説明

革および追加の材料から作製された複合材料

本発明は、キッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つ層、および、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料からなる群より選択される材料の少なくとも1つの追加の層を含む複合材料に関し、加えて、このような複合材料の製造方法、および、室内装飾、および、特に自動車の外装ライニング、および、物体の外部または内装ライニングのためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、キッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層、および、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料からなる群より選択される材料の少なくとも1つの追加の層を含む複合材料に関し、加えて、このような複合材料の製造方法に関し、さらに、なかでも自動車の室内装飾や外装ライニングのためのその使用、ならびに、物体の外部または内装ライニングのためのその使用に関する。
【0002】
従来技術において、革に関する様々な用途が一般的に知られている。具体的には、雄牛の革、子牛の革および豚革は、衣料産業や家具への革張りなどの多数の用途に用いられている。しかしながら雄牛の革、子牛の革、加えて豚革は、加工の際に必要な引裂き強度を持たせるために比較的高い強度または厚みがなければならない点で不利である。一方で、キッド革は、比較的厚さが薄いくても高い引裂き強度を有しており、さらにそれらは低密度であるために同等の厚さの雄牛の革よりも軽い。
【0003】
雄牛の革、子牛の革および豚革に対して、キッド革は、天然のシャグリーン状の表面を備えている。従ってキッド革は、特に高級な靴やキッドのベロア革製の上着を製造するために用いられる。また魚類の革も、なめし加工した後にその鱗の模様が目立つようになるために、特に衣料品やバッグの製造に用いられる。
【0004】
家具の分野において、背もたれや肘掛けのような特定の場所に革を用いることによって家具の個々の部品を洗練させるために、木材からなる土台上に革を張ることが一般的に行われている。従って、木材と革とで製造される複合材料が、家具の部品それぞれが目的とする使用に耐えられる程度に十分な強度で提供されるように、木材だけでなく革も選択しなければならない。しかしながら、これを達成するに必要な強度、特に木材部分の強度は、革を張った木材で作製される物体の設計における許容範囲に制限を課すことになる。例えば、木材で作製された立体的な形状の中空のブロックは、たとえ実現できたとしても、木材をさらに精巧に加工することでしか達成できない。
【0005】
また自動車産業では、いわゆる高級車の室内装飾に関して、木材と革(具体的には雄牛の革や子牛の革)とで作製された複合材料の使用も知られている。この場合における不利点としては、このような複合材料の設計の可能性が制限されることの他にも、木材と革に要求される強度のために、その重量が比較的重いことを言及しなければならない。
【0006】
それゆえに、本発明の目的は、目的とする低い自重での使用に応じて成形することができる革と1つの追加の材料とで作製された複合材料を提供することである。
【0007】
この目的は、キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層、および、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くのの組み合わせを含む複合材料からなる群より選択される材料の少なくとも1つの追加の層によって解決される。
【0008】
本複合材料が、キッド革と魚類の革との少なくとも1つの組み合わせを含む層を含む場合、このような組み合わせの構成のなかで、望ましい模様が生じるように、考えられるあらゆる方法で異なるタイプの革を互いに結合させてもよい。好ましい実施態様において、2種の革からなる部品は、それらの目的とする使用に応じて同一または異なるサイズを有する革からなっていてもよいし、または、互いに結合させて一つの層になっていてもよい。
【0009】
この複合材料の利点は、選択された材料(金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料)によって、木材と革とで作製された複合材料と比較して、この複合材料の成形に関する制限がほとんどないことである。上述したような材料は、個々の必要性に適したあらゆる望ましい形状に製造することができる。
【0010】
