説明

非水電解質二次電池

【課題】 充放電過程で巻回体内部に発生する隙間を防止することにより、高い容量を保持しつつ、充放電サイクル特性を向上させることができる電池を提供する。
【解決手段】 セパレータの厚さ、および/または空孔率を変化させることにより、負極を介して巻回外周側に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρaを、巻回内周側に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρbよりも大きくする。単位面積あたりの空孔体積は[セパレータ単位面積×セパレータ厚み×空孔率]で規定される。充放電サイクル特性を向上させるには、ρa/ρbが1.1以上2.0以下となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、正極と負極とを電解質を介して積層し巻回してなる巻回体を備えた非水電解質二次電池に関し、特に、リチウムを吸蔵・放出可能な金属、半金属、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有する粒子を含む負極反応層を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(Videotape recorder:ビデオテープレコーダ)、携帯電話あるいはラップトップコンピュータなどのポータブル電子機器が多く登場し、それらの小型化および軽量化が図られている。それに伴い、ポータブル電子機器の電源として用いられる電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素質材料が比較的高容量を示し、良好なサイクル特性を発現する。
【0004】
しかし、近年の高容量化に伴い、炭素質材料の更なる高容量化が課題となっている。下記の特許文献1では、炭素化原料と作製条件とを選ぶことにより得られた炭素質材料を負極に用いることで高容量を達成している。ところが、この負極は、放電電位が対リチウムで0.8V〜1.0Vであるので、電池を構成した時の電池放電電圧が低くなり電池エネルギー密度では大きな向上が見込めなかった。更に、この負極は、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクル時でのエネルギー効率が低いという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【0006】
一方、より高容量を実現可能な負極活物質としては、例えば、ある種のリチウム金属が電気化学反応により可逆的に生成および分解することを応用した材料が研究されている。具体的には、古くからLiAl合金が知られており、また、特許文献2にはSi合金が報告されている。さらに、非特許文献1では、D.Larcherらは、高容量を得ることができる負極活物質としてCu6Sn5という金属間化合物を紹介している。
【0007】
【特許文献2】米国特許第4950566号明細書
【0008】
【非特許文献1】Journal of The Electrochemical Society, 147(5) 1658-1662(2000)
【0009】
しかしながら、リチウムとの合金化反応を利用した負極は、従来用いられていた炭素質材料と比較して、充放電に伴い大きく膨張収縮するので、電池のサイクル特性を低下させてしまうという問題があった。
【0010】
そこで、この劣化を防止するために、リチウムの吸蔵・放出に伴う膨張収縮に関与しない元素で一部を置換した負極活物質が提案されている。例えば、特許文献3にはLiSiab(0≦a、0<b<2)が、特許文献4にはLicSil-dde(Mはアルカリ金属を除く金属もしくはケイ素を除く類金属を表し、0≦c、0<d<1、0<e<2である)が、特許文献5にはLiAgTe系合金が記載されている。
【0011】
【特許文献3】特開平6−325765号公報
【0012】
【特許文献4】特開平7−230800号公報
【0013】
【特許文献5】特開平7−288130号公報
【0014】
しかし、これらの負極活物質によっても、膨張収縮に由来する充放電サイクル特性の劣化が大きく、高容量という特徴を活かしきれていないのが実状である。特に、正極と負極とを電解質を介して積層し巻回して用いる場合、充放電サイクル特性の劣化が顕著に現れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記課題に対し鋭意検討した結果、以下の構造的要因がサイクル特性の低下を引き起こすという知見を得るに至った。
【0016】
図1に、二次電池の充放電過程における巻回電極体(以下、巻回体と適宜称する)の断面図を示す。図1Aに示すのは充電前の巻回体であり、図1Bは充電後、図1Cは放電後の巻回体を示す。
【0017】
図1Aに示すような巻回した負極1が充電によって膨張すると、その膨張力によって巻回体10の全体が膨張していく(図1B)。このとき、巻回体10の膨張は図示しない電池ケースに押さえ込まれるため、負極1と正極2は膨張圧力によって強く密着した状態となる。
【0018】
一方、図1Cに示す放電過程においては、負極1が収縮していくため、正負極間距離は常に広がる傾向にある。もちろん、主に正極2、負極1の各電極およびセパレータ3の収縮、ならびに電池ケースの弾性(反発力)によって巻回体全体が収縮していくことになるが、充電時の負極膨張圧力に比べるとその収縮にかかる力は不十分であり、どうしても正負極間の距離が大きくなってしまう傾向にある。
【0019】
巻回体10の復元にかかる力を補う手段としては、巻回体10の外形寸法に対し、電池ケース内形寸法を小さくして、電池ケースに巻回体を圧入するなどの方法がある。しかしこれでは、充放電によって電池の外形寸法が大きく変化してしまうことになるため実用的ではない。
【0020】
さらに、放電過程における正負極間距離の広がりは、図1Cに示すように、負極外周部の負極反応層1bとセパレータ3を介して負極反応層1bと対向する正極内周部の正極反応層2aを含む負極外周部電極間距離Loの方が、負極内周部の負極反応層1aとセパレータ3を介して対向する正極外周部の正極反応層2bを含む負極内周部電極間距離Liよりも、常に大きくなる傾向にあることが分かった。
