説明

非水系顔料分散液の製造方法、これを用いたインク組成物、画像形成方法および記録物

【課題】生産性が良好で分散性に優れた顔料分散液の製造方法、及び前記製造方法で製造された顔料分散液を用いた、ろ過性、吐出性、ヘーズに優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも顔料と分散剤と重合性化合物を含む非水系顔料分散液の製造方法であって、直径0.01mm以上0.3mm未満のビーズを使用して微細分散する工程を有することを特徴とする非水系顔料分散液の製造方法、並びに、該非水系顔料分散液、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系顔料分散液の製造方法、インク組成物、並びに、これを用いた画像形成方法および記録物に関し、詳しくは、非水系顔料分散液の製造方法、及び前記分散液を用いた記録後の重合硬化が可能なインク組成物、並びに、これを用いた画像形成方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。なかでも、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の被記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
インクジェット方式の一つとして、活性エネルギー線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、印字後直ちに活性エネルギー線照射し、インク液滴を硬化させることで鮮鋭な画像を形成することができる。
このような硬化性インク組成物は、発色性に優れた高精細画像を形成するため、高い着色剤、特に顔料の分散性とその経時的な安定性が求められる。インク組成物に鮮明な色調と高い着色力を付与するためには、着色剤の微細化が必須である。特に、インクジェット記録用に用いられるインクでは、吐出されるインク液滴が画像の鮮鋭度に大きな影響を与えるため、吐出液滴も少量となり、且つ、該インクより形成されるインク硬化膜の膜厚よりも微細な粒子を用いることが必須となる。このように、高い着色力を得るために顔料粒子をより微細化していくと、微粒子の分散が困難になり、凝集体が発生しやすくなる。また、分散剤の添加により組成物の粘度が上昇するといった問題も生じる。着色剤凝集体の発生やインク組成物の粘度上昇はいずれもインク吐出性に悪影響を与え、インク組成物への使用は好ましくない。
【0004】
また、インク組成物をインクジェット記録用として用いる場合には、インク組成物はカートリッジ内に収納され、吐出時には加熱され、非吐出時、保存時には降温するため、加熱−冷却の繰り返し温度変化を受けるが、この温度変化もまた、着色剤分散性に悪影響を与え、経時的に着色剤の分散性が低下し、増粘、凝集などが生じやすくなるという問題もあった。
従って、充分な流動性を有し、かつ微細化された着色剤を安定に分散させ、さらに、着色剤分散の経時安定性に優れるインク組成物が求められている。安定な着色剤分散液を得るための分散剤については、種々の提案がなされている。
例えば、顔料と分散剤と水系媒体中で混合した顔料分散混合液を、直径0.02〜0.2mmのマイクロビーズを使用して超微細分散する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、水系での分散であるため水系インクにしか使えず、適用できる記録媒体が紙などの浸透媒体に限られ、産業用インクとしては不十分であった。
【0005】
また、色素(顔料)と重合可能なモノマーとを含む光硬化型IJインクが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、顔料分散液の顔料粒径が大きく、顔料分散液のろ過性及び経時安定性が悪く、印字物のヘーズが高く、また生産性が低いという問題があった。
【特許文献1】特開2005−240027号公報
【特許文献2】特開平5−214280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生産性が良好で分散性に優れた顔料分散液の製造方法を提供することを目的とする。また、前記製造方法で製造された顔料分散液を用いた、ろ過性、吐出性、ヘーズに優れたインク組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、吐出性に優れた前記インク組成物を用いた画像形成方法、及び前記インク組成物を用いて画像形成されたヘーズが良好な記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0008】
<1>少なくとも顔料と分散剤と重合性化合物を含む非水系顔料分散液の製造方法であって、直径0.01mm以上0.3mm未満のビーズを使用して微細分散する工程を有することを特徴とする非水系顔料分散液の製造方法。
<2>前記ビーズを遠心力を用いて分離する工程を含むことを特徴とする上記<1>に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
<3>前記分散剤が下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基またはフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。nは0または1を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【0011】
<4>前記重合性化合物として単官能(メタ)アクリレート、及び二官能(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種含むことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
<5>前記重合性化合物としてオキセタン基含有化合物、及びオキシラン基含有化合物から選択される少なくとも1種含むことを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
【0012】
<6>上記<1>〜<5>に記載の製造方法により製造された非水系顔料分散液と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有することを特徴とするインク組成物。
<7>インクジェット記録に用いられることを特徴とする上記<6>に記載のインク組成物。
【0013】
<8>上記<6>又は<7>に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって画像を形成する画像形成工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
<9>上記<6>又は<7>に記載のインク組成物を用いて被記録材に画像を形成する画像形成工程と、前記被記録材に形成された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【0014】
<10>前記活性エネルギー線の照射光源として発光ダイオードを用いることを特徴とする上記<9>に記載の画像形成方法。
<11>前記活性エネルギー線の中心波長が365±20nmであることを特徴とする上記<9>又は<10>に記載の画像形成方法。
【0015】
<12>前記画像硬化工程により硬化した画像の厚みが2〜30μmであることを特徴とする上記<9>〜<11>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<13>上記<6>又は<7>に記載のインク組成物を用いて画像形成してなることを特徴とする記録物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生産性が良好な生産性が良好で分散性に優れた顔料分散液の製造方法を提供できる。また、前記製造方法で製造された顔料分散液を用いることにより、ろ過性、吐出性、ヘーズに優れたインク組成物を提供できる。
また、本発明によれば、吐出性に優れた前記インク組成物を用いた画像形成方法、及び前記インク組成物を用いて画像形成されたヘーズが良好な記録物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の非水系顔料分散液の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、少なくとも顔料と分散剤と重合性化合物を含み、直径0.01mm以上0.3mm未満のビーズを使用して微細分散する工程を有することを特徴とする。
顔料分散液の製造方法において、非水系で、前記の範囲のビーズを用いて微細分散することにより、生産性が良好で分散性に優れた非水系顔料分散液を得ることができる。
【0018】
以下、本発明の非水系顔料分散液の製造方法、及び非水系顔料分散液の構成成分について詳細に説明する。
【0019】
(非水系顔料分散液の製造方法)
本発明の製造方法における非水系顔料分散液は、少なくとも顔料と分散剤と重合性化合物を含有し、非水系で分散された分散液であることを特徴とする。必要に応じてその他の添加剤を添加することができる。
ここで、本願明細書において、非水系とは実質的に水分を含まない系をいい、実質的に水分を含まないとは、水分含有%が2.0%以下である系をいうものとする。
【0020】
本発明の製造方法は、少なくとも顔料、分散剤、重合性化合物の3剤をビーズ(分散メディア)用いて微細に分散する工程を有する。
前記ビーズを用いて分散する分散機としては、ウルトラビスコミル、アジテータミル、スーパーアペックスミル、ウルトラアペックスミル、ダイノーミル、ファインミル、アニュラーギャップ型ミル等が挙げられ、好適に用いることができる。
ビーズ分離方式には遠心分離方式、スクリーン方式、スリット方式があるが、0.1mm以下のビーズを使用する際は、遠心分離方式が好ましい。
上記の分散機の中でも、ビーズ遠心分離方式を採用するビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM、寿工業(株))等が好ましい。
前記ビーズミルは、ビーズの詰まり、噛み込みの観点から、遠心力を用いた分離方式で前記分散液と前記ビーズを分離する機構を有することが好ましい。
【0021】
本発明の非水系顔料分散液の製造方法について、前記遠心力を用いた分離方式を採用するビーズミル分散機(ウルトラアペックスミル UAM、寿工業(株)製)を例に詳細に説明する。
図1は、遠心力を用いた分離方式を採用するビーズミル分散機(ウルトラアペックスミル UAM)の概略図である。
該ビーズミル分散機10は、その内部に、回転するセントリセパレータ1、ローターピン2、該セントリセパレータ1を回転するためのモーター(図示なし)に接続したベルト7、原料入り口3、製品出口4が設けられている。また、図1は、機内にビーズ8及び原料スラリー9が既に投入されている状態を示す。
以下、図1を用いて、顔料等を含む液のフローに基づいて微細分散する機構について説明する。
【0022】
まず、機内に充填した微小ビーズ4をローターピン1により攪拌しながら、原料スラリー9(別途予備分散された前記顔料、分散剤、及び重合性化合物を含む原料混合液)を分散機下部の原料入り口3より投入する。
原料スラリー9は機内で激しく運動しているビーズ8との接触により分散され、分散機10の上部に到達したところで、製品スラリー9とビーズ8はセントリセパレータ1により分離され、ビーズ8は機内に留まり、製品スラリー9のみが中空軸を経由して、機外に排出される。
ビーズ8と原料スラリー9がセントリセパレーター1に入ったとき、遠心力により比重の大きなビーズ8は外周へ、また比重の小さな原料スラリー9は中心方向に移動して前記中空軸内に入っていく。即ち、ビーズミル10上部に達したビーズ8と原料スラリー9はセントリセパレーター1により遠心分離され、製品スラリー9のみが製品スラリー出口4から排出される。
【0023】
分散メディア(ビーズ)としては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアシリケートビーズ、ジルコニアビーズ、などを挙げることができ、中でも、ジルコニアビーズが不純物の混入防止の観点からの点から好ましい。
前記分散メディア(ビーズ)の直径(平均)は、得られる分散液のろ過性及び経時安定性のため、0.01mm以上0.3mm未満とする必要があり、0.02mm〜0.1mmがより好ましく、0.03mm〜0.05mmが特に好ましい。
前記ビーズの直径(平均)は、0.01mm以上0.3mm未満とする必要があるが、0.01mm未満ではビーズの分離ができないため、また0.3mm以上であると所望の顔料の粒径を達成することができないためである。
ビーズの直径(平均)を前記0.02mm〜0.1mmとすることにより、顔料分散液のろ過時間がさらに短縮でき、よってその生産性は向上する点で好ましい。
前記ビーズの粒径(ビーズ径)は、ノギスを用いてビーズ100個の粒径を測定し、その平均値を算出したものである。
ビーズ分散機へのビーズの充填率は、特に限定されないが、40〜90%が一般的であり、分散液の粘度及び粒径の観点から、60〜80%が好ましい。
分散時間としては、周速3〜40m/sで10〜1440分間が一般的であり、分散液の粘度及び粒径の観点から周速5〜20m/sで30〜720分間が好ましく、周速9〜13m/sで60〜240分間が特に好ましい。
分散時の液温としては、特に限定されるものではないが、分散液粘度の観点から20〜60℃が好ましく、28〜50℃がより好ましく、34〜42℃が特に好ましい。
前記微細分散前に前記3剤は予備混合することがその後の微細分散を効率的に進めるために好ましい。
【0024】
上記のようにして微細分散された微細分散液中の平均粒径は、印刷物の透明性及び耐光性の観点から、50〜90nmが好ましく、55〜85nmがより好ましく、60〜80nmが特に好ましい。
50nmより小さいと耐光性不足となる場合があり、90nmより大きいと透明性が不十分で、十分なフルカラー画質が得られないとなる場合があり好ましくない。
得られた顔料分散液の顔料粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて顔料粒子100個の長軸径を測定し、その個数平均値を算出することができ、本発明においてはこれを採用する。
【0025】
(顔料)
先ず、本発明における好ましく使用される顔料について述べる。
前記顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料および無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0026】
本発明において使用できる有機顔料および無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとしては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー93,C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0027】
赤またはマゼンタ色を呈するものとしては、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0028】
青またはシアン色を呈する顔料としては、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0029】
緑色を呈する顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0030】
黒色を呈する顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0031】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0032】
顔料粒子の体積平均粒径(一次粒径)は、0.03〜0.12μmであることが好ましく、0.04〜0.09μmであることがより好ましく、特に0.05〜0.08μmがであることが特に好ましい。
この粒径管理によって、顔料分散液の調製において、効率的に製造することができる。また、該顔料分散液をインク組成物に用いた場合に、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0033】
前記顔料は顔料分散液中、顔料分散液の全質量に対して10〜40質量%添加されることが顔料分散液の粘度の観点から好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
【0034】
(分散剤)
本発明における分散剤は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。前記特定の繰り返し構造単位を有する高分子化合物とすることで、顔料と高分子鎖の間での立体反発効果により分散安定化が可能である。
【0035】
【化2】