キッド革または魚類の革は、それらの構造のために極めて高い弾性を有し、並外れて高い引張強度が加えられた条件下でも所定の低い自重で利用できるため、これら2種の革を使用することによってさらなる利点が得られる。さらに強調すべきは、これら2種の革は、それらの形状を保ちつつ太陽光線の照射に対して高い耐性を有することである。
【0011】
原則的に、当業者既知のあらゆる金属および金属合金が使用できる。本発明に係る複合材料の構成において使用する場合は、鉄、銅、ニッケル、加えて貴金属、例えば銀、金および白金が適している。本発明の複合材料の構成において、金属で製造された合金、または、1種またはそれより多くの非金属との合金、例えば青銅、真鍮または鋼を用いることができる。
【0012】
好ましくはアルミニウムが用いられ、具体的に好ましくは耐火性のアルミニウムである。アルミニウムは、その長い耐久性と低密度の他にも、音を遮断することと、メンテナンスの必要がないというさらなる利点を提供する。アルミニウム合金は軽量でも特に高い安定性を達成するため、アルミニウム合金が好ましく、具体的にはマグネシウム、ケイ素およびその他の金属(例えばチタン)とのアルミニウム合金である。
【0013】
1つの追加の層の材料としてプラスチックを用いることも好ましい。木材と比較すると、これらの材料は軽量であることに加えて、単純で費用効率が高い方法であらゆる望ましい形態に製造することができるというさらなる利点を有する。さらにプラスチックはそれらの形状を長期間持続させることができ、大気条件に対して耐性を有する。原則的に、当業者既知のあらゆるプラスチック材料が使用できる。熱可塑性および熱硬化性プラスチック材料が好ましい。熱可塑性プラスチック材料の分野から、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、および、ポリスチロール(PS)の他にも、以下のもの:ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエーテルスルホナート(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、または、ポリブレンド、すなわち2種またはそれより多くの熱可塑性プラスチック材料の混合物が同様に使用できる。熱硬化性プラスチック材料の分野から、具体的には、ベークライト、加えてエポキシドのような合成樹脂が用いられる。好ましくは、アクリロニトリル/ブタジエン/スチロールコポリマー(ABS)、ABS+PC(ポリカーボネート)、加えてPA6である。さらに好ましい実施態様において、ポリウレタン(PUR)、具体的には軟質PURの一体型発泡材料、硬質PUR一体型発泡材料、加えてガラス繊維で強化された一体型発泡材料(R−RIM)も用いられる。
【0014】
また繊維複合材料も、具体的には薄い厚さで高い強度を有するため、本発明に係る複合材料における追加の層として使用するのに適している。従って、繊維強化プラスチック材料を追加の層として使用することができ、加えて、その他の繊維で強化された材料、例えばコンクリート、人造石材料、加えて金属も使用することができる。
【0015】
また、プラスチック材料が熱硬化性プラスチックのプラスチック材料、具体的には合成樹脂、エラストマーのプラスチック材料、および、熱可塑性プラスチック材料からなる群より選択されるような場合にも、繊維強化プラスチック材料は追加の層として特に適している。当業者既知のあらゆる繊維が強化用繊維として用いることができ、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、鋼繊維、天然繊維、加えてナイロン繊維が挙げられる。具体的に好ましい繊維複合材料の材料は、ガラス繊維強化プラスチック材料、炭素繊維強化プラスチック材料、加えてアラミド繊維強化プラスチック材料であり、例えばデュポン(Du Pont)のケブラー(Kevlar(R))である。
【0016】
具体的に好ましくは、少なくとも1つの追加の層に関して、無充填の、もしくはABSまたはABS+PCベースのガラス繊維で充填された専門的なプラスチック材料、または、無機物質で充填された専門的なプラスチック材料である。
【0017】
さらに、本発明に係る複合材料の構成における追加の層として、金属、 金属合金、 プラスチック、 繊維複合材料からなる群より選択される材料の1種またはそれより多くの組み合わせの層が用いることができる。
【0018】
本発明のさらなる実施態様において、上記材料の代わりに天然石または人造石で少なくとも1つの追加の層を作製してもよいし、キッド革もしくは魚類の革、または、これら2種の革の組み合わせで作製された少なくとも1つの層と結合させてもよい。人造石としては、ポリエステル樹脂と共に撚られた80%以下の無機成分を有するあらゆる材料が適している。人造石は、木材と比較して、圧力をかけたり、剪断引張力をかけたりすることに対して人造石は高い強度を有するという具体的な利点を有する。さらに人造石は、大気条件に対して耐性を有する。また薄肉の物体も、特に人造石から製造することができる。
