説明

非水電解質電池

【課題】急速充電性能に優れた非水電解質電池を提供する。
【解決手段】正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極活物質含有層とを含む正極2と、平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム箔または平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム合金箔よりなる負極集電体と、前記負極集電体に担持され、平均粒径が1μm以下のリチウムチタン酸化物粒子を含有する負極活物質含有層とを含む負極3と、有機溶媒を含む非水電解質とを具備する非水電解質電池であって、電池容量1Ahに対する前記有機溶媒の量が6〜8g/Ahの範囲であり、且つ前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の対向面積が前記有機溶媒1gに対して130〜290cm2/gの範囲であることを特徴とする非水電解質電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野における急速な技術発展により、電子機器の小型、軽量化が進んだ結果、電子機器のポータブル化、コードレス化が進んでいる。それに伴い、電源である電池に対しても小型、軽量、高エネルギー密度化が求められている。この要求に応えるべく高エネルギー密度であるリチウム二次電池が開発され、薄型、軽量であるリチウム二次電池も商品化されている。
【0003】
ところで、二次電池において、数時間の充電を行なうことの煩わしさを解消すべく、特許文献1の様に急速充電および高出力放電可能な非水電解質二次電池が研究されている。特許文献1では平均結晶粒径が50μm以下のアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔からなる集電体を用い、一次粒子の平均粒径が1μm以下である粒度分布を有する負極活物質粒子を用いるなどして、急速充電および高出力放電が可能になるとしている。
【0004】
この非水電解質二次電池において、急速充電性能の更なる改善が要望されている。
【特許文献1】特開2005−123183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、急速充電性能に優れた非水電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る非水電解質電池は、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極活物質含有層とを含む正極と、
平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム箔または平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム合金箔よりなる負極集電体と、前記負極集電体に担持され、平均粒径が1μm以下のリチウムチタン酸化物粒子を含有する負極活物質含有層とを含む負極と、
有機溶媒を含む非水電解質と
を具備する非水電解質電池であって、
電池容量1Ahに対する前記有機溶媒の量が6〜8g/Ahの範囲であり、且つ前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の対向面積が前記有機溶媒1gに対して130〜290cm2/gの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、急速充電性能に優れた非水電解質電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
リチウムチタン酸化物は、リチウムの吸蔵放出に伴う膨張収縮の度合いが小さいため、急速充電サイクルを行なった場合の構造変化が少なく、負極活物質に用いるのが望ましい。リチウムチタン酸化物粒子の平均粒径を1μm以下にすることによって、リチウム拡散時間を短縮できると共に比表面積を向上することができる。より好ましい平均粒径は、0.3μm以下である。但し、平均粒径が小さいと、一次粒子の凝集が起こりやすくなったり、非水電解質の分布が負極に偏って正極での電解質の枯渇を招く恐れがあることから、下限値は0.001μmにすることが望ましい。
【0009】
平均粒径を1μm以下のリチウムチタン酸化物粒子を負極活物質として用い、かつ負極集電体に用いられるアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の平均結晶粒径を0.01〜50μmにする。これは、平均結晶粒径が50μmを超える場合、結晶粒径が大きく粒界の大きな微細組織を有しているためにピンホールやクラックを生じやすく、長い充放電サイクル寿命を得られず、また、平均結晶粒径が0.01μm未満の場合、微細組織に非晶質部分が多くなり充分な導電性が得られないからである。より好ましい平均結晶粒径は、0.01〜3μmである。
【0010】
