説明

非球形樹脂微粒子の製造方法

【課題】乾燥工程におけるエネルギー削減、有機溶剤に起因する環境負荷を抑制しつつ、架橋型樹脂微粒子を生産性よく製造することができる樹脂微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】光硬化型樹脂原料に二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を噴霧し、霧化した光硬化型樹脂原料のエアロゾルに2段階以上の光照射することを特徴とする非球形樹脂微粒子の製造方法である。光硬化型樹脂原料としては、モノマー、オリゴマー、及びポリマーのうちから選ばれる少なくとも1種と硬化剤とを含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂添加剤、化粧品、インク、トナー、成型材料、スペーサ等において使用される非球形樹脂微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂微粒子はナノオーダーから数十ミクロンまで大きさを変えることにより様々な特性を発現させることができる。樹脂微粒子は、光学材料、研磨材、樹脂添加剤、化粧品、インク、トナー、成型材料、スペーサ等として使用され、産業上必要不可欠なものとなっている。また、ダルマ型、イイダコ型、金平糖型などの非球形粒子は、球形粒子よりも光学特性、研磨特性等を変化させることができるという利点を有している。
【0003】
従来、樹脂微粒子を製造する方法として乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等が知られている。乳化重合法は疎水性のモノマーを水中に分散させ、界面活性剤、重合開始剤の存在下で重合を行うものである。界面活性剤ミセル内部が疎水的であるため、重合はミセル内部で進行し、サブミクロン以下の粒径の、分布の狭い樹脂微粒子を得ることができる。例えば、この技術は非特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、懸濁重合法は疎水性のモノマーを機械的な攪拌によって懸濁させ、液滴をそのまま樹脂粒子化する方法である。分布は広いが、数ミクロンから数十ミクロンの樹脂粒子を得ることができる。例えば、この技術は非特許文献2に開示されている。
また、分散重合法は有機溶剤中でのソープフリー乳化重合法といえる方法であり、サブミクロンから数ミクロンの粒径の、分布の狭い樹脂粒子を得るのに適している。例えば、この技術は非特許文献3に開示されている。
【0005】
また、近年、超臨界技術を用いた噴出法により微小な樹脂粒子を製造する方法も研究されている。この技術はRESS法(Rapid Expansion of Supercritical Solution)と呼ばれるものであり、超臨界二酸化炭素に樹脂を溶解し、その後急速に大気圧下に噴出することで、析出によって樹脂微粒子を得るものであり、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−239915号公報
【特許文献2】特開2010−90244号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】尾身信三ら(編)、高分子微粒子の最新技術と用途展開、シーエムシー、1997年発行
【非特許文献2】田中眞人ら、化学工学論文集、Vol.12、p83、1986
【非特許文献3】尾身信三:高分子微粒子の最新技術と用途展開,尾身信三ら(編),シーエムシー,東京,p23 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的とする粒子径の樹脂微粒子を得るためには、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法等の製造法を使い分けることができる。これらの手法による樹脂微粒子重合時に多官能性モノマーを配合することで、架橋した樹脂粒子を製造できる。一方、乳化重合法、懸濁重合法は水中において、また分散重合法は有機溶剤中で樹脂微粒子を得る方法であるため、乾燥した粉体を得るためには、分散媒の蒸発させる工程が必要であり、エネルギーの消費が必要となる。特に分散重合法はミクロンサイズかつ粒子径分布の狭い樹脂微粒子を得るのに適した方法であるが、乾燥粉体を得るためには大量の溶剤を揮発させる必要があり、環境負荷が懸念される。
【0009】
一方、超臨界技術を用いた噴出法により微小な樹脂粒子を製造する技術(RESS法)では、超臨界二酸化炭素を使用するため、乾燥工程が不要で、環境負荷が低いという利点を有している。しかし、予め重合したポリマーを超臨界二酸化炭素に溶解させる必要があるため、不溶性の架橋樹脂を用いて、樹脂微粒子を製造することはできない。また、一般に超臨界二酸化炭素に対するポリマーの溶解度は低いため、RESS法には生産性に課題がある。
【0010】
以上の問題を解決するため、本発明者等は、光又は熱硬化型樹脂原料に、二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を噴霧し、霧化した光又は熱硬化型樹脂原料のエアロゾルに光照射をする樹脂微粒子の製造方法を提案した(特許文献2参照)。当該樹脂微粒子の製造方法により上記諸問題は解決されたが、得られる微粒子の形状は球形であり、非球形の微粒子は得られなかった。
