性溶液として、組成物を処方することになろう。しかし、鼻粘膜は繊細な組織であり、非水性媒体の方が、粘膜を刺激する傾向が大きく、その結果患者に受け入れ難くなる。この点で、理想的媒体は、無臭、無味であり、鼻腔に投与した際に刺激がないものとなろう。鼻内溶液は、ガラス、プラスチック、エラストマーおよび金属の一連の部品を備え得るスプレー器具から通常送達される。そのため、媒体は、スプレー器具の部品と相互作用して、例えば、プラスチックまたはエラストマー部品中に収着されることにより、器具性能を損なうことのないことが必須である。該液体の特性は、鼻内用スプレー器具を用いて投薬した際、分散液滴を形成するように噴霧されるような特性であることも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,693,608号
【特許文献2】米国特許第6,610,271号
【特許文献3】国際公開第2006/122217号
【特許文献4】米国特許第5,693,608号
【特許文献5】米国出願公開第2004/0077540号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Goodman and Gilman's「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、9版、McGraw Hill (1996)、383頁
【非特許文献2】Lau and Slattery (Int. J. Pharm., 54, 171-174, 1989年)
【非特許文献3】「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(5版、Pharmaceutical Press, London and American Pharmacists Association, Washington, 2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水性媒体の代替として使用し得る非水性液媒体を鼻腔内薬物送達のために提供することである。このような非水性媒体は、水性媒体中で起こる恐れのある不十分な溶解性などの溶解性問題を克服し得るものであり、鼻腔内送達に適切である。例えば、そうした媒体は、典型的には実質的に無臭で、実質的に無味であり、理想的には、鼻腔に投与した際に刺激がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願に記載の非水性媒体は、広範囲な薬物化合物の鼻腔内送達用組成物の作製に適している。当業者にとって、特定の非水性媒体が、本出願における教示に基づいて、特定の薬物と組み合わせた使用に適するか否かを判定することは、単純なことであろう。例えば、その媒体中で該薬物化合物の溶解度を測定することにより、これをなすことができる。溶解度は、過剰の薬物を媒体に添加し、その混合物を室温で24時間撹拌することにより、試験することができる。次いで、不溶の薬物をろ過または遠心により除去し、溶液の溶解薬物含量を、高速液体クロマトグラフィーなどの適当な分析法により検定する。
【0009】
本発明における使用に適した薬物は、20℃で約1mg/ml以下の水中溶解度を通常有する。このような薬物は、文献ではしばしば「非常に難溶」(20℃で0.1〜1mg/mlの水中溶解度)および「殆ど不溶」または「不溶」(双方について、20℃で0.1 mg/ml未満の水中溶解度)と称される。
【0010】
本発明における使用に適した治療剤(薬物化合物)には、それだけに限らないが、塩酸テトラサイクリン、ロイコマイシン、ペニシリン、ペニシリン誘導体、エリスロマイシン、サルファチアゾールおよびニトロフラゾンなどの抗生物質および抗菌剤;ナラトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、アルニチダン、アビトリプタン、アルモトリプタンまたは他の5-HT1アゴニストなどの抗片頭痛化合物;塩酸フェニルエフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリンおよび塩酸トラマゾリンなどの血管収縮剤;ジギタリスおよびジゴキシンなどの強心剤;ニトログリセリンおよび塩酸パパベリンなどの血管拡張剤;ビタミンDおよび活性ビタミンD3などの骨代謝制御剤;性ホルモン;降圧剤;抗腫瘍剤;ヒドロコーチゾン、プレドニゾン、フルチカゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベータメタゾン、ベクロメタゾンおよびジプロピオン酸ベクロメタゾンなどのステロイド性抗炎症剤;アセトアミノフェン、アスピリン、アミノピリン、フェニルブタゾン、メフェナム酸、イブプロフェン、ジクロフェナックナトリウム、アセクロフェナック、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ケトプロフェン、デキスケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、コルヒチンおよびプロベネシドなどの非ステロイド性抗炎症薬;キモトリプシンおよびブロメラインセラチオペプチダーゼなどの酵素性抗炎症剤;塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンおよびクレマスチンなどの抗ヒスタミン剤;リン酸コデインおよび塩酸イソプロテレノールなどの鎮咳去痰薬;オピオイド(ジアモルフィン、ヒドロモルフォン、ブプレノルフィン、フェンタニル、オキシコドン、コデイン、モルフィン、およびモルフィン-6-グルクロナイドおよびモルフィン-3-硫酸などのその極性代謝物質のようなもの)、またはオピオイドと非ステロイド性抗炎症薬などの他の鎮痛剤との組合せなどの鎮痛剤;メトクロプラミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、ドラセトロン、ドロナビノールおよびナビロンなどの制吐薬;メラトニン、ゾルピデム、ザレプロンおよびゾピクロンなどの睡眠障害治療薬;サルブタモールなどの喘息治療薬;アポモルフィン、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルおよびアルプロスタジルなどの勃起不全治療薬;ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クロザピン、ロキサピン、ピモジド、ゾテピン、ケチアピン、フルペンチキソール、ズクロペンチキソールおよびセルチンドールなどの抗精神病薬が挙げられる。
【0011】
鼻内送達の対象とする薬物化合物の更なる部類は、ベンゾジアゼピンである。こうした親油性薬物は、中枢神経系に作用して、鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症および抗痙攣作用を引き起こし、医療に広範に使用されている。治療に使用できる状態には、不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害および躁病が挙げられる。こうした薬物は、前投薬処置および獣医学診療にも使用することができる。ベンゾジアゼピン薬の例には、それだけに限らないが、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマザペム、ブロマゼパム、フルニトラゼパムおよびトリアゾラム、ベンタゼパム、ブロチゾラム、クロチアゼパム、デロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エチゾラム、フルジアゼパム、ケトゾラム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ノルダゼパム、メキサゾラム、ニメタゼパム、ピナゼパムならびにテトラゼパムが挙げられる。これらのベンゾジアゼピンの一部の構造は、Goodman and Gilman's「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、9版、McGraw Hill (1996)、383頁に見出すことができる。
【0012】
本発明は、薬物の部類のいずれにもおよび上掲の特定の薬物にも適用することができる。特に、本発明は、任意のベンゾジアゼピン化合物、特に上掲のベンゾジアゼピン薬のいずれにも適用することができる。本発明で使用するベンゾジアゼピン薬の好ましい一群は、ジアゼパム(7-クロロ-1,3-ジヒドロ-1-メチル-5-フェニル-2H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン)、ロラゼパム(7-クロロ-5-(2-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-2H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン)、クロナゼパム(5-(2-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロ-7-ニトロ-2H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン)、およびミダゾラム(8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-4H-イミダゾ[1,5-a][1,4]ベンゾジアゼピン)である。
