説明

非水電解質二次電池

【課題】非水電解液の分解および正極活物質の劣化を抑制し、高容量で且つサイクル特性および高温保存特性に優れる非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】正極板と負極板とをセパレータを介して巻回してなる極板群1と非水電解質とを備えた非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池の本体に接続した充放電制御装置とを備えた非水電解質二次電池であって、前記正極板はPTFEを主体とする結着剤を含み、この正極板に対向する前記セパレータの少なくとも一方の面に微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設け、前記充放電制御装置の充電終止電圧を4.3V以上に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオンを利用する非水電解質二次電池に関し、特に充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合でも良好に作動する非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信機器、携帯電子機器の主電源として利用されている非水電解質二次電池は、起電力が高く、高エネルギー密度である特長を有している。ここで用いられる正極活物質としてはコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)等がある。これらの正極活物質はリチウム(Li)に対し4V以上の電圧を有している。
【0003】
これらのリチウムイオンを利用したリチウムイオン二次電池では、電池の充電終止電圧を高く設定するほど高容量な電池が実現可能となるため、充電終止電圧の高電圧化が検討されている。
【0004】
それらの中でも、マンガン(Mn)を含むリチウムスピネル酸化物は高電位でも安定なため、充電終止電圧を4.0Vから4.5Vの範囲に設定する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特定の2種の正極活物質を混合することで、4.3V以上の充電終止電圧で作動させても良好なサイクル特性が得られることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−307781号公報
【特許文献2】特開2006−164934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合は、より高容量な電池が実現できるものの、充電終止電圧を高めることにより正極活物質の構造劣化及び正極活物質表面における電解液の分解等が生じ易くなり、高温保存試験や充放電サイクル試験により電池の容量が大幅に低下するという課題があった。
【0007】
特に正極活物質の構造劣化は充電終止電圧が4.3V以上の領域で急激に加速され、これまでに報告されている特許文献1や特許文献2のように正極板の結着剤としてポリビニリデンジフルオライド(PVDF)を用いた場合には、正極活物質の構造劣化を抑制しているとは言えない状況であった。
【0008】
本発明はこの課題を解決し、通常作動状態での充電終止電圧を4.3V以上に設定しても、高温保存特性や充放電サイクル特性等、電池としての機能が正常に作動する高容量な非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回してなる極板群と非水電解質とを備えた非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池の本体に接続した充放電制御装置とを備えた非水電解質二次電池であって、前記正極板はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主体とする結着剤を含み、この正極板に対向する前記セパレータの少なくとも一方の面に微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設け
、前記充放電制御装置の充電終止電圧を4.3V以上に設定したことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合においても、セパレータや正極板の結着剤の酸化反応が起きにくく、正極活物質の構造劣化及び正極活物質の表面における電解液の分解等が大幅に抑制されるため、高温保存試験や充放電サイクル試験で容量が大幅に低下するという課題を解決でき、高容量で且つ高温保存特性や充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。
【発明の効果】
【0011】
充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合、正極活物質の構造劣化及び正極活物質の表面における電解液の分解等が大幅に加速され、その結果、高温保存特性や充放電サイクル特性が大幅に低下する傾向が観測されている。さらにそれらの電池を詳細に調べた結果、ポリエチレン(PE)を主体とするセパレータを用いて作製した電池では、正極板と接しているセパレータ表面のPEが大幅に酸化されており、また、正極板の結着剤にPVDFを主体に用いて作製した電池では、結着剤のPVDFも大幅に酸化されていることが明らかとなった。これらはPEを主体とするセパレータとPVDFを主体とする結着剤が、高電圧に充電された状態の正極活物質と直接接することにより、酸化反応を受けたものと考えられる。
【0012】
これらの結果より、充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合の正極活物質の構造劣化及び正極活物質の表面における電解液の分解等は、PEを主体とするセパレータの酸化反応と、PVDFを主体とする結着剤の酸化反応が大きく関与しており、それらの酸化反応を抑制することで正極活物質の構造劣化及び正極活物質の表面における電解液の分解等が抑制できる可能性が示唆された。
【0013】
