説明

面状発熱体

【課題】本発明は、印刷ばらつき等を含めた実際の加工の結果によっても異常加熱現象を発生させない面状発熱体を提供することを目的とする。
【解決手段】電気絶縁性基板2上に対向して印刷される少なくとも一対の主電極3a、3bと、主電極3a、3bから交互に延出するように印刷してなる枝電極4a、4bと、枝電極4a、4bから複数に分割されて独立に枝電極4a、4bに対して略平行に分岐し対向位置に対をなして印刷される接続電極5a、5bと、接続電極5a、5bと電気的に接続し、かつ異極同士の接続電極5a、5bの対向位置間に印刷され、枝電極4a、4bとの間に非印刷部7a、7bを設けてなる抵抗体6aとを備え、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極5aと分岐元の枝電極4aとの間の距離よりも印刷終了側の接続電極5bと分岐元の枝電極4bとの間の距離を大きく設けた構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気床暖房パネル、電気カーペット等に使われる面状発熱体に関するものであり、特に電極、抵抗体が同一面上に印刷される面状発熱体の電極および抵抗体のパターン構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状発熱体21は、図6に示すように、ポリエステルフィルム等の電気絶縁性基板22上に導電性銀ポリマーを印刷して得られる一対の導電性母線23a、23bと各母線23a、23bから垂直に伸び互いに間隔を隔てて平行に印刷して櫛形電極を形成する導体通路24a、24b、24c、24dが設けられ、その上にPTC導電性インキを導体通路24a〜24dに対して垂直で平行に間隔を有して縞状に印刷して抵抗体26を形成し、その結果、導体通路24a〜24dの間に加熱領域27a、27bを構成していた。
【0003】
この加熱領域27a、27bを形成するPTC導電性インキは、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂にカーボンブラックを添加し、溶剤と混合させてインキにしていた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(抵抗が正の温度係数を有する意味の英語 Positive Temperature Coefficient の頭文字を取っている)を意味しており、PTC特性を有する加熱領域は、自己温度調節機能を有する面状発熱体を提供できる。
【0005】
面状発熱体21において、図7に示すように、導体通路24aのうち導電性母線23aから延出する根元に近い箇所が断線した場合、すなわち、断線部C部のように導体通路24aに抵抗体26が重なっている箇所が断線した場合、断線間隔が極めて小さいとコロナ放電が発生し、図7に示すように断線部C部から導体通路24aの先端部までに電気的に繋がっている加熱領域、すなわち(c)領域の合成抵抗に相当する電力、つまり断線部C部に電気を流そうとする力がスパークが発生するに必要な分以上あれば、その後絶縁破壊を起こしてスパークが発生するが、スパークによる発生熱は断線部C部に重なっている抵抗体26およびその周辺に放熱されてしまうため、導体通路24aの断線部C部は蒸発せず、断線間隔は極めて小さい状態を維持しつつスパークが継続する。
【0006】
さらにそのスパークによる発生熱により導体通路24aの断線部C部の上に重なっている抵抗体26が徐々に変質し、炭素が繋がったバイパス経路が形成されて電流が流れ、バイパス経路の抵抗値がある適度な値である場合、バイパス経路で異常加熱を起こすという現象が発生する。
【0007】
この異常加熱現象を解決するために、図8に示すように、ポリエステルフィルム等の基板2上に対向して一対の主電極3a、3bを印刷し、さらに主電極3a、3bから交互に延出するように枝電極4a、4bを印刷するとともに、枝電極4a、4bから複数に分割されて独立に枝電極4a、4bに対して略平行に分岐し対向位置に対をなして接続電極5a、5bを印刷し、また枝電極4a、4bとの間に非印刷部7を設けて異極同士の接続電極5の間に抵抗体6を印刷した構成を有する面状発熱体1を考案している。
【特許文献1】特開平3−129693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
面状発熱体1において、図9に示すように、抵抗体6は印刷により形成されており、印刷位置ばらつきにより抵抗体6の印刷パターン8が接続電極5を越えてしまうことが有り得る。
【0009】
印刷方法は、様々な印刷形状に対応するために、通常、スクリーン印刷を採用している。スクリーン印刷は、スクリーン版上に戴置されたインキをスキージと呼ばれるゴム板によってスクリーン版に押し込むように圧力を加え、スクリーン版に設けられた印刷パターンを構成している微小孔を通して印刷対象物に付着させる印刷方法である。したがって、印刷対象物とスクリーン版の間に隙間があると、印刷パターンの印刷終了側に向かってインキがスクリーン版の裏面で広がり印刷対象物に付着してしまう。これは一般的ににじみと呼ばれている。
【0010】