【0021】
このような傾向は、参照符号Goで表される負極外周部電極間隙間が、参照符号Giで表される負極内周部電極間隙間より常に大きくなるためである。これは、収縮方向に対し膨張から収縮への復元力が比較的弱い巻回体構造の中で負極の収縮のみが進行するためである。
【0022】
よって放電過程においては、負極外周部の負極反応層1bと正極内周部の正極反応層2aとの間の反応特性が、負極内周部の負極反応層1aと正極外周部の正極反応層2bとの間の反応特性よりも低下しやすいというバランスの崩れが起こり、これがサイクル特性の低下の一因となっているのである。
【0023】
したがって、この発明の目的は、高い容量を保持しつつ充放電サイクル特性を向上させることができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、この発明の第1の態様は、帯状の金属箔の両面に反応層が設けられた正極と負極とをセパレータを介して積層し、さらに巻回してなる巻回電極体を備えた二次電池であって、正極の正極反応層はリチウム複合酸化物からなり、負極の負極反応層はリチウムを吸蔵、放出可能な金属、半金属、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有する複合材料からなり、セパレータの空孔率が、30%以上65%以下とされ、負極の外側に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρaと、負極の内側に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρbとの比(=ρa/ρb)が1.1以上2.0以下に設定されたことを特徴とする二次電池である。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、負極を介して巻回外周側反応面に配されるセパレータの空孔率(単位面積あたりの空孔体積)を、巻回内周側反応面に配されるセパレータの空孔率よりも大きくすることによって、電解液の保持能力を高め、放電過程において金属箔を介して内周の負極よりも極間距離が大きくなりがちな金属箔外周負極の反応性を改善することにより、優れたサイクル特性を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
図2はこの発明の一実施の形態にかかる二次電池の構成を表す斜視図である。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)めっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0028】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15aが反転して電池蓋14と巻回体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0029】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0030】
[正極]
正極は正極集電体表面に反応層が設けられた帯状の電極を使用する。正極集電体は、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されており、厚みは、5μm〜50μm程度である。
【0031】
正極反応層は、例えば、正極活物質と、必要に応じてカーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤と、ポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、例えば、金属酸化物,金属硫化物あるいは特定の高分子材料などが好ましく、電池の使用目的に応じてそれらのいずれか1種または2種以上が選択される。
【0032】
金属酸化物としては、LixMIO2を主体とするリチウム複合酸化物あるいはV25が挙げられる。特にリチウム複合酸化物は高電圧を発生可能であり、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。なお、上記組成式において、MIは1種類以上の遷移金属、特にコバルト(Co)、ニッケルおよびマンガン(Mn)からなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。xの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2,LiNiO2,LiyNizCo1-z2(yおよびzは二次電池の充放電状態によって異なり、通常、0<y<1、0.7<z<1.02である)、あるいはスピネル型構造を有するLiMn24などが挙げられる。
【0033】
金属硫化物としては、TiS2あるいはMoS2などが挙げられ、高分子材料としては、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。また、これらの正極活物質の他にもNbSe2などを用いることができる。
【0034】
[負極]
負極は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体の片面または両面に、負極反応層が設けられた構造を有している。負極集電体は、例えば、銅(Cu)箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。この負極集電体の厚みは、例えば5μm〜50μmである。
【0035】
負極反応層は、負極活物質の粒子と、必要に応じてポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含んで構成されている。負極活物質としては、リチウムを吸蔵・放出可能な金属、半金属、合金および化合物が挙げられ、高い容量を得るためにはこれらのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、この明細書において、半金属とは、半金属元素の単体を指す。また、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0036】