本発明によれば、セパレータの正極板に接する面が微細孔を有する耐酸化性の高い化合物で形成されており、且つ前記正極板の結着剤がPTFEを主体としていることで、充電終止電圧を4.3V以上に設定した際の正極活物質の構造劣化及び正極活物質の表面における電解液の分解等を大幅に抑制し、高容量で且つ高温保存特性や充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回してなる極板群と非水電解質とを備えた非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池の本体に接続した充放電制御装置とを備えた非水電解質二次電池であって、前記正極板はPTFEを主体とする結着剤を含み、この正極板に対向する前記セパレータの少なくとも一方の面に微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設け、前記充放電制御装置の充電終止電圧を4.3V以上に設定した。
【0015】
このように正極板の結着剤としてPTFEを主体として用い、正極板に対向するセパレータの少なくとも一方の面に微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設けることで、充放電制御装置の充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合においても、正極結着剤の酸化反応、およびPEを主体とするセパレータを用いた場合のPEの酸化反応を抑制することが可能となり、それらの酸化反応を抑制することで正極活物質の構造劣化及び正極活物質の表面における電解液の分解等が抑制可能となる。その結果、高容量で且つ高温保存特性や充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供できる。
【0016】
また、正極板と対向するセパレータの面に設けた微細孔を有する耐酸化性の高い化合物は、ポリプロピレン、ポリアラミド、ポリアミドイミド、およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むことがより好ましい。
これによれば、耐酸化性と柔軟性を併せ持つ層の形成が可能となる効果が得られる。
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0018】
尚、ここで示す図は本発明の非水電解質二次電池の一例であって、本発明の請求項に表す構成を有していれば、同様の効果を得ることができる。
【0019】
(電池の作製)
図1は本実施例の非水電解質二次電池の一実施例を示す一部切欠斜視図である。
【0020】
図1に示したように、セパレータを介して帯状の正極板と負極板を複数回渦巻状に巻回して、極板群1を構成した。正極板と負極板にはそれぞれアルミニウム製の正極リード2およびニッケル製の負極リード3を接続した。それをアルミニウム製の電池ケース4内に収容した。正極リード2の他端をアルミニウム製の封口板5にスポット溶接し、また負極リード3の他端は封口板5の中心部にあるニッケル製の負極端子6の下部にスポット溶接した。電池ケース4の開口部周囲と封口板5とをレーザ溶接し、所定量の非水電解液を注入口7から注入した。最後に注入口7をアルミニウム製の栓を用いてレーザー溶接し、非水電解質二次電池を完成した。
【0021】
(1)正極板の作製
(1−1)結着剤としてPVDFを用いた正極板の作製
LiCo0.94Mg0.05Al0.01を正極活物質とした。この正極活物質100重量部に導電剤としてアセチレンブラック3重量部、結着剤としてPVDFが5重量部になるようにN−メチルピロリジノン(NMP)溶液を調整し、撹拌混合してペースト状の正極合剤を得た。次に、厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体とし、その両面に前記ペースト状の正極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラーで圧延を行い、所定寸法に裁断して正極板とした。
【0022】
(1−2)結着剤としてPTFEを用いた正極板の作製
LiCo0.94Mg0.05Al0.01を正極活物質とした。この正極活物質100重量部に導電剤としてアセチレンブラック3重量部、結着剤としてPTFE5重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に混濁させてペースト状の正極合剤を得た。次に、厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体とし、その両面に前記ペースト状の正極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラーで圧延を行い、所定寸法に裁断して正極板とした。
【0023】
尚、正極板用の導電剤としては、構成した非水電解質二次電池において実質的に化学的に安定な電子伝導性材料であればよい。例えば、グラファイト類、カーボンブラック類、導電性繊維類、金属粉末類、導電性ウィスカー類、導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などが挙げられ、これらを単独または混合物として用いても良い。
【0024】
(2)負極板の作製
平均粒径が約20μmになるように粉砕、分級した鱗片状黒鉛と結着剤のスチレン/ブタジエンゴム3重量部を混合した後、黒鉛に対しカルボキシメチルセルロースが1%となるようにカルボキシメチルセルロ−ス水溶液を加え、撹拌混合しペースト状の負極合剤とした。厚さ15μmの銅箔を負極集電体とし、その両面にペースト状の負極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラーを用いて圧延を行い、所定寸法に裁断して負極板とした。
【0025】
尚、負極活物質としては、例えばリチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質を主体とする材料として、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭素等が挙げられ、これらを単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。負極活物質の平均粒径は特に限定されないが、1〜30μmのものが好ましい。
