説明

革新的加熱方法とその用途及び装置

【課題】気体水・熱水混合系による加熱副生物除害化加熱・殺菌方法及びその装置を提供する。
【解決手段】被処理材料を加熱副生物除害化加熱・殺菌する方法であって、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる、上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たす、上記気体水に100%湿り状態の水蒸気を噴射させ、熱水・微細水滴・水蒸気からなる高度複合化加熱媒体を安定的に形成させる、及び上記複合化加熱媒体で被加熱材料に上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施す、ことからなる加熱方法及びその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理材料を加熱すると共に、その加熱副生物を同時に除害化する加熱方法に関するものであり、更に詳しくは、水の気体を加熱媒として利用した気体水(以下、「アクアガス」(登録商標)又は「AQG」と記載することがある。)により加熱し、その加熱副生物を同時に除害化する加熱(以下、「加熱副生物除害化加熱」と記載することがある。)を用いた加熱方法(以下、「加熱副生物除害化加熱方法」と記載することがある。)及びその装置に関するものである。本発明は、加熱室を気体水と100%湿り状態の水蒸気で置換して形成した気体水・熱水雰囲気で被処理材料を加熱する気体水・熱水による加熱副生物除害化加熱方法、該方法による加熱処理製品の加熱副生物除害化製造方法、及び該方法に使用するための気体水・熱水による加熱副生物除害化加熱装置を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、加熱水蒸気を利用した加熱方法として、例えば、飽和水蒸気を用いたいわゆるスチーム加熱(蒸煮)、ボイラーから発生させた高圧水蒸気を用いた高圧水蒸気加熱が知られており、また、ボイラーから発生させた高圧水蒸気を更に高温に加熱して形成した高温高圧の過熱水蒸気(過熱蒸気)を用いた過熱水蒸気加熱が知られている。これらのうち、上記スチーム加熱は、水を100〜120℃程度に加熱して生成した水蒸気を加熱室内に充満させて、いわゆる「蒸し」により被処理材料を加熱処理する方法である。また、ボイラーの高圧水蒸気を用いた高圧水蒸気加熱は、加圧して高温化した飽和水蒸気を熱源に用いて被処理材料を加熱処理する方法である。
【0003】
一方、上記過熱水蒸気加熱は、ボイラーから発生させた高圧水蒸気を更に加熱して140℃以上に高温化した、熱エネルギー的に準安定な過熱水蒸気を加熱室内に噴射し、充満させて、被処理材料を加熱処理する方法である。この方法では、過熱水蒸気による乾燥した高温高圧雰囲気が形成されるので、この加熱方法は、焼成に近い加熱手段として利用されている。上記過熱水蒸気加熱は、高温高圧で、高カロリーで、しかも、熱エネルギー的に準安定な乾燥水蒸気を利用できるため、例えば、食品の加熱焼成手段、農畜産物系廃棄物の焼成手段、木材等の炭化手段、金属材料表面等の洗浄手段等として、広くその応用技術が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【0004】
しかしながら、この種の加熱方法では、例えば、高温高圧水蒸気を発生させるボイラー、及びボイラーからの高温高圧水蒸気を更に加熱する高温加熱手段が必要とされること、設備が大型になること、加熱室に高温高圧の過熱水蒸気を噴射するため、エネルギーロスが大きく、既存の焼成方法と比べて効率的でないこと、いわゆる通常の水蒸気加熱で十分な場合が多く、あえて過熱水蒸気加熱を利用する必要性が少ないこと、少量処理には不向きであること、焼成効果が未だ十分に検証されていないために実用化に距離があること、等の問題があり、しかも、それらの問題は、いまだ解決されていない。
【0005】
また、特に、食材・食品の加熱焼成手段としての従来の加熱方法、例えば、過熱蒸気、都市ガスやプロパンなどの各種ガスや、電気やガスをエネルギー源とする各種のヒーターを用いる直火加熱等においては、加熱によって食材・食品から副生する各種副生物、特に、油脂分と油煙及びその臭気、を適切にかつ合理的に処理する手段を欠いている。そのため、加熱によって副生する各種副生物は、家庭用以外の業務用、例えば、食品加工産業や外食産業の厨房用等においては、環境負荷増大や職場環境の悪化に止まらず、生産性の低下を来たし、当該業界においては、その対策としての合理化投資負担の増大を余儀なくされ、これが、製品価格の上昇を招き、結局、そのコストアップ分は、消費者が負担するという事態が続いているのが実情である。
【0006】
【特許文献1】特開平06−090677号公報
【特許文献2】特開2001−061655号公報
【特許文献3】特開2001−214177号公報
【特許文献4】特開2001−323085号公報
【特許文献5】特開2002−194362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記通常の水蒸気加熱や上記過熱水蒸気加熱とは別異の、全く新しい水蒸気による加熱方式を開発すべく鋭意研究及び検討を積み重ねた結果、従来法では水の気体としての特性を必ずしも十分に活用していないこと、加熱室を水の気体で置換して、「気体水」雰囲気を形成することで水の気体としての特性を十分に活用できること、それにより、従来法とは本質的に異なる新しい水蒸気を利用した加熱方式を実現できること、を見出し、既に特許出願を行なっている(特開2004−358236号公報)。該発明により、従来技術の欠点が大幅に改善されたが、産業用加熱焼成技術としては、加熱副生物の合理的な除害において、依然として大きな課題を残したままであり、本発明者らは、該気体水技術の更なる進化に取り組み、種々研究を積み重ねた結果、気体水に100%湿り状態の水蒸気を噴射させることによって、この最後の障害を克服できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、従来の水蒸気加熱や過熱水蒸気加熱とは全く別異の、「気体水」に熱水を噴射して形成させた新しい「ハイブリッド型気体水」(以下、「h−AQG」と記載することがある。)による加熱副生物除害化加熱方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記「ハイブリッド型気体水」による加熱副生物除害化加熱方法で使用する「ハイブリッド型気体水」の発生装置及び「ハイブリッド型気体水」による加熱副生物除害化加熱装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