【0013】
Lau and Slattery (Int. J. Pharm., 54, 171-174, 1989年)は、7種の非水性媒体を用いてジアゼパムおよびロラゼパムの鼻腔内送達を調べた。これらの媒体は、トリアセチン、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール400、Cremophor EL、ラウレス-9-(ポリオキシエチレン-9ラウリルエーテル)、アジピン酸イソプロピルおよびアゾンの1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンであった。
【0014】
米国特許第5,693,608号には、n-エチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))を含む鼻腔内投与用組成物が記載されている。PEG400中に溶解したジアゼパム、フルニトラゼパムおよびロラゼパム、ならびにPEG400およびグリコフロールの混合物中に溶解したフルニトラゼパムの例が示されている。
【0015】
ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む溶媒担体を用いた鼻腔内投与用のロラゼパム溶液が、米国特許第6,610,271号に記載されている。
【0016】
過飽和ジアゼパム溶液は、国際公開第2006/122217号に記載されている。ジアゼパムをグリコフロールに溶解して濃厚溶液を形成し、水を投与直前に添加して過飽和溶液を形成した。この文書では、水が、製剤の鼻に対する許容性を改善すると主張されている。しかし、投与前に水を添加する必要があるために、投薬がかなり複雑になる。
【0017】
本明細書に、明らかに既刊の文書を掲載または考察したからといって、その文書が、現状技術の一部であり、または一般常識であると必ずしも認めたわけではない。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、ある種の非水性媒体が、多様な薬物化合物の鼻腔内送達用組成物における使用に適していることを見出した。
【0019】
本発明は、(i)薬物、ならびに(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ(ii)非水性媒体を含む、薬物の鼻腔内送達用組成物を提供する。別途明記しない限り、こうした組成物は、本発明の組成物と以後呼称し、該非水性媒体は、本発明の媒体と以後呼称する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に使用される非水性媒体は、好ましくは、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒から本質的になり、または(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドンと追加の非水性溶媒から本質的になり、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)と追加の非水性溶媒から本質的になる媒体である。
【0021】
該非水性媒体は、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒からなり、または(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドンと追加の非水性溶媒からなり、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)と追加の非水性溶媒からなる媒体でもよい。
【0022】
疑念を避けるために、本明細書で「含む(comprisingまたはcomprises)」という用語を使用する場合、記載の組成物または製剤または構成要素は、掲載した成分(複数可)を含有しなければならないが、場合により追加の成分を含有してもよいことを意味する。「から本質的になる(consisting essentially ofまたはconsists essentially of)」という用語を使用する場合、記載の組成物または製剤または構成要素は、掲載した成分(複数可)を含有しなければならないが、任意の追加成分が該組成物、製剤または構成要素の本質的性質に影響しない限り、他の成分も少量(例えば、5重量%まで、または1重量%まで、または0.1重量%まで)含有してもよいことを意味する。「からなる(consisting ofまたはconsists of)」という用語を使用する場合、記載の組成物または製剤または構成要素は、掲載した成分(複数可)だけを含有しなければならないことを意味する。
【0023】
本明細書では、単数の構成要素または成分、例えば「脂肪酸エステル」に言及する場合、その句は、複数も包含することを意味する。例えば「脂肪酸エステル」は、「少なくとも1つの脂肪酸エステル」を意味すると見なすことができる。
【0024】
本発明の組成物は、先行技術で知られている組成物と比較して、(1)安定であり、(ii)良好に耐容され、(iii)毒性が低く、(iv)良好な薬物動態特性を有し、(v)容易に調製され、および/または(vi)他の有用な性質を有することができる。特に、本発明の組成物は、以下の利点を1つまたは複数有し得る。
(a)高濃度の薬物を含有する(例えば、同等な先行技術組成物より高濃度)。
(b)従来の鼻腔内スプレー器具を用いて噴霧することができる。
(c)鼻腔内に投与した際、良好に耐容される。
(d)薬物が化学的に安定な媒体を提供する。および/または
(e)薬物の鼻腔内吸収を迅速に効率的に行う。
【0025】
本明細書に「良好に耐容される」と記述される組成物には、鼻腔内に投与した際、不快感を殆どまたは全く起こさない組成物が挙げられる。「良好に耐容される」組成物は、鼻腔内に投与した際、ある程度の刺激および/または刺痛を起こし得る組成物でもあるが、それは、患者が、該組成物の更なる用量を投与されることを思いとどまることのない組成物である。これに関しては、鼻内組成物の耐容性は、当業者に公知の方法、例えば、米国特許第5,693,608号に記載されるような問診表の使用により評価し得る。
【0026】
高濃度の薬物を含有する本発明による組成物は、治療用量の薬物を非常に小さい用量体積で投与できるという更なる利点を有する。多量の液体を鼻腔内に投与すれば、その一部は鼻孔から垂れ落ちる恐れがあるので、これにより患者の許容性および耐容性が更に改善される。例えば、送達すべき薬物用量が5mgであれば、薬物化合物を10mg/mL含有する組成物には0.5mLの用量体積が必要となろう。薬物含量が50mg/mLに増加すれば(例えば、本発明による組成物を使用することによって)、用量体積はほんの0.1mLに減少されよう。
【0027】
その上、本発明による組成物は、確立された医薬加工法を用いて調製し、食品もしくは医薬における使用が認可され、または類似の規制状態にある物質を採用し得るという利点も有している。
【0028】
一態様では、本発明は、プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン(1-メチル-2-ピロリドン)、プロピレンカーボネート(4-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソラン)、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル(複数可)から選択される少なくとも1種の追加溶媒とを含む非水性送達媒体を提供する。該媒体は、「プロピレングリコール媒体」と以後呼称する。
【0029】
薬物の鼻腔内送達のために、プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル(複数可)から選択される追加溶媒とを含む液媒体の使用は、これまで記載がない。この液媒体の使用は、ベンゾジアゼピン薬物と組み合わせた使用に関して以下で考察する。しかし、これは例示に過ぎず、この媒体は、先に本文で列挙したような他の薬物とも使用し得る。
【0030】
