非縫合弁人工弁並びに送達用の器具及び方法
人工弁、埋め込み器具及び使用方法を提供する。この埋め込み器具は、人工弁を位置決定及び固定するために、動かせる捕握部を用いる。この装置の代替的設計は、経心尖部及び経カテーテルのアプローチを含む、非縫合人工弁の最小限に侵襲性の埋め込みのための多様な方法を可能にする。最小限に侵襲性の手段によって医療用人工器官を送達するための送達器具も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、2009年3月30日に提出した米国仮出願第61/211430号、2009年3月30日に提出した第61/211431号、2009年3月30日に提出した第61/211432号、2009年3月30日に提出した第61/211433号、2009年7月24日に提出した第61/228423号の優先権の利益を主張する。これらのすべては、言及することによって全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本明細書に記載されている主題は、最小限に侵襲性の処置を使用して非縫合人工心臓弁を埋め込むための医療器具及び方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
人工心臓弁は、損傷を受けた心臓弁又は病変した心臓弁を置換するために使用される。脊椎動物において、心臓は4つのポンプ室、すなわち、左心房、右心房、左心室及び右心室を有する筋肉器官である。これらのポンプ室は、それぞれ固有の一方向弁を有する。生来の心臓弁は、大動脈弁、左房室弁(又は、二尖弁)、三尖弁、及び、肺動脈弁として知られている。大動脈又は左房室弁は、最も圧力が高い心臓の左側に存在するので、これらの修復又は置換がより一般的ではあるが、人工心臓弁は、これらの生来的に存在する弁のいずれかを置換するために使用することができる。
【0004】
従来の心臓弁置換手術は、胸の縦方向の切り口を経て患者の胸腔内の心臓に到達するステップを含む。例えば、胸骨正中切開は、胸骨を切り開き、肋骨郭の2つに分けた対向する部分を開いて離れるようにし、胸腔及び心臓への到達を可能にすることを必要とする。その後、患者は、内室に到達できるようにするために、心臓を停止させることを伴う心肺バイパスに置かれる。そのような開胸手術は、著しく侵襲性であり、長い困難な回復期間を伴う。
【0005】
例えば大腿動脈又は心臓に到達できるようにする小さい切り口を介して導入されるカテーテルを使用して人工弁を患者に導入することができるような、最小限に侵襲性の外科技術が開発されている。心臓弁置換における重大な問題は、ターゲット位置においてわずか約2mm−5mmの範囲内に人工弁を置くことである。医師らは、様々なマーキングシステム、術中におけるコントラスト染料の複数回の注入、及び、映像システムにおける視野角調節を含む、心臓弁置換手術中の医師たちの判断を確認するための様々な方法を試してきた。しかしながら、これらの方法及び現行の映像システムには限界がある。例えば、現行の映像システムの標準誤差は約2mmであり、また、手術者による操作がさらなる不安定性を招く。さらに、心臓自体の動きによってターゲット設置位置が2mm〜5mmずれる可能性がある。これらのすべてによって人工弁を正確に設置するのが非常に困難になる。
【0006】
非縫合弁に付随する他の重要な問題は、弁の移動である。例えば、人工大動脈弁を配置する場合、100〜200mmHgの圧力がその人工大動脈弁に直ちに加わる。加圧時間及び弁の表面積は、人工弁に対する相当な負荷力を生じさせ、弁を大動脈弧に向かって移動させる可能性がある。弁移動の別の原因は、弁の傾いた設置である。人工弁は、傾くと、血流に面する表面積がより大きくなり、それによってその人工弁が大動脈中に押し込まれる可能性がある。
【0007】
患者に人工弁を導入するための改良された人工弁及び送達器具の必要性が当業界において依然として存在する。
【0008】
関連技術の先の例及びそれに関連した限界は、説明的なものであり、排外的なものではないように意図されている。関連技術の他の限界は、本明細書の参照及び図面の調査によって当業者に明らかであろう。
【発明の概要】
【0009】
後述されている態様、並びに、説明及び図示されているそれらの実施形態は、典型的かつ説明的なものであり、範囲を限定するものでないように意図されている。
【0010】
一態様において人工弁を記載する。この人工弁は、一実施形態において、圧縮状態と展開状態との間において放射状に展開可能なサポートフレームを備え、前記サポートフレームは、外側面を有し、かつ、流入・流出方向に沿った軸の周囲に中央開口部を定義する。一実施形態においては、人工弁が非縫合人工心臓弁である。
【0011】
一実施形態において、前記サポートフレームは、配列された複数のフレキシブルリンクを備え、前記サポートフレームの一部分が残りの部分から独立して展開することができる。
【0012】
この人工弁は、前記サポートフレームがその展開状態にあるときに開口部において一方向弁を提供するために前記サポートフレームに取り付けられた複数のフレキシブル弁尖と、前記サポートフレームの外側面との組込位置(nesting position)と係合位置(engagement position)との間において軸に沿って動かすことができる少なくとも1つの弁捕握部とをさらに備える。一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、前記サポートフレームから物理的に分離されている。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、第1脚部及び第2脚部、及び、U形部材からなる。第1脚部及び第2脚部のそれぞれが第1端部と第2端部とを有する。
【0014】
一実施形態において、第1脚部及び第2脚部のそれぞれの第1端部は、先端付近でU形部材に接続されている。
【0015】
一実施形態において、各脚部の第2端部は、各脚部の第1端部に対して近位にある。
【0016】
一実施形態において、前記先端は湾曲している。一実施形態において、第1脚部及び第2脚部は先端付近でU形部材に連結されており、前記第1脚部と前記第2脚部とが互いに略平行である。
【0017】
一実施形態において、弁捕握部は形状記憶材料で構成されている。
【0018】
一実施形態において、前記脚部の各自由端は戻り止めで終端する。他の一実施形態において、前記戻り止めの長さは可変であってもよい。他の一実施形態において、前記戻り止めは形状記憶材料製である。
【0019】
一実施形態において、前記サポートフレームの長さがLであり、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さが少なくともLである。他の一実施形態において、前記サポートフレームの長さがLであり、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さがLより短い。さらに別の一実施形態において、前記サポートフレームが長さLを有し、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さが約Lである。
【0020】
他の一実施形態において、その展開状態におけるサポートフレームは半径rを有しており、少なくとも1つの弁捕握部は、サポートフレームが展開状態にあるときに、サポートフレームと同軸状に重なるような大きさである。
【0021】
他の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、2個、3個、4個、又は、5個の弁捕握部を備える。
【0022】
他の代替的一実施形態において、それぞれの弁捕握部がU形部材からなる。一実施形態において、このU形部材は、弁捕握部の遠位端に湾曲部分と、その湾曲部分に近接した2つの直線部分とを有する。湾曲部分の両側の2つの直線部分は、それぞれ自由端で終端する。
【0023】
一実施形態において、サポートフレームの長さがLであり、U形部材の各直線部分の長さが少なくともLである。他の一実施形態においては、サポートフレームの長さがLであり、U形部材の各直線部分の長さがLより短い。さらに別の一実施形態においては、サポートフレームの長さがLであり、U形部材の各直線部の長さが約Lである。
【0024】
一実施形態において、U形部材の各自由端は戻り止めで終端する。他の一実施形態において、戻り止めの長さは可変であってもよい。
【0025】
また別の実施形態において、サポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に囲まれている。ある実施形態において被覆材が布である。
【0026】
さらに別の一実施形態においては、サポートフレームは形状記憶材料で構成されている。
【0027】
一実施形態において、弁捕握部は形状記憶材料で構成されている。
【0028】
一実施形態において、戻り止めは形状記憶材料で構成されている。
【0029】
一実施形態において、複数のフレキシブル弁尖は生物材料で構成されている。ある実施形態において、生物材料はブタ又はウシである。
【0030】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部の少なくとも一部分は、サポートフレームと被覆材との間に配置される。
【0031】
一実施形態において、サポートフレームは、固定部材とサポートフレームとの間に開口部を作るようにサポートフレームに取り付けられた少なくとも1つの固定部材を備える。他の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部の一部分は、少なくとも1つの固定部材とサポートフレームとの間の開口部に配置される。
【0032】
一実施形態においては、サポートフレームが圧縮状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部が流入・流出方向の軸に沿って動くことができる。他の一実施形態においては、サポートフレームが展開状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部が流入・流出方向の軸に沿った移動に制限される。
【0033】
他の一実施形態において、サポートフレームが展開状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部が流入・流出方向の軸に沿って制限なく動くことができない。
【0034】
一実施形態において、人工弁は、大動脈弁装置、肺動脈弁装置、又は、左房室弁装置である。
【0035】
他の一態様において、上述されている人工弁と送達器具とを備えた埋め込み器具を提供する。この送達器具は、一実施形態において、コントロールユニットと、前記コントロールユニットに取り付けられた近位端及び少なくとも1つの弁捕握部との接触のための遠位端からなる少なくとも1つのトラックワイヤと、圧縮状態にある人工弁サポートフレームの少なくとも一部分を囲むための第1被覆体とを備える。前記人工弁は、少なくとも1つの弁捕握部を含み、前記少なくとも1つの弁捕握部は、2つの脚部と、2つの頂部と、1つのU形部材とを備える。この実施形態においては、2つの脚部のそれぞれが第1端部及び第2端部を有し、各脚部の第1端部はU形部材に取り付けられており、各脚部の第2端部は固定されていない。他の一実施形態においては、各脚部の第1端部が頂点付近でU形部材に接続されている。一実施形態においては、各頂部が湾曲しており、各脚部の第2端部が各脚部の第1端部に対して遠位である。
【0036】
一実施形態において、埋め込み器具は、コントロールユニットに固定された近位端と人工弁に接触させるための遠位端とを有する人工弁プッシャワイヤをさらに備える。
【0037】
他の一実施形態において、コントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラを備える。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャワイヤは、人工弁を係合させるための部材で終端する。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャワイヤを係合させるための部材は、人工弁の近位端に接触している。
【0038】
一実施形態において、人工弁の係合部材はV形状又はU形状である。
【0039】
さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つのトラックワイヤが中空のトラックワイヤであり、その中空のトラックワイヤの中にロックワイヤが配置されている。一実施形態においては、このロックワイヤの遠位端が、少なくとも1つの弁捕握部を少なくとも1つのトラックワイヤに分離できるように固定するためのロック部材を有している。
【0040】
他の一実施形態において、コントロールユニットはトラックワイヤコントローラを備える。
【0041】
埋め込み器具は、さらに別の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部を囲むための第2被覆体を備える。
【0042】
一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体と連続的に、かつ、第1被覆体に対して遠位に配置されいる。
【0043】
一実施形態において、コントロールユニットは第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0044】
他の一実施形態において、第2被覆体は、コントロールユニットの中に配置された第2被覆体コントローラによって移動することができる。この第2被覆体コントローラは、第2被覆体から第2被覆体コントローラの方へ伸びる第2被覆体コントロールケーブルを備える。一実施形態において、第2被覆体コントローラは、送達器具の近位端に又はその近位端の近傍に位置する。
【0045】
さらに別の一実施形態においては、第2被覆体コントロールケーブルが中空である。
【0046】
他の一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤの近位端は、トラックワイヤコントローラの中のリリーススイッチに接続されている。
【0047】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0048】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、少なくとも1つのトラックワイヤ及び人工弁プッシャワイヤのそれぞれの独立制御のために構成されている。他の一実施形態において、コントロールユニットは、少なくとも1つのトラックワイヤ及び第2被覆体コントロールケーブルのそれぞれの独立制御のために構成されている。
【0049】
一実施形態において、第1被覆体の長さは、少なくともアクセス開口部から心臓までの距離の長さである。この距離は、動脈又は静脈の経路を通して測定されるものである。
【0050】
一実施形態において、第1被覆体は直線状であるか又は湾曲している。
【0051】
一実施形態において、第2被覆体は直線状であるか又は湾曲している。
【0052】
他の一態様において、人工弁備える埋め込み器具であって、前記人工弁は少なくとも1つの弁捕握部を備え、前記少なくとも1つの弁捕握部がU形部材を備えた埋め込み器具を提供する。
【0053】
この実施形態において、U形部材の各自由端は、U形部材の湾曲部の近傍に位置している。
【0054】
送達器具は、一実施形態において、コントロールユニットと、コントロールユニットに取り付けられた近位端及び少なくとも1つの弁捕握部の自由端との接触のための遠位端からなる少なくとも1つのトラックワイヤと、少なくとも1つの弁捕握部の少なくとも一部分を囲むための第1被覆体と、圧縮状態にある人工弁サポートフレームの少なくとも一部分を囲むための第2被覆体とで構成されている。第2被覆体は、第1被覆体と連続するように、かつ、第1被覆体に対して遠位に配置される。
【0055】
一実施形態において、第2被覆体は、人工弁サポートフレームと、少なくとも1つの弁捕握部の少なくとも一部分とが入っている。他の一実施形態において、第2被覆体には、人工弁サポートフレームと、少なくとも1つの弁捕握部の湾曲した部位の少なくとも一部分とを囲んでいる。
【0056】
さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つのトラックワイヤが中空のトラックワイヤであり、その中空のトラックワイヤの中にロックワイヤが配置されている。一実施形態において、ロックワイヤの近位端は、少なくとも1つの弁捕握部を少なくとも1つのトラックワイヤに分離できるように固定するためのロック部材を有している。
【0057】
他の一実施形態において、コントロールユニットは、トラックワイヤコントローラを備える。
【0058】
他の一実施形態において、第2被覆体は、コントロールユニットの中に配置された第2被覆体コントローラによって移動することができる。この第2被覆体コントローラは、第2被覆体から第2被覆体コントローラの方へ伸びる第2被覆体コントロールケーブルを備える。一実施形態において、第2被覆体コントローラは、送達器具の近位端に又はその近位端の近傍に位置する。
【0059】
さらに別の一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブルは中空である。
【0060】
他の一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤの近位端は、トラックワイヤコントローラの内部のリリーススイッチに接続されている。
【0061】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0062】
一実施形態において、埋め込み器具は、コントロールユニットに固定された近位端、及び、人工弁との接触のための遠位端を有する人工弁プッシャワイヤをさらに備える。
【0063】
他の一実施形態において、コントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラを備える。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャワイヤは、人工弁を係合させるための部材で終端する。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャーワイヤを係合させるための部材は、人工弁の近位端に接触する。
【0064】
一実施形態において、人工弁の係合部材はV形状かU形状である。
【0065】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、少なくとも1つのトラックワイヤ及び第2被覆体コントロールケーブルのそれぞれの独立制御のために構成されたものである。
【0066】
一実施形態において、捕握部複合ユニットを提供する。他の一実施形態において、この捕握部複合ユニットは、2つ以上のU形部材及び2つ以上の頂部を含み、第1U形部材は、第1頂部及び第2頂部並びに1つの捕握部複合脚部を介して、第2U形部材に永続的に取り付けられている。さらに別の一実施形態において、捕握部複合ユニットは、3つのU形部材、6つの頂部、及び、3つの捕握部複合脚部を備える。他の一実施形態において、捕握部複合ユニットは、4つのU形部材、8つの頂部、及び、4つの捕握部複合脚部を備える。
【0067】
さらに別の一実施形態において、1つ以上の複合脚部のそれぞれは、おおよそ近位端に孔を備える。
【0068】
一実施形態においては、1つ以上の複合脚部が1つ以上の返しを備える。他の一実施形態においては、1つ以上の返しのそれぞれが1つ以上の複合脚部の両側に存在する。さらに別の一実施形態においては、複数の返しのそれぞれが1つ以上の複合脚部の片側に連続的に存在する。さらに別の一実施形態においては、複数の返しのそれぞれが少なくとも1つの複合脚部に交互に存在する。
【0069】
一実施形態において、2つ以上のU形部材及び2つ以上の頂部を備える捕握部複合ユニットであって、第1U形部材が第1頂部及び第2頂部を介して第2U形部材に永続的に取り付けられており、前記捕握部複合ユニットが前記捕握部複合ユニットに永続的に固定された複合脚部を備えていない捕握部複合ユニットを提供する。他の一実施形態においては、2つ以上の頂部のそれぞれが孔を備える。一実施形態においては、捕握部複合ユニットが3つのU形部材及び6つの頂部を備える。他の一実施形態においては、捕握部複合ユニットが4つのU形部材及び8つの頂部を備える。
【0070】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを可逆的に取り付けるための機構を提供する。この実施形態において、弁埋め込み器具は、中空のトラックワイヤ、ロックアンドリリース部、フレキシブル引張部、及び、捕握部複合ユニットを備える。他の一実施形態において、フレキシブル引張部は遠位環状末端を備える。他の一実施形態において、ロックアンドリリース部は、中空のトラックワイヤの中に少なくとも部分的に入っており、かつ、その近位端において埋め込み器具のコントロールユニットに接続されている。さらに別の一実施形態において、フレキシブル引張部は、中空のトラックワイヤの中に少なくとも部分的に入っており、その近位端において埋め込み器具のコントロールユニットに接続されている。一実施形態において、フレキシブル引張部の遠位端は、ロックアンドリリース部の遠位端に対して遠位方向に延在する。
【0071】
一実施形態において、フレキシブル引張部は、単繊維、多繊維、又は、網目状多繊維の構造で構成されている。他の一実施形態において、フレキシブル引張部は、ワイヤ、糸、又は、単繊維である。他の一実施形態において、フレキシブル引張部は、腸線、絹、又は、亜麻で構成されている。さらに別の一実施形態において、フレキシブル引張部は、ナイロン又はポリプロピレンである。さらに別の一実施形態において、フレキシブル引張部は、形状記憶金属で構成されている。
【0072】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを可逆的に取り付ける方法を提供する。他の一実施形態において、この方法は、1)フレキシブル引張部の遠位環状末端を捕握部複合ユニット脚部の孔に通すステップと、2)フレキシブル引張部の遠位環状末端を通るようにロックアンドリリース部の端部を移動させるステップと、3)中空のトラックワイヤに、少なくとも、フレキシブル引張部の遠位環状末端及び捕握部複合ユニット脚部の一部分が入るまで、中空のトラックワイヤを遠位方向に移動させるステップとを含む。
【0073】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットから捕握部複合ユニットを切り離す方法を提供する。他の一実施形態において、この方法は、1)捕握部複合脚部の近位端を露出させるために、中空のトラックワイヤを近位方向に移動させるステップと、2)ロックアンドリリース部がフレキシブル引張部の遠位環状末端を通らない位置まで、ロックアンドリリース部を近位方向に移動させるステップと、3)フレキシブル引張部が捕握部複合ユニット脚部の孔を通らない位置まで、中空のトラックワイヤ、ロックアンドリリース部、及び、フレキシブル引張部を近位方向に移動させるステップとを含む。
【0074】
一実施形態において、捕握部複合ユニットに弁埋め込み器具を可逆的に取り付けるための機構を提供する。この実施形態において、この機構は、弁埋め込み器具を備え、前記弁埋め込み器具は、ロックアンドリリース部、フレキシブル引張部及び中空のトラックワイヤ、捕握部複合ユニット、並びに、フレキシブル脚部を備える。一実施形態において、このフレキシブル脚部は、その近位端においてフレキシブル引張部の遠位環状末端に可逆的に接続されており、また、このフレキシブル脚部は、その遠位端において、捕握部複合ユニットに又は人工弁サポートフレームに可逆的に又は永続的に取り付けられている。一実施形態において、フレキシブル引張部の近位端は、弁埋め込み器具のコントロールユニットに取り付けられている。一実施形態において、捕握部複合ユニットは、複数の複合ユニット脚部を備えている。他の一実施形態において、捕握部複合ユニットは、複数の複合ユニット脚部を備えていない。
【0075】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを可逆的に取り付ける方法を提供する。この実施形態において、この方法は、1)フレキシブル引張部の遠位環状末端にフレキシブル脚部の近位端を接続するステップと、2)少なくともフレキシブル脚部の近位部分が中空のトラックワイヤに入るようになるまで、中空のトラックワイヤを遠位方向に移動させるステップとを含む。
【0076】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットから捕握部複合ユニットを切り離す方法を提供する。この実施形態において、この方法は、1)中空のトラックワイヤがフレキシブル脚部の近位端に入っていないようになるまで、中空のトラックワイヤを近位方向に移動させるステップと、2)中空のトラックワイヤ及びフレキシブル引張部を近位方向に引くステップであって、フレキシブル脚部がフレキシブル引張部に連結されなくなるまで、前記フレキシブル脚部を真っすぐにするステップとを含む。
【0077】
他の一態様において、人工心臓弁を配置する方法を提供する。この方法は、上述されているように、少なくとも1つの弁捕握部を備え、前記少なくとも1つの弁捕握部がU形部材及び2つの脚部を備える埋め込み器具を提供するステップと、前記人工弁が患者の心腔内に埋め込み器具を挿入するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を囲む第2被覆体が、患者の心臓内の心臓弁を通過し、かつ、前記心臓弁を越えて延在する位置に、前記埋め込み器具を誘導するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させ、前記少なくとも1つの弁捕握部を心臓弁の洞の中に固定するように、前記埋め込み器具を操作するステップと、人工弁の遠位端が少なくとも1つの弁捕握部におおよそ隣接するように配置されるように、コントロールユニットによって人工弁の位置を調節するステップと、第1被覆体を近位方向にスライドさせることによって第1被覆体から人工弁を切り離すステップであって、それによって人工弁サポートフレームと少なくとも1つの弁捕握部との間に心臓弁の組織をはさむように、人工弁を展開状態に伸ばすステップと、患者から送達器具及び導入器具を除去するステップとを含む。
【0078】
一実施形態において、第1被覆体を近位方向にスライドさせるステップは、人工弁を静止したままに保持しながら第1被覆体コントローラを近位方向に引くステップを含む。
【0079】
一実施形態において、埋め込み器具は、患者の心臓の左心室内に挿入された導入器具を経由して挿入される。
【0080】
さらに別の一実施形態において、埋め込み器具を提供するステップは、少なくとも1つの弁捕握部が送達器具の第2被覆体の中に入っている埋め込み器具を提供するステップを含む。他の一実施形態において、埋め込み器具を誘導するステップは、第2被覆体が、患者の心臓弁を通り、かつ、前記心臓弁を越えるように位置するように、前記埋め込み器具を誘導するステップを含む。さらに別の一実施形態において、第2被覆体は心臓の左心房内に位置する。
【0081】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるように埋め込み器具を操作するステップは、少なくとも1つの捕握部を露出させるために第2被覆体を移動させるように埋め込み器具を操作するステップを含む。他の一実施形態において、少なくとも1つの捕握部を露出させるために第2被覆体を移動させるように埋め込み器具を操作するステップは、少なくとも1つの弁捕握部を静止したままに保持しながら、第2被覆体コントローラを近位方向に引くステップを含む。
【0082】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部を露出させる前に送達器具の第1被覆体及び第2被覆体を配置するために、映像システムが使用される。
【0083】
一実施形態において、この方法は、人工弁を配置するステップであって、人工弁が人工大動脈弁であるステップを含む。他の一実施形態において、この方法は、患者の胸腹部を通して左心室内の頂点に又は頂点付近に送達器具を挿入するステップを含む。
【0084】
一実施形態において、この方法は、大動脈弁輪を通して左心房内に第2被覆体を進めて、大動脈弁輪の付近に第1被覆体を配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるために第2被覆体を遠位方向に進めるステップであって、少なくとも1つの弁捕握部が左心房内で放射状に配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材が大動脈洞と接触するまで第2被覆体コントローラを引くステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端にほぼ隣接するまで、又は、第1被覆体の遠位端が大動脈弁輪と接触するまで、第1被覆体を進めるステップと、人工弁を静止させたまま第1被覆体を引くことによって、人工弁を露出及び配置するステップと、ロックワイヤを静止したままに保持しながら少なくとも1つのトラックワイヤリリーススイッチを近位方向に移動させることによって、少なくとも1つのトラックワイヤから少なくとも1つの弁捕握部の脚部を切り離すステップと、人工弁から少なくとも1つのプッシャワイヤエンゲージャを切り離すためにプッシャワイヤコントローラを近位方向に移動させるステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端に接するまで、第1被覆体を遠位方向に進めるステップと、送達器具を引くことによって患者から送達器具を除去するステップとをさらに含む。
【0085】
一実施形態において、この方法は、人工弁を配置するステップであって、人工弁が人工肺動脈弁であるステップを含む。他の一実施形態において、この方法は、患者の大腿静脈を経由して送達器具を挿入し、下大静脈を経由して右心房内へ送達器具を進めるステップを含む。
【0086】
一実施形態において、この方法は、三尖弁輪を通して右心室内へ第2被覆体を進め、肺動脈弁輪を通して第2被覆体を進め、肺動脈内に第2被覆体を配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるために第2被覆体を遠位方向に進めるステップであって、少なくとも1つの弁捕握部を肺動脈内で放射状に展開させるステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材が肺動脈洞と接触するまで、第2被覆体コントローラを引くステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端におおよそ隣接するまで、又は、第1被覆体の遠位端が大動脈弁輪と接触するまで、第1被覆体を進めるステップと、人工弁を露出及び展開させるために、人工弁を静止させたまま第1被覆体を引くステップと、少なくとも1つのトラックワイヤから少なくとも1つの弁捕握部の脚部を切り離すために、ロックワイヤを静止したままに保持しながら少なくとも1つのトラックワイヤリリーススイッチを近位方向に移動させるステップと、少なくとも1つのプッシャワイヤエンゲージャを人工弁から切り離すために、プッシャワイヤコントローラを近位方向に移動させるステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端に接するまで、第1被覆体を遠位方向に進めるステップと、患者から埋め込み器具を除去するために埋め込み器具を引くステップとをさらに含む。
【0087】
一実施形態において、この方法は、人工弁を配置するステップであって、人工弁が人工左房室弁であるステップを含む。他の一実施形態において、この方法は、患者の大腿静脈を経由して埋め込み器具を挿入するステップと、下大静脈を経由して右心房内に埋め込み器具を進めるステップとを含む。
【0088】
一実施形態において、この方法は、埋め込み器具の遠位端を三尖弁輪を通して右心室内へ進めて、経中隔穿刺を実行するステップと、左心房を通して及び左房室弁輪を通して埋め込み器具の遠位端を進めて、左心室内に第2被覆体を配置し、左心房内に第1被覆体を配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるために第2被覆体を遠位方向に進めるステップであって、少なくとも1つの弁捕握部を左心室内で放射状に展開させるステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材が左房室弁輪洞と接触するまで第2被覆体コントローラを引くステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端にほぼ隣接するまで又は第1被覆体の遠位端が左房室弁輪と接触するまで第1被覆体を進めるステップと、人工弁を露出及び展開させるために、人工弁を静止させたままで第1被覆体を引くステップと、少なくとも1つの弁捕握部の脚部を少なくとも1つのトラックワイヤから切り離すために、ロックワイヤを静止したままに保持しながら、少なくとも1つのトラックワイヤリリーススイッチを近位方向に動かすステップと、少なくとも1つのプッシャワイヤエンゲージャを人工弁から切り離すために、プッシャワイヤコントローラを近位方向に動かすステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端に接するまで第1被覆体を遠位方向に進めるステップと、患者から埋め込み器具を除去するために埋め込み器具を引くステップとをさらに含む。
【0089】
さらに別の一態様において、患者の体内に医療用人工器官を送達するための器具を提供する。この器具は、前記装置の遠位端から前記装置の近位端まで伸びる管状ステアリングワイヤと、前記装置の近位端にあるコントロールユニットと、開いた管腔を備え、前記コントロールユニットに対して遠位に配置された第1被覆体と、前記コントロールユニットにに取り付けられた近位端と医療用人工器官の接触及び制御のための遠位端とを有する少なくとも1つのトラックワイヤと、医療人工器官との管理された接触のための遠位端と前記コントロールユニットに固定された近位端とを有するプッシャワイヤと、を備える。
【0090】
一実施形態において、コントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラ及びトラックワイヤコントローラを備え、前記プッシャワイヤコントローラと前記トラックワイヤコントローラとは、独立して制御可能である。
【0091】
他の一実施形態において、前記少なくとも1つのトラックワイヤの近位端は、トラックワイヤコントローラの中のリリーススイッチに取り付けられている。
【0092】
さらに別の一実施形態において、前記少なくとも1つのプッシャワイヤの近位端は、プッシャワイヤコントローラ内の移動可能な制御手段に取り付けられている。
【0093】
他の一態様において、人工心臓弁を展開する方法を提供する。この方法は、上述されている埋め込み器具を提供するステップと、患者の心腔内に埋め込み器具を挿入するステップと、人工弁を囲む第2被覆体がおおよそ生来の弁の中に存在するような位置に埋め込み器具を誘導するステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材の湾曲部を露出させるように埋め込み器具の操作し、少なくとも1つの弁捕握部が係合位置において放射状に展開できるように、U形部材の直線部分及び少なくとも1つのトラックワイヤの少なくとも遠位部分を露出させるステップと、少なくとも1つの弁捕握部を心臓弁の洞に固定するステップと、第2被覆体から人工弁サポートフレームの少なくとも一部分を切り離すために、第2被覆体を遠位方向にスライドさせるステップと、第2被覆体から人工弁サポートフレーム全体を切り離すために第2被覆体を遠位方向にスライドさせるステップであって、それによって、人工弁サポートフレームと少なくとも1つの弁捕握部との間に生来の心臓弁の組織をはさむように人工弁が展開状態に展開するステップと、患者から送達器具及び導入器具を除去するステップとを含む。
【0094】
この実施形態において、生来の心臓弁の弁尖は、心腔内に入れた埋め込み器具の遠位端に向かって湾曲している。
【0095】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材の湾曲部分を露出させるように埋め込み器具を操作するステップは、第2被覆体を遠位方向に移動させるステップを含む。他の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部の直線部分及び少なくとも1つのトラックワイヤの少なくとも遠位部分を露出させるステップは、第1被覆体を静止したままに保持しながら、トラックワイヤコントロールユニットを遠位方向に動かすステップを含む。
【0096】
一実施形態において、第2被覆体を遠位方向にスライドさせるステップは、埋め込み器具を静止したままに保持しながら、第2被覆体コントローラケーブルを遠位方向に押すステップを含む。
【0097】
一実施形態において、心腔内に埋め込み器具を挿入するステップは、大腿動脈内に埋め込み器具を挿入し、大動脈弧を通して左心房内への埋め込み器具を進めるステップを含む。この実施形態において、人工心臓弁は人工大動脈弁である。
【0098】
一実施形態において、心腔内に埋め込み器具を挿入するステップは、患者の心臓の左心室内に挿入した導入器具を通して埋め込み器具を挿入するステップと、埋め込み器具を左心室内に進めるステップとを含む。この実施形態において、人工心臓弁は人工左房室弁である。
【0099】
さらに別の一態様において、複数の人工弁尖を備えたフレキシブル骨格と、動かせるように前記フレキシブル骨格に取り付けられ、捕握部耳部と2つの捕握部シャフトとを備えた弁捕握部と、圧縮状態のフレキシブル骨格を囲み、かつ、捕握部プッシャを備えた第1被覆体と、圧縮状態の複数の捕握部を囲う第2被覆体と、第2被覆体の中に位置する捕握部プッシャと、前記第1被覆体の中に位置する弁ストッパとを備え、フレキシブル骨格を弁輪内に配置する前に前記第1被覆体が第2被覆体に対して遠位に配置された埋め込み器具を提供する。
【0100】
さらに別の一態様において、人工心臓弁を展開する方法を提供する。この方法は、上記心臓埋め込み器具を提供し、大腿動脈内に前記埋め込み器具を挿入し、第1被覆体が左心室の弁輪内に配置され、かつ、第2被覆体が左心房内に位置するようになるまで、大腿動脈を通して心臓の左心室へ埋め込み器具を誘導するステップと、複数の弁捕握部を露出させるように第2被覆体を近位方向にスライドさせることによって、捕握部の耳部が左心房内で放射状に伸びるようにするステップと、捕握部の耳部が大動脈弁洞の底面に接触するまで弁捕握部を遠位方向に押すステップと、伸張したフレキシブル骨格を形成するようにフレキシブル骨格が放射状に伸び、かつ、捕握部の耳部と伸張したフレキシブル骨格との間にそれぞれの生来の心臓弁がはさまれるように、フレキシブル骨格を露出させるように第1被覆体を遠位へスライドさせるステップとを含む。
【0101】
上述されている典型的な態様及び実施形態に加えて、図面を参照することによって、また、以下の記載を研究することによって、さらなる態様及び実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】図1Aは、複数の捕握部を有する人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0103】
【図1B】図1Bは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0104】
【図1C】図1Cは、人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0105】
【図1D】図1Dは、部分的に展開した状態における人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0106】
【図1E】図1Eは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームの一実施形態の上面図である。
【0107】
【図2】図2A及び図2Bは、戻り止めを有する複数の弁捕握部の透視図を示している。
【0108】
【図3A】図3Aは、複数の弁捕握部及び被覆材を有する扁平形状の人工弁サポートフレームを図示している。
【0109】
【図3B】図3Bは、複数の弁捕握部、係合固定具、及び、被覆材を有する扁平形状の人工弁サポートフレームを図示している。
【0110】
【図4A−4D】図4A−図4Dは、動かせるように接続された捕握部を有する人工弁サポートフレームの上面図であって、該サポートフレームが圧縮状態(図4A及び図4C)又は展開状態(図4B及び図4D)にあるものを示している。
【0111】
【図4E−F】図4E及び図4Fは、係合固定具を有する人工弁サポートフレームの圧縮状態(図4E)又は展開状態(図4F)における上面図を示している。
【0112】