【0026】
負極用の導電剤としては、電子伝導性材料であれば特に限定されないが、例えば、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維などが好ましい。
【0027】
負極用の結着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体などが好ましい。
【0028】
(3)セパレータの作製
(3−1)正極板に接する面にポリプロピレンからなる層を設けたセパレータの作製
ポリエチレン微孔性膜を基材として、正極板に接する面にポリプロピレン微孔性膜を多層化することにより、正極板に接する面にポリプロピレンからなる層を設けたセパレータを作製した。
【0029】
(3−2)正極板に接する面にポリアラミドからなる層を設けたセパレータの作製
NMP100重量部に対し無水塩化カルシウムを5重量部添加し、完全に溶解した。この溶液に、パラフェニレンジアミン(PPD)を3重量部添加後、テレフタル酸ジクロライド(TPC)5重量部を少しずつ滴下して重合反応によりポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)を合成した。得られた重合液を、さらに、塩化カルシウムを添加したNMP溶液にて希釈した。このPPTA液を、ポリエチレン微孔性膜からなる基材の正極板に接する面にバーコーターにより薄くコートし、60℃で加熱乾燥し、PPTAからなるアラミド樹脂層を形成し複合膜とした。この複合膜を、純水で十分に水洗して塩化カルシウムを除去することによりアラミド樹脂層を多孔質化し、正極板に接する面にポリアラミドからなる層を設けたセパレータを作製した。
【0030】
(4)非水電解液の作製
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを20℃において30:70の体積割合で調整した溶媒に1.0mol/lのLiPFを溶解したものを用いた。
【0031】
(5)電池の組立
<実施例1および比較例1>
結着剤としてPTFEを用いた正極板と負極板、および正極板に接する面に、前記(3−1)で作製したポリプロピレンからなる層を設けたセパレータを渦巻状に巻回し、これに前記(4)で調整した非水電解液を注液した後、密封栓して組み立てた角型リチウムイオン二次電池の本体に充放電制御装置を接続した。
【0032】
(実施例1の電池A1−1)
前記の通り作製した角型リチウムイオン二次電池を用い、最大電流600mAで、充電終止電圧を4.3Vとして定電圧充電を2時間行った。この角型リチウムイオン二次電池を本発明の実施例1の電池A1−1とした。
【0033】
(実施例1の電池A1−2)
充電終止電圧を4.4Vとした以外は実施例1の電池A1−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を本発明の実施例1の電池A1−2とした。
【0034】
(実施例1の電池A1−3)
充電終止電圧を4.5Vとした以外は実施例1の電池A1−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を本発明の実施例1の電池A1−3とした。
【0035】
(比較例1の電池B1−1)
充電終止電圧を4.1Vとした以外は実施例1の電池A1−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例1の電池B1−1とした。
【0036】
(比較例1の電池B1−2)
充電終止電圧を4.2Vとした以外は実施例1の電池A1−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例1の電池B1−2とした。
【0037】
<実施例2および比較例2>
セパレータとして、前記(3−2)で作製したポリアラミドからなる層を設けたセパレータを用いた以外は実施例1および比較例1と同様に充放電制御装置を接続した角型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0038】
(実施例2の電池A2−1)
前記の通り作製した角型リチウムイオン二次電池を用い、最大電流600mAで、充電終止電圧を4.3Vとして定電圧充電を2時間行った。この角型リチウムイオン二次電池を本発明の実施例2の電池A2−1とした。
【0039】
(実施例2の電池A2−2)
充電終止電圧を4.4Vとした以外は実施例2の電池A2−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を本発明の実施例2の電池A2−2とした。
【0040】
(実施例2の電池A2−3)
充電終止電圧を4.5Vとした以外は実施例2の電池A2−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を本発明の実施例2の電池A2−3とした。
【0041】
(比較例2の電池B2−1)
充電終止電圧を4.1Vとした以外は実施例2の電池A2−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例2の電池B2−1とした。
【0042】
(比較例2の電池B2−2)
充電終止電圧を4.2Vとした以外は実施例2の電池A2−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例2の電池B2−2とした。
【0043】
<比較例3>
結着剤としてPVDFを用い、セパレータとして微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設けなかったポリエチレン微孔性膜を用いた以外は実施例1および比較例1と同様に充放電制御装置を接続した角型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0044】
(比較例3の電池B3−1)