更に、本発明は、加熱室を水の気体で置換し、湿度99.0%以上、酸素濃度を1.0%以下のガス成分(気体水)を形成させ、同時に100%湿り状態の水蒸気を噴射させ、熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合化加熱媒体、ハイブリッド型気体水「h−AQG」を安定的に形成させる方法、及び該方法で形成した「h−AQG」雰囲気で被処理材料を加熱副生物除害化加熱する方法、該方法により加熱処理製品を製造する方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)被処理材料を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化する加熱副生物除害化加熱方法であって、次の工程;
1)100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる、
2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分(気体水)で満たす、
3)上記気体水に100%湿り状態の水蒸気を噴射させ、熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合化加熱媒体を安定的に形成させる、
4)被加熱材料に、上記複合化加熱媒体で上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して被処理材料を加熱処理する、
ことを特徴とする被処理材料の加熱副生物除害化加熱方法。
(2)前記(1)に記載の加熱副生物除害化加熱方法により食材又は食品を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化することにより、加熱処理食材又は食品を製造することを特徴とする加熱処理食材又は食品の製造方法。
(3)前記(1)に記載の加熱副生物除害化加熱方法により食材又は食品を加熱・殺菌し、その加熱副生物を同時に除害化することにより、加熱・殺菌処理食材又は食品を製造することを特徴とする加熱・殺菌処理食材又は食品の製造方法。
(4)熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合化加熱媒体(ハイブリッド型気体水)を発生させる装置であって、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気の発生及び噴射手段、該熱水及び/又は水蒸気を満たす加熱室、100%湿り状態の水蒸気の発生及び噴射手段を具備してなり、上記熱水及び/又は水蒸気発生手段により発生させた熱水及び/又は水蒸気をその噴射手段を介して加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させて、上記加熱室を90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分(気体水)で満たし、該気体水に上記100%湿り状態の水蒸気発生手段で発生させた水蒸気をその噴射手段を介して噴射させ、上記加熱室内で熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合加熱媒体(ハイブリッド気体水)を発生させるようにしたことを特徴とする複合化加熱媒体発生装置。
(5)被処理材料を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化する加熱副生物除害化加熱装置であって、前記(4)に記載の複合化加熱媒体発生装置を具備してなり、その加熱室を被処理材料を加熱処理する加熱室としたことを特徴とする加熱副生物除害化加熱装置。
【0011】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の加熱方法は、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させること、上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たすこと、100%湿り状態の水蒸気を噴射させ、熱水・微細水滴・水蒸気からなる高度複合化加熱媒体を安定的に形成させること、上記熱水と微細水滴及び水蒸気で被処理材料に上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理すること、を特徴とするものである。
【0012】
本発明において、熱水と微細水滴及び水蒸気から成る「複合化加熱媒体」(h−AQG)とは、100%湿り状態の水蒸気から発生する熱水及び高湿度の湿熱水蒸気とその凝縮により部分的に生成する微細水滴との混合系を意味し、乾熱水蒸気とは、上記湿熱水蒸気の乾燥により部分的に生成する高乾燥水蒸気を意味する。本発明では、上記熱水と微細水滴及び水蒸気で被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理するが、ここで、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱とは、90〜180℃の温度範囲において、短時間に10℃を上回る温度差の振幅で連続的に加熱することを意味する。本発明では、例えば、10〜50℃の温度差の振幅で連続的に被処理材料を加熱することができる。本発明では、上記熱水と微細水滴及び水蒸気の混合状態をハイブリッド型気体水(ハイブリッド型「アクアガス」(登録商標))と称する。
【0013】
本発明では、加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱すると共に、該加熱室に熱水及び/又は水蒸気を導入し、該加熱室を水の気体(気体水)で置換し、酸素濃度を1.0%以下に低下させることにより形成した気体水に100%湿り状態の水蒸気を噴射した雰囲気で被加熱材料を加熱する。本発明において、上記加熱室は、被加熱材料を外気と遮断して加熱することができる所定の準閉鎖系空間で構成され、該加熱室として、好適には、例えば、被加熱材料を載せるためのプレート、一部にガラス窓部を形成した開閉可能なドア部を有する準密閉空間が例示される。加熱室は、好適には、ステンレス製の素材で形成される。本発明では、上記加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱するが、この場合、好適には、該加熱室に導入する熱水及水蒸気の温度と同等又はそれ以上に加熱する。