プロピレングリコール(別名1,2-ジヒドロキシプロパン、2-ヒドロキシプロパノール、メチルエチレングリコール、メチルグリコールまたはプロパン-1,2-ジオール)は、非経口および経口医薬製剤における溶媒として広く使用されている。それは、粘膜に投与された際、良好に耐容される。しかし、それは、全ての薬物にとって良溶媒とは言えず、特に全てのベンゾジアゼピン薬物にとってそうとは言えない。それに加え、その粘度および表面張力のために、従来の鼻腔内スプレー器具を用いて有効に噴霧することが困難である。
【0031】
驚くべきことに、本発明者らは、プロピレングリコールと他の特定の物質、特に、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル(複数可)から選択される少なくとも1種の物質との混合物により、ベンゾジアゼピンなどの薬物を高濃度に含有し、鼻内スプレー器具を用いて首尾よく送達できる、安定な溶液を調製することが可能であることを見出した。こうした媒体は、プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネートおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルの1種または複数とを含む。
【0032】
本発明で使用するプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールのモノエステルまたはジエステルでもよく、以下の基本構造を有する。
【0033】
【化1】

【0034】
モノエステルの場合、R1およびR2の一方は水素であり、他方は脂肪酸部分である。ジエステルの場合、R1およびR2は、共に脂肪酸部分である。
【0035】
本発明で使用するプロピレングリコール脂肪酸エステルでは、R1および/またはR2が脂肪酸部分である場合、それらは各々個別に、主にC6〜C18の範囲にある炭素鎖長を有する。言い換えれば、R1および/またはR2が脂肪酸部分である場合、プロピレングリコール脂肪酸エステルは、通常、鎖長が異なる(主にR1および/またはR2= C6〜C18脂肪酸部分であるような)エステルの混合物である。
【0036】
単一のプロピレングリコール脂肪酸エステルを使用してもよい。あるいは、2種以上のプロピレングリコール脂肪酸エステルの混合物を使用してもよい。
【0037】
本発明で使用する特に好ましいプロピレングリコール脂肪酸エステルは、中鎖脂肪酸、主にカプリル酸(C8)のモノエステルである。
【0038】
「主に」とは、プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸含量の少なくとも80%が、指定した種類であることを意味する。
【0039】
主にカプリル酸のモノエステルを含むプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールモノカプリレートと表現し得る。プロピレングリコールモノカプリレートの供給業者には、商品名がCapmul (登録商標) PG8のAbitec Inc. (Columbus, Ohio USA)ならびに商品名がCapryol (商標) 90およびCapryol (商標) PGMCのGattefosse (Saint Priest, France)が挙げられる。
【0040】
本発明のプロピレングリコール媒体は、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒を含み得る。任意の組合せを使用してもよく、例えば、これらの化合物を各々単一の媒体中に使用してもよい。単一のプロピレングリコール脂肪酸エステルを使用してもよく、あるいはプロピレングリコール脂肪酸エステルの混合物を単独で、またはN-メチルピロリドンおよび/またはプロピレンカーボネートと組み合わせて使用してもよい。
【0041】
該プロピレングリコール媒体は、通常、約10〜約98%v/vのプロピレングリコール、または好ましくは約15〜約95%v/vのプロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒を含み、それは、単独または組み合わせて、通常、媒体の約2〜約90%v/v、または好ましくは約5〜約85%v/vを含む。
【0042】
本発明で使用する特に好ましい組合せは、プロピレンカーボネートおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル、例えば、プロピレンカーボネートおよびプロピレングリコールモノカプリレートである。驚くべきことに、プロピレンカーボネートおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルのプロピレングリコールとの使用は、この2種の追加溶媒を含む混合物中での薬物化合物の溶解度が、それらの一方または他方を含む溶媒中での溶解度より大きいため、共溶媒効果を有することが判明した。
【0043】
好ましい媒体組成物(%v/v)の例は、Table 1(表1)に示されている。そのパーセントは、最終媒体における理論的な体積量を表し、個々の構成要素を混合した際の、即ち混合物が理想溶液として挙動しない場合の非相加的体積変化を全く考慮していない。例えば、50%v/vのプロピレングリコールおよび50%v/vのプロピレンカーボネートを含むと表現した媒体は、各溶媒10mlを一緒に混合することにより(最終体積は、必ずしも20mlとは限らないが)、調製し得る。媒体の組成は、%w/wの用語でも表現し得る。例えば、10mlのプロピレングリコールおよび10mlのプロピレンカーボネートは、室温でそれぞれ約10.37gおよび12.00gの重量がある。そのため、この混合物の最終組成は、46%w/wのプロピレングリコールおよび54%w/wのプロピレンカーボネートになろう。
【0044】
更なる例として、50%w/wのプロピレングリコールおよび50%w/wのN-メチルピロリドンを含む媒体は、薬物化合物10%w/wを含有する溶液を調製するために使用し得る。最終的な薬物溶液は、10%w/wの薬物、45%w/wのプロピレングリコールおよび45%w/wのN-メチルピロリドンを含有することになろう。
【0045】
【表1】

【0046】
このTable (表1)(およびTable 2 (表2))におけるプロピレングリコール脂肪酸エステルの量は、2種以上のプロピレングリコール脂肪酸エステルのより少ない量で構成し得る、その構成要素の総量である。
【0047】
媒体中に薬物を溶解することにより生成する最終組成物の薬物含量は、患者に送達する必要がある用量(即ち、治療効果を示すのに必要な量)に主に依存するが、好ましくは約0.1〜約2000mg/ml、より好ましくは約0.5〜1500mg/ml、最も好ましくは約1〜約1000mg/mlである。
【0048】
薬物以外に、他の成分も非水性媒体に添加してもよい。こうした追加成分は、抗酸化剤、キレート剤、防腐剤、香味剤、甘味剤、または医薬液体製剤に一般に使用される他の作用剤を包含しており、当業者に周知されている。本発明に関しては、こうした追加成分は、媒体の一部とは見なされない。
【0049】
薬物がベンゾジアゼピンである場合、該組成物は、好ましくは約0.1〜300mg/ml、より好ましくは約0.5〜250mg/ml、最も好ましくは約1〜約200mg/mlのベンゾジアゼピンを含む。例えば、好ましいミダゾラム濃度は約1〜約100mg/mlであり、好ましいクロナゼパム濃度は約0.5〜約30mg/mlであり、好ましいロラゼパム濃度は約0.5〜約50mg/mlである。
【0050】
特に好ましいベンゾジアゼピン化合物は、ジアゼパムである。ジアゼパムの濃度は、好ましくは約1〜約200mg/ml、より好ましくは約2〜約180mg/ml、最も好ましくは約5〜約160mg/ml、例えば約10〜約150mg/ml、または約20もしくは約50から約150mg/mlである。
【0051】
更なる好ましい鼻内送達用媒体の組成物が、下記のTable 2 (表2)に示されている。こうした鼻内送達用媒体は、例えば、薬物がベンゾジアゼピン(例えば、ジアゼパム)である場合に使用し得る。しかし、疑念を避けるために、本発明の送達用媒体は、Table 1 (表1)および/またはTable 2 (表2)に示した組成物の好ましい、より好ましい、および最も好ましい値の組合せで表現される組成を有し得ると理解されたい。
【0052】
【表2】

【0053】
本発明で使用する特に好ましい媒体は、プロピレングリコール、プロピレンカーボネートおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルの1:1:1(体積による)混合物である。この媒体は、ベンゾジアゼピン薬物との使用に特に適しているが、他の薬物とも使用し得る。本発明の好ましい一組成物は、この媒体および濃度が80〜120mg/mlのジアゼパムを含む。他の好ましい媒体は、プロピレングリコールとプロピレンカーボネートとの3:1(体積による)混合物、およびDMSOとプロピレングリコールとの4:1(体積による)混合物である。本発明の他の好ましい組成物は、これらの媒体の1種と、ベンゾジアゼピン、例えばジアゼパムを80〜120mg/mlの濃度で含むが、これらの媒体は、他の薬物とも使用し得る。