【0011】
本発明は以上の課題に鑑みなされたもので、乾燥工程におけるエネルギー削減、有機溶剤に起因する環境負荷を抑制しつつ、架橋型非球形樹脂微粒子を生産性よく製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。すなわち、
(1)光硬化型樹脂原料に、二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を噴霧し、霧化した光硬化型樹脂原料のエアロゾルに対し2段階以上の光照射をすることを特徴とする非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0013】
(2)前記光硬化型樹脂原料が、モノマーと硬化剤とを含有することを特徴とする前記(1)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0014】
(3)前記光硬化型樹脂原料が、モノマー、オリゴマー及びポリマーから選ばれる少なくとも1種と硬化剤とを含有することを特徴とする前記(1)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0015】
(4)前記モノマー又はオリゴマーが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、グリシジル基及びアセチレン性不飽和基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0016】
(5)前記モノマーがアクリレート又はメタクリレートであることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0017】
(6)前記光硬化型樹脂原料の粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0018】
(7)前記光硬化型樹脂原料を高圧容器に導入し、二酸化炭素を加圧導入して溶解させることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0019】
(8)前記光硬化型樹脂原料と二酸化炭素とを配管内で混合しつつ、光硬化型樹脂原料を二酸化炭素に溶解させることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0020】
(9)前記加圧状態における加圧圧力が3MPa以上30MPa以下であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0021】
(10)前記光硬化型樹脂原料の二酸化炭素への溶解時の温度が20℃以上100℃以下であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0022】
(11)前記光硬化型樹脂原料に二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を流通式配管に噴霧しエアロゾルを形成した後、2段階以上の光照射によりエアロゾルを硬化させることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0023】
(12)前記流通式配管の噴霧口に対して反対側に吸引部を設け、吸引を行いながら、2段階以上の光照射により流通式配管内で前記混合溶液のエアロゾルを硬化させることを特徴とする前記(11)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0024】
(13)前記流通式配管の光照射部間に粒子同士の衝突を促進させる整流手段を設置することを特徴とする前記(12)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【0025】
(14)前記吸引部の吸引方向上流側に樹脂微粒子の捕集を可能とするフィルターを設けることを特徴とする前記(12)又は(13)に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、乾燥工程におけるエネルギー削減、有機溶剤に起因する環境負荷を抑制しつつ、架橋型非球形樹脂微粒子を生産性よく製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】光硬化型樹脂原料に高圧二酸化炭素を加圧導入して溶解させるための装置構成の概略を示す構成図である。
【図2】光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とをそれぞれインラインで高圧容器に導入し混合する装置構成の概略を示す構成図である。
【図3】光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とをそれぞれインラインで高圧容器に導入し、回転子を用いて攪拌混合する装置構成の概略を示す構成図である。
【図4】光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを流通式配管内で混合、溶解しエアロゾルを得るための装置構成の概略を示す構成図である。