リチウムを吸蔵・放出可能な金属あるいは半金属としては、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。
【0037】
また、リチウムを吸蔵・放出可能な合金および化合物としては、例えば、化学式MapMbqMcrで表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mbは非金属元素の少なくとも1種を表し、McはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、p、qおよびrの値はそれぞれp>0、q≧0、r≧0である。
【0038】
中でも、化学式MIIab(MIIは、スズおよびケイ素のうちの少なくとも一方を表し、Nはスズおよびケイ素以外の元素のうちの少なくとも1種をそれぞれ表す。)で表される金属間化合物が好ましい。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0039】
化学式MIIabで表される金属間化合物について具体的に例を挙げれば、AsSn,AuSn,CaSn3,CeSn3,CoCu2Sn,Co2MnSn,CoNiSn,CoSn2,Co3Sn2,CrCu2Sn,Cu2FeSn,CuMgSn,Cu2MnSn,Cu4MnSn,Cu2NiSn,CuSn,Cu3Sn,Cu6Sn5,FeSn2,IrSn,IrSn2,LaSn3,MgNi2Sn,Mg2Sn,MnNi2Sn,MnSn2,Mn2Sn,Mo3Sn,Nb3Sn,NdSn3,NiSn,Ni3Sn2,PdSn,Pd3Sn,Pd3Sn2,PrSn3,PtSn,PtSn2,Pt3Sn,PuSn3,RhSn,Rh3Sn2,RuSn2,SbSn,SnTi2,Sn3U,SnV3,BeSiZr,CoSi2,β−Cr3Si,Cu3Mg2Si,Fe3Si,Mg2Si,MoSi2,Nb3Si,NiSi2,θ−Ni2Si,β−Ni3Si,ReSi2,α−RuSi,SiTa2,Si2Th,Si2U,β−Si2U,Si3U,SiV3,Si2WあるいはSiZr2などがある。
【0040】
また、国際公開WO96/13873号パンフレットで開示されているスズおよびケイ素のうちの少なくとも一方を含む複合酸化物も好ましい。この複合酸化物としては、例えば、化学式SnMIIIcd(MIIIはケイ素,ゲルマニウム,鉛,ビスマス,アンチモン,リン,ホウ素,アルミニウムおよびヒ素からなる群のうちの少なくとも1種を表し、cは0〜4の数、dは1〜10の数をそれぞれ表す。)、SnMIVef(MIVはゲルマニウム、鉛、ビスマス、アンチモン、リン、ホウ素、アルミニウムおよびヒ素からなる群のうちの少なくとも1種を表し、cは0〜4の数、dは1〜10の数をそれぞれ表す。)、SnSiMgVhi(MVはゲルマニウム、鉛、ビスマス、アンチモン、リン、ホウ素、アルミニウムおよびヒ素からなる群のうちの少なくとも1種を表し、g,hおよびiは、0.1≦g+h≦4、0.05≦g≦2、1.1≦i≦10をそれぞれ満たす数である。)がある。
【0041】
このような複合酸化物としては、具体的には、SnSi0.011.02,SnGe0.011.02,SnPb0.051.1,SnSi0.1Ge0.1Pb0.12.6,SnSi0.2Ge0.12.6,SnSi0.72.4,SnGe0.72.4,SnSi0.82.6,SnSiO3,SnPbO3,SnSi0.9Ge0.13,SnSi0.8Ge0.23,SnSi0.8Pb0.23,SnSi0.8Ge0.1Pb0.13,SnSi1.23.4,SnSi26,SnB0.011.015,SnAl0.011.015,SnP0.012.015,SnP0.051.125,SnB0.051.075,SnP0.11.25,SnB0.11.15,SnP0.31.75,SnB0.72.05,SnP0.83,SnPO3.5,SnBO2.5,SnSi0.250.20.23,SnSi0.50.20.23,SnSi0.080.23.1,SnSi0.80.22.9,SnSi0.8Al0.22.9,SnSi0.6Al0.20.22.8,SnSi0.6Al0.20.23,SnSi0.60.20.23,SnSi0.4Al0.20.42.7,SnSi0.6Al0.10.10.33.25,SnSi0.6Al0.10.30.13.05,SnSi0.5Al0.30.40.23.55,SnSi0.5Al0.30.40.54.3、あるいはSnSi0.8Al0.30.20.23.85が挙げられる。
【0042】
なお、このような負極活物質は、例えば、メカニカルアロイング法、または原料を混合して不活性雰囲気下あるいは還元性雰囲気下で加熱処理する方法により作製される。
【0043】
また、負極反応層22bはリチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物に加えて、他の負極活物質を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料,金属酸化物あるいは高分子材料、金属複合材料などが挙げられる。なお、炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。金属酸化物としては酸化スズ(SnO2)などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。また、金属複合材料としては、コバルト(Co)、スズ、インジウム、チタン(Ti)、カーボンからなる複合材料などが挙げられる。
【0044】
なお、リチウムは、電池製造後に電池内で電気化学的に負極活物質に吸蔵されてもよく、電池製造後あるいは電池製造前に、正極21あるいは正極21以外のリチウム源から供給され電気化学的に負極活物質に吸蔵されても構わない。また、負極活物質の合成の際に含有するようにしてもよい。
【0045】
[セパレータ]
