非経口投与のためのレボシメンダン製剤
本発明は、レボシメンダンの医薬組成物、特には静脈投与のための医薬組成物、および該組成物を製造するための方法を提供する。本発明の組成物は、溶解性促進剤を使用することなく、増強された溶解性および安定性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本件出願は、2006年12月28日に出願され、参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願60/882,311号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、特に静脈内投与のためのレボシメンダンの新規な医薬組成物、および該組成物の製造方法に関する。本発明の組成物は、溶解性促進剤を使用することなく、増強された溶解性および安定性を有する。
【背景技術】
【0003】
レボシメンダン(Simdax(登録商標)、オリオンファーマ、エスポー、フィンランド)は、うっ血性心不全の治療に使用される静脈内用薬物である。レボシメンダンは、心臓トロポニンC(cTnC)と相互作用し、cTnCにおけるカルシウム誘導構造変化を安定化させ、cTnCと薄いフィラメント上のその近接物との相互作用を促進し、したがって収縮性を高める。レボシメンダンの正の筋収縮性効果は、細胞内カルシウムの増加なしで、かつ心筋の酸素消費のわずかな増加または増加なしで達成される。レボシメンダンはまた、脈管の調子(tone)の調節に関与するK−ATPチャネルを活性化する。K−ATPチャネルの活性化の結果生じる過分極によって、レボシメンダンは、前収縮された血管筋を緩和することができる。例えば、心筋虚血の治療におけるレボシメンダンの使用が、米国特許第5,512,572号明細書に記載されている;冠状バイパス手術後の冠グラフト攣縮におけるその使用が、米国特許第6,593,329号明細書に記載されている;肺高血圧および腎不全におけるレボシメンダンの使用が、米国特許第6,462,045号明細書および国際公開第04/060375号パンフレットにそれぞれ記載されている。
【0004】
例えば、静脈内投与などの、非経口による薬物の投与は、いくつかの利点を提供する。これらは、即時の応答、治療的な応答の制御の容易さ、および、薬物の不活性化または患者の無意識の状態のため経口投与に勝ることなどである。
【0005】
レボシメンダンは、約6.2のpKaおよび水中での低溶解度(0.04mg/mL)を有する結晶粉末として合成される。レボシメンダンの入手可能な製剤は、エタノール濃縮物であり、そして例えば、国際公開第01/19334号パンフレットに記載されている。非経口投与の前に、レボシメンダンのエタノール濃縮物は、例えば、5%デキストロース、1/2生理食塩水、乳酸加リンガー液、生理食塩水または他の大量非経口用希釈剤などの適切な水溶液中に希釈される。エタノール濃縮物の希釈の後、希釈された薬物溶液のpHは、pH3.0程度まで低くなるかもしれない。水溶液中でのレボシメンダンの溶解度は、溶液のpHがpKa値よりも低くなった場合に低下することが知られている。より低いpHでのその低い溶解度のため、レボシメンダンは、希釈後に沈殿し始めるかもしれない。
【0006】
この問題を克服するために、レボシメンダンの現在の製剤は、希釈の後、水溶液中で、溶解状態で維持され得るレボシメンダンの量を増加させる、溶解性促進剤をも含む。界面活性剤、ならびに、例えばポリソルベート、ポリエチレングリコール、ポリオキサマーまたはポリビニルピロリドンおよび脂肪酸などのその他の可溶化剤を、この目的のために使用することができる。しかしながら、これらの物質のいくつかは、腎臓によって容易には除去されず、そして、レボシメンダンまたはその他の同時投与される薬物の安定性を妨げるかもしれない。加えて、特定の監督官庁は、患者に投与される製品中の溶解性促進剤の使用を是認しないかもしれない。
【0007】
したがって、溶解性促進剤を使用せず、かつ活性成分(すなわち、レボシメンダン)を溶液中で維持する、レボシメンダンの医薬組成物、とりわけ静脈内投与のための医薬組成物を提供する必要性があり、そして、これが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、活性成分の沈殿を防ぐ、水溶液のpHを増加させる薬物の使用を含む非経口投与のためのレボシメンダンの製剤に関する。
【0009】
ある局面では、本発明は、(a)ある量の(a quantity of)レボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;(b)薬学的に許容され得る希釈剤;および(c)薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物中で、ある量のレボシメンダンは、有機溶媒中に溶解されてもよい。ある実施態様では、ある量のレボシメンダンおよび有機溶媒は、薬物濃縮物として提供される。好ましくは、有機溶媒は、無水エタノールである。別の実施態様では、ある量のレボシメンダンは、凍結乾燥された形態であってもよい。好ましくは、医薬組成物は、医薬組成物のpHを該レボシメンダンのpKa付近まで増加させるために十分な量のアルカリ化剤または緩衝液を提供する。さらに好ましくは、pKaは約6.2である。別の好ましい実施態様では、希釈剤は、リンガー液、乳酸加リンガー液および生理食塩水からなる群より選択される。
【0010】
別の実施態様では、医薬組成物は、薬学的に許容され得る有機酸をさらに含む。好ましくは、有機酸は、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される。さらに好ましくは、有機酸はクエン酸である。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を増加させるための方法であって、レボシメンダンを水溶液およびアルカリ化剤または緩衝剤と混合する工程を含む方法を提供する。アルカリ化剤または緩衝剤は、該レボシメンダンと混合する前に、初めに水溶液と混合されてもよい。好ましくは、アルカリ化剤または緩衝剤は、重炭酸ナトリウムおよびトロメタミンからなる群より選択される。好ましくは、水溶液は、0.9%の塩化ナトリウムである。また、好ましくは、アルカリ化剤または緩衝剤は、重炭酸ナトリウムの4%溶液である。
【0012】
別の実施態様では、本発明は、静脈注射に適した組成物であって、(a)ある量のレボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、(c)安定性を促進させる量の、2から4までの範囲にあるpKaを有する薬学的に許容され得る有機酸;および(d)約6.3から約9.5の範囲にあるpHを有する薬学的に許容され得る水性希釈剤を含む組成物を提供する。好ましくは、有機溶媒は無水エタノールであり、そして、水性希釈剤は、生理食塩水および1/2生理食塩水からなる群より選択される。また、好ましくは、有機酸は、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される。さらになお好ましくは、有機酸は、クエン酸である。
【0013】
別の実施態様では、本発明は、パッケージ化された医薬製品であって:(a)ある量のレボシメンダン、(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、(c)薬学的に許容され得る有機酸、(d)薬学的に許容され得る希釈剤、および(e)薬学的に許容され得るアルカリ化剤を含む医薬製品を含む。医薬製品は、部分(a)、(b)および(c)を単一成分としてともにパッケージ化されてもよい。代わりに、医薬製品は、部分(a)および(b)を単一成分としてともにパッケージ化されてもよい。別の方法では、医薬製品は、部分(b)および(c)を1つの成分としてともにパッケージ化されてもよい。前述の実施態様のいずれかにおいて、医薬製品は、部分(d)および(e)を単一成分としてともにパッケージ化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】5%デキストロース中でのレボシメンダンの安定性に対するpHの効果を示すグラフである。
【図2】5%デキストロース中でのレボシメンダンの安定性評価の間のpH変化を示す棒グラフである。
【図3】0.01Mのクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液中でのレボシメンダンのpH安定性プロファイルを示すグラフである。
【図4】0.01Mのクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液中での分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図5】0.01Mのクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液中でのレボシメンダンの安定性試験の間のpH変化を示す棒グラフである。
【図6】種々の希釈剤中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図7】種々の希釈剤中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図8】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示す棒グラフである。
【図9】リン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示す棒グラフである。
【図10】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液およびリン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図11】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液およびリン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図12】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液およびリン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンにおけるpH変化を示すグラフである。
【図13】重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示すグラフである。
【図14】重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図15】重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図16】様々な濃度のエタノール存在下、重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示すグラフである。
【図17】SIMDAX(登録商標)と比較して、重炭酸緩衝1/2生理食塩水溶液および重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液を含むバッグ中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図18】SIMDAX(登録商標)と比較して、重炭酸緩衝1/2生理食塩水溶液または重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液のいずれか中のレボシメンダンを含むバッグ中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図19】SIMDAX(登録商標)と比較して、重炭酸緩衝1/2生理食塩水溶液または重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液のいずれか中のレボシメンダンを含むバッグ中での全ての分解生成物の生成を示すグラフである。
【図20】SIMDAX(登録商標)と比較して、クエン酸薬物濃縮物を用いた、重炭酸緩衝標準生理食塩水バッグ中での希釈後のレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図21】SIMDAX(登録商標)と比較して、クエン酸薬物濃縮物を用いた、重炭酸緩衝標準生理食塩水バッグ中でのレボシメンダンの、希釈後のレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中で他に定義されていない限り、本発明との関連において使用される科学的および技術的な用語は、当業者によって一般に理解されるような意味を有するであろう。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数の用語は複数を含み、そして、複数の用語は単数を含むであろう。本出願において、「または(or)」の使用は、他に言及されていない限り、「および/または(and/or)」を意味する。さらに、用語「含む(including)」の使用は、「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形と同様に、限定的ではない。