【0019】
本発明に係る複合材料の構成において、また上記材料の1種またはそれより多くと、天然石または人造石との組み合わせの層も使用できる。
【0020】
原則的に、用いられる材料は、延伸される可能性がある革と結合させる際に変形しない程度に十分な剛性が達成されるならば、本複合材料においてどのような望ましい層の厚さでも使用できる。
【0021】
本複合材料はさらに、キッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層を含む。キッド革または魚類の革は、原則的に、本発明に係る複合材料において、加工済みの形態で使用してもよいし、または、未加工の形態で使用してもよい。しかしながら、このような革はなめした形態で使用することが好ましい。魚類の革を製造するために、原則的にあらゆる魚類の皮が使用でき、例えば、マス、サケ、バス、ナマズ、チョウザメ、および、シャグラン(shagran)である。好ましい実施態様においては、淡水に存在し得る魚類の皮だけでなく海水に存在し得る魚類の皮も使用され、例えば、サケの皮である。
【0022】
哺乳動物の皮のなめし加工、加えて魚類の皮のなめし加工は、従来技術において既知である。例えばDE3534353は、魚類の革の製造方法を開示している。なめし加工の範囲内で、キッド革または魚類の革は、使用に応じて任意に染色してもよいし、または、漂白してもよい。好ましい実施態様において、天然色のままの革、色素で染色された革、または、漂白した革が使用される。具体的に好ましくは、染色された革の使用である。革を染色するために、当業者既知のあらゆる適切な色素を用いることができる。好ましい実施態様において、環境に適合する染料が用いられる。全体が着色された革の層、すなわち両面が着色または漂白された層は、なめし加工の最中にキッド革または魚類の革を染色または漂白することによって得られる。
【0023】
なめし加工の後に染色または漂白加工を実施することによって、片面だけが漂白または着色された革の層を得ることができる。なめし加工の後に革を染色または漂白することは、キッドの皮をなめす工程の前に使用する場がすでに決定されるという制限が生じることなく、革を、本発明に係る複合材料それぞれの使用条件にそれぞれ適した手法で適応させることが可能であるという利点を伴う。
【0024】
一般的には、このような革は、なめし加工の後に、少なくともそれらの見た目に関して互いに異なる2種の異なる表面を含む。キッド革の場合、外側と称される表面は、内側と称される第二の表面よりも見た目が好ましいキッド革に典型的なシャグリーン状を示す。魚類の革の場合、外側と称される表面は、それぞれ使用された魚の種類がわかるような特徴的な鱗の模様を有する。原則的に、革で作製された少なくとも1つの層は、内側または外側で、追加の材料で作製された少なくとも1つの層と結合させることができる。しかしながら、本複合材料は、革が上記材料の追加の層と革の内側で結合されるように配置されることが好ましく、従って、観る者に向かって革はその外側に置かれていることになる。
【0025】
さらに本発明はまた、複合材料の少なくとも1つの層が、キッド革もしくは魚類の革、または、これら2種の革の組み合わせで作製されており、ここでその外側は、少なくとも1種のコーティング手段でコーティングされている上述のような種類の複合材料に関する。
【0026】
原則的に、コーティング手段として、なめした革(さらに任意に染色されていもよい)の外側に塗布できるのであれば、この使用に関する当業者には既知のあらゆる材料が使用できる。革の少なくとも1つの層の外側は、天然材料、改変された天然材料、合成材料、または、それらの組み合わせでコーティングされていてもよい。
【0027】
また革の外側は、例えばアマニ油、または、木の種子の油などの様々な天然に存在する油で処理することができるが、セルロースエステル、または、セルロースエーテル、および、ゴム誘導体で処理してもよいし、加えて様々な油、酸および脂肪酸の混合物で処理してもよい。この表面処理によって個々の革の外側の上に追加の層が形成されるが、これは、キッド革または魚類の革本来の柔らかさを失うことなく大気条件から革を保護するという利点を有する。革の外側をラテックスベースのワニスで処理する場合、いわゆるストッパーを手動で用いて前記ワニスを外側に塗布することが好ましい。
【0028】
本発明の状況において、革の外側が合成ワニスでコーティングされることが好ましい。このような場合において、革の外側に液状または粉末状の物質が塗布されると、その上に化学的または物理的な方法によって粘着性の膜が構築または形成される。それによって選択されるコーティング材料は、加圧空気を用いた、またはそれらを用いないコーティング、圧延、噴霧によって、キッド革の少なくとも1つの層の外側に塗布してもよいし、または、静電的に塗布してもよいし、加えて浸漬、圧延、流し込み、または、フラッディングによって塗布してもよい。