この発明では、図2に示すような正極、負極をセパレータを介して積層して巻き取った巻回体を上述の要領で電池とする。このとき、負極を介して巻回外周側反応面に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積を、巻回内周側反応面に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積よりも大きくすることによって、電解液の保持能力を高め、放電過程において金属箔を介して内周の負極よりも極間距離が大きくなりがちな金属箔外周負極の反応性を改善することにより、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0046】
セパレータは、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0047】
一般的にセパレータの厚みは10〜50μmが好適に使用可能であるが、15〜40μmがより好ましい。セパレータは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0048】
この発明において、セパレータの面積当たりの空孔体積は[セパレータ単位面積×セパレータ厚み×空孔率]で規定される。したがって、外周側と内周側で空孔体積を変えるためには、好適な範囲でセパレータの厚み、および/または空孔率を変化させればよい。
【0049】
ここで、空孔率は、反応面に対向している部分についての空孔の割合である。空孔率P(%)はセパレータの真密度ρ(g/cc)と体積密度D(g/cc)から
[P=(1−D/ρ)×100]として求める値とする。真密度の測定法はアルキメデスの原理に基づいて測定する公知の手法が使用可能である。より具体的にはピクノメーター(比重計)を用い、重量を測定した固相Aを、比重が既知の液相Bに浸漬して、固相Aが排除する液相Bの体積を計測することにより求める方法が公知であり、また液相Bの替わりに気相C(たとえばヘリウムガス)を用いる方法も公知である。この発明では、セパレータの電極反応面に接する部分を測定に供し、液相よりもより小さい空隙を測定できるヘリウムガスを用いる方法を採用した。
【0050】
ただし、放電過程においては、負極外周部電極間距離Loが負極内周部電極間距離Liより大きくなる傾向にあることが問題であり、多孔質体でクッションの役目をもつセパレータの厚さについて、内周側より外周側を薄くすることは望ましくない。したがって、外周側セパレータを内周側より厚くすることによって、空孔体積を制御することがより好ましい。
【0051】
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4メチル1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
リチウム塩としては、例えば、LiClO4,LiAsF6,LiPF6,LiBF4,LiB(C654,CH3SO3Li,CF3SO3Li,LiClあるいはLiBrが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
[正極の作製]
まず、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを、Li2CO3:CoCO3=0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調整した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。
【0055】
次いで、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極反応層を形成し正極を作製した。そののち、正極集電体の一端にアルミニウム製の正極リードを取り付けた。
【0056】
[負極Aの作製]
銅50質量部とスズ50質量部となるように、銅およびスズを秤量したのち石英管にいれてアルゴン(Ar)雰囲気中で高周波溶融炉にて溶融した。そののち、これを直径200mm、幅20mm、回転速度3000rpmの銅よりなる回転ディスクにキャスティングして急冷し、リボン状の銅スズ(CuSn)合金片を得た。得られたリボン状の銅スズ合金片を、ボールミルを用いてアルゴン雰囲気で粉砕し、粒子状の粉末とした。得られた粉末を63μmのふるいで分級し、負極活物質とした。分級により得られた粉末の平均粒径は25μmであった。
【0057】
次いで、負極活物質として、更にカーボンブラックおよび人造黒鉛の粒子状の粉末を用意し、得られた銅スズ合金60gとカーボンブラック2gと人造黒鉛28gと、結着剤であるポロビニリデンフルオライド10gとを混合し、負極合剤を調整した。続いて、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとし、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22aの両面に塗布して乾燥させ、電池缶11に収容できるように裁断したのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極反応層22bを形成した。そののち、負極反応層22bが形成された負極集電体22aを幅60mmとなるように裁断して負極22を作製した。続いて、負極集電体22aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0058】
このようにして作製した正極、負極Aを用いて、実施例1〜14、および比較例1〜6の二次電池を作製する。ここで、負極Aの内周側および外周側に配置するセパレータについて、それぞれ空孔率および厚さを以下のように変えたものを使用する。
【0059】
<実施例1>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率33%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、正極および負極をこれらセパレータと積層し、この積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回体20を作製した。このとき、素子胴部の最大径が17.3mmになるように正極、負極、セパレータの長さを調整した。
【0060】