本発明者らは、研究を重ねた結果、急速充電性能および高出力放電性能を改善するためには、上記負極活物質と負極集電体を用いるだけでは十分でなく、電池容量と正負極の対向面積と非水電解質の三つのバランスが非常に重要であり、このバランスを制御することによって始めて、急速充電性能および高出力放電性能が改善されることを見出した。
【0011】
すなわち、上記負極集電体と負極活物質を用いる非水電解質電池において、電池容量1Ahに対する有機溶媒の量(有機溶媒重量比)を6〜8g/Ahにし、且つ有機溶媒1gに対する正極活物質含有層と負極活物質含有層の対向面積(対向面積比)を130〜290cm2/gにすることによって、非水電解質電池のエネルギー密度を損なうことなく内部抵抗を低減することができ、急速充電性能と高出力放電性能を改善できることを究明したのである。
【0012】
有機溶媒重量比が6〜8g/Ahであっても、対向面積比を130cm2/g未満にすると、内部抵抗が大きくなるため、充電時間が長くなる。また、有機溶媒重量比が前記範囲内にある場合に、対向面積比が290cm2/gを超えると、セパレータ量や集電体量の増加による電池厚さの増加が顕著になるため、ポータブル機器等の小型、軽量化を要求される場合に不利となる。以上のことから対向面積比は130〜290cm2/gにすることが望ましい。さらに、対向面積比を150cm2/g以上にすることによって、2000サイクル以上の充放電を繰り返した際の電極抵抗の上昇を抑制することができる。対向面積比の増加に伴い、電極群に占めるセパレータや集電体の比率が高くなる。このため、優れた急速充電性能を確保しつつ、高い電池容量を得る点から、より実用的な範囲は250cm2/g以下である。したがって、より好ましい範囲は、150〜250cm2/gである。
【0013】
対向面積比が130〜290cm2/gであっても、有機溶媒重量比を6g/Ah未満にすると、内部抵抗が大きくなるため、充電時間が長くなる。また、対向面積比がこの範囲にある場合に、有機溶媒重量比が8g/Ahを超えると、正負極やセパレータに含浸されない過剰な非水電解質が残るため、小型、軽量化という点で不利になる。以上のことから有機溶媒重量比は6〜8g/Ahにすることが望ましい。より好ましい範囲は、6.5〜7.5g/Ahである。この範囲に設定することによって、電極群に非水電解質を短時間のうちに均一に含浸させることができる。
【0014】
ここで、正極活物質含有層と負極活物質含有層の対向面積とは、正極活物質含有層と負極活物質含有層がその間にセパレータを介して対向している面積を意味する。また、電池容量とは、非水電解質電池の公称容量を意味する。
【0015】
以下、負極、正極及び非水電解質について説明する。
【0016】
1)負極
この負極は、負極集電体と、負極集電体の片面もしくは両面に担持され、負極活物質、導電剤および結着剤を含む負極活物質含有層とを含む。
【0017】
負極集電体に用いられるアルミニウムおよびアルミニウム合金の平均結晶粒径は、以下に説明する方法で測定される。集電体表面の組織を金属顕微鏡観察し、1mm×1mmの視野内に存在する結晶粒子数nを測定し、下記(0)式より平均結晶粒子面積S(μm2)を算出する。
【0018】
S=(1×106)/n (0)
ここで、(1×106)で表わされる値は1mm×1mmの視野面積(μm2)で、nは結晶粒子数である。得られた平均結晶粒子面積Sを用いて下記(1)式から平均結晶粒径d(μm)を算出する。このような平均結晶粒径dの算出を5箇所(5視野)について行ない、その平均値を平均結晶粒径とする。なお、想定誤差は約5%である。
【0019】
d=2(S/π)1/2 (1)
平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム箔及びアルミニウム合金箔は、平均結晶粒径が90μmのアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔を50〜250℃で焼鈍処理後、室温に冷却することにより得ることができる。
【0020】
負極集電体の厚さは、高容量化のため、20μm以下が好ましい。より好ましい範囲は12μm以下である。また、負極集電体の厚さの下限値は、3μmにすることが望ましい。
【0021】
負極集電体に用いられるアルミニウムの純度は、耐食性の向上および高強度化のため、99.99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、アルミニウムの他に、鉄、マグネシウム、亜鉛、マンガン及びケイ素よりなる群から選択される1種類以上の元素を含む合金が好ましい。例えば、Al−Fe合金、Al−Mn系合金およびAl−Mg系合金は、アルミニウムよりさらに高い強度を得ることが可能である。一方、アルミニウムおよびアルミニウム合金中のニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は100ppm以下(0ppmを含む)にすることが好ましい。例えば、Al−Cu系合金では、強度は高まるが、耐食性は悪化するので、集電体としては不適である。アルミニウム合金中のアルミニウム含有量は、95重量%以上、99.5重量%以下にすることが望ましい。この範囲を外れると、平均結晶粒径を0.01〜50μmにしても十分な強度を得られない恐れがあるからである。より好ましいアルミニウム含有量は、98重量%以上、99.5重量%以下である。