【0029】
原則的に、本発明に係る複合材料の目的とする使用に応じて、保護的および/または装飾的な機能を有する適切なワニスを選択することができる。
【0030】
本発明の構成において、複合材料が野外で用いられる可能性がある場合、キッド革または魚類の革、または、2種の革の組み合わせで作製された少なくとも1つの層の外側をUVから保護するワニスでコーティングすることは、さらなる利点を有する。具体的には、UVから保護するワニスが用いられる場合、革は、UV照射によって引き起こされるような変色から保護される。また、キッド革もしくは魚類の革、または、2種の革の組み合わせの少なくとも1つの層の外側をコーティングするのに、市販の車用の透明なワニス、具体的にはナノ物質を含むワニス(nanovarnish)を使用することも有利である。このようなコーティングによって、UV光による変色からの保護に加えて、革の外側がかき傷のような物理的なダメージの影響を受けなくなり、さらに、大気条件に対して耐性になるという利点を有する。さらにワニスは、透明であってもよいし、または、色を付与する顔料、または、 組織を構築する添加剤のような添加剤を含んでいてもよい。それによって、キッド革もしくは魚類の革、または、これら2種の革の組み合わせで作製された少なくとも1つの層の外面の見た目を、色および構造に関して変化させることができる。
【0031】
また、キッド革もしくは魚類の革、または、これら2種の革の組み合わせの少なくとも1つの層の外側は、ポリウレタンベースのコーティング材料でコーティングされていてもよく、それによって外側が具体的には磨耗および水や汚れの浸透から保護される。
【0032】
具体的に好ましくは、革の外側のコーティングが、ポリエステルを含むコーティング手段で行われることである。革の外側の層をポリエステルでコーティングすることによって、それらは水に対してだけでなく老化および化学物質に対しても耐性になる。革の外側の層にポリエステル樹脂を含むコーティング手段を塗布した後、重合触媒を用い、さらにネットワーク形成の温度を低くすることによって、ネットワークの形成を促進させる。このような重合触媒としては、過酸化物触媒が具体的に適している。
【0033】
本複合材料がキッド革もしくは魚類の革、または、2種両方の革の組み合わせの層を1つより多く含む場合、これらの層は、少なくとも複合材料を観る者に向かって一番上にある層が、その外側が上部に向くように配置されるような方法で配置される。このような複合材料の構成において、複合材料を観る者に対して一番上にある層であって、キッド革もしくは魚類の革、またはこれら2種の革の組み合わせで作製された当該層だけが、その外側にコーティング手段でコーティングが施されれば十分である。
【0034】
さらに本発明はまた、上述のような複合材料の製造方法も対象とする。
【0035】
本発明に係る方法は、以下の工程:
(i)キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層を製造すること;
(ii)キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの該少なくとも1つの層と、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料で作製された少なくとも1つの追加の層とを結合すること;
(iii)任意に、キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの該少なくとも1つの層の外側を、少なくとも1種のコーティング手段でコーティングすること、
を含み、ここで工程(iii)は、工程(i)と(ii)との間に実施してもよいし、または、工程(ii)の後に実施してもよい。
【0036】
製造工程(i)は、キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層と、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料で作製された少なくとも1つの追加の層とを結合させるための、キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層の製造に関し、この工程(i)は、少なくともキッド革または魚類の革それぞれをなめすことを含む。なめし加工は、キッド革または魚類の革に関する当業者には既知のあらゆるなめし加工によって行うことができる。キッド革に関して、哺乳動物の皮に関する当業者には既知のあらゆるなめし加工が適切である。魚類の革のなめしに関して、DE3534353に従った方法を行うことが具体的に好ましい。
