説明

非鏡面虹色フィルム

連続する隣接層が屈折率が少なくとも約0.03異なる多様な透明熱可塑性材料でできている少なくとも10の略平行な層の透明熱可塑性樹脂フィルムであって、フィルムの平面性は、非反射色を反映するように改変される。該フィルムの改変は、外部熱可塑性層が残りのフィルム層よりも低い凝固温度を有する多層フィルムと共に外部熱可塑性層を共押出し、その平面性を改変するように該フィルムを冷却することによって、行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
異なる屈折率の2つのポリマーの交代層を含む多層プラスチックフィルムは、個々の層が適した厚さである場合、虹色である。該フィルムは、Cooper、Shetty及びPinskyの米国特許第Re31,780号、及び、参照することによって本明細書に組み込まれる、共にShetty及びCooperの米国特許第5,089,318号及び米国特許第5,451,449号、並びに他の特許に記載されている。虹色は光干渉の現象によって生じる。一組の交互ポリマー層は光学コアを構成する。通常、最外側層すなわち表面層は光学コアの層よりも厚い。このより厚い表面は、光学コアの構成要素の1つを構成してもよく、又は、フィルムに所望の物理的、機械的又は他の特性を与えるために利用する異なるポリマーであってもよい。
【0002】
多層フィルムは、屈折率が少なくとも約0.03異なる多様な樹脂材料からなる連続する隣接層が構成される、透明熱可塑性樹脂材料による複数の略平行の層で構成される。フィルムは少なくとも10層を含み、通常は少なくとも35層を含み、好適には、少なくとも約70層を含む。
【0003】
フィルムの個々の層は非常に薄く、通常は約30乃至500nmの範囲であり、好適には約50〜400nmであり、これによって、多くの界面から反射する光波の建設的干渉が生じる。層の厚さ及びポリマーの屈折率により、1つの主波長域が反射され、残りの光はフィルムを透過する。反射された波長は、一組の層の光学厚さの合計に比例する。
【0004】
反射した光(反射率)の量及び色強度は、2つの反射率の差、層の光学厚さの比率、層の数及び厚さの均一性に依存する。反射率が同じ場合、層間の界面からの反射は全くない。多層虹色フィルムにおいて、連続する隣接層の反射率は少なくとも0.03、好適には少なくとも0.06以上異なる。一次反射では、適切な高さの反射率は、2つの光学厚さの比率が5:95及び95:5の間の範囲である場合に得ることができるが、層の光学厚さが等しい場合に反射率は最大になる。10層程度でも顕著な色反射が得られる。しかし、最大の色強度のためには、35〜1,000、又はそれよりも多くの層を有することが望ましい。高い色強度は、比較的狭く、そのピークで高い反射率を有する反射域と関連している。本明細書においては「色強度」という用語を便宜上使用しているが、紫外線及び赤外線の範囲の不可視の反射に同じ概念が適用されることが理解されよう。
【0005】
従来のシングルマニホールド平面フィルムダイを、2つ以上の押出機のそれぞれから溶解物を収集し、これらを所望の層パターンに配置するフィードブロックと組み合わせて使用する冷却ロール鋳造技術により、多層フィルムを製造することができる。フィードブロックは、例えば、米国特許第3,565,985号及び第3,773,882号に記載されている。フィードブロックは、2つの構成要素(すなわちABAB...)、3つの構成要素(例えばABCABCA...又はACBCACBC...)のいずれか、又はより多くの要素の交互層を形成するために使用できる。非常に幅の狭い多層流は、層がダイの幅に拡大すると同時に最終的なダイ排出厚さに薄層化しているシングルマニホールド平面フィルムダイを流れる。層数及びその厚さ分布は、異なるフィードブロックモジュールの挿入で異なる可能性がある。通常、最外側層又はシートの各側の層はその他の層より厚い。このより厚い表面は、光学コアを構成する構成要素のうちの1つで構成されてもよく、望ましい機械的、ヒートシール、又は他の特性を与えるために利用する異なるポリマーであってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0006】
虹色フィルムにおけるいくつかの近年の開発が、米国特許第Re.31,780号、第4,937,134号、及び第5,089,318号に記載されている。米国特許第Re.31,780号は、システムの高い屈折率の構成要素としての熱可塑性テレフタル酸ポリエステル又はコポリエステル樹脂の使用について記載している。また、全樹脂材料は特定の熱可塑性ポリウレタン、ポリエステルブロックアミド又は可塑性コポリエステルである米国特許第4,937,134号に、弾性干渉薄膜の形成が記載されている。米国特許第5,089,318号は、連続する隣接層は、屈折率が少なくとも約0.03異なり、樹脂材料の少なくとも1種が工学熱可塑性エラストマー樹脂である多様な透明熱可塑性樹脂材料によるものである、少なくとも10の略平行の層の改良型多層光反射透明熱可塑性樹脂性フィルムを開示する。