【図5】光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを混合し流通式配管内にエアロゾルとして噴霧し、該エアロゾルに紫外光を照射して硬化して得られた樹脂微粒子をポンプで吸引して捕集する装置構成の概略を示す構成図である。
【図6】光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを混合し流通式配管内にエアロゾルとして噴霧し、該エアロゾルに紫外光を照射して硬化して得られた樹脂微粒子をポンプで吸引して捕集する、実施例で使用した装置構成の概略を示す構成図である。
【図7】実施例で使用した光硬化ユニット(1基)の正面(噴霧方向垂直面)図である。
【図8】実施例で使用した光硬化ユニット(1基)の側面(噴霧方向)図である。
【図9】図8のA−B線に沿った断面(噴霧方向垂直面)図である。
【図10】実施例で使用した光硬化ユニット噴霧口の正面図(A)及び側面図(B)である。
【図11】実施例で使用した光硬化ユニット吸引口の正面図(A)及び側面図(B)である。
【図12】実施例1で得られた非球形樹脂微粒子のSEM像を示す図面代用写真である。
【図13】実施例2で得られた非球形樹脂微粒子のSEM像を示す図面代用写真である。
【図14】実施例3で得られた非球形樹脂微粒子のSEM像を示す図面代用写真である。
【図15】比較例1で得られた樹脂微粒子のSEM像を示す図面代用写真である。
【図16】比較例2で得られた樹脂微粒子のSEM像を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
樹脂微粒子製造において、乾燥工程におけるエネルギー使用の削減、有機溶剤を使用しないことによる環境低負荷を実現するには、水・有機溶剤中での重合反応を行わない樹脂微粒子の製造方法が必要である。また、高圧・超臨界二酸化炭素の噴出法において、架橋型の樹脂微粒子を効率よく製造するためには、原料としてポリマーだけでなくモノマー・オリゴマーを含有した樹脂原料を用いる必要がある。さらに架橋樹脂微粒子を製造するためには、光硬化型樹脂原料を高圧の二酸化炭素に溶解し、これらを噴出・霧化した後、光照射を行うことで樹脂微粒子を製造することが必要である。
【0029】
本発明は、乾燥工程におけるエネルギー削減、有機溶剤に起因する環境負荷を抑制するため、高圧二酸化炭素による噴出法を用いつつ、光硬化型樹脂原料と噴出・霧化後の光重合反応を組み合わせることで、架橋型樹脂微粒子を生産性よく製造するものである。さらに、光硬化型樹脂原料のエアロゾルに対して光照射を2段階以上に分割して行うことで、初期の段階で半硬化状態の微粒子を生成させ、その直後に半硬化状態の粒子が衝突する過程で、非球形の異形微粒子となり、続く2段階目以降の光照射にて硬化が終了した非球形微粒子を製造する方法を提供するものである。
【0030】
本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法は、光硬化型樹脂原料に二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を噴霧し、霧化した光硬化型樹脂原料のエアロゾルに2段階以上の光照射をすることを特徴としている。
すなわち、本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法は、樹脂原料として光硬化型樹脂組成物を用い、該樹脂原料と二酸化炭素とを加圧状態で混合した溶液を噴霧し、霧化した光硬化型樹脂原料のエアロゾルに2段階以上の光照射をすることで、非球形樹脂微粒子を製造するものである。当該2段階以上の光照射において、1段階目の光照射によって、光硬化型樹脂原料の粒子を半硬化させ、その後粒子同士を衝突させた後、2段階目以降の光照射を行い本硬化を実施し、非球形粒子を製造するものである。
以下に、本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法について詳述する。
【0031】
光硬化型樹脂原料としてはモノマーと硬化剤を含有することが好ましい。さらに、光硬化型樹脂原料としてモノマー、オリゴマー及びポリマーから選ばれる少なくとも1種と硬化剤との組み合わせも好適に使用される。
【0032】
使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、グリシジル基、及びアセチレン性不飽和基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。反応性の観点から、モノマー、オリゴマーとしてアクリレート又はメタクリレートが好適に使用される。
【0033】