【0022】
リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造のチタン酸リチウム(例えばLi4+xTi512(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のチタン酸リチウム(例えばLi2Ti37)などを挙げることができる。スピネル構造のチタン酸リチウムによると、急速充電性能改善において十分な効果を得ることができる。
【0023】
電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤として、炭素材料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等を挙げることができる。
【0024】
活物質と導電剤を結着させるための結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴムなどが挙げられる。
【0025】
負極の活物質、導電剤及び結着剤の配合比については、負極活物質は80重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上7重量%以下の範囲にすることが好ましい。
【0026】
負極の密度は、1.5g/cm3以上、5g/cm3以下にすることが望ましい。これにより、高い電池容量を得ることができる。さらに好ましい範囲は、2g/cm3以上、4g/cm3以下である。
【0027】
負極は、例えば、負極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布し、乾燥し、プレスを施すことにより作製される。
【0028】
2)正極
この正極は、正極集電体と、正極集電体の片面もしくは両面に担持され、正極活物質、導電剤および結着剤を含む正極活物質含有層とを含む。
【0029】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔を挙げることができる。アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔は、それぞれ、平均結晶粒径が50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、3μm以下である。これにより、正極集電体の強度が増大し、正極集電体を断絶させずに正極を高密度化することが可能となり、容量密度を向上することができる。平均結晶粒径が小さいほど、ピンポール及びクラックの発生を少なくすることが可能になると共に、正極集電体の化学的強度及び物理的強度を高くすることができる。集電体の微細組織を結晶質を有するものとして適度な硬さを確保するために、平均結晶粒径の下限値は0.01μmにすることが望ましい。
【0030】
正極集電体の厚さは、高容量化のため、20μm以下が好ましい。より好ましい範囲は15μm以下である。また、正極集電体の厚さの下限値は、3μmにすることが望ましい。
【0031】
正極活物質としては、酸化物、硫化物、ポリマーなどが挙げられる。酸化物として、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、例えばLixMn24またはLixMnO2などのリチウムマンガン複合酸化物、例えばLixNiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、例えばLixCoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、例えばLiNi1-yCoy2などのリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLiMnyCo1-y2などのリチウムマンガンコバルト複合酸化物、例えばLixMn2-yNiy4などのスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4などのオリピン構造を有するリチウムリン酸化物、例えばFe2(SO43などの硫酸鉄、例えばV25などのバナジウム酸化物などが挙げられる。なお、x、yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0032】
例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などが挙げられる。その他に、イオウ(S)、フッ化カーボンなども使用できる。好ましい正極活物質としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムリン酸鉄などが挙げられる。これら活物質によると、高い正極電圧が得られる。
【0033】
電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0034】
活物質と導電剤を結着させるための結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0035】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上7重量%以下の範囲にすることが好ましい。