【図5A】図5Aは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部であって、頂部が脚部とU形部材とを連結している弁捕握部の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0113】
【図5B】図5Bは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部であって、頂部が脚部とU形部材とを連結している弁捕握部の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0114】
【図5C】図5Cは、生体内で展開状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部であって、頂部が脚部とU形部材とを連結している弁捕握部の横断図である。
【0115】
【図5D】図5Dは、係合固定具を有する圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0116】
【図5E】図5Eは、係合固定具を有する生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0117】
【図5F】図5Fは、係合固定具を有し、かつ、生体内で展開状態にある人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の横断図である。
【0118】
【図5G】図5Gは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0119】
【図5H】図5Hは、生体内で展開状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0120】
【図5I】図5Iは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。
【0121】
【図5J】図5Jは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0122】
【図5K】図5Kは、生体内で展開状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0123】
【図5L】図5Lは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。
【0124】
【図6A】図6Aは、サポートフレームに固定された複数の弁捕握部、複数の人工弁尖縫合線及び被覆材を有する扁平形状の人工弁サポートフレームを示している。
【0125】
【図6B】図6Bは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームであって、前記複数の弁捕握部がサポートフレームに固定され、かつ、人工弁サポートフレームが圧縮状態にあるものの上面図を示している。
【0126】
【図6C】図6Cは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームであって、前記複数の弁捕握部がサポートフレームに固定され、かつ、人工弁サポートフレームが展開状態にあるものの上面図を示している。
【0127】
【図7A】図7Aは、生体内における被覆体を有する人工弁であって、前記サポートフレームが圧縮状態にあり、かつ、弁捕握部が組込位置にある人工弁を示している。
【0128】
【図7B】図7Bは、動かせるように接続された捕握部を有し、生来の心臓弁に配置された人工弁を示している。
【0129】
【図8A−8H】図8A−図8Hは、心臓の生来の弁の中に人工弁を埋め込むための埋め込み器具及び方法の一実施形態の略図である。
【0130】
【図9A−9Q】図9A−図9Qは、埋め込み器具における様々な埋め込み器具部材の配置を示す横断面図を含む、埋め込み器具の一実施形態のより詳細な図を提供する。
【0131】
【図10A−10C】図10A−図10Cは、弁捕握部にトラックワイヤを接続するための様々な実施形態を図示している。
【0132】
【図11A−11B】図11A−図11Bは、コントロールユニットを有する人工弁埋め込み器具の一実施形態を図示しており、この人工弁は、圧縮状態(図11A)及び展開状態(図11B)にある。
【0133】
【図11C】図11Cは、埋め込み器具コントロールユニットの一実施形態を図示している。
【0134】
【図12A】図12Aは、人工弁埋め込み器具の一実施形態を図示している。
【0135】
【図12B−12D】図12B−図12Dは、人工弁埋め込み器具の一実施形態の横断面図を提供する。
【0136】
【図13A−13D】図13A−図13Dは、埋め込み器具の一実施形態の詳細図を提供する。
【0137】
【図14A−14D】図14A−図14Dは、埋め込み器具の一実施形態のための操作ステップを図示している。
【0138】
【図15A−15C】図15A−図15Cは、埋め込み器具の一実施形態のための操作ステップを図示している。
【0139】
【図16A−16C】図16A−図16Cは、人工弁サポートフレームの他の実施形態を図示している。
【0140】
【図17A−17B】図17A−図17Bは、捕握部複合ユニットの他の実施形態を図示している。
【0141】
【図17C−17G】図17C−図17Gは、捕握部複合ユニットの脚部の他の実施形態を図示している。
【0142】
【図17H−17M】図17H−図17Mは、捕握部複合ユニット脚部の取り付け及び分離のための他の実施形態を図示する。
【0143】
【図18A−18B】図18A−図18Bは、捕握部複合ユニットの他の実施形態を図示している。
【0144】
【図18C】図18Cは、捕握部複合ユニット脚部の他の実施形態を図示している。
【0145】
【図19A−19E】図19A−図19Eは、捕握部複合ユニットの脚部に対する弁埋め込み器具の可逆的な接続の他の実施形態を図示している。
【0146】
【図20A−20C】図20A−図20Cは、捕握部複合ユニットの脚部から弁送達器具を切り離すための他の実施形態を図示している。
【0147】
【図21A−21C】図21A−図21Cは、捕握部複合ユニットの脚部に対する弁送達器具の可逆的な接続の他の実施形態を図示している。
【0148】
【図22A−22D】図22A−図22Dは、捕握部複合ユニットの脚部から弁送達器具を切り離すための他の実施形態を図示している。
【0149】
【図23】図23は、胸膜領域内に挿入された導入器具を図示している。
【0150】
【図24A−24H】図24A−図24Hは、大動脈弁置換のための経心尖部処置の略図である。
【0151】
【図25A−25L】図25A−図25Lは、心臓の生来の左房室弁の中に人工左房室弁装置を埋め込むための埋め込み器具及び方法の他の実施形態の略図である。
【0152】
【図26】図26は、下大静脈を通して埋め込み器具を進めるステップを含む人工心臓弁を送達するための経路を図示している。
【0153】
【図27】図27は、人工心臓弁を送達するための経路であって、頚静脈内に埋め込み器具を導入するステップと、上大静脈を通してその装置を進めるステップとを含む経路を図示している。
【0154】
【図28】図28は、人工肺動脈弁を送達するための経路であって、頚静脈内に埋め込み器具を進めるステップと、上大静脈を通してその装置を進めるステップとを含む経路を図示している。
【0155】
【図29A−29H】図29A−図29Hは、人工大動脈弁を埋め込むための一実施形態の埋め込み器具を使用する方法であって、大腿動脈及び大動脈弧を通して埋め込み器具を進めるステップを含む方法を図示している。
【0156】
【図30A−30C】図30A−図30Cは、人工弁を送達及び展開する方法の他の実施形態を図示している。
【0157】
【図31A−31D】図31A−図31Dは、人工弁を展開して切り離すための方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0158】
本開示は、好ましくは最小限に侵襲性の外科手術技術を使用した、弁置換術のための装置、システム及び方法を提供する。これらの装置及び方法は、身体の様々な部分の多数の様々な管において用途が存在するであろうが、機能しない心臓弁、特に、大動脈弁、肺動脈弁又は左房室弁の置換に特に適している。これらの装置及び方法は、さらにフレキシブルなインプラント人工心臓弁装置を提供し、映像に対する依存が低下した人工心臓弁の精密かつ正確な配置を保証し、人工弁のさらなる固定を提供し、弁移動の発生率を低下させる能力において、特に有利である。他の利点は、本明細書に記載されるような非縫合人工弁の送達及び移植である。
【0159】
また、本開示は、人工心臓弁を埋め込むための改良された器具及び方法を提供する。特に、心臓中の有弁解剖部位の中又は隣に、展開可能な人工心臓弁を、順行的に、経皮的に又は大腿経カテーテルによって移植するために、これらの改良された最小限に侵襲性の方法及び器具を提供する。特に、本開示の改良された人工心臓弁及び方法は、弁置換術処置においてより多くの柔軟性を提供し、映像に対する依存が低下した人工心臓弁の精密かつ正確な配置を保証し、人工弁のさらなる固定を提供し、弁の移動又は位置ずれの発生率を低下させる。
【0160】
大動脈弁を配置する方法は、一般に、患者又は対象の肋骨と左心室の心尖との間に弁送達システムを挿入し、その後、患者の疾病した弁の部位に人工弁を送達するステップを含む(経心尖部送達)。大動脈弁を配置する他の方法は、一般に、大腿動脈(大腿の送達)を通して大動脈への到達を達成することを含む。
【0161】
肺動脈弁又は左房室弁を配置するための他の方法は、一般に、頚静脈内に弁送達システムを挿入し、その後、そのシステムを上大静脈を通して右心房内に誘導するステップを含む。その後、この装置を右心室及び肺動脈弁の中に進めることができる。あるいは、この装置を、経中隔穿刺を経て左心房内に進めて、次に、左房室弁の方へ進めることができる。
【0162】
肺動脈弁又は左房室弁を配置するためのさらに別の方法は、一般に、大腿静脈内に弁送達システムを挿入し、その後、上大静脈を通して右心房内にそのシステムを誘導し、上述されているように肺動脈弁又は左房室弁の方へその装置を進めるステップを含む。
【0163】
この弁送達システム又は埋め込み器具は、患者の体の第1の開口部(例えば、大動脈又は大腿動脈又は静脈のアクセス位置)を経て、患者の大動脈、大腿動脈又は大腿静脈を通って通過するのに充分な大きさ及び長さである。代替的に、この埋め込み器具は、経胸的開口部を経て入るものであってもよく、これによって、患者の胸膜(例えば肋間部)領域を通して、頂点又は頂点付近において左心室に到達できるようになる。当業界で一般に知られているように、様々な典型的な実施形態による経胸的開口部は、導入器具、トロカール、又は、カニューレの1つである。
【0164】
少なくとも1つの送達被覆体又はカテーテルは、ガイドワイヤに沿って進められ、大動脈弁、左心房室弁、又は、肺動脈弁を通過する。これらの方法は、記載されている人工弁及び送達器具を参照して以下に記載されている。しかしながら、当業者は、本明細書に記載されている人工弁を配置する他の方法を使用することができることを理解するであろう。
【0165】
このアクセス開口部は、1つ以上の止血弁又は密封剤を含む。この止血弁又は密封剤は、処置中の血の喪失又は漏出に対抗する血液密封を提供するように構成されており、心尖において、大動脈において、又は、これら両方の位置において使用することができる。この開口部は、血の喪失又は漏出に対抗する血液密封を同時に提供しながら、埋め込み器具、カテーテル、又は、任意のツール若しくは装置が、埋め込み器具を使用して通過できるようにし、標的部位に送達されるように構成されている。そのような方法は、当業者に広く知られている。
【0166】
本明細書に記載されている装置及び方法は、ヒト、及び、以下に限定されないが、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ヒツジ及びウマを含む他の哺乳動物を含む対象に使用することができる。
【0167】
添付図面を参照しながら本発明の多数の実施形態を以下に説明する。任意の特定の一実施形態の様々な要素を他の1つ以上の実施形態において使用できることは理解されるに違いない。したがって、それらの組み合わせは、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0168】
I.人工弁
第1態様においては、初めに図1Aを参照しながら、人工弁2を提供する。人工弁2は、好ましい実施形態において人工心臓弁である。この人工弁は、鼓動心臓経心尖的処置又は逆行性経大動脈的処置等のように最小限に侵襲性のアプローチを使用して、生来の狭窄大動脈、肺動脈弁又は左房室弁等のような対象の疾病した生来の弁の中に配置されるように構成されている。そのような処置は当業者に広く知られている。
【0169】
非縫合人工心臓弁は、自己展開するサポートフレームと、人工弁尖(図1Aに示されていない)と、1つ以上の弁捕握部とを備える。弁捕握部は、サポートフレームと連続的に又は同軸的に位置することができる。サポートフレーム及び弁捕握部を、例えば動脈及び静脈を通した送達が可能になる半径に圧縮し、次に、適切な位置で弁を展開及び配置するのに必要とされるように伸張させることができるように、サポートフレーム及び弁捕握部の両方を形状記憶材料から作ることができる。
【0170】
弁捕握部をサポートフレームから近位又は遠位の位置からサポートフレームと同軸的位置に動かせるように、動かせるように弁捕握部がサポートフレームに接続されている。人工弁の送達中に、弁捕握部がサポートフレームから連続的に位置するようにすることが有利である。これは、ユーザが例えば動脈及び静脈を通して進めなければならない装置の半径を最小化することを可能にする。弁捕握部が送達処置中にサポートフレームに隣接するか又は潜在的にサポートフレームから数インチ又は数フィート離れることができるように、弁捕握部がサポートフレームから連続的に動くことができる距離は、高度に可変である。いくつかの実施形態において、弁捕握部のいずれの部分も、溶接又はその他の接着等によってサポートフレームに物理的に固定されていない。
【0171】
「動かせるように接続された(moveably connected)」(あるいは、「動かせるように取り付けられた(moveably attached)」)によって、2つの構造部材が所定時に物理的に接触することができる一方で、それらの構造部材が溶接又は接着等によって不可逆的に接続又は取り付けられていないことがわかる。例えば、本明細書に記載されている人工弁の配置の後に、弁捕握部が人工弁サポートフレームと物理的に接触している間は、弁捕握部は、サポートフレームに対して長手方向に動くことができる。また、弁捕握部の一部分は、サポートフレームから放射状に動くことができる。それに関わらず、弁捕握部は、動かせる状態でサポートフレームに接続され続ける。
【0172】
結果として、サポートフレームが圧縮状態又は非展開状態であるときに、弁捕握部は、近位方向又は遠位方向のいずれかにおいて長手軸に沿って制限なく動くことができる。いくつかの実施形態において、弁捕握部は、弁捕握部全体がサポートフレームから放射状に動くのを防ぐが、弁捕握部の一部分が、必要とされるようにサポートフレームから放射状に動くことができる態様でサポートフレームに動かせるように接続されている。サポートフレームを生来の心臓弁の中で展開又は伸張させたとき、弁捕握部は、サポートフレームと生来の弁組織との間に挟まれるようになり、少なくとも部分的に、また、完全に固定されるようにすることができる。弁捕握部は、展開した人工弁を生来の弁の中で適所に保持するように機能する。
【0173】
図1Aに示されているように、代表的な人工弁は、サポートフレーム(例えば、ステントフレーム)4を備えており、このサポートフレームは、外側面7を備え、流入・流出方向の軸(図1Aにおいて破線11によって表されている長手軸)の周囲に中央開口部9を定義する。サポートフレームは、コンパクト状態又は圧縮状態と、展開された又は配置された状態との間において放射状に展開可能である。
【0174】
サポートフレームは、以下に限定されないが、ダイヤモンド及び楕円形を含む様々な形状を有し得る格子構造であってもよい。図1Cに表されているサポートフレーム16に示されているように、サポートフレームは、複数のフレックスリンク18等のさらなる特徴を有していてもよい。図1Dに示されているように、複数のフレックスリンクを有するサポートフレームの設計は、弁サポートフレームの一部分の展開を可能にする。
【0175】
サポートフレームは自己展開することができる。いくつかの実施形態において、この自己展開サポートフレームは、指定の温度又は温度範囲において形状を変化させることができる形状記憶金属からなるものであってもよい。あるいは、この自己展開フレームは、バイアスバネを有するものを含んでいてもよい。サポートフレームを作成するための材料は、配置されたときにサポートフレームが動作する大きさ及び形状に自動的に展開することを可能にするだけでなく、患者の脈管構造を通した送達のためのより小さい形状にサポートフレームが放射状に圧縮されることを可能にする。この自己展開フレームに適した材料の例は、以下に限定されないが、医療グレードのステンレススチール、チタン、タンタル、白金合金、ニオブ合金、コバルト合金、アルジーネート、又は、これらの組み合わせを含む。形状記憶材料の例は、体内で不活性である形状記憶プラスチック、ポリマー及び熱可塑性物質を含む。ニチノールとして一般的に知られているニッケルとチタンとの比率から一般的に作成される超弾性特性を有する形状記憶合金は、好ましい材料である。
【0176】
サポートフレームの他の実施形態は図1C−図1Dに図示されている。示されているように、サポートフレーム16は複数のフレキシブルリンク18を有する。図1Dに表されているように、フレキシブルリンク18の存在及び配置は、フレキシブルリンクの片側のサポートフレームの部分が、フレキシブルリンクの反対側の部分から独立して展開又は圧縮することを可能にする。この構造的特徴の機能的意義を以下に更に詳細に説明する。
【0177】
他の代替的一実施形態において、サポートフレームは、自己展開ではなく、例えば、当業界で広く知られているようなバルーンカテーテルを使用して伸張させてもよい。
【0178】
典型的な一実施形態において、人工弁は、図1Aに図示されている弁捕握部6のような少なくとも1つの弁捕握部をさらに備える。弁捕握部を代替的に洞ロケータ(sinus locators)、弁ポジショナー(valve positioners)又は弁ハンガー(valve hangers)と称することもできる。いくつかの実施形態において、弁捕握部は形状記憶金属製である。さらなる実施形態において、形状記憶合金はニチノールである。
【0179】
典型的な一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部6は、動かせるように弁サポートフレーム4に接続されている。他の一実施形態において、送達及び配置の前に弁サポートフレーム4が圧縮状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部6は、動かせるように弁サポートフレーム4に接続されている。さらに別の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部6は弁サポートフレーム4に固定されていない。本明細書に記載されている人工弁の各弁捕握部は、弁サポートフレームと分離されていることがわかる。したがって、弁捕握部の少なくとも一部分、例えば脚部は、弁サポートフレームに接していてもよく又はそうでなければ弁サポートフレームに可逆的に取り付け若しくは接続されていてもよいが、弁捕握部のどの部分も、例えば弁サポートフレームに溶接され又はそうでなければ不可逆的に取り付けられるように固定されていない。言い換えると、弁サポートフレームに接していてもよい又はそうでなければ弁サポートフレームに可逆的に取り付け若しくは接続されていてもよい弁捕握部は、弁サポートフレームに不可逆的に固定されていない。
【0180】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、U形部材8と、代表的な脚部10のような2つの脚部とを備える。いくつかの実施形態において、弁捕握部の2つの脚部10のそれぞれは、サポートフレームの長手軸に対して略平行に位置しており、頂点5の付近でU形部材8に接続されている。いくつかの実施形態において、弁捕握部の2つの脚部のそれぞれは、第1端部及び第2端部を有し、2つの脚部の第1端部のそれぞれがU形部材8に連結されている。頂点5は、各脚部と各U形部材との間に存在する。本明細書で用いられているように、頂点(例えば頂点5)は、U形部材8と1つの脚部10との接合によって形成された頂点として定義される。一実施形態において、頂点は湾曲している。他の一実施形態において、頂点は、2つの脚部10が互いに対して略平行となるように湾曲している。いくつかの実施形態において、2つの脚部の第2端部が自由端である。
【0181】
さらなる実施形態において、1つ以上の脚部の第2の末端又は端部は、図2Aに示されているように戻り止め12(脚又は返しとも称される)で終端する。戻り止め12は、ニチノール等の形状記憶合金製であってもよい。いくつかの用途についてはこの戻り止めが人工弁の長手軸に対して平行な方向に向いているが、他の用途についてはこの戻り止めが長手軸に対して角度を成す方向に向いている。例えば、コンパクト状態において及び/又は人工弁が被覆体に入っているときに、この戻り止めは、人工弁サポートフレームの長手軸に対して略平行であってもよい。あるいは、人工弁が展開状態にあるときに、戻り止めは、人工弁又は脚部の長手軸に対して角度を成す方向に向いていてもよい。他の実施形態においては、戻り止めが可変の長さを有していてもよい。いくつかの実施形態において、脚部は、例えば、人工弁の配置後にジグザグ形状又はコイル形状を有していてもよい。この戻り止めは、人工弁が生来の弁に配置された後に、弁捕握部を弁サポートフレームに固定するのを助ける。
【0182】
いくつかの実施形態において、サポートフレームの長さはLであり、脚部の長さは少なくともLである。他の実施形態においては脚部の長さがL以下である。
【0183】
当業者は、2つの脚部を連結する部材の形状がU形状であるように限定されないことを理解するであろう。U形部材は、以下に限定されないが、長方形、正方形、ダイヤモンド、三角形、楕円形、円、又は、これらの形状の組み合わせを含む他の形状を有していてもよい。U形部材は、生来の弁洞の底部に対して又は生来の弁尖の接合部に隣接して、係合及び/又は静止できるようになるあらゆる形状であり得る。
【0184】
少なくとも1つの弁捕握部はサポートフレームの長手軸に沿って可動である。弁捕握部がサポートフレームから離れて設置されている場合、例えば、弁捕握部のU形部材がサポートフレームの近位端に対して遠位の位置にある場合、及び/又は、弁捕握部のU形部材がサポートフレームとほぼ完全に重なっていない場合等には、この位置を係合位置と呼ぶ。この位置において、弁捕握部のU形部材8は、脚部及び圧縮状態にあるサポートフレーム4の長手軸から放射状に伸びていてもよい。
【0185】
生体内において、弁捕握部が組込位置にある場合、捕握部頂点5はサポートフレーム4の遠位端にほぼ隣接している。あるいは、U形部材の少なくとも一部分が生来の洞の底部又は弁の生来の弁尖の接合部に接触又は隣接している場合には、弁捕握部が組込位置にある。いくつかの実施形態において、脚部10のような脚部が人工弁サポートフレームの長さLとほぼ同じ長さLを有し、かつ、弁捕握部6のような弁捕握部が人工弁サポートフレーム4とほぼ完全に重なるように位置している場合には、この位置を組込位置と称する。
【0186】
第2の態様において、図1Bに図示されているように、人工弁20は、弁サポートフレーム22と中央開口部32とを備える。サポートフレーム22は、圧縮状態と展開状態との間において放射状に展開することができる。サポートフレーム22は、外側面又は外部面30を有しており、軸(図1Bに破線34によって表されている長手軸)の周囲に中央開口部32を定義する。長手軸は流入・流出軸に一致する。いくつかの実施形態において、人工弁は複数の人工弁尖(図1Bに示されていない)をさらに備える。
【0187】
この実施形態において、人工弁20は少なくとも1つの弁捕握部24をさらに備える。少なくとも1つの弁捕握部24はU形部材26を備える。U形部材26は、図1Bにあるように、それぞれ自由端で終端する2つの直線部分(例えば28)に該U形部材の近位端において接続された湾曲部分を有する。
【0188】
いくつかの実施形態において、弁捕握部24の直線部分は、人工弁20の配置後に直線状のままである。他の代替的一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部24の直線部分の少なくとも一部分は、形状記憶材料製であってもよく、捕握部6について図2Bに示されているように、人工弁20の配置後に、例えばジグザグ形状又はコイル形状を有していてもよい。
【0189】
少なくとも1つの弁捕握部24は、動かせるようにサポートフレーム22に接続されており、サポートフレーム22の長手軸に沿って動くことができる。弁捕握部24がサポートフレームから離れて設置されている場合、例えば、弁捕握部24の自由端がサポートフレームの近位端に対して近位の位置にある場合、及び/又は、弁捕握部24がサポートフレームと完全に重なっていない場合等には、この位置を係合位置と呼ぶ。この位置において、弁捕握部24の少なくとも1つのU形部材26は、圧縮状態にあるサポートフレーム22の長手軸から放射状に伸びていてもよい。
【0190】
生体内において、弁捕握部24が組込位置にある場合には、少なくとも1つのU形部材26の少なくとも一部分は、生来の洞の底部に接触若しくは隣接しているか、又は、生来の弁接合部に隣接している。
【0191】
いくつかの実施形態において、動かせるようにサポートフレーム4又は22に接続された複数の弁捕握部6又は24は、様々な弁置換処置に適合するように、又は、置換される生来の弁の解剖構造に従うように、それぞれ、2個、3個、4個、5個又はそれ以上の弁捕握部であってもよい。特定の一実施形態において、人工弁における弁捕握部の数は3である。
【0192】
一実施形態において、複数のU形部材8と複数の脚部10とを備える単一の弁捕握部を作成するために、動かせるようにサポートフレーム4に接続された複数の弁捕握部6を連結することができる。
【0193】
人工弁2及び20は、本明細書に記載されているように、その人工弁を通る液体の一方向の流れのための可逆的に密封できる開口部を定義する表面を有する複数の人工弁尖をさらに備えていてもよい。この人工弁は、3個の弁尖形態のために3個の弁尖を含んでいてもよい。理解できるように、1個の弁尖、2個の弁尖、及び/又は、複数の弁尖の形態があり得る。人工弁の管腔を通る液体の流れを橋渡し及び制御するために、例えば、弁尖を弁フレームに連結することができる。
【0194】
いくつかの実施形態において、弁尖は、合成素材、人工の生物組織、生体弁の弁尖組織、心膜組織、架橋させた心膜組織、又は、これらの組み合わせで構成される。他の実施形態において、心膜組織は、以下に限定されないが、ウシ組織、ウマ組織、ブタ組織、ヒツジ組織、ヒト組織、又は、これらの組み合わせからなる群より選択される。弁尖縫合線(例えば、図3Aに示されている縫合線19)に沿って、人工弁尖を弁サポートフレーム4又は22に縫いつけることができる。図3Aは、サポートフレームを広げた図である。他の実施形態において、弁尖は、当業者によって理解される他の同等の方法によってサポートフレーム4又は22に固定される。
【0195】
いくつかの実施形態において、人工弁2又は20のサポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に囲まれている。これは、人工弁2のサポートフレーム4に関する図3Aに表されており、この図においてサポートフレームは被覆材(移植片被覆材)15によって囲まれている。軽量で、強く、液体不浸透性のあらゆる適切な生体適合材料を使用することができる。あらゆる適切な態様で、かつ、あらゆる適切な手段によって被覆材を取り付けることができる。この被覆材は、例えば、サポートフレームに可逆的に取り付けられていてもよいし又は永続的に取り付けられていてもよい。この被覆材は、人工弁サポートフレームの外表面及び/又は内表面に配置されていてもよい。この被覆材は、縫合、ステープル、化学/熱接着、及び/又は、接着剤を使用して、フレームに取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態においては被覆材が布である。さらなる実施形態において、この布は、例えば、ナイロン(商標)、ダクロン(商標)若しくはテフロン(商標)から選択される商品名によって特定される材料で構成されるか、又は、発泡させたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、及び/又は、他の材料である。
【0196】
一実施形態において、被覆材はシーリング材をさらに含んでいてもよい。シーリング材は、多糖類、タンパク及び生体適合性ゲルを含む一般的な種類の材料から選択され得る。以下に限定されるものではないが、これらの高分子材料の特定の例には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン(PVP)、ポリ(エチルオキサゾリン)(PEOX)、ポリアミノ酸、擬似ポリアミノ酸及びポリエチルオキサゾリンに由来するもの、並びに、これらの重合体の共重合体、又は、これらの重合体と他の水溶性ポリマー若しくは不溶性ポリマーとの共重合体が含まれる。多糖類の例には、アルギネート、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン、硫酸デキストラン、ヘパリン、ヘパリンスルフェート、ヘパランスルフェート、キトサン、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム、水溶性セルロース誘導体及びカラギーナンに由来するものが含まれる。タンパクの例には、天然由来又は組み換え由来で生産されるかに関わらず、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、ゼイン及びアルブミンに由来するものが含まれる。前記材料は、血栓形成を調整するもの、細胞の内方増殖、貫通増殖(through-growth)及び内皮細胞増殖を促進するもの、感染に対抗するもの、及び、カルシウム沈着を低減するものを含む生物活性剤であってもよい。被覆材は、サポートフレームの内表面及び/又は外表面に存在していてもよく、また、サポートフレームを部分的に囲むように又はサポートフレームを完全に囲むように配置されていてもよい。
【0197】
一実施形態において、弁捕握部6の少なくとも1つの脚部10の少なくとも一部分は、サポートフレーム4とサポートフレーム4の表面の被覆材との間に配置されている。この実施形態において、被覆材は、動かせるように弁捕握部6をサポートフレーム4に接続するように、少なくともある程度は機能することができる。一実施形態において、第1端部において少なくとも1つのU形部材8と固定された少なくとも1つの脚部10は、長手軸11に対して平行に動くことができ、少なくとも1つの脚部10の少なくとも一部分又は大部分は、被覆材とサポートフレーム4との間に位置することができる。
【0198】
一実施形態において、弁捕握部24のU形部材26の湾曲部分及び/又は直線部分28の一部分は、サポートフレーム22と該サポートフレームの表面の被覆材との間に配置されている。この実施形態において、被覆材は、動かせるように弁捕握部24をサポートフレーム22に接続するように、少なくともある程度は機能することができる。一実施形態において、弁捕握部24の2つの直線部分は、長手軸32に対して平行に動くことができ、弁捕握部の少なくとも一部分又は大部分が被覆材とサポートフレームとの間に位置する。
【0199】
一実施形態において、サポートフレーム4又は22は、人工弁が配置される領域における組織増殖を促進及び/又は支援する材料で囲まれていてもよい。あるいは、組織増殖を促進及び/又は支援する材料を被覆材中に埋め込み又は組み入むこともできる。
【0200】
他の代替的一実施形態において、図3Bに示されているように、サポートフレーム14は、係合固定具46のような複数の係合固定具をさらに備える。係合固定具は、サポートフレームに直接固定されていてもよいし、又は、サポートフレームの一部分として製造されてもよい。係合固定具の各セットは、サポートフレームの長手軸に沿って直線的に配置されたいくつかの係合固定具によって形成されている。係合固定具の各セットのうちの代替的な係合固定具において、各係合固定具は、開いた側が反対方向に向いた半円形であってもよい。弁捕握部の脚部は、係合固定具の各セットによって形成された開口部を通して挿入される。
【0201】
図3A及び図3Bは、サポートフレームが被覆材15で囲まれている実施形態を図示している。
【0202】
弁送達中に、人工弁のサポートフレームは最初に圧縮状態にある。コンパクトである(サポートフレームから放射状に伸びていない)弁捕握部が係合位置と組込位置との間において動くことができる実施形態においては、弁送達中の弁捕握部が係合位置にあり、弁捕握部がサポートフレームに対して遠位又は近位に位置する。人工弁が生体内で置換弁が必要とされる所望の位置に又は該位置の近くにある場合、図4Aにおける弁捕握部6a、6b、6cのような弁捕握部は、生来の心臓弁の洞に接触してその中に固定されるように、開いた状態又は展開状態に移行する。その後、サポートフレーム4は、図4A及び図4Bに示されているように展開状態に移る。圧縮状態にあるサポートフレームに動かせるように接続された複数の弁捕握部6a、6b、6cは、上から見えように図4Aに示されている。図4Bは、展開状態にあるサポートフレーム4と共に複数の弁捕握部を示している。図4Cは、係合固定具46a、46b、46cを有するサポートフレーム14を示しており、そのサポートフレーム14は圧縮状態にあり、弁捕握部47a、47b、47cのU形部材は、生来の心臓弁の洞に接触してその中に固定されるように、開いた状態又は展開状態にある。図4Dは、展開状態のサポートフレーム14と共に複数の弁捕握部を示している。図4E及び図4Fは、係合固定具46a、46b、46cを有するサポートフレーム14を示しており、サポートフレーム14は、圧縮状態(図4E)及び展開状態(図4F)にある。
【0203】
図5Aは、動かせるようにサポートフレーム4に取り付けられた弁捕握部6を生来の心臓弁尖30と関連して図示している。サポートフレームが圧縮状態にあるときには、弁捕握部6が係合位置(図5A)から組込位置(図5B)に動くことができ、弁捕握部6は、サポートフレームに隠れた配置又はサポートフレームとの同軸的な配置にあり、U形部材8は、生来の心臓弁尖30(図5B参照)の洞(例えば、大動脈洞、左房室弁洞、肺動脈洞)とほぼ接触している。1つ以上のさらなる人工弁尖(図示せず)と共に、開口部の中に一方向弁を提供するために、人工弁尖36は、サポートフレーム4に取り付けられており、人工弁の開口部の中に延在する。図5Cに示されているように、サポートフレーム4が放射状に伸張して展開状態になった後に、生来の弁尖30の少なくとも一部分は、U形部材8とサポートフレーム4との間にはさまれる。図5A−図5Cにも示されているように、いくつかの実施形態において、被覆体15は、サポートフレームに隣接する脚部を保持するようにある程度は機能することができる。
【0204】
図5D−図5Fは、係合固定具46a、46b、46cと共にサポートフレーム14を示している。弁捕握部は、生来の弁洞の上方にあり、かつ、係合位置にある(図5D)。弁捕握部は、U形部材11が生来の弁洞と接触できるように弁洞の方へ移動している(図5E)。生来の弁尖30の少なくとも一部分がU形部材11とサポートフレーム14との間にはさまれるように、サポートフレーム14が放射状に展開している(図5F)。
【0205】
図5G−図5Iに示されている他の一実施形態において、弁捕握部24は、動かせるようにサポートフレーム22に接続されている。図5Gにおいて、係合位置にある弁捕握部24は、生来の弁の上方にあり、サポートフレーム22から放射状に伸びている。上述されているように、サポートフレーム22が圧縮状態にあるときに、弁捕握部24は、係合位置(図5G)から組込位置(図5H)に動くことができ、弁捕握部24は、サポートフレームに隠れた配置又はサポートフレームとの同軸的な配置にあり、U形部材26は、生来の心臓弁尖30の洞とほぼ接触している。次に、図5Iに示されているように、生来の弁尖30の少なくとも一部分が弁捕握部24とサポートフレーム22との間にはさまれるように、サポートフレーム22は放射状に伸びて展開状態になる。図5G−図5Iにも示されているように、いくつかの実施形態において、サポートフレームの被覆材15は、サポートフレームに対して弁捕握部の位置を適切に決定するように、ある程度は機能することができる。
【0206】
他の代替的一実施形態において、弁捕握部71は、人工弁のサポートフレーム73に固定されている(例えば、接着又は溶接されている)。図5Jは、生来の弁の上方において係合位置にある固定捕握部71と共に人工弁を示す横断図である。図5Kにおいて、人工弁は組込位置に移動している。一方で、図5Lにおいては、サポートフレーム73が放射状に伸びて展開状態になっており、弁捕握部71が生来の弁尖とサポートフレーム73との間にはさまれている。
【0207】
代表的な弁捕握部71のような複数の弁捕握部が人工弁サポートフレーム44に固定された代替的実施形態が図6A−図6Cに示されている。この実施形態において、各弁捕握部は、例えば溶接によって、サポートフレームに直接固定されている。他の実施形態において、弁捕握部はサポートフレーム44の一部分として製造される。図6Aの展開図に示されている人工弁にも、人工心臓弁がサポートフレームに固定される線47、及び、サポートフレーム上の選択的な被覆材48が示されている。
【0208】
図6Bは、弁捕握部71を有する弁サポートフレーム44の上面図であり、この図においては、弁捕握部71がサポートフレームに永続的に固定されており、サポートフレーム44が圧縮状態にある。図6Cは、同じ弁サポートフレームを捕握部と共に示しており、この図においてサポートフレームは展開状態にある。
【0209】
図7A及び図7Bは、生体内で動かせるように接続された捕握部と共に非縫合人工弁を図示している。図7Aにおいて、サポートフレーム90は、圧縮状態にあり、かつ、被覆体96によって囲まれており、また、弁捕握部92は、生来の弁の中でサポートフレームが放射状に伸張する前に組込位置にある。埋め込み器具の一部分は96として示されている。弁捕握部の係合部分(例えば、U形部材又は湾曲部分)は、生来の弁洞と接触又は係合している。図7Bは、弁の送達及び配置の後、かつ、弁送達器具の除去後にサポートフレームが展開状態にある同じ弁を示している。心臓弁輪における人工弁の固定を容易にするために、生来の心臓弁尖94は、弁捕握部とサポートフレームとの間にはさまれている。人工弁の弁捕握部と人工サポートフレームとの間に生来の心臓弁尖がはさまれるようなサポートフレームの位置取りは、すべての冠状静脈弁(すなわち、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、及び、左房室弁)に適用できると考えられる。いくつかの実施形態において、弁捕握部の数は、治療される生来の弁の内部の生来の弁尖の数と同じになると考えられる。
【0210】
本明細書に記載されている弁人工弁は、本明細書に記載されている埋め込み器具の様々な態様において、又は、人工弁を対象に埋め込むための当業者が知るあらゆる方法若しくは装置において使用され得る。
【0211】
II.人工の大動脈弁、肺動脈弁又は左房室弁を送達するための埋め込み器具
第3の態様において、人工弁を送達するための埋め込み器具を提供する。一般的な一実施形態において、その埋め込み器具は、上述されている人工弁2のような人工弁と、以下に記載されている送達器具とを備える。
【0212】
埋め込み器具の一実施形態において、図8A−図8H及び図9A−図9Qに図示されているように、埋め込み器具100は、例えば、大動脈心臓人工弁の心尖部(順行性)送達のために、上大静脈を通した人工肺動脈弁の経皮的送達のために、又は、下大静脈を通した人工左房室弁装置若しくは人工肺動脈弁の送達のために設計されている。当業者は、これらの最小限に侵襲性の処置を容易に理解する。
【0213】
埋め込み器具の一実施形態において、図8A−図8H及び図9A−図9Qに図示されているように、埋め込み器具100は、大動脈心臓人工弁の心尖部送達のために設計されている。埋め込み器具100は、250によって図8Aに一般的に示されているコントロールユニットを含み、一実施形態においては、以下に説明するように、いくつかの個別の独立したコントローラを備える。送達器具100は、圧縮状態にある人工弁サポートフレーム(例えば、サポートフレーム102)を完全に又は部分的に囲む第1被覆体120と、第1被覆体120に対して遠位に位置し、かつ、少なくとも1つの弁捕握部(例えば、弁捕握部106)を囲む第2被覆体130とを含む。一実施形態において、送達器具100は、第1被覆体120に対して近位に位置するトラックワイヤコントローラ200(あるいはトラックケーブルコントローラと呼ばれる)をさらに含む。他の一実施形態において、送達器具100には、トラックワイヤコントローラ200から遠位に伸び、かつ、弁捕握部の脚部の近位端に接触することができる少なくとも1つのトラックワイヤ150(あるいはトラックケーブルと呼ばれる)がさらに備えられている。一実施形態において、トラックワイヤコントローラ200は、少なくとも1つのトラックワイヤの近位端に接続された少なくとも1つのリリーススイッチ210を備える。いくつかの実施形態において、送達器具100は第2被覆体を有しない。この送達器具は、人工弁を送達するためにこの送達器具が沿って進むことができるガイドワイヤ110を挿入できるようにするための中空の中心部を有するように設計されている。