【0014】
本発明では、上記のように、加熱室を所定の温度に加熱すると共に、該加熱室で熱水と微細水滴及び水蒸気を発生させ、該加熱室内の空気をh−AQGで置換する。この場合、上記熱水と微細水滴及び水蒸気は、例えば、細管を通して所定の流速で送水された水を細管の外部からヒーターで加熱し、細管の端部に設けられたノズルを介して加熱室に導入することで生成される。上記熱水と微細水滴及び水蒸気は、100〜180℃、より好適には、95〜150℃に加熱された高温常圧の熱水とガス混合成分であり、被処理材料を高いエネルギー効率で加熱する作用を有する。加熱された水は、加熱室内にノズルを介して噴霧・噴射される。加熱室内は常圧状態で100℃以上の所定の温度に加熱制御されており、噴霧された水滴は気化して、加熱室内を熱水と微細水滴及び水蒸気の混合状態にする。その際に、噴霧される水量及び水滴径を調整することで、水蒸気雰囲気に一部微細水滴を混合させる状態を作り出すことができ、このような状態をアクアガスと呼び、同時にこれに100%湿り状態の水蒸気を噴射して熱水を形成せしめて熱水と微細水滴及び水蒸気からなる「複合化加熱媒体」(ハイブリッド型アクアガス(h−AQG))を形成させる。
【0015】
本発明では、給水タンクの水を給水ポンプで汲み上げ、細管からなる導管を通して水蒸気発生蓄熱パネルに供給し、加熱ヒーターにより、例えば、105〜200℃の所定の温度に加熱し、そのまま、細管の先端に設置した水蒸気噴射ノズルから高速で熱水及び/又は水蒸気を噴射させる。この場合、水蒸気ノズルとしては、先端に微細噴射孔を形成してなる、熱水及び/又は水蒸気を微細化して噴出する機能を有するものであれば、適宜のものが用いられる。微細噴射孔の孔径、孔数、孔の穿設位置等は任意に設定できる。水蒸気噴射ノズルからの熱水及び/又は水蒸気の噴射速度は、好適には、噴射ノズル先端において160〜200/s程度であるが、これらに制限されるものではなく、装置の大きさ、種類及び使用目的等に応じて、例えば、微細噴射孔の孔径、孔数等を変更することにより任意に設定することができる。
【0016】
本発明では、例えば、上記微細噴射ノズルから噴射された水蒸気を加熱室に導入するが、その際に、噴射ノズルの先端に近接して設置した循環ファンに水蒸気を噴射して、循環ファンの回転による衝撃力と風力により所定の風向にh−AQGを移送すると共に、それらの風向に合わせて設置された加熱ヒーターにh−AQGを接触させて、h−AQGをその温度を低下させずに加熱室全体に導入し、該加熱室を所定の温度に保持されたh−AQGで置換し、湿度95%以上、酸素濃度1.0%以下、より好適には、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下の熱水・ガス成分で加熱室を満たすことにより、加熱室内にh−AQG雰囲気を形成することができる。微細噴射口から噴射された熱水及び/又は水蒸気は、循環ファンに衝突することで更に微細化する。また、循環ファンにより形成された風向の風下に設置された加熱ヒーターは、その表面が噴射された熱水及び/又は水蒸気に直接的に、かつ広面積で接触するように、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気をなるべく遮るような位置及び方向に設置する。それにより、加熱ヒーターによる熱を噴射された熱水及び/又は水蒸気に効率良く伝達し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度低下を確実に防止することが可能となる。
【0017】
上記循環ファンは、例えば、加熱室内部の後面側の中央に設置され、噴射された熱水及び/又は水蒸気を、加熱室内部の左側面部及び右側面部に位置するダクト内に設置された加熱ヒーターに直接接触するように移送する機能を有するものが例示されるが、これらに制限されるものではない。また、上記加熱ヒーターは、好適には、例えば、シーズヒーター等をヘアピン状に多数設置して、噴射された熱水及び/又は水蒸気との接触面積が増えるようにしたものが例示されるが、これらに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。上記循環ファンの回転数及び回転方向は、装置の大きさ、ダクトの位置、形状、加熱ヒーターの形状、設置位置等を考慮して、噴射された熱水及び/又は水蒸気がダクト内に循環風として循環し得るように設定される。
【0018】
加熱室がh−AQGで置換された段階で、被処理材料を加熱室に導入し、上記h−AQGを熱媒体として利用して、所定の加熱処理を行う。ここで言う加熱処理とは、上記h−AQGを熱源として利用するあらゆる種類の加熱処理を含むものであり、好適には、例えば、凍結材料の加熱による解凍処理、材料の加熱加工、材料の加熱による乾燥加工、材料の加熱による溶融又は焼成加工、水を含む液体の加熱処理等が例示される。本発明において、被処理材料は、特に制限されるものではないが、好適には、例えば、凍結品、植物製品、有機物、無機物、農産物、食料品、木材、金属、セラミックス、プラスチック等が例示される。しかし、本発明は、これらに制限されるものではなく、その他、乾燥、加熱、殺菌、焼成、解凍、調理などの加熱処理が適用されるあらゆる種類の被処理材料に適用され得るものである。
【0019】
加熱室に導入した被処理材料は、所定の加熱処理を施した後、適宜のタイミングで加熱室の外に搬出され、被処理材料に接触したh−AQGは、h−AQG排出口から系外に排出される。加熱室内に噴射された熱水及び/又は水蒸気は、まず、循環ファンに衝突し、微細化され、ダクトに移送され、ダクト内に設置した加熱ヒーターに接触し、所定の温度に加熱された後、加熱室内に導入された被処理材料に接触し、熱媒体として利用された後、系外に排出される。熱媒体としてのh−AQGの熱エネルギーは、被処理材料の加熱処理の熱源として利用されるが、本発明では、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、そのまま、被処理材料に接触するのではなく、一旦、ダクト内に設置された加熱ヒーターにより加熱された後に、被処理材料に接触し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を低下させることなく、被処理材料を加熱するので、被処理材料を効率よく加熱することが可能となる。