<実施例2>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率40%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0061】
<実施例3>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率60%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0062】
<実施例4>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率40%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0063】
<実施例5>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率50%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0064】
<実施例6>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率65%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0065】
<実施例7>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率55%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率50%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0066】
<実施例8>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率65%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率50%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0067】
<実施例9>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み22μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0068】
<実施例10>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み30μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0069】
<実施例11>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み40μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0070】
<実施例12>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率40%、厚み23μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0071】
<実施例13>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率50%、厚み25μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率40%、厚み25μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0072】
<実施例14>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み30μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0073】
<比較例1>
負極集電体を介して巻回外周および内周側に配されるセパレータに空孔率28%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は実施例1と同様とする。
【0074】
<比較例2>
負極集電体を介して巻回外周および内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は実施例1と同様とする。
【0075】
<比較例3>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率65%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0076】
<比較例4>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率70%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率65%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0077】
<比較例5>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20.5μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0078】
<比較例6>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み40μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率35%、厚み18μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例1と同様とする。
【0079】
また、上述の実施例および比較例で用いた正極と、以下のようにして作製した複合材料からなる負極Bとを用いて、実施例15〜17、および比較例7,8の二次電池を作製した。
【0080】
[負極Bの作製]
まず、原料であるコバルト粉末32.0重量部、スズ粉末59.4重量部、ケイ素粉末3.7重量部、チタン粉末3.2重量部、インジウム粉末1.7重量部を計量し、石英管にいれてアルゴン(Ar)雰囲気中で高周波溶融炉にて溶融した。その後、これを直径200mm、幅20mm、回転速度3000rpmの銅よりなる回転ディスクにキャスティングして急冷し、Co、Sn、Si、Ti、Inからなるリボン状の材料を得た。このリボン状の材料片を、ボールミルを用いてアルゴン雰囲気で粉砕し粉末材料Aとした。
【0081】
つぎにこの粉末材料A16.4gと炭素粉末3.6gとをめのう乳鉢で乾式混合し、直径9mmの鋼玉約400gと共に、の遊星ボールミル(伊藤製作所社製)の反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、回転速度250rpmによる10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いて、ボールミル合成粉末Bを得た。
【0082】
得られたボールミル合成粉末Bについて組成の分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、コバルト、スズ、ケイ素、チタン、インジウムの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。この結果、このボールミル合成粉末Bに含まれるCo:Sn:Si:Ti:In:Cの質量比は26.2:48.7:3.0:2.6:1.4:18.1であり、X線回折分析による反応相の回折ピークの半値幅は4.5degであった。
【0083】
得られたボールミル合成粉末Bを70重量部と、導電剤および負極活物質である黒鉛20重量部と、導電剤であるアセチレンブラック1重量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン4重量部とを混合し、適当な溶剤に分散させてスラリーとした。これを15μmの銅箔集電体上に塗布、乾燥し、電池缶11に収容できるように裁断したのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極反応層22bを形成した。そののち、負極反応層22bが形成された負極集電体22aを幅60mmとなるように裁断して負極22を作製した。続いて、負極集電体22aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0084】
<実施例15>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率33%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、正極および負極をこれらセパレータと積層し、この積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回体20を作製した。このとき素子胴部の最大径が17.3mmになるように正極、負極、セパレータの長さを調整した。
【0085】
<実施例16>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率40%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例15と同様とする。
【0086】
<実施例17>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率60%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例15と同様とする。
【0087】
<比較例7>
負極集電体を介して巻回外周および内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は実施例15と同様とする。
【0088】
<比較例8>
負極集電体を介して巻回外周側に配されるセパレータに空孔率65%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用い、巻回内周側に配されるセパレータに空孔率30%、厚み20μmのポリエチレンフィルム性微多孔膜を用いた以外は、実施例15と同様とする。
【0089】
上述のようにして作製した巻回体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回体20を内径17.5mmの電池缶11の内部に収容した。そののち、電池缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸エチレン50体積%と炭酸ジエチル50体積%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1mol/dm3の含有量で溶解させたものを用いた。
【0090】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、ガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型の二次電池を得た。
<評価>
まず、実施例、比較例共に作成電池数はいずれも50個とし、1Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行った後、4.2Vの定電圧で電流値が0.005Aに達するまで放電を行った。次いで、充電状態で2週間放置したのち、電池の開路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)が4.15V未満のものをOCV不良品として選別した。
【0091】
次いで良品の電池を用い、20℃の環境下で充放電サイクル試験を行った。充電条件は上述の通りである。放電条件は1Aの定電流で電池電圧が2.5Vになるまで行った。エージング後初めての放電はコンディショニング用とし、2回目の放電容量を起点として300サイクル後のサイクル維持率[%]を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