【0214】
第1被覆体120は、円柱形であり、中空である。第1被覆体は、直線状であってもよいし又は湾曲していてもよい。当業者が容易に理解するように、第1被覆体の長さ及び柔軟性は、送達方法に応じて変わるであろう。例えば、大腿動脈を経由した人工弁の送達は、入り口の位置から治療を必要とする生来の弁まで伸びるように充分に長いフレキシブルな被覆体を必要とする。第2被覆体130は、中空であり、たいていは円柱形である。第2被覆体130の遠位部分は、湾曲した円錐又は尖った先端のような異なる形状を有していてもよい。一実施形態において、第2被覆体130の遠位端は、ガイドワイヤが通過できる開口部を有していてもよい。
【0215】
一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤ150の遠位端が弁捕握部106の脚部107の自由端に接触するように、少なくとも1つのトラックワイヤ150が少なくとも1つの弁捕握部106に接触している(図9J−図9L参照)。一実施形態において、トラックワイヤ150は、例えば、1つ以上の他のケーブル又はワイヤを挿入できるようにするために、中空である。典型的な一実施形態において、中空のトラックワイヤ150は、図9J−図9Lにあるように、コントロールユニットの近位端の辺りからトラックワイヤ150の遠位端の辺りまで延在するロックワイヤ220を囲んでいる。他の一実施形態において、ロックワイヤは、その近位端においてロックワイヤ支持体190に固定されている(図9M)。さらに別の一実施形態において、ロックワイヤは、遠位端にロック部材230を備える(図9L)。
【0216】
図9I−図9Lに詳細に示されているように、いくつかの実施形態において、トラックワイヤ150は、例えば、図9K−図9Lにおける107a及び107bのような、2つの異なる独立した弁捕握部106の2つの脚部と、弁ロックワイヤ220とを囲んでいる。脚部と、ロック部材を有するロックワイヤとのこの配置が、トラックワイヤの内部の部材の摩擦嵌合を生じさせ、それによって2つの異なる弁捕握部の脚部が中空のトラックワイヤの中に固定されること、及び、ロックワイヤのロック部材がトラックワイヤの遠位端の辺りで2つの脚部に隣接することは、当業者が理解するであろう。
【0217】
当業者は、トラックワイヤ150のようなそれぞれのトラックワイヤを、コントロールユニット、トラックワイヤコントローラ200及び/又はリリーススイッチ210に固定する様々な機構を構想することができる。例えば、トラックワイヤ150のそれぞれの近位端は、コントロールユニットの種々の部材に溶接又は接着されていてもよい。あるいは、トラックワイヤ150の長さの割にはより柔軟性が高くなるように、トラックワイヤ150の近位端は、それぞれ、様々な部材の周囲を湾曲していてもよいし、又は、様々な部材を通るものであってもよい。
【0218】
いくつかの実施形態において、人工弁サポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に囲まれており、トラックワイヤは、動かせるようにトラックワイヤを1つ以上の弁捕握部及びサポートフレームに固定するために、サポートフレームと被覆材との間に配置される。
【0219】
一実施形態において、送達器具は、コントロールユニットに固定された近位端と、人工弁102の近位端との接触のための遠位端とを有する人工弁プッシャワイヤ170(あるいは、プッシャケーブルと呼ばれる)をさらに備える。プッシャワイヤの様々な実施形態が図9M−図9Qに詳細に示されている。埋め込み器具は、1個、2個、3個、4個又はそれ以上の人工弁プッシャワイヤを備えていてもよい。他の一実施形態において、埋め込み器具のコントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラ165(あるいは、プッシャケーブルコントローラと呼ばれる)をさらに備える。図9Mに示されている一実施形態において、人工弁プッシャワイヤ170の近位端の辺りがプッシャワイヤコントローラ165に固定されている。プッシャワイヤは、人工弁の近位端の辺りからプッシャワイヤコントローラに対して近位に伸びる。人工弁プッシャワイヤは、中空又は非中空であってもよく、また、ワイヤ、プラスチック又は他の適切な材料から作られたものであってもよい。他の一実施形態において、埋め込み器具は、プッシャワイヤコントローラから長手方向で遠位方向に伸びるプッシャワイヤ支持部材を備える。プッシャワイヤ支持部材は、長さが可変であってもよく、ユーザがプッシャワイヤコントローラを使用して、人工弁の近位端に対して遠位方向に圧力を加えることを可能にするように機能する。一実施形態において、プッシャワイヤ支持部材は、形状が円柱形であり、長手軸が第1被覆体の長手軸に対して平行である。他の一実施形態において、プッシャワイヤ支持部材は中空である。さらに別の一実施形態において、少なくとも1つのプッシャワイヤはプッシャワイヤ支持部材の外側に配置されている。他の代替的一実施形態において、少なくとも1つのプッシャワイヤはプッシャワイヤ支持部材の内側に配置されている。さらなる実施形態において、人工弁プッシャワイヤ170の少なくとも一部分は、その長さに沿ってプッシャワイヤ支持部材に対して固定されている。この実施形態は図8F−図8Hに示されている。プッシャワイヤ支持体は、その近位端においてプッシャワイヤコントローラ165に対して固定されている。
【0220】
いくつかの実施形態において、人工弁プッシャワイヤ170の遠位端は、人工弁の近位端と可逆的に係合するためのプッシャワイヤエンゲージャ175で終端する。人工弁の係合部材が、例えば、図9O−図9Qに示されているような様々な形態を備えていてもよく、また、例えば、1個、2個又は3個以上の突起を備えていてもよいことは、当業者に容易に理解されるであろう。
【0221】
当業者は、例えばコントロールユニット又はプッシャワイヤコントローラ165にプッシャワイヤのそれぞれを固定する多様な機構を構想することができる。例えば、各プッシャワイヤの近位端は、コントロールユニットの種々の部材に溶接又は接着されていてもよい。あるいは、プッシャワイヤの長さの割にはより柔軟性が高くなるように、プッシャワイヤの近位端は、それぞれ、様々な部材の周囲を湾曲していてもよいし、又は、様々な部材を通るものであってもよい。
【0222】
一実施形態において、埋め込み器具は、第2被覆体130と、遠位端において第2被覆体に接続された第2被覆体コントロールケーブル140(中央コントロールケーブル)とを備える。図8Fに示されている実施形態において、第2被覆体130は、ノーズコーンの形態をとることができ、第1被覆体から遠位に配置されている。第1被覆体と第2被覆体とが同軸上にある実施形態が意図されている。第2被覆体コントロールケーブル140の遠位端は、第2被覆体130の近位端若しくは遠位端に、又は、第2被覆体130の近位端と遠位端との間の位置に取り付けられていてもよい。さらに別の一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブル140の近位端は、第2被覆体コントローラ135に固定されている。他の一実施形態において、第2被覆体は、圧縮状態にある複数の弁捕握部(例えば弁捕握部106)のそれぞれを囲んでいる。第2被覆体コントローラは、送達器具の、第2被覆体に対して固定されていない部分と独立して、第2被覆体を近位方向又は遠位方向にユーザが移動させることを可能にするように機能する。
【0223】
コントロールユニットは、本明細書に記載されていて図8A−8Hに示されている埋め込み器具の種々の部材をユーザが独立して制御できるようにする。コントロールユニットは、ユーザによるトラックワイヤ150の独立制御を提供するためのトラックワイヤコントロールユニット200を備える。この装置中の1つ以上のトラックワイヤは、近位端においてトラックワイヤコントロールユニットに接続されている。少なくとも1つのトラックワイヤ150の遠位端は、弁捕握部106の脚部との接触を構成することができる。トラックワイヤコントロールユニット200は、リリーススイッチ210のような少なくとも1つのリリーススイッチを備えており、少なくとも1つのトラックワイヤは、その近位端において少なくとも1つのリリーススイッチに固定されている。他の一実施形態において、埋め込み器具100は、近位端においてリリーススイッチ210に固定されたトラックワイヤ150のように、近位端においてリリーススイッチにそれぞれ取り付けられた2つのトラックワイヤを備える。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具100は、近位端においてリリーススイッチにそれぞれ取り付けられた3つのトラックワイヤを備える。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具100は、近位端において同一の又は異なるリリーススイッチにそれぞれ取り付けられた4つ、5つ又はそれ以上のトラックワイヤを備える。複数のトラックワイヤ150のそれぞれは、以下により完全に説明するように、遠位端において人工弁中の弁捕握部106の1つとの接触を生じさせることができる。
【0224】
上に示されているように、少なくとも埋め込みの前に、埋め込み器具は、第1被覆体120のように、圧縮状態にある人工弁を囲む第1被覆体を備える。一実施形態において、埋め込み器具100のコントロールユニット250は、第1被覆体コントローラ125をさらに備えていてもよい。第1被覆体コントローラ125は、図8A−図8Hに示されている典型的な実施形態において、第1被覆体120に固定されている。この実施形態において、第1被覆体コントローラ125は、第1被覆体120のおおよそ近位端の両側に固定された2つの部材を有する。第1被覆体コントローラ125は、多様な形状を有していてもよく、また、近位方向又は遠位方向における第1被覆体の移動をユーザがコントロールできるようにする1つ以上の部材を有してもよいことがわかる。第1被覆体コントローラは、第1被覆体120に固定された1個、2個、3個又はそれ以上の部材を備えていてもよい。埋め込み器具の近位端に位置するユーザの手による被覆体の制御のために、第1被覆体コントローラが第1被覆体に対して近位に位置してもよいことも理解されるであろう。
【0225】
第1被覆体中の圧縮状態の人工弁サポートフレーム102は、第1被覆体120の長手軸に沿ってどこにでも位置することができる。一実施形態において、図9Aに図示されているように、人工弁サポートフレーム102は、第1被覆体120のおおよそ遠位端に位置しており、第1被覆体120の遠位端に完全に囲まれている。
【0226】
一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブル140は中空である。他の一実施形態において、ガイドワイヤ110は、中空の第2被覆体コントロールケーブルを通して入れることができる。
【0227】
埋め込み器具のコントロールユニットは、単一の構造単位又は複数の独立した構造単位を備えていてもよい。コントロールユニットの一実施形態は図8Aに図示されている。この実施形態において、コントロールユニット250は、第2被覆体コントローラ135と、ロックワイヤ支持体190と、少なくとも1つのリリーススイッチ210を有するトラックワイヤコントローラ200と、プッシャワイヤコントローラ165と、第1被覆体コントローラ125とを備え、これらのそれぞれは他のものから独立して制御可能である。
【0228】
トラックワイヤ150の遠位端を弁捕握部106の近位の自由端に可逆的に取り付ける手段のための複数の他の実施形態が存在する。これらは、図10B及び図10Cに示されるロック機構を含んでおり、当業界で広く知られている。
【0229】
図8A−8Fは、人工弁を生来の心臓弁構造中に配置及び展開することに使用されるときの送達器具100の構成を示している。図8Aは、前記装置を患者に挿入する前の構成の送達器具100である。サポートフレームが第1被覆体の中に詰め込まれ、かつ、弁捕握部が第1被覆体から遠位にある第2被覆体の中に詰め込まれるように、人工弁が圧縮状態で送達器具の中に詰め込まれている。通常の実施のように、ガイドワイヤを最初に経心尖的処置によって患者の中に、例えば、大腿動脈又は左心室の中に導入し、さらに、そのガイドワイヤを、治療を必要とする生来の心臓弁を過ぎて又は越えて適切な心腔内に前進させる。
【0230】
図8Bは、通常、治療を必要とする生来の弁を過ぎた遠位方向に、第2被覆体及び囲まれた捕握部の両方を移動させることを示している。第2被覆体に合わせて捕握部を移動させるためにトラックワイヤコントローラ200を使用することができる一方で、第2被覆体を移動させるために第2被覆体コントローラ135を使用することができる。いくつかの実施形態においては、送達器具が第2被覆体を含んでいなくてもよいことがわかる。
【0231】
図8Cは、弁捕握部を静止したままに保持しながら、第2被覆体を遠位方向に移動させることによって、第2被覆体から弁捕握部を切り離すことを示している。弁捕握部が生来の弁に向かって近位方向に移動するときに、弁捕握部が生来の弁尖と弁輪との間において弁の洞に「引っかかる」ような弁捕握部の方向に注目されたい。この理由で、送達器具から遠ざかるように湾曲している生来の弁を通して送達器具100が進むことができる生来の弁であればどこでも、生来の弁の中に人工弁を送達及び展開するのに送達器具100が有用であることがわかる。例えば、装置100は、経心尖的アプローチによって大動脈弁を埋め込むために、又は、前記装置が経心尖穿刺の経路で右心房から左心房に入ったときに左房室弁を埋め込むために、有用である。以下においてそのような方法をより完全に検討する。
【0232】
図8Dは、弁サポートフレームの遠位端が弁捕握部の頂点とほぼ隣接するまで、弁サポートフレームが入っている第1被覆体が遠位方向に押し込まれた送達器具を示している。弁サポートフレームの長さL及び弁捕握部脚部の長さLは、サポートフレームの遠位端が弁捕握部の頂点に接するときに、弁尖を有する弁フレームが展開のための準備が整った位置にあるような長さである。送達器具の近位及び遠位の操作中の任意の時に、ユーザは、弁捕握部の位置決定に必要とされるように、前記装置を回転させることもできる。
【0233】
図8Eは、展開状態にある人工弁サポートフレームを示している。第1被覆体は、サポートフレームを露出させるように近位方向に引っ張られている。一方で、弁プッシャワイヤ及びトラックワイヤは、弁サポートフレームを静止したまま保持するように少なくともある程度は機能していた。ここにおいて、第1被覆体コントローラを引っ張ることによって、第1被覆体が近位方向に引っ張られたことを示している。
【0234】
図8Fは、トラックワイヤコントローラの中のリリーススイッチが近位方向に引き戻され、一方で、コントロールユニットの他の部分が固定したままに保持されたことを示している。ロックワイヤ及びロック部材を静止させたままで、リリーススイッチを近位方向に引くことによって、トラックワイヤが近位方向に引っ張られ、それによって、トラックワイヤの中に弁捕握部の脚部を保持する摩擦力をなくす。図8Fに示されているように、この位置において、プッシャワイヤは、弁サポートフレームと係合したままであってもよい。
【0235】
図8Gは、プッシャワイヤコントローラが近位方向に引っ張られ、それによってプッシャワイヤが近位に引っ張られ、プッシャワイヤがもはや弁サポートフレームに接触していないことを示している。
【0236】
図8Gは、第1被覆体が第2被覆体の近位端に接するまで遠位方向に押されたことを示している。これは、送達器具を患者の体から除去するときに生じ得る第2被覆体の近位端との接触によるダメージから周辺組織を保護するように機能する選択的なステップである。
【0237】
図8Hは、第2被覆体コントローラを引くことによって、第2被覆体及び第1被覆体が近位方向に移動したことを示している。送達器具を患者から除去するときに、ユーザが送達器具の個々の部材及び送達器具コントロールユニットの部材を引き戻す多数の方法が存在することは、当業者が理解できる。
【0238】
図9B−図9Hは、図9Aに示されている様々な位置に沿った送達器具100の横断図を提供する。図9I−図9Lは、トラック部材150及びロックワイヤ107の詳細な図を示している。
【0239】
図31A−図31Dは、弁捕握部の近位への移動及び遠位への移動を操作するためにロックワイヤ及びロック部材を使用する人工弁の送達を示している。図31Aは、人工弁の送達及び展開の前における、人工サポートフレーム960、捕握部952a、b、c、中空のトラックワイヤ954a、b、c、及び、ロック部材956a、b、cの位置取りを表している。捕握部は弁サポートフレームから遠位に位置する。示されていないが、サポートフレーム960は、上述されているように被覆体中で圧縮された形態にある。捕握部952a、b、cは、別々の被覆体中に圧縮されていてもよい。958で表された脚部被覆材の選択的な存在も示されている。脚部被覆材は、例えば、以下でより詳細に検討されているようなフレキシブルな布から作ることができる。この実施形態は、中空のトラックワイヤ954a、b、cの中に詰め込まれた脚部の各組を囲むために、3つの脚部被覆材を有していてもよい。
【0240】
捕握部952a、b、cを生来の弁洞の内部、例えば、生来の弁洞の底部に適切に配置した後に、図31Bに示されているように、人工弁尖を有するサポートフレーム960を、捕握部頂点966a、b、cに接するように遠位方向に押す。この装置は、配置する前の捕握部及びサポートフレームの位置決定に関する順応性を実施者に提供する。いくつかの場合において、捕握部は、生来の弁尖の端の上に位置していてもよい。サポートフレーム960を配置及び展開した後に、脚部の自由端及びそれぞれの戻り止め(その1つは962として図31C−図31Dに示されている)を露出させるために、トラックワイヤ954a、b、cを近位方向に引っ張る。この戻り止めは、形状記憶材料製であってもよく、長手軸から突出するように変形している。これらの戻り止めは、捕握部と配置された弁サポートフレームとの間のより安定した接続を作るように機能する。
【0241】
図31Dに示されているように、その後に、ロック部材956a、b、cで終端するロックワイヤ(図31C、964a、b、c)は、配置された人工弁から分離させるために近位方向にそれぞれ引っ張られる。
【0242】
トラックワイヤを弁捕握部に可逆的に接続するための他の可能な実施形態は、図10A−図10C、図17H−図17J、図19A−図19E、図20A−図20C、図21A−図21C及び図22A−図22Dに示されており、当業者によって理解されるであろう。
【0243】
図11A−図11Cに示されているように、埋め込み器具の代替的一実施形態は、人工心臓弁を送達するための埋め込み器具180である。一実施形態において、コントロールユニット181は、生来の弁洞の内部において弁捕握部の位置を決定するように弁捕握部190の回転運動を制御することができる捕握部位置コントローラ182を備える。他の一実施形態において、コントロールユニット181は、第2被覆体191(ノーズコーン)の移動を制御する第2被覆体コントローラスイッチ183(ステップ1スイッチ)と、第1被覆体192の移動を制御する第1被覆体コントローラスイッチ184(ステップ2スイッチ)と、人工弁193を露出させるように第1被覆体192を移動させる弁リリーススイッチ186(ステップ3スイッチ)とをさらに備える。第1被覆体は、人工弁サポートフレーム195と少なくとも1つのトラックワイヤ197とを囲んでいる。第2被覆体コントロールケーブル198も示されている。人工弁の配置の前に、送達器具は、図11Aに示されているように構成されている。人工弁サポートフレーム195の配置の後であって、患者から送達器具を除去する前に、送達器具は、生体内で図11Bに示されているように構成されている。
【0244】
他の一実施形態において、コントロールユニット181は、少なくとも1つのリリーススイッチ187をさらに備える。コントロールユニット181は、図11Cにより詳しく示されている。
【0245】
III.人工大動脈弁装置の逆行性送達のための第1埋め込み器具
第4の態様において、大腿動脈を経由して人工大動脈弁装置を送達するための埋め込み器具300を提供する。埋め込み器具300は、図1Bに示されているような人工弁を備えていてもよく、各弁捕握部はU形部材を備える。
【0246】
図12Aに図示されている送達器具の一実施形態において、埋め込み器具300は、人工心臓大動脈弁の心尖部送達に使用することができる。他の代替的一実施形態において、埋め込み器具300は、左房室弁の心尖部送達を提供することができる。
【0247】
埋め込み器具300は、図12Aに326によって一般的に示されているコントロールユニットを備えており、一実施形態においては、以下に記載されているいくつかの別々の独立したコントローラを備える。コントロールユニット326は、トラックワイヤコントローラ342と、少なくとも1つのトラックワイヤ344と、第1被覆体308とを含む。図12Aに示されている埋め込み器具は3つのトラックワイヤを有する。
【0248】
一実施形態において、第1被覆体308は、弁捕握部324及びトラックワイヤ344を少なくとも部分的に囲んでいる。第1被覆体コントローラ338は、第1被覆体308の近位端に固定されている。第1被覆体コントローラ338は、第1被覆体の近位への移動及び遠位への(長手方向の)移動の両方を支援することができ、また、選択的に、生来の弁尖に対する捕握部の適切な位置取りを可能にするように、トラックワイヤ及び接続された捕握部の回転運動を支援することができる。
【0249】
コントロールユニットは、本明細書に記載されて図12Aに示されているような埋め込み器具の種々の部材をユーザが独立して制御できるようにする。コントロールユニットは、ユーザによるトラックワイヤ344aの独立制御を提供するためのトラックワイヤコントローラ342を備える。装置300の中の1つ以上のトラックワイヤは、その近位端においてトラックワイヤコントローラに接続されている。344aのような少なくとも1つのトラックワイヤの遠位端は、弁捕握部324の自由端との接触を生じさせることができる。トラックワイヤコントローラ342は、リリーススイッチ320aのような少なくとも1つのリリーススイッチ320を備える。トラックワイヤ344aのような少なくとも1つのトラックワイヤは、そのおおよそ近位端において、リリーススイッチ320aのような少なくとも1つのリリーススイッチに固定されている。他の一実施形態において、埋め込み器具300は、2つのトラックワイヤ344a及び344bを備えており、これらの2つのトラックワイヤは、近位端においてリリーススイッチ320bに固定されているトラックワイヤ344bのように、その近位端においてリリーススイッチにそれぞれ接続されている。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具300は、3つのトラックワイヤを備えており、3つのトラックワイヤは、その近位端においてリリーススイッチにそれぞれ接続されている。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具300は、4個、5個又はそれ以上のトラックワイヤを備えており、それらのトラックワイヤは、その近位端において同一の又は異なるリリーススイッチにそれぞれ接続されている。以下により完全に説明されているように、複数のトラックワイヤのそれぞれは、その遠位端において、人工弁中の弁捕握部の少なくとも1つとの接触を生じさせることができる。複数のトラックワイヤのそれぞれは、捕握部脚部の1つ以上の直線部分、及び/又は、322a、b、cとして図12C−図12Dに表されているようなロックワイヤを囲んでいてもよい。
【0250】
埋め込み器具300は、複数のトラックワイヤ344を囲むことができるトラックワイヤ支持体356をさらに備えていてもよい。
【0251】
他の一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤの遠位端が弁捕握部と接触するように、少なくとも1つのトラックワイヤは、少なくとも1つの弁捕握部と接触している(図13B参照)。埋め込み器具300の弁捕握部は、湾曲部分と2つの直線部分とを有するU形部材を備える。各直線部分は1つの自由端で終端する。図13Bに示されているように、トラックワイヤ344は、2つの別々の弁捕握部324a、bの直線部分及び自由端を囲んでいる。一実施形態において、トラックワイヤは、例えば、1つ以上の他のケーブル又はワイヤを挿入できるようにするために、中空である。典型的な一実施形態において、中空のトラックワイヤは、図13B及び図13Cに示されているように、コントロールユニットのおおよそ近位端からトラックワイヤ344のおおよそ遠位端まで延在するロックワイヤ328を囲んでいる。他の一実施形態において、ロックワイヤは、その近位端においてロックワイヤ支持体に固定されている。さらに別の一実施形態において、ロックワイヤは、その遠位端にロック部材329を備える(図13B及び図13C)。
【0252】
図13Bに詳細に示されているように、いくつかの実施形態において、トラックワイヤ344は、ロックワイヤと、弁捕握部324のような2つの異なる独立した隣接する弁捕握部の2つの直線部分とを囲んでいる。弁捕握部と、ロック部材を有するロックワイヤとのこの配置が、トラックワイヤ内の部材の摩擦嵌合を生じさせ、従って、ロック部材を有するロックワイヤがトラックワイヤの遠位端において2つの脚部におおよそ隣接する限り、2つの異なる弁捕握部の直線部分が中空のトラックワイヤ内に固定されることは、当業者によって理解されるであろう。トラックワイヤがロックワイヤに関して近位に移動するようなロックワイヤと独立したトラックワイヤの移動は、摩擦嵌合を失わせ、弁捕握部が中空のトラックワイヤから解放されるようにする。
【0253】
当業者は、トラックワイヤ344aのようなトラックワイヤのそれぞれを、コントロールユニット、トラックワイヤコントローラ342及び/又はリリーススイッチ320に固定する様々な機構を構想することができる。トラックワイヤ344のそれぞれの近位端は、例えば、コントロールユニットの種々の部材に溶接又は接着されていてもよい。あるいは、トラックワイヤ344の長さの割にはより柔軟性が高くなるように、トラックワイヤ344の近位端は、それぞれ、様々な部材の周囲を湾曲していてもよいし、又は、様々な部材を通るものであってもよい。
【0254】
いくつかの実施形態において、人工弁サポートフレーム305のような人工弁サポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に覆われており、弁捕握部は、弁捕握部324の自由端が被覆材を通るようにすることによって、動かせるように人工弁サポートフレーム固定されている。この構成において、弁捕握部の湾曲部は、サポートフレーム被覆材に対して外側にある。
【0255】
埋め込み器具300は、第2被覆体310のような第2被覆体をさらに備えており、第2被覆体は、圧縮状態の人工弁サポートフレームを囲む。埋め込み器具300は、第2被覆体コントロールケーブル334をさらに備えており、第2被覆体コントロールケーブル334は、その遠位端において第2被覆体310の遠位端の内表面の一部分に固定されている。さらに別の一実施形態においては、第2被覆体コントロールケーブル334の近位端の辺りが第2被覆体コントローラ336に固定されている。第2被覆体コントローラは、ユーザが第2被覆体コントロールケーブルを移動させ、それによって近位方向又は遠位方向に第2被覆体を移動させるのを支援する。この移動は、埋め込み器具の他の部分から独立して又は独立せずに実行され得る。
【0256】
一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブル334は中空である。さらに別の一実施形態においては、中空の第2被覆体コントロールケーブルを経由してガイドワイヤを送り込むことができる。
【0257】
他の一実施形態において、第2被覆体は、人工弁の配置の前に圧縮状態にある弁捕握部324の湾曲部分のそれぞれを少なくとも部分的に囲んでいる。
【0258】
図13Cは、形状記憶材料製であり得る戻り止め349a、bで弁捕握部の自由端が終了する実施形態を示している。この図において、弁捕握部324a、bがトラックワイヤから切り離された後に、戻り止めが巻いている。戻り止めのこの変形は、展開された人工弁の捕握部のサポートフレームに対する固定を強化するように機能することができる構造部材を提供する。
【0259】
図14A及び図29B−図29Hは、患者の体内に人工弁を送達及び展開するために使用されるときの、埋め込み器具300の操作を示している。図14Aは、患者に挿入する前の埋め込み器具を示している。次に、圧縮状態にある人工弁サポートフレーム305を囲んでいる第2被覆体310を、例えば、大腿動脈を通して、第2被覆体が生来の弁の中に位置するまで、大動脈弁へ進める。当業者によって理解されるように、サポートフレームのこの最初の位置決定は、映像システムを使用して実行することができる。
【0260】
図14Bは、埋め込み器具を示しており、この装置においては、弁捕握部のU形部材が第2被覆体から切り離されており、トラックワイヤが遠位方向に押されている。トラックワイヤコントローラを遠位方向に動かすことによって、トラックワイヤを遠位方向に押すことができる。注目すべきことに、この実施形態においては、生来の弁洞に係合することになる弁捕握部の湾曲部がサポートフレーム被覆材に対して外側に位置するように、被覆材が人工弁サポートフレームを囲み、かつ、各弁捕握部の直線部材が被覆材の近位端を通っている。従って、トラックワイヤが遠位方向に押されたときに、弁捕握部は、動かせるように人工弁サポートフレームの遠位端に接続されたままであるが、各弁捕握部の遠位端は、圧縮されたサポートフレームから放射状に伸びることができる。
【0261】
図14Cは、部分的にのみ人工弁サポートフレームを露出させるように、第2被覆体310を遠位方向に押すことを示している。この部分的に露出させるステップは、ターゲット位置からのサポートフレームの望まれない移動を最小限にするように機能する選択的なステップである。あるいは、人工弁サポートフレームを完全に露出させるように、第2被覆体を遠位方向に押すこともできる。第2被覆体コントローラ336を遠位に押すことによって、第2被覆体を遠位に移動させることができる。
【0262】
図14Dは、人工弁サポートフレームを完全に露出させるように第2被覆体310が遠位方向に押されて、サポートフレームがその展開状態に完全に展開できることを示している。この時、弁捕握部がサポートフレームに対して同軸的に位置し、生来の弁尖が弁捕握部とサポートフレームとの間に配置されており、それによって、人工弁を生来の弁の中により一層固定することができる。
【0263】
IV.大腿送達のための第2の埋め込み器具
第5態様においては、図15Aを参照しながら、動かせるように人工弁とコントロールユニット410を備える送達器具とに接続された少なくとも1つの捕握部425を有する人工弁サポートフレーム440と、圧縮状態の人工弁サポートフレーム440を囲む第1被覆体410と、圧縮状態の弁捕握部を囲む第2被覆体430と、第1被覆体コントロールスイッチ445に固定された第1被覆体コントロールケーブル411と、第2被覆体コントロールスイッチ435に固定された第2被覆体コントロールケーブル412と、を備える埋め込み器具400を提供する。弁捕握部を有する人工弁の実施形態は上述されている。この埋め込み器具を人工大動脈弁装置の大腿送達に使用する方法は、図15A−図15Cに示されており、以下により詳細に検討されている。
【0264】
上記送達器具のためのコントロールユニットは、トラックワイヤ、プッシャワイヤ、並びに/又は、第1被覆体及び第2被覆体を含む、埋め込み器具の種々の部材の独立制御を支援するように少なくともある程度は機能する。当業者は、埋め込み器具の長手軸に沿って近位又は遠位に動くことができる種々の部材(例えば、第1被覆体、第2被覆体、トラックワイヤ、ロックワイヤ、プッシャワイヤ)のそれぞれが埋め込み器具のコントロールユニットに対して直接的に又は間接的に接続されていてもよいことを理解する。上記実施形態は、コントロールユニットの一部分を遠位方向又は近位方向に押すこと又は引くことによって、コントロールユニット部材がどのように移動するかの例をそれぞれ提供する。そのような押すこと及び引くことは、例えば、ワイヤに接続されたスイッチを使用することによって、又は、例えば、被覆体の一部分であってもよいハンドルを押すこと若しくは引くことによって達成される。
【0265】
他の代替的一実施形態において、コントロールユニットは、ダイヤルを回転させることによって埋め込み器具の動かせる個々の部材(例えば、第1被覆体、第2被覆体、トラックワイヤ、ロックワイヤ、プッシャワイヤ)を近位又は遠位に動かすことができる1つ以上のダイヤル部分を備えていてもよい。この実施形態において、そのような各セクションが2つのセクションのねじ込み係合を可能にするために、隣接する部分に対して相補的なねじ山を含むようにして、コントロールユニットの個々の部分が接続又は結合されていてもよい。従って、係合されたある部分の時計周り又は反時計周りの回転は、隣接する係合された部分に対してそのセクションの遠位又は近位への軸方向の移動を生じさせるであろう。1つの埋め込み器具コントロールユニットは、係合された部分のような回転コントロール部材と、長手軸に沿って動くスイッチ及びハンドルのようなコントロール部材との両方を含んでいてもよいことがわかる。
【0266】
V.代替的な弁の実施形態
本明細書に開示されている埋め込み器具と共に使用され得るような人工弁サポートフレームの他の代替的一実施形態において、図16Aは、遠位部分101と近位部分103とを備え、遠位部分101が近位部分103から独立して展開することができる単一のサポートフレーム95を作るための別々のユニットとして製造可能である人工弁サポートフレームを表す(図16A参照)。あるいは、図16Bに示されているように、単一のサポートフレーム97は、遠位部分105が近位部分107から独立して展開することができるような態様で、単一のユニットとして製造される。従って、図16Cに示されているように、人工弁サポートフレームの全体を露出及び伸張する前に人工弁95の一部分だけを露出させるために、第1被覆体112を近位方向に移動させる。同様に、人工弁サポートフレームの全体を露出及び伸張する前に人工弁97の一部分だけを露出させるために、第1被覆体を近位方向に移動させることができる。
【0267】
図1C−図1Dに図示されているようなサポートフレーム16を有する人工弁は、サポートフレームの一部分だけを露出させたときに部分的に展開することができるサポートフレームの典型的な実施形態として機能できることがわかる。
【0268】
VI.代替的な弁捕握部の実施形態
弁捕握部の他の一実施形態が図17A−Bに示されている。これらの実施形態においては、捕握部複合ユニット800を形成するために、複数の弁捕握部のそれぞれが別の弁捕握部に固定されている。捕握部複合ユニット800は複数の脚部をさらに備える。複数の弁捕握部を有する捕握部複合ユニットを形成するために、2個、3個、4個又はそれ以上の脚部材に接続された2個、3個、4個又はそれ以上のU形部材が存在してもよいことがわかる。一例として、図17Aに図示されているように、U形部材802a及び802bは、各々頂点806b及び806cを経て脚部810aにそれぞれ接続されている。同様に、U形部材802b及び802cは、頂点806d及び806eを経て脚部810bにそれぞれ接続されている。いくつかの実施形態においては、図17Aの825a、b、cに示されているように、各脚部810a、b、cの近位端が孔を有していてもよい。他の実施形態においては、各脚部の近位端を通る孔が存在しない。
【0269】
図17Aは、返し820のような複数の返しを有するように脚部810a、b、cを設計した実施形態を示している。これらの返しは、生来の弁の中に配置された後の人工弁の安定化を支援するように機能することができる。言いかえれば、人工弁を配置するときに、少なくとも1つの返しがサポートフレーム被覆材及び/又は脚部被覆材が存在する場合には、それらを貫通するように、返しが突出する。好ましい一実施形態において、サポートフレーム被覆材は、サポートフレームに取り付けられている(例えば、縫合されている)。脚部被覆材が存在する場合には、脚部被覆材は、サポートフレーム被覆材に取り付けられている(例えば、縫合されている)。従って、弁捕握部の返しがサポートフレーム被覆材及び/又は脚部被覆材を貫通すれば、これは、弁捕握部構造をサポートフレーム構造に対して固定することになる。あるいは、サポートフレーム構造に対する弁捕握部の固定を支援するために、この返しが、サポートフレーム被覆材及び/又は脚部被覆材の中に埋め込まれるようにすることもできる。そのような固定部材が多数の異なる形状のあらゆるものを有し得ることがわかる。これらの固定部材は、形状記憶金属製であってもよいし、又は、形状記憶金属製でなくてもよい。「返し(barb)」という用語は、捕握部から突出し、かつ、患者の生来の弁の中に人工弁の固定するのを支援にするように機能することができるあらゆる構造部材を包含し得る。当業者には、脚部の返しのパターンを変更してもよいことがわかる。例えば、図17Cに示されているように、脚部834の片側の線に沿って、一続きの返しが存在してもよい。捕握部のU形部材の一部分が832として表されている。人工弁を配置するときの返し836の突出が図17Dに示されている。一実施形態において、返し835を有する又は有しない1つ以上の脚部は、図17Eに表されているような開口部833を有するように設計されている。捕握部のU形部材の一部分が831として表されている。この開口部の大きさ及び形状は、変更することができ、捕握部の耐久性がより高くなるように設計される。それぞれの返しの間の間隔は一定であってもよいし又は異なっていてもよい。あるいは、図17Fに示されているように、脚部838の一続きの返し839のそれぞれが脚部の側面に交互に位置していてもよい。捕握部のU形部材の一部分が837として表されている。これらの返しは、互いに対して交互に配列されていてもよい。図17Gは、孔844及び突部843を含む選択的な特徴を示しており、それぞれの大きさ及び形状は、必要とされる機能に応じて変更されてもよい。図17G−図17Hにおいて、脚部及び返しは、それぞれ、841及び842によって表されており、捕握部のU形部材の一部分が840として示されている。
【0270】
他の一実施形態において、捕握部複合ユニット850は、図17Bに示されているように、頂点856a−fを介して互いに取り付け又は固定された複数のU形部材(例えば852a、b、c)を備える。捕握部複合ユニット850は脚部を備えていない。いくつかの実施形態において、捕握部複合ユニットは、図17Bに875a、b、cとして示されているような孔を備えていてもよい。それぞれの孔は、除去可能な脚部のための取付位置を提供することができる。いくつかの実施形態において、捕握部複合ユニット850はこれらの孔を有しない。
【0271】
図17K−図17Mは、捕握部複合体ユニットの脚部に関する代替的な実施形態を提供する。これらの各実施形態において、捕握部の機能的特徴にさらに高い柔軟性を付与するために、捕握部複合ユニットの脚部が短くなっている。図17Kは、フレキシブルワイヤ又は他の類似した耐久性の繊維構造871に接続された脚部を示している。
【0272】
上述されて図17A−図17Mに示されている捕握部複合ユニット及びその部品は、ニチノールのような形状記憶金属で構成されていてもよい。U形部材は、そのユニットの中央軸から遠ざかるように放射状に展開することができる。
【0273】
図18A−図18Bは、弁サポートフレームに対して捕握部複合ユニットがどのように位置することができるかを例示している。捕握部複合ユニットは、弁サポートフレーム892に対して永続的に固定されていない。捕握部複合ユニットが弁サポートフレームの長手軸に沿って近位方向及び/又は遠位方向に動くことができるように、捕握部複合ユニットは、動かせるように弁サポートフレームに接続されている。図18A−図18Bは、弁サポートフレーム892の内側面に被覆材890を有する人工弁を示している。いくつかの実施形態において、この被覆材は、弁サポートフレームの外側面に存在していてもよい。
【0274】