【0036】
一般式(1)中、Jは、−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基またはフェニレン基を表し、これらの内、Jとしては−COO−、−CONH−、フェニレン基が好ましい。R1は水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基など)、アリール基(例えばフェニル基)を表し、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0037】
Wは、単結合又は2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基もしくはアリーレン基、また、これらの基もしくはこれらの基の組み合わせと、−NR2−、−NR23−、−COO−、−OCO−、−O−、−SO2NH−、−NHSO2−、−NHCOO−もしくは−OCONH−との組み合わせ等が挙げられ、これらは置換基を有してもよい。
前記Wで表されるアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、プロピレン基等は特に好ましい。
前記Wで表されるアラルキレン基としては、炭素数7〜13のアラルキレン基が好ましく、例えば、ベンジリデン基、シンナミリデン基等が挙げられる。
前記Wで表されるアリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基は特に好ましい。
前記R2,R3は、それぞれ独立に水素又はアルキル基を表し、水素、メチル基、エチル基、プロピル基等が好適に挙げられる。
前記Wで表される連結基の中でも、単結合、アルキレン基が特に好ましく、メチレン基、エチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基が特に好ましい。
nは0または1を表し、0が好ましい。
【0038】
一般式(1)中、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表し、該有機顔料としては、前述の有機顔料が挙げられる。該複素環残基としては前記有機顔料の複素環残基と同様である。
さらに、これらの複素環残基は使用する顔料に類似する複素環残基であることが特に好ましい。具体的には、キナクリドン系顔料に対してはアクリドン、アントラキノン等が本発明においては特に好適に用いられる。
【0039】
前記一般式(1)で表される単位として好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限るものではない。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
本発明に係る分散剤は、さらに末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーを共重合単位として含むグラフト共重合体であることが特に好ましい。
このような末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、所定の分子量を有する化合物であることからマクロモノマーとも呼ばれる。
【0043】
本発明における重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基の部分からなる。このようなエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望のグラフト重合体を得るという観点から好ましい。
エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、このマクロモノマーは、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1000〜10000の範囲にあることが好ましく、特に、2000〜9000の範囲が好ましい。
上記ポリマー鎖の部分は、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル及びブタジエン、からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体あるいは共重合体、あるいはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカプロラクトンであることが一般的である。
【0044】
上記重合性オリゴマーは、下記一般式(2)で表されるオリゴマーであることが好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
一般式(2)は、R11及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。
12は、炭素原子数1〜12のアルキレン基(好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、置換基(例えば水酸基)を有していても良く、さらにエステル結合、エーテル結合、アミド結合等がアルキレン鎖中に含まれていてもよい)を表す。
Yは、フェニル基、又は−COOR14を表す。フェニル基は置換されていてもよく、置換基としては炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル、エチル)などが挙げられる。R14は、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル、エチル、ベンジル)、またはフェニル基を表わす。Yは、中でも無置換のフェニル基、又はR14が炭素原子数1〜4のアルキル基である−COOR14が好ましい。
qは、20〜200を表し、好ましくは25〜150であり、30〜100が特に好ましい。
【0047】
上記重合性オリゴマー(マクロモノマー)の好ましい例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、及びポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。市場で入手できるこのような重合性オリゴマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0048】
上記重合性オリゴマーは、前記一般式(2)で表される重合性オリゴマーだけでなく、下記一般式(3)で表される重合性オリゴマーであることも好ましく、これらは使用する重合性化合物に応じて適宜選択することが特に好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
前記一般式(3)中、R21は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。X21は−OR23または−OCOR24を表す。ここでR23、R24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。nは2〜200を表す。
【0051】
前記一般式(3)において、R21は、水素原子またはメチル基を表し、メチル基が好ましい。
22は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。
21は、−OR23又は−OCOR24を表す。ここで、R23は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。R24は、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。また、nは、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0052】
前記一般式(3)で表される重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0053】
本発明に係る一般式(3)で表される重合性モノマーは前記したように市販品としても入手可能であり、市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0054】
本発明に用いられる分散剤は、酸性顔料に対して塩基性基を持ったポリマーは酸塩基反応による相互作用を起こしやすくするため、さらに、窒素原子を有するモノマーとの共重合体であることが特に好ましい。
〔窒素原子含有モノマー〕
本発明における分散剤の好ましい重合成分である窒素原子含有基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては下記一般式(4)であらわされるモノマーが好ましい。
【0055】
【化7】