【0020】
また、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、例えば、高速で循環ファンに衝突し、その衝突により衝撃で水滴が分割されて、更に、微細化されると共に、更に、加熱ヒーターで加熱されるので、この微細化された高温の気体水は、肉眼観察で完全に透明な高熱伝導率の高温の水粒子からなり、被処理材料の内部への浸透性が高く、一旦、被処理材料の内部へ浸透して熱交換を行った気体水に対し、後続の高温の気体水が熱エネルギーをたえず供給するので、高熱伝導率を有する熱が連続的に内部へ移動し、気体水が、効率よく被処理材料の内部へ浸透し、短時間で被処理材料を加熱することができる。更に、同時併行的に噴射される100%湿り状態の水蒸気から大量に発生する熱水が充満しているために、装置内面が常に熱水で覆われる結果、装置面への加熱副生物の飛沫付着を防止するとともに、特に、ヒーター面付着物の高熱変成による除去困難な皮膜の形成を抑制することができる。
【0021】
本発明において、上記噴出された熱水及び/又は水蒸気の水滴は、必要により、循環ファンに衝突することで更に微細化され、界面活性を有する殺菌性の微細な水粒子として加熱室に充満する。実験の結果、給水タンクから採取された水のpHは約6.9〜7.1であったが、この界面活性な殺菌性微細水粒子のpHは、約8.5〜9.8であり、105℃以上の高温条件と協動して、加熱室内で高殺菌性h−AQG雰囲気を形成するのみならず、従来技術では不可能とされて来た加熱副生物の合理的な除害化が加熱処理と同時並行的に行うことが可能となる。したがって、本発明を、例えば、農産物、食料品に適用した場合には、高界面活性性殺菌性雰囲気下で被処理材料を加熱処理することができるので、加熱と同時に高殺菌効果を付与できるばかりか、加熱副生物による装置汚染と環境汚染を合理的に解決可能である。
【0022】
本発明では、熱水・微細水滴(気体水)と水蒸気を複合化してなる複合化加熱媒体(ハイブリッド型気体水)を発生させる装置が提供される。該装置は、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気の発生及び噴射手段、該熱水及び/又は水蒸気を満たす加熱室、及び100%湿り状態の水蒸気の発生及び噴射手段を具備してなり、上記熱水及び/又は水蒸気発生手段により発生させた熱水及び/又は水蒸気をその噴射手段を介して加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させて、上記加熱室を90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分(気体水)で満たし、該気体水に上記100%湿った状態の水蒸気発生手段で発生させた水蒸気をその噴射手段を介して噴射させ、上記加熱室内で熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合化加熱媒体(ハイブリッド気体水)を発生させるようにした複合化加熱媒体(ハイブリッド気体水)発生装置である。
【0023】
また、本発明では、被処理材料を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化する加熱副生物除害化加熱装置であって、上述の複合化加熱媒体発生装置を具備してなり、その加熱室を被処理材料を加熱処理する加熱室とした加熱副生物除害化加熱装置が提供される。上記加熱室としては、例えば、被処理材料その内部に収容して外気と遮断して加熱できる空間を有する加熱室が使用され、必要に応じて、開閉可能なドア部、そのハンドル及び窓、操作パネル、及び供給水の加熱装置が構成要素として付加される。該加熱室は、単一又は複数であっても良く、例えば連続式の装置では、処理温度の異なる複数の加熱室を設置することができる。上記装置は、水を供給するための水供給手段、水蒸気発生蓄熱パネル、微細水蒸気噴出ノズル、噴射された高温水蒸気を更に微細化するための回転循環ファン、ダイト、所定の温度に加熱する加熱ヒーターからなる熱水及び水蒸気の発生及び噴射系統と、更に、ヒーター線を配設した細管を経由して水を加熱する水蒸気発生蓄熱パネル、噴射ノズルからなる100%湿り状態の水蒸気の発生及び噴射系統を有する。これらの各手段の具体的な構成は、装置のサイズ、種類、形態及び使用目的等に応じて任意に設計することができる。
【0024】
次に、本発明のh−AQGによる加熱装置の一実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。ただし、図は、本発明の装置の一例を示すものであり、本発明は、これに制限されるものではなく、また、各構成要素は、同様の機能を有する同様の手段に置換することが可能であり、更に、公知の手段を任意に付加することができる。図1は、本発明の加熱装置の正面図であり、被処理材料を外気と遮断して加熱するための加熱室1、その正面に設置された開閉可能なドア部2、そのハンドル3及び窓4、操作パネル5、及び供給水の加熱装置15を構成要素として含むバッチ式の装置を示す。加熱室1は、被処理材料(図示せず)をその内部に収容して加熱処理し得る所定の空間を形成する。加熱室1の正面に設置されたドア部2は、ハンドル3を操作して適宜開閉し得る構造を有し、窓4は、被処理材料の加熱状況を確認するために設置される。尚、加熱室は、単一又は複数であっても良く、例えば、連続式の装置では、処理温度の異なる複数の加熱室を設けることが可能であり、その場合、ドア部は省略することができる。
【0025】
図2は、上記装置の縦断平面図であり、水蒸気発生蓄熱パネル6を通して加熱された水は、高温水蒸気として微細水蒸気噴出ノズルを介して加熱室内に噴出され、回転する循環ファン7に衝突して微細化されると共に、左右に設置されたダクト8、8′に移送され、ダクト内8、8′内に設置された加熱ヒーター9に接触して、所定の温度に加熱され、循環風向10として被処理材料(図示せず)に接触し、被処理材料を加熱する。熱源として利用された熱水混合気体水は、排出口11から系外に排出される。加熱室内に噴射された水蒸気は、循環ファン7により、装置の左側面部及び右側面部に設けられたダクト8、8′に移送され、加熱ヒーター9により加熱される。
【0026】