【0016】
ある局面では、本発明は、特に静脈内注入のための医薬組成物であって、活性成分として、レボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;薬学的に許容され得る希釈剤および薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝液を含む医薬組成物を提供する。レボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩は、処理のために初めに溶媒に溶解されてもよく、そして、溶媒がその後、医薬組成物を形成する前に留去されてもよい。例えば、レボシメンダンは、エタノール、t−ブチルアルコールまたは水などの溶媒中に溶解され、そしてその後、溶媒を留去するために、例えば凍結乾燥されてもよい。代わりに、医薬組成物は、薬学的に許容され得る溶媒(すなわち、留去される必要のない溶媒)を含んでもよい。ある実施態様では、レボシメンダンおよび溶媒は、薬物濃縮物の形態であってもよい。
【0017】
本明細書中で使用されるように、「レボシメンダン」は、[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]プロパンジニトリルを示す。
【0018】
当該技術分野において公知であるように、単語「溶媒」は、一般的に、固体、液体またはガス状の溶質を溶解し、結果として溶液となる化合物(通常、液体)を示す。「有機溶媒」は、有機化合物である溶媒であり、それらが炭素原子を含んでいることを意味している。好ましくは、本発明の医薬組成物は有機溶媒を含む。本発明において有用である、非限定的な有機溶媒の例は、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、グリセロール、t−ブチルアルコールおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定はされない。
【0019】
本明細書中で使用されるように、「希釈剤」は、希釈するためまたは活性成分を運ぶために使用される液体材料を示す。本発明に適した、非限定的な希釈剤の例は、5%デキストロース、5%グルコース、リンガー液、乳酸加リンガー液、生理食塩水および1/2生理食塩水を含む。希釈された医薬組成物が、より長い期間、例えば約10時間より長い期間、常温で保存され、そして、注入されるならば、希釈剤は、好ましくは、5%デキストロースまたは5%グルコース以外のものであろう。
【0020】
本明細書中で使用されるように、用語「薬学的に許容され得る」は、正常な医学的判断の範囲内で、妥当な恩恵/リスク比率に沿って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしに、ヒト組織および下級動物と接触する使用に適した、そして、それらの想定される使用に効果的である、希釈剤、薬剤、賦形剤、安定化剤などを示す。
【0021】
本明細書中で使用されるように、用語「アルカリ化剤」は、それが添加される溶液のpHを増加させる任意の化合物を示す。非限定的なアルカリ化剤の例は、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸塩、酢酸塩、および、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強塩基と、例えば炭酸、酢酸または乳酸などの弱酸との塩を含む。
【0022】
本明細書中で使用されるように、単語「緩衝剤」は、溶液のpHを調整/維持/制御する薬剤を示す。一般的に、緩衝剤は、酸性または塩基性溶液を特定のpH領域に移行させ、そしてその後、溶液をそのpH範囲に維持することで作用する。当該技術分野で公知であるように、緩衝剤は、例えば、様々な溶解度、酸性度、アルカリ度などの様々な特性を有する。本発明の目的のために、緩衝剤は、また、それが添加される溶液のpHを増加させるならば、アルカリ化剤として機能してもよい。好ましくは、アルカリ化剤および/または緩衝剤は、組成物のpHをレボシメンダンのpKaより上の値まで増加させる。本発明に適した、非限定的な緩衝剤の例は、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムを含む。本明細書中に記載されている、アルカリ化剤および緩衝剤の代表的な例は、本発明の範囲を制限する意図はなく、医薬組成物のpHを、その意図された使用のために十分な溶解状態にレボシメンダンを維持するレベルまで増加させる、薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤を考慮している。
【0023】
本明細書中で使用されるように、用語「有機酸」は、酸である有機化合物を示す。有機酸は、一般的に、カルボキシル基(−COOH)によって特徴付けられる弱酸である。好ましくは、有機酸は、2−ヒドロキシアルカン酸である。このような有機酸の例は、クエン酸、乳酸、酒石酸およびマレイン酸を含み、もっとも好ましくはクエン酸であるが、これらに限定はされない。
【0024】
一般的に、患者へ投与され得る静脈内用医薬溶液(水溶液など)のためには、組成物の活性成分は、組成物中に十分に溶解されること、すなわち可視粒子がないことが必要である。レボシメンダンの最終的な所望の濃度に依存して、その濃度を達成するために薬物が十分溶解されるように、水溶性組成物のpHは変わるかもしれない。例えば、0.05mg/mLの最終的な薬物濃度を含むレボシメンダン溶液は、薬物が溶解されるためには約7.2のpHを必要とし得る。より低い薬物濃度(例えば0.01mg/mL)を含む溶液のためには、より低いpH(例えば4.0未満)が、その濃度を達成できるように薬物を溶解し得る。医薬組成物中のレボシメンダンの溶解度および/または濃度を測定するための方法は、当業者にとって広く公知である。好ましい実施態様では、アルカリ化剤または緩衝液は、組成物のpHをレボシメンダンのpKaより上の値まで増加させる。
【0025】
本発明の個々の成分を製造するための方法は、当該技術分野において広く公知である。レボシメンダンの合成は、例えば、米国特許第5,569,657号明細書に記載されている。有機溶媒、希釈剤およびアルカリ化剤または緩衝剤を製造するための方法もまた、当業者にとって広く公知であり、そして、標準的な科学の教科書およびその他の出版された科学の文献中に見出すことができる。
【0026】
本明細書中で記載されている、本発明の医薬組成物は、典型的には、レボシメンダン濃縮物を形成させるために、初めにレボシメンダンを溶媒中に溶解させることによって製造され得る。好ましい溶媒は、エタノール(USP)などの無水アルコールである。結果的に得られる薬物濃縮物は、任意には、エタノールを留去するために凍結乾燥され得る(または別の方法で処理される)。凍結乾燥のための方法は、当業者にとって広く公知である。任意には、エタノール濃縮物はまた、有機酸を含んでいてもよい。
【0027】
有機酸は、薬物と混合される前に、または薬物が溶媒と混合された後に、溶媒と混合されてもよい。有機酸はまた、初めに薬物に添加され、そしてその後、溶媒と混合されてもよい。有機酸の量は、好ましくは濃縮物溶液の重量あたり、0.0005から2%、好ましくは0.01〜1%の範囲である。より好ましい実施態様では、有機酸はクエン酸である。さらになお好ましくは、クエン酸の量は、重量あたり0.03〜0.6%である。
【0028】
その後、凍結乾燥された薬物または薬物濃縮物は、アルカリ化剤または緩衝剤が添加された適切な希釈剤で希釈される。代わりに、希釈剤は、それが添加される溶液のpHを増加させる緩衝液であってもよい。希釈剤はまた、薬物の最終濃度を達成するために組成物を希釈する手段として役立つことに加えて、患者に投与する前に有機溶媒を希釈する。
【0029】
本発明の組成物を製造する、他の非限定的な方法も考慮される。例えば、レボシメンダンは、初めに有機溶媒に溶解され、そしてその後、アルカリ化剤と混合されてもよい。任意には、この調製物は、保存のために凍結乾燥されてもよい。その後、レボシメンダン/有機溶媒/アルカリ化剤の組み合わせが、希釈剤を用いて、適切な濃度に希釈されてもよい。別の実施例では、固形のアルカリ化剤が、固体のレボシメンダンに添加され、そして、混合された材料が有機溶媒中に溶解されてもよい。この組み合わせは、その後、適切な希釈剤で希釈することができる。さらに別の例では、固体のレボシメンダンが、有機溶媒に溶解されたアルカリ化剤と混合されてもよい。この組み合わせは、その後、適切な希釈剤と混合されてもよい。さらに別の例では、アルカリ化剤および希釈剤が混合され、そしてその後、この混合物がレボシメンダン濃縮物と混合されてもよい。別の実施態様では、アルカリ化剤および希釈剤は、レボシメンダン濃縮物と同時に混合されてもよい。
【0030】
上述したように、前述の全ての製造方法において、任意には、有機酸が、(薬物と混合する前に)有機溶媒と混合されてもよく、また、薬物が有機溶媒と混合された後に混合されてもよい(すなわち、有機酸が薬物濃縮物と混合される)。特定の作用機序に縛られることを望まないが、クエン酸は、冷蔵温度での保存中に、組成物に有害な影響を与えないが、とりわけ室温で、薬物/有機溶媒の組み合わせを安定化させるために機能することが知られている。上記で示したように、アルカリ化剤は、固体の形態でまたは溶液としてのいずれかで提供されてもよい。所望される場合には、その他の成分、例えば追加の安定化剤が、固体または液体のいずれかの形態で添加されてもよい。
【0031】
個々の成分の量は、成分の溶解度、および、最終の医薬組成物中で所望されるレボシメンダンの薬物濃度に依存するであろう。アルカリ化剤が、溶液の形態で添加される場合、所定の当業者は容易に、医薬組成物中の所望の最終的な薬物濃度を達成するために、その他の成分を調節および/または変化させることができる。
【0032】
別の局面では、本発明は、アルカリ化剤または緩衝液を用いて、レボシメンダンの安定性および溶解度を改良するための方法を提供する。特に、本発明は、レボシメンダンを水溶液およびアルカリ化剤または緩衝液と混合することによって、水溶液中でのレボシメンダンの安定性および溶解度を改良するための方法を提供する。上記で言及したように、必要とされる水溶液の量は、医薬組成物中の最終的な所望のレボシメンダン濃度に依存し、そして、必要とされるアルカリ化剤の量は、所望のレボシメンダンの溶解度に依存するであろう。当業者ならば、容易に、所望のレボシメンダン溶解度を達成するために必要なアルカリ化剤または緩衝液の量を滴定することが可能である。一般的な指針として、医薬組成物のより高いpHは、レボシメンダンをより多く溶解する。
【0033】
好ましくは、アルカリ化剤または緩衝液は、レボシメンダンを溶解状態に維持するために十分な量で提供される。より好ましくは、アルカリ化剤または緩衝液は、結果的に生じる組成物のpHを、レボシメンダンのpKa付近、またはそれ以上とするために十分な量で提供される。さらに、組成物の最終的なpH値は、その投与の際患者によって安全に許容され得る限界を超えるべきではない。好ましい実施態様では、医薬組成物のpHは、約pH6.0から約pH9.0の範囲である。より好ましい実施態様では、医薬組成物は、約pH6.2から約pH9.0の範囲である。別の好ましい実施態様では、pHは、約6.3から約9.0の範囲である。別の好ましい実施態様では、pHは、約6.3から約9.5の範囲である。
【0034】
好ましい実施態様では、本発明は、レボシメンダンおよびアルカリ化されたまたは緩衝された水溶液を含む組成物を提供する。好ましくは、レボシメンダンは、薬物のアルコール濃縮物である。また好ましくは、アルカリ化された水溶液は、重炭酸ナトリウムを含む生理食塩水である。典型的には、レボシメンダンのアルコール濃縮物は、アルカリ化された生理食塩水とは別個の容器に含まれる。非経口投与の直前に、レボシメンダンのアルコール濃縮物が、最終的な所望の治療用薬物濃度を達成するために、アルカリ化された生理食塩水と混合される。非経口用溶液を製造するために、アルカリ化された水溶液が、レボシメンダン濃縮物を含む容器に添加されてもよい。代わりに、レボシメンダン濃縮物およびアルカリ化された水溶液が、2つの溶液の混合を引き起こすために、振とうまたはその他の単純な操作によって貫通され得る物理的な障害物で仕切られた同じ容器に封入されてもよい。典型的には、レボシメンダン濃縮物は、約95〜100%の無水エタノールを含む。好ましい実施態様では、組成物は、脱水されたエチルアルコールに溶解された、レボシメンダン(2.5mg/mL)およびクエン酸(1〜2mg/mL)を含む。この濃縮物は、その後、アルカリ化剤または緩衝剤(好ましくは4%重炭酸ナトリウム溶液)が初めに加えられた標準生理食塩水を用いて、0.05mg/mLの最終的なレボシメンダン濃度を達成するために希釈される。
【0035】
別の実施態様では、本発明は、(a)ある量のレボシメンダン、(b)薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤および(c)薬学的に許容され得る希釈剤を含む、パッケージ化された医薬製品またはキットを提供する。レボシメンダンは、有機溶媒濃縮物から凍結乾燥された形態であってもよく、または、(有機溶媒中の)薬物濃縮物として提供されてもよい。任意には、パッケージ化された医薬製品は、有機酸を含んでいてもよい。レボシメンダン、有機溶媒(存在する場合)および有機酸(存在する場合)は、単一成分としてまたは個々の成分として、パッケージ化されてもよい。あるいは、レボシメンダンおよび有機溶媒が、1つの成分としてパッケージ化されてもよい。あるいは、有機溶媒が、1つの成分としてパッケージ化され、そして、レボシメンダンが、別の成分としてパッケージ化されてもよい。