【0056】
前記一般式(4)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、X1は−N(R3)(R4)、−R5−N(R6)(R7)、または塩基性含窒素複素環基を表す。R3、R4、R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表し、R5は炭素原子数1〜12のアルキレン基を表す。m及びnはそれぞれ独立に1又は0である。
【0057】
一般式(4)におけるR2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が特に好ましい。X1は−N(R3)(R4)、−R5−N(R6)(R7)、または塩基性含窒素複素環基である。
3、R4は、R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。アルキル基としては炭素原子数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。アリール基としては炭素数6〜12のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基が特に好ましい。
5は、炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、特に2〜3のアルキレン基が好ましい。
1の塩基性含窒素複素環基としては、ピリジル基(特に1−ピリジル基、2−ピリジル基)、ピペリジノ基(1−ピペリジノ基)、ピロリジル基(特に、2−ピロリジル基)、ピロリジノ基、イミダゾリノ基、又はモルホリノ基(4−モルホリノ基)であることが好ましく、ピリジル基、イミダゾリノ基が特に好ましい。
【0058】
前記一般式(4)で表されるモノマーは、さらに下記の一般式(4−2)〜(4−4)のいずれかで表される化合物であることが特に好ましい。
【0059】
【化8】

【0060】
但し、R21はR1と同義であり、R22はR2と同義であり、そしてX2はX1と同義である。
【0061】
【化9】

【0062】
但し、R31はR1と同義であり、そしてX3はX1と同義である{好ましくは、X3は−N(R33)(R34)(但し、R33及びR34は、それぞれに対応するR3及びR4と同義である)、あるいは−R35−N(R36)(R37)(但し、R35、R36及びR37は、それぞれに対応するR5、R6及びR7と同義である)である。}。
【0063】
【化10】