本発明では、加熱ヒーター9の温度条件は、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルに合わせるか、それ以上の温度に設定することが重要である。それにより、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルを低下させることなく、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルを維持した気体水で加熱室を満たすことが可能となるが、仮に、加熱ヒーターを設置しない場合には、このような気体水雰囲気を形成することはできない。また、加熱室内及び噴射された熱水及び/又は水蒸気を加熱するための加熱ヒーターと、供給された水を加熱して所定の温度の高温水蒸気を発生させるための加熱手段とを独立して設置し、これらを併用することにより、噴射される熱水及び/又は水蒸気の温度と、加熱室内の温度を独立して制御することが可能となり、それにより、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を過度にロスすることなく、省エネルギーでh−AQGによる被処理材料の加熱処理を実施することができる。
【0027】
図3は、図2の水蒸気発生高熱パネルの一実施例であり、給水タンクから給水ポンプを介して供給される水を、ヒーター線を配設した細管を経由して水を加熱すると共に、その先端に設置された噴射ノズル11から、微細水粒子12を噴出する。図3には、U字状の細管を多数組み合わせた水蒸気発生蓄熱パネル6の一例を示したが、これに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。本発明では、上記水蒸気発生蓄熱パネルにより、水を、好適には、105〜200℃に加熱するが、高効率の加熱をするには、水を約108〜115℃に加熱して噴出させることが好ましい。本発明において、熱媒体としての気体水を最も効率よく利用するには、約108〜115℃に設定された加熱室に約108〜115℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を噴出することが好適なものとして例示されるが、被処理材料の性質、加熱処理の種類及び本発明の装置の使用目的等に応じてこれらの温度条件を任意に設定することができる。
【0028】
本発明において、ハイブリッド型アクアガス(アクアガス(登録商標)、h−AQGと記載することがある。)とは、開放管等の開放系の中で外部ヒータにより100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、圧力を生じさせないように開放系の準密閉状態で熱水及び/又は水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内で、連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、加熱室内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させ、空気との置換により、湿度90%以上、酸素濃度1.0%以下、より好ましくは、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下にしたガス成分として定義される。
【0029】
上記加熱室内で発生させたガス成分(気体水)は、水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内では、温度低下を起こさないことから、凝縮が少なく、水蒸気の有する高い潜熱と吐出された水蒸気の密度が安定的に維持されるので、熱エネルギーのロスが少なく、高熱量の熱媒体として作用し、非酸化状態での省エネ加熱を可能とすることができる。気体水は、上記開放系の外部ヒータ(パネルヒータ)及び加熱室内の加熱ヒータの容量を選択することにより、好適には、例えば、100〜180℃の温度に維持できるが、これらに制限されるものではなく、その使用目的等に応じて、適宜の温度条件に選定できる。気体水は、水蒸気及び過熱水蒸気と比べて、より高い熱の伝導性を持ち、例えば、加工食品の歩留まりを向上させるような初期凝縮期間の調整を可能とするような、湿熱水蒸気及び微細水滴を用いた加熱媒体「アクアガス」として、特に、食品の加熱・殺菌加工に好適に用いられる。
【0030】
従来、通常の蒸気による加熱方式、高温高圧水蒸気による加熱方式、スチームコンベクションオーブンによる加熱方式等が存在するが、これらの加熱方式の内、高温高圧水蒸気による加熱方法では、高温高圧水蒸気を減圧し、低圧水蒸気の状態で、圧力を生じないように開放管を設けて準密閉状態にした加熱室へ連続的に導入した場合、加熱室及び被加熱材料は、低圧水蒸気の熱エネルギーで加熱されることから、加熱室内の温度は、導入される水蒸気の温度よりも低くなり、そのために、水蒸気は常に凝縮し、液化され、潜熱量は低下し、エネルギーのロスがきわめて大きくなる。また、加熱室内部を低圧水蒸気で充満させ、残留する酸素濃度を1.0%以下に維持するためには、大量の水蒸気と熱エネルギーが必要となる。
【0031】
この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、導入される水蒸気より温度の低い加熱室内には、常に大量の低圧水蒸気が送り込まれ、熱交換による凝縮が発生する。そのため、例えば、130℃以下では、被処理材料は、その凝縮の影響により蒸しの状態での加熱となる。他方、スチームコンベクションオーブンによる加熱方式では、加熱室内は一定温度に加熱された状態であり、水蒸気は常に気化温度での水の蒸発により発生し、水蒸気の温度は、加熱室内部の温度の上昇により上昇する。水蒸気は、加熱室内では温度上昇過程にあり、十分な密度及び潜熱量を保つことができない。この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、充満した水蒸気による加熱ではなく、乾燥空気が含まれた水蒸気による加熱となり、その潜熱量は小さくなる。
【0032】