【0007】
典型的なナノ層虹色フィルムの色を積分球分光光度計(integrating sphere spectrophotometer)で測定する場合、測定には反射光が含まれるはずであり、色は全く測定されないであろう(反射には機器構成を含む)。これは、これらのフィルム構造のデザイン及び本質、並びに光の屈折及び反射の物理によるものである。現在、鏡面反射色が鏡面反射角から可視的であるナノ層虹色フィルムは市販されていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、鏡面反射色が反射角から可視的である新規の虹色フィルムに関する。これにより、従来技術の虹色フィルムでこれ以前に実現することができなかった用途及び外見が実現される。
【0009】
新規の光学効果は、異なる屈折率の2つのポリマーの交互層を含み、当業者に公知である多層プラスチックフィルムの表面及び/又は全体構造の改変によって実現される。フィルムの平行層の平面性の変化であると考えられる改変により、典型的なナノ層虹色フィルム構造の入射及び出射の際の両方において、光の角度を変化させることができる。この改変により、反射の建設的干渉部分が、反射の鏡面反射角/鏡面光沢部分から離れた方向に導かれる。多層フィルムを改変するいくつかの方法について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来技術の多層虹色フィルムの反射率特性を示す概略図である。
【図2】本発明の虹色フィルムの反射率特性を示す概略図である。
【図3】従来技術の虹色フィルムで反射される光の測定である。
【図4】本発明の虹色フィルムで反射される光の測定である。
【図5】従来技術の虹色フィルムで反射される光の測定、及び25°の角度で固定される光源を有する、本発明の虹色フィルムである。
【図6】従来技術の虹色フィルム及び本発明の虹色フィルムからの測定角の関数としてのL弁の測定である。
【図7A】従来技術の虹色フィルム及び25°の角度で固定した光源を有する本発明の虹色フィルムの色度値a及びbの2次元プロットである。
【図7B】従来技術の虹色フィルム及び65°の角度で固定された光源を有する本発明の虹色フィルムの色度値a及びbの2次元プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、従来存在する虹色多層フィルムの全てに適用可能である。かかるフィルムは、連続する隣接層が、屈折率が少なくとも約0.03、好適には、少なくとも0.06異なる多様な樹脂材料によるものである、複数のほぼ又は略平行している透明熱可塑性樹脂材料の層で構成される。これらのフィルムは、少なくとも10層、又は通常少なくとも35層、及び好適には少なくとも70層を含む。フィルムにおける樹脂材料の個々の層は非常に薄く、通常は約30乃至500nmの範囲、好適には約50乃至400nmの範囲である。
【0012】
多層フィルムは、通常、2つ以上の押出機からの熱可塑性樹脂材料の溶解物が、所望の層パターンに配置されるフィードブロックによって収集される、冷却ロール鋳造技術によって生成される。非常に狭い多層流は、ダイの幅に拡大すると同時に最終的なダイ排出厚さに薄層化される層で、シングルマニホールド平面フィルムダイを流れる。層数及びその厚さ分布は、異なるフィードブロックモジュールを使用して変更できる。通常、最外側層又はシートの各側の層は、比較的厚い表面を形成できるように、その他の層よりも厚い。表面を形成するために使用される樹脂材料は、光学コアを構成する構成要素の1つ、又は望ましい機械的、ヒートシール又は他の特性を与えるために使用される異なるポリマー、あるいはこれらの組み合わせにしてもよい。
【0013】