前記の通り作製した角型リチウムイオン二次電池を用い、最大電流600mAで、充電終止電圧を4.1Vとして定電圧充電を2時間行った。この角型リチウムイオン二次電池を比較例3の電池B3−1とした。
【0045】
(比較例3の電池B3−2)
充電終止電圧を4.2Vとした以外は比較例3の電池B3−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例3の電池B3−2とした。
【0046】
(比較例3の電池B3−3)
充電終止電圧を4.3Vとした以外は比較例3の電池B3−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例3の電池B3−3とした。
【0047】
(比較例3の電池B3−4)
充電終止電圧を4.4Vとした以外は比較例3の電池B3−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例3の電池B3−4とした。
【0048】
(比較例3の電池B3−5)
充電終止電圧を4.5Vとした以外は比較例3の電池B3−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例3の電池B3−5とした。
【0049】
<比較例4>
結着剤として、PVDFを用いた以外は実施例1および比較例1と同様に充放電制御装置を接続した角型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0050】
(比較例4の電池B4−1)
前記の通り作製した角型リチウムイオン二次電池を用い、最大電流600mAで、充電終止電圧を4.1Vとして定電圧充電を2時間行った。この角型リチウムイオン二次電池を比較例4の電池B4−1とした。
【0051】
(比較例4の電池B4−2)
充電終止電圧を4.2Vとした以外は比較例4の電池B4−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例4の電池B4−2とした。
【0052】
(比較例4の電池B4−3)
充電終止電圧を4.3Vとした以外は比較例4の電池B4−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例4の電池B4−3とした。
【0053】
(比較例4の電池B4−4)
充電終止電圧を4.4Vとした以外は比較例4の電池B4−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例4の電池B4−4とした。
【0054】
(比較例4の電池B4−5)
充電終止電圧を4.5Vとした以外は比較例4の電池B4−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例4の電池B4−5とした。
【0055】
<比較例5>
結着剤としてPVDFを用い、セパレータとして前記(3−2)で作製したポリアラミドからなる層を設けたセパレータを用いた以外は実施例1および比較例1と同様に充放電制御装置を接続した角型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0056】
(比較例5の電池B5−1)
前記の通り作製した角型リチウムイオン二次電池を用い、最大電流600mAで、充電終止電圧を4.1Vとして定電圧充電を2時間行った。この角型リチウムイオン二次電池
を比較例5の電池B5−1とした。
【0057】
(比較例5の電池B5−2)
充電終止電圧を4.2Vとした以外は比較例5の電池B5−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例5の電池B5−2とした。
【0058】
(比較例5の電池B5−3)
充電終止電圧を4.3Vとした以外は比較例5の電池B5−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例5の電池B5−3とした。
【0059】
(比較例5の電池B5−4)
充電終止電圧を4.4Vとした以外は比較例5の電池B5−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例5の電池B5−4とした。
【0060】
(比較例5の電池B5−5)
充電終止電圧を4.5Vとした以外は比較例5の電池B5−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例5の電池B5−5とした。
【0061】
<比較例6>
セパレータとして、微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設けなかったポリエチレン微孔性膜を用いた以外は実施例1および比較例1と同様に充放電制御装置を接続した角型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0062】
(比較例6の電池B6−1)
前記の通り作製した角型リチウムイオン二次電池を用い、最大電流600mAで、充電終止電圧を4.1Vとして定電圧充電を2時間行った。この角型リチウムイオン二次電池を比較例6の電池B6−1とした。
【0063】
(比較例6の電池B6−2)
充電終止電圧を4.2Vとした以外は比較例6の電池B6−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例6の電池B6−2とした。
【0064】
(比較例6の電池B6−3)
充電終止電圧を4.3Vとした以外は比較例6の電池B6−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例6の電池B6−3とした。
【0065】
(比較例6の電池B6−4)
充電終止電圧を4.4Vとした以外は比較例6の電池B6−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例6の電池B6−4とした。
【0066】
(比較例6の電池B6−5)
充電終止電圧を4.5Vとした以外は比較例6の電池B6−1と同様に作製した角型リチウムイオン二次電池を比較例6の電池B6−5とした。