例えば、モノマー、オリゴマーとしては以下のものが好適に使用される。すなわち、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアセタール、N−ビニルピロリドン、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンアクリル酸エステル、ジグリシジルフタレートメタクリル酸エステル、N,N,N’,N’−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンアクリル酸エステル、トリグリセリンとメチルアクリレートとのエステル交換反応物、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチル、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、エチル−3−ジメチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールアクリレート、カプロラクトン変性テトラフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールピバリン酸エステルジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、メチル−3−メトキシアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートウレタン化2,4−トリレンジイソシアナート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレート、ジアリルクロレンデート、ジアリルアジペート、ジアリルジグリコレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールビスアリルカルボネート、ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,3−トリメチル−1−アクリロイルアミノメチル−5−アクリロイルアミノシクロヘキサノン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアクリル−s−トリアジン、N−アクリロイルヒドロキシエチルマレイミド、N,N’−ビス(β−アクリロイルヒドロキシエチル)アニリン、N−メチロールアクリルアミドとジエチレングリコールジグリシジルエーテルの反応性生物、9−(ω−メトキシブテニル)アントラキノール、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアナートヘキサメチレン)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン変性プロキシル化ビスフェノールAフマレートポリエステル樹脂、N−ビニルカルバゾール、メチルアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジメタクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性ウレタンジアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が好ましく使用される。
【0034】
光硬化型樹脂原料に使用される硬化剤の種類に制限は無いが、カルボニル化合物、アゾ化合物、有機イオウ化合物、鉄(II)/過酸化水素、ハロゲン化合物、感光性色素類、有機金属化合物、金属カルボニル類、アゾビスイソブチロニトリル、イミダゾール類等が使用される。特にカルボニル化合物、ベンゾインエーテル類が好ましく使用される。具体的には、2’2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フェエルグリオキシリックアシッドメテルエステル、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェエル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを例示することができる。
【0035】
さらに上記光硬化型樹脂原料には増感剤を含んでもよい。使用される増感剤として、カンファーキノン、ミヒラーケトン、2−ナフタレンスルホニルクロリド、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンナフト(1,2−α)チアゾール、メチレンブルー、tert−ブチルオキシピパレート、トリエタノールアミンを例示することができる。
【0036】
上記のようにして得られる光硬化型樹脂原料の粘度は10,000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは7,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは5,000mPa・s以下であり、当該粘度の下限としては通常0.5mPa・sである。当該粘度を10,000mPa・s以下とすることで、噴出・霧化工程の際、光硬化型樹脂原料が微細なエアロゾルを形成し、所望の微細な液滴とすることができる。
【0037】
前記光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを混合するために、一旦光硬化型樹脂原料を高圧容器に導入した後に、二酸化炭素を加圧導入して溶解させることが好ましい。例えば、図1に示す構成とすることができる。図1は、光硬化型樹脂原料に高圧二酸化炭素を加圧導入して溶解させるための装置構成の概略を示す構成図である。図1に示す装置は、二酸化炭素が充填されたCOボンベ10と、二酸化炭素を高圧とし下流側に送り込むポンプ12と、バルブ14と、光硬化型樹脂原料が収容される高圧容器16とを有し、それぞれ、接続配管を介して接続されている。この装置においては、光硬化型樹脂原料を予め高圧容器16内に導入後、COボンベ10からの二酸化炭素をポンプ12を用いて高圧二酸化炭素とし、この高圧二酸化炭素をインラインで高圧容器16内に導入するバッチ式の処理がなされる。