図10のように、抵抗体6の印刷パターン8が接続電極5を越えてしまうと、スクリーン版9は接続電極5と接触し、それ以上下がらないため、スクリーン版9と基板2との間に接続電極5の厚み分だけ隙間11が発生し、図9に示すようににじみ10が発生してしまう。にじみ10がひどいと枝電極4a、4bにまで抵抗体6が付着してしまうため、抵抗体6が枝電極4a、4bと電気的に接続してしまう。したがって、異常加熱現象を根本的に解決することができない。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、印刷ばらつき等を含めた実際の加工の結果によっても異常加熱現象を発生させない面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、電気絶縁性基板と、基板上に対向して印刷される少なくとも一対の主電極と、主電極から交互に延出するように印刷してなる枝電極と、枝電極から複数に分割されて独立に枝電極に対して略平行に分岐し対向位置に対をなして印刷される接続電極と、接続電極と電気的に接続し、かつ異極同士の接続電極の対向位置間に印刷され、枝電極との間に非印刷部を設けてなる抵抗体とを備え、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けた構成としている。
【0013】
この構成によれば、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けているため、抵抗体の印刷パターンが接続電極を越えてしまい、にじみが発生したとしても、滲んだ抵抗体が枝電極に付着することがないので滲んだ抵抗体が枝電極と電気的に接続することはなく印刷ばらつき等を含めた実際の加工の結果によっても異常加熱現象の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の面状発熱体によれば、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けているため、抵抗体の印刷パターンが接続電極を越えてしまい、にじみが発生したとしても、滲んだ抵抗体が枝電極に付着することがないので滲んだ抵抗体が枝電極と電気的に接続することはなく印刷ばらつき等を含めた実際の加工の結果によっても異常加熱現象の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、電気絶縁性基板と、基板上に対向して印刷される少なくとも一対の主電極と
、主電極から交互に延出するように印刷してなる枝電極と、枝電極から複数に分割されて独立に枝電極に対して略平行に分岐し対向位置に対をなして印刷される接続電極と、接続電極と電気的に接続し、かつ異極同士の接続電極の対向位置間に印刷され、枝電極との間に非印刷部を設けてなる抵抗体とを備え、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けたものである。
【0016】
これにより、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けているため、抵抗体の印刷パターンが接続電極を越えてしまい、にじみが発生したとしても、滲んだ抵抗体が枝電極に付着することがないので滲んだ抵抗体が枝電極と電気的に接続することはなく印刷ばらつき等を含めた実際の加工の結果によっても異常加熱現象の発生を抑えることができる。
【0017】
また、特に抵抗体を対向位置に対をなして印刷された接続電極を越えない範囲で印刷するよう印刷パターンを設けたものである。
【0018】
これにより、印刷パターンの印刷終了側は接続電極上にあり、スクリーン版と接続電極との間には隙間がないのでにじみは発生せず、異常加熱現象は発生しない。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における面状発熱体の平面図である。
【0021】
図1において、面状発熱体1aは、ポリエステルフィルム等の電気絶縁性基板2上に銀ペーストを印刷・乾燥して主電極3a、3bを形成し、また主電極3a、3bから交互に延出するように枝電極4a、4bを形成している。さらに接続電極5a、5bを枝電極4a、4bから鍵形状に分岐形成しており、接続電極5a、5b同士は対向する位置に配置している。本発明の実施の形態においては、枝電極4a、4bの幅を2mm、接続電極5a、5bの幅を1.4mmにしている。
【0022】
接続電極5a、5bの間には、高分子抵抗体インキを印刷・乾燥して抵抗体6aを形成し、抵抗体6aと枝電極4a、4bとの間に抵抗体6aが印刷・乾燥されていない非印刷部7a、7bを作っている。本発明の実施の形態においては、非印刷部7bの接続電極5bと枝電極4bとの距離を2.5〜3mm、非印刷部7aの接続電極5aと枝電極4aとの距離を1.5〜2mmとしている。
【0023】
高分子抵抗体インキとしては樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗体を溶剤に溶かしたものあるいは特に結晶性樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗体を溶剤に溶かしたものを使用している。
【0024】
次に、動作、作用について説明する。
【0025】
図2において、設計上、抵抗体6aの印刷パターン8aは接続電極5aの1.5mmの幅のうち0.5mm接続電極5a上に入った位置から印刷開始し、接続電極5bの1.5mmの幅のうち0.5mm接続電極5b上に入った位置で印刷終了するように考慮しているので、本来は図3に示すように、接続電極5a、5bとスクリーン版9には隙間11ができないため、印刷パターン8aの印刷終了側からスクリーン版9の裏面に高分子抵抗体
インキが広がることはなくにじみ10は発生しない。
【0026】