【0036】
正極は、例えば、正極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を正極集電体に塗布し、乾燥し、プレスを施すことにより作製される。
【0037】
3)非水電解質
非水電解質としては、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される非水電解液、非水電解液と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質が挙げられる。高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0038】
電解質としては、例えば、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、Li(CF3SO23C、LiB[(OCO)22などが挙げられる。使用する電解質の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。
【0039】
有機溶媒中の電解質濃度は、0.5〜2mol/Lの範囲にすることが望ましい。
【0040】
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びγ−ブチロラクトン(GBL)よりなる群から選択される1種類または2種類以上を混合して用いることができる。上記種類以外の溶媒を使用すると、有機溶媒重量比を6〜8g/Ahにするのに必要な体積量が多くなり、電池のエネルギー密度が低下するだけでなく、急速充電性能を改善することが困難となる。
【0041】
非水電解質電池内の有機溶媒の重量は、ガスクロマトグラフ法により計測される。まず電池を分解し、正極、負極、セパレータ及び外装容器をアセトン中に浸漬し、有機溶媒(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びγーブチロラクトン)をアセトン中に抽出する。この抽出液をガスクロマトグラフ法にて、固定相にCBP−1を、移動相にヘリウムガスを用いて分析する。定量は、測定に供される有機溶媒(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びγーブチロラクトン)の既知量を同一条件で分析して得た検量線により行う。
【0042】
4)容器
容器には、ラミネートフィルム製容器や、金属製容器などが使用される。容器の形状は非水電解質二次電池の形態に応じたものにする。非水電解質二次電池の形態としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、電気自動車等に積載される大型電池等が挙げられる。
【0043】
ラミネートフィルムの厚さの好ましい範囲は、0.5mm以下である。また、ラミネートフィルムの厚さの下限値は、0.01mmにすることが望ましい。
【0044】
一方、金属製容器の板厚の好ましい範囲は、0.5mm以下である。また、金属製容器の板厚の下限値は、0.05mmにすることが望ましい。
【0045】
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層と金属層を被覆する樹脂層とを含む多層フィルムを挙げることができる。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔であることが好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子から形成することができる。
【0046】
ラミネートフィルム製容器は、例えば、ラミネートフィルムを熱融着により貼り合わせることで得られる。
【0047】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていることが望ましい。アルミニウム及びアルミニウム合金それぞれの平均結晶粒径は50μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径を50μm以下にすることにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属製容器の強度が増大し、容器の肉厚を薄くしても十分な機械的強度を確保することができる。なお、より好ましくは、10μm以下である。また、平均結晶粒径の下限値は0.01μmにすることが望ましい。これらの特徴は、高温条件、高エネルギー密度等が求められる電池、例えば、車載用二次電池に好適である。負極集電体と同様の理由で、アルミニウムの純度は99.99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、アルミニウム及びアルミニウム合金は、それぞれ、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量を100ppm以下にすることが好ましい。金属製容器の封口は、レーザーにより行うことができる。
【0048】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0049】