【0037】
また工程(i)も、なめし加工の最中に皮を染色または漂白することを含んでいてもよいし、または、なめし加工の後に革を染色または漂白することを含んでいてもよい。さらに工程(i)はまた、キッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの層の外部および/または内側のサンディング加工を含んでいてもよい。工程(i)の構成において、後の加工に必要な形態およびサイズが達成されるような皮または革の配置、加えて組み立ては、なめし工程の前に予め行われていてもよいし、または、その後に行ってもよい。これはまた、魚類の革とキッド革とを結合させて、望ましいサイズでこれら2種の革の組み合わせることにも関連する。皮または革を結合させることは、仮縫い、リベット締め、縫い合わせ、または、糊付けのような当業者既知のあらゆる方法を用いることによって行われる。好ましい実施態様において、それぞれ要望通りのパターンになるように一緒に縫い合わせること、または、一緒に糊付けすることは、目的とする使用に必要なサイズが達成されるように行われる。
【0038】
工程(ii)は、キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層と、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料で作製された少なくとも1つの追加の層とを結合することを含む。原則的に、これらの少なくとも2つの層を結合させることは当業者既知であり、取り外しできるように結合させる、または、取り外しできないように結合させることが可能なあらゆる結合技術によって行うことができる。例えばネジのような固定手段によって、取り外し可能な結合が達成されるように少なくとも1つの革の層と少なくとも1つの上記材料の追加の層とを結合させることが可能である。
【0039】
しかしながら、本発明の構成において、仮縫い、糊付け、リベット締め、および、縫い合わせのような、取り外しできないように結合させる加工工程が好ましい。具体的に好ましい実施態様において、少なくとも1つの魚類の革もしくはキッド革、または、2種の革の組み合わせの層と、少なくとも1つの上記材料の追加の層とを結合することは、これらを一緒に糊付けすることによって達成される。このような結合技術の具体的な利点は、革の層と1つの上記材料で作製された追加の層との間の糊付けした領域全体にわたって均等な張力の分配と力の移動が達成されることによってもたらされる。それによって、均一な方式で、かつ上記材料の追加の層の上で潰れることなく革を張ることが可能である。それによって、革の層の均一な見た目を得ることができる。糊付けの材料に関して、この目的に関する当業者に既知のあらゆる材料が適切である。具体的に好ましくは、ビニル基剤がベースの接着剤である。
【0040】
さらに工程(ii)も、層間に構築された結合を強化するのに役立つ加工工程を含んでいてもよい。このような追加の加工工程は、例えば、互いに結合した2層をプレスする機械によって、または、個々のツール、好ましくはハンマーによって複合材料の層を加工することによって提供される。1つの上記材料の追加の層と結合させた革の外側それぞれの加工は、手動でハンマーを用いることによって、または、機械を用いることによって行うことができる。
【0041】
工程(ii)の構成において、革の層と上記材料の層とは、まだ成形されていない層の形態で結合させてもよいし、加えて、それらの目的とする使用に応じて予め成形された層の形態で結合させてもよい。
【0042】
工程(iii)は、任意に、キッド革もしくは魚類の革、または、これら2種の革の組み合わせの少なくとも1つの層の外側を、少なくとも1種のコーティング手段でコーティングすることを含んでもよく、ここで、この工程は、工程(i)と(ii)との間に行ってもよいし、または、工程(ii)の後に行ってもよい。
【0043】
原則的に、それぞれのコーティング手段は、キッド革もしくは魚類の革、またはこれら2種の革の組み合わせの少なくとも1つの層の、任意に染色されていてもよいが、それ以外の方法で処理されていないなめした外側に適用することができる。しかしながら、このような外側をそれらの製造中にサンディング加工してもよい。革の外側のサンディング加工は、コーティング手段の層と革の外側との間の接着が改善される可能性があるという利点を伴う。具体的には、コーティングがポリウレタンまたはポリエステルベースのコーティング手段によって達成される場合、任意に革の外側に用いられるサンディング加工は、本来のシャグリーンまたは支持層の鱗の模様がそれぞれほぼ保存されるような方法で行われると予想される。シャグリーン層または鱗の支持層が完全に除去されると、液状のコーティング手段が革の層に浸透して、それらが硬化を起こす可能性がある。
【0044】
