説明

面状発熱体及びその製造方法

【課題】消費電力の省エネ化となる導電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工、施工時の容易化を図る。
【解決手段】ポリカーボネートフィルムからなる基材と、
前記基材の長手方向に適宜な間隔で伝導性発熱インキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分からなる伝導印刷部と、
前記伝導印刷部において前記基材の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材上に設けられ、かつ前記伝導印刷部の複数の各印刷部分に通電する導電性フィルムからなる電極と、
前記伝導印刷部と前記電極を覆って前記基材上にラミネートするための、片面に接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムであるラミネートフィルムと、
を備えていることを特徴とする面状発熱体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、面状発熱体及びその製造方法に関し、特にPOP(販促商品)や、床暖房、融雪、岩盤浴の用途に使用される面状発熱体であって、消費電力の省エネ化となる通電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工、施工時の容易化を図ることのできる面状発熱体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の面状発熱体としては、例えば特開2004−36961号公報に示されているように、絶縁性のフィルムからなる下地材と、この下地材の上にそれぞれの間に空白を設けて印刷された複数の発熱部となる複数のカーボンと、このカーボンの両側に沿って前記下地上で設けられ前記カーボンに電流を流すための導体と、前記下地材上に前記カーボン及び導体を覆ってラミネートされた絶縁シート材からなる複合素材とを備えている。
【特許文献1】特開2004−36961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の面状発熱体においては、下地材が絶縁性のフィルムであるといっても種々の材質のフィルムがあるが、実際には下地材に印刷されるカーボンは湿気によって熱効率が変わってくるので、水分吸収性が高いフィルムではカーボンの通電状態が不安定となる。
【0004】
また、面状発熱体は寒暖サイクルの条件下で使用されるので、下地材は耐寒性・耐熱性の条件とそれに伴う経時変化が生じない素材が求められる。
【0005】
さらには、面状発熱体が折り曲げられることで伸縮するとカーボンの抵抗値の変化が大きくなるので、下地材には低伸縮性の素材が求められる。
【0006】
さらに、下地材に印刷したカーボンは複合素材で覆うようにラミネートされる構成であるが、前記複合素材はポリカーボネートとポリエステルとが貼り合わされている構成であるので、耐寒性、耐熱性、低水分吸収性、低伸縮性という点では上記の下地材と同様に不十分であった。
【0007】
また、下地材に印刷するカーボンにはピンホールができるとカーボンの通電状態に悪影響が生じるので避けたいのであるが、カーボンは粒子が粗いために印刷時にピンホールができやすいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の面状発熱体はポリカーボネートフィルムからなる基材と、この基材の長手方向に適宜な間隔で伝導性発熱インキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分からなる伝導印刷部と、この伝導印刷部において前記基材の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材上に設けられ、かつ前記伝導印刷部の複数の各印刷部分に通電する銅箔フィルムなどの導電性フィルムからなる電極と、前記伝導印刷部と前記電極を覆って前記基材上にラミネートするための、接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムであるラミネートフィルムと、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の面状発熱体は、前記面状発熱体において、前記電極が、前記伝導印刷部の幅方向の両端間に複数設けられていることが好ましい。
【0010】
この発明の面状発熱体の製造方法は、次の工程によって製造されることを特徴とするものである。
【0011】
(A)印刷部を作画した製版を準備する準備工程、
(B)伝導性発熱インキの塗布量に適応するスクリーンメッシュの選定をする刷版工程、
(C)ラミネートするためのポリカーボネートフィルムに接着剤層を形成する工程、
(D)ポリカーボネートフィルムからなる基材を目的に合わせて幅方向にスリット又は枚葉に裁断を行う第1切断加工工程、
(E)前記第1切断加工工程で裁断されたポリカーボネートフィルムを熱風乾燥させる乾燥工程、
(F)前記乾燥工程にて熱風乾燥させた基材のポリカーボネートフィルムを、前記準備工程にて準備された製版をセットした刷版を用いてスクリーン印刷機により、前記基材のボリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にて伝導性発熱インキのスクリーン印刷と、乾燥機にて乾燥とを行って複数の印刷部分からなる伝導印刷部を形成する印刷工程、
(G)前記印刷工程にて基材のポリカーボネートフィルム上に印刷された伝導印刷部の複数の各印刷部分の幅方向の両側に、電極となる導電性フィルムを貼り合せる導電性フィルム貼り合せ工程、
(H)前記導電性フィルム貼り合せ工程にて貼り合わされた伝導印刷部・導電性フィルム付き基材のポリカーボネートフィルムに、前記接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムを貼り合わせるラミネート工程、