図18A及び図18Bは、人工弁が脚部被覆材888をさらに備えている代替的な実施形態を示している。図18Aは、例えば、返し884のような複数の返しを有する脚部882を示している。図18Bは、896によって表されているような異なる態様の返しを有する脚部895を示している。脚部被覆材888は存在してもよいし又は存在しなくてもよいことがわかる。人工弁を配置するときに、それぞれの返しが脚部被覆材を容易に貫通することができるように、脚部被覆材は、好ましくはフレキシブルな材料から作成される。人工弁フレームと同様に、軽量の、耐久性の、フレキシブルな、液体不浸透性の、及び/又は、生体適合性のあらゆる適切な材料を脚部被覆材として使用することができる。縫合、ステープル、化学/熱接着、及び/又は、接着剤を使用して、脚部被覆材を前記フレームに取り付けることができる。いくつかの実施形態において、被覆材は布である。さらなる実施形態において、この布は、例えば、ナイロン(商標)、ダクロン(商標)若しくはテフロン(商標)から選択される商品名によって特定される材料で構成されるか、又は、発泡させたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)若しくは他の材料である。
【0275】
図18A及び図18Bに図示されている実施形態を使用するときの人工心臓弁の送達であって、埋め込み器具が図18A−18Bに示されているような複合体捕握部を利用する送達は、複合体捕握部と埋め込み器具とを接続及び分切り離するための代替的な方法(例えば、トラックワイヤ)を必要とする可能性がある。当業者は接続及び切り離しのいくつかの方法を構想することができるが、図17H−17Jに代替的な実施形態を提供する。例えば、図17H−図17Iに示されているように、複合体捕握部840の脚部を接続するための手段として、突部843をワイヤ846の開口部に入れることができる。トラックワイヤ847(図17I)のような中空のトラックワイヤの中に入れると、この接続が安定化される。図17Jは、埋め込み器具の適切な部材に対して複合捕握部の脚部を接続及び分離するためのさらに別の構造を図示している。図17Jは、フレキシブル引張部848が、複合捕握部の脚部材の近位端の孔を経て入り、ロックアンドリリース部849の遠位端を囲んでいることを示している。埋め込み器具の適切な部材(図17Jにおいてトラックワイヤ853によって囲まれているワイヤ851)に対して脚部を固定するために、フレキシブル引張部848は近位方向に引かれる。
【0276】
VII.捕握部の代替的分離機構
図19−図22は、弁捕握部に埋め込み器具を可逆的に取り付けるための代替的実施形態を図示している。図19−20は、弁埋め込み器具に対して捕握部複合ユニットを可逆的に取り付ける手段を提供するために、ロックアンドリリース部の軸方向の長さに沿って動くフレキシブル引張部を使用することを示している。図19Aに示されているように、捕握部複合ユニットの脚部に弁埋め込み器具を接続する前に、フレキシブル引張部902は、ロックアンドリリース部904に沿って、かつ、該部材904を越えて延在している。フレキシブル引張部902及びロックアンドリリース部904は、中空のトラックワイヤ906の中に少なくとも部分的に入っている。この例において、前記引張部及び前記ロックアンドリリース部は、複合捕握部ユニットの脚部908の近位端に取り付けられている。図19Bは、ロックアンドリリース部904及び引張部902の近位端を示しており、これら2つの部材のそれぞれの独立したコントロールを可能にする任意の手段によって埋め込み器具コントロールユニットに対してこれらを取り付けることができる。
【0277】
弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを取り付けるために使用することができる方法は、図19C−図19Dに示されている。この取り付けは、埋め込み器具に人工弁を詰め込む前に実行される。フレキシブル引張部902の遠位端に形成されたループ912は、捕握部複合ユニットの脚部908の自由端の孔910を通して入れる。次に、フレキシブル引張部の遠位端がループ912を通って進むまで、フレキシブル引張部から独立してロックアンドリリース部904を遠位方向に移動させる(図19D)。脚部908と埋め込み器具との間の接続を堅くして固定するために、フレキシブル引張部902を近位方向に引くことができる。次に、フレキシブル引張部902及びロックアンドリリース部904の大部分を覆うように中空のトラックワイヤ906を遠位方向に移動させて、トラックワイヤ906の遠位端が脚部908の近位端におおよそ隣接するようにする(図19E参照)。
【0278】
捕握部複合ユニット脚部の切り離しが図20A−図20Cに示されている。図20A−Bにあるように、ロックアンドリリース部904は、フレキシブル引張部902から独立して近位方向に移動させる。図20Cは、どのように、トラックワイヤ906、フレキシブル引張部902、及び、ロックアンドリリース部904を近位方向に一緒に移動させるかを示している。フレキシブル引張部の柔軟性により、フレキシブル引張部902は、脚部908の孔910から容易に取り除かれる。
【0279】
弁埋め込み器具を捕握部複合ユニットの脚部に接続するさらに別の構造が図21−図22に示されている。図21A−図21Cは、どのようにフレキシブル脚を引張部に連結させることができるかを示している。この実施形態において、前記引張部は、フレキシブルな材料から作られたものであってもよいし又はフレキシブルな材料から作られたものでなくてもよい。図21Aに示されているように、フレキシブル脚920は、引張部頂部924において引張部922に連結している頂部928を含む。送達前に、人工弁を埋め込み器具中に詰めるときに、この連結によってフレキシブル脚920と引張部922とを可逆的に接続させる。フレキシブル脚と引張部とを連結した後に、図21Bに示されているように、その連結部分及びフレキシブル脚の遠位部分を覆うように、例えば、トラックワイヤ926のような中空のトラックワイヤを遠位方向に移動させる。トラックワイヤは、人工弁の送達前及び送達中にフレキシブル脚が放射状に展開するのを防止する。図21Cは、この取り付け及び切り離しの実施形態の近位端を表している。引張部922及びトラックワイヤ926が、これらの近位端において弁埋め込み器具の近位端の近くの位置に又は弁埋め込み器具コントロールユニットに取り付けられており、この取り付けは、引張部及びトラックワイヤの独立した軸方向の移動を可能にするような態様であることがわかる。
【0280】
図22A−図22Cは、フレキシブル脚920が引張部922からどのように分離されるかを示している。最初に、フレキシブル脚の近位端を露出させるために、トラックワイヤを近位方向に引き戻すことができる(図22A参照)。フレキシブル脚920のフレキシブルな性質により、図22B−図22Cに示されているように、引張部922を近位方向に引くことは、フレキシブル脚920をその頂点928において真っすぐに伸ばす。その後、フレキシブル脚920を切り離すことができるように、ユーザは、トラックワイヤ926及び引張部922を近位方向に引くことができる。
【0281】
フレキシブル引張部は、例えば、単繊維、多繊維、又は、網状多繊維の構造であってもよい。その具体例には、外科縫合において使用されるようなワイヤ、糸又は単繊維が含まれ得る。単繊維は、腸線、絹、又は、リンネルのような天然の源から作成されたものであってもよいし、又は、合成されたものであってもよい。単繊維の非吸収性縫合糸は、例えば、ナイロン又はポリプロピレンから作成することができる。フレキシブル引張部は、形状記憶材料製であってもよい。当業者は、引張強度、締め付け強度、弾性、記憶性若しくは剛性、及び、組織反応性のような特性に基づいて、フレキシブル引張部のための適切な材料を選択することができるであろう。
【0282】
一実施形態において、上述されて図21−図22に示されているようなフレキシブル脚は、捕握部脚として機能することができ、例えば、フレキシブル脚920は、捕握部複合ユニット850の孔875に取り付けられる(図17B参照)。他の一実施形態において、フレキシブル脚は、弁埋め込み器具の引張部に捕握部脚を取り付ける役割を果たすことができる。例えば、図21Aにおけるフレキシブル脚920は、その近位端において引張部922に連結され、その遠位端において捕握部複合ユニット800の捕握部脚810の近位端に取り付けられるようにすることができる(図17A参照)。さらに別の一実施形態において、フレキシブル脚は、その遠位端において、例えば、弁サポートフレームに対してその弁サポートフレームの接合支柱に直接取り付けられるようにすることができる。
【0283】
VIII.人工大動脈弁装置を配置する方法
第6の態様において、埋め込み器具100のような埋め込み器具を使用して、本明細書に記載されている圧縮形態又はコンパクト状態の人工弁を心臓に送達する方法を提供する。
【0284】
図24A−図24Hは、人工弁を大動脈弁に送達し、人工弁を位置決定及び展開するための1つの手順を示している。当業者は、例えば、埋め込み器具100に適用するときの送達方法及び装置操作の適用を容易に理解するであろう。図24A−図24Hは、患者の心臓の左側を通る断面図であり、経心尖的アプローチを用いてサポート構造を送達する際に行われる動作を示している。本明細書で提供されているような図は、実際には図式的なものであり、従って、送達工程を必ずしも正確に表していないことに留意されたい。例えば、患者の胸郭は、説明の目的のために示されおらず、また、送達システムと共に使用される被覆体の大きさは、手順をよりよく図示するためにやや変更されている。しかしながら、当業者は、示されている手順を実行するために使用することができる被覆体及びカテーテルの範囲及び種類を容易に理解するであろう。図23は、患者への導入器具134の挿入を示している。
【0285】
図24A−図24Hは、埋め込み器具600を使用した、大動脈弁の経心尖的移植を図示している。埋め込み器具600は、埋め込み器具100と多数の機能を共有している。第2被覆体(ノーズコーン)610が生来の心臓弁を過ぎる(生来の心臓弁に対して遠位の)位置まで、埋め込み器具600をガイドワイヤに沿って進める。図24Bに示されているように人工弁捕握部のU形部材615が放射状に伸びることができるようにするために、コントロールユニット670の中の第2被覆体コントローラスイッチは、第2被覆体610(ノーズコーン)を遠位方向に移動させるために使用される。以下に記載されており、図24A−図24Hに図示されている方法を、上記送達器具100及び人工弁2と共に使用することができる。
【0286】
コントロールボックス670の中の第1被覆体コントローラスイッチは、図24Aに示されているように、遠位方向に向かって、かつ、生来の心臓弁を部分的に通るように第1被覆体620を動かすために使用される。第1被覆体620は、圧縮状態にある人工弁サポートフレーム625を囲んでいる。第1被覆体620が生来の心臓弁に向かって遠位方向に動くときに、弁捕握部は静止したままである。生来の弁尖は645で示されている。
【0287】
図24Bは、弁捕握部615を露出させるように、第2被覆体610が遠位方向に押されたことを示している。遠位端が第2被覆体に取り付けられ、かつ、近位端がコントロールユニットに取り付けられた第2被覆体コントロールケーブル655を遠位方向に押すことによって、第2被覆体610を遠位方向に動かすことができる。露出させると、弁捕握部が生来の弁の上方で放射状に展開する。
【0288】
図24Cは、弁捕握部のU形部材が、生来の弁洞の底部又は生来の弁尖の底部に接するように、生来の弁と接触又は係合するまで、弁捕握部を近位方向に引くようにコントロールユニットを操作したことを示している。弁捕握部は、上述されているようにトラックワイヤを近位方向に引くことによって近位に移動される。
【0289】
図24Dは、第1被覆体の遠位端、及び、従って、サポートフレーム625の遠位端が弁捕握部の頂点に接するまで、第1被覆体620を進めたことを示している。従って、このとき、サポートフレームは、サポートフレームの展開のため及び人工弁の埋め込みのために、生来の弁の中で適切な位置にある。サポートフレームを展開する前に、遠位、近位、及び、回転の位置について人工弁をわずかに調整するために、埋め込み器具をなお操作することができることがわかる。
【0290】
図24Eは、サポートフレーム625が、弁捕握部の脚部から延在するトラックワイヤに沿って放射状に展開できるように、サポートフレーム625を露出させるために、及び、弁捕握部が、図24Eに示されているように、弁尖645のような生来の弁の弁尖を捕捉できるようにするために、サポートフレームを静止したままに保持しながら第1被覆体620を近位方向に引き戻すことを示している。見てわかるように、生来の弁尖(例えば645)は、弁捕握部615とサポートフレーム625との間に挟まれている。トラックワイヤ(例えばトラックワイヤ630)は、依然として弁捕握部に接触している。トラックワイヤは、人工弁が伸張又は展開するときに、人工弁の正確な放射状の位置取り(接合面対接合面)を誘導するのを支援する。
【0291】
図24Fは、人工弁が適切に配置されたことを確実にした後に弁捕握部を切り離すために、トラックワイヤを近位方向に引き戻したことを示している。トラックワイヤは、リリーススイッチを押し又は引くことによって弁捕握部の脚部から切り離すことができる。
【0292】
図24Gは、第2被覆体610の近位端に接するように、第1被覆体620が遠位方向に押されたことを示している。このステップは、任意のものであり、送達器具を患者から除去するときに第2被覆体の近位端によって生じ得るダメージから周囲組織を保護するように機能する。展開した人工弁を正しい位置に残したままで、患者から埋め込み器具を除去するために、埋め込み器具をガイドワイヤに沿って近位方向に引く。
【0293】
図24Hは、人工弁を正しい位置に残したままで、埋め込み器具を心臓から除去することを示している。
【0294】
他の代替的一実施形態においては、人工弁サポートフレームの一部分だけを露出させるように第1被覆体620を近位方向に移動させる。図1C−図1Dに示されているような弁サポートフレームを、この手順のために実施して、第1被覆体620に入れることができる。
【0295】
人工弁が生来の心臓弁弁輪において完全に展開したとき、生来の弁尖は、U形部材と弁捕握部615のそれぞれの脚部との間に挟まれるようになる。これは、心臓における人工弁のさらなる固定を提供する。
【0296】
IX.下大静脈送達によって人工左房室弁装置を配置する方法
第7の態様においては、埋め込み器具100を使用して、下大静脈を経由した送達によって、圧縮形態又はコンパクト状態にある人工弁を心臓に送達する方法を提供する。一実施形態において、人工弁は人工左房室弁である。
【0297】
埋め込み器具100を使用して、下大静脈を通して左房室弁を送達する方法は、図25A−25Lに図示されている。図26に示されているように、埋め込み器具は、患者の大腿静脈内に挿入され、次に、下大静脈へ進められることができる。患者に埋め込み器具を挿入する前に、ガイドワイヤ110を、大腿静脈内に導入し、次に、撮像手段を用いながら下大静脈を通して進め、次に、当業者に既知の方法に従ってニードルを用いて心房中隔壁を通して左心房内に進め、左房室弁を通して遠位方向に向かって左心室内に進めることができる。その後、埋め込み器具100は、ガイドワイヤ110に沿って、心房中隔壁及び左房室弁を通して、左心室内に進められる。
【0298】
図25Bは、ガイドワイヤ110に沿って心房中隔壁を通して左心房内に進められる前の埋め込み器具を示している。
【0299】
図25Cは、心房中隔壁を通して左心房内に埋め込み器具を進めることを示している。図25A−図25Kに122として示されている第1被覆体の実施形態は、当業者によって理解されるように、心臓から遠く離れた挿入位置から送達することができるように、第1被覆体が非常に長く、かつ、フレキシブルであり得ることを図示している。
【0300】
図25Dは、人工弁サポートフレームを囲む第1被覆体の少なくとも一部分が左心室内に位置するように、埋め込み器具の遠位端を左房室弁を通して進めたことを示している。他の代替的一実施形態においては、第1被覆体中の人工弁が生来の弁の中に位置するまで、埋め込み器具を遠位方向に進めることができる。
【0301】
図25Eには、弁捕握部を露出させて、弁捕握部のU形部材が送達器具の中心軸から放射状に展開することができるように、弁捕握部、例えば、弁捕握部106を静止したままに保持しながら、第2被覆体130を遠位方向に押したことが示されている。
【0302】
図25Fは、弁捕握部のU形部材が生来の弁と接触又は係合するまで、包まれた圧縮状態の人工弁サポートフレーム102を含む第1被覆体を、弁捕握部(例えば弁捕握部106)と共に、近位方向に引くことを示している。弁捕握部のU形部材が生来の弁と接触するときに、ユーザが抵抗を感じることができるので、ユーザは、この操作のために映像に頼る必要がない。
【0303】
図25Gは、第1被覆体122の遠位端が弁捕握部の頂点に隣接又は接触するまで、第1被覆体122を遠位方向に進めたことを示している。
【0304】
図25Hには、人工弁サポートフレーム102を露出させてサポートフレームが展開状態に伸張又は展開できるように、第1被覆体122を近位方向に引いた後の埋め込み器具が示されている。この時、生来の弁尖は、弁捕握部とサポートフレームとの間に位置している。より詳細には、弁捕握部の脚部は、生来の弁尖とサポートフレームとの間に位置しており、また、生来の弁尖は、弁捕握部の脚部と弁捕握部のU型部材との間に位置している。図25Hは、依然として弁捕握部106に可逆的に取り付けられているトラックワイヤ150、及び、依然としてサポートフレーム102に係合しているプッシャワイヤ170を示している。
【0305】
図25Iは、弁捕握部からトラックワイヤを取り外すために、トラックワイヤを近位方向に引いたことを示している。プッシャーワイヤ170は、依然として人工弁サポートフレームに係合しており、トラックワイヤを取り外したときに人工弁を所望の位置に維持するのを支援した。
【0306】
図25Jは、人工弁サポートフレームから各プッシャワイヤを切り離すために、プッシャワイヤを近位方向に引いたことを示している。
【0307】
図25Kは、第1被覆体122が第2被覆体130の近位端に接するまで、第1被覆体122を遠位方向に押したことを示している。
【0308】
図25Lは、生来の心臓弁の中に人工弁を残しながら患者から埋め込み器具を除去するために、埋め込み器具を近位方向に移動させることを示している。
【0309】
X.上大静脈送達によって人工弁を配置する方法
第8の態様においては、上大静脈を通した経皮的送達によって、埋め込み器具100を使用して、圧縮形態又はコンパクト状態にある本明細書に記載されている人工弁を心臓に送達する方法を提供する。この方法を図27に示す。この態様において、人工弁は、人工肺動脈弁である。
【0310】
上大静脈を通して人工肺動脈弁を送達するための埋め込み器具100は、患者の上大静脈内に挿入される。埋め込み器具を心臓内に挿入する前に、ガイドワイヤ110は、頚静脈内に導入され、次に、撮像手段を用いて、上大静脈を通して右心房内に進められ、次に、三尖弁を通して右心室内に進められ、生来の肺動脈弁弁輪を通して肺動脈内に進められる。
【0311】
一実施形態においては、最初に導入器具をガイドワイヤ110に沿って頚静脈内に挿入し、この導入器具を通して埋め込み器具100を挿入する。一実施形態においては、この埋め込み器具100は、上述されているように頚静脈内に挿入され、上大静脈を通して右心房内に進められ得る。次に、図28に示されているように、埋め込み器具の遠位端は、三尖弁を通して右心室内に進められ、次に、生来の肺動脈弁を通して肺動脈内に進められる。
【0312】
埋め込み器具を右心室内に導入した後に、埋め込み装置は、弁捕握部が生来の肺動脈弁を過ぎるように位置するまでガイドワイヤに沿って進められる。圧縮状態にある人工弁サポートフレーム102を囲む第1被覆体120は、生来の肺動脈弁のおおよそ隣又は近位(下方)の位置に進められる。弁捕握部が入っている第2被覆体130が生来の肺動脈弁を通り過ぎるように、かつ、肺動脈中に位置する場合、人工肺動脈弁を位置決定及び展開するための方法は、埋め込み器具100を用いて左房室人工弁を埋め込むための上記方法と同一であるか又は非常に類似することがわかる。
【0313】
XI.大腿動脈送達によって人工弁を配置する方法
第9の態様においては、埋め込み器具300を使用して、本明細書に記載されている圧縮形態又はコンパクト状態の人工弁を心臓に送達する方法を提供する。一実施形態において、人工弁は、大腿動脈によって送達された人工大動脈弁である。
【0314】
図29Aに示されているように、ガイドワイヤは、当業界で既知の方法に従って大腿動脈内に挿入され、大腿動脈、大動脈弧及び大動脈弁を通して進められる。
【0315】
図29Bには、大腿動脈内に挿入され、大動脈弧を通して誘導され、次に、第2被覆体の遠位端が生来の大動脈弁302の上方に位置するまでガイドワイヤに沿って進められた後の、埋め込み器具300が示されている。この実施形態において、第1被覆体は、埋め込み器具を患者に入れる位置から大動脈弁を通り過ぎるように延在するのに充分な長さを有することは、当業者に容易に理解されるであろう。また、第1被覆体は、大腿動脈を通して安全に進められるのに充分にフレキシブルな材料から作られており、かつ、大腿動脈を通して安全に進められるのに充分に小さい直径を有するように作られている。
【0316】
図29Cは、弁捕握部324a及び324bのような弁捕握部が埋め込み器具の中心軸から放射状に展開した後の埋め込み器具300を示している。この実施形態において、埋め込み器具は、上述されているように湾曲部分と直線部分とをそれぞれ有するU形部材を有する3つの弁捕握部を備える。各弁捕握部324の湾曲部分は、弁捕握部を静止したままに保持しながら又はトラックワイヤ344を近位方向に動かしながら、第2被覆体310を遠位方向に移動させることによって、露出させるようにすることができる。埋め込み器具を患者に挿入する前に、弁捕握部の湾曲部分は、第2被覆体の近位端によってわずかだけ覆われている。弁捕握部324の湾曲部分を露出させた後に、各弁捕握部の全体を露出させるために、トラックワイヤ344を近位方向に動かす。このとき、図29Cに示されているように、各トラックワイヤが2つの別々の弁捕握部の1つの直線部分を囲むように、各弁捕握部の直線部分が少なくとも部分的にトラックワイヤの中に入っている。この実施形態において、埋め込み器具は3つのトラックワイヤを備える。さらに、図13Bに示されているように、各トラックワイヤが1つのロックワイヤを囲んでいてもよい。図14A−図14Dに示されているように、一実施形態において、この送達器具は、複数のトラックワイヤを囲むことができるトラックワイヤ支持体356を備えていてもよい。図29Cは、係合位置にある弁捕握部を示している。
【0317】
図29Dは、各弁捕握部の湾曲部分が大動脈洞の底部と係合するまで、トラックワイヤを遠位方向に進めたことを示している。ここで弁捕握部は組込位置にある。この移動は、トラックワイヤコントローラ342を遠位方向に押すことによって実行することができる。
【0318】
図29Eは、第2被覆体310を遠位方向に動かすことによって人工弁305を少なくとも部分的に露出させるために、第2被覆体310を遠位方向に押すことを示している。この移動は、第2被覆体コントローラ338を遠位方向に動かすことよって実行することができる。このとき、人工弁サポートフレーム305は、部分的に伸張又は展開する。人工弁サポートフレーム305が部分的に展開するときに、弁捕握部の直線部分は、依然としてトラックワイヤに囲まれている。(図1C−図1Dに示されているような)サポートフレームの一部分のみの伸張は、そのサポートフレームを部分的又は完全な配置したときに、そのサポートフレームが位置からはずれるように「ジャンプする」ことを防ぐように支援することができる。代替的に、サポートフレーム全体を1つのみのステップにおいて露出及び伸張させることもできる。いくつかの実施形態においては、弁捕握部の最小限の部分が被覆材と弁サポートフレームとの間に位置するように、弁捕握部の直線部分が、人工弁サポートフレームの外表面の被覆材を通されている。
【0319】
図29Fは、第2被覆体310を遠位方向に進めることによって人工弁サポートフレーム305を完全に露出及び展開させるために、第2被覆体310を遠位方向に移動させたことを示している。第2被覆体のこの移動は、第2被覆体コントローラ336を遠位方向に動かすことによって達成することができる。人工弁サポートフレーム305を完全に展開するときに、弁捕握部324の直線部分は、依然としてトラックワイヤ344によって囲まれている。
【0320】
少なくとも1つのロックワイヤ328を静止したままに保持するように、送達器具を静止したままに保持しながらリリーススイッチ320a又は320bのような少なくとも1つのリリーススイッチを近位方向に動かすことによって、トラックワイヤを弁捕握部から切り離すことができる。そうすることによって、ロック部材329と、2つの弁捕握部324の直線部分と、トラックワイヤ344との間の摩擦がなくなり、弁捕握部324に対していかなる引張力を適用することもなく、トラックワイヤから弁捕握部324を切り離すために、少なくとも1つのトラックワイヤ及びロックワイヤを近位方向に動かすことができる。トラックワイヤから弁捕握部を切り離した後の送達器具が図29Gに示されている。図29Gに図示されている一実施形態においては、トラックワイヤコントローラ342を近位方向に引くことによって、トラックワイヤを近位方向に移動させる。
【0321】
図29Hは、第1被覆体308の隣に第2被覆体310を配置するために、第2被覆体コントローラ336を近位方向に引くことができることを示している。その後、送達器具300は、人工弁を生来の大動脈弁の中に展開させたままで、患者から除去される。
【0322】
XII.大腿動脈送達によって人工弁を配置するための代替的方法
第10の態様においては、埋め込み器具400を使用して、大腿動脈を経由して本明細書に記載されている人工弁を大動脈弁に送達する方法を提供する。埋め込み器具400は、人工弁の長手軸に沿って弁捕握部を動かせるような又は弁捕握部が人工弁のサポートフレーム470に固定されているような、弁捕握部425を有するものとして本明細書に記載されている人工弁を含む多様な人工弁を送達するために使用することができる。
【0323】
大腿動脈を経由して埋め込み器具400を配置する方法の実施形態が図15A−15Cに図示されている。この実施形態において、ガイドワイヤ110は、対象の大腿動脈内に挿入され、当業者に既知の方法を用いて、映像システムの誘導に従って、機能不全の大動脈心臓弁を通るガイドワイヤに沿って、心臓の左心室内に進められる。次に、弁捕握部425が入っている第2被覆体430が生来の心臓弁の上方に位置するように、人工弁のサポートフレーム440が入っている第1被覆体420をガイドワイヤの経路に従って機能不全の生来の心臓弁の近くにある標的部位に押し込むようにして、埋め込み器具400をガイドワイヤに沿って大腿動脈内に挿入する。埋め込み器具のこの配置は、映像システムによって、及び、ガイドワイヤに沿って埋め込み器具を動かすことによって誘導される。第1被覆体の除去時に人工弁が意図された機能を発揮することを可能にする位置に人工弁が展開するような位置に埋め込み器具が位置するとき、埋め込み器具が、機能不全の生来の心臓弁の近くに存在することは、当業者に理解されるであろう。
【0324】
一実施形態において、埋め込み器具400は、コントロールユニット410をさらに備える。このコントロールユニットは、第1被覆体スイッチ445及び第2被覆体スイッチ435を備える。第1被覆体スイッチは、ワイヤ又は同等の部材によって第1被覆体に取り付けられている。第2被覆体スイッチは、ワイヤ又は同等の部材によって第2被覆体に取り付けられている。埋め込み器具400が標的部位の近くにある場合には、図15A−図15Bに示されているように、弁捕握部を露出させるように第2被覆体が近位方向(コントロールユニットの方)に動くように、第2被覆体スイッチを移動させ又は調節する。この動作によって弁捕握部が脚部から放射状に展開できるようになる。
【0325】
一実施形態において、この埋め込み器具は、第2被覆体の内部に配置された及び/又は動かせるように第2被覆体に取り付けられた捕握部プッシャ460をさらに備える。第2被覆体スイッチを、例えば、初期の遠位位置から近位位置に動かす場合、この動作は、捕握部プッシャを第2被覆体の遠位端に向かって移動させる。第2被覆体スイッチを近位位置から遠位位置に動かしたときに(図15B−図15C参照)、捕握部プッシャが弁捕握部の近位端と係合することによって弁捕握部を遠位方向に押すように、捕握部プッシャが弁捕握部の近位端と係合する。一実施形態において、弁捕握部は、捕握部プッシャによって生来の心臓弁洞にほぼ隣接する位置まで(遠位方向に)押し下げられる。一実施形態において、弁捕握部は、所定の距離を押し下げられる。
【0326】
一実施形態において、埋め込み器具400は、第1被覆体420の内部に配置された及び/又は第1被覆体420に取り付けられた弁ストッパ450をさらに備える。この弁ストッパは、弁捕握器が遠位方向に押されたときに人工弁を適所に保持するように機能する。
【0327】
弁捕握部を生来の心洞内に配置した後に、第1被覆体スイッチ445を初期の近位位置(図15B)から遠位位置(図15C)に切り替えることによって、人工弁のサポートフレーム440を第1被覆体から切り離すように、第1被覆体420を(遠位方向に、さらに、左心室内に)押し下げる。露出させた弁サポートフレーム470は放射状に展開して、図15Cに示されているように弁捕握部が生来の心臓弁尖490を捕捉するようになる。
【0328】
人工弁を適切に配置したことを確実にした後に、第1被覆体が第2被覆体に接するように第1被覆体を近位方向に引く。一実施形態において、この動きは、第1被覆体スイッチ445を遠位位置から近位位置に戻すように切り替えることによって実行される。これは、埋め込み器具の回収を準備するために実行される。次に、その埋め込み器具を、ガイドワイヤに沿って対象から近位方向に穏やかに引き抜く。ガイドワイヤを次に回収する。展開された人工心臓弁は、弁サポートフレーム440の放射状の展開力によって、及び、生来の心臓弁尖を捕捉する複数の弁捕握部425によって、適所に保持される。
【0329】
XIII.代替的配置方法
図30A−図30Cは、生来の弁の中にサポートフレームを配置するときに、被覆体から人工弁サポートフレーム715を切り離す代替的方法を表している。図30Aに示されているように、弁捕握部700は、被覆体705から解放される。一実施形態において、弁捕握部は、リリースボタン720a、720bを遠位方向に押すことによって、被覆体705から遠位方向に押される。
【0330】
図30Bは、人工弁サポートフレーム715の遠位部分だけが被覆体705から遠位方向に押し出され、この部分だけが展開していることを示している。サポートフレーム715を被覆体705から遠位方向に押し出すことは、被覆体705を静止したままに保持しながらプッシャワイヤコントローラ710を遠位方向に押すことによって実行することができる。この方法は、人工弁サポートフレームを使用して、図1C−図1Dに示されているように実行することができる。
【0331】
次に、図30Cに示されているように、部分的に展開したサポートフレーム715が遠位方向に押されて弁捕握部700の頂点に接するように、被覆体705を遠位方向に押す。プッシャワイヤコントローラ710を同時に動かすことができることに留意されたい。
【0332】
この実施形態についてさらに留意すべきことに、捕握部700を露出させたときに、依然として脚部に取り付けられているトラックワイヤは、図30Aに示されているように、外側に向かう角度で被覆体705から伸びている。次に、図30Bに示されているように、人工弁サポートフレーム715の遠位部分を露出させるために、プッシャワイヤコントローラ710を近位方向に移動させることができる。次に、サポートフレーム715の遠位部分は放射状に展開し、一方で、人工弁サポートフレーム715の近位部分は被覆体705の内部でコンパクト状態のままである。次に、人工弁の遠位端が捕握部頂点に接するまで、プッシャワイヤコントローラ710及び第1被覆体を遠位方向に移動させる。次に、人工弁を完全に露出及び展開させるために、被覆体705を近位方向に移動させる。
【0333】
XIV.送達器具
第11の態様において、医療用人工器官を患者に送達するための器具を提供する。一実施形態において、医療用人工器官を患者に送達するための装置は、該装置の遠位端から該装置の近位端まで延在する管状ステアリングワイヤと、該装置の近位端にあるコントロールユニットと、開いた管腔を備え、かつ、コントロールユニットに対して遠位に配置された第1被覆体と、少なくとも1つのトラックワイヤとを備える。少なくとも1つのトラックワイヤは、非中空の又は中空のワイヤ又はケーブルであってもよい。
【0334】
一実施形態において、この送達用装置は、トラックワイヤコントローラをさらに備える。このトラックワイヤは、その近位端においてトラックワイヤコントローラに固定されていてもよい。他の一実施形態において、トラックワイヤコントローラは、その近位端においてスイッチ、ダイヤル、又は、他の動かせる制御手段又は部材に固定されている。動かせる制御手段又は部材は、操作者がトラックワイヤの動き及び/又は位置をその装置から独立して制御できるようにする。
【0335】
一実施形態において、前記器具は、コントロールユニットに固定された近位端と医療用人工装置と係合することができる遠位端とを有するプッシャワイヤをさらに備える。
【0336】
一実施形態において、前記装置は第2被覆体をさらに備える。他の一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体と連続的に配置される。一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体に対して近位に配置される。他の一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体に対して遠位に配置される。さらに別の一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体と同軸上に配置される。
【0337】
一実施形態において、この送達用装置のコントロールユニットは、第2被覆体コントローラをさらに備える。一実施形態において、第2被覆体コントローラは、第2被覆体から第2被覆体コントローラまで延在するセントラルコントロールケーブル(第2被覆体コントロールケーブル)を備える。第2被覆体コントローラは、操作者が第2被覆体を他の装置部材から独立して動かせるようにする。
【0338】
一実施形態において、第2被覆体コントローラは、管状ステアリングワイヤを備え、該管状ステアリングワイヤは、その遠位端において第2被覆体に固定されており、その近位端において第2被覆体コントローラに取り付けられている。
【0339】
一実施形態において、送達器具のコントロールユニットは、第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0340】
多数の典型的な態様及び実施形態が上に議論されているが、当業者は、特定の修正、置換、追加及びこれらの部分的組合せを理解するであろう。従って、添付されている特許請求の範囲及び今後導入される特許請求の範囲は、それらの真の精神及び範囲内であるように、そのような修正、置換、追加及び部分的組み合わせのすべてを含むように解釈されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、2009年3月30日に提出した米国仮出願第61/211430号、2009年3月30日に提出した第61/211431号、2009年3月30日に提出した第61/211432号、2009年3月30日に提出した第61/211433号、2009年7月24日に提出した第61/228423号の優先権の利益を主張する。これらのすべては、言及することによって全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本明細書に記載されている主題は、最小限に侵襲性の処置を使用して非縫合人工心臓弁を埋め込むための医療器具及び方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
人工心臓弁は、損傷を受けた心臓弁又は病変した心臓弁を置換するために使用される。脊椎動物において、心臓は4つのポンプ室、すなわち、左心房、右心房、左心室及び右心室を有する筋肉器官である。これらのポンプ室は、それぞれ固有の一方向弁を有する。生来の心臓弁は、大動脈弁、左房室弁(又は、二尖弁)、三尖弁、及び、肺動脈弁として知られている。大動脈又は左房室弁は、最も圧力が高い心臓の左側に存在するので、これらの修復又は置換がより一般的ではあるが、人工心臓弁は、これらの生来的に存在する弁のいずれかを置換するために使用することができる。
【0004】
従来の心臓弁置換手術は、胸の縦方向の切り口を経て患者の胸腔内の心臓に到達するステップを含む。例えば、胸骨正中切開は、胸骨を切り開き、肋骨郭の2つに分けた対向する部分を開いて離れるようにし、胸腔及び心臓への到達を可能にすることを必要とする。その後、患者は、内室に到達できるようにするために、心臓を停止させることを伴う心肺バイパスに置かれる。そのような開胸手術は、著しく侵襲性であり、長い困難な回復期間を伴う。
【0005】
例えば大腿動脈又は心臓に到達できるようにする小さい切り口を介して導入されるカテーテルを使用して人工弁を患者に導入することができるような、最小限に侵襲性の外科技術が開発されている。心臓弁置換における重大な問題は、ターゲット位置においてわずか約2mm−5mmの範囲内に人工弁を置くことである。医師らは、様々なマーキングシステム、術中におけるコントラスト染料の複数回の注入、及び、映像システムにおける視野角調節を含む、心臓弁置換手術中の医師たちの判断を確認するための様々な方法を試してきた。しかしながら、これらの方法及び現行の映像システムには限界がある。例えば、現行の映像システムの標準誤差は約2mmであり、また、手術者による操作がさらなる不安定性を招く。さらに、心臓自体の動きによってターゲット設置位置が2mm〜5mmずれる可能性がある。これらのすべてによって人工弁を正確に設置するのが非常に困難になる。
【0006】
非縫合弁に付随する他の重要な問題は、弁の移動である。例えば、人工大動脈弁を配置する場合、100〜200mmHgの圧力がその人工大動脈弁に直ちに加わる。加圧時間及び弁の表面積は、人工弁に対する相当な負荷力を生じさせ、弁を大動脈弧に向かって移動させる可能性がある。弁移動の別の原因は、弁の傾いた設置である。人工弁は、傾くと、血流に面する表面積がより大きくなり、それによってその人工弁が大動脈中に押し込まれる可能性がある。
【0007】
患者に人工弁を導入するための改良された人工弁及び送達器具の必要性が当業界において依然として存在する。
【0008】
関連技術の先の例及びそれに関連した限界は、説明的なものであり、排外的なものではないように意図されている。関連技術の他の限界は、本明細書の参照及び図面の調査によって当業者に明らかであろう。
【発明の概要】
【0009】
後述されている態様、並びに、説明及び図示されているそれらの実施形態は、典型的かつ説明的なものであり、範囲を限定するものでないように意図されている。
【0010】
一態様において人工弁を記載する。この人工弁は、一実施形態において、圧縮状態と展開状態との間において放射状に展開可能なサポートフレームを備え、前記サポートフレームは、外側面を有し、かつ、流入・流出方向に沿った軸の周囲に中央開口部を定義する。一実施形態においては、人工弁が非縫合人工心臓弁である。
【0011】
一実施形態において、前記サポートフレームは、配列された複数のフレキシブルリンクを備え、前記サポートフレームの一部分が残りの部分から独立して展開することができる。
【0012】
この人工弁は、前記サポートフレームがその展開状態にあるときに開口部において一方向弁を提供するために前記サポートフレームに取り付けられた複数のフレキシブル弁尖と、前記サポートフレームの外側面との組込位置(nesting position)と係合位置(engagement position)との間において軸に沿って動かすことができる少なくとも1つの弁捕握部とをさらに備える。一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、前記サポートフレームから物理的に分離されている。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、第1脚部及び第2脚部、及び、U形部材からなる。第1脚部及び第2脚部のそれぞれが第1端部と第2端部とを有する。
【0014】
一実施形態において、第1脚部及び第2脚部のそれぞれの第1端部は、先端付近でU形部材に接続されている。
【0015】
一実施形態において、各脚部の第2端部は、各脚部の第1端部に対して近位にある。
【0016】
一実施形態において、前記先端は湾曲している。一実施形態において、第1脚部及び第2脚部は先端付近でU形部材に連結されており、前記第1脚部と前記第2脚部とが互いに略平行である。
【0017】
一実施形態において、弁捕握部は形状記憶材料で構成されている。
【0018】
一実施形態において、前記脚部の各自由端は戻り止めで終端する。他の一実施形態において、前記戻り止めの長さは可変であってもよい。他の一実施形態において、前記戻り止めは形状記憶材料製である。
【0019】