【0054】
1つの好ましいジアゼパム組成物は、約50〜約80体積%のプロピレングリコールおよび約20〜約50体積%のプロピレンカーボネートを含む媒体に溶解した、ジアゼパムを約10〜約80mg/ml含む。
【0055】
第2の好ましいジアゼパム組成物は、約30〜約35体積%のプロピレングリコール、約30〜約35体積%のプロピレンカーボネートおよび約30〜約35体積%のプロピレングリコールモノカプリレートを含む媒体に溶解した、ジアゼパムを約10〜約100mg/ml含む。
【0056】
別の態様では、本発明は、鼻腔内薬物送達用の非水性媒体として、高濃度のN-メチルピロリドンの使用を提供する。高濃度とは、薬物を溶解している媒体のN-メチルピロリドン含量が、約40〜100体積%、より好ましくは約45〜100体積%、最も好ましくは約50〜100体積%であることを意味する。残りの媒体は、他の医薬として許容される溶媒を(単独または組合せで)含むことになろう。こうした媒体は、「N-メチルピロリドン媒体」と以後呼称する。
【0057】
N-メチルピロリドンと併用し得る医薬として許容される溶媒の例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(5版、Pharmaceutical Press, London and American Pharmacists Association, Washington, 2006年)などの参考書に見出すことができ、その例には、それだけに限らないが、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、エタノール、グリセロール、グリコフロールおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。こうした溶媒は、非水性媒体を作製するために、個別にまたは混合物/組合せ中で、N-メチルピロリドンと共に使用し得る。この非水性媒体は、N-メチルピロリドン以外の医薬として許容されるその溶媒または各溶媒を、体積で0〜60%、好ましくは0〜55%または0〜50%含むが、但し、非N-メチルピロリドン溶媒の総量は、媒体の全体積の60%、好ましくは55%または50%を超えない。該媒体は、N-メチルピロリドンおよび場合により上記の非水性溶媒から本質的になる、またはそれらからなることもある。しかし、適切な組成物は、他の成分を全く添加せずに、薬物およびN-メチルピロリドンだけを含み得る。
【0058】
この液媒体の使用については、ベンゾジアゼピン薬物との組合せでの使用に関して下記で考察する。しかし、これは例示に過ぎず、この媒体は、先に本文で列挙したような他の薬物とも使用し得る。
【0059】
特定の態様では、本発明は、N-メチルピロリドン媒体と、先に本明細書で列挙したもの、例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパムまたはミダゾラムなどのベンゾジアゼピンとを含む、鼻腔内送達に適した組成物を提供する。
【0060】
N-メチルピロリドン媒体を含む組成物は、薬物をその媒体に溶解することにより調製し得る。N-メチルピロリドン媒体を含む組成物は、好ましくは約0.1〜約2000mg/ml、より好ましくは約0.5〜約1500mg/ml、最も好ましくは約1〜約1000mg/mlの薬物を含む。
【0061】
薬物がベンゾジアゼピンである場合、N-メチルピロリドン媒体を含む組成物は、好ましくは約0.1〜約1000mg/ml、より好ましくは約0.5〜約800mg/ml、最も好ましくは約1〜約600mg/mlの薬物を含む。例えば、好ましいミダゾラム濃度は約1〜約400mg/mlであり、好ましいクロナゼパム濃度は約0.5〜約100mg/mlであり、好ましいロラゼパム濃度は約0.5〜約200mg/mlである。
【0062】
薬物以外に、他の成分も該非水性媒体に添加してもよい。こうした追加成分は、抗酸化剤、キレート剤、防腐剤、香味剤、甘味剤、または医薬液体製剤に一般に使用される他の作用剤を包含しており、当業者に周知されている。本発明に関しては、こうした追加成分は、媒体の一部とは見なされない。
【0063】
別の態様では、本発明は、鼻腔内薬物送達用の非水性媒体として、高濃度のジメチルスルホキシド(DMSO)の使用を提供する。ジメチルスルホキシドは、注射および局所製剤において確立された医薬用途を有する。該媒体は、ジメチルスルホキシドだけを含んでもよい。しかし、高濃度のジメチルスルホキシドの使用に対する潜在的制約の1つは、その比較的高い融点(18.3℃)であり、そのことは、室温(通常15〜25℃)の医薬組成物が半固形になり得ることを意味する。本発明者らは、ジメチルスルホキシドおよび他のある種の非水性液体の混合物が、高濃度の薬物の溶解に適しており、その混合物が室温で液体のままであることを確証した。
【0064】
高濃度とは、薬物を溶解している媒体のジメチルスルホキシド含量が、約40〜100体積%、より好ましくは約45〜95%、最も好ましくは約50〜90%であることを意味する。該媒体は、体積で、好ましくは90%までのDMSO、より好ましくは85%までのDMSO、最も好ましくは80%までのDMSOを含有する。残りの媒体は、他の医薬として許容される溶媒を(単独または組合せで)含むことになろう。こうした媒体は、「ジメチルスルホキシド媒体」と以後呼称する。
【0065】
ジメチルスルホキシドと併用し得る医薬として許容される溶媒の例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(5版、Pharmaceutical Press, London and American Pharmacists Association, Washington, 2006年)などの参考書に見出すことができ、その例には、それだけに限らないが、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、エタノール、グリセロール、グリコフロールおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。こうした溶媒は、本発明のジメチルスルホキシド媒体を得るために、単独または混合物中で、ジメチルスルホキシドと共に使用し得る。このような媒体は、DMSO以外の医薬として許容されるその溶媒または各溶媒を、体積で0〜60%、好ましくは5〜55%または10〜50%含むが、但し、非DMSO溶媒の総量は、媒体の全体積の60%、好ましくは55%または50%を超えない。該媒体は、DMSOおよび場合により上記非水性溶媒の1種または複数から本質的になる、またはそれらからなることもある。ジメチルスルホキシドと組み合わせる好ましい溶媒は、プロピレングリコールである。
【0066】
この液媒体の使用については、ベンゾジアゼピン薬物との組合せでの使用に関して下記で考察する。しかし、これは例示に過ぎず、この媒体は、先に本文で列挙したような他の薬物とも使用し得る。
【0067】
特定の態様では、本発明は、ジメチルスルホキシド媒体と、先に本明細書で列挙したもの、例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパムまたはミダゾラムなどのベンゾジアゼピンとを含む、鼻腔内送達に適した組成物を提供する。
【0068】
ジメチルスルホキシド媒体を含む組成物は、薬物をその媒体に溶解することにより調製し得る。ジメチルスルホキシド媒体を含む組成物は、好ましくは約0.1〜約2000mg/ml、より好ましくは約0.5〜約1500mg/ml、最も好ましくは約1〜約1000mg/mlの薬物を含む。
【0069】
薬物がベンゾジアゼピンである場合、ジメチルスルホキシド媒体を含む組成物は、好ましくは約0.1〜約1000mg/ml、より好ましくは約0.5〜約800mg/ml、最も好ましくは約1〜約600mg/mlの薬物を含む。例えば、好ましいミダゾラム濃度は約1〜約400mg/mlであり、好ましいクロナゼパム濃度は約0.5〜約100mg/mlであり、好ましいロラゼパム濃度は約0.5〜約200mg/mlである。
【0070】
本発明の特に好ましい組成物は、N-メチルピロリドン媒体またはジメチルスルホキシド媒体とジアゼパムとを含む。この組成物では、ジアゼパムの濃度は、好ましくは約1〜約1000mg/ml、より好ましくは約5〜約800mg/ml、最も好ましくは約10または20から約600mg/ml、例えば約100mg/mlまで、例えば約50mg/mlである。
【0071】
好ましい媒体は、約60から約85または80体積%のDMSOと約15または20から約40体積%のプロピレングリコール、例えば、体積で約75%〜約85%のジメチルスルホキシドと体積で約15〜25%のプロピレングリコールとを含む。この媒体中に含める好ましい薬物は、濃度約100mg/mlまで、例えば約60mg/mlまで、例えば約50mg/mlのジアゼパムである。