具体的には、ポリエステルベースのコーティング手段が用いられる場合、硬化後に、そのコーティングを研磨し追加の透明なワニスを塗布することによってさらに加工してもよい。その代わりの実施態様において、1つまたはそれより多くのポリエステル樹脂またはその他のコーティング手段の追加の層を、最初の硬化したポリエステル層に塗布してもよい。それによって、硬化後に、機械または手動で表面を再度研磨する。表面の研磨は、当業者既知でそれに適したあらゆる手段によって達成できる。本発明の構成において、表面は、様々な程度の微細さを有する研磨紙、さらにそれに続くいわゆる研磨ペーストまたは微細な研磨ワックスでの処理によって研磨される。また、表面を研磨ペーストまたは研磨ワックスで直に研磨することも可能である。さらに、アセチレン炎を用いて表面を研磨することも可能であり、このアセチレン炎は酸素が豊富にあれば燃焼すると予想される。具体的に好ましい本発明の実施態様において、表面は、研磨ペーストによって研磨される。
【0045】
キッド層または魚類の革の層、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの少なくとも1つの層と、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料の少なくとも1つの追加の層との結合が、成形されていない状態で行われる場合において、工程(ii)の後に、または任意に工程(iii)の後に、目的とする使用に応じてすぐ使用できる複合材料を成形する工程が行われる。ここで当業者によって適用される方法は、本複合材料に存在する追加の材料にも適用され、ここで、前記追加の材料は、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される。それによって、アルミニウム上における個々の革、または、2種の革の組み合わせの複合材料は、それぞれの望ましい形状に例えば曲げることもできる。
【0046】
しかしながら、本発明の構成において、工程(ii)の前にすでに所定の形状にした材料を用いることが好ましく、ここでこれらの材料の層は、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される。このような成形された層は工程(ii)で少なくとも1つのキッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの層と結合させるが、このような層もそれに対応する形状を有するように予め切断されたものでもよい。
【0047】
さらに本発明は、自動車、航空機、水に関する乗り物、または、貨物自動車のための室内装飾および外装ライニングに関する本発明の複合材料の使用に関する。
【0048】
例えば、本発明に係る複合材料は、自動車、具体的には高級車の室内装飾の構成で用いられる。従って、例えば計器盤、ドアノブ、および、窓のハンドル、加えて装飾が、本発明の複合材料で作製することができる。上述の使用のいずれかに関する本発明の複合材料の使用、具体的にはキッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせと、アルミニウムまたはプラスチック材料との複合材料の使用は、木材または似たような木材の複合材料の使用と比較して、本発明に係る複合材料は高い弾性を示し、さらに上述した分野において特に重要な軽い重量を有するという利点を有する。さらに本発明の複合材料を用いることによって、木材の材料特性のために木材の厚さをそれに相当する薄さで用いると達成できないような動く物体の室内装飾のための部品を形成することが可能である。これは、例えば、強く大きく曲げられる装飾、または、立体的な中空の形状、例えば装飾品、灰皿などに関連する。
【0049】
また本発明に係る複合材料は、乗り物、具体的には高級車の外装ライニングにも用いられる。自動車の外装ライニングの構成において、アルミニウムまたはプラスチック材料上の、本発明の複合材料、具体的にはキッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの複合材料は、装飾しようとする自動車の部品のサイズに相当するサイズで製造されるため、自動車の最終製造工程中に、または、その後で取り入れることが可能である。
【0050】
いずれのタイプの使用も、特に従来技術において知られている同様の目的のための木材の加工と比較すると、キッド革もしくは魚類の革、または、2種の革の組み合わせを用いることによって、それらから作製された室内装飾部品、または、外装ライニングの部品が客の要望に合うようにあらゆる色で表面を設計することができるという利点を有する。さらに、本発明の複合材料はあらゆる望ましい形態または形状にすることが可能であるという効果のために、室内装飾または外装ライニングの具体的な形態または形状に関する客の要望に関して制限がないという利点を有する。