虹色フィルムの層を提供する適した材料の特定の例は、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、及び2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリシクロヘキサンジメチレン−1,4−テレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリル酸イミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸(例えば、メタクリル酸ポリイソブチル、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、及びポリメチルメタクリレート)、ポリアクリレート(例えば、ポリブチルアクリレート及びポリメチルアクリレート)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、シンジオタクチックポリ−アルファ−メチルスチレン、シンジオタクチックポリジクロロスチレン、共重合体及びこれらのポリスチレンのいずれかの混合、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、及び硝酸セルロース)、ポリアルキレンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、及びポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン共重合体、フッ化ポリビニリデン、及びポリ塩化三フッ化エチレン)、塩化ポリマー(例えば、塩化ポリビニリデン及び塩化ポリビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエーテル−アミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びネオプレン)、及びポリウレタンを含む。また、共重合体、例えば、PEN共重合体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、及び/又は2、3−ナフタレンジカルボン酸、又はそのエステルの、(a)テレフタル酸、又はそのエステル、(b)イソフタル酸、又はそのエステル、(c)フタル酸、又はそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタンジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、及び/又は(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸))、ポリアルキレンテレフタル酸共重合体(例えば、テレフタル酸又はそのエステルの、(a)ナフタレンジカルボン酸、又はそのエステル、(b)イソフタル酸、又はそのエステル、(c)フタル酸、又はそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタンジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、及び/又は(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)、及びスチレン共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及びスチレン−アクリロニトリル共重合体)との共重合体))、4,4'−二安息香酸及びエチレングリコールも適している。さらに、各個々の層は、上述のポリマー又は共重合体(例えば、sPS及びアタクチックポリスチレンの混合物)の2つ以上の混合物を含んでもよい。記載される共PENはさらに、少なくとも1つの構成要素がナフタレンジカルボン酸に基づくポリマーであり、他の構成要素はPET、PEN又は共PEN等の他のポリエステル又はポリカーボネートである、ペレットの混合としてもよい。
【0014】
熱可塑性エラストマー(TPE)が、樹脂材料の1つとして使用可能である。かかる材料は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカルボネート等の熱可塑性硬質セグメント、及びポリエーテルグリコール、シリコンゴム、ポリエーテルイミド等の軟質エラストマーセグメントの共重合体である。軟質エラストマーセグメントのパーセンテージの変化により、異なる屈折率を有する熱可塑性エラストマーが生じる。こうして、元の硬質セグメント化熱可塑性ポリマーからの屈折率が0.03よりも大きく異なる、熱可塑性エラストマー共重合体を得ることが可能である。硬質及び軟質セグメントは同じだが、2つのTPEの間の差だけが共重合体における軟質エラストマーセグメントの量である、0.03よりも大きい屈折率の差を有する2つのTPEが得られる。
【0015】
熱可塑性エラストマーは、好適には、ジカルボン酸及び長鎖グリコールに由来する繰り返し長鎖エステル単位及びジカルボン酸及び低分子量ジオールに由来する短鎖エステル単位を含むセグメント化熱可塑性コポリエステルである。
【0016】