一実施形態において、前記サポートフレームの長さがLであり、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さが少なくともLである。他の一実施形態において、前記サポートフレームの長さがLであり、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さがLより短い。さらに別の一実施形態において、前記サポートフレームが長さLを有し、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さが約Lである。
【0020】
他の一実施形態において、その展開状態におけるサポートフレームは半径rを有しており、少なくとも1つの弁捕握部は、サポートフレームが展開状態にあるときに、サポートフレームと同軸状に重なるような大きさである。
【0021】
他の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、2個、3個、4個、又は、5個の弁捕握部を備える。
【0022】
他の代替的一実施形態において、それぞれの弁捕握部がU形部材からなる。一実施形態において、このU形部材は、弁捕握部の遠位端に湾曲部分と、その湾曲部分に近接した2つの直線部分とを有する。湾曲部分の両側の2つの直線部分は、それぞれ自由端で終端する。
【0023】
一実施形態において、サポートフレームの長さがLであり、U形部材の各直線部分の長さが少なくともLである。他の一実施形態においては、サポートフレームの長さがLであり、U形部材の各直線部分の長さがLより短い。さらに別の一実施形態においては、サポートフレームの長さがLであり、U形部材の各直線部の長さが約Lである。
【0024】
一実施形態において、U形部材の各自由端は戻り止めで終端する。他の一実施形態において、戻り止めの長さは可変であってもよい。
【0025】
また別の実施形態において、サポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に囲まれている。ある実施形態において被覆材が布である。
【0026】
さらに別の一実施形態においては、サポートフレームは形状記憶材料で構成されている。
【0027】
一実施形態において、弁捕握部は形状記憶材料で構成されている。
【0028】
一実施形態において、戻り止めは形状記憶材料で構成されている。
【0029】
一実施形態において、複数のフレキシブル弁尖は生物材料で構成されている。ある実施形態において、生物材料はブタ又はウシである。
【0030】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部の少なくとも一部分は、サポートフレームと被覆材との間に配置される。
【0031】
一実施形態において、サポートフレームは、固定部材とサポートフレームとの間に開口部を作るようにサポートフレームに取り付けられた少なくとも1つの固定部材を備える。他の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部の一部分は、少なくとも1つの固定部材とサポートフレームとの間の開口部に配置される。
【0032】
一実施形態においては、サポートフレームが圧縮状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部が流入・流出方向の軸に沿って動くことができる。他の一実施形態においては、サポートフレームが展開状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部が流入・流出方向の軸に沿った移動に制限される。
【0033】
他の一実施形態において、サポートフレームが展開状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部が流入・流出方向の軸に沿って制限なく動くことができない。
【0034】
一実施形態において、人工弁は、大動脈弁装置、肺動脈弁装置、又は、左房室弁装置である。
【0035】
他の一態様において、上述されている人工弁と送達器具とを備えた埋め込み器具を提供する。この送達器具は、一実施形態において、コントロールユニットと、前記コントロールユニットに取り付けられた近位端及び少なくとも1つの弁捕握部との接触のための遠位端からなる少なくとも1つのトラックワイヤと、圧縮状態にある人工弁サポートフレームの少なくとも一部分を囲むための第1被覆体とを備える。前記人工弁は、少なくとも1つの弁捕握部を含み、前記少なくとも1つの弁捕握部は、2つの脚部と、2つの頂部と、1つのU形部材とを備える。この実施形態においては、2つの脚部のそれぞれが第1端部及び第2端部を有し、各脚部の第1端部はU形部材に取り付けられており、各脚部の第2端部は固定されていない。他の一実施形態においては、各脚部の第1端部が頂点付近でU形部材に接続されている。一実施形態においては、各頂部が湾曲しており、各脚部の第2端部が各脚部の第1端部に対して遠位である。
【0036】
一実施形態において、埋め込み器具は、コントロールユニットに固定された近位端と人工弁に接触させるための遠位端とを有する人工弁プッシャワイヤをさらに備える。
【0037】
他の一実施形態において、コントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラを備える。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャワイヤは、人工弁を係合させるための部材で終端する。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャワイヤを係合させるための部材は、人工弁の近位端に接触している。
【0038】
一実施形態において、人工弁の係合部材はV形状又はU形状である。
【0039】
さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つのトラックワイヤが中空のトラックワイヤであり、その中空のトラックワイヤの中にロックワイヤが配置されている。一実施形態においては、このロックワイヤの遠位端が、少なくとも1つの弁捕握部を少なくとも1つのトラックワイヤに分離できるように固定するためのロック部材を有している。
【0040】
他の一実施形態において、コントロールユニットはトラックワイヤコントローラを備える。
【0041】
埋め込み器具は、さらに別の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部を囲むための第2被覆体を備える。
【0042】
一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体と連続的に、かつ、第1被覆体に対して遠位に配置されいる。
【0043】
一実施形態において、コントロールユニットは第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0044】
他の一実施形態において、第2被覆体は、コントロールユニットの中に配置された第2被覆体コントローラによって移動することができる。この第2被覆体コントローラは、第2被覆体から第2被覆体コントローラの方へ伸びる第2被覆体コントロールケーブルを備える。一実施形態において、第2被覆体コントローラは、送達器具の近位端に又はその近位端の近傍に位置する。
【0045】
さらに別の一実施形態においては、第2被覆体コントロールケーブルが中空である。
【0046】
他の一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤの近位端は、トラックワイヤコントローラの中のリリーススイッチに接続されている。
【0047】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0048】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、少なくとも1つのトラックワイヤ及び人工弁プッシャワイヤのそれぞれの独立制御のために構成されている。他の一実施形態において、コントロールユニットは、少なくとも1つのトラックワイヤ及び第2被覆体コントロールケーブルのそれぞれの独立制御のために構成されている。
【0049】
一実施形態において、第1被覆体の長さは、少なくともアクセス開口部から心臓までの距離の長さである。この距離は、動脈又は静脈の経路を通して測定されるものである。
【0050】
一実施形態において、第1被覆体は直線状であるか又は湾曲している。
【0051】
一実施形態において、第2被覆体は直線状であるか又は湾曲している。
【0052】
他の一態様において、人工弁備える埋め込み器具であって、前記人工弁は少なくとも1つの弁捕握部を備え、前記少なくとも1つの弁捕握部がU形部材を備えた埋め込み器具を提供する。
【0053】
この実施形態において、U形部材の各自由端は、U形部材の湾曲部の近傍に位置している。
【0054】
送達器具は、一実施形態において、コントロールユニットと、コントロールユニットに取り付けられた近位端及び少なくとも1つの弁捕握部の自由端との接触のための遠位端からなる少なくとも1つのトラックワイヤと、少なくとも1つの弁捕握部の少なくとも一部分を囲むための第1被覆体と、圧縮状態にある人工弁サポートフレームの少なくとも一部分を囲むための第2被覆体とで構成されている。第2被覆体は、第1被覆体と連続するように、かつ、第1被覆体に対して遠位に配置される。
【0055】
一実施形態において、第2被覆体は、人工弁サポートフレームと、少なくとも1つの弁捕握部の少なくとも一部分とが入っている。他の一実施形態において、第2被覆体には、人工弁サポートフレームと、少なくとも1つの弁捕握部の湾曲した部位の少なくとも一部分とを囲んでいる。
【0056】
さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つのトラックワイヤが中空のトラックワイヤであり、その中空のトラックワイヤの中にロックワイヤが配置されている。一実施形態において、ロックワイヤの近位端は、少なくとも1つの弁捕握部を少なくとも1つのトラックワイヤに分離できるように固定するためのロック部材を有している。
【0057】
他の一実施形態において、コントロールユニットは、トラックワイヤコントローラを備える。
【0058】
他の一実施形態において、第2被覆体は、コントロールユニットの中に配置された第2被覆体コントローラによって移動することができる。この第2被覆体コントローラは、第2被覆体から第2被覆体コントローラの方へ伸びる第2被覆体コントロールケーブルを備える。一実施形態において、第2被覆体コントローラは、送達器具の近位端に又はその近位端の近傍に位置する。
【0059】
さらに別の一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブルは中空である。
【0060】
他の一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤの近位端は、トラックワイヤコントローラの内部のリリーススイッチに接続されている。
【0061】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0062】
一実施形態において、埋め込み器具は、コントロールユニットに固定された近位端、及び、人工弁との接触のための遠位端を有する人工弁プッシャワイヤをさらに備える。
【0063】
他の一実施形態において、コントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラを備える。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャワイヤは、人工弁を係合させるための部材で終端する。さらに別の一実施形態において、人工弁プッシャーワイヤを係合させるための部材は、人工弁の近位端に接触する。
【0064】
一実施形態において、人工弁の係合部材はV形状かU形状である。
【0065】
さらに別の一実施形態において、コントロールユニットは、少なくとも1つのトラックワイヤ及び第2被覆体コントロールケーブルのそれぞれの独立制御のために構成されたものである。
【0066】
一実施形態において、捕握部複合ユニットを提供する。他の一実施形態において、この捕握部複合ユニットは、2つ以上のU形部材及び2つ以上の頂部を含み、第1U形部材は、第1頂部及び第2頂部並びに1つの捕握部複合脚部を介して、第2U形部材に永続的に取り付けられている。さらに別の一実施形態において、捕握部複合ユニットは、3つのU形部材、6つの頂部、及び、3つの捕握部複合脚部を備える。他の一実施形態において、捕握部複合ユニットは、4つのU形部材、8つの頂部、及び、4つの捕握部複合脚部を備える。
【0067】
さらに別の一実施形態において、1つ以上の複合脚部のそれぞれは、おおよそ近位端に孔を備える。
【0068】
一実施形態においては、1つ以上の複合脚部が1つ以上の返しを備える。他の一実施形態においては、1つ以上の返しのそれぞれが1つ以上の複合脚部の両側に存在する。さらに別の一実施形態においては、複数の返しのそれぞれが1つ以上の複合脚部の片側に連続的に存在する。さらに別の一実施形態においては、複数の返しのそれぞれが少なくとも1つの複合脚部に交互に存在する。
【0069】
一実施形態において、2つ以上のU形部材及び2つ以上の頂部を備える捕握部複合ユニットであって、第1U形部材が第1頂部及び第2頂部を介して第2U形部材に永続的に取り付けられており、前記捕握部複合ユニットが前記捕握部複合ユニットに永続的に固定された複合脚部を備えていない捕握部複合ユニットを提供する。他の一実施形態においては、2つ以上の頂部のそれぞれが孔を備える。一実施形態においては、捕握部複合ユニットが3つのU形部材及び6つの頂部を備える。他の一実施形態においては、捕握部複合ユニットが4つのU形部材及び8つの頂部を備える。
【0070】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを可逆的に取り付けるための機構を提供する。この実施形態において、弁埋め込み器具は、中空のトラックワイヤ、ロックアンドリリース部、フレキシブル引張部、及び、捕握部複合ユニットを備える。他の一実施形態において、フレキシブル引張部は遠位環状末端を備える。他の一実施形態において、ロックアンドリリース部は、中空のトラックワイヤの中に少なくとも部分的に入っており、かつ、その近位端において埋め込み器具のコントロールユニットに接続されている。さらに別の一実施形態において、フレキシブル引張部は、中空のトラックワイヤの中に少なくとも部分的に入っており、その近位端において埋め込み器具のコントロールユニットに接続されている。一実施形態において、フレキシブル引張部の遠位端は、ロックアンドリリース部の遠位端に対して遠位方向に延在する。
【0071】
一実施形態において、フレキシブル引張部は、単繊維、多繊維、又は、網目状多繊維の構造で構成されている。他の一実施形態において、フレキシブル引張部は、ワイヤ、糸、又は、単繊維である。他の一実施形態において、フレキシブル引張部は、腸線、絹、又は、亜麻で構成されている。さらに別の一実施形態において、フレキシブル引張部は、ナイロン又はポリプロピレンである。さらに別の一実施形態において、フレキシブル引張部は、形状記憶金属で構成されている。
【0072】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを可逆的に取り付ける方法を提供する。他の一実施形態において、この方法は、1)フレキシブル引張部の遠位環状末端を捕握部複合ユニット脚部の孔に通すステップと、2)フレキシブル引張部の遠位環状末端を通るようにロックアンドリリース部の端部を移動させるステップと、3)中空のトラックワイヤに、少なくとも、フレキシブル引張部の遠位環状末端及び捕握部複合ユニット脚部の一部分が入るまで、中空のトラックワイヤを遠位方向に移動させるステップとを含む。
【0073】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットから捕握部複合ユニットを切り離す方法を提供する。他の一実施形態において、この方法は、1)捕握部複合脚部の近位端を露出させるために、中空のトラックワイヤを近位方向に移動させるステップと、2)ロックアンドリリース部がフレキシブル引張部の遠位環状末端を通らない位置まで、ロックアンドリリース部を近位方向に移動させるステップと、3)フレキシブル引張部が捕握部複合ユニット脚部の孔を通らない位置まで、中空のトラックワイヤ、ロックアンドリリース部、及び、フレキシブル引張部を近位方向に移動させるステップとを含む。
【0074】
一実施形態において、捕握部複合ユニットに弁埋め込み器具を可逆的に取り付けるための機構を提供する。この実施形態において、この機構は、弁埋め込み器具を備え、前記弁埋め込み器具は、ロックアンドリリース部、フレキシブル引張部及び中空のトラックワイヤ、捕握部複合ユニット、並びに、フレキシブル脚部を備える。一実施形態において、このフレキシブル脚部は、その近位端においてフレキシブル引張部の遠位環状末端に可逆的に接続されており、また、このフレキシブル脚部は、その遠位端において、捕握部複合ユニットに又は人工弁サポートフレームに可逆的に又は永続的に取り付けられている。一実施形態において、フレキシブル引張部の近位端は、弁埋め込み器具のコントロールユニットに取り付けられている。一実施形態において、捕握部複合ユニットは、複数の複合ユニット脚部を備えている。他の一実施形態において、捕握部複合ユニットは、複数の複合ユニット脚部を備えていない。
【0075】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを可逆的に取り付ける方法を提供する。この実施形態において、この方法は、1)フレキシブル引張部の遠位環状末端にフレキシブル脚部の近位端を接続するステップと、2)少なくともフレキシブル脚部の近位部分が中空のトラックワイヤに入るようになるまで、中空のトラックワイヤを遠位方向に移動させるステップとを含む。
【0076】
一実施形態において、弁埋め込み器具のコントロールユニットから捕握部複合ユニットを切り離す方法を提供する。この実施形態において、この方法は、1)中空のトラックワイヤがフレキシブル脚部の近位端に入っていないようになるまで、中空のトラックワイヤを近位方向に移動させるステップと、2)中空のトラックワイヤ及びフレキシブル引張部を近位方向に引くステップであって、フレキシブル脚部がフレキシブル引張部に連結されなくなるまで、前記フレキシブル脚部を真っすぐにするステップとを含む。
【0077】
他の一態様において、人工心臓弁を配置する方法を提供する。この方法は、上述されているように、少なくとも1つの弁捕握部を備え、前記少なくとも1つの弁捕握部がU形部材及び2つの脚部を備える埋め込み器具を提供するステップと、前記人工弁が患者の心腔内に埋め込み器具を挿入するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を囲む第2被覆体が、患者の心臓内の心臓弁を通過し、かつ、前記心臓弁を越えて延在する位置に、前記埋め込み器具を誘導するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させ、前記少なくとも1つの弁捕握部を心臓弁の洞の中に固定するように、前記埋め込み器具を操作するステップと、人工弁の遠位端が少なくとも1つの弁捕握部におおよそ隣接するように配置されるように、コントロールユニットによって人工弁の位置を調節するステップと、第1被覆体を近位方向にスライドさせることによって第1被覆体から人工弁を切り離すステップであって、それによって人工弁サポートフレームと少なくとも1つの弁捕握部との間に心臓弁の組織をはさむように、人工弁を展開状態に伸ばすステップと、患者から送達器具及び導入器具を除去するステップとを含む。
【0078】
一実施形態において、第1被覆体を近位方向にスライドさせるステップは、人工弁を静止したままに保持しながら第1被覆体コントローラを近位方向に引くステップを含む。
【0079】
一実施形態において、埋め込み器具は、患者の心臓の左心室内に挿入された導入器具を経由して挿入される。
【0080】
さらに別の一実施形態において、埋め込み器具を提供するステップは、少なくとも1つの弁捕握部が送達器具の第2被覆体の中に入っている埋め込み器具を提供するステップを含む。他の一実施形態において、埋め込み器具を誘導するステップは、第2被覆体が、患者の心臓弁を通り、かつ、前記心臓弁を越えるように位置するように、前記埋め込み器具を誘導するステップを含む。さらに別の一実施形態において、第2被覆体は心臓の左心房内に位置する。
【0081】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるように埋め込み器具を操作するステップは、少なくとも1つの捕握部を露出させるために第2被覆体を移動させるように埋め込み器具を操作するステップを含む。他の一実施形態において、少なくとも1つの捕握部を露出させるために第2被覆体を移動させるように埋め込み器具を操作するステップは、少なくとも1つの弁捕握部を静止したままに保持しながら、第2被覆体コントローラを近位方向に引くステップを含む。
【0082】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部を露出させる前に送達器具の第1被覆体及び第2被覆体を配置するために、映像システムが使用される。
【0083】
一実施形態において、この方法は、人工弁を配置するステップであって、人工弁が人工大動脈弁であるステップを含む。他の一実施形態において、この方法は、患者の胸腹部を通して左心室内の頂点に又は頂点付近に送達器具を挿入するステップを含む。
【0084】
一実施形態において、この方法は、大動脈弁輪を通して左心房内に第2被覆体を進めて、大動脈弁輪の付近に第1被覆体を配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるために第2被覆体を遠位方向に進めるステップであって、少なくとも1つの弁捕握部が左心房内で放射状に配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材が大動脈洞と接触するまで第2被覆体コントローラを引くステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端にほぼ隣接するまで、又は、第1被覆体の遠位端が大動脈弁輪と接触するまで、第1被覆体を進めるステップと、人工弁を静止させたまま第1被覆体を引くことによって、人工弁を露出及び配置するステップと、ロックワイヤを静止したままに保持しながら少なくとも1つのトラックワイヤリリーススイッチを近位方向に移動させることによって、少なくとも1つのトラックワイヤから少なくとも1つの弁捕握部の脚部を切り離すステップと、人工弁から少なくとも1つのプッシャワイヤエンゲージャを切り離すためにプッシャワイヤコントローラを近位方向に移動させるステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端に接するまで、第1被覆体を遠位方向に進めるステップと、送達器具を引くことによって患者から送達器具を除去するステップとをさらに含む。
【0085】
一実施形態において、この方法は、人工弁を配置するステップであって、人工弁が人工肺動脈弁であるステップを含む。他の一実施形態において、この方法は、患者の大腿静脈を経由して送達器具を挿入し、下大静脈を経由して右心房内へ送達器具を進めるステップを含む。
【0086】
一実施形態において、この方法は、三尖弁輪を通して右心室内へ第2被覆体を進め、肺動脈弁輪を通して第2被覆体を進め、肺動脈内に第2被覆体を配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるために第2被覆体を遠位方向に進めるステップであって、少なくとも1つの弁捕握部を肺動脈内で放射状に展開させるステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材が肺動脈洞と接触するまで、第2被覆体コントローラを引くステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端におおよそ隣接するまで、又は、第1被覆体の遠位端が大動脈弁輪と接触するまで、第1被覆体を進めるステップと、人工弁を露出及び展開させるために、人工弁を静止させたまま第1被覆体を引くステップと、少なくとも1つのトラックワイヤから少なくとも1つの弁捕握部の脚部を切り離すために、ロックワイヤを静止したままに保持しながら少なくとも1つのトラックワイヤリリーススイッチを近位方向に移動させるステップと、少なくとも1つのプッシャワイヤエンゲージャを人工弁から切り離すために、プッシャワイヤコントローラを近位方向に移動させるステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端に接するまで、第1被覆体を遠位方向に進めるステップと、患者から埋め込み器具を除去するために埋め込み器具を引くステップとをさらに含む。
【0087】
一実施形態において、この方法は、人工弁を配置するステップであって、人工弁が人工左房室弁であるステップを含む。他の一実施形態において、この方法は、患者の大腿静脈を経由して埋め込み器具を挿入するステップと、下大静脈を経由して右心房内に埋め込み器具を進めるステップとを含む。
【0088】
一実施形態において、この方法は、埋め込み器具の遠位端を三尖弁輪を通して右心室内へ進めて、経中隔穿刺を実行するステップと、左心房を通して及び左房室弁輪を通して埋め込み器具の遠位端を進めて、左心室内に第2被覆体を配置し、左心房内に第1被覆体を配置するステップと、少なくとも1つの弁捕握部を露出させるために第2被覆体を遠位方向に進めるステップであって、少なくとも1つの弁捕握部を左心室内で放射状に展開させるステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材が左房室弁輪洞と接触するまで第2被覆体コントローラを引くステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端にほぼ隣接するまで又は第1被覆体の遠位端が左房室弁輪と接触するまで第1被覆体を進めるステップと、人工弁を露出及び展開させるために、人工弁を静止させたままで第1被覆体を引くステップと、少なくとも1つの弁捕握部の脚部を少なくとも1つのトラックワイヤから切り離すために、ロックワイヤを静止したままに保持しながら、少なくとも1つのトラックワイヤリリーススイッチを近位方向に動かすステップと、少なくとも1つのプッシャワイヤエンゲージャを人工弁から切り離すために、プッシャワイヤコントローラを近位方向に動かすステップと、第1被覆体の遠位端が第2被覆体の近位端に接するまで第1被覆体を遠位方向に進めるステップと、患者から埋め込み器具を除去するために埋め込み器具を引くステップとをさらに含む。
【0089】
さらに別の一態様において、患者の体内に医療用人工器官を送達するための器具を提供する。この器具は、前記装置の遠位端から前記装置の近位端まで伸びる管状ステアリングワイヤと、前記装置の近位端にあるコントロールユニットと、開いた管腔を備え、前記コントロールユニットに対して遠位に配置された第1被覆体と、前記コントロールユニットにに取り付けられた近位端と医療用人工器官の接触及び制御のための遠位端とを有する少なくとも1つのトラックワイヤと、医療人工器官との管理された接触のための遠位端と前記コントロールユニットに固定された近位端とを有するプッシャワイヤと、を備える。
【0090】
一実施形態において、コントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラ及びトラックワイヤコントローラを備え、前記プッシャワイヤコントローラと前記トラックワイヤコントローラとは、独立して制御可能である。
【0091】
他の一実施形態において、前記少なくとも1つのトラックワイヤの近位端は、トラックワイヤコントローラの中のリリーススイッチに取り付けられている。
【0092】
さらに別の一実施形態において、前記少なくとも1つのプッシャワイヤの近位端は、プッシャワイヤコントローラ内の移動可能な制御手段に取り付けられている。
【0093】
他の一態様において、人工心臓弁を展開する方法を提供する。この方法は、上述されている埋め込み器具を提供するステップと、患者の心腔内に埋め込み器具を挿入するステップと、人工弁を囲む第2被覆体がおおよそ生来の弁の中に存在するような位置に埋め込み器具を誘導するステップと、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材の湾曲部を露出させるように埋め込み器具の操作し、少なくとも1つの弁捕握部が係合位置において放射状に展開できるように、U形部材の直線部分及び少なくとも1つのトラックワイヤの少なくとも遠位部分を露出させるステップと、少なくとも1つの弁捕握部を心臓弁の洞に固定するステップと、第2被覆体から人工弁サポートフレームの少なくとも一部分を切り離すために、第2被覆体を遠位方向にスライドさせるステップと、第2被覆体から人工弁サポートフレーム全体を切り離すために第2被覆体を遠位方向にスライドさせるステップであって、それによって、人工弁サポートフレームと少なくとも1つの弁捕握部との間に生来の心臓弁の組織をはさむように人工弁が展開状態に展開するステップと、患者から送達器具及び導入器具を除去するステップとを含む。
【0094】
この実施形態において、生来の心臓弁の弁尖は、心腔内に入れた埋め込み器具の遠位端に向かって湾曲している。
【0095】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部のU形部材の湾曲部分を露出させるように埋め込み器具を操作するステップは、第2被覆体を遠位方向に移動させるステップを含む。他の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部の直線部分及び少なくとも1つのトラックワイヤの少なくとも遠位部分を露出させるステップは、第1被覆体を静止したままに保持しながら、トラックワイヤコントロールユニットを遠位方向に動かすステップを含む。
【0096】
一実施形態において、第2被覆体を遠位方向にスライドさせるステップは、埋め込み器具を静止したままに保持しながら、第2被覆体コントローラケーブルを遠位方向に押すステップを含む。
【0097】
一実施形態において、心腔内に埋め込み器具を挿入するステップは、大腿動脈内に埋め込み器具を挿入し、大動脈弧を通して左心房内への埋め込み器具を進めるステップを含む。この実施形態において、人工心臓弁は人工大動脈弁である。
【0098】
一実施形態において、心腔内に埋め込み器具を挿入するステップは、患者の心臓の左心室内に挿入した導入器具を通して埋め込み器具を挿入するステップと、埋め込み器具を左心室内に進めるステップとを含む。この実施形態において、人工心臓弁は人工左房室弁である。
【0099】
さらに別の一態様において、複数の人工弁尖を備えたフレキシブル骨格と、動かせるように前記フレキシブル骨格に取り付けられ、捕握部耳部と2つの捕握部シャフトとを備えた弁捕握部と、圧縮状態のフレキシブル骨格を囲み、かつ、捕握部プッシャを備えた第1被覆体と、圧縮状態の複数の捕握部を囲う第2被覆体と、第2被覆体の中に位置する捕握部プッシャと、前記第1被覆体の中に位置する弁ストッパとを備え、フレキシブル骨格を弁輪内に配置する前に前記第1被覆体が第2被覆体に対して遠位に配置された埋め込み器具を提供する。
【0100】
さらに別の一態様において、人工心臓弁を展開する方法を提供する。この方法は、上記心臓埋め込み器具を提供し、大腿動脈内に前記埋め込み器具を挿入し、第1被覆体が左心室の弁輪内に配置され、かつ、第2被覆体が左心房内に位置するようになるまで、大腿動脈を通して心臓の左心室へ埋め込み器具を誘導するステップと、複数の弁捕握部を露出させるように第2被覆体を近位方向にスライドさせることによって、捕握部の耳部が左心房内で放射状に伸びるようにするステップと、捕握部の耳部が大動脈弁洞の底面に接触するまで弁捕握部を遠位方向に押すステップと、伸張したフレキシブル骨格を形成するようにフレキシブル骨格が放射状に伸び、かつ、捕握部の耳部と伸張したフレキシブル骨格との間にそれぞれの生来の心臓弁がはさまれるように、フレキシブル骨格を露出させるように第1被覆体を遠位へスライドさせるステップとを含む。
【0101】
上述されている典型的な態様及び実施形態に加えて、図面を参照することによって、また、以下の記載を研究することによって、さらなる態様及び実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】図1Aは、複数の捕握部を有する人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0103】
【図1B】図1Bは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0104】
【図1C】図1Cは、人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0105】
【図1D】図1Dは、部分的に展開した状態における人工弁サポートフレームの一実施形態の透視図である。
【0106】
【図1E】図1Eは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームの一実施形態の上面図である。
【0107】
【図2】図2A及び図2Bは、戻り止めを有する複数の弁捕握部の透視図を示している。
【0108】
【図3A】図3Aは、複数の弁捕握部及び被覆材を有する扁平形状の人工弁サポートフレームを図示している。
【0109】
【図3B】図3Bは、複数の弁捕握部、係合固定具、及び、被覆材を有する扁平形状の人工弁サポートフレームを図示している。
【0110】
【図4A−4D】図4A−図4Dは、動かせるように接続された捕握部を有する人工弁サポートフレームの上面図であって、該サポートフレームが圧縮状態(図4A及び図4C)又は展開状態(図4B及び図4D)にあるものを示している。
【0111】
【図4E−F】図4E及び図4Fは、係合固定具を有する人工弁サポートフレームの圧縮状態(図4E)又は展開状態(図4F)における上面図を示している。
【0112】
【図5A】図5Aは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部であって、頂部が脚部とU形部材とを連結している弁捕握部の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0113】
【図5B】図5Bは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部であって、頂部が脚部とU形部材とを連結している弁捕握部の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0114】
【図5C】図5Cは、生体内で展開状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部であって、頂部が脚部とU形部材とを連結している弁捕握部の横断図である。
【0115】
【図5D】図5Dは、係合固定具を有する圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0116】
【図5E】図5Eは、係合固定具を有する生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0117】
【図5F】図5Fは、係合固定具を有し、かつ、生体内で展開状態にある人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の横断図である。
【0118】
【図5G】図5Gは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0119】
【図5H】図5Hは、生体内で展開状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0120】
【図5I】図5Iは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。
【0121】
【図5J】図5Jは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は係合位置にある。
【0122】
【図5K】図5Kは、生体内で展開状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。弁捕握部は組込位置にある。
【0123】
【図5L】図5Lは、生体内で圧縮状態の人工弁サポートフレーム構造に動かせるように接続された弁捕握部の一実施形態の横断図である。
【0124】
【図6A】図6Aは、サポートフレームに固定された複数の弁捕握部、複数の人工弁尖縫合線及び被覆材を有する扁平形状の人工弁サポートフレームを示している。
【0125】
【図6B】図6Bは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームであって、前記複数の弁捕握部がサポートフレームに固定され、かつ、人工弁サポートフレームが圧縮状態にあるものの上面図を示している。
【0126】
【図6C】図6Cは、複数の弁捕握部を有する人工弁サポートフレームであって、前記複数の弁捕握部がサポートフレームに固定され、かつ、人工弁サポートフレームが展開状態にあるものの上面図を示している。
【0127】
【図7A】図7Aは、生体内における被覆体を有する人工弁であって、前記サポートフレームが圧縮状態にあり、かつ、弁捕握部が組込位置にある人工弁を示している。
【0128】
【図7B】図7Bは、動かせるように接続された捕握部を有し、生来の心臓弁に配置された人工弁を示している。
【0129】
【図8A−8H】図8A−図8Hは、心臓の生来の弁の中に人工弁を埋め込むための埋め込み器具及び方法の一実施形態の略図である。
【0130】
【図9A−9Q】図9A−図9Qは、埋め込み器具における様々な埋め込み器具部材の配置を示す横断面図を含む、埋め込み器具の一実施形態のより詳細な図を提供する。
【0131】
【図10A−10C】図10A−図10Cは、弁捕握部にトラックワイヤを接続するための様々な実施形態を図示している。
【0132】
【図11A−11B】図11A−図11Bは、コントロールユニットを有する人工弁埋め込み器具の一実施形態を図示しており、この人工弁は、圧縮状態(図11A)及び展開状態(図11B)にある。
【0133】
【図11C】図11Cは、埋め込み器具コントロールユニットの一実施形態を図示している。
【0134】
【図12A】図12Aは、人工弁埋め込み器具の一実施形態を図示している。
【0135】
【図12B−12D】図12B−図12Dは、人工弁埋め込み器具の一実施形態の横断面図を提供する。
【0136】
【図13A−13D】図13A−図13Dは、埋め込み器具の一実施形態の詳細図を提供する。
【0137】
【図14A−14D】図14A−図14Dは、埋め込み器具の一実施形態のための操作ステップを図示している。
【0138】
【図15A−15C】図15A−図15Cは、埋め込み器具の一実施形態のための操作ステップを図示している。
【0139】
【図16A−16C】図16A−図16Cは、人工弁サポートフレームの他の実施形態を図示している。
【0140】
【図17A−17B】図17A−図17Bは、捕握部複合ユニットの他の実施形態を図示している。
【0141】
【図17C−17G】図17C−図17Gは、捕握部複合ユニットの脚部の他の実施形態を図示している。
【0142】
【図17H−17M】図17H−図17Mは、捕握部複合ユニット脚部の取り付け及び分離のための他の実施形態を図示する。
【0143】
【図18A−18B】図18A−図18Bは、捕握部複合ユニットの他の実施形態を図示している。
【0144】
【図18C】図18Cは、捕握部複合ユニット脚部の他の実施形態を図示している。
【0145】
【図19A−19E】図19A−図19Eは、捕握部複合ユニットの脚部に対する弁埋め込み器具の可逆的な接続の他の実施形態を図示している。
【0146】
【図20A−20C】図20A−図20Cは、捕握部複合ユニットの脚部から弁送達器具を切り離すための他の実施形態を図示している。
【0147】
【図21A−21C】図21A−図21Cは、捕握部複合ユニットの脚部に対する弁送達器具の可逆的な接続の他の実施形態を図示している。
【0148】
【図22A−22D】図22A−図22Dは、捕握部複合ユニットの脚部から弁送達器具を切り離すための他の実施形態を図示している。
【0149】
【図23】図23は、胸膜領域内に挿入された導入器具を図示している。
【0150】
【図24A−24H】図24A−図24Hは、大動脈弁置換のための経心尖部処置の略図である。
【0151】
【図25A−25L】図25A−図25Lは、心臓の生来の左房室弁の中に人工左房室弁装置を埋め込むための埋め込み器具及び方法の他の実施形態の略図である。
【0152】
【図26】図26は、下大静脈を通して埋め込み器具を進めるステップを含む人工心臓弁を送達するための経路を図示している。
【0153】
【図27】図27は、人工心臓弁を送達するための経路であって、頚静脈内に埋め込み器具を導入するステップと、上大静脈を通してその装置を進めるステップとを含む経路を図示している。
【0154】
【図28】図28は、人工肺動脈弁を送達するための経路であって、頚静脈内に埋め込み器具を進めるステップと、上大静脈を通してその装置を進めるステップとを含む経路を図示している。