(I)前記ラミネート工程にて貼り合わせたフィルムをスリット又は裁断を行う第2切断加工工程。
【0012】
また、この発明の面状発熱体の製造方法は、前記面状発熱体の製造方法において、前記印刷工程にて、粗いメッシュから細かいメッシュへ段階的に変化させた複数の刷版で伝導性発熱インキのスクリーン印刷の重ね刷りを行うことが好ましい。
【0013】
また、この発明の面状発熱体の製造方法は、前記面状発熱体の製造方法において、前記銅箔フィルム貼り合せ工程で、前記伝導印刷部の幅方向の両端間に電極となる銅箔フィルムなどの導電性フィルムを複数貼り合せることが好ましい。
【0014】
また、この発明の面状発熱体の製造方法は、印刷部分が、2以上の印刷パターンから構成されているものもできる。
【発明の効果】
【0015】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の面状発熱体によれば、基材として使用しているポリカーボネートフィルムが湿気対策と絶縁対策も兼ねていると共に耐寒性・耐熱性に優れた素材であるので、寒暖サイクルの条件下で使用される面状発熱体の複数の印刷部分からなる伝導印刷部の通電状態を安定させることに寄与する。さらに、ポリカーボネートフィルムは柔軟性に富んでおり、低伸縮性の素材であるので、メンテナンスフリー対策となる。又、様々な形態の商品の加工を幅広く出来、且つ柔軟な形態が出来る。
【0016】
また、基材の上面に伝導印刷部と電極を覆ってラミネートされているポリカーボネートフィルムの片面が、例えばアクリル系接着剤層を形成した構成であるのと、前記アクリル系接着剤とポリカーボネートフィルムのいずれも、湿気対策と絶縁対策も兼ねているので、外部からの空気を遮断して伝導性発熱インキに余分な水分を受け付けないようにして伝導性発熱インキの持つ特性を安定させることができる。
【0017】
また、基材フィルムとラミネートフィルムとが、ともにポリカーボネートフィルムであるために、透明であり、容易に伝導印刷部の複数の印刷部分及び電極の導電性フィルムを見分けることとができ、それ以外の領域でビスや釘等の固定具により面状発熱体を固定でき、施工時の容易化を図ることができる。又、印刷部分の損傷を避けることが出来る。
【0018】
この発明の面状発熱体の製造方法によれば、使用目的に応じて幅、長さを予め決め、且つスクリーンメッシュの選定と組み合わせを行って目的温度に応じて伝導性発熱インキの塗布量を調整しているので、スクリーン印刷時に安定した通電状態の伝導印刷部を形成することができる。
【0019】
したがって、消費電力の省エネ化となる通電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工の容易化を図ることができる。
【0020】
また、基材のポリカーボネートフィルムに対して熱風乾燥をしてアニールを行っているので、設定温度の安定化と印刷加工後の基材の伸縮によって起こる材料同士の層間剥離を防止できる。
【0021】
また、ラミネート工程で伝導印刷部・導電性フィルム付き基材のポリカーボネートフィルム上に接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムを貼り合わせることで、接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムが印刷部分や電極の段差を吸収してラミネート加工時のトンネリングを防止できる。さらには、両外側のポリカーボネートフィルムの耐熱性・耐寒性の併せ持つ特性が面状発熱体の全体の絶縁対策と湿気対策に寄与する。
【0022】
また、印刷部分が、2以上の印刷パターンから構成されているので、1つの発熱体で2以上の発熱パターンを簡便に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1(A)〜(C)は、印刷部分が単一設定(単一印刷パターン)形態である。この実施の形態に係る面状発熱体1は、ポリカーボネートフィルム(透明)からなる基材3の上に、前記基材3の長手方向(図1(B)、(C)において左右方向)に適宜な間隔で伝導性発熱インキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分5Aからなる伝導印刷部5が設けられている。印刷部分5は、通電の安定性を確保するために重ね刷りされていることが好ましい。
【0025】
さらに、前記伝導印刷部5の複数の各印刷部分5Aに通電する導電性フィルムからなる電極7が、前記伝導印刷部5において前記基材3の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材3の上面に設けられている。導電性フィルムとしては、導電性の材料であれば限定されるものではなく、後述の銅箔フィルムなどが好ましく用いられる。
【0026】
また、前記基材3の上面には、ラミネートフィルム9が前記伝導印刷部5と前記電極7を覆ってラミネートされている。なお、上記のラミネートフィルムは、例えば、アクリル系接着剤層13を形成したポリカーボネートフィルム17(透明)である。
【0027】
図1(D)〜(F)は、印刷部分が単一設定(単一印刷パターン)形態ではなく、複数設定(2以上の印刷パターン)形態を示したものである。印刷部分を複数設定することにより、2以上の発熱パターンを実現できる。それぞれの印刷パターンは、同一形状で異なる伝導性発熱インキを用いてもよく、異なる形状で同一伝導性発熱インキを用いてもよく、異なる形状で異なる伝導性発熱インキを用いてもよい。それぞれの印刷パターンは、通電しなければならないので、電極7と接するか、他の印刷部分5B−1と接している必要がある。図1(E)(F)では、印刷部分5B−1と接している例を示した。
【0028】