【0038】
また、図2に示すように、高圧二酸化炭素と光硬化型樹脂原料とを2系統の導入路を用い、高圧容器に導く構成としてもよい。図1に示す装置では、光硬化型樹脂原料を予め高圧容器に導入した後、高圧二酸化炭素を導入したが、これに対し、図2に示す装置は、光硬化型樹脂原料が収容された原料液容器22から、接続配管を介して高圧容器16に導入するものであり、高圧容器16と原料液容器22との間の接続配管にはバルブ18及びポンプ20が設けられている。高圧容器16への光硬化型樹脂原料の導入はバルブ18及びポンプ20により機構的に行われる。つまり、図2に示す装置は、ポンプ12、20を用い、光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とをそれぞれインラインで高圧容器16に導入するものである。
【0039】
さらに図3に示すように、高圧容器内において光硬化型樹脂原料を高圧二酸化炭素と迅速に混合するために攪拌手段を設けることができる。図3に示す装置は、高圧容器内部の液体を攪拌する機構を設けた点において図2の装置とは異なり、それ以外の構成は図2の構成と同様であり、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図3に示す装置においては、高圧容器16の内部に回転子26が入れられており、高圧容器16の下方にその回転子26を回転させるためのスターラー24が配置されている。この構成により、予め高圧容器16に回転子26を入れておき、スターラー24を稼働して回転子26を回転させて攪拌しながら両者を混合することもできる。
【0040】
以上の図1〜図3に示す装置は、高圧容器を用い、該高圧容器内で高圧状態にて、光硬化型樹脂原料と二酸化炭素とを混合するものであるが、図4に示す装置は、高圧容器を用いずに両者を混合しエアロゾルを得るための装置である。図4においては、図2、図3と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、相違点を以下に説明する。図4に示す装置においては、光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素を混合しエアロゾルを得るために、ポンプ12、20を用いて光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを連続的に供給し、両者が合流する合流配管28内で混合して、光硬化型樹脂原料を二酸化炭素に溶解させる。そして、この混合溶液を合流配管28のさらに下流(図示せず)において、エアロゾルとして流出させる。
【0041】
光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを混合しエアロゾルを得る際の圧力は3MPa以上であることが好ましく、4MPa以上であることがより好ましく、5MPa以上であることがさらに好ましい。また、30MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、15MPa以下であることがさらに好ましい。当該圧力を上記範囲とすることで、光硬化型樹脂原料に対する二酸化炭素の溶解がより充分であり、噴出の際、より微細なエアロゾルの形成することができる傾向がある。
【0042】
光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素を混合しエアロゾルを得る際の温度は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃であることがさらに好ましい。また、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。当該温度上記範囲とすることで、光硬化型樹脂原料に対する二酸化炭素の溶解が充分となり、噴出の際、より微細なエアロゾルが形成するとともに、光硬化型樹脂原料の安定性をより維持することができる傾向がある。
【0043】
上記温度は、光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素を混合する際の高圧容器・配管及び噴出孔の温度を示している。均質な混合状態を保持するために、混合及び噴出時の温度差がない方が好ましい。
【0044】
次いで、光硬化型樹脂原料のエアロゾルを硬化させる方法について説明する。図5は、図1に示す装置と、噴霧されたエアロゾルを硬化するための流通式配管36とを接続配管を介して連結した構成を示している。流通式配管36は、吸引方向上流側(高圧容器16側)の端部に、導入された混合溶液を噴霧するためのノズル32が配され、下流側(ポンプ40側)の端部の吸引部38には接続配管が連結され、該接続配管はポンプ40が接続されている。さらに、流通式配管36の外部近傍の2箇所に光源34が配設されている。この2箇所の光源34により、流通式配管36内をノズル32から吸引部38に向けて流動するエアロゾルに対して2段階の光照射をすることができる。なお、使用する光源に制約はないが、波長が400nm以下の紫外光を使用することができる。
また、図5においては、光源34は2箇所に設けたが、光源は3箇所以上に設けてもよい。光源を3箇所以上に設ければ、3段階以上の光照射が可能である。つまり、光源をn箇所に設ければ、n段階の光照射が可能である。