【0155】
【図29A−29H】図29A−図29Hは、人工大動脈弁を埋め込むための一実施形態の埋め込み器具を使用する方法であって、大腿動脈及び大動脈弧を通して埋め込み器具を進めるステップを含む方法を図示している。
【0156】
【図30A−30C】図30A−図30Cは、人工弁を送達及び展開する方法の他の実施形態を図示している。
【0157】
【図31A−31D】図31A−図31Dは、人工弁を展開して切り離すための方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0158】
本開示は、好ましくは最小限に侵襲性の外科手術技術を使用した、弁置換術のための装置、システム及び方法を提供する。これらの装置及び方法は、身体の様々な部分の多数の様々な管において用途が存在するであろうが、機能しない心臓弁、特に、大動脈弁、肺動脈弁又は左房室弁の置換に特に適している。これらの装置及び方法は、さらにフレキシブルなインプラント人工心臓弁装置を提供し、映像に対する依存が低下した人工心臓弁の精密かつ正確な配置を保証し、人工弁のさらなる固定を提供し、弁移動の発生率を低下させる能力において、特に有利である。他の利点は、本明細書に記載されるような非縫合人工弁の送達及び移植である。
【0159】
また、本開示は、人工心臓弁を埋め込むための改良された器具及び方法を提供する。特に、心臓中の有弁解剖部位の中又は隣に、展開可能な人工心臓弁を、順行的に、経皮的に又は大腿経カテーテルによって移植するために、これらの改良された最小限に侵襲性の方法及び器具を提供する。特に、本開示の改良された人工心臓弁及び方法は、弁置換術処置においてより多くの柔軟性を提供し、映像に対する依存が低下した人工心臓弁の精密かつ正確な配置を保証し、人工弁のさらなる固定を提供し、弁の移動又は位置ずれの発生率を低下させる。
【0160】
大動脈弁を配置する方法は、一般に、患者又は対象の肋骨と左心室の心尖との間に弁送達システムを挿入し、その後、患者の疾病した弁の部位に人工弁を送達するステップを含む(経心尖部送達)。大動脈弁を配置する他の方法は、一般に、大腿動脈(大腿の送達)を通して大動脈への到達を達成することを含む。
【0161】
肺動脈弁又は左房室弁を配置するための他の方法は、一般に、頚静脈内に弁送達システムを挿入し、その後、そのシステムを上大静脈を通して右心房内に誘導するステップを含む。その後、この装置を右心室及び肺動脈弁の中に進めることができる。あるいは、この装置を、経中隔穿刺を経て左心房内に進めて、次に、左房室弁の方へ進めることができる。
【0162】
肺動脈弁又は左房室弁を配置するためのさらに別の方法は、一般に、大腿静脈内に弁送達システムを挿入し、その後、上大静脈を通して右心房内にそのシステムを誘導し、上述されているように肺動脈弁又は左房室弁の方へその装置を進めるステップを含む。
【0163】
この弁送達システム又は埋め込み器具は、患者の体の第1の開口部(例えば、大動脈又は大腿動脈又は静脈のアクセス位置)を経て、患者の大動脈、大腿動脈又は大腿静脈を通って通過するのに充分な大きさ及び長さである。代替的に、この埋め込み器具は、経胸的開口部を経て入るものであってもよく、これによって、患者の胸膜(例えば肋間部)領域を通して、頂点又は頂点付近において左心室に到達できるようになる。当業界で一般に知られているように、様々な典型的な実施形態による経胸的開口部は、導入器具、トロカール、又は、カニューレの1つである。
【0164】
少なくとも1つの送達被覆体又はカテーテルは、ガイドワイヤに沿って進められ、大動脈弁、左心房室弁、又は、肺動脈弁を通過する。これらの方法は、記載されている人工弁及び送達器具を参照して以下に記載されている。しかしながら、当業者は、本明細書に記載されている人工弁を配置する他の方法を使用することができることを理解するであろう。
【0165】
このアクセス開口部は、1つ以上の止血弁又は密封剤を含む。この止血弁又は密封剤は、処置中の血の喪失又は漏出に対抗する血液密封を提供するように構成されており、心尖において、大動脈において、又は、これら両方の位置において使用することができる。この開口部は、血の喪失又は漏出に対抗する血液密封を同時に提供しながら、埋め込み器具、カテーテル、又は、任意のツール若しくは装置が、埋め込み器具を使用して通過できるようにし、標的部位に送達されるように構成されている。そのような方法は、当業者に広く知られている。
【0166】
本明細書に記載されている装置及び方法は、ヒト、及び、以下に限定されないが、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ヒツジ及びウマを含む他の哺乳動物を含む対象に使用することができる。
【0167】
添付図面を参照しながら本発明の多数の実施形態を以下に説明する。任意の特定の一実施形態の様々な要素を他の1つ以上の実施形態において使用できることは理解されるに違いない。したがって、それらの組み合わせは、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0168】
I.人工弁
第1態様においては、初めに図1Aを参照しながら、人工弁2を提供する。人工弁2は、好ましい実施形態において人工心臓弁である。この人工弁は、鼓動心臓経心尖的処置又は逆行性経大動脈的処置等のように最小限に侵襲性のアプローチを使用して、生来の狭窄大動脈、肺動脈弁又は左房室弁等のような対象の疾病した生来の弁の中に配置されるように構成されている。そのような処置は当業者に広く知られている。
【0169】
非縫合人工心臓弁は、自己展開するサポートフレームと、人工弁尖(図1Aに示されていない)と、1つ以上の弁捕握部とを備える。弁捕握部は、サポートフレームと連続的に又は同軸的に位置することができる。サポートフレーム及び弁捕握部を、例えば動脈及び静脈を通した送達が可能になる半径に圧縮し、次に、適切な位置で弁を展開及び配置するのに必要とされるように伸張させることができるように、サポートフレーム及び弁捕握部の両方を形状記憶材料から作ることができる。
【0170】
弁捕握部をサポートフレームから近位又は遠位の位置からサポートフレームと同軸的位置に動かせるように、動かせるように弁捕握部がサポートフレームに接続されている。人工弁の送達中に、弁捕握部がサポートフレームから連続的に位置するようにすることが有利である。これは、ユーザが例えば動脈及び静脈を通して進めなければならない装置の半径を最小化することを可能にする。弁捕握部が送達処置中にサポートフレームに隣接するか又は潜在的にサポートフレームから数インチ又は数フィート離れることができるように、弁捕握部がサポートフレームから連続的に動くことができる距離は、高度に可変である。いくつかの実施形態において、弁捕握部のいずれの部分も、溶接又はその他の接着等によってサポートフレームに物理的に固定されていない。
【0171】
「動かせるように接続された(moveably connected)」(あるいは、「動かせるように取り付けられた(moveably attached)」)によって、2つの構造部材が所定時に物理的に接触することができる一方で、それらの構造部材が溶接又は接着等によって不可逆的に接続又は取り付けられていないことがわかる。例えば、本明細書に記載されている人工弁の配置の後に、弁捕握部が人工弁サポートフレームと物理的に接触している間は、弁捕握部は、サポートフレームに対して長手方向に動くことができる。また、弁捕握部の一部分は、サポートフレームから放射状に動くことができる。それに関わらず、弁捕握部は、動かせる状態でサポートフレームに接続され続ける。
【0172】
結果として、サポートフレームが圧縮状態又は非展開状態であるときに、弁捕握部は、近位方向又は遠位方向のいずれかにおいて長手軸に沿って制限なく動くことができる。いくつかの実施形態において、弁捕握部は、弁捕握部全体がサポートフレームから放射状に動くのを防ぐが、弁捕握部の一部分が、必要とされるようにサポートフレームから放射状に動くことができる態様でサポートフレームに動かせるように接続されている。サポートフレームを生来の心臓弁の中で展開又は伸張させたとき、弁捕握部は、サポートフレームと生来の弁組織との間に挟まれるようになり、少なくとも部分的に、また、完全に固定されるようにすることができる。弁捕握部は、展開した人工弁を生来の弁の中で適所に保持するように機能する。
【0173】
図1Aに示されているように、代表的な人工弁は、サポートフレーム(例えば、ステントフレーム)4を備えており、このサポートフレームは、外側面7を備え、流入・流出方向の軸(図1Aにおいて破線11によって表されている長手軸)の周囲に中央開口部9を定義する。サポートフレームは、コンパクト状態又は圧縮状態と、展開された又は配置された状態との間において放射状に展開可能である。
【0174】
サポートフレームは、以下に限定されないが、ダイヤモンド及び楕円形を含む様々な形状を有し得る格子構造であってもよい。図1Cに表されているサポートフレーム16に示されているように、サポートフレームは、複数のフレックスリンク18等のさらなる特徴を有していてもよい。図1Dに示されているように、複数のフレックスリンクを有するサポートフレームの設計は、弁サポートフレームの一部分の展開を可能にする。
【0175】
サポートフレームは自己展開することができる。いくつかの実施形態において、この自己展開サポートフレームは、指定の温度又は温度範囲において形状を変化させることができる形状記憶金属からなるものであってもよい。あるいは、この自己展開フレームは、バイアスバネを有するものを含んでいてもよい。サポートフレームを作成するための材料は、配置されたときにサポートフレームが動作する大きさ及び形状に自動的に展開することを可能にするだけでなく、患者の脈管構造を通した送達のためのより小さい形状にサポートフレームが放射状に圧縮されることを可能にする。この自己展開フレームに適した材料の例は、以下に限定されないが、医療グレードのステンレススチール、チタン、タンタル、白金合金、ニオブ合金、コバルト合金、アルジーネート、又は、これらの組み合わせを含む。形状記憶材料の例は、体内で不活性である形状記憶プラスチック、ポリマー及び熱可塑性物質を含む。ニチノールとして一般的に知られているニッケルとチタンとの比率から一般的に作成される超弾性特性を有する形状記憶合金は、好ましい材料である。
【0176】
サポートフレームの他の実施形態は図1C−図1Dに図示されている。示されているように、サポートフレーム16は複数のフレキシブルリンク18を有する。図1Dに表されているように、フレキシブルリンク18の存在及び配置は、フレキシブルリンクの片側のサポートフレームの部分が、フレキシブルリンクの反対側の部分から独立して展開又は圧縮することを可能にする。この構造的特徴の機能的意義を以下に更に詳細に説明する。
【0177】
他の代替的一実施形態において、サポートフレームは、自己展開ではなく、例えば、当業界で広く知られているようなバルーンカテーテルを使用して伸張させてもよい。
【0178】
典型的な一実施形態において、人工弁は、図1Aに図示されている弁捕握部6のような少なくとも1つの弁捕握部をさらに備える。弁捕握部を代替的に洞ロケータ(sinus locators)、弁ポジショナー(valve positioners)又は弁ハンガー(valve hangers)と称することもできる。いくつかの実施形態において、弁捕握部は形状記憶金属製である。さらなる実施形態において、形状記憶合金はニチノールである。
【0179】
典型的な一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部6は、動かせるように弁サポートフレーム4に接続されている。他の一実施形態において、送達及び配置の前に弁サポートフレーム4が圧縮状態にあるときに、少なくとも1つの弁捕握部6は、動かせるように弁サポートフレーム4に接続されている。さらに別の一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部6は弁サポートフレーム4に固定されていない。本明細書に記載されている人工弁の各弁捕握部は、弁サポートフレームと分離されていることがわかる。したがって、弁捕握部の少なくとも一部分、例えば脚部は、弁サポートフレームに接していてもよく又はそうでなければ弁サポートフレームに可逆的に取り付け若しくは接続されていてもよいが、弁捕握部のどの部分も、例えば弁サポートフレームに溶接され又はそうでなければ不可逆的に取り付けられるように固定されていない。言い換えると、弁サポートフレームに接していてもよい又はそうでなければ弁サポートフレームに可逆的に取り付け若しくは接続されていてもよい弁捕握部は、弁サポートフレームに不可逆的に固定されていない。
【0180】
一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部は、U形部材8と、代表的な脚部10のような2つの脚部とを備える。いくつかの実施形態において、弁捕握部の2つの脚部10のそれぞれは、サポートフレームの長手軸に対して略平行に位置しており、頂点5の付近でU形部材8に接続されている。いくつかの実施形態において、弁捕握部の2つの脚部のそれぞれは、第1端部及び第2端部を有し、2つの脚部の第1端部のそれぞれがU形部材8に連結されている。頂点5は、各脚部と各U形部材との間に存在する。本明細書で用いられているように、頂点(例えば頂点5)は、U形部材8と1つの脚部10との接合によって形成された頂点として定義される。一実施形態において、頂点は湾曲している。他の一実施形態において、頂点は、2つの脚部10が互いに対して略平行となるように湾曲している。いくつかの実施形態において、2つの脚部の第2端部が自由端である。
【0181】
さらなる実施形態において、1つ以上の脚部の第2の末端又は端部は、図2Aに示されているように戻り止め12(脚又は返しとも称される)で終端する。戻り止め12は、ニチノール等の形状記憶合金製であってもよい。いくつかの用途についてはこの戻り止めが人工弁の長手軸に対して平行な方向に向いているが、他の用途についてはこの戻り止めが長手軸に対して角度を成す方向に向いている。例えば、コンパクト状態において及び/又は人工弁が被覆体に入っているときに、この戻り止めは、人工弁サポートフレームの長手軸に対して略平行であってもよい。あるいは、人工弁が展開状態にあるときに、戻り止めは、人工弁又は脚部の長手軸に対して角度を成す方向に向いていてもよい。他の実施形態においては、戻り止めが可変の長さを有していてもよい。いくつかの実施形態において、脚部は、例えば、人工弁の配置後にジグザグ形状又はコイル形状を有していてもよい。この戻り止めは、人工弁が生来の弁に配置された後に、弁捕握部を弁サポートフレームに固定するのを助ける。
【0182】
いくつかの実施形態において、サポートフレームの長さはLであり、脚部の長さは少なくともLである。他の実施形態においては脚部の長さがL以下である。
【0183】
当業者は、2つの脚部を連結する部材の形状がU形状であるように限定されないことを理解するであろう。U形部材は、以下に限定されないが、長方形、正方形、ダイヤモンド、三角形、楕円形、円、又は、これらの形状の組み合わせを含む他の形状を有していてもよい。U形部材は、生来の弁洞の底部に対して又は生来の弁尖の接合部に隣接して、係合及び/又は静止できるようになるあらゆる形状であり得る。
【0184】
少なくとも1つの弁捕握部はサポートフレームの長手軸に沿って可動である。弁捕握部がサポートフレームから離れて設置されている場合、例えば、弁捕握部のU形部材がサポートフレームの近位端に対して遠位の位置にある場合、及び/又は、弁捕握部のU形部材がサポートフレームとほぼ完全に重なっていない場合等には、この位置を係合位置と呼ぶ。この位置において、弁捕握部のU形部材8は、脚部及び圧縮状態にあるサポートフレーム4の長手軸から放射状に伸びていてもよい。
【0185】
生体内において、弁捕握部が組込位置にある場合、捕握部頂点5はサポートフレーム4の遠位端にほぼ隣接している。あるいは、U形部材の少なくとも一部分が生来の洞の底部又は弁の生来の弁尖の接合部に接触又は隣接している場合には、弁捕握部が組込位置にある。いくつかの実施形態において、脚部10のような脚部が人工弁サポートフレームの長さLとほぼ同じ長さLを有し、かつ、弁捕握部6のような弁捕握部が人工弁サポートフレーム4とほぼ完全に重なるように位置している場合には、この位置を組込位置と称する。
【0186】
第2の態様において、図1Bに図示されているように、人工弁20は、弁サポートフレーム22と中央開口部32とを備える。サポートフレーム22は、圧縮状態と展開状態との間において放射状に展開することができる。サポートフレーム22は、外側面又は外部面30を有しており、軸(図1Bに破線34によって表されている長手軸)の周囲に中央開口部32を定義する。長手軸は流入・流出軸に一致する。いくつかの実施形態において、人工弁は複数の人工弁尖(図1Bに示されていない)をさらに備える。
【0187】
この実施形態において、人工弁20は少なくとも1つの弁捕握部24をさらに備える。少なくとも1つの弁捕握部24はU形部材26を備える。U形部材26は、図1Bにあるように、それぞれ自由端で終端する2つの直線部分(例えば28)に該U形部材の近位端において接続された湾曲部分を有する。
【0188】
いくつかの実施形態において、弁捕握部24の直線部分は、人工弁20の配置後に直線状のままである。他の代替的一実施形態において、少なくとも1つの弁捕握部24の直線部分の少なくとも一部分は、形状記憶材料製であってもよく、捕握部6について図2Bに示されているように、人工弁20の配置後に、例えばジグザグ形状又はコイル形状を有していてもよい。
【0189】
少なくとも1つの弁捕握部24は、動かせるようにサポートフレーム22に接続されており、サポートフレーム22の長手軸に沿って動くことができる。弁捕握部24がサポートフレームから離れて設置されている場合、例えば、弁捕握部24の自由端がサポートフレームの近位端に対して近位の位置にある場合、及び/又は、弁捕握部24がサポートフレームと完全に重なっていない場合等には、この位置を係合位置と呼ぶ。この位置において、弁捕握部24の少なくとも1つのU形部材26は、圧縮状態にあるサポートフレーム22の長手軸から放射状に伸びていてもよい。
【0190】
生体内において、弁捕握部24が組込位置にある場合には、少なくとも1つのU形部材26の少なくとも一部分は、生来の洞の底部に接触若しくは隣接しているか、又は、生来の弁接合部に隣接している。
【0191】
いくつかの実施形態において、動かせるようにサポートフレーム4又は22に接続された複数の弁捕握部6又は24は、様々な弁置換処置に適合するように、又は、置換される生来の弁の解剖構造に従うように、それぞれ、2個、3個、4個、5個又はそれ以上の弁捕握部であってもよい。特定の一実施形態において、人工弁における弁捕握部の数は3である。
【0192】
一実施形態において、複数のU形部材8と複数の脚部10とを備える単一の弁捕握部を作成するために、動かせるようにサポートフレーム4に接続された複数の弁捕握部6を連結することができる。
【0193】
人工弁2及び20は、本明細書に記載されているように、その人工弁を通る液体の一方向の流れのための可逆的に密封できる開口部を定義する表面を有する複数の人工弁尖をさらに備えていてもよい。この人工弁は、3個の弁尖形態のために3個の弁尖を含んでいてもよい。理解できるように、1個の弁尖、2個の弁尖、及び/又は、複数の弁尖の形態があり得る。人工弁の管腔を通る液体の流れを橋渡し及び制御するために、例えば、弁尖を弁フレームに連結することができる。
【0194】
いくつかの実施形態において、弁尖は、合成素材、人工の生物組織、生体弁の弁尖組織、心膜組織、架橋させた心膜組織、又は、これらの組み合わせで構成される。他の実施形態において、心膜組織は、以下に限定されないが、ウシ組織、ウマ組織、ブタ組織、ヒツジ組織、ヒト組織、又は、これらの組み合わせからなる群より選択される。弁尖縫合線(例えば、図3Aに示されている縫合線19)に沿って、人工弁尖を弁サポートフレーム4又は22に縫いつけることができる。図3Aは、サポートフレームを広げた図である。他の実施形態において、弁尖は、当業者によって理解される他の同等の方法によってサポートフレーム4又は22に固定される。
【0195】
いくつかの実施形態において、人工弁2又は20のサポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に囲まれている。これは、人工弁2のサポートフレーム4に関する図3Aに表されており、この図においてサポートフレームは被覆材(移植片被覆材)15によって囲まれている。軽量で、強く、液体不浸透性のあらゆる適切な生体適合材料を使用することができる。あらゆる適切な態様で、かつ、あらゆる適切な手段によって被覆材を取り付けることができる。この被覆材は、例えば、サポートフレームに可逆的に取り付けられていてもよいし又は永続的に取り付けられていてもよい。この被覆材は、人工弁サポートフレームの外表面及び/又は内表面に配置されていてもよい。この被覆材は、縫合、ステープル、化学/熱接着、及び/又は、接着剤を使用して、フレームに取り付けられていてもよい。いくつかの実施形態においては被覆材が布である。さらなる実施形態において、この布は、例えば、ナイロン(商標)、ダクロン(商標)若しくはテフロン(商標)から選択される商品名によって特定される材料で構成されるか、又は、発泡させたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、及び/又は、他の材料である。
【0196】
一実施形態において、被覆材はシーリング材をさらに含んでいてもよい。シーリング材は、多糖類、タンパク及び生体適合性ゲルを含む一般的な種類の材料から選択され得る。以下に限定されるものではないが、これらの高分子材料の特定の例には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン(PVP)、ポリ(エチルオキサゾリン)(PEOX)、ポリアミノ酸、擬似ポリアミノ酸及びポリエチルオキサゾリンに由来するもの、並びに、これらの重合体の共重合体、又は、これらの重合体と他の水溶性ポリマー若しくは不溶性ポリマーとの共重合体が含まれる。多糖類の例には、アルギネート、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン、硫酸デキストラン、ヘパリン、ヘパリンスルフェート、ヘパランスルフェート、キトサン、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム、水溶性セルロース誘導体及びカラギーナンに由来するものが含まれる。タンパクの例には、天然由来又は組み換え由来で生産されるかに関わらず、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、ゼイン及びアルブミンに由来するものが含まれる。前記材料は、血栓形成を調整するもの、細胞の内方増殖、貫通増殖(through-growth)及び内皮細胞増殖を促進するもの、感染に対抗するもの、及び、カルシウム沈着を低減するものを含む生物活性剤であってもよい。被覆材は、サポートフレームの内表面及び/又は外表面に存在していてもよく、また、サポートフレームを部分的に囲むように又はサポートフレームを完全に囲むように配置されていてもよい。
【0197】
一実施形態において、弁捕握部6の少なくとも1つの脚部10の少なくとも一部分は、サポートフレーム4とサポートフレーム4の表面の被覆材との間に配置されている。この実施形態において、被覆材は、動かせるように弁捕握部6をサポートフレーム4に接続するように、少なくともある程度は機能することができる。一実施形態において、第1端部において少なくとも1つのU形部材8と固定された少なくとも1つの脚部10は、長手軸11に対して平行に動くことができ、少なくとも1つの脚部10の少なくとも一部分又は大部分は、被覆材とサポートフレーム4との間に位置することができる。
【0198】
一実施形態において、弁捕握部24のU形部材26の湾曲部分及び/又は直線部分28の一部分は、サポートフレーム22と該サポートフレームの表面の被覆材との間に配置されている。この実施形態において、被覆材は、動かせるように弁捕握部24をサポートフレーム22に接続するように、少なくともある程度は機能することができる。一実施形態において、弁捕握部24の2つの直線部分は、長手軸32に対して平行に動くことができ、弁捕握部の少なくとも一部分又は大部分が被覆材とサポートフレームとの間に位置する。
【0199】
一実施形態において、サポートフレーム4又は22は、人工弁が配置される領域における組織増殖を促進及び/又は支援する材料で囲まれていてもよい。あるいは、組織増殖を促進及び/又は支援する材料を被覆材中に埋め込み又は組み入むこともできる。
【0200】
他の代替的一実施形態において、図3Bに示されているように、サポートフレーム14は、係合固定具46のような複数の係合固定具をさらに備える。係合固定具は、サポートフレームに直接固定されていてもよいし、又は、サポートフレームの一部分として製造されてもよい。係合固定具の各セットは、サポートフレームの長手軸に沿って直線的に配置されたいくつかの係合固定具によって形成されている。係合固定具の各セットのうちの代替的な係合固定具において、各係合固定具は、開いた側が反対方向に向いた半円形であってもよい。弁捕握部の脚部は、係合固定具の各セットによって形成された開口部を通して挿入される。
【0201】
図3A及び図3Bは、サポートフレームが被覆材15で囲まれている実施形態を図示している。
【0202】
弁送達中に、人工弁のサポートフレームは最初に圧縮状態にある。コンパクトである(サポートフレームから放射状に伸びていない)弁捕握部が係合位置と組込位置との間において動くことができる実施形態においては、弁送達中の弁捕握部が係合位置にあり、弁捕握部がサポートフレームに対して遠位又は近位に位置する。人工弁が生体内で置換弁が必要とされる所望の位置に又は該位置の近くにある場合、図4Aにおける弁捕握部6a、6b、6cのような弁捕握部は、生来の心臓弁の洞に接触してその中に固定されるように、開いた状態又は展開状態に移行する。その後、サポートフレーム4は、図4A及び図4Bに示されているように展開状態に移る。圧縮状態にあるサポートフレームに動かせるように接続された複数の弁捕握部6a、6b、6cは、上から見えように図4Aに示されている。図4Bは、展開状態にあるサポートフレーム4と共に複数の弁捕握部を示している。図4Cは、係合固定具46a、46b、46cを有するサポートフレーム14を示しており、そのサポートフレーム14は圧縮状態にあり、弁捕握部47a、47b、47cのU形部材は、生来の心臓弁の洞に接触してその中に固定されるように、開いた状態又は展開状態にある。図4Dは、展開状態のサポートフレーム14と共に複数の弁捕握部を示している。図4E及び図4Fは、係合固定具46a、46b、46cを有するサポートフレーム14を示しており、サポートフレーム14は、圧縮状態(図4E)及び展開状態(図4F)にある。
【0203】
図5Aは、動かせるようにサポートフレーム4に取り付けられた弁捕握部6を生来の心臓弁尖30と関連して図示している。サポートフレームが圧縮状態にあるときには、弁捕握部6が係合位置(図5A)から組込位置(図5B)に動くことができ、弁捕握部6は、サポートフレームに隠れた配置又はサポートフレームとの同軸的な配置にあり、U形部材8は、生来の心臓弁尖30(図5B参照)の洞(例えば、大動脈洞、左房室弁洞、肺動脈洞)とほぼ接触している。1つ以上のさらなる人工弁尖(図示せず)と共に、開口部の中に一方向弁を提供するために、人工弁尖36は、サポートフレーム4に取り付けられており、人工弁の開口部の中に延在する。図5Cに示されているように、サポートフレーム4が放射状に伸張して展開状態になった後に、生来の弁尖30の少なくとも一部分は、U形部材8とサポートフレーム4との間にはさまれる。図5A−図5Cにも示されているように、いくつかの実施形態において、被覆体15は、サポートフレームに隣接する脚部を保持するようにある程度は機能することができる。
【0204】
図5D−図5Fは、係合固定具46a、46b、46cと共にサポートフレーム14を示している。弁捕握部は、生来の弁洞の上方にあり、かつ、係合位置にある(図5D)。弁捕握部は、U形部材11が生来の弁洞と接触できるように弁洞の方へ移動している(図5E)。生来の弁尖30の少なくとも一部分がU形部材11とサポートフレーム14との間にはさまれるように、サポートフレーム14が放射状に展開している(図5F)。
【0205】
図5G−図5Iに示されている他の一実施形態において、弁捕握部24は、動かせるようにサポートフレーム22に接続されている。図5Gにおいて、係合位置にある弁捕握部24は、生来の弁の上方にあり、サポートフレーム22から放射状に伸びている。上述されているように、サポートフレーム22が圧縮状態にあるときに、弁捕握部24は、係合位置(図5G)から組込位置(図5H)に動くことができ、弁捕握部24は、サポートフレームに隠れた配置又はサポートフレームとの同軸的な配置にあり、U形部材26は、生来の心臓弁尖30の洞とほぼ接触している。次に、図5Iに示されているように、生来の弁尖30の少なくとも一部分が弁捕握部24とサポートフレーム22との間にはさまれるように、サポートフレーム22は放射状に伸びて展開状態になる。図5G−図5Iにも示されているように、いくつかの実施形態において、サポートフレームの被覆材15は、サポートフレームに対して弁捕握部の位置を適切に決定するように、ある程度は機能することができる。
【0206】
他の代替的一実施形態において、弁捕握部71は、人工弁のサポートフレーム73に固定されている(例えば、接着又は溶接されている)。図5Jは、生来の弁の上方において係合位置にある固定捕握部71と共に人工弁を示す横断図である。図5Kにおいて、人工弁は組込位置に移動している。一方で、図5Lにおいては、サポートフレーム73が放射状に伸びて展開状態になっており、弁捕握部71が生来の弁尖とサポートフレーム73との間にはさまれている。
【0207】
代表的な弁捕握部71のような複数の弁捕握部が人工弁サポートフレーム44に固定された代替的実施形態が図6A−図6Cに示されている。この実施形態において、各弁捕握部は、例えば溶接によって、サポートフレームに直接固定されている。他の実施形態において、弁捕握部はサポートフレーム44の一部分として製造される。図6Aの展開図に示されている人工弁にも、人工心臓弁がサポートフレームに固定される線47、及び、サポートフレーム上の選択的な被覆材48が示されている。
【0208】
図6Bは、弁捕握部71を有する弁サポートフレーム44の上面図であり、この図においては、弁捕握部71がサポートフレームに永続的に固定されており、サポートフレーム44が圧縮状態にある。図6Cは、同じ弁サポートフレームを捕握部と共に示しており、この図においてサポートフレームは展開状態にある。
【0209】
図7A及び図7Bは、生体内で動かせるように接続された捕握部と共に非縫合人工弁を図示している。図7Aにおいて、サポートフレーム90は、圧縮状態にあり、かつ、被覆体96によって囲まれており、また、弁捕握部92は、生来の弁の中でサポートフレームが放射状に伸張する前に組込位置にある。埋め込み器具の一部分は96として示されている。弁捕握部の係合部分(例えば、U形部材又は湾曲部分)は、生来の弁洞と接触又は係合している。図7Bは、弁の送達及び配置の後、かつ、弁送達器具の除去後にサポートフレームが展開状態にある同じ弁を示している。心臓弁輪における人工弁の固定を容易にするために、生来の心臓弁尖94は、弁捕握部とサポートフレームとの間にはさまれている。人工弁の弁捕握部と人工サポートフレームとの間に生来の心臓弁尖がはさまれるようなサポートフレームの位置取りは、すべての冠状静脈弁(すなわち、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、及び、左房室弁)に適用できると考えられる。いくつかの実施形態において、弁捕握部の数は、治療される生来の弁の内部の生来の弁尖の数と同じになると考えられる。
【0210】
本明細書に記載されている弁人工弁は、本明細書に記載されている埋め込み器具の様々な態様において、又は、人工弁を対象に埋め込むための当業者が知るあらゆる方法若しくは装置において使用され得る。
【0211】
II.人工の大動脈弁、肺動脈弁又は左房室弁を送達するための埋め込み器具
第3の態様において、人工弁を送達するための埋め込み器具を提供する。一般的な一実施形態において、その埋め込み器具は、上述されている人工弁2のような人工弁と、以下に記載されている送達器具とを備える。
【0212】
埋め込み器具の一実施形態において、図8A−図8H及び図9A−図9Qに図示されているように、埋め込み器具100は、例えば、大動脈心臓人工弁の心尖部(順行性)送達のために、上大静脈を通した人工肺動脈弁の経皮的送達のために、又は、下大静脈を通した人工左房室弁装置若しくは人工肺動脈弁の送達のために設計されている。当業者は、これらの最小限に侵襲性の処置を容易に理解する。
【0213】
埋め込み器具の一実施形態において、図8A−図8H及び図9A−図9Qに図示されているように、埋め込み器具100は、大動脈心臓人工弁の心尖部送達のために設計されている。埋め込み器具100は、250によって図8Aに一般的に示されているコントロールユニットを含み、一実施形態においては、以下に説明するように、いくつかの個別の独立したコントローラを備える。送達器具100は、圧縮状態にある人工弁サポートフレーム(例えば、サポートフレーム102)を完全に又は部分的に囲む第1被覆体120と、第1被覆体120に対して遠位に位置し、かつ、少なくとも1つの弁捕握部(例えば、弁捕握部106)を囲む第2被覆体130とを含む。一実施形態において、送達器具100は、第1被覆体120に対して近位に位置するトラックワイヤコントローラ200(あるいはトラックケーブルコントローラと呼ばれる)をさらに含む。他の一実施形態において、送達器具100には、トラックワイヤコントローラ200から遠位に伸び、かつ、弁捕握部の脚部の近位端に接触することができる少なくとも1つのトラックワイヤ150(あるいはトラックケーブルと呼ばれる)がさらに備えられている。一実施形態において、トラックワイヤコントローラ200は、少なくとも1つのトラックワイヤの近位端に接続された少なくとも1つのリリーススイッチ210を備える。いくつかの実施形態において、送達器具100は第2被覆体を有しない。この送達器具は、人工弁を送達するためにこの送達器具が沿って進むことができるガイドワイヤ110を挿入できるようにするための中空の中心部を有するように設計されている。
【0214】
第1被覆体120は、円柱形であり、中空である。第1被覆体は、直線状であってもよいし又は湾曲していてもよい。当業者が容易に理解するように、第1被覆体の長さ及び柔軟性は、送達方法に応じて変わるであろう。例えば、大腿動脈を経由した人工弁の送達は、入り口の位置から治療を必要とする生来の弁まで伸びるように充分に長いフレキシブルな被覆体を必要とする。第2被覆体130は、中空であり、たいていは円柱形である。第2被覆体130の遠位部分は、湾曲した円錐又は尖った先端のような異なる形状を有していてもよい。一実施形態において、第2被覆体130の遠位端は、ガイドワイヤが通過できる開口部を有していてもよい。
【0215】
一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤ150の遠位端が弁捕握部106の脚部107の自由端に接触するように、少なくとも1つのトラックワイヤ150が少なくとも1つの弁捕握部106に接触している(図9J−図9L参照)。一実施形態において、トラックワイヤ150は、例えば、1つ以上の他のケーブル又はワイヤを挿入できるようにするために、中空である。典型的な一実施形態において、中空のトラックワイヤ150は、図9J−図9Lにあるように、コントロールユニットの近位端の辺りからトラックワイヤ150の遠位端の辺りまで延在するロックワイヤ220を囲んでいる。他の一実施形態において、ロックワイヤは、その近位端においてロックワイヤ支持体190に固定されている(図9M)。さらに別の一実施形態において、ロックワイヤは、遠位端にロック部材230を備える(図9L)。
【0216】
図9I−図9Lに詳細に示されているように、いくつかの実施形態において、トラックワイヤ150は、例えば、図9K−図9Lにおける107a及び107bのような、2つの異なる独立した弁捕握部106の2つの脚部と、弁ロックワイヤ220とを囲んでいる。脚部と、ロック部材を有するロックワイヤとのこの配置が、トラックワイヤの内部の部材の摩擦嵌合を生じさせ、それによって2つの異なる弁捕握部の脚部が中空のトラックワイヤの中に固定されること、及び、ロックワイヤのロック部材がトラックワイヤの遠位端の辺りで2つの脚部に隣接することは、当業者が理解するであろう。
【0217】
当業者は、トラックワイヤ150のようなそれぞれのトラックワイヤを、コントロールユニット、トラックワイヤコントローラ200及び/又はリリーススイッチ210に固定する様々な機構を構想することができる。例えば、トラックワイヤ150のそれぞれの近位端は、コントロールユニットの種々の部材に溶接又は接着されていてもよい。あるいは、トラックワイヤ150の長さの割にはより柔軟性が高くなるように、トラックワイヤ150の近位端は、それぞれ、様々な部材の周囲を湾曲していてもよいし、又は、様々な部材を通るものであってもよい。
【0218】
いくつかの実施形態において、人工弁サポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に囲まれており、トラックワイヤは、動かせるようにトラックワイヤを1つ以上の弁捕握部及びサポートフレームに固定するために、サポートフレームと被覆材との間に配置される。
【0219】
一実施形態において、送達器具は、コントロールユニットに固定された近位端と、人工弁102の近位端との接触のための遠位端とを有する人工弁プッシャワイヤ170(あるいは、プッシャケーブルと呼ばれる)をさらに備える。プッシャワイヤの様々な実施形態が図9M−図9Qに詳細に示されている。埋め込み器具は、1個、2個、3個、4個又はそれ以上の人工弁プッシャワイヤを備えていてもよい。他の一実施形態において、埋め込み器具のコントロールユニットは、プッシャワイヤコントローラ165(あるいは、プッシャケーブルコントローラと呼ばれる)をさらに備える。図9Mに示されている一実施形態において、人工弁プッシャワイヤ170の近位端の辺りがプッシャワイヤコントローラ165に固定されている。プッシャワイヤは、人工弁の近位端の辺りからプッシャワイヤコントローラに対して近位に伸びる。人工弁プッシャワイヤは、中空又は非中空であってもよく、また、ワイヤ、プラスチック又は他の適切な材料から作られたものであってもよい。他の一実施形態において、埋め込み器具は、プッシャワイヤコントローラから長手方向で遠位方向に伸びるプッシャワイヤ支持部材を備える。プッシャワイヤ支持部材は、長さが可変であってもよく、ユーザがプッシャワイヤコントローラを使用して、人工弁の近位端に対して遠位方向に圧力を加えることを可能にするように機能する。一実施形態において、プッシャワイヤ支持部材は、形状が円柱形であり、長手軸が第1被覆体の長手軸に対して平行である。他の一実施形態において、プッシャワイヤ支持部材は中空である。さらに別の一実施形態において、少なくとも1つのプッシャワイヤはプッシャワイヤ支持部材の外側に配置されている。他の代替的一実施形態において、少なくとも1つのプッシャワイヤはプッシャワイヤ支持部材の内側に配置されている。さらなる実施形態において、人工弁プッシャワイヤ170の少なくとも一部分は、その長さに沿ってプッシャワイヤ支持部材に対して固定されている。この実施形態は図8F−図8Hに示されている。プッシャワイヤ支持体は、その近位端においてプッシャワイヤコントローラ165に対して固定されている。
【0220】
いくつかの実施形態において、人工弁プッシャワイヤ170の遠位端は、人工弁の近位端と可逆的に係合するためのプッシャワイヤエンゲージャ175で終端する。人工弁の係合部材が、例えば、図9O−図9Qに示されているような様々な形態を備えていてもよく、また、例えば、1個、2個又は3個以上の突起を備えていてもよいことは、当業者に容易に理解されるであろう。
【0221】
当業者は、例えばコントロールユニット又はプッシャワイヤコントローラ165にプッシャワイヤのそれぞれを固定する多様な機構を構想することができる。例えば、各プッシャワイヤの近位端は、コントロールユニットの種々の部材に溶接又は接着されていてもよい。あるいは、プッシャワイヤの長さの割にはより柔軟性が高くなるように、プッシャワイヤの近位端は、それぞれ、様々な部材の周囲を湾曲していてもよいし、又は、様々な部材を通るものであってもよい。
【0222】
一実施形態において、埋め込み器具は、第2被覆体130と、遠位端において第2被覆体に接続された第2被覆体コントロールケーブル140(中央コントロールケーブル)とを備える。図8Fに示されている実施形態において、第2被覆体130は、ノーズコーンの形態をとることができ、第1被覆体から遠位に配置されている。第1被覆体と第2被覆体とが同軸上にある実施形態が意図されている。第2被覆体コントロールケーブル140の遠位端は、第2被覆体130の近位端若しくは遠位端に、又は、第2被覆体130の近位端と遠位端との間の位置に取り付けられていてもよい。さらに別の一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブル140の近位端は、第2被覆体コントローラ135に固定されている。他の一実施形態において、第2被覆体は、圧縮状態にある複数の弁捕握部(例えば弁捕握部106)のそれぞれを囲んでいる。第2被覆体コントローラは、送達器具の、第2被覆体に対して固定されていない部分と独立して、第2被覆体を近位方向又は遠位方向にユーザが移動させることを可能にするように機能する。