まず、正極端子が引き出されている方向と負極端子が引き出されている方向が同じになっている扁平型非水電解質電池を図1〜図3を参照して説明する。
【0050】
図1に示すように、扁平型の電極群1は、正極2及び負極3をその間にセパレータ4を介在させて偏平形状に捲回した構造を有する。帯状の正極端子5は、正極2に電気的に接続されている。一方、帯状の負極端子6は、負極3に電気的に接続されている。この電極群1は、両方の長辺と一方の短辺に封止部8が形成されているラミネートフィルム製容器7内に収納されている。図1及び図2に示すように、正極端子5と負極端子6の先端は、容器7の短辺側の封止部8から引き出されている。
【0051】
図3に示すように、正極2は、正極集電体2aと、正極集電体2aの一方もしくは両面に担持された正極活物質含有層2bとを含む。負極3は、負極集電体3aと、負極集電体3aの一方もしくは両面に担持された負極活物質含有層3bとを含む。セパレータ4は、正極活物質含有層2bと負極活物質含有層3bの間に介在されている。
【0052】
次いで、正極端子が引き出されている方向と負極端子が引き出されている方向が互いに反対向きになっている扁平型非水電解質電池を図4〜図7を参照して説明する。
【0053】
図4に示すように、扁平型の電極群1は、一方の短辺側端面から正極端子5が引き出されており、かつ他方の短辺側端面から負極端子6が引き出されている。正極端子5及び負極端子6は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの導電性材料から形成される。電極群1は、例えば、図4に示すように、セパレータ4が九十九に折られており、重なり合ったセパレータ間にシート状の正極2とシート状の負極3が交互に挿入されている。シート状の正極2は、正極集電体と、正極集電体の片面もしくは両面に積層された正極活物質含有層とを含む。正極端子5は、図5に示すように、正極集電体の短辺の中央付近が長辺方向に突出したものである。正極端子5は、各正極2から引き出されており、溶接により一つに束ねられている。一方、シート状の負極3は、負極集電体と、負極集電体の片面もしくは両面に積層された負極活物質含有層とを含む。負極端子6は、図4に示すように、負極集電体の短辺の中央付近が長辺方向に突出したものである。負極端子6は、各負極3から引き出されており、溶接により一つに束ねられている。
【0054】
図4の電極群1が収納される容器を図6に示す。図6に示すように、容器9は、ラミネートフィルムに例えば深絞り加工あるいはプレス加工を施すことにより形成された矩形状の凹部からなる電極群収納部10と、ラミネートフィルムのうちの加工が施されていない平板部からなる矩形状の蓋体11とを有する。ラミネートフィルムを点線に沿って容器側に折り返すと、電極群収納部10に蓋体11を被せることができる。蓋体11の内面は、電極群収納部10の開口部周縁の三辺12a〜12cと例えば熱融着により接合される。図7は、蓋体11が電極群収納部10の開口部周縁の三辺12a〜12cに接合され、蓋体11を下にして配置された状態を示している。ラミネートフィルムには、例えば、熱可塑性樹脂層と樹脂層との間に金属層が配置されたラミネートフィルムを使用することができる。熱可塑性樹脂層が電極群収納部10及び蓋体11の内面に位置することによって、電極群収納部10に蓋体11を熱融着により接合することができる。熱可塑性樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等から形成される。金属層は、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔であることが好ましい。また、樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子から形成することができる。
【0055】
電極群1は非水電解質を保持した状態で容器9の電極群収納部10に収納される。図7に示すように、正極端子5は、電極群収納部10の開口部周縁の短辺12aと蓋体11との間から外部に引き出されている。負極端子6は、電極群収納部10の開口部周縁の反対側の短辺12bと蓋体11との間から外部に引き出される。電極群収納部10の開口部周縁の長辺12cと蓋体11は、熱融着により接合された後、ほぼ垂直に折り曲げられている。
【0056】
扁平型の電極群は、前述した図1に例示されるように正極と負極をセパレータを介して扁平形状に捲回したものでも、図4に例示されるように九十九状に折り重ねられたセパレータの間に正極と負極を交互に介在させたものでも良い。あるいは、正極、負極およびセパレータを積層するものであっても良い。セパレータの形状は、袋状あるいはシート状にすることができる。さらには、正極、負極およびセパレータを渦巻状に捲回した電極群を2個以上積層させるものであっても良い。正極および負極を積層する場合、歩留まりという点からセパレータを九十九状に折ることが好ましい。
【0057】
セパレータとしては、例えば、合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを用いることができる。
【0058】
[実施例]