【0036】
パッケージ化された医薬製品またはキットは、製品またはキットの材料を混合するための使用説明書をさらに含んでいてもよい。任意には、患者へ投与することができる濃度まで、組成物を希釈するための希釈剤を含んでいてもよく、または、希釈剤が、別の成分として供給されてもよい。医薬製品をパッケージ化するのに適切な全ての組み合わせが想定されている。最も好ましくは、希釈剤は、別の成分として(さもなければ、パッケージ化された医薬キットの一部として)維持され、そして、投与の前に速やかに使用される。
【0037】
医薬組成物中に含まれる、治療的に有効量のレボシメンダンは、例えば、組成物の投与経路、治療方法および治療される症状に依存する。一般的に、組成物中のレボシメンダンの量は、約0.001〜5mg/mLの範囲内である。ヒトにおけるレボシメンダンの1日の投与量は、投与経路、年齢、体重および患者の症状に依存して、約0.1〜50mg、好ましくは約0.2〜20mgの範囲内である。うっ血性心不全の治療のための、定常状態でのレボシメンダンの好ましい最高血漿レベルは、約1から約300ng/mL、より好ましくは、約10から約150ng/mL、および、とりわけ、約20から約60ng/mLの範囲内である。レボシメンダンは、約0.005〜100マイクログラム/キログラム/分(mcg/kg/min)、典型的には、0.01〜10mcg/kg/min、より典型的には、約0.02〜1mcg/kg/minの範囲の注入速度で、静脈投与され得る。継続的な注入をともなう、心不全の治療のため、適切な速度は、レボシメンダンの0.05〜0.4mcg/kg/minである。
【0038】
レボシメンダンの塩は、公知の方法によって製造されてもよい。薬学的に許容され得る塩は、活性医薬として有用である;しかしながら、好ましい塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩である。
【0039】
別の局面では、本発明は、水溶液中での希釈後の活性成分としてのレボシメンダンの溶解度を増加させるための方法であって、水溶液のpH値を増加させるための工程を含む方法を提供する。pHは、本明細書中に記載されているように、水溶液をアルカリ化剤または緩衝剤と混合することによって増加されてもよい。好ましいアルカリ化剤は、重炭酸ナトリウムまたはトロメタミンである。希釈後の水溶液の好ましいpHは、約6.3から約9.5の間である。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、単なる例証であり、そして、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ定義される本発明の範囲についての限定として解釈されるべきではないことが理解される。開示された実施態様に対する様々な変更および修正は、当業者にとって明らかであろう。
【0041】
材料:レボシメンダンAPIおよびSIMDAX(登録商標)製剤は、オリオンファーマ(エスポー、フィンランド)から得られた。脱水されたエチルアルコール、米国薬局方(USP)が、レボシメンダン製剤を製造するために使用された。市販で入手可能な4%重炭酸ナトリウム添加溶液(Neut(登録商標)、ホスピーラ、レイクフォレスト、IL、NDC 0409−06609−02)が、希釈剤のpHを増加させるために使用された。大量非経口(large volume parenteral)(LVP)希釈剤が、ホスピーラから市販で購入されるか、または、アボットジャパンによって提供された。
【0042】
装置:光遮蔽型自動微粒子測定法は、USP要件に基づく試験を行うことが可能である、市販で入手可能なHIAC器機で行われた。HPLCが、化学分析のために使用された。
【0043】
方法:溶解度実験は、過剰量の固体の薬物を溶媒に混合し、内容物をろ過し、そして、ろ液を分析することによって行われた。安定性の検討は、指定された溶媒中に薬物溶液を希釈し、試料を必要な温度にて保存し、そして、時間の関数としてHPLCによる分析を行うことによって実施された。pH測定は、ガラス電極を用いて電位差測定的に行われた。薬物製品試料は、外観(物理的状態、透明度、可視粒子)および色について、視覚的に試験された。
【0044】
薬物製剤試料は、混和性(compatibility)実験を行うためにLVP容器中で希釈された。試料は、レボシメンダンおよび分解生成物について、HPLCにより分析された。光遮蔽型自動微粒子測定法が、容器あたりの、>10μmおよび>25μmの粒子数を測定するために用いられた。該方法は、USP<788>に基づいている。
【0045】
HPLC法が、化学分析のために用いられた。薬物試料が、直接または(移動相またはエタノールで)希釈後、HPLCカラム上に注入された。レボシメンダンおよび/または分解生成物の参照標準が、定量のために用いられた。HPLC法のパラメータの概要が、表1に提供されている。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1
pH安定性の検討は、5%デキストロース輸液を用いて行われた。5%デキストロース輸液のpH(pH=4.54)は、塩酸を使用することによって下方に調節され、そして、4%重炭酸ナトリウム溶液の増加量を添加することによって上方に調節された。エタノール中に溶解されたレボシメンダンは、その後、レボシメンダンの最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、最終的なエタノール濃度が2%となるように、5%デキストロース溶液に添加された。pH調節された5%デキストロース中でのレボシメンダンの安定性が、HPLCによって常温で計測された。
【0048】
図1は、約2日間の経過における、時間の関数としてのレボシメンダンの損失を示している。データは、希釈剤のpHが3.22より高い場合の、増大された分解速度を表している。安定性溶液のpHもまた、初期(薬物が添加されていない)、薬物添加後、そして実験の最後で計測された。これらのデータは、図2に示されており、そして、それらは、とりわけ初めのpHが4.54および5.74である場合に、試料におけるpHの有意な上方へのシフトを示している。この結果は、おそらく、これらの溶液の限られた緩衝能力のためであった。これは、緩衝液中でpH安定性の検討を行うことによって対応された(下記の実施例2を参照のこと)。
【0049】
実施例2
pH安定性の検討は、20℃で、3.5から7.5までの範囲のpH値に調整された、クエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液(0.01M)を用いることによって行われた。エタノール中に溶解されたレボシメンダンが、薬物の最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、最終的なエタノール濃度が2%であるように、緩衝溶液に添加された。pH調整された緩衝液中でのレボシメンダンの安定性が、20℃で、HPLCによって計測された。図3は、3日以上の経過における、時間の関数としてのレボシメンダンの損失を示している。これらの実験において生成する主な分解生成物である、OR−1420((E)−2−シアノ−2−[[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]アセトアミド)もまた、HPLC分析によって計測された。これらのデータは、図4に示されている。安定化溶液のpHが、薬物添加前(出発緩衝液)、実験の開始時における薬物添加後、および実験終了時に計測された(図5)。
【0050】
図3および4のデータは、緩衝液のpHが3.5の値から7.5まで順次増加された場合の、レボシメンダンの分解速度の増加を示している。pH3.5では、レボシメンダンの損失はほとんどなかったが、一方、6.5から7.5のpH範囲においては、分解速度は非常に類似しており、そして、3日の期間の後、約3%の損失が観測された。図3において示されているレボシメンダンの損失の大部分は、加水分解生成物OR−1420の出現によって説明された(図4に示されている)。安定化溶液のpHは、薬物添加前(出発緩衝液)、実験の開始時における薬物添加後、および実験終了時に計測された。これらのデータは図5に示されている。
【0051】
図3におけるデータの、図1における結果との比較は、効力の損失が、5%デキストロース中で行われた実験においてよりも高かったことを示している(Y軸の目盛りの違いに留意)。5%デキストロース中の分解量は、緩衝液系におけるデータ(図3)と比較された場合、48時間で、中性のpHで、おおよそ10倍高かった(図1)。これらのデータは、デキストロースが、より短い間の保存のための希釈剤および医薬組成物の輸液として、使用されてもよいことを示唆している。
【0052】
実施例3
レボシメンダンの安定性が、(リン酸緩衝液(0.01M)または重炭酸ナトリウムのいずれかを使用して)標的である7.5のpHに調節された、水、標準生理食塩水および5%デキストロース溶液中で評価された。レボシメンダンは、最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、エタノールの最終濃度が2%となるように、エタノールに添加された。pH調節された溶液中でのレボシメンダンの安定性が、20℃で、HPLCによって計測された。
【0053】
図6および7におけるプロファイルは、レボシメンダンの分解が、5%デキストロース中に比べて、水および標準生理食塩水を用いて製造された溶液中で、有意に遅いことを示している。緩衝成分(重炭酸塩またはリン酸塩)は、分解速度に何の効果ももたらさなかった。標準生理食塩水中での分解の速度は、重炭酸およびリン酸緩衝液の両方において、水中での速度と非常に類似していた。これらの実験は、水および標準生理食塩水が、中性のpHでの、レボシメンダンのための、適切な、大量非経口(LVP)希釈剤であることを示している。
【0054】
実施例4
レボシメンダンの溶解度は、常温で、結果的に生じる溶液が0.45%(1/2生理食塩水)または0.9%(標準生理食塩水)の塩濃度のいずれかに相当する量を含むように塩化ナトリウム(NaCl)が添加された、0.01Mのリン酸緩衝液中で測定された。これらの溶液のpHは、薬物添加前に、希釈水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、7.0から9.0までの範囲の初期のpH値に調節された。1/2生理食塩水および標準生理食塩水中における安定性の検討の結果は、図8および9に、それぞれまとめられている。初期pH(薬物添加前)および最終pH(薬物平衡後)が、これらの図中の横座標に示されている。
【0055】
結果は、約7.5のpHにおいて、約200mcg/mLまたは所望の臨床用薬物濃度より約4倍高い溶解度値が達成されたことを示している。レボシメンダンの溶解度は、標準生理食塩水と比較された場合、1/2生理食塩水中で、おそらく1/2生理食塩水のより低いイオン強度のため、少し高かった。初期に、8.0、8.5および9.0に調整された緩衝液の最終pHは、pH8〜9の範囲におけるリン酸緩衝液のより低い緩衝能力のため、約7.5の値に低減された。しかしながら、データは、期待されたpH−溶解度相関を表しており、そして、全ての溶解度の値は、標的である50mcg/mLの値より十分に高かった。
【0056】
実施例5
レボシメンダンの安定性は、20℃で、結果的に生じる溶液が0.45%(1/2生理食塩水)または0.9%(標準生理食塩水)の塩濃度のいずれかを与えるようにNaClが添加された、0.01Mのリン酸緩衝液中で測定された。これらの溶液のpHは、薬物添加前に、希釈水酸化ナトリウムを用いて、7.0から9.0までの範囲の初期の値に調節された。これらの緩衝塩溶液の組成物は、上記で検討された溶解度実験において用いられたものと同一である。
【0057】
エタノール中に溶解されたレボシメンダンは、レボシメンダンの最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、エタノールの最終濃度が2%であるように、緩衝塩溶液に添加された。pH調節された塩溶液中でのレボシメンダンの安定性が、種々の時間にわたって、20℃で、HPLCによって計測された。溶液のpHもまた、安定性の検討の開始時および終了時に計測された。図10および11の安定性データは、レボシメンダンの分解が、pH7.0から9.0の範囲において、標準生理食塩水および1/2生理食塩水中で非常に類似していることを示している。主な分解生成物は、OR−1420であった(図11)。
【0058】
標的であるpH、速度論的検討の開始時におけるpHおよび検討の終了時におけるpHが測定され、そして、図12に示されている。初期に8.5および9.0に調節されていた緩衝液の最終pHは、pH8.5〜9.0の範囲におけるリン酸緩衝液のより低い緩衝能力のため、約8の値に低減された。
【0059】
実施例6