長鎖グリコールは、末端(又はできるだけ末端)の水酸化基及び約400を上回る、好適には約400乃至4,000の低分子量を有するポリマーグリコールである。これらは、例えば、ポリ(酸化アルキレン)グリコール、ポリ(酸化エチレン)グリコール、ポリ(酸化プロピル)グリコール、ポリ(酸化テトラメタレン(tetramethalene oxide))グリコール等にできる。
【0017】
短鎖エステル単位は、低分子量化合物又は約550未満の低分子量を有するポリマー鎖を指す。これらは、エチレンジオール、プロピレンジオール、ブタンジオール等の低分子量ジオール(約250未満)、又はエチレングリコールのための酸化エチレン又はエチレンカルボネート等の同等のエステル形成誘導体を、エステル単位を形成するためのジカルボン酸と共に使用して生成される。
【0018】
ジカルボン酸は、低分子量、すなわち、約300未満の低分子量を有する脂肪族、シクロ脂肪族又は芳香族ジカルボン酸である。この例には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、琥珀酸、シュウ酸等を含む。
【0019】
セグメント化熱可塑性コポリエステルエラストマーが当業者に公知であり、例えば、その開示内容が参照として本明細書中に組み込まれている、米国特許第3,651,014号、第3,763,109号、第3,766,146号及び第3,784,520号に記載されている。
【0020】
本発明の重要な特徴は、典型的なナノ層虹色フィルム構造への入射の際及び出射の際の両方の光の角度を変化させる表面及び/又は全体的な多層フィルム構造の改変である。改変は、フィルムを形成する連続する層の平面性又は「しわ」の変更であると思われる。改変した構造は、反射の鏡面反射角/鏡面光沢部分から離れた方向に反射の建設的干渉部分の方向を変える。本発明で製造されるフィルムは、鏡面反射光を含まずに測定される場合でも、及び(隅角分光光度計(goniospectrophotometer)で色の読取が行われる場合に見られるように、例えば、実施例1を参照)鏡面反射角から測定される場合でも、明るい反射色を測定することに特徴を有する。言い換えると、本発明のフィルムは、光の実質的な非鏡面反射(すなわち、反射角から反射した光)をもたらす。本明細書中に使用される「光の実質的非鏡面反射」は、サンプルを鏡面反射を含まない機器構成で積分球分光光度計によって測定したものを、同じサンプルを鏡面反射を含む機器構成で積分球分光光度計によって測定したものと比較して得られるもので、反射した鏡面反射光の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも75%である。
【0021】
本発明の虹色フィルムは、当業者に公知であるように、虹色フィルムでこれ以前には見られなかった「きらきらとした」色効果を生成する。反射角から離れた方向に虹色の反射色を移動させることで、反射光源の干渉なく多くの異なる角度ではっきりとした虹色が見えるようになる。反射光源は、虹色をより強くすることで、従来技術のフィルムの知覚される色強度を低減させる。本発明の改変したフィルムは非常に知覚度の高い色強度を有する。さらに、本発明のフィルムは金属化による処理が可能であり、従来技術の虹色フィルム構造ではほとんどの場合排除されてしまう、虹色を保持する。これにより、障壁抵抗等の金属化に関連する物理的な特性、及び鏡様反射等の装飾特性を所有する、虹色の装飾構造の生成が可能となる。
【0022】
次に図1及び図2を参照し、従来技術の多層虹色フィルム及び本発明の改変された多層フィルムの反射率特性の差について説明する。図1において、従来技術の多層虹色フィルムは参照番号10で示される。フィルム10に方向づけられた入射光は矢印12及び14によって示される。矢印14で示されるように、入射光は、フィルムの連続する個々の層の間の異なる屈折率によって、光が透明フィルム10を透過する際、参照番号16に示されるように屈曲する。参照番号18で示されるように、フィルム10の連続する層の2つの間の界面11から光が反射し、矢印22で示されるように、フィルム10の表面から反射した色として方向付けられる。矢印22によって示されるこの反射した光はフィルム10の虹色を提供する。残念ながら、参照番号12によって示される入射光は、参照番号20で示されるように、光源の鏡像反射としてフィルム10の表面から反射する。参照番号20で示されるように、フィルム10の表面からのこの反射光沢は、参照番号22で示されるように、入射光の反射角でさらにフィルムから方向付けられる虹色と混合する。光20からの反射光沢は、反射した光22の色を消し去る又は不明瞭にさせる。反射角のフィルム10からは色のついた光は反射されない。
【0023】