【0223】
コントロールユニットは、本明細書に記載されていて図8A−8Hに示されている埋め込み器具の種々の部材をユーザが独立して制御できるようにする。コントロールユニットは、ユーザによるトラックワイヤ150の独立制御を提供するためのトラックワイヤコントロールユニット200を備える。この装置中の1つ以上のトラックワイヤは、近位端においてトラックワイヤコントロールユニットに接続されている。少なくとも1つのトラックワイヤ150の遠位端は、弁捕握部106の脚部との接触を構成することができる。トラックワイヤコントロールユニット200は、リリーススイッチ210のような少なくとも1つのリリーススイッチを備えており、少なくとも1つのトラックワイヤは、その近位端において少なくとも1つのリリーススイッチに固定されている。他の一実施形態において、埋め込み器具100は、近位端においてリリーススイッチ210に固定されたトラックワイヤ150のように、近位端においてリリーススイッチにそれぞれ取り付けられた2つのトラックワイヤを備える。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具100は、近位端においてリリーススイッチにそれぞれ取り付けられた3つのトラックワイヤを備える。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具100は、近位端において同一の又は異なるリリーススイッチにそれぞれ取り付けられた4つ、5つ又はそれ以上のトラックワイヤを備える。複数のトラックワイヤ150のそれぞれは、以下により完全に説明するように、遠位端において人工弁中の弁捕握部106の1つとの接触を生じさせることができる。
【0224】
上に示されているように、少なくとも埋め込みの前に、埋め込み器具は、第1被覆体120のように、圧縮状態にある人工弁を囲む第1被覆体を備える。一実施形態において、埋め込み器具100のコントロールユニット250は、第1被覆体コントローラ125をさらに備えていてもよい。第1被覆体コントローラ125は、図8A−図8Hに示されている典型的な実施形態において、第1被覆体120に固定されている。この実施形態において、第1被覆体コントローラ125は、第1被覆体120のおおよそ近位端の両側に固定された2つの部材を有する。第1被覆体コントローラ125は、多様な形状を有していてもよく、また、近位方向又は遠位方向における第1被覆体の移動をユーザがコントロールできるようにする1つ以上の部材を有してもよいことがわかる。第1被覆体コントローラは、第1被覆体120に固定された1個、2個、3個又はそれ以上の部材を備えていてもよい。埋め込み器具の近位端に位置するユーザの手による被覆体の制御のために、第1被覆体コントローラが第1被覆体に対して近位に位置してもよいことも理解されるであろう。
【0225】
第1被覆体中の圧縮状態の人工弁サポートフレーム102は、第1被覆体120の長手軸に沿ってどこにでも位置することができる。一実施形態において、図9Aに図示されているように、人工弁サポートフレーム102は、第1被覆体120のおおよそ遠位端に位置しており、第1被覆体120の遠位端に完全に囲まれている。
【0226】
一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブル140は中空である。他の一実施形態において、ガイドワイヤ110は、中空の第2被覆体コントロールケーブルを通して入れることができる。
【0227】
埋め込み器具のコントロールユニットは、単一の構造単位又は複数の独立した構造単位を備えていてもよい。コントロールユニットの一実施形態は図8Aに図示されている。この実施形態において、コントロールユニット250は、第2被覆体コントローラ135と、ロックワイヤ支持体190と、少なくとも1つのリリーススイッチ210を有するトラックワイヤコントローラ200と、プッシャワイヤコントローラ165と、第1被覆体コントローラ125とを備え、これらのそれぞれは他のものから独立して制御可能である。
【0228】
トラックワイヤ150の遠位端を弁捕握部106の近位の自由端に可逆的に取り付ける手段のための複数の他の実施形態が存在する。これらは、図10B及び図10Cに示されるロック機構を含んでおり、当業界で広く知られている。
【0229】
図8A−8Fは、人工弁を生来の心臓弁構造中に配置及び展開することに使用されるときの送達器具100の構成を示している。図8Aは、前記装置を患者に挿入する前の構成の送達器具100である。サポートフレームが第1被覆体の中に詰め込まれ、かつ、弁捕握部が第1被覆体から遠位にある第2被覆体の中に詰め込まれるように、人工弁が圧縮状態で送達器具の中に詰め込まれている。通常の実施のように、ガイドワイヤを最初に経心尖的処置によって患者の中に、例えば、大腿動脈又は左心室の中に導入し、さらに、そのガイドワイヤを、治療を必要とする生来の心臓弁を過ぎて又は越えて適切な心腔内に前進させる。
【0230】
図8Bは、通常、治療を必要とする生来の弁を過ぎた遠位方向に、第2被覆体及び囲まれた捕握部の両方を移動させることを示している。第2被覆体に合わせて捕握部を移動させるためにトラックワイヤコントローラ200を使用することができる一方で、第2被覆体を移動させるために第2被覆体コントローラ135を使用することができる。いくつかの実施形態においては、送達器具が第2被覆体を含んでいなくてもよいことがわかる。
【0231】
図8Cは、弁捕握部を静止したままに保持しながら、第2被覆体を遠位方向に移動させることによって、第2被覆体から弁捕握部を切り離すことを示している。弁捕握部が生来の弁に向かって近位方向に移動するときに、弁捕握部が生来の弁尖と弁輪との間において弁の洞に「引っかかる」ような弁捕握部の方向に注目されたい。この理由で、送達器具から遠ざかるように湾曲している生来の弁を通して送達器具100が進むことができる生来の弁であればどこでも、生来の弁の中に人工弁を送達及び展開するのに送達器具100が有用であることがわかる。例えば、装置100は、経心尖的アプローチによって大動脈弁を埋め込むために、又は、前記装置が経心尖穿刺の経路で右心房から左心房に入ったときに左房室弁を埋め込むために、有用である。以下においてそのような方法をより完全に検討する。
【0232】
図8Dは、弁サポートフレームの遠位端が弁捕握部の頂点とほぼ隣接するまで、弁サポートフレームが入っている第1被覆体が遠位方向に押し込まれた送達器具を示している。弁サポートフレームの長さL及び弁捕握部脚部の長さLは、サポートフレームの遠位端が弁捕握部の頂点に接するときに、弁尖を有する弁フレームが展開のための準備が整った位置にあるような長さである。送達器具の近位及び遠位の操作中の任意の時に、ユーザは、弁捕握部の位置決定に必要とされるように、前記装置を回転させることもできる。
【0233】
図8Eは、展開状態にある人工弁サポートフレームを示している。第1被覆体は、サポートフレームを露出させるように近位方向に引っ張られている。一方で、弁プッシャワイヤ及びトラックワイヤは、弁サポートフレームを静止したまま保持するように少なくともある程度は機能していた。ここにおいて、第1被覆体コントローラを引っ張ることによって、第1被覆体が近位方向に引っ張られたことを示している。
【0234】
図8Fは、トラックワイヤコントローラの中のリリーススイッチが近位方向に引き戻され、一方で、コントロールユニットの他の部分が固定したままに保持されたことを示している。ロックワイヤ及びロック部材を静止させたままで、リリーススイッチを近位方向に引くことによって、トラックワイヤが近位方向に引っ張られ、それによって、トラックワイヤの中に弁捕握部の脚部を保持する摩擦力をなくす。図8Fに示されているように、この位置において、プッシャワイヤは、弁サポートフレームと係合したままであってもよい。
【0235】
図8Gは、プッシャワイヤコントローラが近位方向に引っ張られ、それによってプッシャワイヤが近位に引っ張られ、プッシャワイヤがもはや弁サポートフレームに接触していないことを示している。
【0236】
図8Gは、第1被覆体が第2被覆体の近位端に接するまで遠位方向に押されたことを示している。これは、送達器具を患者の体から除去するときに生じ得る第2被覆体の近位端との接触によるダメージから周辺組織を保護するように機能する選択的なステップである。
【0237】
図8Hは、第2被覆体コントローラを引くことによって、第2被覆体及び第1被覆体が近位方向に移動したことを示している。送達器具を患者から除去するときに、ユーザが送達器具の個々の部材及び送達器具コントロールユニットの部材を引き戻す多数の方法が存在することは、当業者が理解できる。
【0238】
図9B−図9Hは、図9Aに示されている様々な位置に沿った送達器具100の横断図を提供する。図9I−図9Lは、トラック部材150及びロックワイヤ107の詳細な図を示している。
【0239】
図31A−図31Dは、弁捕握部の近位への移動及び遠位への移動を操作するためにロックワイヤ及びロック部材を使用する人工弁の送達を示している。図31Aは、人工弁の送達及び展開の前における、人工サポートフレーム960、捕握部952a、b、c、中空のトラックワイヤ954a、b、c、及び、ロック部材956a、b、cの位置取りを表している。捕握部は弁サポートフレームから遠位に位置する。示されていないが、サポートフレーム960は、上述されているように被覆体中で圧縮された形態にある。捕握部952a、b、cは、別々の被覆体中に圧縮されていてもよい。958で表された脚部被覆材の選択的な存在も示されている。脚部被覆材は、例えば、以下でより詳細に検討されているようなフレキシブルな布から作ることができる。この実施形態は、中空のトラックワイヤ954a、b、cの中に詰め込まれた脚部の各組を囲むために、3つの脚部被覆材を有していてもよい。
【0240】
捕握部952a、b、cを生来の弁洞の内部、例えば、生来の弁洞の底部に適切に配置した後に、図31Bに示されているように、人工弁尖を有するサポートフレーム960を、捕握部頂点966a、b、cに接するように遠位方向に押す。この装置は、配置する前の捕握部及びサポートフレームの位置決定に関する順応性を実施者に提供する。いくつかの場合において、捕握部は、生来の弁尖の端の上に位置していてもよい。サポートフレーム960を配置及び展開した後に、脚部の自由端及びそれぞれの戻り止め(その1つは962として図31C−図31Dに示されている)を露出させるために、トラックワイヤ954a、b、cを近位方向に引っ張る。この戻り止めは、形状記憶材料製であってもよく、長手軸から突出するように変形している。これらの戻り止めは、捕握部と配置された弁サポートフレームとの間のより安定した接続を作るように機能する。
【0241】
図31Dに示されているように、その後に、ロック部材956a、b、cで終端するロックワイヤ(図31C、964a、b、c)は、配置された人工弁から分離させるために近位方向にそれぞれ引っ張られる。
【0242】
トラックワイヤを弁捕握部に可逆的に接続するための他の可能な実施形態は、図10A−図10C、図17H−図17J、図19A−図19E、図20A−図20C、図21A−図21C及び図22A−図22Dに示されており、当業者によって理解されるであろう。
【0243】
図11A−図11Cに示されているように、埋め込み器具の代替的一実施形態は、人工心臓弁を送達するための埋め込み器具180である。一実施形態において、コントロールユニット181は、生来の弁洞の内部において弁捕握部の位置を決定するように弁捕握部190の回転運動を制御することができる捕握部位置コントローラ182を備える。他の一実施形態において、コントロールユニット181は、第2被覆体191(ノーズコーン)の移動を制御する第2被覆体コントローラスイッチ183(ステップ1スイッチ)と、第1被覆体192の移動を制御する第1被覆体コントローラスイッチ184(ステップ2スイッチ)と、人工弁193を露出させるように第1被覆体192を移動させる弁リリーススイッチ186(ステップ3スイッチ)とをさらに備える。第1被覆体は、人工弁サポートフレーム195と少なくとも1つのトラックワイヤ197とを囲んでいる。第2被覆体コントロールケーブル198も示されている。人工弁の配置の前に、送達器具は、図11Aに示されているように構成されている。人工弁サポートフレーム195の配置の後であって、患者から送達器具を除去する前に、送達器具は、生体内で図11Bに示されているように構成されている。
【0244】
他の一実施形態において、コントロールユニット181は、少なくとも1つのリリーススイッチ187をさらに備える。コントロールユニット181は、図11Cにより詳しく示されている。
【0245】
III.人工大動脈弁装置の逆行性送達のための第1埋め込み器具
第4の態様において、大腿動脈を経由して人工大動脈弁装置を送達するための埋め込み器具300を提供する。埋め込み器具300は、図1Bに示されているような人工弁を備えていてもよく、各弁捕握部はU形部材を備える。
【0246】
図12Aに図示されている送達器具の一実施形態において、埋め込み器具300は、人工心臓大動脈弁の心尖部送達に使用することができる。他の代替的一実施形態において、埋め込み器具300は、左房室弁の心尖部送達を提供することができる。
【0247】
埋め込み器具300は、図12Aに326によって一般的に示されているコントロールユニットを備えており、一実施形態においては、以下に記載されているいくつかの別々の独立したコントローラを備える。コントロールユニット326は、トラックワイヤコントローラ342と、少なくとも1つのトラックワイヤ344と、第1被覆体308とを含む。図12Aに示されている埋め込み器具は3つのトラックワイヤを有する。
【0248】
一実施形態において、第1被覆体308は、弁捕握部324及びトラックワイヤ344を少なくとも部分的に囲んでいる。第1被覆体コントローラ338は、第1被覆体308の近位端に固定されている。第1被覆体コントローラ338は、第1被覆体の近位への移動及び遠位への(長手方向の)移動の両方を支援することができ、また、選択的に、生来の弁尖に対する捕握部の適切な位置取りを可能にするように、トラックワイヤ及び接続された捕握部の回転運動を支援することができる。
【0249】
コントロールユニットは、本明細書に記載されて図12Aに示されているような埋め込み器具の種々の部材をユーザが独立して制御できるようにする。コントロールユニットは、ユーザによるトラックワイヤ344aの独立制御を提供するためのトラックワイヤコントローラ342を備える。装置300の中の1つ以上のトラックワイヤは、その近位端においてトラックワイヤコントローラに接続されている。344aのような少なくとも1つのトラックワイヤの遠位端は、弁捕握部324の自由端との接触を生じさせることができる。トラックワイヤコントローラ342は、リリーススイッチ320aのような少なくとも1つのリリーススイッチ320を備える。トラックワイヤ344aのような少なくとも1つのトラックワイヤは、そのおおよそ近位端において、リリーススイッチ320aのような少なくとも1つのリリーススイッチに固定されている。他の一実施形態において、埋め込み器具300は、2つのトラックワイヤ344a及び344bを備えており、これらの2つのトラックワイヤは、近位端においてリリーススイッチ320bに固定されているトラックワイヤ344bのように、その近位端においてリリーススイッチにそれぞれ接続されている。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具300は、3つのトラックワイヤを備えており、3つのトラックワイヤは、その近位端においてリリーススイッチにそれぞれ接続されている。さらに別の一実施形態において、埋め込み器具300は、4個、5個又はそれ以上のトラックワイヤを備えており、それらのトラックワイヤは、その近位端において同一の又は異なるリリーススイッチにそれぞれ接続されている。以下により完全に説明されているように、複数のトラックワイヤのそれぞれは、その遠位端において、人工弁中の弁捕握部の少なくとも1つとの接触を生じさせることができる。複数のトラックワイヤのそれぞれは、捕握部脚部の1つ以上の直線部分、及び/又は、322a、b、cとして図12C−図12Dに表されているようなロックワイヤを囲んでいてもよい。
【0250】
埋め込み器具300は、複数のトラックワイヤ344を囲むことができるトラックワイヤ支持体356をさらに備えていてもよい。
【0251】
他の一実施形態において、少なくとも1つのトラックワイヤの遠位端が弁捕握部と接触するように、少なくとも1つのトラックワイヤは、少なくとも1つの弁捕握部と接触している(図13B参照)。埋め込み器具300の弁捕握部は、湾曲部分と2つの直線部分とを有するU形部材を備える。各直線部分は1つの自由端で終端する。図13Bに示されているように、トラックワイヤ344は、2つの別々の弁捕握部324a、bの直線部分及び自由端を囲んでいる。一実施形態において、トラックワイヤは、例えば、1つ以上の他のケーブル又はワイヤを挿入できるようにするために、中空である。典型的な一実施形態において、中空のトラックワイヤは、図13B及び図13Cに示されているように、コントロールユニットのおおよそ近位端からトラックワイヤ344のおおよそ遠位端まで延在するロックワイヤ328を囲んでいる。他の一実施形態において、ロックワイヤは、その近位端においてロックワイヤ支持体に固定されている。さらに別の一実施形態において、ロックワイヤは、その遠位端にロック部材329を備える(図13B及び図13C)。
【0252】
図13Bに詳細に示されているように、いくつかの実施形態において、トラックワイヤ344は、ロックワイヤと、弁捕握部324のような2つの異なる独立した隣接する弁捕握部の2つの直線部分とを囲んでいる。弁捕握部と、ロック部材を有するロックワイヤとのこの配置が、トラックワイヤ内の部材の摩擦嵌合を生じさせ、従って、ロック部材を有するロックワイヤがトラックワイヤの遠位端において2つの脚部におおよそ隣接する限り、2つの異なる弁捕握部の直線部分が中空のトラックワイヤ内に固定されることは、当業者によって理解されるであろう。トラックワイヤがロックワイヤに関して近位に移動するようなロックワイヤと独立したトラックワイヤの移動は、摩擦嵌合を失わせ、弁捕握部が中空のトラックワイヤから解放されるようにする。
【0253】
当業者は、トラックワイヤ344aのようなトラックワイヤのそれぞれを、コントロールユニット、トラックワイヤコントローラ342及び/又はリリーススイッチ320に固定する様々な機構を構想することができる。トラックワイヤ344のそれぞれの近位端は、例えば、コントロールユニットの種々の部材に溶接又は接着されていてもよい。あるいは、トラックワイヤ344の長さの割にはより柔軟性が高くなるように、トラックワイヤ344の近位端は、それぞれ、様々な部材の周囲を湾曲していてもよいし、又は、様々な部材を通るものであってもよい。
【0254】
いくつかの実施形態において、人工弁サポートフレーム305のような人工弁サポートフレームは、被覆材によって少なくとも部分的に覆われており、弁捕握部は、弁捕握部324の自由端が被覆材を通るようにすることによって、動かせるように人工弁サポートフレーム固定されている。この構成において、弁捕握部の湾曲部は、サポートフレーム被覆材に対して外側にある。
【0255】
埋め込み器具300は、第2被覆体310のような第2被覆体をさらに備えており、第2被覆体は、圧縮状態の人工弁サポートフレームを囲む。埋め込み器具300は、第2被覆体コントロールケーブル334をさらに備えており、第2被覆体コントロールケーブル334は、その遠位端において第2被覆体310の遠位端の内表面の一部分に固定されている。さらに別の一実施形態においては、第2被覆体コントロールケーブル334の近位端の辺りが第2被覆体コントローラ336に固定されている。第2被覆体コントローラは、ユーザが第2被覆体コントロールケーブルを移動させ、それによって近位方向又は遠位方向に第2被覆体を移動させるのを支援する。この移動は、埋め込み器具の他の部分から独立して又は独立せずに実行され得る。
【0256】
一実施形態において、第2被覆体コントロールケーブル334は中空である。さらに別の一実施形態においては、中空の第2被覆体コントロールケーブルを経由してガイドワイヤを送り込むことができる。
【0257】
他の一実施形態において、第2被覆体は、人工弁の配置の前に圧縮状態にある弁捕握部324の湾曲部分のそれぞれを少なくとも部分的に囲んでいる。
【0258】
図13Cは、形状記憶材料製であり得る戻り止め349a、bで弁捕握部の自由端が終了する実施形態を示している。この図において、弁捕握部324a、bがトラックワイヤから切り離された後に、戻り止めが巻いている。戻り止めのこの変形は、展開された人工弁の捕握部のサポートフレームに対する固定を強化するように機能することができる構造部材を提供する。
【0259】
図14A及び図29B−図29Hは、患者の体内に人工弁を送達及び展開するために使用されるときの、埋め込み器具300の操作を示している。図14Aは、患者に挿入する前の埋め込み器具を示している。次に、圧縮状態にある人工弁サポートフレーム305を囲んでいる第2被覆体310を、例えば、大腿動脈を通して、第2被覆体が生来の弁の中に位置するまで、大動脈弁へ進める。当業者によって理解されるように、サポートフレームのこの最初の位置決定は、映像システムを使用して実行することができる。
【0260】
図14Bは、埋め込み器具を示しており、この装置においては、弁捕握部のU形部材が第2被覆体から切り離されており、トラックワイヤが遠位方向に押されている。トラックワイヤコントローラを遠位方向に動かすことによって、トラックワイヤを遠位方向に押すことができる。注目すべきことに、この実施形態においては、生来の弁洞に係合することになる弁捕握部の湾曲部がサポートフレーム被覆材に対して外側に位置するように、被覆材が人工弁サポートフレームを囲み、かつ、各弁捕握部の直線部材が被覆材の近位端を通っている。従って、トラックワイヤが遠位方向に押されたときに、弁捕握部は、動かせるように人工弁サポートフレームの遠位端に接続されたままであるが、各弁捕握部の遠位端は、圧縮されたサポートフレームから放射状に伸びることができる。
【0261】
図14Cは、部分的にのみ人工弁サポートフレームを露出させるように、第2被覆体310を遠位方向に押すことを示している。この部分的に露出させるステップは、ターゲット位置からのサポートフレームの望まれない移動を最小限にするように機能する選択的なステップである。あるいは、人工弁サポートフレームを完全に露出させるように、第2被覆体を遠位方向に押すこともできる。第2被覆体コントローラ336を遠位に押すことによって、第2被覆体を遠位に移動させることができる。
【0262】
図14Dは、人工弁サポートフレームを完全に露出させるように第2被覆体310が遠位方向に押されて、サポートフレームがその展開状態に完全に展開できることを示している。この時、弁捕握部がサポートフレームに対して同軸的に位置し、生来の弁尖が弁捕握部とサポートフレームとの間に配置されており、それによって、人工弁を生来の弁の中により一層固定することができる。
【0263】
IV.大腿送達のための第2の埋め込み器具
第5態様においては、図15Aを参照しながら、動かせるように人工弁とコントロールユニット410を備える送達器具とに接続された少なくとも1つの捕握部425を有する人工弁サポートフレーム440と、圧縮状態の人工弁サポートフレーム440を囲む第1被覆体410と、圧縮状態の弁捕握部を囲む第2被覆体430と、第1被覆体コントロールスイッチ445に固定された第1被覆体コントロールケーブル411と、第2被覆体コントロールスイッチ435に固定された第2被覆体コントロールケーブル412と、を備える埋め込み器具400を提供する。弁捕握部を有する人工弁の実施形態は上述されている。この埋め込み器具を人工大動脈弁装置の大腿送達に使用する方法は、図15A−図15Cに示されており、以下により詳細に検討されている。
【0264】
上記送達器具のためのコントロールユニットは、トラックワイヤ、プッシャワイヤ、並びに/又は、第1被覆体及び第2被覆体を含む、埋め込み器具の種々の部材の独立制御を支援するように少なくともある程度は機能する。当業者は、埋め込み器具の長手軸に沿って近位又は遠位に動くことができる種々の部材(例えば、第1被覆体、第2被覆体、トラックワイヤ、ロックワイヤ、プッシャワイヤ)のそれぞれが埋め込み器具のコントロールユニットに対して直接的に又は間接的に接続されていてもよいことを理解する。上記実施形態は、コントロールユニットの一部分を遠位方向又は近位方向に押すこと又は引くことによって、コントロールユニット部材がどのように移動するかの例をそれぞれ提供する。そのような押すこと及び引くことは、例えば、ワイヤに接続されたスイッチを使用することによって、又は、例えば、被覆体の一部分であってもよいハンドルを押すこと若しくは引くことによって達成される。
【0265】
他の代替的一実施形態において、コントロールユニットは、ダイヤルを回転させることによって埋め込み器具の動かせる個々の部材(例えば、第1被覆体、第2被覆体、トラックワイヤ、ロックワイヤ、プッシャワイヤ)を近位又は遠位に動かすことができる1つ以上のダイヤル部分を備えていてもよい。この実施形態において、そのような各セクションが2つのセクションのねじ込み係合を可能にするために、隣接する部分に対して相補的なねじ山を含むようにして、コントロールユニットの個々の部分が接続又は結合されていてもよい。従って、係合されたある部分の時計周り又は反時計周りの回転は、隣接する係合された部分に対してそのセクションの遠位又は近位への軸方向の移動を生じさせるであろう。1つの埋め込み器具コントロールユニットは、係合された部分のような回転コントロール部材と、長手軸に沿って動くスイッチ及びハンドルのようなコントロール部材との両方を含んでいてもよいことがわかる。
【0266】
V.代替的な弁の実施形態
本明細書に開示されている埋め込み器具と共に使用され得るような人工弁サポートフレームの他の代替的一実施形態において、図16Aは、遠位部分101と近位部分103とを備え、遠位部分101が近位部分103から独立して展開することができる単一のサポートフレーム95を作るための別々のユニットとして製造可能である人工弁サポートフレームを表す(図16A参照)。あるいは、図16Bに示されているように、単一のサポートフレーム97は、遠位部分105が近位部分107から独立して展開することができるような態様で、単一のユニットとして製造される。従って、図16Cに示されているように、人工弁サポートフレームの全体を露出及び伸張する前に人工弁95の一部分だけを露出させるために、第1被覆体112を近位方向に移動させる。同様に、人工弁サポートフレームの全体を露出及び伸張する前に人工弁97の一部分だけを露出させるために、第1被覆体を近位方向に移動させることができる。
【0267】
図1C−図1Dに図示されているようなサポートフレーム16を有する人工弁は、サポートフレームの一部分だけを露出させたときに部分的に展開することができるサポートフレームの典型的な実施形態として機能できることがわかる。
【0268】
VI.代替的な弁捕握部の実施形態
弁捕握部の他の一実施形態が図17A−Bに示されている。これらの実施形態においては、捕握部複合ユニット800を形成するために、複数の弁捕握部のそれぞれが別の弁捕握部に固定されている。捕握部複合ユニット800は複数の脚部をさらに備える。複数の弁捕握部を有する捕握部複合ユニットを形成するために、2個、3個、4個又はそれ以上の脚部材に接続された2個、3個、4個又はそれ以上のU形部材が存在してもよいことがわかる。一例として、図17Aに図示されているように、U形部材802a及び802bは、各々頂点806b及び806cを経て脚部810aにそれぞれ接続されている。同様に、U形部材802b及び802cは、頂点806d及び806eを経て脚部810bにそれぞれ接続されている。いくつかの実施形態においては、図17Aの825a、b、cに示されているように、各脚部810a、b、cの近位端が孔を有していてもよい。他の実施形態においては、各脚部の近位端を通る孔が存在しない。
【0269】
図17Aは、返し820のような複数の返しを有するように脚部810a、b、cを設計した実施形態を示している。これらの返しは、生来の弁の中に配置された後の人工弁の安定化を支援するように機能することができる。言いかえれば、人工弁を配置するときに、少なくとも1つの返しがサポートフレーム被覆材及び/又は脚部被覆材が存在する場合には、それらを貫通するように、返しが突出する。好ましい一実施形態において、サポートフレーム被覆材は、サポートフレームに取り付けられている(例えば、縫合されている)。脚部被覆材が存在する場合には、脚部被覆材は、サポートフレーム被覆材に取り付けられている(例えば、縫合されている)。従って、弁捕握部の返しがサポートフレーム被覆材及び/又は脚部被覆材を貫通すれば、これは、弁捕握部構造をサポートフレーム構造に対して固定することになる。あるいは、サポートフレーム構造に対する弁捕握部の固定を支援するために、この返しが、サポートフレーム被覆材及び/又は脚部被覆材の中に埋め込まれるようにすることもできる。そのような固定部材が多数の異なる形状のあらゆるものを有し得ることがわかる。これらの固定部材は、形状記憶金属製であってもよいし、又は、形状記憶金属製でなくてもよい。「返し(barb)」という用語は、捕握部から突出し、かつ、患者の生来の弁の中に人工弁の固定するのを支援にするように機能することができるあらゆる構造部材を包含し得る。当業者には、脚部の返しのパターンを変更してもよいことがわかる。例えば、図17Cに示されているように、脚部834の片側の線に沿って、一続きの返しが存在してもよい。捕握部のU形部材の一部分が832として表されている。人工弁を配置するときの返し836の突出が図17Dに示されている。一実施形態において、返し835を有する又は有しない1つ以上の脚部は、図17Eに表されているような開口部833を有するように設計されている。捕握部のU形部材の一部分が831として表されている。この開口部の大きさ及び形状は、変更することができ、捕握部の耐久性がより高くなるように設計される。それぞれの返しの間の間隔は一定であってもよいし又は異なっていてもよい。あるいは、図17Fに示されているように、脚部838の一続きの返し839のそれぞれが脚部の側面に交互に位置していてもよい。捕握部のU形部材の一部分が837として表されている。これらの返しは、互いに対して交互に配列されていてもよい。図17Gは、孔844及び突部843を含む選択的な特徴を示しており、それぞれの大きさ及び形状は、必要とされる機能に応じて変更されてもよい。図17G−図17Hにおいて、脚部及び返しは、それぞれ、841及び842によって表されており、捕握部のU形部材の一部分が840として示されている。
【0270】
他の一実施形態において、捕握部複合ユニット850は、図17Bに示されているように、頂点856a−fを介して互いに取り付け又は固定された複数のU形部材(例えば852a、b、c)を備える。捕握部複合ユニット850は脚部を備えていない。いくつかの実施形態において、捕握部複合ユニットは、図17Bに875a、b、cとして示されているような孔を備えていてもよい。それぞれの孔は、除去可能な脚部のための取付位置を提供することができる。いくつかの実施形態において、捕握部複合ユニット850はこれらの孔を有しない。
【0271】
図17K−図17Mは、捕握部複合体ユニットの脚部に関する代替的な実施形態を提供する。これらの各実施形態において、捕握部の機能的特徴にさらに高い柔軟性を付与するために、捕握部複合ユニットの脚部が短くなっている。図17Kは、フレキシブルワイヤ又は他の類似した耐久性の繊維構造871に接続された脚部を示している。
【0272】
上述されて図17A−図17Mに示されている捕握部複合ユニット及びその部品は、ニチノールのような形状記憶金属で構成されていてもよい。U形部材は、そのユニットの中央軸から遠ざかるように放射状に展開することができる。
【0273】
図18A−図18Bは、弁サポートフレームに対して捕握部複合ユニットがどのように位置することができるかを例示している。捕握部複合ユニットは、弁サポートフレーム892に対して永続的に固定されていない。捕握部複合ユニットが弁サポートフレームの長手軸に沿って近位方向及び/又は遠位方向に動くことができるように、捕握部複合ユニットは、動かせるように弁サポートフレームに接続されている。図18A−図18Bは、弁サポートフレーム892の内側面に被覆材890を有する人工弁を示している。いくつかの実施形態において、この被覆材は、弁サポートフレームの外側面に存在していてもよい。
【0274】
図18A及び図18Bは、人工弁が脚部被覆材888をさらに備えている代替的な実施形態を示している。図18Aは、例えば、返し884のような複数の返しを有する脚部882を示している。図18Bは、896によって表されているような異なる態様の返しを有する脚部895を示している。脚部被覆材888は存在してもよいし又は存在しなくてもよいことがわかる。人工弁を配置するときに、それぞれの返しが脚部被覆材を容易に貫通することができるように、脚部被覆材は、好ましくはフレキシブルな材料から作成される。人工弁フレームと同様に、軽量の、耐久性の、フレキシブルな、液体不浸透性の、及び/又は、生体適合性のあらゆる適切な材料を脚部被覆材として使用することができる。縫合、ステープル、化学/熱接着、及び/又は、接着剤を使用して、脚部被覆材を前記フレームに取り付けることができる。いくつかの実施形態において、被覆材は布である。さらなる実施形態において、この布は、例えば、ナイロン(商標)、ダクロン(商標)若しくはテフロン(商標)から選択される商品名によって特定される材料で構成されるか、又は、発泡させたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)若しくは他の材料である。
【0275】
図18A及び図18Bに図示されている実施形態を使用するときの人工心臓弁の送達であって、埋め込み器具が図18A−18Bに示されているような複合体捕握部を利用する送達は、複合体捕握部と埋め込み器具とを接続及び分切り離するための代替的な方法(例えば、トラックワイヤ)を必要とする可能性がある。当業者は接続及び切り離しのいくつかの方法を構想することができるが、図17H−17Jに代替的な実施形態を提供する。例えば、図17H−図17Iに示されているように、複合体捕握部840の脚部を接続するための手段として、突部843をワイヤ846の開口部に入れることができる。トラックワイヤ847(図17I)のような中空のトラックワイヤの中に入れると、この接続が安定化される。図17Jは、埋め込み器具の適切な部材に対して複合捕握部の脚部を接続及び分離するためのさらに別の構造を図示している。図17Jは、フレキシブル引張部848が、複合捕握部の脚部材の近位端の孔を経て入り、ロックアンドリリース部849の遠位端を囲んでいることを示している。埋め込み器具の適切な部材(図17Jにおいてトラックワイヤ853によって囲まれているワイヤ851)に対して脚部を固定するために、フレキシブル引張部848は近位方向に引かれる。
【0276】
VII.捕握部の代替的分離機構
図19−図22は、弁捕握部に埋め込み器具を可逆的に取り付けるための代替的実施形態を図示している。図19−20は、弁埋め込み器具に対して捕握部複合ユニットを可逆的に取り付ける手段を提供するために、ロックアンドリリース部の軸方向の長さに沿って動くフレキシブル引張部を使用することを示している。図19Aに示されているように、捕握部複合ユニットの脚部に弁埋め込み器具を接続する前に、フレキシブル引張部902は、ロックアンドリリース部904に沿って、かつ、該部材904を越えて延在している。フレキシブル引張部902及びロックアンドリリース部904は、中空のトラックワイヤ906の中に少なくとも部分的に入っている。この例において、前記引張部及び前記ロックアンドリリース部は、複合捕握部ユニットの脚部908の近位端に取り付けられている。図19Bは、ロックアンドリリース部904及び引張部902の近位端を示しており、これら2つの部材のそれぞれの独立したコントロールを可能にする任意の手段によって埋め込み器具コントロールユニットに対してこれらを取り付けることができる。
【0277】
弁埋め込み器具のコントロールユニットに捕握部複合ユニットを取り付けるために使用することができる方法は、図19C−図19Dに示されている。この取り付けは、埋め込み器具に人工弁を詰め込む前に実行される。フレキシブル引張部902の遠位端に形成されたループ912は、捕握部複合ユニットの脚部908の自由端の孔910を通して入れる。次に、フレキシブル引張部の遠位端がループ912を通って進むまで、フレキシブル引張部から独立してロックアンドリリース部904を遠位方向に移動させる(図19D)。脚部908と埋め込み器具との間の接続を堅くして固定するために、フレキシブル引張部902を近位方向に引くことができる。次に、フレキシブル引張部902及びロックアンドリリース部904の大部分を覆うように中空のトラックワイヤ906を遠位方向に移動させて、トラックワイヤ906の遠位端が脚部908の近位端におおよそ隣接するようにする(図19E参照)。
【0278】
捕握部複合ユニット脚部の切り離しが図20A−図20Cに示されている。図20A−Bにあるように、ロックアンドリリース部904は、フレキシブル引張部902から独立して近位方向に移動させる。図20Cは、どのように、トラックワイヤ906、フレキシブル引張部902、及び、ロックアンドリリース部904を近位方向に一緒に移動させるかを示している。フレキシブル引張部の柔軟性により、フレキシブル引張部902は、脚部908の孔910から容易に取り除かれる。
【0279】
弁埋め込み器具を捕握部複合ユニットの脚部に接続するさらに別の構造が図21−図22に示されている。図21A−図21Cは、どのようにフレキシブル脚を引張部に連結させることができるかを示している。この実施形態において、前記引張部は、フレキシブルな材料から作られたものであってもよいし又はフレキシブルな材料から作られたものでなくてもよい。図21Aに示されているように、フレキシブル脚920は、引張部頂部924において引張部922に連結している頂部928を含む。送達前に、人工弁を埋め込み器具中に詰めるときに、この連結によってフレキシブル脚920と引張部922とを可逆的に接続させる。フレキシブル脚と引張部とを連結した後に、図21Bに示されているように、その連結部分及びフレキシブル脚の遠位部分を覆うように、例えば、トラックワイヤ926のような中空のトラックワイヤを遠位方向に移動させる。トラックワイヤは、人工弁の送達前及び送達中にフレキシブル脚が放射状に展開するのを防止する。図21Cは、この取り付け及び切り離しの実施形態の近位端を表している。引張部922及びトラックワイヤ926が、これらの近位端において弁埋め込み器具の近位端の近くの位置に又は弁埋め込み器具コントロールユニットに取り付けられており、この取り付けは、引張部及びトラックワイヤの独立した軸方向の移動を可能にするような態様であることがわかる。
【0280】
図22A−図22Cは、フレキシブル脚920が引張部922からどのように分離されるかを示している。最初に、フレキシブル脚の近位端を露出させるために、トラックワイヤを近位方向に引き戻すことができる(図22A参照)。フレキシブル脚920のフレキシブルな性質により、図22B−図22Cに示されているように、引張部922を近位方向に引くことは、フレキシブル脚920をその頂点928において真っすぐに伸ばす。その後、フレキシブル脚920を切り離すことができるように、ユーザは、トラックワイヤ926及び引張部922を近位方向に引くことができる。
【0281】
フレキシブル引張部は、例えば、単繊維、多繊維、又は、網状多繊維の構造であってもよい。その具体例には、外科縫合において使用されるようなワイヤ、糸又は単繊維が含まれ得る。単繊維は、腸線、絹、又は、リンネルのような天然の源から作成されたものであってもよいし、又は、合成されたものであってもよい。単繊維の非吸収性縫合糸は、例えば、ナイロン又はポリプロピレンから作成することができる。フレキシブル引張部は、形状記憶材料製であってもよい。当業者は、引張強度、締め付け強度、弾性、記憶性若しくは剛性、及び、組織反応性のような特性に基づいて、フレキシブル引張部のための適切な材料を選択することができるであろう。
【0282】
一実施形態において、上述されて図21−図22に示されているようなフレキシブル脚は、捕握部脚として機能することができ、例えば、フレキシブル脚920は、捕握部複合ユニット850の孔875に取り付けられる(図17B参照)。他の一実施形態において、フレキシブル脚は、弁埋め込み器具の引張部に捕握部脚を取り付ける役割を果たすことができる。例えば、図21Aにおけるフレキシブル脚920は、その近位端において引張部922に連結され、その遠位端において捕握部複合ユニット800の捕握部脚810の近位端に取り付けられるようにすることができる(図17A参照)。さらに別の一実施形態において、フレキシブル脚は、その遠位端において、例えば、弁サポートフレームに対してその弁サポートフレームの接合支柱に直接取り付けられるようにすることができる。