【0064】
但し、R41はR1と同義であり、そしてX4はピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基又はモルホリノ基を表わす。
【0065】
上記一般式(4)で表わされる化合物で、好ましい例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート(以上(メタ)アクリレート類);ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドおよびN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類);及び、ビニルピリジンを挙げることができる。
【0066】
本発明に用いられる分散剤は、さらにこれらと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であることも好ましい態様である。これらと共重合可能な他のモノマーの例として、不飽和カルボン酸(例、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸)、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなど)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1、3−ブタジエン及びイソプレン)を挙げることができる。これらの中で、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0067】
本発明の分散剤は、上記式(1)で表される単位と前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)から与えられる単位とからなる共重合体、あるいは上記式(1)で表される単位と前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)から与えられる単位とおよび窒素原子を有するモノマーから与えられる単位とからなる共重合体であることが特に好ましい。上記共重合体が、式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位の5〜50重量%(特に5〜30重量%)の範囲で有することが好ましい。さらに、前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)から与えられる単位を、全繰り返し単位の30〜80重量%(特に50〜80重量%)、窒素含有基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位の5〜80重量%(特に5〜50重量%)の範囲で有することが好ましい。
【0068】
さらにこれらと共重合可能な他のモノマーを使用する場合、このモノマーに由来する繰り返し単位を全繰り返し単位の5〜30重量%の範囲で有することが好ましい。上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1000〜200000の範囲が好ましく、特に10000〜100000の範囲が好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0069】
分散剤に好適に用いられる前記グラフト共重合体の例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
1) 上記例示化合物M−1を与えるモノマー/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:90質量比)共重合体
2) 上記例示化合物M−1を与えるモノマー/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(15:85質量比)共重合体
3) 上記例示化合物M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン(20:80質量比)共重合体
4) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:90質量比)共重合体
5) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(20:80質量比)共重合体
6) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン(25:75質量比)共重合体
7) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:20:70質量比)共重合体
8) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(15:25:60質量比)共重合体
9) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(8:22:50:20質量比)共重合体
10) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(8:42:50質量比)共重合体
【0070】
11) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/2−ビニルピリジン/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(20:30:50質量比)共重合体
12) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/p−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(7:43:50質量比)共重合体
13) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリn−ブチルメタクリレート(10:10:80質量比)共重合体
14) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/スチレン/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(15:15:70質量比)共重合体
15) 上記例示化合物M−4を与えるモノマー/N,N−ジメチルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(20:10:70質量比)(5:25:70質量比)共重合体
16) 上記例示化合物M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:40:50質量比)共重合体
17) 上記例示化合物M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(15:15:70質量比)共重合体
18) 上記例示化合物M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:20:70質量比)共重合体
19) 上記例示化合物M−13を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(25:25:50質量比)共重合体
20) 上記例示化合物M−13を与えるモノマー/4−ビニルピリジン/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(5:25:70質量比)共重合体
【0071】
21) 上記例示化合物M−13を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(10:30:60質量比)共重合体
22) 上記例示化合物M−14を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(15:25:60質量比)共重合体
【0072】
このようなグラフト重合体は、重合性オリゴマー、所望により併用される窒素原子含有基を有するモノマーや他のモノマーを、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。その際、一般に、ラジカル重合開始剤が使用されるが、開始剤に加えてさらに連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を添加して合成してもよい。
【0073】
顔料の分散を行う際に用いることができる分散剤については、上記分散剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の分散剤を添加することができる。
他の分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
【0074】
本発明の顔料分散液には、分散剤を1種のみ添加してもよく、2種以上を併用してもよい。顔料分散液中の分散剤の含有量は、顔料の添加量に対し、1〜100質量%が好ましく、2〜80質量%がより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましい。顔料の添加量に対し、分散剤の含有量を1〜100質量%添加することは、微細な顔料の分散性及びその安定性がより向上し、鮮明な色調と高い着色力も顕著に向上することから好ましい。
なお、前記他の分散剤の添加量としては、分散剤の50質量%以下であることが好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0075】
(重合性化合物)
本発明の顔料分散液は少なくとも重合性化合物を含有する。該重合性化合物が顔料などの諸成分の分散媒として機能することが好ましく、中でも最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物に用いた際のハンドリング性向上の観点から好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、分散媒を用いることができるが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。
【0076】
重合性化合物としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性もしくは架橋性材料を適用することができる。
少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、オキシラン系化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。
少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものである。
具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
【0077】
重合性化合物は、具体的には分子内にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)などの重合性基を有するものが好ましく、中でも、低エネルギーで硬化反応を生起させ得る点で、アクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0078】
前記多官能化合物としては、ビニル基含芳香族化合物、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである(メタ)アクリレート、2価以上のアミンと(メタ)アクリル酸とのアミドである(メタ)アクリルアミド、多塩基酸と2価アルコールとの結合で得られるエステル又はポリカプロラクトンに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステル(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイドと多価アルコールとの結合で得られるエーテルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入するか、あるいは2価以上のアルコールとエポシキ含有モノマーを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン結合を持つウレタンアクリレート、アミノ樹脂アクリレート、アクリル樹脂アクリレート、アルキッド樹脂アクリレート、スピラン樹脂アクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルと前記光重合性モノマーとの反応生成物、及びワックス類と前記重合性モノマーとの反応生成物などが挙げられる。
本発明における前記重合性化合物として単官能(メタ)アクリレート、及びニ官能(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種含むことが好ましい態様である。
【0079】
中でも、(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルと前記光重合性モノマーとの反応生成物が好ましく、アクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートが特に好ましい。
なお、本明細書中において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタアクリル酸の双方を取り得ることを示す。
【0080】
前記多官能化合物の具体例としては、ジビニルベンゼン、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,6−アクリロイルアミノヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、2塩基酸と2価アルコールとからなる分子量500〜30000のポリエステルの分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を持つポリエステルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノール(AあるいはS、F)骨格を有する分子量450〜30000のエポキシアクリレート、フェノールノボラック樹脂の骨格を含有する分子量600〜30000のエポキシアクリレート、分子量350〜30000の多価イソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリル酸モノマーとの反応物、分子内にウレタン結合を有するウレタン変性物などが挙げられる。
【0081】
また、単官能化合物として、(メタ)アクリレート、スチレン、アクリルアミド、ビニル基含有モノマー(ビニルエステル類、ビニルエーテル類、N−ビニルアミドなど)、(メタ)アクリル酸などを挙げることができ、(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ビニルエステル類、ビニルエーテル類が好ましく、(メタ)アクリレート、アクリルアミドが特に好ましい。
重合性化合物は、無置換でも置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミド基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0082】
前記単官能化合物の具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、アリルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、2−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチルアクリレート、エステルにポリブチルアクリレート部位を有するアクリレート、エステルにポリジメチルシロキサン部位を有するアクリレートなどが挙げられる。
【0083】
本発明の顔料分散液に用いられる重合性化合物として、前記カチオン重合性の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」ともいう。)、即ち、光重合開始剤から発生される活性種により重合反応を生起し、硬化する化合物として、カチオン重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、カチオン重合性化合物について説明する。
【0084】
前記カチオン重合性化合物としては、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されているビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、オキシラン化合物などが挙げられる。
【0085】
前記ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ−若しくはトリ−ビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
前記ビニルエーテル化合物としては、ジ−若しくはトリ−ビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0086】
−−オキセタン基含有/オキシラン基含有化合物−−
本発明の顔料分散液は、カチオン重合性化合物として特に、オキセタン基含有化合物及びオキシラン基含有化合物から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、少なくとも1種のオキセタン基含有化合物と、少なくとも1種のオキシラン基含有化合物と、を含むことが更に好ましい。
これらの化合物は、後述する光重合開始剤の作用によって活性エネルギー線の照射時に重合してそれ自体硬化し、しかも硬化反応を短時間で行ない得るため、作業効率の観点から特に効果的である。
【0087】
オキセタン基含有化合物(p)とオキシラン基含有化合物(q)とを併用する場合、その硬化性を効果的に向上させ得る点で、含有比(質量比)p/qを50/50〜95/5の範囲とすることが好ましく、67/33〜90/10の範囲とすることが特に好ましい。
【0088】
〈オキセタン基含有化合物〉
前記オキセタン基含有化合物は、分子内に少なくとも1つのオキセタン基(オキセタニル基)を含む化合物の中から適宜選択することができる。
例えば、分子中に1つのオキセタン基を有する化合物としては下記一般式(1−a)で表される化合物が好適であり、分子中に2つ以上のオキセタン基を有する化合物としては下記一般式(1−b)で表される化合物が好適である。
【0089】
【化11】