これらの加熱方式に対して、本発明の加熱方式では、開放管等の開放系の中で外部ヒータにより100℃以上に加熱された水蒸気を、圧力を生じさせないように開放管を設けた準密閉状態で、かつ水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内で、連続的に熱水及び/又は水蒸気を噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させるので、加熱室の内部は常圧状態のまま水蒸気で充満され、空気との置換が行われ、例えば、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下のガス成分の状態となり、発生した水蒸気は温度低下を起こさないことから、高い潜熱量の維持が可能となる。この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、加熱室内での温度低下が起こらず、水蒸気の凝縮が少なく、また、高い潜熱量を維持して、非酸化的な加熱が可能となり、かつ加熱処理の宿命とも言える加熱副生物の合理的除害化処理が自動的に行われると共に、被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施すことが可能となる。このように、本発明の加熱方式は、高潜熱量での省エネルギー加熱、凝縮の影響のない加熱及び非酸化状態での加熱のみならず、加熱副生物の合理的除害化処理を実現するものである。表1に、これらの加熱方式の特徴的部分を比較して示す。
【0033】
【表1】

【発明の効果】
【0034】
本発明により、1)被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱・殺菌及び加熱副生物の除害化処理をすることができる、2)被処理材料を外界と遮断して加熱するための加熱室を、水の気体と熱水の混合系で置換し、湿度99.0%以上、酸素濃度を0.1%以下のガス成分(気体水雰囲気)にすることができる、3)上記h−AQGで被処理材料を短時間で効率よく低侵襲的に加熱・殺菌すると同時に加熱副生物の除害化処理を行うことができる、4)凍結品の解凍、農産物、食料品の加熱・殺菌調理及び加熱副生物の自動的な除害化、木材、金属、セラミック材料等の加熱、乾燥、焼成に適用できる、5)h−AQGを生成させ、それを熱媒体として利用するh−AQGによる加熱副生物除害化加熱・殺菌装置を提供することができる、等の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、試験例及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0036】
試験例1
本試験例では、図1に示すh−AQG発生装置を用いて、ハイブリッド型アクアガスの発生試験を実施した。アクアガス発生装置の運転を開始し、準密閉状態の加熱室(加熱チャンバー)を水蒸気温度と同温度に加熱し、次いで、該チャンバーに300℃に加熱された水蒸気を連続的に噴射させて、チャンバーの内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させた。運転開始から25分経過後に微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態を作り出し、約7分後に湿度99.9%、酸素濃度0.01%のハイブリッド型「気体水」の状態に達した。上記h−AQG発生装置によるh−AQG生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度を測定した結果を図4に示す。図中で、25分経過後に、チャンバー内の酸素濃度の急激な低下及び湿度の急激な上昇を経て、h−AQGが生成されることが分かる。
【0037】
試験例2
本試験例では、図1に示す装置において、水蒸気発生用パネルヒータ(2kw)、加熱室内の加熱ヒータ(10kw)を用いて、ハイブリッド型アクアガス発生装置の運転時の100℃から300℃までの水蒸気吐出温度と、装置内温度、装置内湿度、及び装置内酸素濃度との関係を調べた。その結果を図5に示す。上記パネルヒータは100℃以上において、連続最大運転とし、上記加熱ヒータは110℃以上において、連続最大運転とした。ただし、100℃以下においては、その設定温度に設定した。図に示されるように、約100〜115℃の気化発生期の水蒸気では、温度上昇に時間を要し、約120℃以上の水蒸気は装置内温度に連動して短時間、かつ安定な温度上昇を示し、装置内温度と水蒸気温度がきわめて安定に制御し得ることが分かった。他方、115℃前後の水蒸気は、準安定状態ではあるが、高密度で高い潜熱量を有する熱媒体として利用し得ると考えられる。これにより、本発明では、これらの準安定及び安定状態のh−AQGを、その特性を生かして、被加熱材料の種類、加熱加工の目的等に応じて任意に選択し、使用することが可能であることが分かった。
【0038】
試験例3
本試験例では、図1に示す装置を用いて、h−AQG発生時における水蒸気及び微細水滴噴射ノズル付近の温度変化を調べた。その結果を図6に示す。図に示されるように、約95〜150℃の温度領域で約10〜40℃の温度差の振幅で連続的かつ短時間の温度変化が生起することが分かった。また、上記温度差の振幅と、微細水滴と湿熱水蒸気及び乾熱水蒸気の組成は、噴射する水蒸気の温度と装置内温度を調節することにより、変化させ得ることが分かった。また、h−AQG発生時における装置内温度とh−AQG温度を比較した。供給水を加熱装置15で余熱し、供給水量は定量ポンプ115spm(3.62l/h)とした。その結果を図7に示す。図に示されるように、装置内温度を約120〜150℃の温度範囲で調節することにより、h−AQGの約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。
【0039】
また、上記と同様にして、h−AQG発生時における装置内温度とh−AQG温度を比較した。その結果を図8に示す。図に示されるように、装置内温度を約115〜165℃の温度範囲で調節することにより、h−AQGの約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。更に、約115〜165℃の温度範囲のh−AQGを用いて、水道水(100ml)を95℃に加熱するための加熱時間を比較した。その結果を図9に示す。図に示されるように、約115℃の温度条件のh−AQGを用いたとき、最も加熱時間が短く、高いエネルギー効率を示すことが分かった。
【0040】
試験例4
上記試験例3と同様にして作り出したハイブリッド型アクアガスの温度と時間の関係を調べた。図10に、115℃のh−AQGの温度時間曲線(庫内)、図11に、115℃のh−AQGの温度時間曲線(噴射ノズル部)を示す。比較例として、過熱水蒸気及び飽和水蒸気の温度時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を図12及び図13に示す。h−AQGの温度時間曲線は、過熱水蒸気及び飽和水蒸気の温度時間曲線と本質的に相違していることが分かる。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、各食材に対し、ハイブリッド型アクアガスで加熱副生物除害化加熱処理を施した。