図2は、以下により詳細に記載されるように、本発明のプロセスに従って改変した虹色フィルムの反射率特性を示す。図2において、改変した虹色フィルムは、参照番号30によって主に示される。入射光は参照番号32及び34によって示される。矢印34に示されるように、フィルムに接触する光は、フィルムを透過すると、再びフィルム30を構成する連続する個々の層の屈折率の差のために、屈曲する。フィルム30を透過する矢印34からの入射光の方向の変化が矢印36に示される。矢印36からの光は、次に、参照番号38で示されるように、フィルム30の連続する層の間の界面31から反射し、矢印40及び42で示されるように、フィルム30の表面から色として反射する。本発明のフィルムにおいて、矢印40及び42で示されるように、虹色の反射色は、反射角から変位する。これにより、こうした色は矢印44で示されるように、入射光32から、フィルム30の表面からの光沢として反射した反射光によって消し去られることがないため、参照矢印40及び42で示されるように、信じがたいほど深く、鮮やかで、強力に見える虹色になる。
【0024】
本発明の新規の虹色フィルム及び得られた色の特定の反射率は、いくつかのプロセスによって得ることができる。各プロセスにおいて、フィルム表面のみが改変されるのでなく、フィルムの表面へより深く改変がされると考えられている。本発明のプロセスがフィルム表面を改変するのみである場合、フィルムが表面に積層されると、しわ又は表面の他の面の不完全性は別の表面にフィルムを積層するために使用される接着剤によって充填され、その効果は排除されると考えられている。本発明のフィルムを別の表面に積層した場合でも、フィルムでは普通と違う、かつ新規の色の効果が見られる。したがって、フィルムの平面性の崩壊はその表面よりも大きくなるはずであり、微細な表面の不完全性として示されることはない。
【0025】
本発明で見られる独自の反射特性を実現するための虹色多層フィルムの好適な改変方法は、上述のように、及び上記に記載され、参照によって本明細書中に組み込まれる米国特許第3,565,985号及び米国特許第3,773,882号に記載されているように、所望のフィードブロックによってフィルム層の共押出時にフィルムを加工することである。本発明のこの態様に従い、外部又は表面層は溶解し、平面フィルムダイによってフィルムの他の層と共に共押出される。表面層は、多層フィルムのコアを形成する層の少なくとも1つと大きく異なる凝固温度を有する。こうして、本発明に従い、共押出プロセス中において、表面層は、フィルムのコアを形成し、表面層がフィルムのコア多層の少なくとも1つと不適合である、その他の多層と共に押出される。本明細書中に使用される「不適合」という用語は、表面層が大きく異なる凝固温度を有し、通常、その他の層の少なくとも1つよりも低い温度で凝固することを意味する。例えば、テレフタル酸アルキレン又はアクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルから形成されたフィルム等の種々のポリエステルから形成された多層フィルムは、冷却時においてポリオレフィン層とは大きく異なる凝固温度を有する。
【0026】
表面層が、本発明の虹色フィルムを形成するその他の複数の層と共に共押出された後、押出フィルムは次に、不適合表面層が冷却ロール又は鋳造ロールと接触する冷却ロールに方向付けられる。鋳造ロール温度が、使用される光学コアポリマーの通常の冷却温度よりも低い30〜80°Fの温度である場合、非常に有用である。例えば、PBT表面層がテレフタル酸ポリブチレン及びポリメチレンアクリレートの交代層を含むコアフィルムと共押出される場合、典型的な冷却温度は約160〜180°Fである。本発明に従い、PBT/PMMAコアフィルムの1つの側にポリエチレン表面層を含む多層フィルムの冷却は約90〜100°Fになる。ポリエチレン層はより低い温度で凝固するため、多層フィルムのその他の層を形成する材料よりも早い速度で、表面層に接するフィルム表面だけでなくいくつかの種類のしわ又は面の歪みが形成されるが、歪みは、表面のある程度下及びフィルム全体においても多く存在するようである。フィルムの平面性崩壊において最善の結果を得るには、共押出された表面層間の凝固温度及び多層フィルムを形成する残りの層の凝固温度は大きく異なるべきである。本明細書中に使用される「大きく異なる」とは、共押出表面層の凝固温度が、コア層を形成するために使用される凝固温度より少なくとも約25%低くなるべきであることを意味する。コア層より少なくとも40%低い共押出表面層の凝固温度がこれをさらに裏付けている。
【0027】