【0090】
まず、一般式(1−a)で表されるオキセタン基含有化合物を説明する。
前記一般式(1−a)において、Zは、酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子が好ましい。R1aは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、またはチエニル基を表し、炭素数1〜6個のアルキル基(特にメチル基、エチル基)が好ましい。
【0091】
2aは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6のアルケニル基(例えば、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等)、炭素数1〜6のアルキルカルボニル基(例えば、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチロキシカルボニル基等)、炭素数1〜6のアルコキシカルバモイル基(例えば、エトキシカルバモイル基、プロポキシカルバモイル基、ブチルペンチロキシカルバモイル基等)、等を表す。
【0092】
前記一般式(1−a)で表されるオキセタン基含有化合物のうち、R1aが低級アルキル基(特にエチル基)であって、R2aが水素原子、ブチル基、フェニル基、ベンジル基であって、Zが酸素原子である態様が特に好ましい。ここで、前記低級アルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基をいう(以下同様)。
なお、前記一般式(1−a)で表されるオキセタン基含有化合物は一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
【0093】
次に、一般式(1−b)で表されるオキセタン基含有化合物について説明する。
前記一般式(1−b)において、mは2、3または4を表し、Zは酸素原子または硫黄原子を表し、前記Zとしては酸素原子が好ましい。
【0094】
前記一般式(1−b)において、R1bは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、またはフリル基を表す。
【0095】
2bは、炭素数1〜12の線形若しくは分岐アルキレン基、線形若しくは分岐ポリ(アルキレンオキシ)基、または下記一般式(3)、(4)および(5)からなる群より選択される2価の基を表す。
【0096】
前記炭素数1〜12の線形若しくは分岐アルキレン基としては、下記一般式(2)で表される基が好ましい。下記一般式(2)中のR3は、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基等の低級アルキレン基を表す。
【0097】
【化12】

【0098】
【化13】

【0099】
前記一般式(3)において、nは、0または1〜2000の整数を表し、R4は炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)、または下記一般式(6)で表される基より選択される基を表す。R5は、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)を表し、好ましくはメチル基である。
【0100】
【化14】

【0101】
前記一般式(6)において、jは、0または1〜100の整数を表し、R6は炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)を表し、好ましくはメチル基である。
【0102】
【化15】

【0103】
前記一般式(4)において、R7は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、またはカルボキシル基を表す。
【0104】
【化16】

【0105】
前記一般式(5)において、R8は、酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH32、またはC(CF32を表す。
【0106】
前記一般式(1−b)で表されるオキセタン基含有化合物のうち、一般式(1−b)において、R1bが低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す態様が好ましく、特に好ましくはエチル基であって、R2bが、一般式(4)のR7が水素原子である基、ヘキサメチレン基、一般式(2)のR3がエチレン基、または一般式(3)のR5がメチル基でかつR4が一般式(6)のR6がメチル基である基であって、Zが酸素原子であって、mが2である態様が好ましい。
【0107】
更に、分子中に2個以上のオキセタン基を有する化合物としては、下記一般式(7)または(8)で表される化合物を挙げることができる。
【0108】
【化17】

【0109】
前記一般式(7)において、rは、25〜200の整数を表し、R9は炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基を表す。なお、一般式(7)および(8)中のR1および一般式(7)中のR6は各々、前記一般式(1−b)中のR1bおよび前記一般式(6)のR6と同義である。
【0110】
以下、前記一般式(1−a)または(1−b)で表されるオキセタン基含有化合物の好ましい具体例〔例示化合物1〜37並びに(a)〜(f)〕を列挙する。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0111】
【化18】

【0112】
【化19】

【0113】
【化20】

【0114】
【化21】

【0115】
前記のオキセタン基含有化合物の合成は、(1)H.A.J.Curless,”Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,New York(1984)、(2)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985) 、(3)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969) 、(4)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968) 、(5)”Heterocyclic Compounds with Three− and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964) 、(6)Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,1653(1988) 、(7)Pure Appl.Chem.,A29(10),915(1992)、(8)Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993) 、(9)特開平6−16804号公報、(10)ト゛イツ特許第1,021,858号、等を参照することができる。
なお、前記一般式(1−b)で表されるオキセタン基含有化合物もまた、一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
【0116】
前記のオキセタン基含有化合物のうち、例示化合物(a)、例示化合物(b)、例示化合物(d)、例示化合物(f)が好ましい。
【0117】
〈オキシラン基含有化合物〉
前記オキシラン基含有化合物は、分子内に、下記オキシラン環を有する少なくとも1つのオキシラン基(オキシラニル基)を含む化合物、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
【0118】
前記オキシラン基含有化合物の具体例としては、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。ここで、エポキシ樹脂とは、モノマー、オリゴマー、またはポリマーをいう。
【0119】
前記芳香族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、少なくとも1つの芳香族核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ−またはポリ−グリシジルエーテルが挙げられる。例えば、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂などである。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0120】
前記脂環族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、少なくとも1つのシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等である。
【0121】
前記脂肪族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル等が挙げられる。例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、または1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはトリ−グリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等である。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0122】
前記オキシラン基含有化合物としては、上述の化合物以外に、分子内に1つのオキシラン環を有するモノマーである脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加体のモノグリシジルエーテル等も挙げられる。
なお、前記オキシラン基含有化合物は、一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
【0123】
以下、前記オキシラン基含有化合物の好ましい具体例(例示化合物(i)〜(viii))を列挙する。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0124】
【化22】