以下、本発明の実施例について、前述した図面を参照して説明する。なお、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
<負極の作製>
負極活物質として、Li吸蔵電位が1.55V(vs.Li/Li+)で、Li4Ti512で表され、スピネル構造を有し、下記表1に示す平均粒径のチタン酸リチウム粉末を用意した。
【0060】
負極活物質の粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所 型番SALD−300)を用いた。まず、ビーカー等に試料約0.1gを入れた後、界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌し、攪拌水槽に注入した。2秒間隔で、64回光強度分布を測定し、粒度分布データを解析し、累積度数分布が50%の粒径(D50)を平均粒径とした。
【0061】
この負極活物質と、導電剤として平均粒径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で90:7:3となるように配合し、これらをn-メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。
【0062】
一方、厚さ15μmで、純度99.99%で、下記表1に示す平均結晶粒径を有するアルミニウム箔を負極集電体として用意した。
【0063】
得られた負極集電体にスラリーを塗布し、乾燥した後、プレスを施すことにより、負極集電体に負極活物質含有層を担持させ、負極を作製した。
【0064】
<正極の作製>
活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)と、導電剤として黒鉛粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で87:8:5となるように配合し、これらをn-メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させてスラリーを調製した。厚さ15μmで、純度99.99%で、下記表1に示す平均結晶粒径を有するアルミニウム箔にスラリーを塗布し、乾燥した後、プレスを施すことにより、正極集電体に正極活物質含有層を担持させ、正極を作製した。
【0065】
容器(外装部材)の形成材料として、厚さが0.1mmのアルミニウム含有ラミネートフィルムを用意した。このアルミニウム含有ラミネートのアルミニウム層は膜厚約0.03mmであった。アルミニウム層を補強する樹脂には、ポリプロピレンを使用した。このラミネートフィルムを熱融着で貼り合わせることにより、容器(外装部材)を得た。
【0066】
次いで、正極に帯状の正極端子を電気的に接続すると共に、負極に帯状の負極端子を電気的に接続した。厚さ約20μmのポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを正極に密着させて被覆した。セパレータで被覆された正極に負極を対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回して電極群を作製した。この電極群をプレスして扁平状に成形した。容器(外装部材)に扁平状に成形した電極群を挿入した。
【0067】
ECとPCとGBLが体積比で1:1:1の割合で混合された有機溶媒に、リチウム塩のLiBF4を1.5mol/L溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液を容器内に注液し、図1に示すような、扁平型のリチウム二次電池を作製した。
【0068】
なお、作製した電池において、電池容量1Ahに対する有機溶媒重量(有機溶媒重量比)および有機溶媒重量1gに対する正極活物質含有層と負極活物質含有層の対向面積(対向面積比)が下記表1に示す値となるように電解液量および正負極の対向面積を設定した。
【0069】
(実施例2〜11及び比較例1〜5)
有機溶媒の種類、有機溶媒重量比、対向面積比、平均結晶粒径、平均粒径を下記表1に示す値に設定すること以外は、実施例1で説明したのと同様な構成のリチウム二次電池を作製した。なお、実施例12で使用した有機溶媒の組成は、ECとPCが体積比1:1で混合されたものであり、実施例13で使用した有機溶媒の組成は、ECとGBLが体積比1:1で混合されたもので、比較例1で使用した有機溶媒の組成は、ECとPCとGBLが体積比1:1:1で混合されたものであった。
【0070】
得られた電池において、25℃にて20Cの急速充電を2.8Vまで行い、充電時間を計測した。ここで、充電時間とは、充電状態から25℃にて1Cのレートで2.0Vまで放電を行なった時の放電容量を100%とし、充電容量が前記放電容量に対して80%に達するまでの時間とする。
【0071】
また、サイクル試験では、25℃にて20Cで2.8Vまでの急速充電を10分間行った後、25℃にて1Cで2.0Vまで放電を行なう充放電サイクルを繰り返し行った。この時の1サイクル目の放電容量を100%とした時、放電容量の維持率が80%になるまでのサイクル数を示す。
【表1】

【0072】