【0045】
図5に示す構成では、前記光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素を混合後、流通式配管36内に噴霧しエアロゾルを形成した後、光源34から2段階の光照射によりエアロゾルを硬化させることで樹脂微粒子を得ることができる。さらに前記流通式配管36において、ノズル32とは反対側に位置する吸引部38からポンプ40により吸引を行いながら、光照射により流通式配管36内で前記光硬化型樹脂原料のエアロゾルを硬化させることもできる。吸引を行うことにより流通式配管内でエアロゾルが移動し、エアロゾルの流速を制御することで光照射時間を制御することができる。特にノズル32に近い位置での1段階目の光照射で半硬化状態の前記光硬化型樹脂原料のエアロゾルを形成し、その半硬化状態の粒子が衝突した後、吸引部38付近で2段階目の光照射をすることで硬化した非球形樹脂微粒子を製造することができる。
【0046】
本発明の製造方法においては、上述の通り、光硬化型樹脂原料と高圧二酸化炭素とを混合して得られたエアロゾルに対して2段階以上の光照射をするのであるが、半硬化状態の微粒子を衝突させて非球形の異形微粒子を生成させることから、n段階の光照射を行う場合は、n−1段階目までは半硬化状態となる光照射時間を設定する必要がある。例えば、2段階の光照射をする場合の1段階目においては、半硬化状態となる程度に照射時間を設定する必要がある。
また、本発明の製造方法において光照射の段階数は特に制限はないが、通常は2〜5段階とすることが効率的に非球形樹脂微粒子を生成することができる点で好ましい。
【0047】
一方、流通式配管36内であって、2箇所の光源の中間に、整流板等の整流手段を設け、半硬化状態の前記光硬化型樹脂原料のエアロゾルを攪拌し、半硬化状態の微粒子間の衝突頻度を増大させて、ダンベル型又はラズベリー型の非球形樹脂微粒子の形成を促進することができる。整流手段としては、エアロゾルを攪拌でき、微粒子の衝突頻度を増大させるものであればその形態を問わない。整流板としては、流通式配管内の流路の径よりも小さな開口を有する板状部材やらせん状の配管等とすることができる。
また、流通式配管との吸引部38に捕集用のフィルターを設置することで、樹脂微粒子を効率よく捕集することが可能となる。
【0048】
以上の説明では、流通式配管内を移動するエアロゾルに対し、それぞれ離間させて配備した2箇所の光源から光照射することで2段階の光照射を行ったが、本発明はその構成に限定されない。例えば、所定の容器内にエアロゾルを封じ込み、その状態で1つの光源から光照射をして微粒子を半硬化状態とし、その直後に容器内のエアロゾルを攪拌し非球形微粒子を生成させ、さらにその後、上記光源から2段階目の光照射を行う構成としてもよい。
【0049】
本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法においては、光硬化型樹脂材料中に光重合可能な多官能のモノマーやオリゴマーを使用することで架橋構造を有する非球形樹脂微粒子を得ることができる。得られた樹脂微粒子は、塗料用粘性改質剤、樹脂添加剤、化粧品、インク、トナー、成型材料、診断薬、スペーサ等に使用される。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
(光硬化型樹脂原料)
暗室内でメチルメタクリレート1.5gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3.5gとの混合物に対し、硬化剤としてチバガイギー社製Irgacure−379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン)0.75gを混合し、光硬化型樹脂原料を得た。B型粘度計を用いて粘度を測定したところ、150mPa・sであった。その後暗室内で耐圧工業製20mL高圧容器内に上記光硬化型樹脂原料の導入を行った。
【0052】
(霧化装置)
霧化装置の概略図を図6に示す。液化二酸化炭素ボンベ10と耐圧工業製20mL高圧容器16の間にポンプ12(日本分光製、超臨界二酸化炭素用ポンプPU−980B)及びバルブ14をSUS製の接続配管を介して接続した。また、高圧容器16のもう一方の出口にヒートブロックによる温度調整機能とバルブを備えた耐圧硝子社製ノズル(孔径0.13mm)32とをSUS製の接続配管を介して接続した。
【0053】
(硬化装置)
図6に示す流通式配管36は、7基のSUS製の光硬化ユニット50が連結してなり、そのうち1つの光硬化ユニット50の正面図(噴霧方向に垂直面)を図7に、側面(噴霧方向)を図8に、図8のA−B線に沿った断面図(噴霧方向に垂直面)を図9に示す。一つの光硬化ユニット50は、外観が略直方体形状で、エアロゾルを流通するための流路となる空洞を有する筒状の構造体である。光硬化ユニット50の正面は、一辺が300mmの正方形の角部を切り欠いた八角形状をなし、その内側にユニット内部の空洞に通ずる八角形状の開口部52が位置している。その開口部の内径(図7の符号a)は、240mmである。なお、図7は光硬化ユニット50の正面図を示すが、その裏面側から見た状態も図7と同様である。
【0054】