【0125】
前記のオキシラン基含有化合物のうち、前記例示化合物(i)および例示化合物(v)が好ましい。
【0126】
本発明においては、前記のオキセタン基含有化合物とオキシラン基含有化合物との両方を組合せて併用した場合が好ましいが、その組合せの態様としては、例えば例示化合物(a)と例示化合物(i)とを組合せた態様や、例示化合物(b)と例示化合物(v)とを組合せた態様、が硬化性をより効果的に向上させ得る点で特に好ましい。
【0127】
本発明の顔料分散液中の重合性化合物の含有量は、顔料分散液の粘度の観点から、顔料分散液の全質量に対し、1〜15質量%が好ましく、2〜12質量%がより好ましく、更に好ましくは4〜8質量%の範囲である。
【0128】
本発明における重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、水や水性溶剤を含むと定着に時間がかかるため、重合性化合物は非水溶性であることが好ましい。
【0129】
次に、本発明のインク組成物及びインク組成物の構成成分等について詳細に説明する。
【0130】
(インク組成物)
本発明のインク組成物は、非水系顔料分散液と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする。
前記インク組成物は、前記構成とすることにより、ろ過性、吐出性、ヘーズに優れたインク組成物とすることができる。
前記非水系顔料分散液は、前述の非水系顔料分散液の製造方法により製造された前記非水系顔料分散液であり、また、前記重合性化合物は非水系顔料分散液の製造方法の項に記載した重合性化合物を挙げることができ、好ましい例も同様である。
以下、本発明のインク組成物の上記以外の構成成分について詳細に説明する。
【0131】
(光重合開始剤)
本発明のインク組成物は、重合反応に基づくインク硬化性の観点から、ラジカル重合、若しくは、カチオン重合の光重合開始剤を含有する必要がある。
本発明における重合開始剤は光の作用、または、増感剤の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から前記光ラジカル発生剤、又は光酸発生剤であることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0132】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier”Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感剤の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0133】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0134】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0135】
(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VIおよびVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0136】
(c)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0137】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0138】
(e)ケトオキシムエステルとしては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0139】
本発明における光重合開始剤の他の例である(f)ボレート塩の例としては米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
光重合開始剤の他の例である(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号各公報記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0140】
光重合開始剤の他の例である(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0141】
(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0142】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0143】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0144】
上記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0145】
【化23】

【0146】
【化24】

【0147】
【化25】

【0148】
【化26】

【0149】
【化27】

【0150】
【化28】

【0151】
【化29】

【0152】
【化30】

【0153】
光重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、光重合開始剤の質量濃度は、硬化性の観点から1〜18質量%であることが好ましく、2〜12質量%がより好ましく、3〜9質量%が更に好ましい。
【0154】
(増感剤)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感剤を添加しても良い。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0155】
より好ましい増感剤の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0156】
【化31】

【0157】
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
【0158】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0159】
一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0160】
【化32】