【0072】
薬物以外に、他の成分も該非水性媒体に添加してもよい。こうした追加成分は、抗酸化剤、キレート剤、防腐剤、香味剤、甘味剤、または医薬液体製剤に一般に使用される他の作用剤を包含しており、当業者に周知されている。本発明に関しては、こうした追加成分は、媒体の一部とは見なされない。
【0073】
驚くべきことに、本発明のDMSO含有媒体は、水溶液で実現されるスプレー特性としばしば同等である、特に良好なスプレー特性と共に使用される組成物を提供することが判明した。
【0074】
本発明の組成物は、トリグリセリド、または有機酸、有機酸エステルもしくは有機酸エーテル(クエン酸またはそのエステルもしくはエーテルなど)を含まないことが好ましい。浸透化剤を含めることは、本発明の組成物には通常必要ない。したがって、好ましい態様では、本発明の組成物は、米国出願公開第2004/0077540号に記載されるようなペプチド透過性向上剤を含まない。
【0075】
本発明の別の態様では、非水性媒体は、メトキシポリエチレングリコールなどのアルコキシポリエチレングリコールを含まない、より具体的には、本発明の組成物は、メトキシポリエチレングリコールなどのアルコキシポリエチレングリコールを含まないことが好ましい。
【0076】
本発明の別の態様では、非水性媒体は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはテトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテルなどのエチルエーテル溶媒を含まない、より具体的には、本発明の組成物は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはテトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテルなどのエチルエーテル溶媒を含まないことが好ましい。
【0077】
本発明の組成物は、コーン・プレート型粘度計などの装置で測定した粘度が、好ましくは約100cP(mPas)未満、より好ましくは60cP未満、最も好ましくは30cP未満である。
【0078】
本出願に記載の薬物製剤を作製できる異なる方法が、幾つもある。例えば、一方法では、先ず、体積または重量で所要量の媒体構成要素を一緒に混合することにより、非水性媒体を調製する。次いで、所要量の薬物および安定剤または香味剤などの他の任意の成分を適切な容器中に秤り取り、該媒体の一部(例えば、最終量の90%)を添加し、薬物が溶解するまで、その混合物を撹拌することができる。次いで、薬物を更に非水性媒体に添加することにより、所要の重量または体積に合わせて薬物溶液を作製する。別の方法では、薬物(および適当であれば他の任意の成分)を適切な容器中に秤り取り、正確な重量の各溶媒を添加する。次いで、その混合物を薬物が溶解するまで撹拌する。これらの方法のいずれかに従って、必要であれば最終溶液をろ過してもよい。
【0079】
本発明の媒体および薬物を含む溶液は、適切な任意の形態、例えば液滴形態で、またはスプレーとして鼻腔に投与してもよい。好ましい投与法は、例えばスプレー器具を用いたスプレーとしてである。スプレー器具は、例えばボトル、ポンプおよび作動装置を備えた、単回(「単位」)用量または多回用量のシステムでもよく、Pfeiffer (ドイツ)、Valois (フランス)、Rexam(フランス)およびBecton-Dickinson (米国)を含めた様々な商業的供給元から入手できる。
【0080】
本発明は、本発明の組成物を装填した、鼻内薬物送達器具、または鼻内送達器具で使用する用量カートリッジを提供する。
【0081】
上記した種類の鼻内送達器具は、1回の作動で0.04〜0.25mlの間で通常分与する。
【0082】
典型的な鼻内投与計画は、一方の鼻孔中に単回スプレーから、各鼻孔中に2回スプレーの範囲である。
【0083】
本発明の組成物を用いて治療用量の薬物を送達するために、一方または両方の鼻孔を用いて鼻腔内に送達される溶液の総液体積は、好ましくは約0.005〜約1.0ml、より好ましくは約0.01〜約0.8ml、最も好ましくは約0.02〜約0.6ml、例えば約0.1〜約0.4mlである。
【0084】
本発明は、薬物を必要とする患者にその薬物を鼻腔内送達する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体の使用を提供する。
【0085】
本発明は、薬物を必要とする患者にその薬物を鼻内送達する際に使用する組成物であって、上記したような本発明の媒体とその薬物とを含む組成物を提供する。
【0086】
本発明は、本発明の組成物を調製する方法を提供する。こうした方法は、上記した通りである。
【0087】
上述したようなベンゾジアゼピンを含む本発明の組成物は、中枢神経系のある種の障害、状態または疾患の治療および/または予防に使用でき、特に、鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症および抗痙攣作用を起こすために、使用することができる。該組成物は、不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害および躁病の治療にも使用することができる。したがって、本発明は、ベンゾジアゼピン薬物化合物、特に上掲したような化合物を、それを必要とする患者に、例えば、上に明記した障害、状態または疾患の予防および/または治療のために、ならびに/あるいは上に明記した効果を引き出すために、投与する方法であって、本発明の組成物を鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0088】
本明細書で使用する場合、患者という用語は、人間および人間外動物の双方を指すために使用する。本発明は、人間、ならびに犬、馬、羊、牛、豚および他の大型哺乳類などの動物の治療における使用に特に適している。
【0089】
本発明は、その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体、および上掲したような薬物などのベンゾジアゼピン薬物の使用も提供する。このような医薬は、中枢神経系の障害、状態または疾患の治療および/または予防、ならびに/あるいは鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症および抗痙攣作用の誘発、または不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害および躁病の治療を目的とし得る。
【0090】
本発明は、上記したような本発明の媒体、およびベンゾジアゼピン薬物化合物、ならびに上記に規定したような場合により追加される成分を含む、鼻内送達に使用する組成物であって、中枢神経系の障害、状態または疾患の治療、ならびに/あるいは鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症および抗痙攣作用の誘発、または不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害および躁病の治療を目的とした組成物も提供する。
【0091】
本発明の組成物は、上述したような制吐薬を含み得る。こうした組成物は、吐気および嘔吐の治療および/または予防に使用することができる。したがって、本発明は、制吐薬化合物、特に上掲したような化合物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、本発明の組成物を鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0092】
本発明は、その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体、および上掲したような薬物などの制吐薬の使用も提供する。このような医薬は、吐気および嘔吐の治療および/または予防に使用し得る。
【0093】
本発明は、上記したような本発明の媒体、および制吐薬化合物、ならびに上記に規定したような場合により追加される成分を含む、鼻内送達に使用する組成物も提供する。このような組成物は、吐気および嘔吐の治療および/または予防に使用し得る。
【0094】
本発明の組成物は、上述したような抗精神病薬を含み得る。こうした組成物は、統合失調症または躁病などの精神病の治療に使用することができる。したがって、本発明は、抗精神病薬化合物、特に上掲したような化合物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、本発明の組成物を鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0095】