なお、この実施の形態に示されている図では、基材3、アクリル系接着剤層13を形成したポリカーボネートフィルム17が透明であるので、透過した状態で図示されている。さらに、図1(A)および(D)の断面図では基材3とアクリル系接着剤13 との間が空いているが、実際には貼り合わされている状態であり、図1(A)および(D)は拡大された断面図であるが、各部材の実際の厚さは薄いので伝導印刷部5の複数の印刷部分5 や電極7の段差が小さいものである。
【0029】
また、面状発熱体1の性状は、伝導性発熱インキ、刷版・印刷方法及び乾燥条件、基材3との相関関係から、設定すべき発熱温度の数値(傾向)で決められるものである。
【0030】
上記の面状発熱体1を構成する各素材について詳しく説明すると、基材3のポリカーボネートフィルム(透明)は、寒暖サイクルの条件下で使用される面状発熱体1の素材として、耐寒性・耐熱性の条件とそれに伴う経時変化が起きない優れた素材である。しかも、ポリカーボネートフィルムは柔軟性に富んでおり、低伸縮性の素材としても適しているのでメンテナンスフリー対策となる。なお、この実施の形態では、基材3のポリカーボネートフィルムの厚さは例えば0.18〜1.0mm である。
【0031】
また、ポリカーボネートフィルムは、融点温度が約240℃であり、厚さによって温度の若干の差があるが、軟化温度が約 85℃ 以上である。さらに、ポリカーボネートフィルムは、溶解度(塩化メチレン)不溶であり、引火点が 522℃で、発火点が550℃で、可燃性は酸素指数26以上にランクされて不燃性・難燃性を有するものとして扱われており、自然発火の恐れがない素材である。したがって、このポリカーボネートフィルムは湿気対策と絶縁対策も兼ねている。
【0032】
また、発熱部としての伝導印刷部5を構成する伝導性発熱インキとしては、通電して発熱するものであればよく、公知のシルクスクリーン印刷インキを使用できる。このシルクスクリーン印刷インキとしては、例えばセルロース系、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系、アクリル/メラミン系、エポキシ系、エボキシ/メラミン系樹脂等のバインダーに、シルクスクリーン印刷適性を与え、導電性を付与するために、カーボン、金属、金属酸化物などの導電性物質を混入するものが使用できる。
【0033】
この発明の実施の形態としては、電流を通りにくくして電気抵抗を発生するようにして伝導性発熱材を練り込んだシルクスクリーンインキが使用されている。すなわち、上記の伝導性発熱材としては導電時の発熱エネルギー交換の高効率を生じさせて消費電力の省エネ化を図れるものが望ましい。ちなみに、インキ配合の伝導性発熱材比率を上げると、粘度が低くなって印刷適性が悪くなるために、塗布量と電気抵抗値のバラつきを生じさせることになる。
【0034】
そこで、この発明の実施の形態のシルクスクリーンインキの粘度は、スプレッドメーターSM14.0mm/25℃であり、シルクスクリーンインキの表面電気抵抗値は0.6Ω/□である。
【0035】
図2及び図3を併せて参照するに、伝導印刷部5の複数の発熱部となる複数の各印刷部分5Aの印刷パターンのデザインは、用途や目的に合わせて変えるものである。各印刷部分5Aの幅寸法C(図2(A)において左右方向の寸法)を例えば50mmとし、複数の印刷部分5Aの間隔D(図2(A)において左右方向の寸法)を例えば50mmとすることができる。あるいは、各印刷部分5Aの幅寸法Cを例えば10mmとし、複数の印刷部分5Aの間隔Dを例えば10mmとすることができる。このように印刷部分5Aの寸法を変化させて、例えば各印刷部分5Aの幅寸法Cを狭くすると電極7とのカーボン接点の温度が高くなり、各印刷部分5Aの幅寸法Cを広くすると電極7とのカーボン接点の温度が低くなる。又、5Bの印刷パターンのデザインは、用途や目的に合わせて変えるものである。各印刷部分5B−1の幅寸法C(図2(B)において左右方向の寸法)を例えば50mmとし、複数の印刷部分5B−1の間隔D(図2(B)において左右方向の寸法)を例えば100mmとすることができる。更に、その印刷パターン上に例えば130mmの印刷部分5B−2を重ね刷りし、同一上の発熱体内で多種類の温度設定が出来る。
【0036】
そこで、この実施の形態では、設定温度に応じて電極7の間の長さ、巾を考慮に入れて、各印刷部分5の図3(A)および(C)において上下方向の両端部分(E部、電極と接する部分)の形状が、平面視にて波状のように滑らかな曲線形状とされている。これにより、電極7との伝導性発熱インキ接点が点接点では無く、面積接点となる。従来の各印刷部分5Aの図3(B)および(D)において上下方向の両端部分(F部)の形状が平面視にて直線状であるために、電極7とのカーボン接点が鋭角な点接点では接点部分の電気の流れが集中し、部分的な温度上昇と接点部分の負荷が増大するが、この実施の形態では上記のように面積接点とすることで、電気の流れが分散され、部分的な温度上昇を回避できる。このように電気ショートを避けるために鋭角な接点デザインは避けるようにすることが望ましい。
【0037】
また、上記の複数の印刷部分5Aまたは5B−1の間隔Dが狭いと熱伝達効率が良くなり、複数の印刷部分5Aまたは5B−1の間隔Dが広いと熱伝達効率が悪くなるので、電気の流れを分散して温度上昇を抑えるために、複数の各印刷部分5Aまたは5B−1の幅寸法Cや間隔Dを変えて種々の印刷パターンを設定することができる。同様に、複数の各印刷部分5B−2の幅寸法や間隔を変えて種々の印刷パターンを設定することができる。
【0038】
また、電極7である銅箔フィルムなどの導電性フィルムは、たとえば、導電性粘着剤を塗布した接着テープタイプが使用されている。すなわち、粘着剤の部分に銅粉を練り込み導電性の向上が図られており、導電時の電流抵抗を抑えて銅箔部分の発熱を抑える構成となっている。銅箔フィルムの電気抵抗値は例えばΩ/25mm×25mm(1×10-1)であり、使用規格は例えば25mm巾×35μm(厚さ)である。
【0039】
図4を参照するに、電極7の配置状態は、伝導印刷部5において基材3の長手方向に直交する幅方向(図4(A)と(B)において上下方向)の両端間に複数設けることもできる。例えば、図4(A)では伝導印刷部5の両端の電極7A,7Bの間に3つの電極7C,7D,7Eが配置されている。