【0051】
本発明に係る複合材料から製造された室内装飾または外装ライニングの部品のさらなる利点は軽量であることであり、そのために、自動車の総重量を不必要に増加させることを防ぐことができる。これは順に、それぞれの乗り物の燃料消費にもプラス効果を与える。
【0052】
さらに、本発明の複合材料はまた、物体の外部または内装ライニングにも用いることができる。例えば、建築物の内壁または外壁に本複合材料を張ることができ、それにより高級な外観をもたらすことができる。また、階段、ドアノブ、または、あらゆる種類の住宅用部品に本発明の複合材料を張ることも可能である。上述の使用方法は、あらゆる形状で存在することができ、軽量な本発明の複合材料によって、装飾的な要素に関する客の要望を何の問題もなく満たすことが可能であるという利点を伴う。それぞれの目的における形状は、それらを限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの、少なくとも1つの層、および、
金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料の、少なくとも1つの追加の層
を含む複合材料。
【請求項2】
前記少なくとも1つの追加の層が、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作製されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記少なくとも1つの追加の層が、プラスチックで作製されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの前記少なくとも1つの層が染色されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの前記少なくとも1つの層の外側が、少なくとも1種のコーティング手段でコーティングされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記コーティング手段が、ワニスである、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記コーティング手段が、ポリエステルを含む、請求項5または6に記載の複合材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法であって、以下の工程:
(i)キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの、少なくとも1つの層を製造すること;
(ii)キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの、該少なくとも1つの層と、金属、金属合金、プラスチック、繊維複合材料、および、上記材料の少なくとも2種またはそれより多くの組み合わせからなる群より選択される材料の、少なくとも1つの追加の層とを結合すること;
(iii)任意に、キッド革もしくは魚類の革、または、キッド革と魚類の革との組み合わせの該少なくとも1つの層の外側を、少なくとも1種のコーティング手段でコーティングすること、
を含み、ここで、工程(iii)は、工程(i)と(ii)との間に行われるか、または、工程(ii)の後に行われる、上記方法。
【請求項9】
キッド革もしくは魚類の革、またはキッド革と魚類の革との組み合わせの前記少なくとも1つの層が、ステープル留め、糊付け、縫い合わせ、および、リベット締めからなる群より選択される結合技術によって、前記少なくとも1つの追加の層と結合させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
自動車、航空機、水に関する乗り物、または、貨物自動車の室内装飾、または、外装ライニングのための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合材料の使用。
【請求項11】
物体の外装ライニングまたは内装ライニングのための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合材料の使用。

【公表番号】特表2009−505852(P2009−505852A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527313(P2008−527313)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012117
【国際公開番号】WO2007/022795
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508058077)
【Fターム(参考)】