本発明のある実施態様では、レボシメンダンのエタノール濃縮物は、pHを中性領域に調節するために4%重炭酸ナトリウム溶液(Neut(登録商標))の溶液が添加された標準生理食塩水中に希釈されてもよい。この希釈手順は、1つのNeut(登録商標)バイアル(5mL)の内容物の、1つの500mLのIV標準生理食塩水バッグへの添加、その後のエタノール中のレボシメンダン(2.5mg/mL)10mLの添加を含む。バッグの最終内容物は、0.05mg/mLの濃度のレボシメンダンおよび2%濃度のエタノールを含む。したがって、レボシメンダンの溶解度および安定性は、種々の量のNeut(登録商標)の存在下の標準生理食塩水中で評価された。
【0060】
Neut(登録商標)の増加量の存在下、標準生理食塩水中(エタノールを含まない)中のレボシメンダンの溶解度が、図13に示されている。初期pH(薬物添加前)、最終pH(薬物平衡後)および500mLの生理食塩水容量あたり使用されたNeut(登録商標)バイアルの数が、横座標に示されている。結果は、標準生理食塩水のpHは、それに添加されたNeut(登録商標)バイアルの数に非感受性であり、そして、添加後のpHが、7.6から7.7の範囲にあることを示している。これは、重炭酸イオンの限られた緩衝能力およびpKaのためである。結果は、7.2〜7.6のpH領域において、200mcg/mLよりも高い(または所望の臨床用薬物濃度より約4倍高い)レボシメンダンの溶解度を達成することが可能であることを示している。溶解度データはまた、レボシメンダンの溶解度を増加させるための標準生理食塩水への添加物としての重炭酸ナトリウムの使用を支持している。これらの溶解度の結果は、リン酸緩衝生理食塩水中で得られた結果と一致している。
【0061】
実施例7
エタノール中に溶解されたレボシメンダンが、レボシメンダンの最終濃度が約10mcg/mL、かつ、エタノールの最終濃度が2%であるように、重炭酸塩緩衝標準生理食塩水に添加された。重炭酸塩の量は、500mLの生理食塩水あたり、1つ、2つ、4つまたは8つのNeut(登録商標)のバイアルを添加することによって変えられた。これらの塩溶液中のレボシメンダンの安定性は、20℃で、HPLCによって計測された。図14および15の安定性のデータは、重炭酸塩濃度を8倍に変化させても、標準生理食塩水中でのレボシメンダンの分解速度に有意な影響を及ぼさないことを示している。主な分解生成物は、OR−1420であった(図15)。さらに、分解速度(および生成物分布)は、リン酸緩衝生理食塩水溶液中で見られた結果と非常に類似していた。
【0062】
実施例8
注入による臨床的投与を意図している、レボシメンダンの重炭酸塩緩衝生理食塩水溶液は、(もとの薬物濃縮物からの)2%エタノールを含んでいるかもしれないので、重炭酸塩緩衝生理食塩水中でのレボシメンダンの溶解度におけるエタノールの影響が検討された。Neut(登録商標)の1つのバイアル(5mL)が、500mLの標準生理食塩水に添加された。無水エチルアルコールが、その後、0%から8%までの範囲のエタノールの溶液を調製するために添加された。固形の薬物が、レボシメンダンの平衡溶解度を測定するために、これらの溶液と混合された。この検討の結果が、図16に示されている。最小二乗法線形回帰直線が、実験データ点に重ね合わせられる。図16が示すように、溶解度は、エタノール濃度とともに直線的に増加する。溶液のpHは、7.2から7.3の範囲であった。溶解度およびpHの結果は、以前の実験と一致しており、溶解度は、好ましい濃度である50mcg/mLよりもはるかに上である。
【0063】
実施例9
上記で検討された全ての安定性の検討は、ガラス容器の中、緩衝標準生理食塩水および緩衝1/2生理食塩水中で、10mcg/mLの最終的なレボシメンダン濃度で実施された。好ましい実施態様では、レボシメンダンの薬物濃縮物は、生理食塩水を緩衝するためにNeut(登録商標)を用いて、IVバッグ中で50mcg/mL(0.05mg/mL)に希釈される。したがって、安定性試験は、常温および冷蔵温度で、薬物濃度を、Neut(登録商標)緩衝標準生理食塩水およびNeut(登録商標)緩衝1/2生理食塩水中に、0.05mg/mLである最終濃度に希釈することによって実施された。標準生理食塩水バッグ中で0.05mg/mLの濃度まで希釈され、そして、常温で保持されたSIMDAX(登録商標)が、対照として用いられた。レボシメンダンおよび分解生成物が、HPLCによって計測された。結果は、図17および18に示されている。
【0064】
バッグ中の全ての試料は、実験の過程において外観上は透明であった。予期された通り、実験は、常温状態と比較して、冷蔵温度での、より遅い分解の速度を示している。また、生理食塩水および1/2生理食塩水において、分解速度に関して違いは見られなかった。希釈後の製剤の分解速度は、IVバッグ中のNeut(登録商標)の存在による、より高いpH(7.8から8.4)のため、SIMDAX(登録商標)より高い。希釈されたSIMDAX(登録商標)を含むIVバッグのpHは、SIMDAX(登録商標)製剤中のクエン酸により、はるかに低い(pH=3.7)。
【0065】
主な分解経路は加水分解であって、結果としてOR−1420が生成する(図18)。全分解生成物が、図19に示されている。本発明の分解速度は、SIMDAX(登録商標)よりも高いものの、分解の程度は、医薬組成物としてのその使用を損なうものではない。
【0066】
実施例10
脱水されたエチルアルコール中のレボシメンダン(2.5mg/mL)の好ましい製剤が、製剤を0.05mg/mLの濃度に希釈することによるいくつかの予備的な混和性試験において評価された。第一の目的は、種々のタイプのIV容器中での、Neut(登録商標)緩衝生理食塩水(500mL希釈剤あたり5mL)中での、希釈後24〜48時間の期間にわたる使用の適合性を示すことであった。SIMDAX(登録商標)は、参照の製剤として試験において含まれていた。化学的混和性に加えて、実験は、外観上の透明さ、pHおよび光遮蔽(HIAC)手法による、顕微学的微粒子を評価した。表2の結果は、米国および日本の供給元からの種々のLVP容器を用いて、常温(RT)および冷蔵温度(2℃から8℃)で保存された、希釈された薬物製剤が、USPの顕微学的粒子要件に合致したことを示している。表3のpHの結果は、Neut(登録商標)溶液の量が、48時間という標的期間をはるかに超える間、pHをレボシメンダンのpKa(6.2)より上方に保持するのに適していたことを示している。全ての希釈された製剤は、一週間という期間にわたって、外観上透明であり、これは希釈という手法が適していることを示している。表4のデータは、常温および冷蔵温度で、標準生理食塩水中、2つのPVCバッグサイズでの、製剤の混和性を示している。
【0067】
実施例11
クエン酸を含む、脱水されたエチルアルコール中のレボシメンダンはまた、薬物濃縮物を0.05mg/mLのレボシメンダン濃度および2%のエタノール濃度に希釈することによるいくつかの予備的な混和性試験において評価された。基本的に、2.5mLのNeut(登録商標)が、250mLのPVC IVバッグ(ホスピーラ)に添加され、続いて、5mLの薬物濃縮物(クエン酸を含むエタノール中のレボシメンダン(2.5mg/mL))が添加された。0.1および2mg/mLのクエン酸を含む、薬物濃縮物が、6ヶ月間、SIMDAX(登録商標)とともに、5℃または25℃のいずれかで、安定チャンバー中で保存された。製剤は、混和性試験において、常温で3日間評価された。
【0068】
バッグ中の全ての試料は、実験の過程において外観上透明であった。図20が示すように、希釈後の新しい製剤の分解速度は、より高いpH(7.6〜8.4)(Neut(登録商標)の添加によって引き起こされる)のために、SIMDAX(登録商標)よりも速かった。結果的にOR−1420の生成をもたらす主要な分解経路が、図21に示されている。6つの実験組成物で見られた平行線から明らかなように、製剤中のクエン酸レベルは、この速度に何の効果ももたらさなかった。希釈されたSIMDAX(登録商標)を含むIVバッグのpHは、最終的なSIMDAX(登録商標)組成物中のクエン酸のため、はるかに低かった(pH3.5〜4.0の範囲)。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本件出願は、2006年12月28日に出願され、参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願60/882,311号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、特に静脈内投与のためのレボシメンダンの新規な医薬組成物、および該組成物の製造方法に関する。本発明の組成物は、溶解性促進剤を使用することなく、増強された溶解性および安定性を有する。
【背景技術】
【0003】
レボシメンダン(Simdax(登録商標)、オリオンファーマ、エスポー、フィンランド)は、うっ血性心不全の治療に使用される静脈内用薬物である。レボシメンダンは、心臓トロポニンC(cTnC)と相互作用し、cTnCにおけるカルシウム誘導構造変化を安定化させ、cTnCと薄いフィラメント上のその近接物との相互作用を促進し、したがって収縮性を高める。レボシメンダンの正の筋収縮性効果は、細胞内カルシウムの増加なしで、かつ心筋の酸素消費のわずかな増加または増加なしで達成される。レボシメンダンはまた、脈管の調子(tone)の調節に関与するK−ATPチャネルを活性化する。K−ATPチャネルの活性化の結果生じる過分極によって、レボシメンダンは、前収縮された血管筋を緩和することができる。例えば、心筋虚血の治療におけるレボシメンダンの使用が、米国特許第5,512,572号明細書に記載されている;冠状バイパス手術後の冠グラフト攣縮におけるその使用が、米国特許第6,593,329号明細書に記載されている;肺高血圧および腎不全におけるレボシメンダンの使用が、米国特許第6,462,045号明細書および国際公開第04/060375号パンフレットにそれぞれ記載されている。
【0004】
例えば、静脈内投与などの、非経口による薬物の投与は、いくつかの利点を提供する。これらは、即時の応答、治療的な応答の制御の容易さ、および、薬物の不活性化または患者の無意識の状態のため経口投与に勝ることなどである。
【0005】
レボシメンダンは、約6.2のpKaおよび水中での低溶解度(0.04mg/mL)を有する結晶粉末として合成される。レボシメンダンの入手可能な製剤は、エタノール濃縮物であり、そして例えば、国際公開第01/19334号パンフレットに記載されている。非経口投与の前に、レボシメンダンのエタノール濃縮物は、例えば、5%デキストロース、1/2生理食塩水、乳酸加リンガー液、生理食塩水または他の大量非経口用希釈剤などの適切な水溶液中に希釈される。エタノール濃縮物の希釈の後、希釈された薬物溶液のpHは、pH3.0程度まで低くなるかもしれない。水溶液中でのレボシメンダンの溶解度は、溶液のpHがpKa値よりも低くなった場合に低下することが知られている。より低いpHでのその低い溶解度のため、レボシメンダンは、希釈後に沈殿し始めるかもしれない。
【0006】
この問題を克服するために、レボシメンダンの現在の製剤は、希釈の後、水溶液中で、溶解状態で維持され得るレボシメンダンの量を増加させる、溶解性促進剤をも含む。界面活性剤、ならびに、例えばポリソルベート、ポリエチレングリコール、ポリオキサマーまたはポリビニルピロリドンおよび脂肪酸などのその他の可溶化剤を、この目的のために使用することができる。しかしながら、これらの物質のいくつかは、腎臓によって容易には除去されず、そして、レボシメンダンまたはその他の同時投与される薬物の安定性を妨げるかもしれない。加えて、特定の監督官庁は、患者に投与される製品中の溶解性促進剤の使用を是認しないかもしれない。
【0007】
したがって、溶解性促進剤を使用せず、かつ活性成分(すなわち、レボシメンダン)を溶液中で維持する、レボシメンダンの医薬組成物、とりわけ静脈内投与のための医薬組成物を提供する必要性があり、そして、これが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、活性成分の沈殿を防ぐ、水溶液のpHを増加させる薬物の使用を含む非経口投与のためのレボシメンダンの製剤に関する。
【0009】
ある局面では、本発明は、(a)ある量の(a quantity of)レボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;(b)薬学的に許容され得る希釈剤;および(c)薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物中で、ある量のレボシメンダンは、有機溶媒中に溶解されてもよい。ある実施態様では、ある量のレボシメンダンおよび有機溶媒は、薬物濃縮物として提供される。好ましくは、有機溶媒は、無水エタノールである。別の実施態様では、ある量のレボシメンダンは、凍結乾燥された形態であってもよい。好ましくは、医薬組成物は、医薬組成物のpHを該レボシメンダンのpKa付近まで増加させるために十分な量のアルカリ化剤または緩衝液を提供する。さらに好ましくは、pKaは約6.2である。別の好ましい実施態様では、希釈剤は、リンガー液、乳酸加リンガー液および生理食塩水からなる群より選択される。
【0010】