【0040】
これにより、例えば電極7A,7Bに通電すると、伝導印刷部5の複数の各印刷部分 5Aの全長に亘って電流が流れるので、面状発熱体1のほぼ全体領域が発熱することになる。一方、例えば電極7A,7Dに通電すると、複数の各印刷部分5Aには電極7A,7Dの間だけに電流が流れることになるので、電極7A,7Dの間だけの面状発熱体1のほぼ半分の領域が発熱することになる。同様にして、例えば電極7C,7Eに通電すると、複数の各印刷部分5Aには電極7C,7Eの間だけに電流が流れることになるので、電極7C,7Eの間だけの面状発熱体1の中央付近の領域が発熱することになる。このように、面状発熱体1の発熱領域を調整することができる。又、図(B)も同様である。
【0041】
なお、複数の各印刷部分5Aの中間で接触する電極7C,7D,7Eとの接点は面積接点となるので部分的な温度上昇とはならない。
【0042】
図5を参照するに、例えば、ラミネートフィルム9は、アクリル系接着剤層13を形成したポリカーボネートフィルム17であり、アクリル系接着剤13の外側には例えば厚さ38μmのPET セパレータフィルム19(剥離フィルム)が貼り合せている。図5に示されているセパレータ付きポリカーボネートフィルム21が形成される。
【0043】
なお、上記のアクリル系接着剤13は導電性が無いので、湿気対策と絶縁対策も兼ねている。
【0044】
一般的には、ラミネート加工方法はドライ・ウエット方式が多い中、後述する面状発熱体 1の製造方法のロール仕様では印刷部分5Aや電極7としての銅箔フィルムの厚さの段差が部分的にあることと、伝導性発熱インキの特性上、湿気に影響を受けやすいので、一般的なラミネート加工で使用されるアクリル系以外の接着剤では油性系・水性系から影響を受けるために伝導性発熱インキの持つ特性が発揮されずに、電気抵抗値が変化をしてしまう。
【0045】
しかし、上記の接着剤層を形成した透明ポリカーボネートフィルムが上記の印刷部分5Aや電極7の段差を吸収すると共に、使用されているアクリル系接着剤13が湿気対策と絶縁対策を兼ねた性質があるので伝導性発熱インキの持つ特性を安定させる効果を発揮する。なお、ラミネートフィルム9に使用されるポリカーボネートフィルム17(透明)としては、前述した基材3として使用されるポリカーボネートフィルム(透明)と同様であるので、詳細な説明は省略する。上記構成により、この実施の形態の面状発熱体1では、基材3として使用しているポリカーボネートフィルムは水分吸収性が低いフィルムであり、湿気対策と絶縁対策も兼ねた素材であるので、基材3に伝導性発熱インキにて印刷される複数の印刷部分5Aからなる伝導印刷部5の通電状態が安定することとなる。
【0046】
また、ポリカーボネートフィルムは耐寒性・耐熱性の条件とそれに伴う経時変化を生じない素材であるので、寒暖サイクルの条件下で使用される面状発熱体1の伝導印刷部5の通電状態を安定させることに寄与する。
【0047】
さらに、ポリカーボネートフィルムは柔軟性に富んでおり、低伸縮性の素材としても適しているので、面状発熱体1が折り曲げられても伝導印刷部5の通電状態が安定することからメンテナンスフリー対策となる。
【0048】
さらに、電流を通りにくくして電気抵抗を発生するようにして伝導性発熱材を練り込んだシルクスクリーンインキを使用することで、伝導印刷部5の通電時の発熱エネルギー交換の高効率を生じさせて消費電力の省エネ化を図ることができる。
【0049】
また、基材3の上面に伝導印刷部5と前記電極7を覆ってラミネートされているラミネートフィルム9が、片面にアクリル系接着剤13層を形成した透明ポリカーボフィルム17をラミネートした構成であるときは、アクリル系接着剤13とポリカーボネートフィルム17のいずれも、湿気対策と絶縁対策も兼ねているので、外部からの空気を遮断して伝導性発熱インキに余分な水分を受け付けないようにして伝導性発熱インキの持つ特性を安定させることができる。
【0050】
また、面状発熱体1を構成する基材3であるポリカーボネートフィルムとラミネートフィルム9のアクリル系接着剤層を形成したポリカーボネートフィルム17とが透明であることから、伝導印刷部5の複数の印刷部分5及び電極7の銅箔フィルムが見えるので、面状発熱体1をビスや釘等の固定具で取り付ける際には、容易に伝導印刷部5の複数の印刷部分5及び電極7の銅箔フィルム以外の領域で固定することができ、施工時の容易化を図ることができる。又、様々な形態での加工時に於いて裁断、曲げ加工、接着加工が容易に出来る。
【0051】
次に、この発明の実施の形態の面状発熱体1の巻き取り(ロール)方式の製造方法について説明する。
【0052】
図6〜図12を併せて参照するに、この製造方法は、準備工程(A)、刷版工程(B)、接着剤層形成工程(C)、第1切断加工工程(D)、乾燥(アニール)工程(E)、印刷工程(F)、導電性フィルム貼り合せ工程(G)、ラミネート工程(H)、第2切断加工工程(I)、によって面状発熱体1が製造される。
【0053】
準備工程(A)は、使用目的は面状発熱体1の仕様であるので、図3(A)と(C)に示されているように、伝導印刷部5の複数の発熱部となる複数の印刷部分5A及び5Bの印刷デザインの工夫が行われる。印刷デザインは上記の使用目的、つまり設定温度に応じて幅寸法C、長さ寸法G及び各印刷部分5A及び5Bの間隔Dが予め決められ、更に複数の温度設定をする場合には部分的な重ね刷りをすることが好ましい。また、前記各印刷部分5A及び5Bの両端部分(E部)には平面視にて波状のように滑らかな曲線形状の接点部分を作画した製版が準備される。つまり、伝導性発熱インキ接点の部分的な温度上昇を抑えるために、鋭角な接点部分を無くすようにして電極7との接点部分の発熱抑制とショート対策が行われる。
【0054】