1)男爵薯の加熱調理試験
h−AQGとAQGの加熱基礎性能を、従来技術の過熱蒸気(以下、「SHS」と記載することがある。)とスチームコンベクションオーブン(以下、「SCO」と記載することがある。)を対照とし、被加熱体として男爵薯を用いて比較した。
【0042】
(1)原料男爵薯
平成17年度北海道産の男爵薯(生産農家「坂口農園」(北海道函館市))をダンボールに入れ専用ストッカーに8℃で保存したMサイズを、1区5個、合計20個を重量選別して使用した。
(2)使用加(過)熱装置
1)h−AQG加熱装置
(株)タイヨー製作所製の実験機を使用した。
2)AQG加熱装置
(株)タイヨー製作所製の実験機を使用した。
3)SHS過熱装置
(株)タイヨー製作所製の実験機を使用した。
4)SCO加熱装置
市販のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製SSC−06DCNSTU)を使用した。
【0043】
(3)試験条件
1)原料処理
流水洗浄した「皮付き」と「皮芽取」の2種を調製し加熱に供した。
2)加熱条件
男爵薯中心温度が95℃到達後更に10分間加熱を続けて調理した。中心温度はK型熱電対センサー(CLASS:1)(株)岡崎製作所製)3本を最大厚さ箇所の中心点に挿入し、最低温度記録センサーの値で測定した。
3)媒体温度
h−AQGとAQGが115℃、SHSは160℃でSCOは99℃スチームモードに設定して使用した。
4)歩留り測定
冷蔵原料の重量と加熱終了後放熱検体重量から計算した。
5)加熱速度の測定
加熱開始時の芯温と95℃から正味の加熱温度上昇値を求め、これを95℃加熱所要時間で除した。
【0044】
(4)試験結果
1)皮付男爵薯の加熱調理
結果を纏めて表2に示した。
【0045】
【表2】

【0046】
この結果から、各媒体の男爵薯芯温95℃加熱速度の比較を図14に示した。h−AQGは、SHSと同等、AQG及びSCOより加熱速度が大きいことが明らかにされた。
また、歩留りの結果を図15に示した。これから、SHS加熱が特異的に歩留りが低く、h−AQGとAQG、及びSCOは、略同等で高い歩留りを示した。以上の加熱速度と歩留りの結果をまとめて図16に示したが、これから総合評価すると、h−AQGの優位性が実証された。
【0047】
2)皮芽取男爵薯の加熱調理
結果をまとめて表3に示した。この結果から、各媒体の皮芽取男爵薯芯温95℃加熱速度の比較を図17に示した。h−AQGは、SHS同等で、AQGよりやや大きい傾向で、SCOよりは加熱速度が大きいことが明らかにされた。また、歩留りの結果を図18に示した。これから、SHS加熱は、特異的に歩留りが低く、h−AQGとAQG、及びSCOは、略同等で高い歩留りを示した。以上の加熱速度と歩留りの結果をまとめて図19に示した。これから総合評価すると、h−AQGの優位性が実証された。
【0048】
2)農産物の加熱殺菌
旬の地場(北海道)産を主体とした代表的な農産物9種をh−AQG加熱し、一般生菌数を測定した結果を表4に示した。尚、食材の前処理、加熱条件、得られた加熱農産物食品の定性的な官能試験結果に付いても表3に要約した。h−AQG加熱調理は、上記の結果も踏まえると、経済性・安全性・高品質性・安定性に優れた加熱調理方法であることが実証された。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【実施例2】
【0051】
本実施例においては、高脂肪・多脂肪性食材・部位のh−AQGによる加熱副生脂質の除害化加熱処理を行って、その優れた脱油・脱脂機能を示した。
1)成鶏生表皮部の加熱
鹿児島県産の成鶏生表皮部0.5kgをその加熱処理条件を変えながらh−AQGで加熱して、その脱脂・脱油作用を検証した。加熱条件とその残存脂肪分の分析結果を図20に示した。その結果、h−AQG105℃で15分間回転加熱した場合が最も残存脂肪分が少なく、約50%の脱脂・脱油作用を示した。繰り返し10回、合計生皮処理量が5Kgに達したにも拘わらず、加熱処理試験終了後のh−AQG装置内は鶏油の重合被覆が全く認められず、副生油脂の残存分も少なく、水道水のシャワーで簡単に流去され、鶏臭も残らなかった。
【0052】
2)豚三枚肉の加熱調理
北海道北斗市の食品スーパー「魚長」で購入した豚三枚肉(八雲ユーラップチルド豚肉)カット(665g)をトレーでh−AQGで30分間加熱した。歩留り87.9%で加熱調理三枚肉が得られ、食味は良好であった(図21)。この調理後の装置の汚染状態とその水による洗浄性を試験した。60g前後の豚脂が溶出したにも拘らず、図22に示した様に、その汚れは軽度でしかも常温の水道水をシャワーするだけで容易に除去可能であった。また、異臭もなかった。
【0053】
3)高脂肪性魚の加熱調理試験
北海道北斗市の食品スーパー「魚長」で購入した輸入「チリ産塩トラウトハラス」片ハラ(255g)をトレー上で10分間h−AQG加熱を施した。歩留り90.7%で調理済みトラウトハラスが得られ、食味は良好であった。高度不飽和脂質を多く含む魚油が20g程度の溶出したにも拘わらず、装置内部への付着や重合油の被覆等は認められず、常温の水道水のシャワーで短時間処理するだけで、容易に洗い流すことができ、魚臭も気にならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上詳述したように、本発明は、ハイブリッド型気体水による加熱副生物除害化加熱・殺菌方法及び加熱副生物除害化加熱・殺菌装置に係るものであり、本発明により、被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱副生物除害化加熱・殺菌処理することができる。被処理材料を外界と遮断して加熱するための加熱室を、水の気体及び100%湿り状態の水蒸気で置換し、湿度99.0%以上、酸素濃度を0.1%以下のガスと熱水混合成分(h−AQG雰囲気)にすることができる。上記h−AQGで被処理材料を短時間で効率よく低侵襲的に加熱副生物除害化加熱・殺菌することができる。凍結品の解凍、農産物、食料品の加熱副生物除害化加熱・殺菌調理、木材、金属、セラミック材料等の加熱、乾燥、焼成に適用できる。h−AQGを生成させ、それを熱媒体として利用するh−AQGによる加熱副生物除害化加熱・殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の装置の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、上記装置の縦断平面図である。