別の実施態様では、医薬組成物は、薬学的に許容され得る有機酸をさらに含む。好ましくは、有機酸は、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される。さらに好ましくは、有機酸はクエン酸である。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を増加させるための方法であって、レボシメンダンを水溶液およびアルカリ化剤または緩衝剤と混合する工程を含む方法を提供する。アルカリ化剤または緩衝剤は、該レボシメンダンと混合する前に、初めに水溶液と混合されてもよい。好ましくは、アルカリ化剤または緩衝剤は、重炭酸ナトリウムおよびトロメタミンからなる群より選択される。好ましくは、水溶液は、0.9%の塩化ナトリウムである。また、好ましくは、アルカリ化剤または緩衝剤は、重炭酸ナトリウムの4%溶液である。
【0012】
別の実施態様では、本発明は、静脈注射に適した組成物であって、(a)ある量のレボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、(c)安定性を促進させる量の、2から4までの範囲にあるpKaを有する薬学的に許容され得る有機酸;および(d)約6.3から約9.5の範囲にあるpHを有する薬学的に許容され得る水性希釈剤を含む組成物を提供する。好ましくは、有機溶媒は無水エタノールであり、そして、水性希釈剤は、生理食塩水および1/2生理食塩水からなる群より選択される。また、好ましくは、有機酸は、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される。さらになお好ましくは、有機酸は、クエン酸である。
【0013】
別の実施態様では、本発明は、パッケージ化された医薬製品であって:(a)ある量のレボシメンダン、(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、(c)薬学的に許容され得る有機酸、(d)薬学的に許容され得る希釈剤、および(e)薬学的に許容され得るアルカリ化剤を含む医薬製品を含む。医薬製品は、部分(a)、(b)および(c)を単一成分としてともにパッケージ化されてもよい。代わりに、医薬製品は、部分(a)および(b)を単一成分としてともにパッケージ化されてもよい。別の方法では、医薬製品は、部分(b)および(c)を1つの成分としてともにパッケージ化されてもよい。前述の実施態様のいずれかにおいて、医薬製品は、部分(d)および(e)を単一成分としてともにパッケージ化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】5%デキストロース中でのレボシメンダンの安定性に対するpHの効果を示すグラフである。
【図2】5%デキストロース中でのレボシメンダンの安定性評価の間のpH変化を示す棒グラフである。
【図3】0.01Mのクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液中でのレボシメンダンのpH安定性プロファイルを示すグラフである。
【図4】0.01Mのクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液中での分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図5】0.01Mのクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液中でのレボシメンダンの安定性試験の間のpH変化を示す棒グラフである。
【図6】種々の希釈剤中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図7】種々の希釈剤中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図8】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示す棒グラフである。
【図9】リン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示す棒グラフである。
【図10】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液およびリン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図11】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液およびリン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図12】リン酸緩衝1/2生理食塩水溶液およびリン酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンにおけるpH変化を示すグラフである。
【図13】重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示すグラフである。
【図14】重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図15】重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図16】様々な濃度のエタノール存在下、重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を示すグラフである。
【図17】SIMDAX(登録商標)と比較して、重炭酸緩衝1/2生理食塩水溶液および重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液を含むバッグ中でのレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図18】SIMDAX(登録商標)と比較して、重炭酸緩衝1/2生理食塩水溶液または重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液のいずれか中のレボシメンダンを含むバッグ中でのレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【図19】SIMDAX(登録商標)と比較して、重炭酸緩衝1/2生理食塩水溶液または重炭酸緩衝標準生理食塩水溶液のいずれか中のレボシメンダンを含むバッグ中での全ての分解生成物の生成を示すグラフである。
【図20】SIMDAX(登録商標)と比較して、クエン酸薬物濃縮物を用いた、重炭酸緩衝標準生理食塩水バッグ中での希釈後のレボシメンダンの安定性を示すグラフである。
【図21】SIMDAX(登録商標)と比較して、クエン酸薬物濃縮物を用いた、重炭酸緩衝標準生理食塩水バッグ中でのレボシメンダンの、希釈後のレボシメンダンの分解生成物OR−1420の生成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中で他に定義されていない限り、本発明との関連において使用される科学的および技術的な用語は、当業者によって一般に理解されるような意味を有するであろう。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数の用語は複数を含み、そして、複数の用語は単数を含むであろう。本出願において、「または(or)」の使用は、他に言及されていない限り、「および/または(and/or)」を意味する。さらに、用語「含む(including)」の使用は、「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形と同様に、限定的ではない。
【0016】
ある局面では、本発明は、特に静脈内注入のための医薬組成物であって、活性成分として、レボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;薬学的に許容され得る希釈剤および薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝液を含む医薬組成物を提供する。レボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩は、処理のために初めに溶媒に溶解されてもよく、そして、溶媒がその後、医薬組成物を形成する前に留去されてもよい。例えば、レボシメンダンは、エタノール、t−ブチルアルコールまたは水などの溶媒中に溶解され、そしてその後、溶媒を留去するために、例えば凍結乾燥されてもよい。代わりに、医薬組成物は、薬学的に許容され得る溶媒(すなわち、留去される必要のない溶媒)を含んでもよい。ある実施態様では、レボシメンダンおよび溶媒は、薬物濃縮物の形態であってもよい。
【0017】
本明細書中で使用されるように、「レボシメンダン」は、[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]プロパンジニトリルを示す。
【0018】
当該技術分野において公知であるように、単語「溶媒」は、一般的に、固体、液体またはガス状の溶質を溶解し、結果として溶液となる化合物(通常、液体)を示す。「有機溶媒」は、有機化合物である溶媒であり、それらが炭素原子を含んでいることを意味している。好ましくは、本発明の医薬組成物は有機溶媒を含む。本発明において有用である、非限定的な有機溶媒の例は、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、グリセロール、t−ブチルアルコールおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定はされない。
【0019】
本明細書中で使用されるように、「希釈剤」は、希釈するためまたは活性成分を運ぶために使用される液体材料を示す。本発明に適した、非限定的な希釈剤の例は、5%デキストロース、5%グルコース、リンガー液、乳酸加リンガー液、生理食塩水および1/2生理食塩水を含む。希釈された医薬組成物が、より長い期間、例えば約10時間より長い期間、常温で保存され、そして、注入されるならば、希釈剤は、好ましくは、5%デキストロースまたは5%グルコース以外のものであろう。
【0020】
本明細書中で使用されるように、用語「薬学的に許容され得る」は、正常な医学的判断の範囲内で、妥当な恩恵/リスク比率に沿って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしに、ヒト組織および下級動物と接触する使用に適した、そして、それらの想定される使用に効果的である、希釈剤、薬剤、賦形剤、安定化剤などを示す。
【0021】
本明細書中で使用されるように、用語「アルカリ化剤」は、それが添加される溶液のpHを増加させる任意の化合物を示す。非限定的なアルカリ化剤の例は、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸塩、酢酸塩、および、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強塩基と、例えば炭酸、酢酸または乳酸などの弱酸との塩を含む。
【0022】
本明細書中で使用されるように、単語「緩衝剤」は、溶液のpHを調整/維持/制御する薬剤を示す。一般的に、緩衝剤は、酸性または塩基性溶液を特定のpH領域に移行させ、そしてその後、溶液をそのpH範囲に維持することで作用する。当該技術分野で公知であるように、緩衝剤は、例えば、様々な溶解度、酸性度、アルカリ度などの様々な特性を有する。本発明の目的のために、緩衝剤は、また、それが添加される溶液のpHを増加させるならば、アルカリ化剤として機能してもよい。好ましくは、アルカリ化剤および/または緩衝剤は、組成物のpHをレボシメンダンのpKaより上の値まで増加させる。本発明に適した、非限定的な緩衝剤の例は、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムを含む。本明細書中に記載されている、アルカリ化剤および緩衝剤の代表的な例は、本発明の範囲を制限する意図はなく、医薬組成物のpHを、その意図された使用のために十分な溶解状態にレボシメンダンを維持するレベルまで増加させる、薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤を考慮している。
【0023】
本明細書中で使用されるように、用語「有機酸」は、酸である有機化合物を示す。有機酸は、一般的に、カルボキシル基(−COOH)によって特徴付けられる弱酸である。好ましくは、有機酸は、2−ヒドロキシアルカン酸である。このような有機酸の例は、クエン酸、乳酸、酒石酸およびマレイン酸を含み、もっとも好ましくはクエン酸であるが、これらに限定はされない。
【0024】
一般的に、患者へ投与され得る静脈内用医薬溶液(水溶液など)のためには、組成物の活性成分は、組成物中に十分に溶解されること、すなわち可視粒子がないことが必要である。レボシメンダンの最終的な所望の濃度に依存して、その濃度を達成するために薬物が十分溶解されるように、水溶性組成物のpHは変わるかもしれない。例えば、0.05mg/mLの最終的な薬物濃度を含むレボシメンダン溶液は、薬物が溶解されるためには約7.2のpHを必要とし得る。より低い薬物濃度(例えば0.01mg/mL)を含む溶液のためには、より低いpH(例えば4.0未満)が、その濃度を達成できるように薬物を溶解し得る。医薬組成物中のレボシメンダンの溶解度および/または濃度を測定するための方法は、当業者にとって広く公知である。好ましい実施態様では、アルカリ化剤または緩衝液は、組成物のpHをレボシメンダンのpKaより上の値まで増加させる。