表面層が時間と共にフィルムコアから容易に剥離するように、表面層が多層フィルムの残りの層と物理的に不適合である場合、フィルムを冷却した後でコアフィルムから表面層を取り除くことが有益である。表面層を取り除くと、残りのコアフィルムを、虹色フィルムが以前使われていた任意の物品で使用可能である。本発明の方法によって形成されたフィルムは任意の適した基板にさらに積層でき、現在虹色フィルムを使用する任意の応用例で使用可能である。知覚されるより明るい虹色及び最大の色強度の向上、及び前記色のより広い視角は、従来技術のフィルムよりも、該フィルムの装飾効果を大幅に向上できる。本発明の不適合表面層は、実際に不適合表面層が多層のコアフィルムと物理的及び化学的に適合できる場合に、コアフィルムに積層したままにできる。こうして、特定のポリエステルフィルムはコアフィルムの残りのポリエステル層よりもかなり速い凝固時間を有する表面層として使用できるようにしてもよい。
【0028】
非反射色を反射する虹色フィルムを形成するための上記の方法では、この効果は多くの場合、方向的であることがわかっている。例えば、入射光に対して明るく、強い非反射色を示すフィルムを90°回転させることで、非反射色の反射は排除される。
【0029】
いくつかのその他の方法が、当業者に公知の多層フィルムの面の崩壊を実現する上で有用であると考えられている。しかし、これらの他の方法は、上記の方法には記載されていないいくつかの欠点を有することがある。このため、上記の方法において、フィルムの歪みは、実際、多層フィルムの通常の共押出及び冷却プロセス時に生じる。しかし、以下に記載する方法は、形成された及び凝固された多層フィルムをさらに処理する処理後のステップである。このさらなる加工により、フィルム生成プロセスにさらにコストがかかることがある。
【0030】
多層フィルムの平面性を崩壊させ、その光学特性に影響を与えるこれらの代替プロセスの1つにおいて、従来技術で形成される共押出多層フィルムは溶媒槽に方向付けられ、溶媒は、コアフィルムを形成する多層の少なくとも1つと不適合である。この方法において、溶媒が膨張する、又は本発明のフィルムの非鏡面虹色を生成するために、フィルムを永久に崩壊させるように多層フィルムの一部を崩壊させると考えられている。このため、PENから形成されたもの等の特定のポリエステルベースのフィルム及びPBT等のその他のポリエステルはトリクロロエチレンで処理される場合に、及びEVA及びその他のポリエステルから形成されたフィルムはメチルエチルケトンで処理される場合に、非鏡面虹色を生じさせることができるということがわかった。有機溶媒の使用及び、また、以降の処理後プロセスによって、こうした方法がコスト及び/又は安全上の理由で非実用的となる場合があることが明らかである。
【0031】
別の代替方法において、従来技術で公知のもの等の形成済み多層フィルムは、交代層及び連続するフィルム層間で異なる収縮率を生じさせるために正確な条件においてオーブン内で加熱することで、表面及びコアフィルムにおいてしわ又はその他の面の歪みを生じさせる。面の歪みを生じさせるために、いくつかのフィルム形成を一連の加熱ローラによって加熱できる。また、これらの方法は、フィルムのコストがかさむ可能性のある簡潔で、多くの場合長時間かかる成形後の方法のステップを含む。さらに、この方法が一貫した結果を提供できることは必ずしも明らかではなく、本発明の非鏡面虹色を得るための方法として開示されているが、本発明のフィルムの独自の特性を実現する好適な方法ではない。溶媒処理方法又は加熱後の方法の両方で、フィルムは処理中に高い張力が加えられず、溶媒内又は加熱オーブン内にゆとりを持って配置される、又は複数の加熱ローラの周囲に大きな緩みを含むことが重要である。
【0032】
実施例1
従来技術の多層虹色フィルム及び本発明の方法により形成されるフィルムの光反射率の比較を実施した。両フィルムは、ポリブチレンテレフタレート及びポリメチルメタクリレートの113の交互層のコアを含んでいた。従来技術のフィルムはさらに、コアの対向する両表面においてより厚いPBT最外層を含んでいた。標準的なフィルムが、上記の共押出プロセス及び約170°Fで冷却される共押出フィルムローラによって形成された。PBT表面層は113層コアとは共押出されなかったが、本発明のフィルムが同じ共押出プロセスでさらに形成された。代わりに、コアの1つの表面のみがポリエチレン層を含むように、コアの1つの側のみにポリエチレン層が共押出された。共押出フィルムが、ポリエチレン表面層のみがローラに接触するように、90°Fにローラ冷却された。凝固時に、ポリエチレン表面がコアから剥離し、最終的なフィルムから除去された。
【0033】