比較例1のように、セパレータの空孔率が30%未満ではサイクル特性が著しく低下してしまうため好ましくない。これは、イオンの透過性が悪くなるためである。また、比較例4のようにセパレータの空孔率が65%を超えると電池の不良数が増えてしまう。不良の電池を解体して調べたところ、セパレータの破膜によって、絶縁が破壊されている箇所が認められた。これはセパレータの強度が著しく低下したためである。
【0094】
そこで、空孔率はイオンの透過性を確保するため30%以上であることが好ましい。ただし、65%以上になると膜の機械的強度の確保が難しくなるため、それ以下で用いることが望ましい。より好ましくは35〜60%である。
【0095】
また、負極の外側に配されたセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρaと、負極の内側に配されたセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρbについて、実施例1〜8、比較例2、3のようにセパレータの厚みを一定にして、ρa/ρb比を変えた場合、あるいは実施例9〜11のようにセパレータ空孔率を一定にして厚みでρa/ρb比を変えた場合、あるいは実施例12、13のように空孔率と厚みの両方でρa/ρb比を変えた場合いずれにおいても、ρa/ρbの値が1.1以上2.0以下の範囲において、良好なサイクル維持率を示す。なお、好適なサイクル維持率は72%以上である。
【0096】
これは、ρa/ρb値が1.1未満では正負の各電極を介した反応層での反応性の差異が十分に緩和されていないためである。さらに、ρa/ρb値が2.0を超えてしまうと、負極外周部反応層と、負極内周部反応層の電解液量バランスが崩れ、電極を介した内外両面における反応性の違いが大きくなる。このためサイクル特性が低下してしまうので好ましくない。
【0097】
以上、実施の形態および実施例を挙げてこの発明を説明したが、この発明は上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0098】
例えば、上述の実施形態では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0099】
なお、ゲル状の電解質には電解液を吸収してゲル化するものであれば種々の高分子化合物を用いることができる。そのような高分子化合物としては、例えば、ポリビニリデンフルオロライドあるいはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0100】
固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた有機固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。このとき、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または分子中に共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
【0101】
また、上述の実施形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明したが、この発明は、巻回構造を有する電池であればいずれも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】従来から用いている二次電池において、正極、負極、セパレータを巻回して作製した巻回電極体が充放電過程において膨張、収縮する様子を示す略線図である。
【図2】この発明を適用した二次電池の断面図を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0103】
1・・・負極
1a・・・負極内周部反応層
1b・・・負極外周部反応層
2・・・正極
2a・・・正極内周部反応層
2b・・・正極外周部反応層
3・・・セパレータ
o・・・負極外周側極間距離
i・・・負極内周側電極間距離
o・・・負極外周部電極間隙間
i・・・負極内周部電極間隙間
10・・・巻回体
11・・・電池缶
12・・・絶縁板
13・・・絶縁板
14・・・電池蓋
15・・・安全弁機構
15a・・・ディスク板
16・・・熱感抵抗素子
17・・・ガスケット
20・・・巻回体
21・・・正極
22・・・負極
23・・・セパレータ
24・・・センターピン
25・・・正極リード
26・・・負極リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔の両面に反応層が設けられた正極と負極とをセパレータを介して積層し、さらに巻回してなる巻回電極体を備えた二次電池であって、
上記正極の正極反応層はリチウム複合酸化物からなり、
上記負極の負極反応層はリチウムを吸蔵、放出可能な金属、半金属、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有する複合材料からなり、
上記セパレータの空孔率が、30%以上65%以下とされ、
上記負極の外側に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρaと、上記負極の内側に配されるセパレータの単位面積あたりの空孔体積ρbとの比(=ρa/ρb)が1.1以上2.0以下に設定されたことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
上記負極反応層に用いるリチウムを吸蔵、放出可能な複合材料として、少なくともスズを含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
上記負極反応層に用いるリチウムを吸蔵、放出可能な複合材料として、スズ、コバルト、ケイ素、チタン、インジウム、炭素を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−107847(P2006−107847A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290704(P2004−290704)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】