本発明は、その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体、および上掲したような薬物などの抗精神病薬の使用も提供する。このような医薬は、統合失調症または躁病などの精神病の治療および/または予防に使用し得る。
【0096】
本発明は、上記したような本発明の媒体、および抗精神病薬化合物、ならびに上記に規定したような場合により追加される成分を含む、鼻内送達に使用する組成物も提供する。このような組成物は、統合失調症または躁病などの精神病の治療および/または予防に使用し得る。
【0097】
本発明の組成物は、上述したような抗片頭痛薬を含み得る。こうした組成物は、片頭痛の治療および/または予防に使用することができる。したがって、本発明は、抗片頭痛薬化合物、特に上掲したような化合物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、本発明の組成物を鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0098】
本発明は、その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体、および上掲したような薬物などの抗片頭痛薬の使用も提供する。このような医薬は、片頭痛の治療および/または予防に使用し得る。
【0099】
本発明は、上記したような本発明の媒体、および抗片頭痛薬化合物、ならびに上記に規定したような場合により追加される成分を含む、鼻内送達に使用する組成物も提供する。このような組成物は、片頭痛の治療および/または予防に使用し得る。
【0100】
本発明の組成物は、上述したような睡眠障害の治療薬を含み得る。こうした組成物は、睡眠障害の治療および/または予防に使用することができる。したがって、本発明は、睡眠障害の治療薬化合物、特に上掲したような化合物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、本発明の組成物を鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0101】
本発明は、その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体、および上掲したような薬物などの睡眠障害の治療薬の使用も提供する。このような医薬は、睡眠障害の治療および/または予防に使用し得る。
【0102】
本発明は、上記したような本発明の媒体、および睡眠障害の治療薬化合物、ならびに上記に規定したような場合により追加される成分を含む、鼻内送達に使用する組成物も提供する。このような組成物は、睡眠障害の治療および/または予防に使用し得る。
【0103】
本発明の組成物は、上述したような勃起不全の治療薬を含み得る。こうした組成物は、勃起不全の治療および/または予防に使用することができる。したがって、本発明は、勃起不全用の薬物化合物、特に上掲したような化合物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、本発明の組成物を鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0104】
本発明は、その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、上記したような本発明の媒体、および上掲したような薬物などの勃起不全の治療薬の使用も提供する。このような医薬は、勃起不全の治療および/または予防に使用し得る。
【0105】
本発明は、上記したような本発明の媒体、および勃起不全の治療薬化合物、ならびに上記に規定したような場合により追加される成分を含む、鼻内送達に使用する組成物も提供する。このような組成物は、勃起不全の治療および/または予防に使用し得る。
【0106】
本発明を以下の非限定的な実施例によって例示する。
【実施例1】
【0107】
プロピレングリコール/プロピレンカーボネート(3:1)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール(Sigma, Poole, UK)16.5mlおよびプロピレンカーボネート(Lyondell Chemical Co, USA)5.5mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム(Cambrex, Italy)1gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例2】
【0108】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(5:4:1)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール11ml、プロピレングリコールモノカプリレート(Capmul(登録商標)PG-8, Abitec, USA)8.8mlおよびプロピレンカーボネート2.2mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例3】
【0109】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(6:3:1)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール13.2ml、プロピレングリコールモノカプリレート6.6mlおよびプロピレンカーボネート2.2mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例4】
【0110】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(4.5:4.5:1)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール9.9ml、プロピレングリコールモノカプリレート9.9mlおよびプロピレンカーボネート2.2mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例5】
【0111】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/N-メチルピロリドン(5:3:2)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール11.0ml、プロピレングリコールモノカプリレート6.6mlおよびN-メチルピロリドン(Sigma)4.4mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例6】
【0112】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(6:2:2)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール9.9ml、プロピレングリコールモノカプリレート9.9mlおよびプロピレンカーボネート2.2mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例7】
【0113】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(5:3.5:1.5)中に75mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール11ml、プロピレングリコールモノカプリレート7.7mlおよびプロピレンカーボネート3.3mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1.5gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例8】
【0114】
プロピレングリコール/プロピレンカーボネート(1:1)中に75mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール11mlおよびプロピレンカーボネート11mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1.5gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例9】
【0115】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/ N-メチルピロリドン/プロピレンカーボネート(5:2:1:2)中に75mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール11ml、プロピレングリコールモノカプリレート4.4ml、プロピレンカーボネート4.4mlおよびN-メチルピロリドン2.2mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1.5gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例10】