表1から明らかな通りに、有機溶媒重量比については、6〜8g/Ahの実施例1,2の方が、有機溶媒重量比が6g/Ah未満の比較例1に比して充電時間が短く、急速充電サイクル特性にも優れていた。また、対向面積比が130〜290cm2/gである場合に有機溶媒重量比が8g/Ahを超えていると、電極群に含浸されない過剰な電解液が容器内に残った。よって、エネルギー密度を損なうことなく急速充電性能を向上させるために、有機溶媒重量比は6〜8g/Ahの範囲にすることが望ましい。
【0073】
対向面積比については、130〜290cm2/gの実施例3,4,8,9の方が、対向面積比が130cm2/g未満の比較例2に比して充電時間が短くなった。また、有機溶媒重量比が6〜8g/Ahである場合に対向面積比が290cm2/gを超えていると、セパレータ量や集電体量の増加によって電池厚さが増加した。よって、エネルギー密度を損なうことなく急速充電性能を向上させるために、対向面積比は130〜290cm2/gの範囲にすることが好ましい。また、対向面積比が150cm2/g以上の実施例8の方が、対向面積比が130cm2/gの実施例3よりもサイクル寿命が長かった。
【0074】
実施例5,6及び比較例3,4の比較から、有機溶媒重量比が6〜8g/Ahで、かつ対向面積比が130〜290cm2/gの範囲内であっても、平均結晶粒径が0.01〜50μmの範囲から外れていると、充電時間が長くなることがわかった。一方、実施例1,7及び比較例5の比較から、負極活物質の平均粒径が1μmを超えている場合にも、有機溶媒重量比と対向面積比の特定による効果が得られないことを確認した。
【0075】
よって、優れた急速充電性能を得るために、負極集電体の平均結晶粒径を0.01〜50μm、リチウムチタン酸化物粒子の平均粒径を1μm以下、有機溶媒重量比を6〜8g/Ah、同時に対向面積比を130〜290cm2/gにすることが望ましい。
【0076】
さらに、実施例10,11の結果から、有機溶媒の種類をECとPCの混合溶媒あるいはECとGBLの混合溶媒に変更しても、十分な急速充電性能を得られることを確認することができた。
【0077】
本実施例のLiBF4以外にも前述の様に電解質には、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)、LiN(C25SO22、Li(CF3SO23C、LiB[(OCO)22などが挙げられ、1種類または2種類以上の電解質を用いることができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る非水電解質電池の部分切欠斜視図。
【図2】図1の非水電解質電池を電池厚さ方向に切断した際に得られる断面図。
【図3】図2のA部の拡大断面図。
【図4】本発明の別な実施形態に係る非水電解質電池で用いられる電極群を模式的に示した斜視図。
【図5】図4の電極群の平面図。
【図6】図4の電極群が収納される容器の斜視図。
【図7】本発明の別な実施形態に係る非水電解質電池を示す斜視図。
【符号の説明】
【0080】
1…電極群、2…正極、3…負極、4…セパレータ、5…正極端子、6…負極端子、7,9…容器、8,12a〜12c…封止部、10…電極群収納部、11…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極活物質含有層とを含む正極と、
平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム箔または平均結晶粒径が0.01〜50μmのアルミニウム合金箔よりなる負極集電体と、前記負極集電体に担持され、平均粒径が1μm以下のリチウムチタン酸化物粒子を含有する負極活物質含有層とを含む負極と、
有機溶媒を含む非水電解質と
を具備する非水電解質電池であって、
電池容量1Ahに対する前記有機溶媒の量が6〜8g/Ahの範囲であり、且つ前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の対向面積が前記有機溶媒1gに対して130〜290cm2/gの範囲であることを特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
電池容量1Ahに対する前記有機溶媒の量が6.5〜7.5g/Ahの範囲であり、且つ前記正極活物質含有層と前記負極活物質含有層の対向面積が前記有機溶媒1gに対して150〜250cm2/gの範囲であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びγ―ブチロラクトンよりなる群から選択される少なくとも1種類の溶媒から構成されることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記リチウムチタン酸化物はスピネル構造を有することを特徴する請求項1〜3いずれか1項記載の非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−98107(P2008−98107A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281767(P2006−281767)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】