【0025】
本発明の個々の成分を製造するための方法は、当該技術分野において広く公知である。レボシメンダンの合成は、例えば、米国特許第5,569,657号明細書に記載されている。有機溶媒、希釈剤およびアルカリ化剤または緩衝剤を製造するための方法もまた、当業者にとって広く公知であり、そして、標準的な科学の教科書およびその他の出版された科学の文献中に見出すことができる。
【0026】
本明細書中で記載されている、本発明の医薬組成物は、典型的には、レボシメンダン濃縮物を形成させるために、初めにレボシメンダンを溶媒中に溶解させることによって製造され得る。好ましい溶媒は、エタノール(USP)などの無水アルコールである。結果的に得られる薬物濃縮物は、任意には、エタノールを留去するために凍結乾燥され得る(または別の方法で処理される)。凍結乾燥のための方法は、当業者にとって広く公知である。任意には、エタノール濃縮物はまた、有機酸を含んでいてもよい。
【0027】
有機酸は、薬物と混合される前に、または薬物が溶媒と混合された後に、溶媒と混合されてもよい。有機酸はまた、初めに薬物に添加され、そしてその後、溶媒と混合されてもよい。有機酸の量は、好ましくは濃縮物溶液の重量あたり、0.0005から2%、好ましくは0.01〜1%の範囲である。より好ましい実施態様では、有機酸はクエン酸である。さらになお好ましくは、クエン酸の量は、重量あたり0.03〜0.6%である。
【0028】
その後、凍結乾燥された薬物または薬物濃縮物は、アルカリ化剤または緩衝剤が添加された適切な希釈剤で希釈される。代わりに、希釈剤は、それが添加される溶液のpHを増加させる緩衝液であってもよい。希釈剤はまた、薬物の最終濃度を達成するために組成物を希釈する手段として役立つことに加えて、患者に投与する前に有機溶媒を希釈する。
【0029】
本発明の組成物を製造する、他の非限定的な方法も考慮される。例えば、レボシメンダンは、初めに有機溶媒に溶解され、そしてその後、アルカリ化剤と混合されてもよい。任意には、この調製物は、保存のために凍結乾燥されてもよい。その後、レボシメンダン/有機溶媒/アルカリ化剤の組み合わせが、希釈剤を用いて、適切な濃度に希釈されてもよい。別の実施例では、固形のアルカリ化剤が、固体のレボシメンダンに添加され、そして、混合された材料が有機溶媒中に溶解されてもよい。この組み合わせは、その後、適切な希釈剤で希釈することができる。さらに別の例では、固体のレボシメンダンが、有機溶媒に溶解されたアルカリ化剤と混合されてもよい。この組み合わせは、その後、適切な希釈剤と混合されてもよい。さらに別の例では、アルカリ化剤および希釈剤が混合され、そしてその後、この混合物がレボシメンダン濃縮物と混合されてもよい。別の実施態様では、アルカリ化剤および希釈剤は、レボシメンダン濃縮物と同時に混合されてもよい。
【0030】
上述したように、前述の全ての製造方法において、任意には、有機酸が、(薬物と混合する前に)有機溶媒と混合されてもよく、また、薬物が有機溶媒と混合された後に混合されてもよい(すなわち、有機酸が薬物濃縮物と混合される)。特定の作用機序に縛られることを望まないが、クエン酸は、冷蔵温度での保存中に、組成物に有害な影響を与えないが、とりわけ室温で、薬物/有機溶媒の組み合わせを安定化させるために機能することが知られている。上記で示したように、アルカリ化剤は、固体の形態でまたは溶液としてのいずれかで提供されてもよい。所望される場合には、その他の成分、例えば追加の安定化剤が、固体または液体のいずれかの形態で添加されてもよい。
【0031】
個々の成分の量は、成分の溶解度、および、最終の医薬組成物中で所望されるレボシメンダンの薬物濃度に依存するであろう。アルカリ化剤が、溶液の形態で添加される場合、所定の当業者は容易に、医薬組成物中の所望の最終的な薬物濃度を達成するために、その他の成分を調節および/または変化させることができる。
【0032】
別の局面では、本発明は、アルカリ化剤または緩衝液を用いて、レボシメンダンの安定性および溶解度を改良するための方法を提供する。特に、本発明は、レボシメンダンを水溶液およびアルカリ化剤または緩衝液と混合することによって、水溶液中でのレボシメンダンの安定性および溶解度を改良するための方法を提供する。上記で言及したように、必要とされる水溶液の量は、医薬組成物中の最終的な所望のレボシメンダン濃度に依存し、そして、必要とされるアルカリ化剤の量は、所望のレボシメンダンの溶解度に依存するであろう。当業者ならば、容易に、所望のレボシメンダン溶解度を達成するために必要なアルカリ化剤または緩衝液の量を滴定することが可能である。一般的な指針として、医薬組成物のより高いpHは、レボシメンダンをより多く溶解する。
【0033】
好ましくは、アルカリ化剤または緩衝液は、レボシメンダンを溶解状態に維持するために十分な量で提供される。より好ましくは、アルカリ化剤または緩衝液は、結果的に生じる組成物のpHを、レボシメンダンのpKa付近、またはそれ以上とするために十分な量で提供される。さらに、組成物の最終的なpH値は、その投与の際患者によって安全に許容され得る限界を超えるべきではない。好ましい実施態様では、医薬組成物のpHは、約pH6.0から約pH9.0の範囲である。より好ましい実施態様では、医薬組成物は、約pH6.2から約pH9.0の範囲である。別の好ましい実施態様では、pHは、約6.3から約9.0の範囲である。別の好ましい実施態様では、pHは、約6.3から約9.5の範囲である。
【0034】
好ましい実施態様では、本発明は、レボシメンダンおよびアルカリ化されたまたは緩衝された水溶液を含む組成物を提供する。好ましくは、レボシメンダンは、薬物のアルコール濃縮物である。また好ましくは、アルカリ化された水溶液は、重炭酸ナトリウムを含む生理食塩水である。典型的には、レボシメンダンのアルコール濃縮物は、アルカリ化された生理食塩水とは別個の容器に含まれる。非経口投与の直前に、レボシメンダンのアルコール濃縮物が、最終的な所望の治療用薬物濃度を達成するために、アルカリ化された生理食塩水と混合される。非経口用溶液を製造するために、アルカリ化された水溶液が、レボシメンダン濃縮物を含む容器に添加されてもよい。代わりに、レボシメンダン濃縮物およびアルカリ化された水溶液が、2つの溶液の混合を引き起こすために、振とうまたはその他の単純な操作によって貫通され得る物理的な障害物で仕切られた同じ容器に封入されてもよい。典型的には、レボシメンダン濃縮物は、約95〜100%の無水エタノールを含む。好ましい実施態様では、組成物は、脱水されたエチルアルコールに溶解された、レボシメンダン(2.5mg/mL)およびクエン酸(1〜2mg/mL)を含む。この濃縮物は、その後、アルカリ化剤または緩衝剤(好ましくは4%重炭酸ナトリウム溶液)が初めに加えられた標準生理食塩水を用いて、0.05mg/mLの最終的なレボシメンダン濃度を達成するために希釈される。
【0035】
別の実施態様では、本発明は、(a)ある量のレボシメンダン、(b)薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤および(c)薬学的に許容され得る希釈剤を含む、パッケージ化された医薬製品またはキットを提供する。レボシメンダンは、有機溶媒濃縮物から凍結乾燥された形態であってもよく、または、(有機溶媒中の)薬物濃縮物として提供されてもよい。任意には、パッケージ化された医薬製品は、有機酸を含んでいてもよい。レボシメンダン、有機溶媒(存在する場合)および有機酸(存在する場合)は、単一成分としてまたは個々の成分として、パッケージ化されてもよい。あるいは、レボシメンダンおよび有機溶媒が、1つの成分としてパッケージ化されてもよい。あるいは、有機溶媒が、1つの成分としてパッケージ化され、そして、レボシメンダンが、別の成分としてパッケージ化されてもよい。
【0036】
パッケージ化された医薬製品またはキットは、製品またはキットの材料を混合するための使用説明書をさらに含んでいてもよい。任意には、患者へ投与することができる濃度まで、組成物を希釈するための希釈剤を含んでいてもよく、または、希釈剤が、別の成分として供給されてもよい。医薬製品をパッケージ化するのに適切な全ての組み合わせが想定されている。最も好ましくは、希釈剤は、別の成分として(さもなければ、パッケージ化された医薬キットの一部として)維持され、そして、投与の前に速やかに使用される。
【0037】
医薬組成物中に含まれる、治療的に有効量のレボシメンダンは、例えば、組成物の投与経路、治療方法および治療される症状に依存する。一般的に、組成物中のレボシメンダンの量は、約0.001〜5mg/mLの範囲内である。ヒトにおけるレボシメンダンの1日の投与量は、投与経路、年齢、体重および患者の症状に依存して、約0.1〜50mg、好ましくは約0.2〜20mgの範囲内である。うっ血性心不全の治療のための、定常状態でのレボシメンダンの好ましい最高血漿レベルは、約1から約300ng/mL、より好ましくは、約10から約150ng/mL、および、とりわけ、約20から約60ng/mLの範囲内である。レボシメンダンは、約0.005〜100マイクログラム/キログラム/分(mcg/kg/min)、典型的には、0.01〜10mcg/kg/min、より典型的には、約0.02〜1mcg/kg/minの範囲の注入速度で、静脈投与され得る。継続的な注入をともなう、心不全の治療のため、適切な速度は、レボシメンダンの0.05〜0.4mcg/kg/minである。
【0038】
レボシメンダンの塩は、公知の方法によって製造されてもよい。薬学的に許容され得る塩は、活性医薬として有用である;しかしながら、好ましい塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩である。
【0039】
別の局面では、本発明は、水溶液中での希釈後の活性成分としてのレボシメンダンの溶解度を増加させるための方法であって、水溶液のpH値を増加させるための工程を含む方法を提供する。pHは、本明細書中に記載されているように、水溶液をアルカリ化剤または緩衝剤と混合することによって増加されてもよい。好ましいアルカリ化剤は、重炭酸ナトリウムまたはトロメタミンである。希釈後の水溶液の好ましいpHは、約6.3から約9.5の間である。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、単なる例証であり、そして、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ定義される本発明の範囲についての限定として解釈されるべきではないことが理解される。開示された実施態様に対する様々な変更および修正は、当業者にとって明らかであろう。
【0041】
材料:レボシメンダンAPIおよびSIMDAX(登録商標)製剤は、オリオンファーマ(エスポー、フィンランド)から得られた。脱水されたエチルアルコール、米国薬局方(USP)が、レボシメンダン製剤を製造するために使用された。市販で入手可能な4%重炭酸ナトリウム添加溶液(Neut(登録商標)、ホスピーラ、レイクフォレスト、IL、NDC 0409−06609−02)が、希釈剤のpHを増加させるために使用された。大量非経口(large volume parenteral)(LVP)希釈剤が、ホスピーラから市販で購入されるか、または、アボットジャパンによって提供された。
【0042】
装置:光遮蔽型自動微粒子測定法は、USP要件に基づく試験を行うことが可能である、市販で入手可能なHIAC器機で行われた。HPLCが、化学分析のために使用された。
【0043】
方法:溶解度実験は、過剰量の固体の薬物を溶媒に混合し、内容物をろ過し、そして、ろ液を分析することによって行われた。安定性の検討は、指定された溶媒中に薬物溶液を希釈し、試料を必要な温度にて保存し、そして、時間の関数としてHPLCによる分析を行うことによって実施された。pH測定は、ガラス電極を用いて電位差測定的に行われた。薬物製品試料は、外観(物理的状態、透明度、可視粒子)および色について、視覚的に試験された。
【0044】
薬物製剤試料は、混和性(compatibility)実験を行うためにLVP容器中で希釈された。試料は、レボシメンダンおよび分解生成物について、HPLCにより分析された。光遮蔽型自動微粒子測定法が、容器あたりの、>10μmおよび>25μmの粒子数を測定するために用いられた。該方法は、USP<788>に基づいている。
【0045】
HPLC法が、化学分析のために用いられた。薬物試料が、直接または(移動相またはエタノールで)希釈後、HPLCカラム上に注入された。レボシメンダンおよび/または分解生成物の参照標準が、定量のために用いられた。HPLC法のパラメータの概要が、表1に提供されている。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1
pH安定性の検討は、5%デキストロース輸液を用いて行われた。5%デキストロース輸液のpH(pH=4.54)は、塩酸を使用することによって下方に調節され、そして、4%重炭酸ナトリウム溶液の増加量を添加することによって上方に調節された。エタノール中に溶解されたレボシメンダンは、その後、レボシメンダンの最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、最終的なエタノール濃度が2%となるように、5%デキストロース溶液に添加された。pH調節された5%デキストロース中でのレボシメンダンの安定性が、HPLCによって常温で計測された。