【図3】図3は、水蒸気発生蓄熱パネルの一例の概念図である。
【図4】図4は、水蒸気発生装置による気体水生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度を測定した結果を示す。
【図5】図5は、水蒸気発生装置において、水蒸気発生用パネルヒータ(2kw)、加熱室内の加熱ヒータ(10kw)を用いて、水蒸気発生装置の運転時の100℃から300℃までの水蒸気吐出温度と、装置内温度、装置内湿度、及び装置内酸素濃度との関係を示す。
【図6】図6は、水蒸気(アクアガス)噴射ノズル付近の温度変化を示す。
【図7】図7は、装置内温度/水蒸気(アクアガス)温度の比較を示す。
【図8】図8は、装置内温度/水蒸気(アクアガス)温度の比較を示す。
【図9】図9は、水道水(100ml)を95℃に加熱するための加熱時間の比較テストの結果を示す。
【図10】115℃のアクアガスの温度時間曲線(庫内)を示す。
【図11】115℃のアクアガスの温度時間曲線(噴射ノズル部)を示す。
【図12】115℃の過熱水蒸気状態の温度の時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を示す。
【図13】115℃の飽和水蒸気状態の温度の時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を示す。
【図14】男爵薯皮付きの各種媒体加熱による加熱速度比較試験の結果を示す。
【図15】男爵薯皮付きの各種媒体加熱による歩留り比較試験の結果を示す。
【図16】男爵薯皮付きの各種媒体加熱による比較試験まとめを示す。
【図17】男爵薯皮芽なしの各種媒体加熱による加熱速度比較試験の結果を示す。
【図18】男爵薯皮芽なしの各種媒体加熱による歩留り比較試験の結果を示す。
【図19】男爵薯皮芽なしの各種媒体加熱による比較試験まとめを示す。
【図20】成鶏生表皮部の加熱試験の結果を示す。
【図21】豚三枚肉の加熱調理試験の結果を示す。
【図22】豚三枚肉の加熱調理後のh−AQG加熱装置の汚染状態とその水洗浄試験の結果を示す。
【図23】高脂肪魚の加熱調理試験の結果を示す。
【符号の説明】
【0056】
1 加熱室
2 ドア部
3 ハンドル
4 窓
5 操作パネル
6 水蒸気発生蓄熱パネル
7 循環ファン
8 ダクト
8′ダクト
9 加熱ヒーター
10 循環風向
11 排出口
12 給水パネル
13 微細水蒸気噴出ノズル
14 噴出した微細水粒子
15 供給水の加熱装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材料を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化する加熱副生物除害化加熱方法であって、次の工程;
(1)100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる、
(2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分(気体水)で満たす、
(3)上記気体水に100%湿り状態の水蒸気を噴射させ、熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合化加熱媒体を安定的に形成させる、
(4)被加熱材料に、上記複合化加熱媒体で上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して被処理材料を加熱処理する、
ことを特徴とする被処理材料の加熱副生物除害化加熱方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱副生物除害化加熱方法により食材又は食品を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化することにより、加熱処理食材又は食品を製造することを特徴とする加熱処理食材又は食品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱副生物除害化加熱方法により食材又は食品を加熱・殺菌し、その加熱副生物を同時に除害化することにより、加熱・殺菌処理食材又は食品を製造することを特徴とする加熱・殺菌処理食材又は食品の製造方法。
【請求項4】
熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合化加熱媒体(ハイブリッド型気体水)を発生させる装置であって、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気の発生及び噴射手段、該熱水及び/又は水蒸気を満たす加熱室、100%湿り状態の水蒸気の発生及び噴射手段を具備してなり、上記熱水及び/又は水蒸気発生手段により発生させた熱水及び/又は水蒸気をその噴射手段を介して加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させて、上記加熱室を90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分(気体水)で満たし、該気体水に上記100%湿り状態の水蒸気発生手段で発生させた水蒸気をその噴射手段を介して噴射させ、上記加熱室内で熱水・微細水滴・水蒸気からなる複合加熱媒体(ハイブリッド気体水)を発生させるようにしたことを特徴とする複合化加熱媒体発生装置。
【請求項5】
被処理材料を加熱し、その加熱副生物を同時に除害化する加熱副生物除害化加熱装置であって、請求項4に記載の複合化加熱媒体発生装置を具備してなり、その加熱室を被処理材料を加熱処理する加熱室としたことを特徴とする加熱副生物除害化加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図15】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−125427(P2008−125427A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313667(P2006−313667)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(599046254)有限会社梅田事務所 (11)
【出願人】(591048324)株式会社タイヨー製作所 (10)
【Fターム(参考)】