各フィルムから反射した光を、反射を含む及び反射を含まない機器構成の両方において積分球分光光度計で測定し、結果を、標準的な従来技術のフィルムについて図3に、本発明のフィルムについて図4にグラフで示した。図3に示されるように、鏡面反射光が測定に含まれない場合、反射した非鏡面反射光がわずかな量あるのみである。このため、従来技術のフィルムにおいて、非鏡面反射は、反射した鏡面反射光の15%にすぎない。一方で、本発明のフィルムは、明るく、強い、非鏡面色を生じる。測定により、非鏡面色の反射率が反射した鏡面反射光の84%であることが示された。
【0034】
隅角分光光度計を使用して、各フィルムの測定をさらに行った。本発明のフィルムは、反射角から測定した場合に強い反射を示す。隅角分光光度計測定は、センサが5°ごとに増分して0°乃至80°を移動する一方で、25°で一定に固定された照射を使って行われた。図5に示されるように、従来技術の標準的なフィルムは25°(反射角)前後の狭い範囲でのみ強い反射率を示す一方、本発明のフィルムは、約0°乃至約70°で強い反射率を示している。色度値L、a、及びbはさらに、この測定角範囲において高く保たれる。Lの値は、図6で測定角の関数としてプロットされる。図7は、色度値a及びbの2次元プロットである。本発明のフィルムが測定範囲において強い色値を保持する一方で、従来技術のフィルムの色データは、測定角が反射角から離れるとすぐに0に戻ることがわかる。また、0°、45°、及び65°の一定角度で固定された光源で、同じ技術を使ってさらなる測定を行った。これらの測定でも同様のデータが得られたが、これはつまり、本発明のフィルムが反射角から離れて強い色反射を保持するということである。これは、本発明のフィルムの虹色の非常に広い観察窓を数値的に説明する。
【0035】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に確認でき、その精神及び範囲から逸脱することなく、これを種々の用途及び条件に適合させるために、本発明に対し種々の変更及び改変を実行可能である。
【符号の説明】
【0036】
30 虹色フィルム
31 界面
32 入射光
34 入射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約30乃至500nmの実質的に均一な厚さを有する少なくとも10層の極薄層からなる透明熱可塑性樹脂積層フィルムであって、前記極薄層は実質的に平行であり、前記極薄層の連続する隣接層は異なる透明熱可塑性樹脂材料からなり、前記連続する隣接層は屈折率が少なくとも約0.03異なり、且つ当該フィルムは反射された鏡面反射光に対して少なくとも30%の非鏡面反射色の反射を有することを特徴とする透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項2】
前記連続する隣接層は屈折率が少なくとも約0.06異なる、請求項1に記載の透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂材料の内の1種はポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項1に記載の透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂材料の内の1種はポリメチルメタクリレートである、請求項3に記載の透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項5】
ポリオレフィンの外側層を含む、請求項4に記載の透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項6】
当該フィルムは、前記反射された鏡面反射光の少なくとも50%の非鏡面反射色の反射を有する、請求項1に記載の透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項7】
当該フィルムは前記反射された鏡面反射光の少なくとも75%の非反射色の反射を有する、請求項1に記載の透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項8】
約30乃至500nmの実質的に均一な厚さを有する少なくとも10層の極薄層からなる透明熱可塑性樹脂積層フィルムであって、前記層は実質的に平行であり、前記極薄層の連続する隣接層は異なる透明熱可塑性樹脂材料からなり、前記連続する隣接層の屈折率は少なくとも約0.03異なっており、当該フィルムは、前記極薄層と前記フィルムの一方の表面に設けられた熱可塑性樹脂の外側非相溶性層との共押出によって形成され、前記熱可塑性樹脂の前記外側層は前記極薄層の少なくとも1つの前記凝固温度よりも少なくとも25%低い凝固温度(°F)を有しており、前記共押出されたフィルムを冷却し、これにより前記積層フィルムの前記平面性が、前記外側層と前記少なくとも1層の極薄層との前記異なる凝固温度のために崩壊して、前記積層フィルムが非鏡面反射色を反射することを特徴とする、透明熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項9】