光硬化ユニット50の四つの側面のそれぞれには、図8に示すように、直径120mmの円形の開口部54を備え、直径140mmの円形の石英ガラス56を介して任意の場所にUVランプ34を装着可能とした。UVランプ34を装着しない場合は、図示しない直径140mmの円形のSUS板を装着して開口部54を閉鎖して配備した。この光硬化ユニット50を、空洞が連通しエアロゾルの流路が形成されるように7基直列に連結し、全長2100mmの流通式の光硬化装置を製作した。図10に示すように、噴霧口付近には、直径100mmの開口部58を設けたSUS板60を設置し、上記霧化装置のノズル32を配した。一方、図11に示すように吸引部には内径120mm(外径130mm)の円筒型開口部62を設けたフタ64を設置し、円筒状のポリエチレン製シートを介してADVANTEC製ガラス濾紙(GBR−100、直径90mm)を備えたガラス製の捕集器38を設置した。捕集器38にダイアフラムポンプ40(排気能力30L/分)を8基並列に接続し、光硬化装置内のエアロゾルが吸引側に捕集できるようにし、噴霧されたエアロゾルが光硬化装置内で流通するようにした。噴霧口から2番目のユニットの左右両側にアズワン社製UVランプHLR100T−2(H)を2基設置し、光硬化ユニット内部に紫外光を導入可能とし、1段階目の光硬化反応を起こすようにした。また、噴霧口から6番目のユニットの上下左右に同様のUVランプ4基を設置し、2段階目の光硬化反応を起こすようにした。
【0055】
(噴霧及び硬化)
上記光硬化型樹脂原料を導入した高圧容器16を40℃に保ったウォーターバス内に設置し、高圧二酸化炭素の導入を行った。圧力が8MPaで平衡状態になるのを確認後、予め紫外光を照射し、ダイアフラムポンプ40を作動させた上記SUS製光硬化装置内に光硬化型樹脂原料を噴霧した。噴霧時のノズルの温度を40℃に保った。噴霧後10分間紫外光照射及び吸引を行った。所定時間ごとにフィルターの交換を実施し、目詰まりを防止した。(株)日立ハイテクノロジーズ製走査電子顕微鏡(SEM)SU−70を用い、フィルター上に捕集された粒子の観察を行った。噴霧5分後のフィルター捕集物のSEM像を図12に示す。本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法によってサブミクロンから2μm程度のラズベリー型樹脂微粒子の生成が確認された。
【0056】
[実施例2]
(光硬化型樹脂原料)
暗室内にて光硬化型樹脂原料としてメチルメタクリレート1.5gとペンタエリスリトールテトラアクリレート3.5gとの混合物に対し、硬化剤としてチバガイギー社製Irgacure−819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)の0.25g及びIrgacure−651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)の0.5gを混合し、光硬化型樹脂原料を得た。B型粘度計を用いて粘度を測定したところ、310mPa・sであった。その後暗室内で耐圧工業製20mL高圧容器内に上記光硬化型樹脂原料の導入を行った。
【0057】
(噴霧及び硬化)
噴霧口から3番目と4番目のユニット間に直径50mmの円形開口部を持つ仕切り板(整流手段)を設置した以外は実施例1と同様の方法で光硬化型樹脂原料の噴霧及び硬化を行った。噴霧後5分後のフィルター上の捕集物のSEM像を図13に示す。本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法によってサブミクロン程度のダンベル型の非球形樹脂微粒子の生成が確認された。
【0058】
[実施例3]
(光硬化型樹脂原料)
実施例1と同様に調製した。
(噴霧及び硬化)
噴霧口から2番目のユニットの上下左右にUVランプを4基、6番目のユニットの上下左右にUVランプを4基に設置した以外は実施例1と同様の方法で光硬化型樹脂原料の噴霧及び硬化を行った。噴霧後5分後のフィルター上の捕集物のSEM像を図14に示す。本発明の非球形樹脂微粒子の製造方法によってサブミクロンから1μm程度のダンベル型の非球形樹脂微粒子の生成が確認された。
【0059】
[比較例1]
(光硬化型樹脂原料)
実施例1と同様に調製した。
(噴霧及び硬化)
噴霧口から5番目のユニットの上下左右にUVランプを4基、6番目のユニットの上下左右にUVランプを4基に設置し、集中して1段階で光照射した以外は実施例1と同様の方法で光硬化型樹脂原料の噴霧及び硬化を行った。噴霧後5分後のフィルター上の捕集物のSEM像を図15に示す。サブミクロンから3μm程度の球形樹脂微粒子の生成が確認された。
【0060】
[比較例2]
(光硬化型樹脂原料)
実施例1と同様に調製した。
(噴霧及び硬化)
噴霧口から5番目のユニットの左右両側にUVランプを2基、6番目のユニットの上下左右にUVランプを4基に設置し、集中して1段階で光照射した以外は実施例1と同様の方法で光硬化型樹脂原料の噴霧及び硬化を行った。噴霧後5分後のフィルター上の捕集物のSEM像を図16に示す。サブミクロンから3μm程度の球形樹脂微粒子の生成が確認された。
【0061】
[比較例3]
(光硬化型樹脂原料)