刷版工程(B)は、目的の発熱温度に応じて伝導性発熱インキの塗布量の調整を考慮に入れてスクリーンメッシュの選定と組み合わせを行う工程である。例えばスクリーンメッシュとしては、80メッシュ、100メッシュ、120メッシュ、150メッシュ、200メッシュ等がある。また、感光膜(感光フィルム)の考慮も必要であり、感光フィルムは100μmを設定している。
【0055】
第1切断加工工程(D)は、図6に示されているように、ロール状のポリカーボネートフィルムからなる基材3が第1スリット加工装置23の複数のローラ23Aによりカッタ付きローラ23Bへ走行されて、カッタ23Cにより目的に合わせて幅方向にスリット加工が行われ、所謂第1スリット加工工程である。図6ではスリット部23Dが形成される。この工程ではスリット加工後の基材3が再びロール状に巻回されるロール・トウ・ロールで行われる。
【0056】
熱風乾燥(アニール)工程(E)は、図7に示されているように、前記第1切断加工工程(D)でスリット加工されたロール状の基材3のポリカーボネートフィルム(透明)を乾燥機25内に走行せしめて、後工程の印刷時に起こる基材3の伸縮を防止するために、基本的には印刷前に基材3の寸法精度を上げる目的で90℃/3分以上の熱風乾燥をする工程である。なお、この熱風乾燥(アニール)は、設定温度の安定化と印刷加工後の基材3の伸縮によって起こる材料同士の層間剥離を防止することが目的である。この工程では熱風乾燥(アニール)後の基材3が再びロール状に巻回されるロール・トウ・ロールで行われる。
【0057】
印刷工程(F)は、図8に示されているように、前記乾燥工程(E)にて熱風乾燥を行ったロール状の基材3のポリカーボネートフィルムを、前記準備工程(A)にて準備された製版をセットした刷版27を用いてスクリーン印刷機29により、前記基材3のポリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にて伝導性発熱インキのスクリーン印刷を行い、次いで乾燥機 31にて乾燥を行って複数の印刷部分5A及び5Bからなる伝導印刷部5を形成する工程である。この工程では印刷後の基材3が再びロール状に巻回されるロール・トウ・ロールで行われる。
【0058】
なお、上記のスクリーン印刷は設定温度に応じて複数回の重ね刷りを行うことが望ましく、この実施の形態では2回の重ね刷りが行われている。この重ね刷りは、1度目は第1スクリーン印刷機29Aにてメッシュ数値の粗い製版を用いて印刷してから、第1乾燥機31A にて乾燥温度80℃/3分以上で再乾燥される。次いで、2度目は第2スクリーン印刷機 29Bにてメッシュ数値の細かい製版を用いて印刷してから、第2乾燥機31Bにて乾燥温度80℃/3分以上で再乾燥される。なお、この印刷後の乾燥温度は伝導性発熱インキのタイプによって若干の違いはあるが、基本的には80℃〜85℃ぐらいで行われる。
【0059】
このように少なくとも2回以上の重ね刷りが行われることで、伝導性発熱インキの粒径が粗いために生じる印刷後のインキの塗布量のバラつきを抑えることができる。特に、段階的に粗いメッシュから細かいメッシュへ変化させた製版でスクリーン印刷することで、インキの塗布分布が安定して均一の塗布量が得られるので、比較的電気抵抗値の安定化を図ることができる。重ね刷りをしても、もし同じメッシュの製版で印刷すると、印刷部分5Aにピンホールが発生して電気抵抗値のバラつきが生じるために、目的の発熱温度あるいは電気抵抗値が得られないことになる。なお、上記のように巻き取り方式の場合は、各第1,第2スクリーン印刷機29A,29Bにて印刷後にその都度対応する各第1、第2乾燥機31A、31Bにて再乾燥が行われる。
【0060】
接着剤層形成工程(C)は、ポリカーボネートフィルム上にアクリル系接着剤などの接着剤が公知の方法で塗布される。層形成方法は、転写などの形態であってもよい。必要に応じて、接着剤を保護するためのフィルムが使用される。例えば、図9に示されているように、塗布機械装置33を用いて、目的巾のロール状のポリカーボネートフィルム17にアクリル系接着剤13を塗布し、熱風乾燥し、保護フィルム(PET)19を貼り合せし製造される工程である。接着剤層形成工程(C)では、基本的なことは巻き取り(ロール)方式と同様であるので、他の詳細な説明は省略する。
【0061】
この工程では製造されたラミネートフィルム21が再びロール状に巻回されるロール・トウ・ロールで行われる。
【0062】
なお、この製造されたラミネートフィルム21は、後工程のラミネート工程(H)にて基材3のポリカーボネートフィルム(透明)とのラミネート加工時のために工夫されている。つまり、絶縁目的と湿気対策を考慮に入れた加工が行われている。
【0063】
より詳しく説明すると、一般的なラミネート加工はドライ方式又はウエット方式で行われるが、このラミネート加工時に使用される溶剤や水分は印刷部分5A及び5Bの伝導性発熱材インキに対して目的の電気抵抗値に影響を与えてしまう。また、前工程による印刷部分5A及び5Bの段差と銅箔フィルムの段差が有るためにラミネート加工時にトンネリングが生じることになる。そこで、これらのことを解消する目的でラミネートフィルム21として、アクリル系接着剤ポリカーボネート透明フィルムが使用されている。すなわち、前述した図5のアクリル系接着剤ポリカーボネートフィルム21で説明したように、アクリル系接着剤13は湿気対策と絶縁対策を兼ねているので伝導性発熱インキの電気抵抗値を安定させることができ、粘着剤層を形成したポリカーボネート透明フィルム21の厚さで上記のラミネート加工時のトンネリングを防止できる。
【0064】
導電性フィルム貼り合せ工程(G)は、図10(A)と(B)に示されているように、貼り合せ装置37を用いて、前記印刷工程(E)にて伝導印刷部5の複数の各印刷部分5Aを印刷した基材 3のポリカーボネートフィルムがヒータロール37Aの間に走行されると共に、電極7となる導電性フィルムが伝導印刷部5の複数の各印刷部分5A及び5Bの幅方向の両側に配置されるように複数のロール37Bによりヒータロール37Aの間に走行され、このヒータロール37Aで前記電極7の導電性フィルムと基材3が貼り合わされる工程である。
【0065】