【0048】
図1は、約2日間の経過における、時間の関数としてのレボシメンダンの損失を示している。データは、希釈剤のpHが3.22より高い場合の、増大された分解速度を表している。安定性溶液のpHもまた、初期(薬物が添加されていない)、薬物添加後、そして実験の最後で計測された。これらのデータは、図2に示されており、そして、それらは、とりわけ初めのpHが4.54および5.74である場合に、試料におけるpHの有意な上方へのシフトを示している。この結果は、おそらく、これらの溶液の限られた緩衝能力のためであった。これは、緩衝液中でpH安定性の検討を行うことによって対応された(下記の実施例2を参照のこと)。
【0049】
実施例2
pH安定性の検討は、20℃で、3.5から7.5までの範囲のpH値に調整された、クエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液(0.01M)を用いることによって行われた。エタノール中に溶解されたレボシメンダンが、薬物の最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、最終的なエタノール濃度が2%であるように、緩衝溶液に添加された。pH調整された緩衝液中でのレボシメンダンの安定性が、20℃で、HPLCによって計測された。図3は、3日以上の経過における、時間の関数としてのレボシメンダンの損失を示している。これらの実験において生成する主な分解生成物である、OR−1420((E)−2−シアノ−2−[[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]アセトアミド)もまた、HPLC分析によって計測された。これらのデータは、図4に示されている。安定化溶液のpHが、薬物添加前(出発緩衝液)、実験の開始時における薬物添加後、および実験終了時に計測された(図5)。
【0050】
図3および4のデータは、緩衝液のpHが3.5の値から7.5まで順次増加された場合の、レボシメンダンの分解速度の増加を示している。pH3.5では、レボシメンダンの損失はほとんどなかったが、一方、6.5から7.5のpH範囲においては、分解速度は非常に類似しており、そして、3日の期間の後、約3%の損失が観測された。図3において示されているレボシメンダンの損失の大部分は、加水分解生成物OR−1420の出現によって説明された(図4に示されている)。安定化溶液のpHは、薬物添加前(出発緩衝液)、実験の開始時における薬物添加後、および実験終了時に計測された。これらのデータは図5に示されている。
【0051】
図3におけるデータの、図1における結果との比較は、効力の損失が、5%デキストロース中で行われた実験においてよりも高かったことを示している(Y軸の目盛りの違いに留意)。5%デキストロース中の分解量は、緩衝液系におけるデータ(図3)と比較された場合、48時間で、中性のpHで、おおよそ10倍高かった(図1)。これらのデータは、デキストロースが、より短い間の保存のための希釈剤および医薬組成物の輸液として、使用されてもよいことを示唆している。
【0052】
実施例3
レボシメンダンの安定性が、(リン酸緩衝液(0.01M)または重炭酸ナトリウムのいずれかを使用して)標的である7.5のpHに調節された、水、標準生理食塩水および5%デキストロース溶液中で評価された。レボシメンダンは、最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、エタノールの最終濃度が2%となるように、エタノールに添加された。pH調節された溶液中でのレボシメンダンの安定性が、20℃で、HPLCによって計測された。
【0053】
図6および7におけるプロファイルは、レボシメンダンの分解が、5%デキストロース中に比べて、水および標準生理食塩水を用いて製造された溶液中で、有意に遅いことを示している。緩衝成分(重炭酸塩またはリン酸塩)は、分解速度に何の効果ももたらさなかった。標準生理食塩水中での分解の速度は、重炭酸およびリン酸緩衝液の両方において、水中での速度と非常に類似していた。これらの実験は、水および標準生理食塩水が、中性のpHでの、レボシメンダンのための、適切な、大量非経口(LVP)希釈剤であることを示している。
【0054】
実施例4
レボシメンダンの溶解度は、常温で、結果的に生じる溶液が0.45%(1/2生理食塩水)または0.9%(標準生理食塩水)の塩濃度のいずれかに相当する量を含むように塩化ナトリウム(NaCl)が添加された、0.01Mのリン酸緩衝液中で測定された。これらの溶液のpHは、薬物添加前に、希釈水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、7.0から9.0までの範囲の初期のpH値に調節された。1/2生理食塩水および標準生理食塩水中における安定性の検討の結果は、図8および9に、それぞれまとめられている。初期pH(薬物添加前)および最終pH(薬物平衡後)が、これらの図中の横座標に示されている。
【0055】
結果は、約7.5のpHにおいて、約200mcg/mLまたは所望の臨床用薬物濃度より約4倍高い溶解度値が達成されたことを示している。レボシメンダンの溶解度は、標準生理食塩水と比較された場合、1/2生理食塩水中で、おそらく1/2生理食塩水のより低いイオン強度のため、少し高かった。初期に、8.0、8.5および9.0に調整された緩衝液の最終pHは、pH8〜9の範囲におけるリン酸緩衝液のより低い緩衝能力のため、約7.5の値に低減された。しかしながら、データは、期待されたpH−溶解度相関を表しており、そして、全ての溶解度の値は、標的である50mcg/mLの値より十分に高かった。
【0056】
実施例5
レボシメンダンの安定性は、20℃で、結果的に生じる溶液が0.45%(1/2生理食塩水)または0.9%(標準生理食塩水)の塩濃度のいずれかを与えるようにNaClが添加された、0.01Mのリン酸緩衝液中で測定された。これらの溶液のpHは、薬物添加前に、希釈水酸化ナトリウムを用いて、7.0から9.0までの範囲の初期の値に調節された。これらの緩衝塩溶液の組成物は、上記で検討された溶解度実験において用いられたものと同一である。
【0057】
エタノール中に溶解されたレボシメンダンは、レボシメンダンの最終濃度が、約10mcg/mL、かつ、エタノールの最終濃度が2%であるように、緩衝塩溶液に添加された。pH調節された塩溶液中でのレボシメンダンの安定性が、種々の時間にわたって、20℃で、HPLCによって計測された。溶液のpHもまた、安定性の検討の開始時および終了時に計測された。図10および11の安定性データは、レボシメンダンの分解が、pH7.0から9.0の範囲において、標準生理食塩水および1/2生理食塩水中で非常に類似していることを示している。主な分解生成物は、OR−1420であった(図11)。
【0058】
標的であるpH、速度論的検討の開始時におけるpHおよび検討の終了時におけるpHが測定され、そして、図12に示されている。初期に8.5および9.0に調節されていた緩衝液の最終pHは、pH8.5〜9.0の範囲におけるリン酸緩衝液のより低い緩衝能力のため、約8の値に低減された。
【0059】
実施例6
本発明のある実施態様では、レボシメンダンのエタノール濃縮物は、pHを中性領域に調節するために4%重炭酸ナトリウム溶液(Neut(登録商標))の溶液が添加された標準生理食塩水中に希釈されてもよい。この希釈手順は、1つのNeut(登録商標)バイアル(5mL)の内容物の、1つの500mLのIV標準生理食塩水バッグへの添加、その後のエタノール中のレボシメンダン(2.5mg/mL)10mLの添加を含む。バッグの最終内容物は、0.05mg/mLの濃度のレボシメンダンおよび2%濃度のエタノールを含む。したがって、レボシメンダンの溶解度および安定性は、種々の量のNeut(登録商標)の存在下の標準生理食塩水中で評価された。
【0060】
Neut(登録商標)の増加量の存在下、標準生理食塩水中(エタノールを含まない)中のレボシメンダンの溶解度が、図13に示されている。初期pH(薬物添加前)、最終pH(薬物平衡後)および500mLの生理食塩水容量あたり使用されたNeut(登録商標)バイアルの数が、横座標に示されている。結果は、標準生理食塩水のpHは、それに添加されたNeut(登録商標)バイアルの数に非感受性であり、そして、添加後のpHが、7.6から7.7の範囲にあることを示している。これは、重炭酸イオンの限られた緩衝能力およびpKaのためである。結果は、7.2〜7.6のpH領域において、200mcg/mLよりも高い(または所望の臨床用薬物濃度より約4倍高い)レボシメンダンの溶解度を達成することが可能であることを示している。溶解度データはまた、レボシメンダンの溶解度を増加させるための標準生理食塩水への添加物としての重炭酸ナトリウムの使用を支持している。これらの溶解度の結果は、リン酸緩衝生理食塩水中で得られた結果と一致している。
【0061】
実施例7
エタノール中に溶解されたレボシメンダンが、レボシメンダンの最終濃度が約10mcg/mL、かつ、エタノールの最終濃度が2%であるように、重炭酸塩緩衝標準生理食塩水に添加された。重炭酸塩の量は、500mLの生理食塩水あたり、1つ、2つ、4つまたは8つのNeut(登録商標)のバイアルを添加することによって変えられた。これらの塩溶液中のレボシメンダンの安定性は、20℃で、HPLCによって計測された。図14および15の安定性のデータは、重炭酸塩濃度を8倍に変化させても、標準生理食塩水中でのレボシメンダンの分解速度に有意な影響を及ぼさないことを示している。主な分解生成物は、OR−1420であった(図15)。さらに、分解速度(および生成物分布)は、リン酸緩衝生理食塩水溶液中で見られた結果と非常に類似していた。
【0062】
実施例8
注入による臨床的投与を意図している、レボシメンダンの重炭酸塩緩衝生理食塩水溶液は、(もとの薬物濃縮物からの)2%エタノールを含んでいるかもしれないので、重炭酸塩緩衝生理食塩水中でのレボシメンダンの溶解度におけるエタノールの影響が検討された。Neut(登録商標)の1つのバイアル(5mL)が、500mLの標準生理食塩水に添加された。無水エチルアルコールが、その後、0%から8%までの範囲のエタノールの溶液を調製するために添加された。固形の薬物が、レボシメンダンの平衡溶解度を測定するために、これらの溶液と混合された。この検討の結果が、図16に示されている。最小二乗法線形回帰直線が、実験データ点に重ね合わせられる。図16が示すように、溶解度は、エタノール濃度とともに直線的に増加する。溶液のpHは、7.2から7.3の範囲であった。溶解度およびpHの結果は、以前の実験と一致しており、溶解度は、好ましい濃度である50mcg/mLよりもはるかに上である。
【0063】
実施例9
上記で検討された全ての安定性の検討は、ガラス容器の中、緩衝標準生理食塩水および緩衝1/2生理食塩水中で、10mcg/mLの最終的なレボシメンダン濃度で実施された。好ましい実施態様では、レボシメンダンの薬物濃縮物は、生理食塩水を緩衝するためにNeut(登録商標)を用いて、IVバッグ中で50mcg/mL(0.05mg/mL)に希釈される。したがって、安定性試験は、常温および冷蔵温度で、薬物濃度を、Neut(登録商標)緩衝標準生理食塩水およびNeut(登録商標)緩衝1/2生理食塩水中に、0.05mg/mLである最終濃度に希釈することによって実施された。標準生理食塩水バッグ中で0.05mg/mLの濃度まで希釈され、そして、常温で保持されたSIMDAX(登録商標)が、対照として用いられた。レボシメンダンおよび分解生成物が、HPLCによって計測された。結果は、図17および18に示されている。
【0064】
バッグ中の全ての試料は、実験の過程において外観上は透明であった。予期された通り、実験は、常温状態と比較して、冷蔵温度での、より遅い分解の速度を示している。また、生理食塩水および1/2生理食塩水において、分解速度に関して違いは見られなかった。希釈後の製剤の分解速度は、IVバッグ中のNeut(登録商標)の存在による、より高いpH(7.8から8.4)のため、SIMDAX(登録商標)より高い。希釈されたSIMDAX(登録商標)を含むIVバッグのpHは、SIMDAX(登録商標)製剤中のクエン酸により、はるかに低い(pH=3.7)。
【0065】
主な分解経路は加水分解であって、結果としてOR−1420が生成する(図18)。全分解生成物が、図19に示されている。本発明の分解速度は、SIMDAX(登録商標)よりも高いものの、分解の程度は、医薬組成物としてのその使用を損なうものではない。
【0066】
実施例10