前記共押出されたフィルムは、前記外部層のみを冷却ローラと接触させることによって冷却される、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記外側層は、前記少なくとも1つの薄い層の前記凝固温度よりも少なくとも40%低い凝固温度を有する、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂材料の1つはポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂材料の内の1種はポリメチルメタクリレートである、請求項11に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記外側層はポリオレフィンである、請求項12に記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記外側層は前記冷却後に前記積層フィルムから剥離されている、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項15】
約30乃至500nmの実質的に均一な厚さを有する少なくとも10層の極薄層からなり、前記極薄層は実質的に平行であり、前記極薄層の連続する隣接層は異なる透明熱可塑性樹脂材料からなり、前記連続する隣接層の屈折率が少なくとも約0.03異なる透明熱可塑性樹脂積層フィルムを製造する方法であって、当該方法は、前記極薄層と、前記フィルムの一方の表面上に設けられた熱可塑性樹脂の外側層とを共押出する工程(但し、前記熱可塑性樹脂の前記外側層は前記極薄層の少なくとも1層の前記凝固温度とは実質的に異なる凝固温度(°F)を有している)、前記共押出されたフィルムを冷却し、これにより前記積層フィルムの前記平面性を、前記外側層及び前記少なくとも1層の薄い層の前記異なる凝固温度により、前記積層フィルムが非鏡面反射色を反射するように崩壊させる工程を含むことを特徴とする透明熱可塑性樹脂積層フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記外側層は、前記少なくとも1層の極薄層の前記凝固温度より少なくとも25%低い凝固温度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記外側層は、前記少なくとも1層の極薄層の前記凝固温度より少なくとも40%低い凝固温度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
約30乃至500nmの実質的に均一な厚さを有する少なくとも10層の極薄層からなり、前記極薄層は実質的に平行であり、前記極薄層の連続する隣接層は異なる透明熱可塑性樹脂材料からなり、前記連続する隣接層の屈折率は少なくとも約0.03異なる透明熱可塑性樹脂積層フィルムを製造する方法であって、当該方法は、前記異なる透明熱可塑性樹脂材料を前記積層フィルムに共押出する工程、前記極薄層のうちの少なくとも1層又は加熱時において異なる収縮率を有する前記材料と非相溶性である溶媒で前記フィルムを処理する工程、及び前記積層フィルムを加熱して、前記平面性を崩壊させるように前記材料の前記収縮率を制御する工程を含む、透明熱可塑性樹脂積層フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記溶媒処理はトリクロロエチレン又はメチルエチルケトンによるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フィルムはオーブン内で又は一連の加熱ローラによって加熱される、請求項18に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公表番号】特表2010−527298(P2010−527298A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507546(P2010−507546)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062328
【国際公開番号】WO2008/137620
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】