すなわち、導電性フィルムは、例えば、予め、導電性粘着剤とセパレータフィルムとが張り合わされてもよく、貼り合わされているセパレータフィルム7Fが導電性粘着剤から剥離されてロール39に巻回されると共に、導電性フィルムが前記露出した導電性粘着剤を介して基材3のポリカーボネートフィルムに貼り合わされることで、伝導印刷部・導電性フィルム付き基材41が製造され、再びロール状に巻回されるロール・トウ・ロールで行われる。
【0066】
なお、導電性フィルムを貼る位置は印刷ラインの両側から内側に貼り合せる。このとき、電極7となる導電性フィルムの間の距離によって電気抵抗値が変わるので銅箔フィルムの貼り合せ位置によって発熱温度の設定が決まることになる。なお、好ましくは、導電性フィルムの導電性粘着剤は粘着剤の中に銅粉などの導電性の物質を練り込んでおり、伝導印刷部5の複数の印刷部分5A及び5Bとの接点部分の導電性の改良を図っている。このように導電性の改良を図ることにより安定温度が保たれる。
【0067】
ラミネート工程(H)は、図11(A)と(B)に示されているように、ラミネート装置43を用いて、前記導電性フィルム貼り合せ工程(G)にて貼り合わされた伝導印刷部・導電性フィルム基材41 のポリカーボネートフィルムと、前記接着剤層形成工程(C)にて製造されたラミネートフィルム21 (アクリル系接着剤層を形成したポリカーボネートフィルム)が複数のロール43Aによりヒータロール43Bの間に走行され、このヒータロール43Bで貼り合わされる工程である。
【0068】
すなわち、印刷・銅箔付き基材のポリカーボネートフィルム41とラミネートフィルム21(アクリル系接着剤層を形成したポリカーボネートフィルム)をヒータロール43Bの間に走行させ、このとき前記ラミネートフィルム21のセパレータフィルム19がアクリル系接着剤13から剥離されて ロール45に巻回されると共に、前記ラミネートフィルム21が前記露出したアクリル系接着剤13を介して伝導印刷部・導電性フィルム付き基材41のポリカーボネートフィルムにヒータロール43Bで貼り合わされて面状発熱体フィルム47が製造され、再びロール状に巻回されるロール・トウ・ロールで行われる。
【0069】
その結果として、基材7とラミネートフィルム9のポリカーボネートフィルム同士が貼り合わされたラミネートの形態となり、両外側のボリカーボネートフィルムの耐熱性・耐寒性の併せ持つ特性が面状発熱体1の全体の絶縁対策と湿気対策に貢献することになる。
【0070】
第2切断加工工程(I)は、図12(A)と(B)に示されているように、前記ラミネート工程(H)にて貼り合わせたロール状の面状発熱体フィルム47が第2スリット加工装置49の複数のローラ49Aによりカッタ付きローラ49Bへ走行されて、カッタ49Cにより目的の規格サイズに仕上げるべくスリット加工が行われ所謂第2スリット加工工程である。これにより、ロール状の面状発熱体1が製造される。
【0071】
次に、この発明の実施の形態の面状発熱体1の枚葉(シート)裁断方式の製造方法について説明する。なお、前述した巻き取り(ロール)方式と対応して同様の部分は詳しい説明を省略し、主に枚葉(シート)裁断方式に関わることを説明する。図13〜図18を併せて参照するに、この製造方法の各製造工程は巻き取り(ロール)方式と対応しているので、同様の部材は同じ符号を付して説明する。準備工程(A)と刷版工程(B)は、巻き取り(ロール)方式と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0072】
第1切断加工工程(D)は、図13に示されているように、ロール状のポリカーボネートフィルムからなる基材3が裁断機51にて目的に合わせた大きさの枚葉(シート)の基材 3Pに裁断加工が行われ、所謂第1裁断加工工程である。熱風乾燥(アニール)工程(E)では、図14に示されているように、前記第1切断加工工程(D)で切断された枚葉の基材3Pのポリカーボネートフィルム(透明)が、例えば枚葉定置型熱風乾燥機53内の多段式の簀55に載置して熱風乾燥が行われるものである。基本的には巻き取り(ロール)方式と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0073】
印刷工程(F)では、図15(A)に示されているように、前記乾燥工程(E)にて熱風乾燥を行った基材3Pのポリカーボネートフィルムが、枚葉スクリーン印刷機57のスライド式テーブル59により印刷機本体61上へ設置される。また、前記準備工程(A)にて準備された製版をセットした刷版27が印刷機本体61の上部に上下動自在に設けた上下式刷版固定用型枠63に装着される。この枚葉スクリーン印刷機57の前記刷版27により、前記基材3Pのポリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にて伝導性発熱インキのスクリーン印刷が行われる。
【0074】
このとき、上記のスクリーン印刷は設定温度に応じて複数回の重ね刷りを行うことが望ましく、枚葉(シート)の場合は、上下式刷版固定用型枠63に装着される刷版27を交換して重ね刷りが行われる。
【0075】
上記のスクリーン印刷が行われた後に、図15(B)に示されているように、定置型熱風乾燥機65内の多段式の簀65Aに載置して乾燥することで、複数の印刷部分5A及び5Bからなる伝導印刷部5が形成される。この場合は、巻き取り方式の場合と比べて乾燥時間を延長して乾燥される。なお、印刷工程(F)の基本的なことは巻き取り(ロール)方式と同様であるので、他の詳細な説明は省略する。
【0076】