【0161】
【化33】

【0162】
(共増感剤)
さらに本発明のインク組成物には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0163】
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0164】
(重合禁止剤)
本発明のインク組成物は、重合禁止剤の少なくとも一種を含有することができる。
前記重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、およびカチオン染料類からなる群より選択される化合物が好適に挙げられる。
【0165】
具体的には、ハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t−ブチルカテコール、ハイドロキノンモノアルキルエーテル(例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等)、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等、ピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ホスホノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシルフリーラジカル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット、およびビクトリアピュアブルーBOH等が挙げられる。
【0166】
前記のうち、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等のハイドロキノンモノアルキルエーテル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダートフェノールが好ましい。
【0167】
重合禁止剤のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の総量(全質量)に対して、50〜30000ppmが好ましく、100〜10000ppmがより好ましく、100〜3000ppmがより好ましい。
【0168】
本発明のインク組成物には、前記顔料分散液の製造法の項に記載された分散剤を好適に含有することができ、また、好ましい例も同様である。
【0169】
本発明のインク組成物には、前記分散剤のほかに分散剤として、液物性調整のために、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などの公知の界面活性剤を含有させることが好ましい。
公知の界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。
前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤(例、メガファックF444、F475、F476等、大日本インキ(株)製)、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0170】
本発明のインク組成物には、必須成分である前記光重合開始剤成分等とともに用いられる増感剤、共増感剤に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
本発明のインク組成物には、さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、射出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
【0171】
インク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0172】
〈その他成分〉
上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
〜貯蔵安定剤〜
本発明のインク組成物には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性化合物等の共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0173】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0174】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算で、0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0175】
〜導電性塩類〜
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性が良い場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0176】
〜溶剤〜
本発明においては、必要に応じて、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で溶剤を用いることができる。
【0177】
〜その他添加剤〜
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0178】
〔インク組成物の好ましい物性〕
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に適用する場合、吐出性を考慮し、吐出時の温度におけるインク粘度が、5〜30mPa・sであることが好ましく、7〜20mPa・sが更に好ましい。このため、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
また、室温(25〜30℃)でのインク組成物の粘度は、7〜120mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質を改善することができる。
【0179】
本発明のインク組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、20〜30mN/mであることが更に好ましい。また、本発明のインク組成物を、ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲みおよび浸透の観点から、前記表面張力は20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下であることが好ましい。
【0180】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に用いられることが好ましい。インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式、が含まれる。
前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
【0181】
<画像形成方法およびその記録物>
本発明のインク組成物は、該インク組成物を吐出するインクジェット記録によって被記録材に画像を形成する画像形成工程を含む画像形成方法や、本発明のインク組成物を用いて被記録材に画像を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程において前記被記録材に形成された画像に活性エネルギー線(活性線)を照射して硬化させる画像硬化工程とを含む画像形成方法に用いることができる。
即ち、本発明の画像形成方法は、インクジェット記録によって画像を形成する画像形成工程のみを含む方法であってもよいし、これに画像硬化工程を組み合わせた方法であってもよい。更には、画像形成工程においてインクジェット記録以外の方法で画像を形成し、これに画像硬化工程を組み合わせた方法であってもよい。
【0182】
本発明における画像硬化工程においては、画像硬化工程において活性エネルギー線を利用し、画像形成工程で被記録材に画像形成した後、形成された画像に活性エネルギー線を照射することによって、画像化に寄与する重合性化合物の重合硬化が進行し、良好に硬化され堅牢性の高い画像を形成することができる。
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。光源、露光時間および光量は、本発明に係る重合性化合物の重合硬化の程度に応じて適宜選択すればよい。
画像硬化工程において硬化した画像の厚みは、2〜30μmであることが好ましい。ここで、「画像の厚み」とは、インク組成物により形成された画像を硬化した硬化物の厚みのことである。該画像の厚みが2〜30μmであることで、低濃度から高濃度の画像を表現することができる。
【0183】
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行なうことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
【0184】
ラジカル重合により硬化させる場合、酸素により重合が阻害されるため、酸素濃度の低い状態、すなわち窒素等のガス雰囲気下で露光させることにより低エネルギーで硬化させることができる。
本発明のインク組成物により得られた記録物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)としても用いることができる。
【0185】
前記画像形成工程においては、インクジェットプリンタによるインクジェット記録方法を適用するのが好ましい。具体的には、前記画像形成工程は、前記インク組成物を吐出するインクジェット記録によって前記画像を形成することが好ましい。
【0186】
〔インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置〕
次に、本発明の画像形成方法に好適に採用され得るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、以下説明する。
【0187】
・システム
インクを吐出するインクジェット記録システムとしては、特開2002−11860号公報に示すような形態が一例としてあげられるが、これに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【0188】
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0189】
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
【0190】
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向して被記録材に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により被記録材への吐出を制御する方式であってもよい。
【0191】
インクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物を用いて被記録材に画像記録を行なうが、その際に使用するインク吐出ノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ノズルはたとえば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、ノズルは特開2002−316420号公報に記載されるように、複数列に構成されることにより、高速にカラー画像を形成することが可能となり、さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
【0192】
さらにノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に被記録材を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。
【0193】
このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。
また、ノズルから各色のインクが均等に吐出されるとは限らず、特定のインクは長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。
【0194】
また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。
ノズルの一部が吐出しない状態で画像をプリントすると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0195】
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期させて被記録材を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、被記録材の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、被記録材の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。
【0196】
また、逆にヘッドを固定し、被記録材を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0197】
・温度制御
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0198】
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0199】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
【0200】
インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0201】
・露光
光源としては、前記したように、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等を用いることができる。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることが出来る。
【0202】
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、被記録材面で1mW/cm2〜100W/cm2の照度であることが好ましい。
また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0203】
次に活性エネルギー線の好ましい照射条件について述べる。
基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
【0204】
硬化させるための活性エネルギー線がインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべく被記録材への入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0205】
また本発明では、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
【0206】
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、被記録材上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、被記録材の搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくは被記録材の往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとに被記録材を所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
【0207】
被記録材へのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05〜25g/m2の間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、およびまたは数量を制御することが好ましい。
【0208】
ヘッドと被記録材の間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくは被記録材の移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、被記録材の凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドと被記録材が接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
【0209】
・インクセット
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。
【0210】
明度の高い色から順に重ねていくと、下部のインクまで活性エネルギー線が到達しやすく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加および臭気の発生、密着性の劣化が生じにくい。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
【0211】
[被記録材]
本発明のインク組成物を用いて記録される被記録媒体としてはインク浸透性の被記録媒体、および、インク非浸透性の被記録媒体をともに使用することができる。インク浸透性の被記録媒体は、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。これらについては特開2001−1891549号公報などに「被記録材」として記載されている。
【0212】
前記インク非浸透性の被記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて各機能を付加する為に、これら材質を複数組み合わせ複合化した基材を使用することもできる。
【0213】
前記合成樹脂としてはいかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン;並びに、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等や、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、および、セルロイド等が挙げられる。
【0214】
前記合成樹脂を用いた基材の形状(厚み)は、フィルム状でもよいし、カード状またはブロック状でもよく、特に限定されることなく所望の目的に応じて適宜選定することができる。また、これら合成樹脂は透明であってもよいし、不透明であってもよい。前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状で用いることが好ましい態様の一つであり、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチック製のフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、および、TACフィルムを挙げることができる。
【0215】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、および、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が挙げられ、前記紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が特に好ましい。
【0216】
以上のように、本発明のインク組成物を用いた画像記録によると、高感度で硬化性に優れた画像を得ることができ、得られた記録物、すなわち本発明の記録物は、硬化性に優れるとともに、十分な耐擦過性を有するのである。
【実施例】
【0217】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例ではインク組成物の一例としてインクジェット記録用のインクを作製した例を示す。
【0218】
<マゼンタ顔料分散液1〜4の作製>
下記表1に示す顔料と重合性化合物と分散剤を60分間プレミックスしてから、ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業製)で、表1に示す直径のジルコニアビーズを充填率70%で充填して、周速10m/secで90分間分散してマゼンタ顔料分散液を得た。分散時の液温は35〜37℃であった。
顔料分散液の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて顔料粒子100個の長軸径を測定して、個数平均を算出して測定した。測定結果を表1に示す。
【0219】
<マゼンタ顔料分散液−5の作製>
下記表1のマゼンタ顔料分散液−2に示す、顔料と重合性化合物と分散剤を60分プレミックスしてから、ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填率70%で充填して、周速10m/secで90分分散して顔料分散液を得た。分散時の液温は37〜40℃であった。顔料分散液の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定した結果、平均粒径は91nmであった。
【0220】
【表1】