【0283】
VIII.人工大動脈弁装置を配置する方法
第6の態様において、埋め込み器具100のような埋め込み器具を使用して、本明細書に記載されている圧縮形態又はコンパクト状態の人工弁を心臓に送達する方法を提供する。
【0284】
図24A−図24Hは、人工弁を大動脈弁に送達し、人工弁を位置決定及び展開するための1つの手順を示している。当業者は、例えば、埋め込み器具100に適用するときの送達方法及び装置操作の適用を容易に理解するであろう。図24A−図24Hは、患者の心臓の左側を通る断面図であり、経心尖的アプローチを用いてサポート構造を送達する際に行われる動作を示している。本明細書で提供されているような図は、実際には図式的なものであり、従って、送達工程を必ずしも正確に表していないことに留意されたい。例えば、患者の胸郭は、説明の目的のために示されおらず、また、送達システムと共に使用される被覆体の大きさは、手順をよりよく図示するためにやや変更されている。しかしながら、当業者は、示されている手順を実行するために使用することができる被覆体及びカテーテルの範囲及び種類を容易に理解するであろう。図23は、患者への導入器具134の挿入を示している。
【0285】
図24A−図24Hは、埋め込み器具600を使用した、大動脈弁の経心尖的移植を図示している。埋め込み器具600は、埋め込み器具100と多数の機能を共有している。第2被覆体(ノーズコーン)610が生来の心臓弁を過ぎる(生来の心臓弁に対して遠位の)位置まで、埋め込み器具600をガイドワイヤに沿って進める。図24Bに示されているように人工弁捕握部のU形部材615が放射状に伸びることができるようにするために、コントロールユニット670の中の第2被覆体コントローラスイッチは、第2被覆体610(ノーズコーン)を遠位方向に移動させるために使用される。以下に記載されており、図24A−図24Hに図示されている方法を、上記送達器具100及び人工弁2と共に使用することができる。
【0286】
コントロールボックス670の中の第1被覆体コントローラスイッチは、図24Aに示されているように、遠位方向に向かって、かつ、生来の心臓弁を部分的に通るように第1被覆体620を動かすために使用される。第1被覆体620は、圧縮状態にある人工弁サポートフレーム625を囲んでいる。第1被覆体620が生来の心臓弁に向かって遠位方向に動くときに、弁捕握部は静止したままである。生来の弁尖は645で示されている。
【0287】
図24Bは、弁捕握部615を露出させるように、第2被覆体610が遠位方向に押されたことを示している。遠位端が第2被覆体に取り付けられ、かつ、近位端がコントロールユニットに取り付けられた第2被覆体コントロールケーブル655を遠位方向に押すことによって、第2被覆体610を遠位方向に動かすことができる。露出させると、弁捕握部が生来の弁の上方で放射状に展開する。
【0288】
図24Cは、弁捕握部のU形部材が、生来の弁洞の底部又は生来の弁尖の底部に接するように、生来の弁と接触又は係合するまで、弁捕握部を近位方向に引くようにコントロールユニットを操作したことを示している。弁捕握部は、上述されているようにトラックワイヤを近位方向に引くことによって近位に移動される。
【0289】
図24Dは、第1被覆体の遠位端、及び、従って、サポートフレーム625の遠位端が弁捕握部の頂点に接するまで、第1被覆体620を進めたことを示している。従って、このとき、サポートフレームは、サポートフレームの展開のため及び人工弁の埋め込みのために、生来の弁の中で適切な位置にある。サポートフレームを展開する前に、遠位、近位、及び、回転の位置について人工弁をわずかに調整するために、埋め込み器具をなお操作することができることがわかる。
【0290】
図24Eは、サポートフレーム625が、弁捕握部の脚部から延在するトラックワイヤに沿って放射状に展開できるように、サポートフレーム625を露出させるために、及び、弁捕握部が、図24Eに示されているように、弁尖645のような生来の弁の弁尖を捕捉できるようにするために、サポートフレームを静止したままに保持しながら第1被覆体620を近位方向に引き戻すことを示している。見てわかるように、生来の弁尖(例えば645)は、弁捕握部615とサポートフレーム625との間に挟まれている。トラックワイヤ(例えばトラックワイヤ630)は、依然として弁捕握部に接触している。トラックワイヤは、人工弁が伸張又は展開するときに、人工弁の正確な放射状の位置取り(接合面対接合面)を誘導するのを支援する。
【0291】
図24Fは、人工弁が適切に配置されたことを確実にした後に弁捕握部を切り離すために、トラックワイヤを近位方向に引き戻したことを示している。トラックワイヤは、リリーススイッチを押し又は引くことによって弁捕握部の脚部から切り離すことができる。
【0292】
図24Gは、第2被覆体610の近位端に接するように、第1被覆体620が遠位方向に押されたことを示している。このステップは、任意のものであり、送達器具を患者から除去するときに第2被覆体の近位端によって生じ得るダメージから周囲組織を保護するように機能する。展開した人工弁を正しい位置に残したままで、患者から埋め込み器具を除去するために、埋め込み器具をガイドワイヤに沿って近位方向に引く。
【0293】
図24Hは、人工弁を正しい位置に残したままで、埋め込み器具を心臓から除去することを示している。
【0294】
他の代替的一実施形態においては、人工弁サポートフレームの一部分だけを露出させるように第1被覆体620を近位方向に移動させる。図1C−図1Dに示されているような弁サポートフレームを、この手順のために実施して、第1被覆体620に入れることができる。
【0295】
人工弁が生来の心臓弁弁輪において完全に展開したとき、生来の弁尖は、U形部材と弁捕握部615のそれぞれの脚部との間に挟まれるようになる。これは、心臓における人工弁のさらなる固定を提供する。
【0296】
IX.下大静脈送達によって人工左房室弁装置を配置する方法
第7の態様においては、埋め込み器具100を使用して、下大静脈を経由した送達によって、圧縮形態又はコンパクト状態にある人工弁を心臓に送達する方法を提供する。一実施形態において、人工弁は人工左房室弁である。
【0297】
埋め込み器具100を使用して、下大静脈を通して左房室弁を送達する方法は、図25A−25Lに図示されている。図26に示されているように、埋め込み器具は、患者の大腿静脈内に挿入され、次に、下大静脈へ進められることができる。患者に埋め込み器具を挿入する前に、ガイドワイヤ110を、大腿静脈内に導入し、次に、撮像手段を用いながら下大静脈を通して進め、次に、当業者に既知の方法に従ってニードルを用いて心房中隔壁を通して左心房内に進め、左房室弁を通して遠位方向に向かって左心室内に進めることができる。その後、埋め込み器具100は、ガイドワイヤ110に沿って、心房中隔壁及び左房室弁を通して、左心室内に進められる。
【0298】
図25Bは、ガイドワイヤ110に沿って心房中隔壁を通して左心房内に進められる前の埋め込み器具を示している。
【0299】
図25Cは、心房中隔壁を通して左心房内に埋め込み器具を進めることを示している。図25A−図25Kに122として示されている第1被覆体の実施形態は、当業者によって理解されるように、心臓から遠く離れた挿入位置から送達することができるように、第1被覆体が非常に長く、かつ、フレキシブルであり得ることを図示している。
【0300】
図25Dは、人工弁サポートフレームを囲む第1被覆体の少なくとも一部分が左心室内に位置するように、埋め込み器具の遠位端を左房室弁を通して進めたことを示している。他の代替的一実施形態においては、第1被覆体中の人工弁が生来の弁の中に位置するまで、埋め込み器具を遠位方向に進めることができる。
【0301】
図25Eには、弁捕握部を露出させて、弁捕握部のU形部材が送達器具の中心軸から放射状に展開することができるように、弁捕握部、例えば、弁捕握部106を静止したままに保持しながら、第2被覆体130を遠位方向に押したことが示されている。
【0302】
図25Fは、弁捕握部のU形部材が生来の弁と接触又は係合するまで、包まれた圧縮状態の人工弁サポートフレーム102を含む第1被覆体を、弁捕握部(例えば弁捕握部106)と共に、近位方向に引くことを示している。弁捕握部のU形部材が生来の弁と接触するときに、ユーザが抵抗を感じることができるので、ユーザは、この操作のために映像に頼る必要がない。
【0303】
図25Gは、第1被覆体122の遠位端が弁捕握部の頂点に隣接又は接触するまで、第1被覆体122を遠位方向に進めたことを示している。
【0304】
図25Hには、人工弁サポートフレーム102を露出させてサポートフレームが展開状態に伸張又は展開できるように、第1被覆体122を近位方向に引いた後の埋め込み器具が示されている。この時、生来の弁尖は、弁捕握部とサポートフレームとの間に位置している。より詳細には、弁捕握部の脚部は、生来の弁尖とサポートフレームとの間に位置しており、また、生来の弁尖は、弁捕握部の脚部と弁捕握部のU型部材との間に位置している。図25Hは、依然として弁捕握部106に可逆的に取り付けられているトラックワイヤ150、及び、依然としてサポートフレーム102に係合しているプッシャワイヤ170を示している。
【0305】
図25Iは、弁捕握部からトラックワイヤを取り外すために、トラックワイヤを近位方向に引いたことを示している。プッシャーワイヤ170は、依然として人工弁サポートフレームに係合しており、トラックワイヤを取り外したときに人工弁を所望の位置に維持するのを支援した。
【0306】
図25Jは、人工弁サポートフレームから各プッシャワイヤを切り離すために、プッシャワイヤを近位方向に引いたことを示している。
【0307】
図25Kは、第1被覆体122が第2被覆体130の近位端に接するまで、第1被覆体122を遠位方向に押したことを示している。
【0308】
図25Lは、生来の心臓弁の中に人工弁を残しながら患者から埋め込み器具を除去するために、埋め込み器具を近位方向に移動させることを示している。
【0309】
X.上大静脈送達によって人工弁を配置する方法
第8の態様においては、上大静脈を通した経皮的送達によって、埋め込み器具100を使用して、圧縮形態又はコンパクト状態にある本明細書に記載されている人工弁を心臓に送達する方法を提供する。この方法を図27に示す。この態様において、人工弁は、人工肺動脈弁である。
【0310】
上大静脈を通して人工肺動脈弁を送達するための埋め込み器具100は、患者の上大静脈内に挿入される。埋め込み器具を心臓内に挿入する前に、ガイドワイヤ110は、頚静脈内に導入され、次に、撮像手段を用いて、上大静脈を通して右心房内に進められ、次に、三尖弁を通して右心室内に進められ、生来の肺動脈弁弁輪を通して肺動脈内に進められる。
【0311】
一実施形態においては、最初に導入器具をガイドワイヤ110に沿って頚静脈内に挿入し、この導入器具を通して埋め込み器具100を挿入する。一実施形態においては、この埋め込み器具100は、上述されているように頚静脈内に挿入され、上大静脈を通して右心房内に進められ得る。次に、図28に示されているように、埋め込み器具の遠位端は、三尖弁を通して右心室内に進められ、次に、生来の肺動脈弁を通して肺動脈内に進められる。
【0312】
埋め込み器具を右心室内に導入した後に、埋め込み装置は、弁捕握部が生来の肺動脈弁を過ぎるように位置するまでガイドワイヤに沿って進められる。圧縮状態にある人工弁サポートフレーム102を囲む第1被覆体120は、生来の肺動脈弁のおおよそ隣又は近位(下方)の位置に進められる。弁捕握部が入っている第2被覆体130が生来の肺動脈弁を通り過ぎるように、かつ、肺動脈中に位置する場合、人工肺動脈弁を位置決定及び展開するための方法は、埋め込み器具100を用いて左房室人工弁を埋め込むための上記方法と同一であるか又は非常に類似することがわかる。
【0313】
XI.大腿動脈送達によって人工弁を配置する方法
第9の態様においては、埋め込み器具300を使用して、本明細書に記載されている圧縮形態又はコンパクト状態の人工弁を心臓に送達する方法を提供する。一実施形態において、人工弁は、大腿動脈によって送達された人工大動脈弁である。
【0314】
図29Aに示されているように、ガイドワイヤは、当業界で既知の方法に従って大腿動脈内に挿入され、大腿動脈、大動脈弧及び大動脈弁を通して進められる。
【0315】
図29Bには、大腿動脈内に挿入され、大動脈弧を通して誘導され、次に、第2被覆体の遠位端が生来の大動脈弁302の上方に位置するまでガイドワイヤに沿って進められた後の、埋め込み器具300が示されている。この実施形態において、第1被覆体は、埋め込み器具を患者に入れる位置から大動脈弁を通り過ぎるように延在するのに充分な長さを有することは、当業者に容易に理解されるであろう。また、第1被覆体は、大腿動脈を通して安全に進められるのに充分にフレキシブルな材料から作られており、かつ、大腿動脈を通して安全に進められるのに充分に小さい直径を有するように作られている。
【0316】
図29Cは、弁捕握部324a及び324bのような弁捕握部が埋め込み器具の中心軸から放射状に展開した後の埋め込み器具300を示している。この実施形態において、埋め込み器具は、上述されているように湾曲部分と直線部分とをそれぞれ有するU形部材を有する3つの弁捕握部を備える。各弁捕握部324の湾曲部分は、弁捕握部を静止したままに保持しながら又はトラックワイヤ344を近位方向に動かしながら、第2被覆体310を遠位方向に移動させることによって、露出させるようにすることができる。埋め込み器具を患者に挿入する前に、弁捕握部の湾曲部分は、第2被覆体の近位端によってわずかだけ覆われている。弁捕握部324の湾曲部分を露出させた後に、各弁捕握部の全体を露出させるために、トラックワイヤ344を近位方向に動かす。このとき、図29Cに示されているように、各トラックワイヤが2つの別々の弁捕握部の1つの直線部分を囲むように、各弁捕握部の直線部分が少なくとも部分的にトラックワイヤの中に入っている。この実施形態において、埋め込み器具は3つのトラックワイヤを備える。さらに、図13Bに示されているように、各トラックワイヤが1つのロックワイヤを囲んでいてもよい。図14A−図14Dに示されているように、一実施形態において、この送達器具は、複数のトラックワイヤを囲むことができるトラックワイヤ支持体356を備えていてもよい。図29Cは、係合位置にある弁捕握部を示している。
【0317】
図29Dは、各弁捕握部の湾曲部分が大動脈洞の底部と係合するまで、トラックワイヤを遠位方向に進めたことを示している。ここで弁捕握部は組込位置にある。この移動は、トラックワイヤコントローラ342を遠位方向に押すことによって実行することができる。
【0318】
図29Eは、第2被覆体310を遠位方向に動かすことによって人工弁305を少なくとも部分的に露出させるために、第2被覆体310を遠位方向に押すことを示している。この移動は、第2被覆体コントローラ338を遠位方向に動かすことよって実行することができる。このとき、人工弁サポートフレーム305は、部分的に伸張又は展開する。人工弁サポートフレーム305が部分的に展開するときに、弁捕握部の直線部分は、依然としてトラックワイヤに囲まれている。(図1C−図1Dに示されているような)サポートフレームの一部分のみの伸張は、そのサポートフレームを部分的又は完全な配置したときに、そのサポートフレームが位置からはずれるように「ジャンプする」ことを防ぐように支援することができる。代替的に、サポートフレーム全体を1つのみのステップにおいて露出及び伸張させることもできる。いくつかの実施形態においては、弁捕握部の最小限の部分が被覆材と弁サポートフレームとの間に位置するように、弁捕握部の直線部分が、人工弁サポートフレームの外表面の被覆材を通されている。
【0319】
図29Fは、第2被覆体310を遠位方向に進めることによって人工弁サポートフレーム305を完全に露出及び展開させるために、第2被覆体310を遠位方向に移動させたことを示している。第2被覆体のこの移動は、第2被覆体コントローラ336を遠位方向に動かすことによって達成することができる。人工弁サポートフレーム305を完全に展開するときに、弁捕握部324の直線部分は、依然としてトラックワイヤ344によって囲まれている。
【0320】
少なくとも1つのロックワイヤ328を静止したままに保持するように、送達器具を静止したままに保持しながらリリーススイッチ320a又は320bのような少なくとも1つのリリーススイッチを近位方向に動かすことによって、トラックワイヤを弁捕握部から切り離すことができる。そうすることによって、ロック部材329と、2つの弁捕握部324の直線部分と、トラックワイヤ344との間の摩擦がなくなり、弁捕握部324に対していかなる引張力を適用することもなく、トラックワイヤから弁捕握部324を切り離すために、少なくとも1つのトラックワイヤ及びロックワイヤを近位方向に動かすことができる。トラックワイヤから弁捕握部を切り離した後の送達器具が図29Gに示されている。図29Gに図示されている一実施形態においては、トラックワイヤコントローラ342を近位方向に引くことによって、トラックワイヤを近位方向に移動させる。
【0321】
図29Hは、第1被覆体308の隣に第2被覆体310を配置するために、第2被覆体コントローラ336を近位方向に引くことができることを示している。その後、送達器具300は、人工弁を生来の大動脈弁の中に展開させたままで、患者から除去される。
【0322】
XII.大腿動脈送達によって人工弁を配置するための代替的方法
第10の態様においては、埋め込み器具400を使用して、大腿動脈を経由して本明細書に記載されている人工弁を大動脈弁に送達する方法を提供する。埋め込み器具400は、人工弁の長手軸に沿って弁捕握部を動かせるような又は弁捕握部が人工弁のサポートフレーム470に固定されているような、弁捕握部425を有するものとして本明細書に記載されている人工弁を含む多様な人工弁を送達するために使用することができる。
【0323】
大腿動脈を経由して埋め込み器具400を配置する方法の実施形態が図15A−15Cに図示されている。この実施形態において、ガイドワイヤ110は、対象の大腿動脈内に挿入され、当業者に既知の方法を用いて、映像システムの誘導に従って、機能不全の大動脈心臓弁を通るガイドワイヤに沿って、心臓の左心室内に進められる。次に、弁捕握部425が入っている第2被覆体430が生来の心臓弁の上方に位置するように、人工弁のサポートフレーム440が入っている第1被覆体420をガイドワイヤの経路に従って機能不全の生来の心臓弁の近くにある標的部位に押し込むようにして、埋め込み器具400をガイドワイヤに沿って大腿動脈内に挿入する。埋め込み器具のこの配置は、映像システムによって、及び、ガイドワイヤに沿って埋め込み器具を動かすことによって誘導される。第1被覆体の除去時に人工弁が意図された機能を発揮することを可能にする位置に人工弁が展開するような位置に埋め込み器具が位置するとき、埋め込み器具が、機能不全の生来の心臓弁の近くに存在することは、当業者に理解されるであろう。
【0324】
一実施形態において、埋め込み器具400は、コントロールユニット410をさらに備える。このコントロールユニットは、第1被覆体スイッチ445及び第2被覆体スイッチ435を備える。第1被覆体スイッチは、ワイヤ又は同等の部材によって第1被覆体に取り付けられている。第2被覆体スイッチは、ワイヤ又は同等の部材によって第2被覆体に取り付けられている。埋め込み器具400が標的部位の近くにある場合には、図15A−図15Bに示されているように、弁捕握部を露出させるように第2被覆体が近位方向(コントロールユニットの方)に動くように、第2被覆体スイッチを移動させ又は調節する。この動作によって弁捕握部が脚部から放射状に展開できるようになる。
【0325】
一実施形態において、この埋め込み器具は、第2被覆体の内部に配置された及び/又は動かせるように第2被覆体に取り付けられた捕握部プッシャ460をさらに備える。第2被覆体スイッチを、例えば、初期の遠位位置から近位位置に動かす場合、この動作は、捕握部プッシャを第2被覆体の遠位端に向かって移動させる。第2被覆体スイッチを近位位置から遠位位置に動かしたときに(図15B−図15C参照)、捕握部プッシャが弁捕握部の近位端と係合することによって弁捕握部を遠位方向に押すように、捕握部プッシャが弁捕握部の近位端と係合する。一実施形態において、弁捕握部は、捕握部プッシャによって生来の心臓弁洞にほぼ隣接する位置まで(遠位方向に)押し下げられる。一実施形態において、弁捕握部は、所定の距離を押し下げられる。
【0326】
一実施形態において、埋め込み器具400は、第1被覆体420の内部に配置された及び/又は第1被覆体420に取り付けられた弁ストッパ450をさらに備える。この弁ストッパは、弁捕握器が遠位方向に押されたときに人工弁を適所に保持するように機能する。
【0327】
弁捕握部を生来の心洞内に配置した後に、第1被覆体スイッチ445を初期の近位位置(図15B)から遠位位置(図15C)に切り替えることによって、人工弁のサポートフレーム440を第1被覆体から切り離すように、第1被覆体420を(遠位方向に、さらに、左心室内に)押し下げる。露出させた弁サポートフレーム470は放射状に展開して、図15Cに示されているように弁捕握部が生来の心臓弁尖490を捕捉するようになる。
【0328】
人工弁を適切に配置したことを確実にした後に、第1被覆体が第2被覆体に接するように第1被覆体を近位方向に引く。一実施形態において、この動きは、第1被覆体スイッチ445を遠位位置から近位位置に戻すように切り替えることによって実行される。これは、埋め込み器具の回収を準備するために実行される。次に、その埋め込み器具を、ガイドワイヤに沿って対象から近位方向に穏やかに引き抜く。ガイドワイヤを次に回収する。展開された人工心臓弁は、弁サポートフレーム440の放射状の展開力によって、及び、生来の心臓弁尖を捕捉する複数の弁捕握部425によって、適所に保持される。
【0329】
XIII.代替的配置方法
図30A−図30Cは、生来の弁の中にサポートフレームを配置するときに、被覆体から人工弁サポートフレーム715を切り離す代替的方法を表している。図30Aに示されているように、弁捕握部700は、被覆体705から解放される。一実施形態において、弁捕握部は、リリースボタン720a、720bを遠位方向に押すことによって、被覆体705から遠位方向に押される。
【0330】
図30Bは、人工弁サポートフレーム715の遠位部分だけが被覆体705から遠位方向に押し出され、この部分だけが展開していることを示している。サポートフレーム715を被覆体705から遠位方向に押し出すことは、被覆体705を静止したままに保持しながらプッシャワイヤコントローラ710を遠位方向に押すことによって実行することができる。この方法は、人工弁サポートフレームを使用して、図1C−図1Dに示されているように実行することができる。
【0331】
次に、図30Cに示されているように、部分的に展開したサポートフレーム715が遠位方向に押されて弁捕握部700の頂点に接するように、被覆体705を遠位方向に押す。プッシャワイヤコントローラ710を同時に動かすことができることに留意されたい。
【0332】
この実施形態についてさらに留意すべきことに、捕握部700を露出させたときに、依然として脚部に取り付けられているトラックワイヤは、図30Aに示されているように、外側に向かう角度で被覆体705から伸びている。次に、図30Bに示されているように、人工弁サポートフレーム715の遠位部分を露出させるために、プッシャワイヤコントローラ710を近位方向に移動させることができる。次に、サポートフレーム715の遠位部分は放射状に展開し、一方で、人工弁サポートフレーム715の近位部分は被覆体705の内部でコンパクト状態のままである。次に、人工弁の遠位端が捕握部頂点に接するまで、プッシャワイヤコントローラ710及び第1被覆体を遠位方向に移動させる。次に、人工弁を完全に露出及び展開させるために、被覆体705を近位方向に移動させる。
【0333】
XIV.送達器具
第11の態様において、医療用人工器官を患者に送達するための器具を提供する。一実施形態において、医療用人工器官を患者に送達するための装置は、該装置の遠位端から該装置の近位端まで延在する管状ステアリングワイヤと、該装置の近位端にあるコントロールユニットと、開いた管腔を備え、かつ、コントロールユニットに対して遠位に配置された第1被覆体と、少なくとも1つのトラックワイヤとを備える。少なくとも1つのトラックワイヤは、非中空の又は中空のワイヤ又はケーブルであってもよい。
【0334】
一実施形態において、この送達用装置は、トラックワイヤコントローラをさらに備える。このトラックワイヤは、その近位端においてトラックワイヤコントローラに固定されていてもよい。他の一実施形態において、トラックワイヤコントローラは、その近位端においてスイッチ、ダイヤル、又は、他の動かせる制御手段又は部材に固定されている。動かせる制御手段又は部材は、操作者がトラックワイヤの動き及び/又は位置をその装置から独立して制御できるようにする。
【0335】
一実施形態において、前記器具は、コントロールユニットに固定された近位端と医療用人工装置と係合することができる遠位端とを有するプッシャワイヤをさらに備える。
【0336】
一実施形態において、前記装置は第2被覆体をさらに備える。他の一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体と連続的に配置される。一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体に対して近位に配置される。他の一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体に対して遠位に配置される。さらに別の一実施形態において、第2被覆体は、第1被覆体と同軸上に配置される。
【0337】
一実施形態において、この送達用装置のコントロールユニットは、第2被覆体コントローラをさらに備える。一実施形態において、第2被覆体コントローラは、第2被覆体から第2被覆体コントローラまで延在するセントラルコントロールケーブル(第2被覆体コントロールケーブル)を備える。第2被覆体コントローラは、操作者が第2被覆体を他の装置部材から独立して動かせるようにする。
【0338】
一実施形態において、第2被覆体コントローラは、管状ステアリングワイヤを備え、該管状ステアリングワイヤは、その遠位端において第2被覆体に固定されており、その近位端において第2被覆体コントローラに取り付けられている。
【0339】
一実施形態において、送達器具のコントロールユニットは、第1被覆体コントローラをさらに備える。
【0340】
多数の典型的な態様及び実施形態が上に議論されているが、当業者は、特定の修正、置換、追加及びこれらの部分的組合せを理解するであろう。従って、添付されている特許請求の範囲及び今後導入される特許請求の範囲は、それらの真の精神及び範囲内であるように、そのような修正、置換、追加及び部分的組み合わせのすべてを含むように解釈されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮状態と展開状態との間において放射状に伸張可能なサポートフレームであって、外側面を有し、かつ、流入・流出方向の軸の周囲に中央開口部を定義するサポートフレームと、
前記サポートフレームが展開状態にあるときに前記開口部の中に一方向弁を提供するために前記サポートフレームに取り付けられた複数のフレキシブル弁尖と、
前記サポートフレームの外側面との組込位置と係合位置との間において前記軸に沿って動くことができるように、前記サポートフレームに動かせるように接続された少なくとも1つの弁捕握部とを備え、
前記少なくとも1つの弁捕握部が前記サポートフレームから物理的に分離されていることを特徴とする人工弁。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弁捕握部が、第1脚部、第2脚部及びU形部材からなることを特徴とする請求項1に記載の人工弁。
【請求項3】
前記少なくとも1つの弁捕握部がU形部材からなることを特徴とする請求項1に記載の人工弁。
【請求項4】
前記サポートフレームの長さがLであり、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さが少なくともLであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弁捕握部が3つの弁捕握部からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項6】
前記少なくとも1つの弁捕握部の自由端が戻り止めにおいて終端することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項7】
前記サポートフレームが被覆材によって少なくとも部分的に覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項8】
前記少なくとも1つの捕握部の少なくとも一部分が前記被覆材と前記サポートフレームとの間に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の人工弁。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の人工弁と、
コントロールユニットを備える送達器具と、
前記コントロールユニットに取り付けられた近位端、及び、前記少なくとも1つの弁捕握部との接触のための遠位端とを有する少なくとも1つのトラックワイヤと、
圧縮状態にある前記人工弁の少なくとも一部分を囲むための第1被覆体と、を備えることを特徴とする埋め込み器具。
【請求項10】
第2被覆体をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の埋め込み器具。
【請求項11】
前記第2被覆体が、前記第1被覆体と連続的に、かつ、前記第1被覆体から遠位方向に配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の埋め込み器具。
【請求項12】
前記第2被覆体は、前記コントロールユニットの中に配置された第2被覆体コントローラによって動かせるようになっており、
第2被覆体コントローラは、前記第2被覆体から前記第2被覆体コントローラまで延在する第2被覆体コントロールケーブルからなることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項13】
前記コントロールユニットに固定された近位端と、前記人工弁との接触のための遠位端とを有する人工弁プッシャワイヤをさらに備えることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項14】
前記少なくとも1つのトラックワイヤが中空のトラックワイヤであり、
ロックワイヤが前記中空のトラックワイヤの内部に配置されており、
前記ロックワイヤは、前記少なくとも1つの弁捕握部を前記少なくとも1つのトラックワイヤに分離できるように固定するためのロック部材を近位端に有していることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項15】
前記コントロールユニットがトラックワイヤコントローラを備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項16】
前記人工弁は、請求項1、2又は4〜8のいずれか1項に記載のものであり、
前記第1被覆体が前記サポートフレームを囲んでおり、前記第2被覆体が前記少なくとも1つの弁捕握部を囲んでいることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項17】
前記人工弁は、請求項3〜8又は10〜15のいずれか1項に記載のものであり、
前記第1被覆体が少なくとも1つの弁捕握部を囲んでおり、前記第2被覆体が前記サポートフレームを囲んでいることを特徴とする請求項10〜15のうちのいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項18】
ヒトにおける機能不全の心臓弁を治療するために請求項9〜17のいずれか1項に記載の埋め込み器具を使用することを特徴とする方法。
【請求項19】
機能不全の心臓弁を治療するために請求項16に記載の埋め込み器具を使用する方法であって、前記心臓弁が肺動脈弁、大動脈弁又は左房室弁であることを特徴とする方法。
【請求項20】
機能不全の心臓弁を治療するために請求項17に記載の埋め込み器具を使用する方法であって、前記心臓弁が大動脈弁又は左房室弁であるであることを特徴とする方法。
【請求項1】
圧縮状態と展開状態との間において放射状に伸張可能なサポートフレームであって、外側面を有し、かつ、流入・流出方向の軸の周囲に中央開口部を定義するサポートフレームと、
前記サポートフレームが展開状態にあるときに前記開口部の中に一方向弁を提供するために前記サポートフレームに取り付けられた複数のフレキシブル弁尖と、
前記サポートフレームの外側面との組込位置と係合位置との間において前記軸に沿って動くことができるように、前記サポートフレームに動かせるように接続された少なくとも1つの弁捕握部とを備え、
前記少なくとも1つの弁捕握部が前記サポートフレームから物理的に分離されていることを特徴とする人工弁。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弁捕握部が、第1脚部、第2脚部及びU形部材からなることを特徴とする請求項1に記載の人工弁。
【請求項3】
前記少なくとも1つの弁捕握部がU形部材からなることを特徴とする請求項1に記載の人工弁。
【請求項4】
前記サポートフレームの長さがLであり、前記第1脚部及び前記第2脚部の長さが少なくともLであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弁捕握部が3つの弁捕握部からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項6】
前記少なくとも1つの弁捕握部の自由端が戻り止めにおいて終端することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項7】
前記サポートフレームが被覆材によって少なくとも部分的に覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工弁。
【請求項8】
前記少なくとも1つの捕握部の少なくとも一部分が前記被覆材と前記サポートフレームとの間に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の人工弁。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の人工弁と、
コントロールユニットを備える送達器具と、
前記コントロールユニットに取り付けられた近位端、及び、前記少なくとも1つの弁捕握部との接触のための遠位端とを有する少なくとも1つのトラックワイヤと、
圧縮状態にある前記人工弁の少なくとも一部分を囲むための第1被覆体と、を備えることを特徴とする埋め込み器具。
【請求項10】
第2被覆体をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の埋め込み器具。
【請求項11】
前記第2被覆体が、前記第1被覆体と連続的に、かつ、前記第1被覆体から遠位方向に配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の埋め込み器具。
【請求項12】
前記第2被覆体は、前記コントロールユニットの中に配置された第2被覆体コントローラによって動かせるようになっており、
第2被覆体コントローラは、前記第2被覆体から前記第2被覆体コントローラまで延在する第2被覆体コントロールケーブルからなることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項13】
前記コントロールユニットに固定された近位端と、前記人工弁との接触のための遠位端とを有する人工弁プッシャワイヤをさらに備えることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項14】
前記少なくとも1つのトラックワイヤが中空のトラックワイヤであり、
ロックワイヤが前記中空のトラックワイヤの内部に配置されており、
前記ロックワイヤは、前記少なくとも1つの弁捕握部を前記少なくとも1つのトラックワイヤに分離できるように固定するためのロック部材を近位端に有していることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項15】
前記コントロールユニットがトラックワイヤコントローラを備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項16】
前記人工弁は、請求項1、2又は4〜8のいずれか1項に記載のものであり、
前記第1被覆体が前記サポートフレームを囲んでおり、前記第2被覆体が前記少なくとも1つの弁捕握部を囲んでいることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項17】
前記人工弁は、請求項3〜8又は10〜15のいずれか1項に記載のものであり、
前記第1被覆体が少なくとも1つの弁捕握部を囲んでおり、前記第2被覆体が前記サポートフレームを囲んでいることを特徴とする請求項10〜15のうちのいずれか1項に記載の埋め込み器具。
【請求項18】
ヒトにおける機能不全の心臓弁を治療するために請求項9〜17のいずれか1項に記載の埋め込み器具を使用することを特徴とする方法。
【請求項19】
機能不全の心臓弁を治療するために請求項16に記載の埋め込み器具を使用する方法であって、前記心臓弁が肺動脈弁、大動脈弁又は左房室弁であることを特徴とする方法。
【請求項20】
機能不全の心臓弁を治療するために請求項17に記載の埋め込み器具を使用する方法であって、前記心臓弁が大動脈弁又は左房室弁であるであることを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図9L】
【図9M】
【図9N】
【図9O】
【図9P】
【図9Q】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図17J】
【図17K】
【図17L】
【図17M】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図24G】
【図24H】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図25G】
【図25H】
【図25I】
【図25J】
【図25K】
【図25L】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【図29E】
【図29F】
【図29G】
【図29H】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図31D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図9L】
【図9M】
【図9N】
【図9O】
【図9P】
【図9Q】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図17J】
【図17K】
【図17L】
【図17M】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図24G】
【図24H】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図25G】
【図25H】
【図25I】
【図25J】
【図25K】
【図25L】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【図29E】
【図29F】
【図29G】
【図29H】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図31D】
【公表番号】特表2012−521854(P2012−521854A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503532(P2012−503532)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028843
【国際公開番号】WO2010/117680
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511235836)カーディオヴァンテージ・メディカル・インク (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028843
【国際公開番号】WO2010/117680
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511235836)カーディオヴァンテージ・メディカル・インク (1)
【Fターム(参考)】
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