導電性フィルム貼り合せ工程(G)では、図16(A)と(B)に示されているように、貼り合せ装置69 を用いて、前記印刷工程(F)にて枚葉の基材3Pのポリカーボネートフィルム上に印刷された枚葉のフィルム3Pが載置台69A上を図17において右方向のヒータロール69B の間へ移動されると共に、電極7となる導電性フィルムが複数のロール69Cによりヒータロール69Bの間に走行される。このとき、導電性フィルムは、例えば、予め、導電性粘着剤とセパレータフィルムとが張り合わされてもよく、貼り合わされているセパレータフィルム7Fが導電性粘着剤から剥離されてロール69Dに巻回されると共に、導電性フィルムが前記露出した導電性粘着剤を介して基材3Pのポリカーボネートフィルム上に印刷された伝導印刷部5の複数の各印刷部分5A及び5Bの幅方向の両側にヒータロール69B で貼り合わされて枚葉の伝導印刷部・導電性フィルム付き基材41Pが製造される。
【0077】
ラミネート工程(H)では、図17(A)と(B)に示されているように、ラミネート装置71 を用いて、前記アクリル系接着剤層形成工程(C)にて製造されたラミネートフィルム9Pが載置台7lA上を図17において右方向のヒータロール7lBの間へ移動される。このとき、上記の枚葉のラミネートフィルム9Pは図示しないセパレータフィルム19がアクリル系接着剤13から剥離されている。
【0078】
また、前記導電性フィルム貼り合せ工程(G)にて製造された枚葉の伝導印刷部・導電性フィルム付き基材41Pがヒータロール71Bの間に差し込まれ、このヒータロール71Bで前記ラミネートフィルム9Pに露出したアクリル系接着剤13を介して貼り合わされて枚葉の面状発熱体フィルム47Pが製造される。なお、ラミネート工程(H)の基本的なことは巻き取り(ロール)方式と同様であるので、他の詳細な説明は省略する。
【0079】
第2切断加工工程(I)では、図18に示されているように、前記ラミネート工程(H)にて貼り合わせた枚葉の面状発熱体フィルム47Pが裁断機73のスライド式テーブル 73Aに載置され、このスライド式テーブル73Aにて目的の規格サイズに仕上げるべく位置決めして裁断加工を行う、所謂第2裁断加工工程である。これにより、枚葉(シート)の面状発熱体1Pが製造される。
【0080】
以上の面状発熱体の製造方法から、使用目的に応じて幅、長さを予め決め、印刷部分5A の両端部分に波状の接点部分を作画した製版を用いて、且つ刷版27のスクリーンメッシュの選定と組み合わせを行って目的温度に応じて伝導性発熱インキの塗布量を調整しているので、スクリーン印刷時に安定した通電状態の複数の印刷部分5Aからなる伝導印刷部 5 を形成することができる。したがって消費電力の省エネ化となる通電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工の容易化を図ることができる。又、5Bも前記同様であるので、他の詳細の説明は省略する。
【0081】
また、伝導印刷部5の複数の各印刷部分5Aの両端部分に波状の接点部分を形成したので、電極7との伝導性発熱インキ接点が面積接点となることから、電気の流れを分散して部分的な温度上昇を回避できる。又、5Bも前記同様であるので、他の詳細の説明は省略する。
【0082】
また、基材3のポリカーボネートフィルムに対して熱風乾燥(アニール)を行っているので、設定温度の安定化と印刷加工後の基材3の伸縮によって起こる材料同士の層間剥離を防止できる。
【0083】
また、ラミネート工程(H)にて伝導印刷部・導電性フィルム付き基材41のポリカーボネートフィルム上にラミネートフィルム21(アクリル系接着剤付きポリカーボネートフィルム)を貼り合わせることで、ラミネートフィルム21が印刷部分5Aや電極7の段差を吸収してラミネート加工時のトンネリングを防止できる。さらには、両外側のポリカーボネートフィルムの耐熱性・耐寒性の併せ持つ特性が面状発熱体1の全体の絶縁対策と湿気対策に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の面状発熱体は、ヒータとして、暖房、床暖房、融雪、岩盤浴の用途などに最適な温度設定が任意にできるほか、熱により状態の変化する物質と併用することにより、熱により視覚的変化する媒体となる。具体的には、熱による色や光透過や光反射が変化することを利用して、POP(販促商品)などの広告媒体、標識媒体にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(A)はこの発明の実施の単一設定形態の面状発熱体の断面図で、(B)は(A)の表面図で、(C)は(A)の裏面図である。
【0086】
(D)はこの発明の実施の複数設定形態の面状発熱体の断面図で、(E)は(D)の表面図で、(F)は(D)の裏面図である。
【図2】(A)及び(B)はこの発明の実施の単一・複数形態の面状発熱体の斜視図である。
【図3】(A)及び(C)はこの実施の形態の印刷デザインの平面図で、(B)及び(D)は従来の印刷デザインの平面図である。
【図4】(A)及び(B)は伝導印刷部に対する電極の配置状態を示す平面図である。
【図5】アクリル系接着剤付きポリカーボネート透明フィルムの断面図である。
【図6】巻き取り(ロール)方式における第1切断加工工程(D)で使用される第1スリット加工装置の斜視図である。
【図7】巻き取り(ロール)方式における熱風乾操(アニール)工程(E)で使用される乾燥機の斜視図である。
【図8】巻き取り(ロール)方式における印刷工程(F)で使用されるスクリーン印刷機と乾燥機の斜視図である。
【図9】巻き取り(ロール)方式におけるアクリル系接着剤層形成工程(C)で使用されるアクリル系接着剤塗工機械装置の斜視図である。
【図10】(A)(B)巻き取り(ロール)方式における導電性フィルム貼り合せ工程(G)で使用される貼り合せ装置の斜視図である。
【図11】(A)(B)巻き取り(ロール)方式におけるラミネート工程(H)で使用されるラミネート装置の斜視図である。
【図12】(A)(B)巻き取り(ロール)方式における第2切断加工工程(I)で使用される第2スリット加工装置の斜視図である。
【図13】枚葉(シート)裁断方式における第1切断加工工程(D)で使用される裁断機の斜視図である。
【図14】枚葉(シート)裁断方式における熱風乾燥(アニール)工程(E)で使用される枚葉定置型熱風乾燥機の斜視図である。
【図15】(A)は枚葉(シート)裁断方式における印刷工程(F)で使用される枚葉スクリーン印刷機の斜視図で、(B)は定置型熱風乾燥機の斜視図である。