しかし、実際には印刷ばらつき、すなわち印刷時の抵抗体6aの印刷パターン8aの位置ずれ(±0.5mm)と主電極3a、3b、枝電極4a、4b、接続電極5a、5bを印刷・乾燥した時の電気絶縁性基板2の収縮による接続電極5a、5b間の距離収縮(0.1mm)により、図4に示すように抵抗体6aの印刷パターン8aの印刷開始側あるいは印刷終了側で接続電極5aあるいは5bから最高0.1mm越えて非印刷部7aあるいは7bに抵抗体6aの印刷パターン8aが入ってしまう可能性がある。
【0027】
この場合、図5に示すようにスクリーン版9は接続電極5a、5bと接触しており電気絶縁性基板2との間に接続電極5a、5bの厚み分の隙間11ができてしまうため、特に印刷終了側である接続電極5bから印刷パターン8aが越えた時、スクリーン版9の裏面に高分子抵抗体インキが広がってしまいにじみ10が発生する。通常、このにじみは最大で2mm程度のものである。
【0028】
しかし、図4に示すように抵抗体6aの印刷パターン8aの印刷終了側である非印刷部7bの接続電極5bと枝電極4bとの距離は2.5〜3mmであるので、にじみ10が非印刷部7bに付着したとしても枝電極4bににじみ10が付着することはなく、電気的に抵抗体6aと枝電極4bが接続することはないので、異常加熱現象が発生することはない。
【0029】
また、設計上、抵抗体6aの印刷パターン8aを接続電極5aの1.5mmの幅のうち0.75mm接続電極5a上に入った位置から印刷開始し、接続電極5bの1.5mmの幅のうち0.75mm接続電極5b上に入った位置で印刷終了するように考慮すれば、印刷ばらつき、すなわち印刷時の抵抗体6aの印刷パターンの位置ずれ(±0.5mm)と主電極3a、3b、枝電極4a、4b、接続電極5a、5bを印刷・乾燥した時の電気絶縁性基板2の収縮による接続電極5a、5b間の距離収縮(0.1mm)が発生したとしても抵抗体6aの印刷パターンの印刷開始側あるいは印刷終了側で接続電極5aあるいは5bの幅のうち最小0.15mm入った位置までに抵抗体6aの印刷パターン8aは入るので、スクリーン版9と接続電極5aあるいは5bは接触しており、にじみ10が発生することがない。したがって、電気的に抵抗体6aと枝電極4bが接続することはないので、異常加熱現象が発生することはない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかる面状発熱体は、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けているため、抵抗体の印刷パターンが接続電極を越えてしまい、にじみが発生したとしても、滲んだ抵抗体が枝電極に付着することがないので滲んだ抵抗体が枝電極と電気的に接続することはなく印刷ばらつき等を含めた実際の加工の結果によっても異常加熱現象の発生を抑えることができるので、床暖房用パネル、電気カーペット等の暖房商品に限らず、抵抗体を面的に形成し、電力供給用電極を配置した発熱体すべてに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1における面状発熱体の構成を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態1における面状発熱体の構成を示す部分拡大平面図
【図3】本発明の実施の形態1における面状発熱体のA−A断面図
【図4】本発明の実施の形態1における面状発熱体の実施状態を示す部分拡大平面図
【図5】本発明の実施の形態1における面状発熱体のB−B断面図
【図6】従来の面状発熱体の平面図
【図7】従来の面状発熱体の断線部C部の状態を示す平面図
【図8】従来の他の面状発熱体の平面図
【図9】従来の他の面状発熱体の構成を示す部分拡大平面図
【図10】従来の他の面状発熱体のC−C断面図
【符号の説明】
【0032】
1、1a、21 面状発熱体
2、22 基板
3a、3b 主電極
4a、4b 枝電極
5、5a、5b 接続電極
6、6a 抵抗体
7、7a、7b 非印刷部
8、8a 印刷パターン
9 スクリーン版
10 にじみ
11 隙間
23a、23b 母線
24a、24b、24c、24d 導体通路
26 抵抗体
27a、27b 加熱領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性の基板と、前記基板上に対向して印刷される少なくとも一対の主電極と、前記主電極から交互に延出するように印刷してなる枝電極と、前記枝電極から複数に分割されて独立に枝電極に対して略平行に分岐し対向位置に対をなして印刷される接続電極と、前記接続電極と電気的に接続し、かつ異極同士の接続電極の対向位置間に印刷され、前記枝電極との間に非印刷部を設けてなる抵抗体とを備え、対をなして印刷される印刷開始側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離よりも印刷終了側の接続電極と分岐元の枝電極との間の距離を大きく設けてなる面状発熱体。
【請求項2】
前記抵抗体は対向位置に対をなして印刷された接続電極を越えない範囲で印刷するよう印刷パターンを設けてなる請求項1に記載の面状発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−176934(P2010−176934A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16189(P2009−16189)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】