【0221】
前記重合体1、2及び後述の重合体3は、以下のようにして合成したものを用いた。
(重合体1の合成)
9(10H)−アクリドン9.76部、t−ブトキシカリウム5.61部をジメチルスルホキシド30部に溶解させ、45℃に加熱する。これにクロロメチルスチレン15.26部を滴下し、50℃でさらに5時間加熱攪拌を行う。この反応液を蒸留水200部に攪拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、モノマー1を11.9部得た。
【0222】
メチルエチルケトン15部を窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温する。別に調製した、下記のモノマー溶液と開始剤溶液をそれぞれ2時間かけて同時に上記の液に滴下した。滴下後、さらに下記V−65を0.08部添加し、78℃にて3時間加熱攪拌を行った。得られた反応液をヘキサン1000部に攪拌しながら注ぎ、生じた沈殿を濾取して、加熱乾燥させることでグラフト重合体1を得た。
【0223】
(モノマー溶液)
・モノマー1 3.0部
・末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート
(数平均分子量6000、東亜合成化学(株)製AA−6) 21.0部
・3−(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド) 6.0部
・メチルエチルケトン 45部
【0224】
(開始剤溶液)
・2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
(和光純薬(株)製V−65) 0.04部
・メチルエチルケトン 9.6部
【0225】
(重合体2の合成)
「重合体1の合成」で用いた末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレートをメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルM−230G)に変更した以外は、「重合体1の合成」と同様にしてグラフト重合体2を得た。
【0226】
(重合体3の合成)
N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド9.56部、トリエチルアミン5.16部、酢酸エチル50部を溶解させ、40℃に加熱する。これに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズMOI)7.76部を徐々に滴下する。45℃でさらに7時間加熱攪拌を行った。得られた反応液を酢酸エチルで抽出、水洗、および飽和食塩水で洗浄し、乾燥・濃縮させることでモノマー2を15.1部得た。
【0227】
「重合体1の合成」で用いたモノマー1を上記モノマー2に変更した以外は、「重合体1の合成」と同様にしてグラフト重合体3を得た。
【0228】
<シアン顔料分散液1〜2の作製>
下記表2に示す顔料と重合性化合物と分散剤を60分間プレミックスしてから、直径0.03mmのジルコニアビーズを充填率70%で充填した、ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業製)で、周速12m/secで120分間分散してシアン顔料分散液を得た。分散時の液温は38〜41℃であった。
顔料分散液の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した。測定結果を表2に示す。
【0229】
<シアン顔料分散液−3の作製>
下記表2の顔料分散液−2に示す顔料と重合性化合物と分散剤を60分プレミックスしてから、ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填率70%で充填して、周速10m/secで90分分散して顔料分散液を得た。分散時の液温は37〜40℃であった。
顔料分散液の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定した結果、平均粒径は102nmであった。
【0230】
【表2】

【0231】
<インク組成物の作製>
[実施例I−1]
下記の成分をを撹拌混合し、マゼンタインク組成物を得た。
<インク組成物成分>
・モノマー:(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセル・サイテック(株)製)
30g
・モノマー:ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(アロンオキセタンOXT−221:東亜合成製) 70g
・マゼンタ顔料分散液−1 25g
・光重合開始剤:スルフォニウム塩(UVI−6992 ダウケミカル製) 9.0g
・増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 3.0g
・界面活性剤:Byk307(Byk Chemie製) 0.07g
【0232】
[実施例I−2〜4、比較例I−1]
実施例I−1において、マゼンタ顔料分散液−1の代わりに、マゼンタ顔料分散液−2〜4、5を用いた以外は、実施例I−1と同様に行い本発明及び比較のインク組成物を得た。
【0233】
[実施例II−1]
下記の成分を撹拌混合し、シアンインク組成物を得た。
<インク組成物成分>
・モノマー:セロキサイド3000(ダイセル・サイテック(株)製) 60g
・モノマー:ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(アロンオキセタンOXT−221:東亜合成製) 30g
・モノマー:3−エチルー3−ヒドロキシメチルオキセタン(アロンオキセタンOXT−101:東亜合成製) 10g
・シアン顔料分散液−1 10g
・光重合開始剤:スルフォニウム塩(SP−172:旭電化製) 6.0g
・増感剤:9,10−ジプロポキシアントラセン 2.0g・界面活性剤:メガファックF476(DIC製) 0.2g
【0234】
[実施例II−2、比較例II−1]
実施例II−1において、シアン顔料分散液−1の代わりに、シアン顔料分散液−2、3を用いた以外は、実施例II−1と同様に行い本発明及び比較のインク組成物を得た。
【0235】
[評価]
<ろ過性テスト>
実施例及び比較例で得られたインク組成物10mLを、600mbarの減圧下で5.0μmのメンブランフィルターでろ過して、ろ過に要する時間(sec)を測定した。ろ過性は室温保管品とサーモ処理(45℃、2週間)品について測定した。
【0236】
<印字、露光テスト>
実施例及び比較例で得られたインク組成物(室温保管)をピエゾ方式のヘッドを用いて打滴を行った。ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、メディア上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
【0237】
ヘッドおよびインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。
ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、一滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例ではヘッドの下1mmの位置でメディアが搬送されながらヘッドより打滴される。
搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6KHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。本実施例では、搬送速度90mm/s、駆動周波数1.9KHzとすることにより、インク吐出量を制御し10g/m2の打滴を行った。
メディアは打滴された後、露光部に搬送され紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光される。本実施例ではUV−LEDは日亜化学製NCCU033を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離および搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。本実施例では搬送速度により露光エネルギーを100mJ/cm2に調整した。
これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40Dを用い、波長220nmから400nmの間を積分した値をもちいた。
本実施例ではメディアとして厚み100μmのTACフィルムを使用し、印字及び露光テストは23℃、R.H.60%の環境で実施した。
【0238】
<吐出性評価>
上記印字を60分間連続して行い、60分後に下記評価基準で評価した。
○:全ノズルから正常に吐出している。
△:一部のノズルが詰まり吐出しない。
×:ほとんど吐出しない。
【0239】
<ヘーズ評価>
上記で得られた、印字、硬化サンプルのヘーズをヘーズメーター(スガ試験機製HGM−2DP型)で測定した。
【0240】
【表3】

【0241】
【表4】

【0242】
マ 表3,4に示すように、本発明の顔料分散液を使用したインク組成物は、ろ過性、吐出安定性が良好であり、また、印字物の透明性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】遠心力を用いた分離方式を採用するビーズミル分散機の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0244】
1 セントリセパレータ
2 ローターピン
3 原料入り口
4 製品出口
5 冷却水入り口
6 冷却水出口
7 ベルト
8 ビーズ
9 原料スラリー
10ビーズミル分散機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料と分散剤と重合性化合物を含む非水系顔料分散液の製造方法であって、直径0.01mm以上0.3mm未満のビーズを使用して微細分散する工程を有することを特徴とする非水系顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記ビーズを遠心力を用いて分離する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記分散剤が下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基またはフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。nは0または1を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【請求項4】
前記重合性化合物として単官能(メタ)アクリレート、及び二官能(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記重合性化合物としてオキセタン基含有化合物、及びオキシラン基含有化合物から選択される少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の製造方法により製造された非水系顔料分散液と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項7】
インクジェット記録に用いられることを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって画像を形成する画像形成工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のインク組成物を用いて被記録材に画像を形成する画像形成工程と、前記被記録材に形成された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
前記活性エネルギー線の照射光源として発光ダイオードを用いることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記活性エネルギー線の中心波長が365±20nmであることを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記画像硬化工程により硬化した画像の厚みが2〜30μmであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
請求項6又は7に記載のインク組成物を用いて画像形成してなることを特徴とする記録物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−204664(P2007−204664A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26950(P2006−26950)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】