【図16】(A)(B)は枚葉(シート)裁断方式における導電性フィルム貼り合せ工程(G)で使用される貼り合せ装置の斜視図である。
【図17】枚葉(シート)裁断方式におけるラミネート工程(H)で使用されるラミネート装置の斜視図である。
【図18】枚葉(シート)裁断方式における第2切断加工工程(I)で使用される裁断機の斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
1 面状発熱体
1P 枚葉(シート)の面状発熱体
3 基材〔ポリカーボネートフィルム(透明)〕
3P 枚葉(シート)の基材
5 伝導印刷部
5A 印刷部分
7 電極(銅箔フィルム)
9 ラミネートフィルム(アクリル接着剤付きポリカーボネートフィルム)
9P 枚葉のラミネートフィルム(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)
11 ポリエステル透明フィルム
13 アクリル系接着剤
17 ポリカーボネートフィルム(透明)
17P 枚葉のポリカーボネートフィルム(透明)
19 セパレータフィルム
21 セパレータ付きポリカーボネートフィルム
23 第1スリット加工装置
23B カッタ付きローラ
23D スリット部
25 熱風乾燥機
27 刷版
29 スクリーン印刷機
31 熱風乾燥機
33 塗工装置
33B ヒータロール
37 貼り合せ装置
37A ヒータロール
41 印刷・銅箔付き基材
43 ラミネート装置
43B ヒータロール
47 面状発熱体フィルム
47P 枚葉の面状発熱体フィルム
49 第2スリット加工装置
49B カッタ付きローラ
49C カッタ
53 枚葉定置型熱風乾操機
57 枚葉スクリーン印刷機
63 上下式刷版固定用型枠
65 定置型熱風乾燥機
67B ヒータロール
69 貼り合せ装置
69B ヒータロール
71 ラミネート装置
71B ヒータロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートフィルムからなる基材と、
前記基材の長手方向に適宜な間隔で伝導性発熱インキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分からなる伝導印刷部と、
前記伝導印刷部において前記基材の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材上に設けられ、かつ前記伝導印刷部の複数の各印刷部分に通電する導電性フィルムからなる電極と、
前記伝導印刷部と前記電極を覆って前記基材上にラミネートするための、片面に接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムであるラミネートフィルムと、
を備えていることを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
電極が、伝導印刷部の幅方向の両端間に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
下記(A)〜(I)の工程を含む工程によって製造されることを特徴とする面状発熱体の製造方法。
(A)印刷部を作画した製版を準備する準備工程、
(B)伝導性発熱インキの塗布量に適応するスクリーンメッシュの選定をする刷版工程、
(C)ラミネートするためのポリカーボネートフィルムに接着剤層を形成する工程、
(D)ポリカーボネートフィルムからなる基材を目的に合わせて幅方向にスリット又は枚葉に裁断を行う第1切断加工工程、
(E)前記第1切断加工工程で裁断されたポリカーボネートフィルムを熱風乾燥させる乾燥工程、
(F)前記乾燥工程にて熱風乾燥させた基材のポリカーボネートフィルムを、前記準備工程にて準備された製版をセットした刷版を用いてスクリーン印刷機により、前記基材のボリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にて伝導性発熱インキのスクリーン印刷と、乾燥機にて乾燥とを行って複数の印刷部分からなる伝導印刷部を形成する印刷工程、
(G)前記印刷工程にて基材のポリカーボネートフィルム上に印刷された伝導印刷部の複数の各印刷部分の幅方向の両側に、電極となる導電性フィルムを貼り合せる導電性フィルム貼り合せ工程、
(H)前記導電性フィルム貼り合せ工程にて貼り合わされた伝導印刷部・導電性フィルム付き基材のポリカーボネートフィルムに、前記接着剤層を形成したポリカーボネートフィルムを貼り合わせるラミネート工程、
(I)前記ラミネート工程にて貼り合わせたフィルムをスリット又は裁断を行う第2切断加工工程。
【請求項4】
印刷工程にて、粗いメッシュから細かいメッシュへ段階的に変化させた複数の刷版で伝導性発熱インキのスクリーン印刷の重ね刷りを行うことを特徴とする請求項3記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項5】
導電性フィルム貼り合せ工程において、伝導印刷部の幅方向の両端間に、電極となる導電性フィルムを複数貼り合せることを請求項3又は4記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項6】
印刷部分が、2以上の印刷パターンから構成されている請求項3〜5いずれか記載の面状発熱体の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−218350(P2008−218350A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57738(P2007−57738)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(507033233)福寿産業株式会社 (3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】