【0116】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(1:1:1)中に125mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール7.33ml、プロピレングリコールモノカプリレート7.33mlおよびプロピレンカーボネート7.33mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム1.5gを20ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体18mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例11】
【0117】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(2:1:1)中に20mg/mlのミダゾラムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール4ml、プロピレングリコールモノカプリレート2mlおよびプロピレンカーボネート2mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ミダゾラム100mg(Sifa, Ireland)を5ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体4mlを添加した。薬物が溶解するまで、フラスコ内容物を撹拌し、その溶液を非水性媒体で容量通りに作製した。
【実施例12】
【0118】
プロピレングリコール/プロピレングリコールモノカプリレート/プロピレンカーボネート(3:1:1)中に10mg/mlのロラゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール3ml、プロピレングリコールモノカプリレート1mlおよびプロピレンカーボネート1mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ロラゼパム20mg(Sigma)を第2のガラスバイアル中に秤り取り、非水性媒体2mlを添加した。薬物が溶解するまで、バイアル内容物を撹拌した。
【実施例13】
【0119】
プロピレングリコール/ N-メチルピロリドン(1:1)中に10mg/mlのロラゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール3mlおよびN-メチルピロリドン3mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ロラゼパム20mg(Sigma)を第2のガラスバイアル中に秤り取り、非水性媒体2mlを添加した。薬物が溶解するまで、バイアル内容物を撹拌した。
【実施例14】
【0120】
N-メチルピロリドン中に200mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
ジアゼパム1gを容量フラスコ中に秤り取った。N-メチルピロリドンおよそ4mlを添加し、薬物が溶解するまでフラスコ内容物を撹拌した。次いで、フラスコ内容物をN-メチルピロリドンで容量通りに作製した。
【実施例15】
【0121】
プロピレングリコール/ジメチルスルホキシド(1:3)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール1.25mlおよびジメチルスルホキシド3.75mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム100mgを2ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体1.5mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例16】
【0122】
プロピレングリコール/ジメチルスルホキシド(1:4)中に50mg/mlのジアゼパムを含有する溶液
非水性媒体を、プロピレングリコール1mlおよびジメチルスルホキシド4mlをガラスバイアル中で一緒に混合することにより、調製した。ジアゼパム100mgを2ml容量フラスコ中に秤り取り、非水性媒体1.5mlを添加した。フラスコ内容物は、電磁撹拌器および撹拌子を用いて混合した。薬物が溶解し終えたら、撹拌子を取り除き、フラスコ内容物を、非水性媒体を用いて容量通りに作製した。
【実施例17】
【0123】
ジアゼパム5mgを送達する単回用量鼻内スプレー
実施例1において調製した溶液を、Pfeiffer (Radolfzell, Germany)単位用量スプレー器具のガラスバイアル中に入れた。バイアルをエラストマー密栓で密封し、バイアルホルダー中に配置し、バイアルホルダーをスプレー器具の作動部品上に嵌め込んだ。作動時に、器具は、ジアゼパム5mgを含有するスプレー液柱状の液体0.1mlを供給した。
【実施例18】
【0124】
ジアゼパム5mgを送達する多回用量鼻内スプレー
実施例1において調製した溶液1.5mlを、5mlのガラスバイアル(Adelphi, UK)中に入れた。Pfeiffer鼻内スプレーポンプ(スプレー容量0.1ml)をバイアル上に嵌めた。4回作動させることにより、スプレーポンプに呼び水液を入れた。呼び水済みポンプは、作動するごとにジアゼパム5mgを含有するスプレー液柱状の液体0.1mlを供給した。
【実施例19】
【0125】
ジアゼパム10mgを送達する鼻内スプレー
鼻内アトマイザーを嵌め付けた0.5ml予備充填シリンジを備える、Accuspray鼻内薬物送達システム(BD, Grenoble, France)中に、実施例1における溶液0.24mlを充填した。0.1ml用量分割クリップをAccusprayシステムのプランジャーアームに取り付けた。作動時に、その用量分割具により、液体0.1mlをジアゼパム5mg相当のスプレーの形態で分配することができた。用量分割クリップを取り外すと、残りの薬物溶液(過剰分0.04mlは除外)を送達した(ジアゼパムを更に5mg)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物の鼻腔内送達用組成物であって、
(i)薬物、ならびに
(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル(複数可)から選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ(ii)非水性媒体
を含む組成物。
【請求項2】
前記薬物が、20℃で1mg/ml以下の水中溶解度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬物がベンゾジアゼピンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬物が、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマザペム、ブロマゼパム、フルニトラゼパムおよびトリアゾラム、ベンタゼパム、ブロチゾラム、クロチアゼパム、デロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エチゾラム、フルジアゼパム、ケトゾラム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ノルダゼパム、メキサゾラム、ニメタゼパム、ピナゼパムならびにテトラゼパムから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記薬物が、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパムまたはミダゾラムである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬物が、ナラトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、アルニチダン、アビトリプタンおよびアルモトリプタンから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記薬物が、メトクロプラミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、ドラセトロンおよびナビロンから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬物が、ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クロザピン、ロキサピン、ピモジド、ゾテピン、ケチアピン、フルペンチキソール、ズクロペンチキソールおよびセルチンドールから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