暗室内にて光硬化型樹脂原料として日立化成工業(株)製FA−MECH(γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート)5gに対し、硬化剤としてチバガイギー社製Irgacure−907の40質量%アセトン溶液0.4gを混合し、光硬化型樹脂原料を得た。B型粘度計を用いて粘度を測定したところ、10,000mPa・sであった。その後暗室内で耐圧工業製20mL高圧容器内に上記光硬化型樹脂原料の導入を行った。
【0062】
(噴霧及び硬化)
加圧圧力を8MPaとした以外は実施例1と同様の方法で光硬化型樹脂原料の噴霧及び硬化を行った。しかし比較例3の光硬化型樹脂原料は噴霧時に微細な霧状とならず、泡状の噴出物となってしまい、エアロゾル化及びその後の微粒子化が困難であった。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
表1より、本発明の製造方法に従った実施例1〜3においては、良好に非球形樹脂微粒子を製造することができたのに対し、比較例1、2においては、球形樹脂微粒子が優先的に製造されていた。また比較例3では樹脂原料をエアロゾル化することができず、樹脂微粒子の生成には至らなかったことが分かる。
実施例1〜3では、RESS法とは異なり(超臨界)二酸化炭素に対する樹脂微粒子の溶解性とは無関係に樹脂微粒子を製造することができる。さらに、分散媒を蒸発させる工程が不要であるため、エネルギー削減、環境負荷の抑制に寄与する。
【符号の説明】
【0066】
10 COボンベ
12 ポンプ
14 バルブ
16 高圧容器
18 バルブ
20 ポンプ
22 原料液容器
24 スターラー
26 回転子
28 合流配管
32 ノズル
34 光源
36 流通式配管
38 吸引部
40 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型樹脂原料に、二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を噴霧し、
霧化した光硬化型樹脂原料のエアロゾルに対し2段階以上の光照射をすることを特徴とする非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記光硬化型樹脂原料が、モノマーと硬化剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記光硬化型樹脂原料が、モノマー、オリゴマー及びポリマーから選ばれる少なくとも1種と硬化剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記モノマー又はオリゴマーが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、グリシジル基及びアセチレン性不飽和基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記モノマーがアクリレート又はメタクリレートであることを特徴とする請求項2又は3に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記光硬化型樹脂原料の粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記光硬化型樹脂原料を高圧容器に導入し、二酸化炭素を加圧導入して溶解させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記光硬化型樹脂原料と二酸化炭素とを配管内で混合しつつ、光硬化型樹脂原料を二酸化炭素に溶解させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記加圧状態における加圧圧力が3MPa以上30MPa以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記光硬化型樹脂原料の二酸化炭素への溶解時の温度が20℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記光硬化型樹脂原料に二酸化炭素を加圧状態で混合した溶液を流通式配管に噴霧しエアロゾルを形成した後、2段階以上の光照射によりエアロゾルを硬化させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記流通式配管の噴霧口に対して反対側に吸引部を設け、吸引を行いながら、2段階以上の光照射により流通式配管内で前記混合溶液のエアロゾルを硬化させることを特徴とする請求項11に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記流通式配管の光照射部間に粒子同士の衝突を促進させる整流手段を設置することを特徴とする請求項12に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記吸引部の吸引方向上流側に樹脂微粒子の捕集を可能とするフィルターを設けることを特徴とする請求項12又は13に記載の非球形樹脂微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−224700(P2012−224700A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91855(P2011−91855)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】