【0067】
<放電容量の評価>
実施例1、実施例2および比較例1〜比較例6の角型リチウムイオン二次電池を用い、環境温度20℃で放電容量を測定した。放電条件は電流値200mA、放電終止電圧3.0Vの定電流で行った。
【0068】
<サイクル寿命特性の評価>
実施例1、実施例2および比較例1〜比較例4の角型リチウムイオン二次電池を用い、環境温度20℃で充放電サイクルを500回行った。充電条件は最大電流600mA、充電終止電圧を実施例1、実施例2および比較例1〜比較例4で作製した各電池の充電終止電圧として定電圧充電を2時間行った。放電条件は電流値600mA、放電終止電圧3.0Vの定電流で行い、500サイクル経過後の放電容量を測定し、初期容量に対する比率で評価した。
【0069】
<高温保存特性の評価>
実施例1、実施例2および比較例1〜比較例4の角型リチウムイオン二次電池を用い、85℃24時間の高温保存試験を行った。充電条件は環境温度20℃で、最大電流600mA、充電終止電圧を実施例1、実施例2および比較例1〜比較例4で作製した各電池の充電終止電圧として定電圧充電を2時間行った。放電条件は環境温度20℃で電流値600mA、放電終止電圧3.0Vの定電流で行い、各電池の放電容量を測定した。各電池において、高温保存前の放電容量に対する高温保存後の放電容量の比率を評価した。
【0070】
放電容量、サイクル寿命特性、および高温保存特性の評価結果を(表1)に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
(表1)からわかる通り放電容量の評価結果は、比較例1と実施例1、比較例2と実施例2、比較例3、比較例4、比較例5、および比較例6の角型リチウムイオン二次電池ともに充電終止電圧の上昇に従って放電容量が増大しており、充電終止電圧を上げることで、より高容量な電池が実現可能であることが確認できた。
【0073】
500サイクル後の容量維持率は、結着剤としてPVDFを用いた正極板、もしくはポリエチレン微孔性膜のセパレータの少なくともどちらか一方を用いている比較例3〜比較例6の角型リチウムイオン二次電池において、充電終止電圧を4.3V以上に設定した場合に極端な容量維持率の低下が認められた。
【0074】
一方、結着剤としてPTFEを用いた正極板と、正極板に対向する面にポリプロピレンからなる層を設けたセパレータ、もしくは正極板に対向する面にポリアラミドからなる層を設けたセパレータを組み合わせて作製し、充電終止電圧を4.3V〜4.5Vとした実施例1の電池A1−1〜電池A1−3および実施例2の電池A2−1〜電池A2−3は、
4.2V以下の充電終止電圧と同様に良好な500サイクル後の容量維持率を示すことがわかった。
【0075】
500サイクル後の容量維持率の低下が大きかった比較例3の電池B3−3〜電池B3−5、比較例4の電池B4−3〜電池B4−5、比較例5の電池B5−3〜電池B5−5、比較例6の電池B6−3〜電池B6−5を分解し解析を行った結果、正極板のX線回折分析を行うと、正極活物質の結晶構造が変化しており正極活物質が顕著に劣化していることがわかった。また、電解液も分解により大幅に涸渇した状態であった。
【0076】
高温保存後の容量維持率についても、500サイクル後の容量維持率と同じ傾向が認められた。
【0077】
以上の結果より、実施例1、実施例2においては結着剤としてPTFEを用いた正極板と、正極板に対向する面にポリプロピレンからなる層を設けたセパレータ、もしくは正極板に対向する面にポリアラミドからなる層を設けたセパレータを組み合わせて角型リチウムイオン二次電池を作製することにより、充電終止電圧が4.3V以上に設定された角型リチウムイオン二次電池において、充放電サイクルや高温保存における非水電解液の分解および正極活物質の劣化が抑制され、良好なサイクル寿命特性および高温保存特性が得られることがわかった。
【0078】
尚、正極板に対向するセパレータの少なくとも一方の面に微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層として、ポリアミドイミドからなる層、またはポリイミドからなる層を設けても良好なサイクル寿命特性および高温保存特性が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる非水電解液二次電池は、高容量で且つサイクル寿命特性や高温保存特性に優れるので非水電解液二次電池として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の非水電解液二次電池の一実施例を示す一部切欠斜視図
【符号の説明】
【0081】
1 極板群
2 正極リード
3 負極リード
4 電池ケース
5 封口板
6 負極端子
7 注入口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とをセパレータを介して巻回してなる極板群と非水電解質とを備えた非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池の本体に接続した充放電制御装置とを備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極板はポリテトラフルオロエチレンを主体とする結着剤を含み、この正極板に対向する前記セパレータの少なくとも一方の面に微細孔を有する耐酸化性の高い化合物の層を設け、前記充放電制御装置の充電終止電圧を4.3V以上に設定したことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記微細孔を有する耐酸化性の高い化合物がポリプロピレン、ポリアラミド、ポリアミドイミド、およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2008−234851(P2008−234851A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68408(P2007−68408)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】