前記薬物が、ゾルピデム、ザレプロンおよびゾピクロンから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬物が、シルデナフィル、タダラフィルおよびバルデナフィルから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
前記追加溶媒が、少なくとも1種のプロピレングリコール脂肪酸エステルである、またはそれを含んでいる、媒体(a)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記または各プロピレングリコール脂肪酸エステルが、プロピレングリコールモノカプリレートである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記追加溶媒が、プロピレンカーボネートである、またはそれを含んでいる、媒体(a)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
約60〜約80体積%のDMSOおよび約20〜約40体積%のプロピレングリコールを含んでいる媒体(c)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよび少なくとも1種のプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を、薬物の鼻腔内送達用媒体として含む、非水性組成物の使用。
【請求項16】
前記薬物がベンゾジアゼピンである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記薬物が、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマザペム、ブロマゼパム、フルニトラゼパムおよびトリアゾラム、ベンタゼパム、ブロチゾラム、クロチアゼパム、デロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エチゾラム、フルジアゼパム、ケトゾラム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ノルダゼパム、メキサゾラム、ニメタゼパム、ピナゼパムならびにテトラゼパムから選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記薬物が、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパムまたはミダゾラムである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか一項に規定するような組成物を装填した、鼻内薬物送達器具、または鼻内薬物送達器具で使用する用量カートリッジ。
【請求項20】
その医薬を必要とする患者に鼻内投与する医薬の製造における、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよび少なくとも1種のプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む、非水性媒体の使用。
【請求項21】
前記薬物がベンゾジアゼピンである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記薬物が、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマザペム、ブロマゼパム、フルニトラゼパムおよびトリアゾラム、ベンタゼパム、ブロチゾラム、クロチアゼパム、デロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エチゾラム、フルジアゼパム、ケトゾラム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ノルダゼパム、メキサゾラム、ニメタゼパム、ピナゼパムならびにテトラゼパムから選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記薬物が、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパムまたはミダゾラムである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
中枢神経系の障害、状態または疾患の治療および/または予防のための医薬の製造における、ベンゾジアゼピン薬物と、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む非水性媒体との使用。
【請求項25】
鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症または抗痙攣作用を誘発する医薬の製造における、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害または躁病の治療および/または予防のための医薬の製造における、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
中枢神経系の障害、状態または疾患の治療および/または予防のための鼻腔内投与における使用に向けた、ベンゾジアゼピン薬物と、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ非水性媒体とを含む組成物。
【請求項28】
鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症または抗痙攣作用を誘発するための鼻腔内投与における使用に向けた、ベンゾジアゼピン薬物と、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ非水性媒体とを含む組成物。
【請求項29】
不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害または躁病の治療および/または予防のための鼻腔内投与における使用に向けた、ベンゾジアゼピン薬物と、(a)プロピレングリコールと、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の追加溶媒、(b)約40〜100体積%のN-メチルピロリドン、または(c)約40〜100体積%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ非水性媒体とを含む組成物。
【請求項30】
ベンゾジアゼピン薬物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、請求項1から5、11から14および27から29のいずれか一項に規定するような組成物を鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項31】
中枢神経系の障害、状態または疾患を治療および/または予防する方法であって、請求項1から5、11から14および27のいずれか一項に規定するような組成物を鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項32】
鎮静、催眠、不安減少、筋弛緩、前向性健忘症または抗痙攣作用を誘発する方法であって、請求項1から5、11から14および28のいずれか一項に規定するような組成物を鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項33】
不安、てんかん、不眠、アルコール依存、筋肉障害または躁病を治療または予防する方法であって、請求項1から5、11から14および29のいずれか一項に規定するような組成物を鼻腔内投与することを含む方法。

【公表番号】特表2010−537963(P2010−537963A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522446(P2010−522446)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002940
【国際公開番号】WO2009/027697
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(504312715)アルキメデス・デベロップメント・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】