脱水されたエチルアルコール中のレボシメンダン(2.5mg/mL)の好ましい製剤が、製剤を0.05mg/mLの濃度に希釈することによるいくつかの予備的な混和性試験において評価された。第一の目的は、種々のタイプのIV容器中での、Neut(登録商標)緩衝生理食塩水(500mL希釈剤あたり5mL)中での、希釈後24〜48時間の期間にわたる使用の適合性を示すことであった。SIMDAX(登録商標)は、参照の製剤として試験において含まれていた。化学的混和性に加えて、実験は、外観上の透明さ、pHおよび光遮蔽(HIAC)手法による、顕微学的微粒子を評価した。表2の結果は、米国および日本の供給元からの種々のLVP容器を用いて、常温(RT)および冷蔵温度(2℃から8℃)で保存された、希釈された薬物製剤が、USPの顕微学的粒子要件に合致したことを示している。表3のpHの結果は、Neut(登録商標)溶液の量が、48時間という標的期間をはるかに超える間、pHをレボシメンダンのpKa(6.2)より上方に保持するのに適していたことを示している。全ての希釈された製剤は、一週間という期間にわたって、外観上透明であり、これは希釈という手法が適していることを示している。表4のデータは、常温および冷蔵温度で、標準生理食塩水中、2つのPVCバッグサイズでの、製剤の混和性を示している。
【0067】
実施例11
クエン酸を含む、脱水されたエチルアルコール中のレボシメンダンはまた、薬物濃縮物を0.05mg/mLのレボシメンダン濃度および2%のエタノール濃度に希釈することによるいくつかの予備的な混和性試験において評価された。基本的に、2.5mLのNeut(登録商標)が、250mLのPVC IVバッグ(ホスピーラ)に添加され、続いて、5mLの薬物濃縮物(クエン酸を含むエタノール中のレボシメンダン(2.5mg/mL))が添加された。0.1および2mg/mLのクエン酸を含む、薬物濃縮物が、6ヶ月間、SIMDAX(登録商標)とともに、5℃または25℃のいずれかで、安定チャンバー中で保存された。製剤は、混和性試験において、常温で3日間評価された。
【0068】
バッグ中の全ての試料は、実験の過程において外観上透明であった。図20が示すように、希釈後の新しい製剤の分解速度は、より高いpH(7.6〜8.4)(Neut(登録商標)の添加によって引き起こされる)のために、SIMDAX(登録商標)よりも速かった。結果的にOR−1420の生成をもたらす主要な分解経路が、図21に示されている。6つの実験組成物で見られた平行線から明らかなように、製剤中のクエン酸レベルは、この速度に何の効果ももたらさなかった。希釈されたSIMDAX(登録商標)を含むIVバッグのpHは、最終的なSIMDAX(登録商標)組成物中のクエン酸のため、はるかに低かった(pH3.5〜4.0の範囲)。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ある量のレボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;
(b)薬学的に許容され得る希釈剤;および
(c)薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記レボシメンダンが有機溶媒中に溶解されている請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記レボシメンダンおよび前記有機溶媒が、薬物濃縮物として提供される請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒が、無水エタノールである請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記レボシメンダンが、凍結乾燥された形態である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、前記医薬組成物のpHを前記レボシメンダンのpKa付近まで増加させるために十分な量である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記レボシメンダンのpKaが、約6.2である請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記希釈剤が、リンガー液、乳酸加リンガー液および生理食塩水からなる群より選択される請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容され得る有機酸をさらに含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記有機酸が、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記有機酸が、クエン酸である請求項9記載の医薬組成物。
【請求項12】
水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を増加させるための方法であって、該レボシメンダンを該水溶液およびアルカリ化剤または緩衝剤と混合する工程を含む方法。
【請求項13】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、前記レボシメンダンと混合する前に、初めに前記水溶液と混合される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、重炭酸ナトリウムおよびトロメタミンからなる群より選択される請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液が、0.9%の塩化ナトリウムである請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、重炭酸ナトリウムの4.0%溶液である請求項12記載の方法。
【請求項17】
静脈注射に適した組成物であって
(a)ある量のレボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;
(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、
(c)安定性を促進させる量の、2から4までの範囲にあるpKaを有する薬学的に許容され得る有機酸;および
(d)約6.3から約9.5の範囲にあるpHを有する水性希釈剤
を含む組成物。
【請求項18】
前記有機溶媒が、無水エタノールである請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記有機酸が、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される請求項17記載の組成物。
【請求項20】
前記有機酸が、クエン酸である請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記水性希釈剤が、標準生理食塩水および1/2生理食塩水からなる群より選択される請求項17記載の組成物。
【請求項22】
(a)ある量のレボシメンダン、
(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、
(c)薬学的に許容され得る有機酸、
(d)薬学的に許容され得る希釈剤、および
(e)薬学的に許容され得るアルカリ化剤
を含むパッケージ化された医薬製品。
【請求項23】
単一成分として、(a)、(b)および(c)がパッケージ化されている請求項22記載の医薬製品。
【請求項24】
単一成分として、(a)および(b)がパッケージ化されている請求項22記載の医薬製品。
【請求項25】
単一成分として、(b)および(c)がパッケージ化されている請求項22記載の医薬製品。
【請求項26】
単一成分として、(d)および(e)がパッケージ化されている請求項22〜25のいずれかに記載の医薬製品。
【請求項1】
(a)ある量のレボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;
(b)薬学的に許容され得る希釈剤;および
(c)薬学的に許容され得るアルカリ化剤または緩衝剤
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記レボシメンダンが有機溶媒中に溶解されている請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記レボシメンダンおよび前記有機溶媒が、薬物濃縮物として提供される請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒が、無水エタノールである請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記レボシメンダンが、凍結乾燥された形態である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、前記医薬組成物のpHを前記レボシメンダンのpKa付近まで増加させるために十分な量である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記レボシメンダンのpKaが、約6.2である請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記希釈剤が、リンガー液、乳酸加リンガー液および生理食塩水からなる群より選択される請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容され得る有機酸をさらに含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記有機酸が、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記有機酸が、クエン酸である請求項9記載の医薬組成物。
【請求項12】
水溶液中でのレボシメンダンの溶解度を増加させるための方法であって、該レボシメンダンを該水溶液およびアルカリ化剤または緩衝剤と混合する工程を含む方法。
【請求項13】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、前記レボシメンダンと混合する前に、初めに前記水溶液と混合される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、重炭酸ナトリウムおよびトロメタミンからなる群より選択される請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液が、0.9%の塩化ナトリウムである請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ化剤または緩衝剤が、重炭酸ナトリウムの4.0%溶液である請求項12記載の方法。
【請求項17】
静脈注射に適した組成物であって
(a)ある量のレボシメンダンまたは薬学的に許容され得るその塩;
(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、
(c)安定性を促進させる量の、2から4までの範囲にあるpKaを有する薬学的に許容され得る有機酸;および
(d)約6.3から約9.5の範囲にあるpHを有する水性希釈剤
を含む組成物。
【請求項18】
前記有機溶媒が、無水エタノールである請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記有機酸が、クエン酸、乳酸、酒石酸またはマレイン酸からなる群より選択される請求項17記載の組成物。
【請求項20】
前記有機酸が、クエン酸である請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記水性希釈剤が、標準生理食塩水および1/2生理食塩水からなる群より選択される請求項17記載の組成物。
【請求項22】
(a)ある量のレボシメンダン、
(b)薬学的に許容され得る有機溶媒、
(c)薬学的に許容され得る有機酸、
(d)薬学的に許容され得る希釈剤、および
(e)薬学的に許容され得るアルカリ化剤
を含むパッケージ化された医薬製品。
【請求項23】
単一成分として、(a)、(b)および(c)がパッケージ化されている請求項22記載の医薬製品。
【請求項24】
単一成分として、(a)および(b)がパッケージ化されている請求項22記載の医薬製品。
【請求項25】
単一成分として、(b)および(c)がパッケージ化されている請求項22記載の医薬製品。
【請求項26】
単一成分として、(d)および(e)がパッケージ化されている請求項22〜25のいずれかに記載の医薬製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−514778(P2010−514778A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544153(P2009−544153)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087099
【国際公開番号】WO2008/082871
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(300046083)オリオン コーポレーション (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087099
【国際公開番号】WO2008/082871
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(300046083)オリオン コーポレーション (31)
【Fターム(参考)】
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